【解決手段】取付装置30は、シース24よりも前方において編組線23の前端部を露出させた同軸ケーブル20に対し、筒形のスリーブ27を編組線23に外嵌させるように取り付けるための装置であって、編組線23の拡開変形を規制する拡開規制部35を有し、拡開規制部35を編組線23の外周面に接触させた状態で編組線23に対して軸線方向に相対変位可能な拡開規制治具31を備え、拡開規制治具31には、拡開規制部35よりも前方に配置され、スリーブ27を編組線23と同心状に位置決めする位置決め部36が形成されている。
前記スリーブを保持し、前記位置決め部に嵌合される位置決め治具を備えている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の同軸ケーブルに対するスリーブの取付装置。
前記スリーブの後端を前記シースの前端よりも前方の位置に保持するスペーサ治具を備えている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の同軸ケーブルに対するスリーブの取付装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スリーブを巻き付けて取り付ける構造では、圧着部分のかしめ付け力が強いと、スリーブの両端縁の突当部分が外れ、スリーブの内径が小さくなり過ぎることが懸念される。スリーブの内径が小さくなり過ぎると、同軸ケーブルの芯線と編組線との径方向に間隔が小さくなり、インピーダンスの整合性が崩れてしまい、通信性能の低下を来すことが懸念される。
【0006】
スリーブの内径が小さくなり過ぎるのを防止する方法としては、筒状に成形されたスリーブを、同軸ケーブルの前方から編組線に外嵌すればよいのであるが、編組線は、複数本の金属素線を網状に編み込んだものなので、編組線の前端において金属素線が拡がることは避けられない。そのため、筒状に成形されているスリーブを、前方から編組線に外嵌させることは困難であった。
【0007】
本開示の取付装置、取付方法及びシールド導電路は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、筒状に成形されているスリーブを編組線に外嵌させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の開示の同軸ケーブルに対するスリーブの取付装置は、
シースよりも前方において編組線の前端部を露出させた同軸ケーブルに対し、筒形のスリーブを前記編組線に外嵌させるように取り付けるための取付装置であって、
前記編組線の拡開変形を規制する拡開規制部を有し、前記拡開規制部を前記編組線の外周面に接触させた状態で前記編組線に対して軸線方向に相対変位可能な拡開規制治具を備え、
前記拡開規制治具には、前記拡開規制部よりも前方に配置され、前記スリーブを前記編組線と同心状に位置決めする位置決め部が形成されている。
【0009】
第2の開示の同軸ケーブルに対するスリーブの取付方法は、
シースよりも前方において編組線の前端部を露出させた同軸ケーブルに対し、筒形のスリーブを前記編組線に外嵌させるように取り付けるための取付方法であって、
前記編組線の拡開変形を規制する拡開規制部と、前記スリーブを前記拡開規制部の前方において前記編組線と同心状に位置決めする位置決め部とを有する拡開規制治具を設けた上で、
前記拡開規制部を前記編組線の前端部に外嵌し、
前記スリーブを前記位置決め部によって前記編組線と同心状に位置決めし、
前記拡開規制部を前記編組線の外周面に接触させた状態で、前記拡開規制治具と前記スリーブを一体的に後方へスライドさせることによって、前記スリーブを前記編組線を包囲する位置へ移動させる。
【0010】
第3の開示のシールド導電路は、
シースよりも前方において編組線の前端部を露出させた同軸ケーブルと、
筒状に成形されており、前記同軸ケーブルに対し前記編組線に外嵌するように取り付けられるスリーブと、
前記スリーブを包囲した状態で前記同軸ケーブルに圧着された外導体とを備え、
前記スリーブの後端部の内周面には、後端に向かって内径寸法が大きくなるように傾斜したテーパ状の誘導面が形成されている。
【発明の効果】
【0011】
第1〜第3の開示によれば、筒状に成形されているスリーブを編組線に外嵌させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
第1の開示の同軸ケーブルに対するスリーブの取付装置は、
