【解決手段】実施形態に係る異常検出装置は、乖離検出部と、異常検出部と、通知部とを備える。乖離検出部は、運転者による操舵部材への操舵操作に応じた操舵信号を転舵装置へ出力することで転舵輪が転舵する車両において、操舵操作から算出される算出転舵角と転舵輪における実際の転舵角である実転舵角との乖離を検出する。異常検出部は、転舵装置の異常を検出する。通知部は、乖離検出部によって乖離が検出された場合に、異常検出部によって異常が検出された場合と、異常が検出されなかった場合とで異なる乖離に関する通知を、運転者に対して行う。
運転者による操舵部材への操舵操作に応じた操舵信号を転舵装置へ出力することで転舵輪が転舵する車両において、前記操舵操作から算出される算出転舵角と前記転舵輪における実際の転舵角である実転舵角との乖離を検出する乖離検出部と、
前記転舵装置の異常を検出する異常検出部と、
前記乖離検出部によって前記乖離が検出された場合に、前記異常検出部によって前記異常が検出された場合と、前記異常が検出されなかった場合とで異なる前記乖離に関する通知を、前記運転者に対して行う通知部と、
を備えることを特徴とする異常検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する異常検出装置および異常検出方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。また、以下では、車両Cの一例として、モータによって駆動輪を回転させる電気自動車を例に挙げて説明するが、車両Cは、ハイブリッド自動車等であってもよい。
【0010】
図1Aおよび
図1Bは、実施形態に係る異常検出方法の概要を示す図である。
図1Aに示す車両Cは、車体の左右側に配置され、駆動輪となる2つの前輪FWと、Y軸方向である車幅方向において車体中央に配置され、従動輪となる1つの後輪RWとを有する一人乗り用の三輪型モビリティである。また、後輪RWは、図示しない転舵装置(後述のステアECU3、ステアACT13に対応)によって転舵が制御される転舵輪である。
【0011】
また、車両Cは、運転者DによるステアリングST(操舵部材の一例)への回転操作(操舵操作の一例)に応じた操舵信号を転舵装置へ出力することで転舵輪(後輪RW)が転舵する、いわゆるステアバイワイヤ(以下、SBW)機構を有した車両である。具体的には、転舵装置は、操舵信号に基づいて転舵角を算出し、算出した転舵角で転舵輪を転舵させる。
【0012】
なお、ステアリングSTを操舵部材の一例として挙げたが、これに限定されず、例えば、棒状の部材への傾倒操作によって操舵信号を出力するスティック型や、球体の部材への回転操作によって操舵信号を出力するトラックボール型の操舵部材であってもよい。
【0013】
また、車両Cは、例えば、前輪FWが1つ、後輪RWが2つであってもよく、あるいは、前輪FWが2つ、後輪RWが2つの四輪型の車両であってもよい。また、前輪FWを駆動輪、後輪RWを従動輪としたが、例えば、前輪FWを従動輪、後輪RWを駆動輪としてもよく、前輪FWおよび後輪RW共に駆動輪としてもよい。また、後輪RWを転舵輪としたが、前輪FWを転舵輪としてもよい。
【0014】
また、車両Cは、車幅方向であるY軸方向へ車体を傾倒させるリーンアクチュエータを有し、例えば、旋回時にリーンアクチュエータを駆動し車体を傾かせつつ旋回する。また、車両Cは、2つの前輪FWそれぞれにモータ(いわゆる、インホイールモータ:IWM)が設けられ、前輪FWそれぞれを回転させる。また、2つの前輪FWは、ドライブシャフトのようなハード的機構で結合していないため、それぞれのIWMが独立して駆動することで車両Cの加速・減速を行う。
【0015】
また、
図1Bでは、かかる車両Cの上面視を示している。
図1Bでは、車両Cは停車中であり、転舵輪である後輪RWが、例えば溝にはまったことにより右側を向いて固定された状態であるとする。また、かかる状態で、運転者DがステアリングSTを反時計回りに回転操作したとする。
【0016】
かかる場合、SBW機構を有する車両Cの特性上、ステアリングSTの回転操作から算出される転舵角(以下、算出転舵角)に基づく算出進行方向110と、後輪RWの実際の転舵角(以下、実転舵角)に基づく実進行方向100とが乖離することとなる。
【0017】
ここで、従来の異常検出装置について説明する。従来の異常検出装置は、
図1Bのような状況、つまり、算出転舵角と実転舵角との乖離を異常として検出して、運転者へ通知し、さらに乖離を示す乖離情報を記憶する処理を行うことで、例えば後に故障診断の解析を可能としていた。
【0018】
