特開2021-182835(P2021-182835A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社三井ハイテックの特許一覧

<>
  • 特開2021182835-積層鉄心の製造方法および製造装置 図000003
  • 特開2021182835-積層鉄心の製造方法および製造装置 図000004
  • 特開2021182835-積層鉄心の製造方法および製造装置 図000005
  • 特開2021182835-積層鉄心の製造方法および製造装置 図000006
  • 特開2021182835-積層鉄心の製造方法および製造装置 図000007
  • 特開2021182835-積層鉄心の製造方法および製造装置 図000008
  • 特開2021182835-積層鉄心の製造方法および製造装置 図000009
  • 特開2021182835-積層鉄心の製造方法および製造装置 図000010
  • 特開2021182835-積層鉄心の製造方法および製造装置 図000011
  • 特開2021182835-積層鉄心の製造方法および製造装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-182835(P2021-182835A)
(43)【公開日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/03 20060101AFI20211029BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20211029BHJP
【FI】
   H02K15/03 Z
   H02K15/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2020-87995(P2020-87995)
(22)【出願日】2020年5月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】間普 浩敏
(72)【発明者】
【氏名】松本 啓太
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓太
【テーマコード(参考)】
5H615
5H622
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB07
5H615PP02
5H615PP07
5H615SS10
5H615SS18
5H615SS26
5H615SS44
5H615TT05
5H615TT32
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CB03
5H622PP03
5H622PP20
5H622QA01
(57)【要約】
【課題】積層鉄心を寸法精度よく製造する。
【解決手段】積層鉄心の製造方法は、分離プレートと、中心孔を有する金属板を積層方向に積層した積層体と、を下治具に対して取り付けた状態で積層体に対する樹脂固定を行うことと、積層体を下治具から分離することと、を含み、下治具は、ベース部と、ベース部から突出し、積層体の中心孔に対して挿入可能なポスト部と、を有し、樹脂固定を行うことにおいて、分離プレートがベース部と積層体との間に配置されるとともに、積層体の中心孔と分離プレートに設けられた貫通孔とに対してポスト部が挿通された状態で樹脂固定を行い、分離することにおいて、分離プレートを支持した状態で、分離プレートまたは下治具のいずれか一方について積層方向のうちの一方向に沿った移動を規制しながら、他方を一方向に沿って移動させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離プレートと、中心孔を有する金属板を積層方向に積層した積層体と、を下治具に対して取り付けた状態で前記積層体に対する樹脂固定を行うことと、
前記積層体を前記下治具から分離することと、を含み、
前記下治具は、ベース部と、前記ベース部から突出し、前記積層体の前記中心孔に対して挿入可能なポスト部と、を有し、
前記樹脂固定を行うことにおいて、前記分離プレートが前記ベース部と前記積層体との間に配置されるとともに、前記積層体の前記中心孔と前記分離プレートに設けられた貫通孔とに対して前記ポスト部が挿通された状態で樹脂固定を行い、
前記分離することにおいて、前記分離プレートを支持した状態で、前記分離プレートまたは前記下治具のいずれか一方について前記積層方向のうちの一方向に沿った移動を規制しながら、他方を前記一方向に沿って移動させる、積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
平面視において、前記下治具の前記ポスト部は、前記積層体の前記中心孔より小さく、前記分離プレートの前記貫通孔は、前記積層体の前記中心孔より大きい、請求項1に記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項3】
平面視において、前記分離プレートの前記貫通孔は、前記積層体の前記中心孔と相似形状である、請求項2に記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項4】
前記分離することにおいて、前記下治具の移動を規制した状態で、前記分離プレートを前記一方向へ移動させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項5】
前記分離プレートは、外周部分に切り欠きを有し、
前記分離プレートを支持するプレート支持部は、前記切り欠きに対して係止する係止部を有し、
前記分離することにおいて、前記係止部が前記切り欠きに対して係止した状態で、前記分離プレートを前記一方向へ移動させる、請求項4に記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項6】
前記分離することにおいて、前記分離プレートの移動を規制した状態で、前記下治具を前記一方向へ移動させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項7】
前記下治具を支持する下治具支持部は、前記下治具の前記ポスト部と対向し、前記積層方向から見たときに前記ポスト部と重なる位置に設けられた押圧具を有し、
前記分離することにおいて、前記押圧具が前記ポスト部を前記積層方向に沿って押圧した状態で、前記下治具支持部を前記一方向へ移動させる、請求項6に記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項8】
前記下治具は、外周部分に切り欠きを有し、
前記下治具を支持する下治具支持部は、前記切り欠きに対して係止する係止部を有し、
前記分離することにおいて、前記係止部が前記切り欠きに対して係止した状態で、前記下治具支持部を前記一方向へ移動させる、請求項6に記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項9】
分離プレートと、中心孔を有する金属板を積層方向に積層した積層体と、を下治具に対して取り付けた状態で前記積層体に対する樹脂固定を行った後に、前記積層体を下治具から分離するための積層鉄心の製造装置であって、
前記下治具は、ベース部と、前記ベース部から突出し、前記積層体の前記中心孔に対して挿入可能なポスト部と、を含み、
前記分離プレートが前記ベース部と前記積層体との間に配置されるとともに、前記積層体の前記中心孔と前記分離プレートに設けられた貫通孔とに対して前記ポスト部が挿通された状態で樹脂固定が行われ、
前記分離プレートを支持するプレート支持部と、
前記下治具を支持する下治具支持部と、
前記プレート支持部および前記下治具支持部のいずれか一方について前記積層方向のうちの一方向に沿った移動を規制しながら、他方を前記一方向に沿って移動させる駆動部と、を有する、積層鉄心の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層鉄心の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、複数の鉄心片を積層して製造される積層鉄心からなるロータコアの製造装置として、コア本体の磁石挿入孔に永久磁石を挿入し、磁石挿入孔に樹脂を注入して固化する装置が示されている。また、特許文献1では、搬送パレットに対する積層鉄心の位置決めを行う中心ガイドが設けられている。積層鉄心は、搬送パレットに載置された状態で搬送され、磁石配置穴に配置される磁石は搬送パレットによって受け止められる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−134967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、中心ガイドを積層鉄心から取り外す際に、中心ガイドと積層鉄心とが干渉する可能性がある。
【0005】
本開示は、積層鉄心を寸法精度よく製造するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
積層鉄心の製造方法の一例は、分離プレートと、中心孔を有する金属板を積層方向に積層した積層体と、を下治具に対して取り付けた状態で前記積層体に対する樹脂固定を行うことと、前記積層体を前記下治具から分離することと、を含み、前記下治具は、ベース部と、前記ベース部から突出し、前記積層体の前記中心孔に対して挿入可能なポスト部と、を有し、前記樹脂固定を行うことにおいて、前記分離プレートが前記ベース部と前記積層体との間に配置されるとともに、前記積層体の前記中心孔と前記分離プレートに設けられた貫通孔とに対して前記ポスト部が挿通された状態で樹脂固定を行い、前記分離することにおいて、前記分離プレートを支持した状態で、前記分離プレートまたは前記下治具のいずれか一方について前記積層方向のうちの一方向に沿った移動を規制しながら、他方を前記一方向に沿って移動させてもよい。
