【解決手段】グロメットは、車体パネルに設けられた挿通孔に対して固定されるベース部21と、挿通孔に挿通されるワイヤハーネス13の外周を覆う筒状の筒部22と、筒部22の傾く動きを許容しながら筒部22の基部とベース部21とを連結する連結部23とを備える。連結部23は、筒部22の先端側が周方向の第1方向X1側に向かって傾けられた状態で、筒部22の先端側が第1方向X1側とは反対側の第2方向X2側に向かって傾けられた状態に比べて、ベース部21に掛かる応力が小さくなるように、第1方向X1側に設けられた圧縮許容部31と、第2方向X2側に設けられた引っ張り許容部32とを有する。
前記引っ張り許容部は、前記ベース部から前記筒部の延びる側に向かう凸形状と逆側に向かう凹形状とが連続して設けられた凸凹形状とされた請求項1に記載のグロメット。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のグロメットは、
[1]取付対象に設けられた挿通孔に対して固定されるベース部と、前記挿通孔に挿通されるワイヤハーネスの外周を覆う筒部と、前記筒部の傾く動きを許容しながら前記筒部の基部と前記ベース部とを連結する連結部とを備えたグロメットであって、前記連結部は、前記筒部の先端側が周方向の第1方向側に向かって傾けられた状態で、前記筒部の先端側が前記第1方向側とは反対側の第2方向側に向かって傾けられた状態に比べて、前記ベース部に掛かる応力が小さくなるように、前記第1方向側に設けられた圧縮許容部と、前記第2方向側に設けられた引っ張り許容部とを有する。
【0010】
同構成によれば、連結部は、第1方向側に設けられた圧縮許容部と、第1方向側とは反対側の第2方向側に設けられた引っ張り許容部とを有する。そして、圧縮許容部と引っ張り許容部とは、筒部の先端側が第1方向側に向かって傾けられた状態で、筒部の先端側が第2方向側に向かって傾けられた状態に比べて、ベース部に掛かる応力が小さくなるように設けられるため、ワイヤハーネスによって筒部の先端側が第1方向側に向かって傾けられた状態となってもベース部に掛かる応力が小さくなる。これによって、取付対象とベース部との間に隙間が生じてしまうといったことが抑えられ、止水性が向上される。
【0011】
[2]前記引っ張り許容部は、前記ベース部から前記筒部の延びる側に向かう凸形状と逆側に向かう凹形状とが連続して設けられた凸凹形状とされることが好ましい。
同構成によれば、引っ張り許容部は、ベース部から筒部の延びる側に向かう凸形状と逆側に向かう凹形状とが連続して設けられた凸凹形状とされるため、筒部の先端側が第1方向側に向かって傾けられた際に伸びるように弾性変形し易く、ベース部に掛かる応力を小さくすることができる。言い換えれば、引っ張り許容部は、凸凹形状により伸び代が設定されている。
【0012】
[3]前記圧縮許容部は、前記ベース部から前記筒部の延びる側の逆側に向かう凹形状とされることが好ましい。
同構成によれば、圧縮許容部は、ベース部から筒部の延びる側の逆側に向かう凹形状とされるため、筒部の先端側が第1方向側に向かって傾けられた際に筒部が倒れるように弾性変形し易く、且つ筒部が接触し難くなりベース部に掛かる応力を小さくすることができる。すなわち、圧縮許容部が例えば凸凹形状とされた場合では、筒部の先端側が第1方向側に向かって傾けられた際に筒部が凸形状の部位を押し付けてベース部に応力が掛かってしまう虞があるが、これを回避して、ベース部に掛かる応力を小さくすることができる。言い換えれば、圧縮許容部は、凹形状により干渉防止空間が設定されている。
【0013】
[4]前記筒部は、外力を受けていない状態で前記ベース部の扁平面に対して直交方向に延びていることが好ましい。
同構成によれば、筒部は、外力を受けていない状態でベース部の扁平面に対して直交方向に延びているため、例えば、筒部がベース部の扁平面に対して予め傾斜して延びている形状に比べて、成形が容易となる。例えば、グロメットを、上下一対の金型で、容易に成形することが可能となる。
【0014】
[5]前記筒部は一対設けられ、前記第1方向が一対の前記筒部の並設方向と直交する方向に設定されることが好ましい。