しかしながら、算出転舵角と実転舵角との乖離は、転舵装置の故障が原因である場合と、転舵装置は正常であるが、後輪が固定されることにより一時的に発生する場合とがある。そして、乖離の原因が後者である場合、転舵装置が故障しているわけではないため、乖離情報が過度に記憶されることとなる。
【0019】
一方で、算出転舵角と実転舵角とが乖離した場合、運転者の安全性が低下するおそれがあるため、転舵装置の故障の有無に関わらず、運転者に対して乖離の発生を通知することが好ましい。
【0020】
そこで、実施形態に係る異常検出方法では、乖離情報の記憶については、転舵装置の異常および算出転舵角と実転舵角との乖離の双方の発生を条件とし、運転者Dへの通知については、乖離の発生のみを条件とした。
【0021】
具体的には、実施形態に係る異常検出装置1は、まず、操舵操作(ステアリングSTへの回転操作)から算出される算出転舵角と転舵輪(後輪RW)における実際の転舵角である実転舵角との乖離を検出する(ステップS1)。つづいて、実施形態に係る異常検出装置1は、転舵装置の異常を検出する。
【0022】
実施形態に係る異常検出装置1は、異常検出の結果、転舵装置の異常が検出されない、つまり転舵装置が正常であった場合(ステップS2−1)、運転者Dに対して乖離に関する通知を行う(ステップS3−1)。
【0023】
一方、実施形態に係る異常検出装置1は、異常検出の結果、転舵装置の異常が検出された場合(ステップS2−2)、運転者Dに対して乖離に関する通知を行うとともに、乖離を示す乖離情報を記憶する(ステップS3−2)。ここでいう乖離情報には、例えば、乖離した際の算出転舵角や実転舵角の情報を含むが、乖離情報の詳細については
図4で後述する。
【0024】
つまり、実施形態に係る異常検出装置1は、算出転舵角と実転舵角との乖離が発生した場合において、転舵装置が異常であれば、運転者Dへ乖離の通知を行いつつ、乖離情報を記憶し、転舵装置が正常であれば、運転者Dへ乖離の通知を行い、乖離情報を記憶しない。従って、運転者Dに対して適切に乖離を通知しつつ、乖離情報が過度に記憶されることを防止できる。
【0025】
なお、実施形態に係る異常検出装置1は、算出転舵角の変化方向である算出転舵向きと実転舵角の変化方向を示す実転舵向きとが車両Cの直進方向を挟んで逆向きであった場合に、乖離を検出できるが、かかる点については、
図5Aおよび
図5Bを用いて後述する。
【0026】
次に、実施形態に係る異常検出装置1を備える車両制御システムSについて説明する。
図2は、実施形態に係る車両制御システムSの構成を示すブロック図である。なお、
図2では、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを機能ブロックで表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0027】
車両制御システムSは、系統A、Bで二重化された2つの制御系統を備える。また、車両制御システムSは、両系統A、Bの電源を制御する電源ECU50を備える。
【0028】
系統Aは、統合ECU1aと、リーンECU2aと、ステアECU3aと、電池ECU4aと、IWMECU5aとを備える。統合ECU1aは、
図1Bにおける異常検出装置1に対応する。
【0029】
統合ECU1aは、系統A全体を制御する。統合ECU1aは、上位ECUであり、リーンECU2a、ステアECU3a、電池ECU4aおよびIWMECU5aは下位ECUである。
【0030】
統合ECU1aは、各ECUにCAN(Controller Area Network)などの車載ネットワークを通じて相互通信可能に接続されている。なお、統合ECU1aは、系統BのリーンECU2b、ステアECU3b、電池ECU4bおよびIWMECU5bにCANなどを通じて相互通信可能に接続されている。
【0031】
また、リーンECU2a、ステアECU3a、電池ECU4aおよびIWMECU5aは、系統Bの統合ECU1bにCANなどを通じて相互通信可能に接続されている。なお、統合ECU1aの詳細な機能ブロックについては後述する。
【0032】
電池ECU4aは、電池14aの劣化を監視する。リーンECU2aは、リーンアクチュエータ(リーンACT)12aを制御することで、車両C(
図1A参照)の旋回を容易にするために、旋回加速度に応じて車体を車幅方向である左右方向に傾倒させるとともに、車両Cが倒れないように車体の左右方向の傾倒状態を適切に保持する。
【0033】
ステアECU3aは、運転者Dのステアリング操作に応じて車両Cが走行するように、ステアアクチュエータ(ステアACT)13aを制御する。
【0034】
IWMECU5aは、運転者Dのアクセル操作またはブレーキ操作に応じて車両Cが加速または制動されるように、車両Cの左前輪FWに設けられたインホイールモータ(IWM)15aを制御する。