【0007】
積層鉄心の製造装置の一例は、分離プレートと、中心孔を有する金属板を積層方向に積層した積層体と、を下治具に対して取り付けた状態で前記積層体に対する樹脂固定を行った後に、前記積層体を下治具から分離するための積層鉄心の製造装置であって、前記下治具は、ベース部と、前記ベース部から突出し、前記積層体の前記中心孔に対して挿入可能なポスト部と、を含み、前記分離プレートが前記ベース部と前記積層体との間に配置されるとともに、前記積層体の前記中心孔と前記分離プレートに設けられた貫通孔とに対して前記ポスト部が挿通された状態で樹脂固定が行われ、前記分離プレートを支持するプレート支持部と、前記下治具を支持する下治具支持部と、前記プレート支持部および前記下治具支持部のいずれか一方について前記積層方向のうちの一方向に沿った移動を規制しながら、他方を前記一方向に沿って移動させる駆動部と、を有してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、積層鉄心を寸法精度よく製造するための技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、積層鉄心の一例を示す斜視図である。
図2図2は、樹脂注入装置の一例を概略的に示す断面図である。
図3図3(a)は、下治具の構成を説明する上面図であり、図3(b)は、分離プレートの構成を説明する上面図である。
図4図4は、樹脂注入装置における樹脂固定後の各部の分離状態を説明する図である。
図5図5(a)は、第1の構成例に係る分離装置に用いられる下治具および分離プレートを説明する図であり、図5(b)は、第1の構成例に係る分離装置に用いられる分離プレートを説明する図である。
図6図6(a)は、第1の構成例に係る分離装置を説明する図であり、図6(b)は、第1の構成例に係る分離装置の動作を説明する図である。
図7図7(a)は、第2の構成例に係る分離装置を説明する図であり、図7(b)は、第2の構成例に係る分離装置の動作を説明する図である。
図8図8(a)は、第3の構成例に係る分離装置を説明する図であり、図8(b)は、第3の構成例に係る分離装置の動作を説明する図である。
図9図9(a)は、第4の構成例に係る分離装置を説明する図であり、図9(b)は、第4の構成例に係る分離装置の動作を説明する図である。
図10図10は、積層体を下治具に対して取り付けた状態での積層体の中心孔、下治具のポスト部及び分離プレートの貫通孔の位置関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本開示を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
[固定子積層鉄心の構成]
まず、図1を参照して、積層鉄心1の構成について説明する。積層鉄心1は、回転子(ロータ)の一部である。回転子は、積層鉄心1に設けられる磁石挿入孔16が設けられ、磁石挿入孔16に永久磁石12が挿入されたものと、シャフト(不図示)等を組み合わせることにより構成される。回転子が固定子(ステータ)と組み合わされることにより、電動機(モータ)が構成される。回転子は、例えば、埋込磁石型(IPM)モータを構成してもよいし、他の種類のモータの一部を構成してもよい。
【0012】
積層鉄心1は、積層体10(鉄心本体)と、複数の永久磁石12と、複数の固化樹脂14とを備える。
【0013】
積層体10は、図1に示されるように、円筒状を呈している。積層体10の中央部には、中心軸Axに沿って延びるように積層体10を貫通する中心孔10aが設けられている。中心孔10aは、積層体10の高さ方向(上下方向)に延びている。積層体10は中心軸Ax周りに回転するので、中心軸Axは回転軸でもある。
【0014】
中心孔10aの内周面には、4つの突条10b(キー)が形成されている。突条10bは、積層体10の上端面S1から下端面S2に至るまで高さ方向に延びている。中心軸Axを挟んで径方向において互いに対向する一対の突条10bが2組設けられることによって、4つの突条10bが設けられ得る。一対の突条10bは、中心軸Axを間において対向しており、中心孔10aの内周面から中心軸Axに向けて突出している。なお、積層体10に設けられるキー部の一例として突条10bを示しているが、キー部としては突条10bに限定されず、凸部または凹部等の係止部が設けられてもよいし、キー部の個数は4つに限定されず、1つ以上の係止部が設けられていてもよい。係止部(突条10b)がない場合、中心孔10aは、円や楕円等の形状でもよい。
【0015】
積層体10には、複数の磁石挿入孔16(樹脂注入部)が形成されている。磁石挿入孔16は、図1に示されるように、積層体10の外周縁に沿って所定間隔で並んでいる。磁石挿入孔16は、図2に示されるように、中心軸Axに沿って延びるように積層体10を貫通している。すなわち、磁石挿入孔16は高さ方向に延びている。
【0016】
積層体10は、複数の打抜部材Wが積み重ねられて構成されている。打抜部材Wは、金属板(例えば、電磁鋼板)が所定形状に打ち抜かれた板状体であり、積層体10に対応する形状を呈している。積層体10は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材W同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材Wを積層することをいう。転積は、主に打抜部材Wの板厚偏差を相殺して、積層体10の平面度、平行度および直角度を高めることを目的に実施される。転積の角度は、任意の大きさに設定してもよい。
【0017】
積層方向において隣り合う打抜部材W同士は、カシメによって締結されていてもよい。また、打抜部材W同士は、カシメに代えて、種々の公知の方法にて締結されてもよい。例えば、複数の打抜部材W同士は、接着剤または樹脂材料を用いて互いに接合されてもよいし、溶接によって互いに接合されてもよい。あるいは、打抜部材Wに仮カシメを設け、仮カシメを介して複数の打抜部材Wを締結して積層体10を得た後、仮カシメを当該積層体から除去してもよい。なお、「仮カシメ」とは、複数の打抜部材Wを一時的に一体化させるのに使用され且つ積層鉄心1を製造する過程において取り除かれるカシメを意味する。
【0018】
永久磁石12は、図1および図2に示されるように、各磁石挿入孔16内に例えば一つずつ挿入されている。永久磁石12の形状は、特に限定されないが、例えば直方体形状を呈していてもよい。永久磁石12の種類は、モータの用途、要求される性能などに応じて決定すればよく、例えば、焼結磁石であってもよいし、ボンド磁石であってもよい。また、一つの磁石挿入孔16には複数の永久磁石12が挿入されてもよい。
【0019】
固化樹脂14は、永久磁石12を収容する磁石挿入孔16内に充填された溶融状態の樹脂材料(溶融樹脂)が固化したものである。固化樹脂14は、永久磁石12を磁石挿入孔16内に固定するように構成されていてもよい。固化樹脂14は、高さ方向で隣り合う打抜部材W同士を接合するように構成されていてもよい。
【0020】
積層鉄心1は、シャフトと組み合わせることで回転子として機能する。この際に、積層鉄心1の上端および下端を挟み込むように端面板を配置してもよい。端面板は積層体10と溶接によって接合されていてもよい。
【0021】
[樹脂注入装置]
図2図3を参照して、積層鉄心1を製造する際に用いられる樹脂注入装置100について説明する。樹脂注入装置100は、帯状の金属板を打ち抜き加工して形成された複数の打抜部材Wが積層された積層体10の磁石挿入孔16に対して永久磁石12を配置するとともに、永久磁石12を収容する磁石挿入孔16内に溶融樹脂を充填するように構成されている。すなわち、樹脂注入装置100は、積層鉄心1の製造に係る一連の装置に含まれ得る。
【0022】
樹脂注入装置100は、下型110と、上型120と、下治具130と、分離プレート140と、制御部150と、を含む。
【0023】
下型110は、上型120と共に積層体10を高さ方向において挟持可能に構成されている。図2に示すように、下型110は、ベース部材111を含む。なお、ベース部材111の内部に、後述する熱源122と同様の熱源が配置されていてもよい。
【0024】
上型120は、下型110と共に積層体10を高さ方向において挟持可能に構成されている。上型120は、ベース部材121と、熱源122とを含む。
【0025】
ベース部材121は、一つの凹部123と、複数の収容孔124とを含む。凹部123は、後述のポスト部132(挿通ポスト)が入り込むことが可能となる位置に設けられ、例えば、ベース部材121の略中央部に位置している。凹部123は、ポスト部132に対応する形状である。積層体10に設けられるキー部に対応するように凹部123を設けることで、積層体10と上型120との位置決めを行っている。
【0026】
複数の収容孔124は、ベース部材121を貫通しており、凹部123の周囲に沿って所定間隔で並んでいる。各収容孔124は、下型110および上型120が積層体10を挟持した際に、積層体10の磁石挿入孔16にそれぞれ対応する箇所に位置している。なお、収容孔124と磁石挿入孔16とは1対1である必要はなく、各磁石挿入孔16に対して樹脂タブレットPによる溶融樹脂が供給可能とされていればその配置は適宜変更される。各収容孔124は、円柱形状を呈しており、少なくとも一つの樹脂タブレットPを収容可能である。また、複数の収容孔124は、積層体10と上型120との間に位置する別体に設けられていてもよい。
【0027】
