【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の側面は、穴あけ方法であって、
加工テーブルに設置された複数の加工対象穴を有する対象物に対して、第1主軸で加工する第1穴と、前記第1主軸とX方向に並んで配置される第2主軸で加工する第2穴の加工順を作成し、
前記第1穴と前記第2穴を結ぶ第1の直線と、前記第1主軸の中心と前記第2主軸の中心とを結ぶ第2の直線が平行に、かつ、前記第1穴が前記第1主軸側に位置するように、回転テーブルを前記加工テーブルに対して回転し、
前記第1の直線と前記第2の直線が一致するように、前記回転テーブルを前記加工テーブルに対して相対的に移動させ、
前記第1穴と前記第1主軸の中心、および、前記第2穴と前記第2主軸の中心がそれぞれ一致するように、前記第1主軸及び前記第2主軸を前記回転テーブルに対して相対的に移動させ、
前記第1主軸が前記第1穴を加工し、前記第2主軸が前記第2穴を加工する。
【0005】
本発明の第2の側面は、穴あけ機であって、
Y方向に延びるY直線ガイドと、
前記Y直線ガイドに設置され、前記Y方向に移動可能な加工テーブルと、
前記加工テーブルを跨いで固定された門型コラムと、
前記門型コラムの上部に配置され、Z方向の周りに回転する回転テーブルと、
前記回転テーブルに設置され、X方向に延びるX直線ガイドと、
Z方向に移動可能な第1主軸であって、前記X直線ガイドに沿って前記X方向に移動可能な第1主軸と、
Z方向に移動可能な第2主軸であって、前記X直線ガイドに沿って前記X方向に移動可能な第2主軸と、
制御装置であって、
前記回転テーブルの回転中心に対する、複数の対象穴の穴座標を記憶する記憶装置と、
前記穴座標に基づいて、前記第1主軸で加工する第1穴と、前記第2主軸で加工する第2穴の加工順を作成する加工順作成部と、
前記加工順に、前記第1主軸が前記第1穴を加工し、前記第2主軸が前記第2穴を加工する加工プログラムを作成するプログラム作成部と、
前記加工プログラムに従って、前記第1穴と前記第2穴が前記X方向に並び、かつ、前記第1穴が前記第1主軸側に位置するように、前記回転テーブルを回転し、前記第1主軸が前記第1穴を加工し、前記第2主軸が前記第2穴を加工するように、前記加工テーブル、前記回転テーブル、前記第1主軸、及び前記第2主軸を数値制御する数値制御部と、
を有する制御装置、を有する。
【0006】
本発明の第3の側面は、穴あけ機であって、
加工テーブルと、
前記加工テーブルの両側に配置され、Y方向に延びる一組のY直線ガイドと、
前記一組のY直線ガイドに設置され、前記Y方向に移動可能な門型コラムと、
前記門型コラムの上部に配置され、Z方向の周りに回転する回転テーブルと、
前記回転テーブルに設置され、X方向に延びるX直線ガイドと、
Z方向に移動可能な第1主軸であって、前記X直線ガイドに沿って前記X方向に移動可能な第1主軸と、
Z方向に移動可能な第2主軸であって、前記X直線ガイドに沿って前記X方向に移動可能な第2主軸と、
制御装置であって、
前記回転テーブルの回転中心に対する、複数の対象穴の穴座標を記憶する記憶装置と、
前記穴座標に基づいて、前記第1主軸で加工する第1穴と、前記第2主軸で加工する第2穴の加工順を作成する加工順作成部と、
前記加工順に、前記第1主軸が前記第1穴を加工し、前記第2主軸が前記第2穴を加工する加工プログラムを作成するプログラム作成部と、
前記加工プログラムに従って、前記第1穴と前記第2穴が前記X方向に並び、かつ、前記第1穴が前記第1主軸側に位置するように、前記回転テーブルを回転し、前記第1主軸が前記第1穴を加工し、前記第2主軸が前記第2穴を加工するように、前記門型コラム、前記回転テーブル、前記第1主軸、及び前記第2主軸を数値制御する数値制御部と、