同構成によれば、筒部は一対設けられ、前記第1方向が一対の筒部の並設方向と直交する方向に設定されるため、筒部の先端側が第1方向側に向かって傾けられた状態とされても、筒部同士が接触することがない。よって、筒部同士の接触によってベース部に掛かる応力が大きくなることがない。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のグロメットの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0016】
図1及び
図2に示すように、車両は、室内と室外とを隔てる取付対象としての車体パネル11を備えている。車体パネル11は、例えば、車両における床下の空間とエンジンルームとを仕切るパネルである。
【0017】
図2に示すように、車体パネル11には、同車体パネル11を貫通する挿通孔12が設けられている。挿通孔12には、ワイヤハーネス13が挿通される。また、車体パネル11における挿通孔12と対応した部分にはグロメット20が取り付けられる。グロメット20は、挿通孔12における止水を行うためのものである。即ち、グロメット20は、車体パネル11における挿通孔12の周囲の部分とワイヤハーネス13との間を止水するためのものである。また、グロメット20は、挿通孔12に挿通されるワイヤハーネス13を保護する役割も果たす。
【0018】
[グロメット20の構成]
グロメット20は、車体パネル11に設けられた挿通孔12に対応した部位に対して固定されるベース部21と、挿通孔12に挿通されるワイヤハーネス13の外周を覆う筒状の筒部22と、筒部22の傾く動きを許容しながら筒部22の基部とベース部21とを連結する連結部23とを備える。グロメット20は、可撓性を有する材料からなる。グロメット20の材料としては、例えば、可撓性が高いEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)などのエラストマを用いることができる。ベース部21と、筒部22と、連結部23とは一体に形成された一体成形品である。
【0019】
図1〜
図3に示すように、ベース部21は、略円板形状の中央基部21aと、該中央基部21aの外縁から軸方向に僅かに延びる段差部21bと、該段差部21bの先端から径方向外側に延びる外延固定部21cとを有する。なお、外延固定部21cの厚さは中央基部21aの厚さよりも厚く設定されている。
図2に示すように、外延固定部21cにおいて、車体パネル11と対向する側の面には、グロメット20が車体パネル11に固定された状態で、車体パネル11における挿通孔12の周囲の部分と密着する環状のシール部21d,21eが設けられている。本実施形態のシール部21d,21eは、異なる径で一対設けられている。
【0020】
筒部22は、外力を受けていない状態でベース部21の扁平面に対して直交方向に延びている。言い換えると、筒部22は、外力を受けていない状態でベース部21の厚さ方向に沿って延びている。筒部22は、段差部21bが延びる側とは反対側に延びている。また、筒部22は、一対設けられている。なお、本実施形態では、一方の筒部22と他方の筒部22とは僅かに径が異なるが、同一の符号を付して説明する。
【0021】
連結部23は、筒部22が外力を受けた際に、自身が撓むことで筒部22の傾く動きを許容しながら、筒部22の基部とベース部21とを連結する。
[ブラケット50の構成]
図1及び
図2に示すように、グロメット20は、車体パネル11に固定されるブラケット50によって車体パネル11に取り付けられる。
【0022】
ブラケット50は、金属板材よりなる。ブラケット50は、ベース部21における外延固定部21cと厚さ方向に面接触する円環状の挟持部51と、挟持部51の外縁の一部から径方向外側に延びる固定部52とを有する。本実施形態の固定部52は、180°間隔で一対設けられている。また、