(1)シースよりも前方において編組線の前端部を露出させた同軸ケーブルに対し、筒形のスリーブを前記編組線に外嵌させるように取り付けるための装置であって、前記編組線の拡開変形を規制する拡開規制部を有し、前記拡開規制部を前記編組線の外周面に接触させた状態で前記編組線に対して軸線方向に相対変位可能な拡開規制治具を備え、前記拡開規制治具には、前記拡開規制部の前方に配置され、前記スリーブを前記編組線と同心状に位置決めする位置決め部が形成されている。第1の開示の構成によれば、スリーブを編組線に取り付ける際には、拡開規制部を編組線の前端部に外嵌し、スリーブを編組線の前方において編組線と同心状に位置決めし、拡開規制治具とスリーブを一体的に後方へスライドさせる。編組線の前端部は拡開しない状態に保持されているので、スリーブは、編組線の前端と干渉することなく、編組線を包囲する位置へ移動する。第1の開示によれば、筒状に成形されているスリーブを編組線に外嵌させることができる。
【0014】
(2)(1)において、前記位置決め部は、前記スリーブの後端を前記拡開規制部の前端に隣接させる形態であることが好ましい。この構成によれば、位置決め部材とスリーブを後方へスライドさせる過程で、編組線の前端部が拡開規制部の前端とスリーブの後端の隙間で拡開することがないので、編組線にスリーブを外嵌する工程を円滑に行うことができる。
【0015】
(3)(1)又は(2)において、前記拡開規制治具が、半割状をなす一対の拡開規制部材を合体して構成されていることが好ましい。この構成によれば、編組線に対する拡開規制治具の着脱を容易に行うことができる。
【0016】
(4)(1)〜(3)において、前記スリーブを保持し、前記位置決め部に嵌合される位置決め治具を備えていることが好ましい。
【0017】
(5)(4)において、前記位置決め治具が、半割状をなす一対の位置決め部材を合体して構成されていることが好ましい。この構成よれば、スリーブを編組線に外嵌した後に、位置決め治具をスリーブから外す作業を容易に行うことができる。
【0018】
(6)(1)〜(5)において、前記スリーブの後端を前記シースの前端よりも前方の位置に保持するスペーサ治具を備えていることが好ましい。この構成によれば、スリーブの外周に外導体の圧着部を圧着するときに、圧着部に形成した内向きの係止片を、スリーブの後端とシースの前端との間に配置することが可能である。
【0019】
第2の開示の同軸ケーブルに対するスリーブの取付方法は、
(7)シースよりも前方において編組線の前端部を露出させた同軸ケーブルに対し、筒形のスリーブを前記編組線に外嵌させるように取り付けるための方法であって、前記編組線の拡開変形を規制する拡開規制部と、前記スリーブを前記拡開規制部の前方において前記編組線と同心状に位置決めする位置決め部とを有する拡開規制治具を設けた上で、前記拡開規制部を前記編組線の前端部に外嵌し、前記スリーブを前記位置決め部によって前記編組線と同心状に位置決めし、前記拡開規制部を前記編組線の外周面に接触させた状態で、前記拡開規制治具と前記スリーブを一体的に後方へスライドさせることによって、前記スリーブを前記編組線を包囲する位置へ移動させる。第2の開示の構成によれば、スリーブを編組線に取り付ける際には、編組線の前端部は拡開しない状態に保持されているので、スリーブは、編組線の前端と干渉することなく、編組線を包囲する位置へ移動する。第2の開示によれば、筒状に成形されているスリーブを編組線に外嵌させることができる。
【0020】
第3の開示のシールド導電路は、
(8)シースよりも前方において編組線の前端部を露出させた同軸ケーブルと、筒状に成形されており、前記同軸ケーブルに対し前記編組線に外嵌するように取り付けられるスリーブと、前記スリーブを包囲した状態で前記同軸ケーブルに圧着された外導体とを備え、前記スリーブの後端部の内周面には、後端に向かって内径寸法が大きくなるように傾斜したテーパ状の誘導面が形成されている。第3の開示の構成によれば、筒状に成形されたスリーブを編組線の前方から編組線に外嵌する際には、編組線の前端が拡開していても、誘導面によって編組線の前端をスリーブ内に収容することができる。第3の開示によれば、筒状に成形されているスリーブを編組線に外嵌させることができる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示を具体化した実施例1を、
図1〜
図16を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本実施例1において、前後の方向については、