【0035】
リーンACT12aは、リーンECU2aからの指示、すなわち指示信号に基づいて車体を左右方向に傾倒させて、例えば、車両Cの旋回時に車体の姿勢を変更する。また、リーンACT12aは、走行路面の凹凸や、傾斜に応じて車体の姿勢を変更する。ステアACT13aは、ステアECU3aからの指示(指示信号)に基づいて後輪RWの転舵角を変更する。
【0036】
IWM15aは、IWMECU5aからの指示(指示信号)に基づいて左前輪FWを回転させ、左前輪FWの回転数を制御する。電池14aは、蓄電池であり、例えば、リチウムイオン電池である。
【0037】
系統Bは、系統Aと同様に、統合ECU1bと、リーンECU2bと、ステアECU3bと、電池ECU4bと、IWMECU5bとを備える。統合ECU1bは、
図1Bにおける異常検出装置1に対応する。
【0038】
系統Bの各構成は、系統Aの各構成と同様の構成であるので、ここでの説明は省略する。なお、IWMECU5bは、運転者Dのアクセル操作またはブレーキ操作に応じて車両Cが加速または制動されるように、車両Cの右前輪FWに設けられたインホイールモータ(IWM)15bを制御する。
【0039】
また、系統Bによって制御されるリーンACT12b、ステアACT13bおよび電池14bの構成は、系統Aによって制御されるリーンACT12a、ステアACT13aおよび電池14aの構成と同様の構成であるので、ここでの説明は省略する。なお、IWM15bは、IWMECU5bからの指示(指示信号)に基づいて右前輪FWを回転させ、右前輪FWの回転数を制御する。
【0040】
また、車両制御システムSは、例えば、フォールトトレラント設計に基づいて上記するように、系統Aと系統Bとで二重化しており、例えば、フォールトトレラント設計に基づいて車両Cの電子制御を50%ずつで分け合うことができる。
【0041】
具体的には、例えば、リーンECU2a、2bは、それぞれのリーンACT12a、12bの出力を50%ずつ受け持ち、両系統A、Bで出力が100%となるように、リーンACT12a、12bを制御する。
【0042】
また、例えば、一方の統合ECU1a、1bに異常が生じても、もう一方の統合ECU1a、1bによる制御で、例えば、車両Cが安全な場所に待避できるまで移動させることができる。
【0043】
以下において、系統A、Bを区別しない場合には、符号「a」、「b」を省略して説明するものとする。例えば、統合ECU1aと統合ECU1bとは、まとめて統合ECU1として説明し、リーンACT12aとリーンACT12bとは、まとめてリーンACT12として説明する。
【0044】
次に、
図3を用いて、統合ECU1に対応する異常検出装置1について説明する。
図3は、実施形態に係る異常検出装置1の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、実施形態に係る異常検出装置1は、操舵角センサ40と、転舵角センサ41と、転舵装置42と、出力装置43とに接続される。
【0045】
操舵角センサ40は、操舵部材に対する運転者Dの操舵操作を検出する。例えば、操舵角センサ40は、ステアリングSTの回転方向および回転角度を操舵操作として検出する。転舵角センサ41は、転舵輪(後輪RW)の実際の転舵角を検出する。
【0046】
転舵装置42は、例えば、ステアECU3およびステアACT13を含んだ装置である。転舵装置42は、例えば、操舵角センサ40が検出する操舵操作に基づいて決定した転舵角で転舵輪を転舵させる。
【0047】
また、転舵装置42は、ステアECU3やステアACT13の異常を検出し、異常検出装置1へ出力する。かかる異常には、例えば、ステアECU3の回路基板の故障や、ステアACT13の動作不良、ステアECU3やステアACT13に接続される通信線の通信途絶等が含まれる。
【0048】
出力装置43は、例えば、スピーカやディスプレイであり、異常検出装置1から出力される情報を音声出力や画面表示によって運転者Dへ通知する。
【0049】
次に、実施形態に係る異常検出装置1について説明する。異常検出装置1は、制御部20と、記憶部30とを備える。制御部20は、乖離検出部21と、異常検出部22と、通知部23と、記憶処理部24とを備える。記憶部30は、乖離情報31を記憶する。
【0050】
ここで、異常検出装置1は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0051】
コンピュータのCPUは、たとえば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部20の乖離検出部21、異常検出部22、通知部23および記憶処理部24として機能する。