熱源122は、例えば、ベース部材121に内蔵されたヒータである。熱源122が動作すると、ベース部材121が加熱され、ベース部材121に接触している積層体10が加熱されると共に、各収容孔124に収容された樹脂タブレットPが加熱される。これにより、樹脂タブレットPが溶融して溶融樹脂に変化する。
【0028】
上型120には、複数のプランジャ125が取り付けられる。プランジャ125は、収容孔124の上方に設けられる。各プランジャ125は、図示しない駆動源によって、対応する収容孔124に対して挿抜可能となるように構成されている。また、複数の収容孔124および熱源122は、積層体10と上型120との間に位置する別体に設けられていてもよく、このとき、複数の収容孔124は、複数のプランジャ125が対応する収容孔124に対して挿抜可能となるように構成されていてもよい。
【0029】
下治具130は、下型110のベース部材111上に載置されて、積層体10を支持する部材である。図3に示すように、下治具130は、ベース部131と、ベース部131に設けられたポスト部132とを含む。ベース部131は、積層体10を載置可能に構成されている。ポスト部132は、ベース部131の略中央部に位置しており、ベース部131の上面から上方に向けて突出している。ポスト部132は、柱形状を呈しており、積層体10の中心孔10aに対応する外形を有する。したがって、ポスト部132には、積層体10の突条10bに対応する4つの凹部133が形成されている。下治具130を積層体10に取り付けたときのポスト部132(凹部133を含む)と積層体10との距離は、例えば、15μm〜35μm程度とすることができる。また、ポスト部132(凹部133を含む)と積層体10との距離は、基本的に全周において等しくされていてもよい。この場合、積層鉄心1(樹脂固定後の積層体10)を取り外す際に下治具130と接触した場合の軸ずれ等を防ぐことができる。
【0030】
分離プレート140は、下治具130のベース部131上に載置される板状の部材である。一例として、分離プレート140は平面視においては正方形とすることができるが、この形状には限定されない。分離プレート140は、下治具130とは独立して移動させることが可能とされている。
【0031】
分離プレート140は、図3(b)に示すように、積層体10の中心孔10aに対応する外形を有する貫通孔141を有する。また、貫通孔141内には、積層体10の突条10bに対応する4つの凸部142が形成されている。なお、貫通孔141は、積層体10の中心孔10aおよび突条10bに対応する形状よりもわずかに大きくてもよく、凸部142は、積層体10の突条10bに対応する形状よりわずかに小さくてもよい。貫通孔141および凸部142が、積層体10の中心孔10aおよび突条10bに対応する形状よりも小さい場合、ポスト部132と干渉する可能性がある。図3(b)では、平面視における分離プレート140を示しているが、平面視における積層体10の外形を想像線(二点鎖線)として示している。図3(b)に示すように、分離プレート140の貫通孔141および凸部142は、積層体10の中心孔10aおよび突条10bと比較して、径方向外側にわずかに(例えば、15μm〜35μm程度)離間した形状とされていてもよい。また、分離プレート140は、積層体10の中心孔10aおよび突条10bとの距離は、基本的に全周において等しくされていてもよい。なお、貫通孔141および凸部142は、積層体10の中心孔10aおよび突条10bに対応する形状は、上述のとおり全周においてわずかに大きくてもよいが、一部のみ大きくされていてもよい。
【0032】
制御部150は、樹脂注入装置100に含まれる上記の各部を制御する機能を有する。制御部150は、例えば、下型110、上型120、プランジャ125等の移動、熱源122の動作等を制御する機能を有する。なお、制御部150は、積層鉄心1の製造に係る他の装置(例えば、プレス装置、溶接装置等)の制御も行ってもよい。制御部150は、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラムまたはオペレータからの操作入力等に基づいて、上記の各部を動作させるための指示信号を生成するように構成されている。制御部150は、各部に対して当該指示信号をそれぞれ送信するように構成されている。
【0033】
なお、図示していないが、上記の樹脂注入に係る製造装置と、積層鉄心1の製造に係る他の装置との間には、積層体10を移送するコンベア等を含む搬送装置が設けられていてもよい。コンベアとしては、例えば、ローラコンベア、ベルトコンベアが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
また、上記の樹脂注入装置100において、上型120と積層体10との間にカルプレートが配置されていてもよい。この場合、溶融樹脂を磁石挿入孔16に導く樹脂流路(例えば、ランナ、ゲート孔)がカルプレートに形成される。また、上記の樹脂注入装置100のように、積層体10と上型120とが直接接しており、上型120側から溶融樹脂が磁石挿入孔16内に注入される場合には、積層体10に対向する上型120の対向面に当該樹脂流路が設けられていてもよい。
【0035】
また、上記の樹脂注入装置100は、上型120に取り付けられた収容孔124およびプランジャ125によって積層体10の磁石挿入孔16に対して上方から溶融樹脂を供給する構成とされているが、下方から溶融樹脂を供給する構成としてもよい。この場合、下型110に樹脂タブレットPを収容可能な樹脂ポットとプランジャとが設けられる。また、下方から溶融樹脂を供給する場合、下治具130および分離プレート140に、溶融樹脂を下型110に注入するための貫通孔が設けられる。この場合、溶融樹脂を磁石挿入孔16に導く樹脂流路(例えば、ランナ、ゲート孔)が分離プレート140に形成されてもよい。
【0036】
[積層鉄心の製造方法]
図2および図4を参照して、積層鉄心1の製造方法について説明する。前段階として、プレス加工装置等により金属板を打ち抜いた複数の打抜部材Wを積層することによって、積層体10が準備される。積層体10は、搬送装置等によって、樹脂注入装置100に搬送される。樹脂注入装置100に搬送される前に、まず、下治具130のベース部131上に分離プレート140を配置する。このとき、分離プレート140の貫通孔141に下治具130のポスト部132が挿通される。その後、下治具130および分離プレート140が取り付けられた状態の積層体10の各磁石挿入孔16内に永久磁石12が挿入される。さらに、磁石挿入孔16に永久磁石12が挿入された状態で、積層体10に対して予熱が行われる。これらの処理は、樹脂注入装置100内で行われてもよいし、樹脂注入装置100とは異なる装置によって行われてもよい。また、各工程が互いに異なる装置において行われてもよい。予熱によって50℃〜200℃程度に加熱された状態の積層体10が樹脂注入装置100に搬送され、樹脂注入装置100における処理が行われる。
【0037】
樹脂注入装置100では、図2に示されるように、まず、下治具130および分離プレート140と一体化された状態の積層体10を下型110のベース部材111上に載置する。次に、上型120を積層体10上に載置し押圧する。これにより、積層体10は、下型110および上型120で積層方向から挟持された状態となる。次に、上型120の熱源122により、事前に各収容孔124に投入された樹脂タブレットPを溶融させる。次に、樹脂タブレットPが溶融した溶融樹脂をプランジャ125によって各磁石挿入孔16内に注入する。その後、溶融樹脂が固化すると、磁石挿入孔16内に固化樹脂14が形成され、積層鉄心1となる。樹脂固定後の積層鉄心1から、下型110および上型120が積層体10から取り外され、さらに、分離プレート140および下治具130が取り外される。
【0038】
積層鉄心1(樹脂固定後の積層体10)を取り外す際には、分離プレート140上に積層鉄心1が配置された状態で、下型110と上型120とを取り外す。その後、下治具130を積層鉄心1から取り外す。このとき、後述の下治具支持部またはプレート支持部の移動を制御することで、下治具130および分離プレート140のいずれか一方について積層方向のうちの一方向に沿った移動を規制し、他方を上記一方向に沿って移動させる。これにより、分離プレート140および積層鉄心1に対して、下治具130を相対的に下方へ移動させ、下治具130を積層鉄心1から分離する。
【0039】
具体的には、図4に示すように、積層鉄心1に対して上型120および下型110を積層方向(上下方向)へ移動させる。これにより、積層鉄心1に対して上型120および下型110が分離される。次に、分離プレート140上に積層鉄心1が配置された状態で、分離プレート140および積層鉄心1に対して、下治具130を積層鉄心1の積層方向に沿って相対的に移動させる。これにより、分離プレート140および積層鉄心1を挿通していたポスト部132も、分離プレート140および積層鉄心1から分離される。この結果、図4に示すように、分離プレート140および積層鉄心1は、下治具130からから分離した状態となる。この状態とした後に、分離プレート140から分離させることによって、積層鉄心1を単体で移動させることが可能となる。移動可能となった積層鉄心1は、搬送装置等によって後工程の溶接装置等へ搬送されてもよい。
【0040】