を有する制御装置、を有する。
【0007】
好ましくは、前記第1主軸および前記第2主軸は、それぞれZ方向に延びる。回転テーブルは、前記第1主軸および前記第2主軸に平行な回転軸の回りに回転する。回転テーブルの回転軸を回転中心という。
【0008】
機械の座標系は直交座標系であり、次のとおりとする。
回転テーブルの回転軸を座標原点として、左右方向にX軸(正面から向かって右方向を正)を、加工テーブルの前後方向にY軸(前方向を正)を、上下方向にZ軸(上方向を正)を、回転テーブルの回転軸の回りの回転方向にC軸(上方から見て時計回りを正)をとる。第1主軸のX座標、Y座標、Z座標をそれぞれx1、y1、z1という。第2主軸のX座標、Y座標、Z座標をそれぞれx2、y2、z2という。一組の穴を同時に穴あけ加工する時は常にy1=y2であり、単にyと表記する場合もある。
穴座標については、回転中心が原点にあるようにワーク38を設置したときに、ワーク38上の各穴のX座標をU座標、Y座標をV座標とする。特に、第1穴のX座標値、Y座標値をそれぞれu1、v1、第2穴のX座標値、Y座標値をそれぞれu2、v2と表記する。
座標の単位は直線軸についてはmm、回転軸についてはradとする。
なお、軸名称および単位は自由に変更しても良い。
【0009】
穴あけ機は、加工テーブル、床フレーム、門型コラム、回転テーブル、第1X駆動装置、第2X駆動装置、Y駆動装置及び回転テーブル駆動装置(C駆動装置)を有する。門型コラムは、加工テーブルの両側に配置された一組の支柱と、支柱の上部に配置されたビームを有して良い。回転テーブルは、門型コラムに固定される。X直線ガイドは、回転テーブルに配置される。第1Zユニットおよび第2Zユニットは、X直線ガイドに配置される。Y直線ガイド(Yガイド)は、床フレームに配置される。第1X駆動装置は、X方向に延びてビームに配置され、第1ZユニットをX方向に移動する。第2X駆動装置は、X方向に延びて回転テーブルに配置され、第2ZユニットをX方向に移動する。Y駆動装置は、Y方向に延びて床フレームに配置され、前後サドル(Yサドル)を移動する。C駆動装置は、コラムに配置され、回転テーブルをZ方向を中心として回転させる。数値制御部は、第1X駆動装置、第2X駆動装置、Y駆動装置及び回転テーブル駆動装置(C駆動装置)を数値制御して、第1Zユニット、第2Zユニット、Yサドル、加工テーブルを移動する。
なお、床フレームに固定された加工テーブルと、加工テーブルの両側に配置されたYガイドと、Yガイドに配置された門型の移動コラムを有しても良い。Y駆動装置は、それぞれのYガイドに配置してもよい。Y駆動装置は同期して一つの移動コラムを駆動して良い。
【0010】
第1Zユニットは、第1ボディ、第1Zガイド、第1Zサドル、第1Z駆動装置及び第1主軸ユニットを有する。Zガイド及びZ駆動装置は、Z方向に延びてボディに配置される。Zサドルは、Zガイド上にZ方向に移動可能に配置される。Zサドルは、Zガイド上に上下に移動可能に配置され、主軸ユニットを固定する。第2Zユニットは、第1Zユニットと実質的に同じである。
なお、Zガイドに代えてボールスプライン、又は、スライドガイドとスライドシャフトの組合せを利用しても良い。
【0011】
好ましくは、第1X駆動装置、第2X駆動装置、Y駆動装置、第1Z駆動装置および第2Z駆動装置は、サーボモータ及びボールねじをそれぞれ有する。なお、サーボモータ及びボールねじに代えて、リニアモータを利用しても良い。
なお、Z駆動装置は、エアシリンダとしても良い。
【0012】