【0052】
また、制御部20の乖離検出部21、異常検出部22、通知部23および記憶処理部24の少なくともいずれか一つまたは全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0053】
また、記憶部30は、たとえば、RAMやHDDに対応する。RAMやHDDは、乖離情報31や、各種プログラムの情報等を記憶することができる。なお、異常検出装置1は、有線や無線のネットワークで接続された他のコンピュータや可搬型記録媒体を介して上記したプログラムや各種情報を取得することとしてもよい。
【0054】
乖離情報31は、算出転舵角と転舵角との乖離を示す情報であり、後述する記憶処理部24によって記憶および更新される。ここで、
図4を用いて、乖離情報31について説明する。
【0055】
図4は、乖離情報31の説明図である。
図4に示すように、乖離情報31は、「乖離ID」、「日時」、「乖離値」、「算出転舵角」、「実転舵角」といった項目を含む。
【0056】
「乖離ID」は、検出された乖離を識別する識別情報である。「日時」は、乖離が検出された日時を示す。「乖離値」は、算出転舵角と実転舵角との差分を示す。「算出転舵角」は、乖離が発生した際に検出された算出転舵角を示す。「実転舵角」は、乖離が発生した際に検出された実転舵角を示す。
【0057】
なお、
図4では、「算出転舵角」および「実転舵角」は、車両Cの直進方向120(
図5A参照)に対する角度で表すとともに、変化方向を正負の符号で表す。例えば、「+」は、直進方向120からの変化方向が左方向であることを示し、「−」は、直進方向120からの変化方向が右方向であることを示す。つまり、「+」と「−」とは、直進方向120を挟んでそれぞれ逆向きであることを示す。
【0058】
図4に示す例において、乖離IDが「1」は、「2017/9/5」に発生した乖離であり、その時の乖離値が「16°」で、算出転舵角が直進方向120に対して左方向へ「10°」向き、実転舵角が直進方向120に対して右方向へ「6°」向いたことを示す。
【0059】
なお、乖離情報31は、一例であって、上記以外に、例えば、乖離発生時の車両Cの走行速度や、車両Cの位置情報等が含まれてもよい。
【0060】
異常検出装置1の制御部20は、算出転舵角と実転舵角との乖離を検出するとともに、転舵装置42の異常の有無を検出し、異常検出の結果に基づいて運転者Dへの乖離の通知や乖離情報31の記憶処理を行う。
【0061】
乖離検出部21は、算出転舵角と実転舵角との乖離を検出する。具体的には、乖離検出部21は、まず、操舵角センサ40で検出された操舵操作に基づいて算出転舵角を算出する。
【0062】
例えば、乖離検出部21は、ステアリングSTの回転角度に基づいて算出転舵角を算出する。そして、乖離検出部21は、算出した算出転舵角と転舵角センサ41で実際に検出された実転舵角との関係が所定の乖離条件を満たした場合に、乖離を検出する。
【0063】
例えば、乖離検出部21は、算出転舵角の変化方向を示す算出転舵向きと実転舵角の変化方向を示す実転舵向きとが直進方向120(
図5A参照)を挟んで逆向きであった場合、乖離条件を満たすと判定し、乖離を検出する。
【0064】
つまり、運転者Dが車両Cを旋回させようとする方向と車両Cの実際の旋回方向とが逆向きの場合に乖離を検出する。これにより、後述する通知部23が運転者Dに対してかかる乖離を通知することで、旋回方向が異なることによる運転者Dの戸惑いを緩和できる。
【0065】
また、例えば、乖離検出部21は、算出転舵角および実転舵角それぞれの変化方向が同じであっても変化量(すなわち、
図4の「乖離値」)が所定の閾値を超えた場合、乖離を検出してもよい。かかる閾値は、予め定められた値であってもよく、運転者Dによって任意の値が設定されてもよい。あるいは、車両Cの走行速度に応じて閾値を変更してもよい。
【0066】
例えば、乖離検出部21は、車両Cの走行速度が速いほど閾値を小さくし、走行速度が遅いほど閾値を大きくする。つまり、走行速度が速いほど運転者Dの余裕は無くなるため、閾値を小さくすることで乖離の通知があった場合に、乖離に対する運転操作(乖離を加味したステアリング操作)での対応が容易になる。
【0067】
一方、走行速度が遅いほど運転者Dに余裕ができるため、閾値を大きくしても乖離への対応を容易に行うことができ、かつ、乖離の通知を最小限に抑えることで通知に対する煩わしさを低減できる。
【0068】
なお、乖離検出部21は、算出転舵角および実転舵角それぞれの変化方向が逆向きの場合、上記した閾値を設定しないことが好ましい。つまり、乖離検出部21は、算出転舵角および実転舵角それぞれの変化方向が少しでも逆向きとなった場合に乖離を検出し、通知部23が通知することで、運転者Dの戸惑いを低減できる。