ここで、下型110は、積層鉄心1を下方から支持しているのみであるため、積層鉄心1に対する下型110の分離は比較的容易に行うことができる。また、上型120も、積層鉄心1を上方から抑え込んでいるのみであるため、積層鉄心1に対する上型120の分離も比較的容易に行うことができる。一方、下治具130は、ポスト部132が積層鉄心1における積層体10の中心孔10aを挿通しているため、取り外しの際に下治具130が積層鉄心1に対して負荷を与えることが考えられる。また、下治具130が積層鉄心1と干渉することを防ぐことが求められる。特に、積層鉄心1における積層体10の中心孔10aおよび中心孔10a内の突条10b(キー)は、寸法精度についての要求が強い。そのため、樹脂注入装置100では、積層鉄心1における積層体10の中心孔10aおよび突条10bとの間に隙間が最小限となる程度に寸法が調整されているポスト部132を有する下治具130が用いられる。しかしながら、積層鉄心1における積層体10の中心孔10aおよび突条10bとの隙間が最小限とされているポスト部132を用いた場合、積層体10の真直度が悪い場合や、ポスト部132を抜く際に常に垂直に抜けるとは限らないため、わずかな傾きでも積層鉄心1とポスト部132とが接触し負荷が増大する可能性が高く、積層鉄心1に対して負荷を与える可能性が高いと考えられる。
【0041】
そこで、本開示では、積層鉄心1の製造時に分離プレート140を用いている。そして、積層鉄心1と下治具130とを分離するための分離装置200(200A,200B,200C,200D)を用いて、分離プレート140に載置された状態の積層鉄心1に対して、下治具130を相対的に移動させる。このとき、後述の下治具支持部またはプレート支持部を用いて、下治具130および分離プレート140のいずれか一方の積層方向のうちの一方向に沿った移動を規制し、他方を上記一方向に沿って移動させる。この結果、下治具130を積層体10から取り外す際に、積層鉄心1のうち特に中心孔10a(突条10bを含む)付近にかかる負荷を分散することができる。以下、分離プレート140に載置された状態の樹脂固定後の積層鉄心1に対して、下治具130を相対的に移動するための分離装置200について、第1の構成例〜第4の構成例として説明する。
【0042】
[分離装置:第1の構成例]
図5は、分離装置200Aに適用される下治具130Aおよび分離プレート140Aを示している。また、図6では、分離装置200Aの概略構成を示している。分離装置200Aでは、積層鉄心1(樹脂固定後の積層体10)が載置された分離プレート140Aを上方から支持するプレート支持部210Aと、下治具130Aを下方から支持する下治具支持部220と、駆動部250と、を有する。このように、分離装置200は、分離プレートを支持する部材としてのプレート支持部210Aと、下治具を支持する部材としての下治具支持部220と、これらのいずれかを移動させる駆動部250と、を有する。なお、図6(b)では、駆動部250を省略している。なお、分離プレート140Aを「支持する」とは、分離プレート140Aの積層方向の移動の少なくとも一部(例えば、一方向への移動)に係る制御(移動の規制等を含む)が可能となる状態で分離プレート140Aを支持することをいう。このように、本実施形態における「支持する」とは、対象の物体の全ての方向への移動に係る制御が可能となるように対象の物体を保持することをいうのではなく、特定の方向への移動の制御が可能となる状態をいう。
【0043】
また、プレート支持部210Aによって分離プレート140を支持しやすくするために、分離プレート140Aおよびについては、分離プレート140と比べて形状を変更している。同様に、下治具130Aについても下治具130と比べて形状を変更している。
【0044】
図5(a)では、樹脂注入装置100で使用される下治具130Aおよび分離プレート140Aを示している。また、分離プレート140A上に積層鉄心1が載置された状態を示している。分離プレート140Aは、図5に示すように、積層鉄心1の載置面である上面140aとは逆側の下面140b側の外周部分に2つの切り欠き143が設けられている。切り欠き143は、図5(b)に示すように、正方形の分離プレート140Aのうち対向して設けられた一対の面140d,140eに沿って形成されている。すなわち、2つの切り欠き143は、図5(b)に示すように、それぞれ一対の面140d,140eの長手方向に沿って延び、略同一であってもよく、各々違う形式であってもよい。さらに、面140d,140eの長手方向に沿った切り欠き143の長さは、面140d,140eの長さと同一であってもよいが、面140d,140eの長さとは異なっていてもよい。また、切り欠き143は、面140d,140eに対して部分的となるように設けられてもよい。
【0045】
一方、下治具130Aについても、図5(a)に示すように、ベース部131の上面131a側の外周部分に2つの切り欠き134が設けられている。2つの切り欠き134は、それぞれが、分離プレート140に形成された2つの切り欠き143のそれぞれと、上下方向で対向するように設けられている。すなわち、2つの切り欠き134は、図5(b)に示す切り欠き143と同様に、それぞれ一対の面140d,140eの長手方向に沿って延び、略同一であってもよく、各々違う形式であってもよい。さらに、面140d,140eの長手方向に沿った切り欠き134の長さは、面140d,140eの長さと同一であってもよいが、面140d,140eの長さとは異なっていてもよい。また、切り欠き134は、面140d,140eに対して部分的となるように設けられてもよい。
【0046】
また、プレート支持部210Aは、分離プレート140Aおよび下治具130Aの上方に設けられる本体部211と、本体部211から下方へ延びる一対の脚部212と、一対の脚部212それぞれから延びる一対の係止部213と、を含んで構成される。プレート支持部210Aは、例えば、図示しない駆動部等の駆動によって、水平方向および上下方向に移動可能であってもよい。
【0047】
本体部211は、分離プレート140Aおよび下治具130Aの上方に設けられる。
【0048】
一対の脚部212は、それぞれ本体部211から下方へ延びる。一対の脚部212は、分離プレート140Aの外方(下治具130Aの外周よりも外側)において、それぞれ下方へ延びる。
【0049】
一対の係止部213は、一対の脚部212のそれぞれに対して個別に設けられた凸部であり、分離プレート140Aの2つの切り欠き143に対して係止可能となるように、切り欠き143へ向けて突出している。詳細は後述するが、プレート支持部210Aの係止部213の上面213aの高さ位置は、図6(a)に示すように分離プレート140Aに対してプレート支持部210Aを係止させるようにプレート支持部210Aを移動させることが可能となるように設定されている。また、脚部212の長さは、本体部211と係止部213の上面213aの位置関係に応じて設定され得る。係止部213の形状は、例えば図6(a)に示すように、切り欠き143に対応した形状とされていてもよい。また、係止部213は、切り欠き143と同様に、分離プレート140Aの一対の面140d,140eに沿って延びて形成されていてもよい。
【0050】
下治具支持部220は、本体部221と、本体部221から上方に延びる一対の脚部222と、一対の脚部222それぞれから延びる一対の係止部223と、を含んで構成される。下治具支持部220は、例えば、駆動部250等の駆動によって、水平方向および上下方向に移動可能であってもよい。
【0051】
本体部221は、下治具130Aの下方に設けられる。また、本体部221は、図6(a)に示すように、例えば、下治具130Aをその上面に載置する構成とされていてもよい。
【0052】
一対の脚部222は、それぞれ本体部221から上方へ延びる。一対の脚部222は、下治具130Aにおける一対の切り欠き134に対して、その外方(下治具130Aの外周よりも外側)において、それぞれ上方へ延びる。
【0053】
一対の係止部223は、一対の脚部222のそれぞれに対して個別に設けられた凸部であり、下治具130Aの2つの切り欠き134に対して係止可能となるように、切り欠き134へ向けて突出している。下治具支持部220の係止部223の下面223aと、下治具支持部220の本体部221との間の距離は、下治具支持部220の本体部221上に下治具130Aを載置可能であり、且つ、係止部223が切り欠き134に対して係止可能となるように設定される。一例として、下治具支持部220の係止部223の下面223aの高さ位置は、下治具支持部220の本体部221上に下治具130Aを載置した際に、下治具130Aの切り欠き134の上面134aの高さ位置よりもわずかに高くなるように設定される。また、脚部222の長さは、本体部211と係止部213の上面213aの位置関係に応じて設定され得る。係止部223の形状は、例えば図6(a)に示すように、切り欠き134に対応した形状とされていてもよい。また、係止部223は、切り欠き134と同様に、分離プレート140Aの一対の面140d,140eに沿って延びて形成されていてもよい。
【0054】
駆動部250は、プレート支持部210Aおよび下治具支持部220の少なくとも一方を積層鉄心1における積層体10の積層方向(ここでは、上下方向)に移動させる機能を有る。一例として、分離装置200Aでは、下治具支持部220の積層方向のうちの一方向への移動を規制させて、プレート支持部210Aを上記一方向へ移動させる場合について説明するがこの方式には限定されない。
【0055】
上記の分離装置200Aでは、分離プレート140Aに載置された状態の積層鉄心1(樹脂固定後の積層体10)に対して、下治具130Aを相対的に移動させる際には、以下の動作を行う。まず、図6(a)に示すように、下治具130Aの2つの切り欠き134の上面134aに対して、下治具支持部220の係止部223の下面223aが当接するようにして、下治具130に対して下治具支持部220を係止させる。同様に、図6(a)に示すように、分離プレート140Aの2つの切り欠き143の下面143aに対しプレート支持部210Aの係止部213の上面213aが当接するようにして、分離プレート140Aに対してプレート支持部210Aを係止させる。この状態で、例えば、下治具支持部220の上方への移動を規制した状態で、駆動部250によってプレート支持部210Aを上方へ移動させる。これにより、図6(b)に示すように、分離プレート140Aおよび積層鉄心1は、下治具130Aから分離した状態となる。このとき、中心孔10a内においても、積層鉄心1と下治具130Aとが分離された状態となり、下治具130Aに対して積層鉄心1がスムーズに移動することが可能となる。分離プレート140Aの下端よりも、下治具130Aの上端が下方となるまで分離プレート140Aおよび積層鉄心1を移動させると、分離プレート140Aおよび積層鉄心1を下治具130Aに対して自由に移動させることが可能となる。