図2に示すように、各固定部52には、固定部52を貫通する固定孔53が形成されている。ブラケット50は、車体パネル11に固定されたボルト54に対して固定部52が固定される。なお、ボルト54は、車体パネル11に対して頭部が溶接等によって固定される、又は車体パネル11に対して軸部が貫通するように配置されて固定される。そして、ブラケット50は、その挟持部51と車体パネル11とでグロメット20の外延固定部21cを挟持するように配置され、固定孔53を貫通するボルト54にナット55が螺合されることで、自身が車体パネル11に固定されると共にグロメット20を車体パネル11に固定する。このように固定されたグロメット20は、シール部21d,21eが車体パネル11に密着される。なお、
図2では、シール部21d,21eが車体パネル11に強く押し付けられる前の状態であってナット55が強く締められていない状態を図示している。
【0023】
[グロメット20における連結部23の詳細]
図4に示すように、連結部23は、圧縮許容部31と引っ張り許容部32とを有する。詳しくは、連結部23は、筒部22の先端側が第1方向X1側に向かって傾けられた状態で、筒部22の先端側が第1方向X1側とは反対側の第2方向X2側に向かって傾けられた状態に比べて、ベース部21に掛かる応力が小さくなるように、第1方向X1側に設けられた圧縮許容部31と第2方向X2側に設けられた引っ張り許容部32とを有する。
【0024】
詳述すると、まず本実施形態のグロメット20は、筒部22から突出したワイヤハーネス13が第1方向X1側に向かって引き出されることを想定して設計されている(
図4の2点鎖線参照)。
【0025】
そして、引っ張り許容部32は、ベース部21から筒部22の延びる側(
図4中、上側)に向かう凸形状と逆側に向かう凹形状とが連続して設けられた凸凹形状とされている。詳しくは、本実施形態の引っ張り許容部32は、ベース部21における中央基部21aから筒部22の延びる側に延びて更に筒部22の軸中心側に延びる凸状部32aと、凸状部32aの先端から逆側であって筒部22の延びる側とは反対側に延びて更に筒部22の軸中心側に延びて筒部22の基部に連結される凹状部32bとを有する。この構成により、引っ張り許容部32は、筒部22の先端側が第1方向X1側に向かって傾けられると、伸びるように弾性変形し易い構成とされている。なお、本実施形態の引っ張り許容部32における凸状部32aは、第2方向X2側の高さが最も高く、筒部22の周方向両方に向かって徐々に高さが低くなるように形成されている。
【0026】
また、圧縮許容部31は、ベース部21から筒部22の延びる側の逆側に向かう凹形状とされている。詳しくは、本実施形態の圧縮許容部31は、ベース部21における中央基部21aから筒部22の延びる側の逆側に延びて更に筒部22の軸中心側に延びて筒部22の基部に連結される凹状部31aを有する。この構成により、圧縮許容部31は、筒部22の先端側が第1方向X1側に向かって傾けられると、筒部22が倒れるように弾性変形し易く、且つ、凸状部を有さないことで筒部22が凸状部に接触することがないとともに筒部22がベース部21と接触しないスペースが確保される構成とされている。
【0027】
なお、
図1に示すように、前記第1方向X1は、一対の筒部22の並設方向(
図1中、左右方向)と直交する方向に設定されている。
本実施形態の作用について説明する。
【0028】
車体パネル11における挿通孔12の周囲の部分に密着したシール部21d,21eによって、車体パネル11における挿通孔12の周囲の部分とグロメット20との間を水等の液体が通り抜けることが抑制される。
【0029】
そして、
図4に示すように、筒部22から突出したワイヤハーネス13が第1方向X1側に向かって引き出されると、連結部23が撓みつつ筒部22の先端側が第1方向X1側に向かって傾けられた状態となる。これにより、例えば、ワイヤハーネス13が急激に曲げられる状態が回避され、ワイヤハーネス13がスムーズに第1方向X1側に向かって引き出されることになる。
【0030】
次に、上記実施形態の効果を以下に記載する。