図1〜3,5,7,9〜16における左方を前方と定義する。上下の方向については、
図1〜16にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。
【0022】
本実施例1のシールド導電路Aは、
図1に示すように、シールド端子10と、同軸ケーブル20と、スリーブ27とを備えて構成されている。シールド端子10は、内導体11と、内導体11を収容した誘電体12と、誘電体12の外周を包囲した状態で誘電体12に取り付けられた外導体13とを備えて構成されている。外導体13は、外導体13の前端部を構成する角筒状の本体部14と、本体部14の後端に連って外導体13の後端部を構成する円筒状の圧着部15とを備えて構成されている。本体部14内には、内導体11と誘電体12が収容されている。
【0023】
圧着部15は、外導体13を同軸ケーブル20の外周に固着するための部位である。圧着部15は、本体部14の後端から後方へ延出した基板部と、基板部の側縁から周方向に延出したカシメ片とを有するオープンバレル状の周知形状をなしている。圧着部15の後端縁には、径方向内側へ突出した形態の複数の係止片16が形成されている。
【0024】
同軸ケーブル20は、芯線21を絶縁被覆22で包囲し、絶縁被覆22の外周を筒状の編組線23で包囲し、編組線23の外周をシース24で包囲した周知形態のものである。本実施例1では、同軸ケーブル20の前端部が、軸線を前後方向に向けて配置されているものとする。同軸ケーブル20の前端部においては、シース24と絶縁被覆22が除去されて、芯線21が絶縁被覆22の前方へ露出し、シース24が除去されて編組線23が露出している。絶縁被覆22の前端部は圧着部15内に収容され、芯線21の前端部は、内導体11の後端部に導通可能に固着されている。
【0025】
シース24よりも前方においては、編組線23の外周にスリーブ27が外嵌されている。編組線23の前端部は、スリーブ27の前端近傍で後方へ折り返された折返部25となっている。折返部25はスリーブ27の外周の全体を包囲している。折返部25の外周には、圧着部15がカシメ付けられることによって圧着されている。圧着部15による径方向内向きのカシメ力は、スリーブ27によって受け止められ、折返部25がスリーブ27と圧着部15との間で径方向に挟み付けられている。シールド機能を有する外導体13と、シールド機能を有する編組線23とが、圧着部15において導通可能に接続されている。
【0026】
スリーブ27の後端27Rとシース24の前端24Fとの間には、前後方向の隙間が確保されており、この隙間内には、圧着部15の係止片16が収容されている。係止片16はスリーブ27の後端27Rに対して後方から当接、又は近接して対向するように配置されている。同軸ケーブル20に対して後方への引張力が作用したときには、スリーブ27の後端27Rが係止片16に当接するので、同軸ケーブル20が外導体13に対して後方へ相対変位することが防止されている。
【0027】
スリーブ27は、金属板材を円形に曲げ加工したものではなく、全周に亘って繋がった円筒形をなすものである。
図2に示すように、スリーブ27の後端部内周には、後端側に向かって内径が次第に大きくなるように傾斜したテーパ状の誘導面28が形成されている。スリーブ27は、周方向に突き当たる合わせ目を有していないので、剛性が高く、圧着部15による径方向内向きのカシメ力を確実に受け止めることができる。したがって、同軸ケーブル20のうち圧着部15が圧着された部分と、圧着部15が圧着されていない部分との間で、芯線21と編組線23との間の径方向の間隔が一定に保たれる。これにより、インピーダンスを整合させることができるので、同軸ケーブル20は高い通信性能を有する。
【0028】
編組線23は、複数本の金属細線を網状に編み込んだものであるため、編組線23の前端部は、金属細線の切断端が径方向外方へ反り返るように変形する。スリーブ27は、合わせ目を有しない円筒形に成形されたものであり、スリーブ27の内径寸法は編組線23の外径寸法と同じか、それよりも僅かに大きい寸法である。そのため、スリーブ27を同軸ケーブル20の前方から編組線23に外嵌させようとすると、拡径変形した金属細線とスリーブ27とが干渉することになる。スリーブ27を金属細線と干渉させることなく編組線23に外嵌させるために、本実施例1では、以下に説明する取付装置30を用いている。
【0029】
取付装置30は、拡開規制治具31と、位置決め治具37と、スペーサ治具43とを用いている。