【0056】
なお、2つの切り欠き143が、図5(b)に示すように分離プレート140Aの一対の面140d,140eに沿って平行に延びている場合、プレート支持部210Aを一対の面140d,140eの延在方向に沿ってスライドさせることで、係止部213を切り欠き143に対して簡単に係止することができる。同様に、2つの切り欠き134が、分離プレート140Aの一対の面140d,140eに沿って平行に延びている場合、下治具支持部220を一対の面140d,140eの延在方向に沿ってスライドさせることで、係止部223を切り欠き134に対して簡単に係止することができる。
【0057】
なお、プレート支持部210Aおよび下治具支持部220の構造は適宜変更することができる。例えば、プレート支持部210Aについては、脚部212または係止部213を本体部211に対して移動可能な構成とし、切り欠き143に対して係止部213を係止させる構成としてもよい。この場合、プレート支持部210Aについて「一方向への移動を規制する」とは、分離プレート140Aの上記一方向への移動に寄与する係止部213の移動を規制することをいう。このように、プレート支持部210Aの一部のみが移動する場合には、分離プレート140Aの上記一方向への移動を規制するように、プレート支持部210Aの動作可能な部分の少なくとも一部の動作が規制されてもよい。また、1つのプレート支持部210Aが一対の脚部212および係止部213を有することに代えて、1つの脚部212および係止部213を有するプレート支持部を2つ準備し、これらを独立して移動させる構成としてもよい。
【0058】
また、切り欠き143の形状も適宜変更できる。切り欠き143の形状等に応じて、係止部213を係止するためのプレート支持部210Aの形状および動作は変更される。なお、上記のプレート支持部210Aに係る変更例は、下治具支持部220にも適用することができる。
【0059】
また、上記の説明では、下治具支持部220によって下治具130Aの移動を規制した状態で、プレート支持部210Aによって分離プレート140Aを移動させる場合について説明したが、移動を規制する部材を変更してもよい。すなわち、プレート支持部210Aの移動を規制することで分離プレート140Aの移動を規制した状態で、駆動部250によって下治具支持部220を移動させることでよって下治具130Aを移動させてもよい。
【0060】
また、上記の説明では、プレート支持部210Aおよび下治具支持部220のいずれについても、切り欠きに対して係止部を係止させることで、対象となる分離プレート140Aおよび下治具130Aを支持する場合について説明した。ただし、下治具を下治具支持部によって支持するための構成、および、分離プレートをプレート支持部によって支持するための構成は、切り欠きに限定されない。例えば、上述の切り欠き134,143に代えて、側面に開口を設けて、棒状部材を挿入して固定する等の構成としてもよい。そのほか、吸盤、電磁石、鍵形状の部材等を用いて、下治具を下治具支持部によって支持するための構成、および、分離プレートをプレート支持部によって支持するための構成を実現してもよい。
【0061】
さらに、上述の方法と別の方法で分離プレートまたは下治具を支持してもよい。例えば、切り欠きを有していない分離プレート140の底面および上面をプレート支持部210Aによって把持することで、分離プレート140を支持する構成としてもよい。また、切り欠きを有していない分離プレート140の底面をプレート支持部210Aによって支持することで、分離プレート140を支持する構成としてもよい。また、切り欠きを有していない下治具130のベース部131の底面および上面、または側面等を下治具支持部220によって把持することで、下治具130Aを支持する構成としてもよい。また、切り欠きを有していない下治具130のベース部131の底面を下治具支持部220によって支持することで、下治具130を支持する構成としてもよい。このように、分離プレートまたは下治具を支持する方法は適宜変更することができる。分離プレートまたは下治具を支持する方法を変更した場合でも、上述の相対的な移動は実現することができる。
【0062】
[分離装置:第2の構成例]
図7は第2の構成例に係る分離装置200Bを説明する図である。
【0063】
分離装置200Bでは、分離プレート140を下治具130Bの下方から支持するプレート支持部210Bと、分離プレート140が支持された状態で下治具130Bを下方へ押し込む下治具押圧部230(下治具支持部)と、駆動部250と、を有する。下治具押圧部230は、後述の突起部232が下治具130Bを押圧支持するため、積層方向に沿って下治具130Bを実質的に支持する下治具支持部として機能する。なお、図7(b)では、駆動部250を省略している。
【0064】
分離プレート140は、図2図3(b)等に示す分離プレート140と同様の形状とされている。一方、下治具130Bについては、下治具130,130Aと比べて形状を変更している。
【0065】
図7(a)では、分離装置200Bの下治具130Bおよび分離プレート140を示している。また、分離プレート140上に積層鉄心1(樹脂固定後の積層体10)が載置された状態を示している。
【0066】
プレート支持部210Bは、分離プレート140および下治具130Bの下方に設けられる本体部211と、本体部211から上方へ延びる複数のピン214と、を含んで構成される。プレート支持部210Bは、例えば、駆動部250等の駆動によって、水平方向および上下方向に移動可能であってもよい。
【0067】
本体部211は、下治具130Bの下方に設けられる。複数のピン214は、本体部211の上面から上方に延びるように複数設けられる(図7(a)では、2つのピン214を示している)。ピン214の上端は、分離プレート140を支持する。このような構成が実現されるように、下治具130Bには、ピン214の配置に対応して複数の貫通孔135が設けられる。複数のピン214は、それぞれ貫通孔135に挿通されて、その上端が下治具130B上の分離プレート140の下面140bに当接するように設置される。ピン214の数、形状、および配置は、分離プレート140を安定して支持可能であれば特に限定されない。
【0068】
下治具130Bのポスト部132の上面には、後述の下治具押圧部230の凸部236に対応した凹部136が設けられていてもよい。
【0069】
下治具押圧部230は、下治具130Bおよび分離プレート140の上方に設けられるベース部231と、ベース部231の下面から下方に突出する突起部232とを有する。下治具押圧部230は、例えば、駆動部250等の駆動によって、水平方向および上下方向に移動可能であってもよい。
【0070】
突起部232は、積層鉄心1における積層体10の中心孔10aに対応する位置に設けられる。すなわち、突起部232は、下治具130Bのポスト部132に対向し、積層鉄心1における積層体10の積層方向から見たときに、ポスト部132と重なる位置に設けられる。突起部232は、下治具130Bを押圧する押圧具としての機能を有する。突起部232は、中心孔10aに対して挿入可能な形状および大きさとされる。突起部232の高さ(ベース部231からの下方向への突出長さ)は、例えば、下治具130Bのポスト部132の高さと一緒であってもよいが、少なくとも突起部232の一部が中心孔10aに挿通可能な長さであって、積層鉄心1と下治具130Bとの相対位置が変化することが可能な程度とされていえばよい。突起部232は、例えば、積層鉄心1における積層体10の中心孔10aおよび突条10bに対応した形状とされていてもよい。
【0071】
突起部232の先端面(下方端面)には、凸部236が設けられていてもよい。凸部236は、ポスト部132に設けられた凹部136に対して嵌合可能とされていてもよい。
【0072】
上記の分離装置200Bでは、分離プレート140に載置された状態の積層鉄心1に対して、下治具130Bを相対的に移動させる前に、図7(a)に示すように、駆動部250によってプレート支持部210Bのピン214を分離プレート140に対して当接させる。これにより、プレート支持部210Bによって分離プレート140が支持される状態となる。駆動部250がプレート支持部210Bの下方への移動を規制することで、分離プレート140は下方への移動が規制される。この状態で、例えば、駆動部250によって下治具押圧部230を上方から下方へ移動させて、突起部232が積層鉄心1における積層体10の中心孔10aに挿入されるまで、下治具130Bのポスト部132を押し込む。これにより、図7(b)に示すように、下治具130Bが下方へ移動し、分離プレート140および積層鉄心1は、下治具130Bから分離した状態となる。このとき、中心孔10a内においても、積層鉄心1と下治具130Bとが分離された状態となり、下治具130Bに対して積層鉄心1がスムーズに移動することが可能となる。分離プレート140の下端よりも下治具130Bの上端が下方となるまで、下治具130Bを移動させると、分離プレート140および積層鉄心1を下治具130Bに対して自由に移動させることが可能となる。
【0073】
また、凸部236および凹部136が設けられて、これらが嵌合可能とされている場合、下治具押圧部230をポスト部132に対して適切な位置に位置合わせすることができるため、下治具押圧部230の押圧によってポスト部132が積層鉄心1に対して干渉する方向に移動することが防がれる。