好ましくは、回転テーブルの回転と同時に、前記加工テーブルを前記回転テーブルに対して相対的に移動する。より好ましくは、第1穴と第2穴を加工しない範囲における、前記第1主軸および前記第2主軸のZ方向への移動は、回転テーブルの回転と第1主軸及び第2主軸のX方向へ移動と同時に実行される。好ましくは、非加工部分における左右、前後及び回転方向の各軸移動の終了後、第1主軸及び第2主軸を同時に下降してワークを加工する。
【0013】
好ましくは、プログラム作成部が、加工プログラムを作成する。加工プログラムは、記憶装置に記憶される。なお、ユーザーが加工プログラムを作成しても良い。
【0014】
加工順は、好ましくは演算装置によって最適化される。加工順は、好ましくは遺伝的アルゴリズムを用いて決定される。
【0015】
穴座標は、穴番号と共に記憶される。穴座標及び穴番号は、穴座標表に記憶されてよい。加工対象の穴は、それぞれ近接する穴(近接穴)の穴番号(近接穴番号)を共に記憶されてよい。
なお、穴座標は、例えばワーク座標原点からの座標で記憶されても良い。この場合、回転中心からのワーク座標原点の座標を別途記憶する。
【0016】
穴座標は、座標変換部によって、機械座標に変換されてよい。
第1主軸で穴あけする第1穴と、第1穴と同時に第2主軸で穴あけする第2穴の穴座標を、座標変換して、機械座標を得る。まず、第1穴と第2穴を結ぶ直線がU軸となす回転角c1を求める。次に、第1穴と第2穴を結ぶ直線のv軸との切片をY座標とする。第1穴と第2穴を結ぶ直線とv軸との交点と、第1穴との距離を第1穴のX座標の絶対値とする。第1穴と第2穴を結ぶ直線とv軸との交点と、第2穴との距離を第2穴のX座標の絶対値とする。第1穴及び第2穴のX座標の符号は、回転角c1が0以上π/2未満又は3/2π以上2π以下のときは、第1穴及び第2穴のそれぞれのu座標の符号とし、それ以外のときは第1穴及び第2穴のそれぞれのu座標の符号と異なる符号とする。
【0017】
プログラム作成部は、第1穴と第2穴の穴座標を変換して得られた機械座標に基づいて、加工プログラムを作成する。
【0018】
なお、加工プログラムや穴座標をユーザーが入力部又は入出力ポートから入力してもよい。穴座標は、表形式で一括して入力されてよい。穴座標は、座標記憶部に記憶される。
【0019】
好ましくは、目的関数は、個体を加工順で加工するときの、第1主軸と第2主軸のXY平面における位置決め時間の総和に対応する値を示す。言い換えると、目的関数は、非加工時間に対応する値を示す。特に好ましくは、目的関数は、各軸のエアカット時間の総和に対応する値を示す。
主軸のX方向移動量、加工テーブルに対する回転テーブルのY方向移動量、回転テーブルの回転移動量は、各軸の移動時間に対応する。主軸の位置を穴位置に一致させるときに、各軸を同時に最大速度で移動させる場合が多い。望ましくは、評価部は、X方向移動時間に対するテーブルY方向およびテーブル回転方向の移動時間の最大値に対応する移動距離を移動量として演算する。X方向移動時間と各軸の移動量の最大値の総和を適合度とする。
好ましくは、C座標の移動量が2πを超えるとき、座標変換部は、C座標を2πずつ加減して2π以下にする。
第1係数は、第1主軸または第2主軸のサーボパラメータに対するテーブル(Y)移動方向のサーボパラメータの比較値として良い。例えば、第1主軸の加減速の値に対するテーブル(Y)移動方向の加減速の値の倍率として良い。
第2係数は、第1主軸または第2主軸のサーボパラメータに対するテーブル回転軸のサーボパラメータの比較値として良い。例えば、第1主軸の加減速の値に対するテーブル回転軸の加減速の値の倍率として良い。
目的関数は、各軸の移動速度に応じて変更して良い。例えば、直線軸の移動時間が非常に短い場合には、目的関数の値は、テーブル回転方向の移動量の総和として良い。
【0020】