図3,4に示すように、拡開規制治具31は、上下対称な半割状をなす一対の拡開規制部材32を上下に合体させて構成されている。各拡開規制部材32の内面には、前後方向と直角に切断した断面形状(以下、単に「断面形状」という)が半円形をなす拡開規制凹部33と、断面形状が拡開規制凹部33と同心の半円形をなす位置決め凹部34とが形成されている。一対の拡開規制部材32を合体させた状態では、一対の拡開規制凹部33によって円形断面の孔状をなす拡開規制部35が形成されるとともに、一対の位置決め凹部34によって円形断面の孔状をなす位置決め部36が形成される。
【0030】
拡開規制部35は、拡開規制治具31の前後方向における後端側領域に形成されている。拡開規制部35の後端は拡開規制治具31の後端面において円形に開口している。拡開規制部35の内径寸法は、拡開規制部35の全長にわたって一定の寸法であり、編組線23の外径寸法及びスリーブ27の内径寸法と同じ寸法である。位置決め部36は、拡開規制治具31の前後方向における前端側領域に形成され、拡開規制部35と同心状に配置されている。位置決め部36の後端は、拡開規制部35の前端と隣接した状態で段差状に連通している。位置決め部36の前端は拡開規制治具31の前端面において円形に開口している。位置決め部36の内径寸法は、位置決め部36の全長にわたって一定である。位置決め部36の内径寸法は、拡開規制部35の内径よりも大きく、位置決め治具37の外径寸法と同じ寸法である。
【0031】
図5,6に示すように、位置決め治具37は、上下対称な半割状をなす一対の位置決め部材38を上下に合体させて構成されている。各位置決め部材38の外面の断面形状は、半円形である。一対の位置決め部材38を合体させた状態では、位置決め治具37の外周面の断面形状は円形である。位置決め治具37の外径寸法は、拡開規制治具31の位置決め部36の内径寸法と同じ寸法である。
【0032】
各位置決め部材38の内面には、保持凹部39と縮径凹部40が形成されている。保持凹部39の断面形状は、位置決め治具37の外面と同心の半円形である。縮径凹部40の断面形状は、位置決め治具37の外面及び保持凹部39と同心の半円形である。一対の位置決め部材38を合体させた状態では、一対の保持凹部39によって孔状の保持部41が形成されるとともに、一対の縮径凹部40によって孔状の縮径部42が形成される。保持部41と縮径部42の断面形状は、位置決め治具37の外周面と同心の円形である。
【0033】
保持部41は、位置決め治具37の前後方向における後端側領域に形成されている。保持部41の後端は位置決め治具37の後端面において円形に開口している。保持部41の内径寸法は、保持部41の全長にわたって一定の寸法であり、スリーブ27の外径寸法と同じ寸法である。縮径部42は、位置決め治具37の前後方向における前端側領域に形成され、保持部41と同心状に配置されている。縮径部42の後端は、保持部41の前端と隣接した状態で段差状に連通している。縮径部42の前端は位置決め治具37の前端面において円形に開口している。縮径部42の内径寸法は、縮径部42の全長にわたって一定である。縮径部42の内径寸法は、保持部41の内径よりも小さく、拡開規制部35の内径寸法と同じ寸法である。
【0034】
図7,8に示すように、スペーサ治具43は、上下対称な半割状をなす一対のスペーサ部材44を上下に合体させて構成されている。各スペーサ部材44の内面には、断面形状が半円形をなす大径凹部45と、断面形状が大径凹部45と同心の半円形をなす小径凹部46とが形成されている。一対のスペーサ部材44を合体させた状態では、一対の大径凹部45によって円形断面の孔状をなす大径部47が形成されるとともに、一対の小径凹部46によって円形断面の孔状をなす小径部48が形成される。
【0035】
大径部47は、スペーサ治具43の前後方向における後端側領域に形成されている。大径部47の後端はスペーサ治具43の後端面において円形に開口している。大径部47の内径寸法は、大径部47の全長にわたって一定の寸法であり、シース24の外径寸法と同じ寸法である。小径部48は、スペーサ治具43の前後方向における前端側領域に形成され、大径部47と同心状に配置されている。小径部48の後端は、大径部47の前端と隣接した状態で段差状に連通している。小径部48の前端はスペーサ治具43の前端面において円形に開口している。小径部48の内径寸法は、小径部48の全長にわたって一定である。小径部48の内径寸法は、編組線23の外径よりも大きく、シース24の外径よりも小さい寸法である。