【0074】
なお、プレート支持部210Bおよび下治具押圧部230の構造は適宜変更することができる。例えば、プレート支持部210Bについては、分離プレート140を下方から支持することによって下方への移動を規制することができればよく、ピン214とは異なる形状の突起等を利用して分離プレート140を支持する構成であってもよい。また、下治具押圧部230を移動させることに代えて、下治具押圧部230によって下治具130Bの移動を規制した状態で、駆動部250によってプレート支持部210Bを移動させることによって、分離プレート140および積層鉄心1と、下治具130Bとの相対位置を変更してもよい。また、ポスト部132に対する下治具押圧部230の位置合わせを適切に行うことが可能な範囲で、凸部236および凹部136の形状も適宜変更することができる。また、分離装置200Bとしては示していないが、分離プレート140および積層鉄心1から分離された下治具130Bを下方で支持するための支持部材を別途有していてもよい。
【0075】
[分離装置:第3の構成例]
図8は第3の構成例に係る分離装置200Cを説明する図である。
【0076】
分離装置200Cは、第1の構成例のプレート支持部210Aと同様に、積層鉄心1(樹脂固定後の積層体10)が載置された分離プレート140Aを上方から支持するプレート支持部210Cと、分離プレート140Aが支持された状態で下治具130Cを下方へ押し込む下治具押圧部230A(下治具支持部)と、駆動部250と、を有する。下治具押圧部230Aは、後述の突起部232が下治具130Cを押圧支持するため、積層方向に沿って下治具130Cを実質的に支持する下治具支持部として機能する。なお、図8(b)では、駆動部250を省略している。
【0077】
分離プレート140Aは、図5図6等に示す分離プレート140Aと同様の形状とされている。すなわち、分離プレート140Aは、外周部分に設けられた2つの切り欠き143を有している。一方、下治具130Cは、図2図4等に示す下治具130と同様の形状とされている。すなわち、下治具130Cは、ベース部131とポスト部132とを有している。ただし、下治具130Cのベース部131の形状は、平面視において、分離プレート140Aのうち切り欠き143が設けられていない領域に対応する形状とされている。すなわち、上下方向で見たときに、分離プレート140Aの切り欠き143の壁面(上下方向に延びる面)に対して連続する側面を有するように、下治具130Cの側面形状(特に、切り欠き143が設けられている面の形状)が設計され得る。
【0078】
プレート支持部210Cは、図6に示すプレート支持部210Aと略同様の形状をしている。すなわち、プレート支持部210Cは、分離プレート140Aおよび下治具130Cの上方に設けられる本体部211と、本体部211から下方へ延びる一対の脚部212と、一対の脚部212それぞれから延びる一対の係止部213と、を含んで構成される。なお、プレート支持部210Cは、本体部211には上下方向に本体部211を貫通する貫通孔215が設けられている。この貫通孔215は、後述の下治具押圧部230Aの突起部232に対応した大きさとされていて、突起部232が上下方向に挿通可能とされている。
【0079】
下治具押圧部230Aは、下治具130C、分離プレート140A、および、プレート支持部210Cの上方に設けられるベース部231と、ベース部231の下面から下方に突出する突起部232とを有する。突起部232は、下治具130Cを押圧する押圧具としての機能を有する。なお、突起部232の高さ(ベース部231からの下方向への突出長さ)は、貫通孔215を挿通可能となるように長くされていてもよい。
【0080】
駆動部250は、プレート支持部210Cおよび下治具押圧部230Aの少なくとも一方を積層鉄心1の積層方向(ここでは、上下方向)に移動させる機能を有る。一例として、分離装置200Cでは、プレート支持部210Cの積層方向のうちの一方向に沿った移動を規制させて、下治具押圧部230Aを上記一方向に沿って移動させる場合について説明するがこの方式には限定されない。
【0081】
上記の分離装置200Cでは、分離プレート140Aに載置された状態の積層鉄心1(樹脂固定後の積層体10)に対して下治具130Cを相対的に移動させる前に、図6(a)に示すように、分離プレート140Aの2つの切り欠き143に対してプレート支持部210Cの係止部213を係止させる。このとき、下治具130Cのベース部131が切り欠き143を考慮した形状(平面視において、分離プレート140Aのうち切り欠き143が設けられていない領域に対応する形状)となっているので、係止部213がプレート支持部210Cに対して干渉することが防がれる。
【0082】
ここで、例えば、プレート支持部210Cの下方への移動を規制した状態で、駆動部250によって下治具押圧部230Aを下方へ移動させる。駆動部250は、下治具押圧部230Aの突起部232が積層鉄心1における積層体10の中心孔10aに挿入されるまで、下治具130Cのポスト部132を押し込む。これにより、図8(b)に示すように、下治具130Cが下方へ移動する。この動作を継続することで、分離プレート140Aおよび積層鉄心1は、下治具130Cから分離した状態となる。このとき、中心孔10a内において積層鉄心1と下治具130Cとが分離された状態となり、下治具130Cに対して積層鉄心1がスムーズに移動することが可能となる。分離プレート140Aの下端よりも下治具130Cの上端が下方となるまで、下治具130Cを移動させると、分離プレート140Aおよび積層鉄心1を下治具130Cに対して自由に移動させることが可能となる。
【0083】
なお、プレート支持部210Cおよび下治具押圧部230Aの構造を適宜変更することができる点は、他の構成例と同様である。また、下治具押圧部230Aを移動させることに代えて、下治具押圧部230Aによって下治具130Cの移動を規制した状態で、駆動部250によってプレート支持部210Cを移動させることによって、分離プレート140Aおよび積層鉄心1と、下治具130Cとの相対位置を変更してもよい。また、分離装置200Cとしては示していないが、分離プレート140Aおよび積層鉄心1から分離された下治具130Cを下方で支持するための支持部材を別途有していてもよい。
【0084】
[分離装置:第4の構成例]
図9は第4の構成例に係る分離装置200Dを説明する図である。
分離装置200Dは、第2の構成例と比べて、プレート支持部210Dの形状が変更されている。また、この形状変更に対応させて分離プレート140Aが採用され、さらに、下治具130Dの形状が変更される。
【0085】
分離装置200Dでは、分離プレート140Aを下治具130Bの下方から支持するプレート支持部210Dと、分離プレート140Aが支持された状態で下治具130Dを下方へ押し込む下治具押圧部230(下治具支持部)と、駆動部250と、を有する。下治具押圧部230は、後述の突起部232が下治具130Dを押圧支持するため、積層方向に沿って下治具130Dを実質的に支持する下治具支持部として機能する。なお、図9(b)では、駆動部250を省略している。
【0086】
分離プレート140Aは、図5図6等に示す分離プレート140Aと同様の形状とされている。すなわち、分離プレート140Aは、外周部分に設けられた2つの切り欠き143を有している。一方、下治具130Dは、図2図4等に示す下治具130と同様の形状とされている。すなわち、下治具130Dは、ベース部131とポスト部132とを有している。ただし、下治具130Dのベース部131の形状は、平面視において、分離プレート140Aのうち切り欠き143が設けられていない領域に対応する形状よりも小さくされている。具体的には、図9(a)に示すように、分離プレート140Aの切り欠き143の下方におけるベース部131の側面131bは、平面視において切り欠き143よりも内側(中心軸Ax側)に設けられる。図9(a)に示す形状は一例であり、ベース部131の側面131bは、平面視において切り欠き143とは重ならない位置に設けられていればよい。
【0087】
プレート支持部210Dは、分離プレート140Aおよび下治具130Dの下方に設けられる本体部211と、本体部211から上方へ延びる一対の脚部216と、を含んで構成される。プレート支持部210Dは、例えば、駆動部250等の駆動によって、水平方向および上下方向に移動可能であってもよい。
【0088】
本体部211は、下治具130Dの下方に設けられる。一対の脚部216は、本体部211の上面から上方に延びるように設けられる。脚部216は、分離プレート140Aの切り欠き143に対応する位置に設けられる。脚部216の上端216a(上面および側面の上端部)は、切り欠き143に対応する形状とされ、切り欠き143と当接する。この状態で、脚部216は、分離プレート140Aを支持可能とされる。なお、一対の脚部216それぞれが、一対の切り欠き145の少なくとも一部に対して当接していればよい。ただし、当接する領域が広く確保されたほうが、分離プレート140Aを安定して支持することができる。
【0089】
下治具押圧部230は、下治具130Dおよび分離プレート140Aの上方に設けられるベース部231と、ベース部231の下面から下方に突出する突起部232とを有する。突起部232は、下治具130Dを押圧する押圧具としての機能を有する。
【0090】
駆動部250は、プレート支持部210Dおよび下治具押圧部230の少なくとも一方を積層鉄心1の積層方向(ここでは、上下方向)に移動させる機能を有る。一例として、分離装置200Dでは、プレート支持部210Dの積層方向のうちの一方向に沿った移動を規制させて、下治具押圧部230を上記一方向に沿って移動させる場合について説明するがこの方式には限定されない。