(1)連結部23は、第1方向X1側に設けられた圧縮許容部31と、第1方向X1側とは反対側の第2方向X2側に設けられた引っ張り許容部32とを有する。そして、圧縮許容部31と引っ張り許容部32とは、筒部22の先端側が第1方向X1側に向かって傾けられた状態で、筒部22の先端側が第2方向X2側に向かって傾けられた状態に比べて、ベース部21に掛かる応力が小さくなるように設けられる。よって、ワイヤハーネス13によって筒部22の先端側が第1方向X1側に向かって傾けられた状態となってもベース部21に掛かる応力が小さくなる。これによって、車体パネル11とベース部21との間、具体的には、車体パネル11とベース部21に設けられたシール部21d,21eとの間に隙間が生じてしまうといったことが抑えられ、止水性が向上される。
【0031】
(2)引っ張り許容部32は、ベース部21から筒部22の延びる側に向かう凸形状と逆側に向かう凹形状とが連続して設けられた凸凹形状とされるため、筒部22の先端側が第1方向X1側に向かって傾けられた際に伸びるように弾性変形し易く、ベース部21に掛かる応力を小さくすることができる。
【0032】
(3)圧縮許容部31は、ベース部21から筒部22の延びる側の逆側に向かう凹形状とされるため、筒部22の先端側が第1方向X1側に向かって傾けられた際に筒部22が倒れるように弾性変形し易く、且つ筒部22が接触し難くなりベース部21に掛かる応力を小さくすることができる。すなわち、圧縮許容部31が例えば凸凹形状とされた場合では、筒部22の先端側が第1方向X1側に向かって傾けられた際に筒部22が凸形状の部位を押し付けてベース部21に応力が掛かってしまう虞があるが、これを回避して、ベース部21に掛かる応力を小さくすることができる。また、圧縮許容部31が凸形状の部位を有さないことで筒部22が傾けられた際にベース部21と接触しないスペースが大きく確保され、筒部22がベース部21を押し付けることが抑えられ、ベース部21に掛かる応力を小さくすることができる。
【0033】
(4)筒部22は、外力を受けていない状態でベース部21の扁平面に対して直交方向に延びているため、例えば、筒部22がベース部21の扁平面に対して予め傾斜して延びている形状に比べて、成形が容易となる。例えば、グロメット20を、上下一対の金型で、容易に成形することが可能となる。
【0034】
(5)筒部22は一対設けられ、第1方向X1が一対の筒部22の並設方向と直交する方向に設定されるため、筒部22の先端側が第1方向X1側に向かって傾けられた状態とされても、筒部22同士が接触することがない。よって、筒部22同士の接触によってベース部21に掛かる応力が大きくなることがない。
【0035】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、圧縮許容部31は凹形状とされ、引っ張り許容部32は凸凹形状とされるとしたが、それぞれ他の形状に変更してもよい。すなわち、圧縮許容部31と引っ張り許容部32とは、筒部22の先端側が第1方向X1側に向かって傾けられた状態で、筒部22の先端側が第2方向X2側に向かって傾けられた状態に比べて、ベース部21に掛かる応力が小さくなるように互いに異なる形状で設けられれば、他の形状に変更してもよい。
【0036】
・上記実施形態では、筒部22は、外力を受けていない状態でベース部21の扁平面に対して直交方向に延びているとしたが、これに限定されず、外力を受けていない状態でベース部21の扁平面に対して90°以外の角度に傾斜して延びる形状としてもよい。
【0037】
・上記実施形態では、筒部22は一対設けられ、第1方向X1が一対の筒部22の並設方向と直交する方向に設定されるとしたが、これに限定されず、例えば、筒部22が1つのみ設けられたグロメットとしてもよい。また、例えば、筒部22は一対設けられ、第1方向X1が一対の筒部22の並設方向と直交する方向に設定されていない、すなわち第1方向X1が一対の筒部22の並設方向と直交する方向に対して傾斜するように設定されたグロメットとしてもよい。
【0038】
・上記実施形態では、グロメット20は、ブラケット50によって車体パネル11に固定される構成のものとしたが、これに限定されず、ブラケット50を用いずに車体パネル11に固定される構成のものとしてもよい。例えば、グロメット20は、ベース部21の外縁に、車体パネル11の挿通孔12の縁に対して嵌着固定される嵌着部が設けられた構成のものとしてもよい。