【0036】
次に、上記取付装置30を用いてスリーブ27を同軸ケーブル20に取り付ける取付方法と、編組線23を、外導体13の圧着部15を圧着させるための準備の手順を説明する。まず、シース24に周方向の切れ目を入れ、
図9に示すように、シース24のうち切れ目よりも前方の切断片26を前方へスライドさせる。このとき、切断片26が編組線23の前端部を密着状態で包囲し、編組線23の前端23Fが拡開しない状態に保持しておく。編組線23の拡開を規制した状態で、一対の拡開規制部材32を合体させながら、拡開規制凹部33を、シース24の前端24Fと切断片26との間に進入させて、編組線23の外周面に密着させる。
【0037】
次に。
図10に示すように、拡開規制部35を編組線23の外周面に摺接させながら、拡開規制治具31と切断片26を前方へスライドさせる。拡開規制治具31が、シース24の切断片26を編組線23から前方へ離脱させる位置までスライドすると、拡開規制部35の前端部が編組線23の前端23Fを密着状態で包囲する。したがって、編組線23の前端23Fは拡開変形することがない。
【0038】
次に、
図11に示すように、一対の位置決め部材38を合体し、保持部41にスリーブ27を嵌合し、位置決め治具37とスリーブ27を一体化させる。一体化させた位置決め治具37とスリーブ27を、前方から拡開規制治具31に組み付ける。位置決め治具37とスリーブ27を拡開規制治具31に組み付けた状態では、位置決め治具37の後端側部位、即ち位置決め治具37のうちスリーブ27を保持している保持部41の形成領域が、位置決め部36内に嵌入される。スリーブ27と位置決め治具37は、拡開規制治具31に対し、後方への相対変位を規制されるとともに、径方向の相対変位を規制された状態に位置決めされる。つまり、スリーブ27の後端27Rと拡開規制部35の前端35Fとが、前後方向に隣接した状態で同心状に位置決めされる。スリーブ27の後端27Rは、編組線23の前端23Fに対して僅かな隙間(編組線23の前端23Fから拡開規制部35の前端35Fまでの間隔)を空けて前後に並ぶように位置する。
【0039】
次に、
図12に示すように、拡開規制治具31と位置決め治具37とスリーブ27を、一体的に後方へスライドさせることによって、スリーブ27を編組線23に外嵌させる。スリーブ27の後端27Rが、編組線23の前端23Fを包囲する位置へ移行する過程では、拡開規制部35の前端35Fが編組線23の前端23Fを通過した直後に、スリーブ27の後端27Rが編組線23に外嵌される。スリーブ27の後端部内周には、テーパ状の誘導面28が形成されているので、拡開規制部35の前端35Fが編組線23の前端23Fを通過した瞬間に、編組線23の前端23Fが僅かに拡開変形しても、編組線23の前端23Fは誘導面28によって縮径変形させられる。したがって、スリーブ27は、編組線23の前端23Fと干渉することなく、編組線23に外嵌する。
【0040】
スリーブ27を編組線23に外嵌した後は、
図13に示すように、拡開規制治具31と位置決め治具37を、上下に分割することによって同軸ケーブル20から外す。拡開規制治具31と位置決め治具37を同軸ケーブル20から外しても、スリーブ27は編組線23に外嵌された状態に保持される。このとき、スリーブ27は、編組線23の前端23Fよりも後方に移動していても良い。以上により、編組線23に対してスリーブ27を外嵌する工程が終了する。
【0041】
拡開規制治具31と位置決め治具37を同軸ケーブル20から外した後は、
図14に示すように、一対のスペーサ部材44を、合体させながら同軸ケーブル20に取り付ける。このとき、大径部47をシース24の前端部に外嵌させるとともに、小径部48の後端をシース24の前端24Fに当接させる。次に、
図15に示すように、編組線23のうちスリーブ27よりも前方の領域を、後方へ折り返してスリーブ27の外周に被せる。編組線23のうちスリーブ27に被せた部位が、外導体13の圧着部15に圧着される折返部25となる。
【0042】
次に、
図16に示すように、編組線23よりも前方において絶縁被覆22の前端部を除去し、芯線21の前端部を、内導体11と接続可能となるように露出させる。以上により、同軸ケーブル20に対するスリーブ27の取付けが完了する。この後は、同軸ケーブル20の前端部をシールド端子10に組み付け、芯線21を内導体11に固着するとともに、編組線23の折返部25に外導体13の圧着部15を圧着させる。
【0043】