【0091】
上記の分離装置200Dでは、分離プレート140Aに載置された状態の積層鉄心1に対して、下治具130を相対的に移動させる前に、図9(a)に示すように、駆動部250によってプレート支持部210Dの脚部216の上端216aを分離プレート140Aの切り欠き143に対して当接させる。これにより、プレート支持部210Dによって分離プレート140Aが支持される状態となる。駆動部250がプレート支持部210Dの下方への移動を規制することで、分離プレート140Aは下方への移動が規制される。この状態で、例えば、駆動部250によって下治具押圧部230を上方から下方へ移動させて、突起部232が積層体10の中心孔10aに挿入されるまで、下治具130Dのポスト部132を押し込む。この結果、図9(b)に示すように、下治具130Dが下方へ移動する。これにより、分離プレート140Aおよび積層鉄心1は、下治具130Dから分離した状態となる。このとき、中心孔10a内において、積層鉄心1と下治具130Dとが分離された状態となり、下治具130Dに対して積層鉄心がスムーズに移動することが可能となる。分離プレート140Aの下端よりも下治具130Dの上端が下方となるまで、下治具130Dを移動させると、分離プレート140Aおよび積層鉄心1を下治具130Dに対して自由に移動させることが可能となる。
【0092】
なお、プレート支持部210Dおよび下治具押圧部230の構造を適宜変更することができる点は、他の構成例と同様である。また、下治具押圧部230を移動させることに代えて、下治具押圧部230によって下治具130Dの移動を規制した状態で、駆動部250によってプレート支持部210Dを移動させることによって、分離プレート140Aおよび積層鉄心1と、下治具130との相対位置を変更してもよい。また、分離装置200Dとしては示していないが、分離プレート140Aおよび積層鉄心1から分離された下治具130Dを下方で支持するための支持部材を別途有していてもよい。
【0093】
[作用]
以上の例によれば、分離装置200(200A,200B,200C,200D)によって、下治具130(130A,130B,130C,130D)と、積層鉄心1および分離プレート140(140A)と、のいずれか一方については積層体10の打抜部材Wの積層方向の一方向(例えば、上方または下方)への移動が規制され、他方については上記一方向へ移動される。この結果、下治具130と、積層鉄心1および分離プレート140とは、積層体10の打抜部材Wの積層方向に相当する上下方向に沿って相対的に移動される。この結果、下治具130と積層鉄心1とが分離される。したがって、積層鉄心1の製造時に下治具が積層鉄心1(特に積層体10)に負荷を与えることによって変形すること等が防がれるため、積層鉄心1を寸法精度よく製造することが可能となる。
【0094】
積層鉄心1の中心孔10aに設けられる突条10b(キー)は、規格等によって寸法が指定されていることが多い。また、回転子に用いられる積層鉄心1の場合、中心孔10aに対してシャフトが取り付けられることからも、中心孔10a自体の寸法精度に対しても高い要求が存在し得る。一方、樹脂注入装置では、下治具が中心孔10a内に挿入された状態で樹脂固定が行われるため、樹脂固定後に下治具130を中心孔10aから取り外すことが必要である。この際に、下治具130を中心孔10aまたは突条10bから取り外す際に中心孔10aに対して負荷がかかるため、積層体10が変形する可能性があり、寸法精度に影響する可能性がある。積層鉄心1の中心孔10aに設けられる突条10bの形状が複雑になるほど、この中心孔10aへの負荷は増大する可能性がある。これに対して、上記の例によれば、分離プレート140を支持した状態で、駆動部250によって下治具支持部(下治具支持部220または下治具押圧部230,230A)およびプレート支持部210(210A,210B,210C,210D)の積層方向のうちの一方向への移動を制御することで、分離プレート140および積層鉄心1(樹脂固定後の積層体10)を下治具130に対して相対的に移動させる。これにより、従来は積層体10の、特にキー部に集中してかかっていた負荷を、分離プレート140にも分散することができる。そのため、突条10bの形状が複雑になった場合であっても、中心孔10aおよび突条10bの変形を抑制することができ、高い寸法精度で積層鉄心を製造することができる。
【0095】
以上の例で説明した分離装置200及び分離装置200による積層鉄心1の製造方法では、駆動部250によって下治具支持部およびプレート支持部210のいずれか一方について積層方向のうちの一方向に沿った移動を規制しながら、他方を上記一方向に沿って移動させている。このため、例えば、積層鉄心1の中心孔10a内での下治具130のポスト部132の相対的な移動が困難であるような場合であっても、一方の部材の移動を規制しながら他方の部材を移動させる構成とすることで、分離プレート140および積層鉄心1の下治具130に対する相対的な移動をより確実に行うことができ、積層鉄心1の損傷等の種々のリスクを低減することができる。
【0096】
また、上記の分離装置200A及び分離装置200Aによる積層鉄心1の製造方法では、分離プレート140の貫通孔141内に、積層体10の突条10bに対応する4つの凸部142が形成されている。このような構成の場合、分離プレート140が突条10bの下方にも設けられることになるため、突条10bが受ける負荷を分離プレート140に対して適切に分散させることができる。
【0097】
図10では、積層体10を下治具130に対して取り付けた状態での積層体10の中心孔10a、下治具130のポスト部132及び分離プレート140の貫通孔141の位置関係を示している。分離プレート140は積層体10の下方に配置されるため、貫通孔141は隠れ線(破線)で示している。図10に示すように、上記の分離装置200Aでは、平面視において、下治具130のポスト部132は、積層体10の中心孔10aに対して相似かつ小さい形状であり、ポスト部132と積層体10の距離D1は、積層体10のキー部(突条10b)の寸法精度を満たす範囲である。このような構成にすることにより、キー部の精度を確保しつつ、下治具130のポスト部132と積層体10の中心孔10aとの接触を抑制することができる。したがって、積層体10の中心孔10aの変形を抑制することができる。さらに、平面視において、分離プレート140の貫通孔141は、積層体10の中心孔10aに対して相似かつ大きい形状であり、貫通孔141の内周と中心孔10aの内周との距離D2は、上限として、製造痕(圧痕)が生じない距離の範囲である。このような構成にすることにより、積層体10への製造痕を抑制しつつ、下治具130のポスト部132と分離プレート140の貫通孔141との距離を確保することができる。したがって、下治具130のポスト部132と分離プレート140の貫通孔141が接触することを抑制し、積層体10から下治具130を分離する際の負荷を低減することができる。分離プレート140を移動させて、分離を行う場合、分離プレート140に負荷がかかり、分離プレート140に捻じれ等の変形が起き、分離プレート140の貫通孔141がポスト部132に干渉する可能性が高くなる。よって、分離プレート140の貫通孔141とポスト部132の距離D3は、できるだけ大きくなるように構成することが望ましい。
【0098】
また、上記の分離装置200A及び分離装置200Aによる積層鉄心1の製造方法では、下治具支持部220の積層方向のうちの一方向に沿った移動を規制することによって下治具130の移動を規制した状態で、駆動部250によってプレート支持部210Aによって上記一方向に沿って移動させることで分離プレート140を積層方向の上記一方向へ移動させることができる。一方で、分離装置200Aにおいて、プレート支持部210Aによって分離プレート140の積層方向の一方向への移動を規制した状態で、駆動部250によって下治具支持部220を上記一方向へ移動させることで、下治具130を積層方向の上記一方向へ移動させることができる。いずれの場合でも、下治具130と積層体とが相対的に移動するため、これらが適切に分離される。したがって、積層鉄心を寸法精度よく製造することが可能となる。
【0099】
また、分離装置200A及び分離装置200Aによる積層鉄心1の製造方法では、下治具130Aの外周部分に設けられた2つの切り欠き134に対して下治具支持部220の係止部223を係止させることで、下治具支持部220が下治具130Aを支持する。また、分離プレート140Aの外周部分に設けられた2つの切り欠き143に対しプレート支持部210Aの係止部213を係止させることで、プレート支持部210Aが分離プレート140Aを支持する。この場合、切り欠き134,143を利用して下治具130Aまたは分離プレート140Aを垂直に移動させることができ、特に下治具130Aのポスト部132を積層鉄心1から分離させる際の抵抗を下げることができる。
【0100】
なお、一対の切り欠き134,143のように、一対の切り欠きが互いに平行に延びている場合、プレート支持部210Aまたは下治具支持部220を切り欠きの延在方向に沿ってスライドさせることで、一対の係止部を切り欠きに対して簡単に係止させることができる。
【0101】
また、分離プレート140Aが積層鉄心(特に積層体10)の下面全体を支えているため、特にキー部への負荷が大きくなる。これに対して、分離装置200Aでは、下治具130Aに対してこれらを分離する際に、積層鉄心1が受ける負荷を分散することができる。さらに、分離装置200Aでは、係止部213が分離プレート140Aに対して係止する面積、および、係止部223が下治具130に対して係止する面積が大きく確保される。したがって、捻れ等がほぼない状態で、下治具130Aに対して積層鉄心1を分離することができる。