再生においては、エリート選択、ルーレット選択、ランキング選択、トーナメント選択、GENITORアルゴリズム等の代表的な選択方法を利用できる。これらの選択方法を組み合わせて利用しても良い。エリート選択は、例えば、2世代エリート選択である。
再生によって、適合度の小さい個体は増殖し、適合度の大きい個体は死滅する。
【0021】
制限付き選択を好適に利用できる。制限部は、最小距離未満の加工穴の組合せを含む個体を除外する。ここで、最小距離は、第1主軸と第2主軸とが干渉しない最小距離として決定される。制限付き選択は、いずれの選択方法と組み合わせても良い。
好ましくは、制限部は、第1穴と第2穴の組合せ毎に、座標変換された機械座標のX座標の差が最小距離未満の組合せを含む個体を除外する。
【0022】
個体群の中から、一定の割合で交叉させる個体を選択して、交叉する。交叉によって一部が変更された個体群の更に一部を突然変異させて良い。
交叉は、1点交叉又は2点交叉が望ましい。一組の親をランダムに選ぶ。交叉点を1点又は2点ランダムに選ぶ。2点交叉の場合、2つの交叉点の間の穴の順を一組の親の間で交換する。交叉点は、パス表現(path representation)のうちの、ある第1穴および第
2穴の組合せと、次の第1穴および第2穴の組合せとの境とする。
【0023】
遺伝操作部は、個体を突然変異させて新しい個体を生成する突然変異部を含んで良い。
遺伝操作部は、個体群の中から一定の割合でランダムに突然変異させる個体を選択する。突然変異は、例えば次の3つを利用できる。これらを組み合わせて利用しても良い。突然変異は、いずれの交叉方法と組み合わせても良い。
(1)ランダムに選択した2つの加工穴を交換する。
(2)ランダムに選択した2組の穴の組合せを入れ替える。
(3)個体のうちの穴の組合せを一組取り出してその後ろを詰め、ランダムに選んだ穴の組合せの位置に挿入する。
再生、交叉、突然変異によって、次世代の個体群へと進化する。
【0024】
遺伝的アルゴリズムの終了条件は、例えば、あらかじめ設定された世代交代の回数(終了回数)である。決定部は、世代交代数が終了回数に達したときに、適合度が最も小さい個体を加工順として選択する。
【0025】
対象穴の個数は奇数であっても良い。このとき組にしない穴(単独穴)を選択する。単独穴は、第1主軸または第2主軸のいずれか一方で加工される。好ましくは、単独穴は最後に加工される。
好ましくは、個体は第1穴と第2穴の穴番号の組合せと、単独穴の穴番号を加工順に並べて表現される。
単独穴を加工する時の機械座標(x,y)は、X座標及びY座標をそれぞれC座標の関数として、単独穴の穴座標(u,v)に基づいて表される。単独穴の直前の加工順の組合せの機械座標から単独穴の穴座標への移動時間が最小になるように、単独穴のC座標を決定する。望ましくは単独穴を加工する主軸(選択主軸)を、加工時間が最小になるように決定する。例えば、第1主軸で加工する場合の加工時間と、第2主軸で加工する場合の時間の加工時間をそれぞれ演算し、加工時間が最小になるように、単独穴の機械座標及び加工する主軸を決定する。
選択主軸が単独穴を加工するときに、他方の主軸(非選択主軸)のX座標は、選択主軸と非選択主軸の距離が最小距離以上であり、かつ、直前の加工におけるX座標からの非選択主軸の移動量が最小となるように定められる。
奇数の個体表現は、上述のいずれの評価方法、再生方法、交叉方法や突然変異方法と組み合わせても良い。
【0026】
プログラム作成部は、作成された加工順に従って、加工プログラムを作成する。プログラム作成部は、評価部が変換した各軸座標に基づいて数値制御プログラムを作成する。穴座標がZ座標を含む場合、プログラム作成部はZ座標を穴座標記憶部から読み取り、加工プログラムを作成する。Z座標は穴座標と別に記憶されても良い。