本実施例1の取付装置30は、シース24よりも前方において編組線23の前端部を露出させた同軸ケーブル20に対し、筒形のスリーブ27を編組線23に外嵌させるように取り付けるための装置である。取付装置30は、拡開規制治具31を備えている。拡開規制治具31は、編組線23の拡開変形を規制する拡開規制部35を有する。拡開規制治具31は、拡開規制部35を編組線23の外周面に接触させた状態で、編組線23に対して軸線方向(前後方向)に相対変位することが可能である。拡開規制治具31には、拡開規制部35の前方に配置され、スリーブ27を編組線23と同心状に位置決めする位置決め部36が形成されている。
【0044】
スリーブ27を編組線23に取り付ける際には、拡開規制部35を編組線23の前端部に外嵌し、スリーブ27を編組線23の前方において編組線23と同心状に位置決めし、拡開規制治具31とスリーブ27を一体的に後方へスライドさせる。編組線23の前端部は、拡開規制部35によって拡開しない状態に保持されているので、スリーブ27は、編組線23の前端23Fと干渉することなく、編組線23を包囲する位置へ移動する。したがって、本実施例1の取付装置30によれば、筒状に成形されているスリーブ27を編組線23に外嵌させることができる。
【0045】
位置決め部36は、スリーブ27の後端27Rを拡開規制部35の前端35Fに隣接させる形態である。位置決め部材38とスリーブ27を後方へスライドさせる過程で、編組線23の前端部が拡開規制部35の前端35Fとスリーブ27の後端27Rの隙間で拡開することがないので、編組線23にスリーブ27を外嵌する工程を円滑に行うことができる。拡開規制治具31は、半割状をなす一対の拡開規制部材32を合体して構成されているので、編組線23に対する拡開規制治具31の着脱を容易に行うことができる。
【0046】
取付装置30は、スリーブ27を保持し、位置決め部36に嵌合される位置決め治具37を備えている。位置決め治具37は、半割状をなす一対の位置決め部材38を合体して構成されている。スリーブ27を編組線23に外嵌した後に、位置決め治具37をスリーブ27から外す作業を容易に行うことができる。取付装置30は、スリーブ27の後端27Rをシース24の前端24Fよりも前方の位置に保持するスペーサ治具43を備えている。この構成によれば、スリーブ27の外周に外導体13の圧着部15を圧着するときに、圧着部15に形成した内向きの係止片16を、スリーブ27の後端27Rとシース24の前端24Fとの間に配置することが可能となっている。
【0047】
本実施例1のシールド導電路Aは、同軸ケーブル20と、スリーブ27と、外導体13とを備えている。同軸ケーブル20は、シース24よりも前方において編組線23の前端部を露出させている。スリーブ27は、筒状に成形されており、同軸ケーブル20に対し編組線23に外嵌するように取り付けられている。外導体13は、スリーブ27を包囲した状態で同軸ケーブル20に圧着されている。
【0048】
スリーブ27の後端部の内周面には、後端に向かって内径寸法が大きくなるように傾斜したテーパ状の誘導面28が形成されている。スリーブ27に誘導面28を形成したので、筒状に成形されたスリーブ27を編組線23の前方から編組線23に外嵌する際には、編組線23の前端23Fが拡開していても、誘導面28によって編組線23の前端23Fをスリーブ27内に収容することができる。したがって、本実施例1のシールド導電路Aは、筒状に成形されているスリーブ27を編組線23に外嵌させることができる。
【0049】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例では、位置決め部が、スリーブの後端を拡開規制部の前端に隣接させるが、スリーブを位置決め部で位置決めした状態で、スリーブの後端が拡開規制部の前端に対して僅かな間隔を空けるようにしてもよい。
上記実施例では、拡開規制治具が半割状をなす一対の拡開規制部材を合体して構成されているが、拡開規制治具は、3つ以上に分割した拡開規制部材を合体したものであってもよい。
上記実施例では、スリーブが位置決め治具を介して位置決め部に位置決めされるが、位置決め治具を設けず、拡開規制治具の位置決め部が、スリーブを直接的に接触させた状態で位置決めしてもよい。
上記実施例では、位置決め治具が半割状をなす一対の位置決め部材を合体して構成されているが、位置決め治具は、3つ以上に分割した位置決め部材を合体したものであってもよい。
上記実施例では、取付装置がスペーサ治具を備えているが、取付装置はスペーサ治具を備えていないものであってもよい。