【0102】
また、上記の分離装置200B及び分離装置200Bによる積層鉄心1の製造方法では、押圧具として機能する下治具押圧部230の突起部232がポスト部132を積層方向の一方向に沿って押圧することによって、下治具130Bを積層方向の上記一方向へ移動させる。この場合、押圧具がポスト部を押圧することによって積層体と下治具とを相対的に移動させることができるため、積層体の変形を防ぐことができる。
【0103】
分離装置200Bでは、中心孔10aに挿通されたポスト部132を下治具押圧部230が直接押圧するため、押圧によって積層鉄心1のキー部に捻れが生じることが防がれる。さらに、ピン214の設置場所を適切に設置することで分離プレート140全体の捻れを抑制して分離することができる。
【0104】
また、上記の分離装置200C及び分離装置200Cによる積層鉄心1の製造方法では、下治具押圧部230Aおよびプレート支持部210Cの両方の主要部が、分離プレート140Aおよび積層鉄心1よりも上方に設けられる。そのため、積層鉄心1および分離プレート140Aの下方にスペースを確保することができる。したがって、このスペースを活用することができ、例えば、分離した後の下治具130Cを搬送する装置等を設けることができる。
【0105】
また、上記の分離装置200D及び分離装置200Dによる積層鉄心1の製造方法では、プレート支持部210Dが分離プレート140Aの外側を支持する。そのため、積層鉄心1および分離プレート140Aの下方にスペースを確保することができる。したがって、このスペースを活用することができ、例えば、分離した後の下治具130Dを搬送する装置等を設けることができる。
【0106】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲およびその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0107】
積層鉄心および積層体の形状等は適宜変更され得る。また、積層鉄心が回転子積層鉄心である場合について説明したが、積層鉄心の用途は特に限定されない。また、積層鉄心が固定子積層鉄心であってもよく、この場合は、固定子積層鉄心の金属板同士を連結するかしめの代わりに、固定子積層鉄心の積層方向に貫通する貫通孔に樹脂を充填して、金属板同士を連結する構成であってもよい。また、上述した実施の形態においては、磁石挿入孔に磁石を挿入した後に樹脂を充填する場合について説明したが、磁石挿入孔に樹脂タブレットを投入した後に磁石を挿入して樹脂タブレットを溶融させる構成であってもよい。
【0108】
分離装置200Aで説明した切り欠きの形状は適宜変更され得る。例えば、切り欠きは溝であってもよいし、凹部等であってもよい。例えば、切り欠き143の下面143aが外側に向けて傾斜する構成であってもよい。下面143aが傾斜面であって、その傾斜が中心軸Axに対して線対称である場合、積層鉄心1に係る分離を行う際に、プレート支持部210Aが積層鉄心1および分離プレート140Aに対して中心となるように位置合わせを行うことができる。また、分離プレート140または下治具130に形成された切り欠きの形状に応じて、切り欠きを利用して支持ができるように、プレート支持部210Aまたは下治具支持部220の形状を変更することができる。また、分離プレート140Aまたは下治具130Aのいずれか一方のみに切り欠きが用いられていてもよい。
【0109】
なお、分離装置200と樹脂注入装置100は一体的に構成されていてもよい。すなわち、樹脂注入装置100において積層体の樹脂固定を行った後、上型120を取り外した後に、分離装置200で用いられる各支持部を用いて積層体および分離プレートと下治具との分離を行う構成としてもよい。
【0110】
[他の例]
例1.積層鉄心の製造方法の一例は、分離プレートと、中心孔を有する金属板を積層方向に積層した積層体と、を下治具に対して取り付けた状態で積層体に対する樹脂固定を行うことと、積層体を下治具から分離することと、を含み、下治具は、ベース部と、ベース部から突出し、積層体の中心孔に対して挿入可能なポスト部と、を有し、樹脂固定を行うことにおいて、分離プレートがベース部と積層体との間に配置されるとともに、積層体の中心孔と分離プレートに設けられた貫通孔とに対してポスト部が挿通された状態で樹脂固定を行い、分離することにおいて、分離プレートを支持した状態で、分離プレートまたは下治具のいずれか一方について積層方向のうちの一方向に沿った移動を規制しながら、他方を一方向に沿って移動させてもよい。この場合、分離プレートを支持した状態で、分離プレートまたは下治具のいずれか一方について積層方向のうちの一方向に沿った移動を規制しながら、他方を一方向に沿って移動させることによって、下治具と積層体とが分離される。したがって、積層鉄心の製造時に下治具が積層体に負荷を与えることによって変形すること等が防がれるため、積層鉄心を寸法精度よく製造することが可能となる。また、積層体に触れることなく下治具を分離することができるため、積層体の変形を防ぐことができる。
【0111】
例2.例1に記載の方法において、平面視において、下治具のポスト部は、積層体の中心孔より小さく、分離プレートの貫通孔は、積層体の中心孔より大きくてもよい。平面視において、下治具のポスト部を、積層体の中心孔より小さくすることで、下治具のポスト部と積層体の中心孔との接触を抑制することができるため、積層体の中心孔の変形を抑制することができる。また、平面視において、分離プレートの貫通孔を、積層体の中心孔より大きくすることで、下治具のポスト部と分離プレートの貫通孔との距離を確保することができるため、下治具のポスト部と分離プレートの貫通孔が接触することを抑制し、積層体から下治具を分離する際の負荷を低減することができる。
【0112】
例3.例2に記載の方法において、平面視において、分離プレートの貫通孔は、積層体の中心孔と相似形状であってもよい。この場合、分離プレートが下治具のポスト部と干渉することがより確実に防がれる。さらに、分離プレートの貫通孔141の内周と積層体10の中心孔10aの内周が離れすぎることがないため、積層体10への製造痕を防ぐことができる。
【0113】
例4.例1〜3のいずれかに記載の方法において、分離することにおいて、下治具の移動を規制した状態で、分離プレートを一方向へ移動させてもよい。下治具の移動を規制した状態で分離プレートを一方向へ移動させることで、分離プレートおよび積層体を下治具に対して相対的に移動させることができる。
【0114】
例5.例4に記載の方法において、分離プレートは、外周部分に切り欠きを有し、分離プレートを支持するプレート支持部は、切り欠きに対して係止する係止部を有し、分離することにおいて、係止部が前記切り欠きに対して係止した状態で、分離プレートを一方向へ移動させてもよい。この場合、切り欠きを利用してプレート支持部が分離プレートを適切に支持することができる。
【0115】
例6.例1〜3のいずれかに記載の方法において、分離することにおいて、分離プレートの移動を規制した状態で、下治具を一方向へ移動させてもよい。分離プレートの移動を規制した状態で下治具を一方向へ移動させることで、分離プレートおよび積層体を下治具に対して相対的に移動させることができる。
【0116】
例7.例6に記載の方法において、下治具を支持する下治具支持部は、下治具のポスト部と対向し、前記積層方向から見たときにポスト部と重なる位置に設けられた押圧具を有し、分離することにおいて、押圧具がポスト部を一方向に沿って押圧した状態で、下治具支持部を一方向へ移動させてもよい。この場合、押圧具がポスト部を押圧することによって積層体と下治具とを相対的に移動させることができるため、積層体の変形を防ぐことができる。
【0117】
例8.例6に記載の方法において、下治具は、外周部分に切り欠きを有し、下治具を支持する下治具支持部は、切り欠きに対して係止する係止部を有し、分離することにおいて、係止部が切り欠きに対して係止した状態で、下治具支持部を一方向へ移動させてもよい。この場合、切り欠きを利用して下治具支持部が下治具を適切に支持することができる。
【0118】
例9.積層鉄心の製造装置の一例は、分離プレートと、中心孔を有する金属板を積層方向に積層した積層体と、を下治具に対して取り付けた状態で積層体に対する樹脂固定を行った後に、積層体を下治具から分離するための積層鉄心の製造装置であって、下治具は、ベース部と、ベース部から突出し、積層体の中心孔に対して挿入可能なポスト部と、を含み、分離プレートがベース部と積層体との間に配置されるとともに、積層体の中心孔と分離プレートに設けられた貫通孔とに対してポスト部が挿通された状態で樹脂固定が行われ、分離プレートを支持するプレート支持部と、下治具を支持する下治具支持部と、プレート支持部および下治具支持部のいずれか一方について積層方向のうちの一方向に沿った移動を規制しながら、他方を一方向に沿って移動させる駆動部と、を有してもよい。この場合、例1の方法と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0119】
1…積層鉄心、10…積層体、10a…中心孔、100…樹脂注入装置、131,231…ベース部、123…凹部、135,141…貫通孔、130…下治具(130A,130B)、130A,130B…下治具、132…挿通ポスト(ポスト部)、134,143…切り欠き、140…分離プレート(140A)、140A…分離プレート、200…分離装置(製造装置)、210A,210B,210C,210D…プレート支持部、213,223…係止部、220…下治具支持部、230,230A…下治具押圧部(下治具支持部)、250…駆動部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10