【0069】
また、乖離検出部21は、操舵角センサ40に基づいて算出転舵角を自ら算出してもよく、転舵装置42で算出された算出転舵角を取得することとしてもよい。
【0070】
異常検出部22は、転舵装置42の異常を検出する。例えば、異常検出部22は、ステアECU3の回路基板の故障や、ステアACT13の動作不良、ステアECU3やステアACT13に接続される通信線の通信途絶等を転舵装置42の異常として検出する。
【0071】
通知部23は、乖離検出部21によって乖離が検出された場合に、運転者Dに対してかかる乖離に関する通知を行う。例えば、通知部23は、「乖離が発生しました」といった乖離の発生を示す通知を行う。
【0072】
また、通知部23は、乖離が検出された場合において、異常検出部22によって異常が検出された場合と、異常が検出されなかった場合とで異なる内容の通知を行ってもよいが、この点については
図5Aおよび
図5Bで後述する。
【0073】
記憶処理部24は、乖離検出部21によって検出された乖離を示す情報を乖離情報31として記憶部30に記憶する。具体的には、記憶処理部24は、乖離検出部21によって乖離が検出され、かつ、異常検出部22によって異常が検出された場合に、異常個所の情報および乖離情報31を記憶部30に記憶する。
【0074】
例えば、記憶処理部24は、異常個所の情報に加え、「乖離値」や「算出転舵角」、「実転舵角」等を含む乖離情報31を記憶部30に記憶する。これにより、例えば、転舵装置42の修理を担当する担当者が故障によりどの程度の乖離が発生したかを容易に認識することができる。なお、記憶処理部24は、「乖離値」、「算出転舵角」および「実転舵角」のうち、少なくとも「算出転舵角」および「実転舵角」を乖離情報31として記憶できればよい。つまり、「乖離値」については、乖離情報31を読み出した作業者が「算出転舵角」および「実転舵角」を使うことによって算出されるようにしてもよい。
【0075】
次に、
図5Aおよび
図5Bを用いて、通知部23の通知内容について説明する。
図5Aおよび
図5Bは、通知部23の通知内容を示す図である。
図5Aおよび
図5Bでは、車両Cは停車中であることとする。
【0076】
また、
図5Aでは、乖離を検出した際、転舵装置42が正常である場合の、通知内容を示し、
図5Bでは、乖離を検出した際、転舵装置42が異常である場合の通知内容を示す。また、
図5Aおよび
図5Bでは、乖離検出部21が、算出転舵角に基づく算出進行方向110と実転舵角に基づく実進行方向100とが直進方向120を挟んで逆向きである場合を示している。
【0077】
図5Aおよび
図5Bに示すように、通知部23は、乖離が検出された場合において、異常検出部22によって異常が検出された場合(
図5A)と、異常が検出されなかった場合(
図5B)とで異なる内容の通知を行う。
【0078】
具体的には、
図5Aに示すように、通知部23は、乖離が検出され、かつ、転舵装置42が正常であった場合、乖離の発生を示す発生通知および乖離の解消を指示する解消指示通知を含む内容を通知する。
【0079】
例えば、
図5Aでは、通知部23は、出力装置43を介して、「車輪とステアリングとが一致していません(発生通知)。ステアリングを時計回りに回して一致させてください(解消指示通知)。」といった内容を音声(画面表示でも可)出力する。
【0080】
なお、解消指示通知として、例えば、乖離がどの程度であるかといった内容や、どの程度ステアリングSTを回転して解消するかといった内容が含まれてもよい。
【0081】
また、
図5Aでは、通知部23は、車両Cが停車中の場合における通知の内容を示したが、走行中の場合でも乖離の通知を行ってもよい。例えば、通知部23は、車両Cが走行中の場合、「車両を路肩に停車させてください」といった停車指示通知を行い、車両Cの停車後に上記した解消指示通知を行う。
【0082】
また、
図5Bに示すように、通知部23は、乖離が検出され、かつ、転舵装置42が異常であった場合、乖離の発生を示す発生通知および車両Cの運転操作を禁止する禁止指示通知を含む内容を通知する。
【0083】
例えば、
図5Bでは、通知部23は、出力装置43を介して、「車輪とステアリングとが一致していません(発生通知)。装置が故障しているおそれがありますので、車両を発進させないでください(禁止指示通知)。」といった内容を音声等で出力する。
【0084】
なお、
図5Bでは、通知部23は、車両Cが停車中の場合における通知の内容を示したが、走行中の場合でも乖離の通知を行ってもよい。例えば、通知部23は、「車両を路肩に停車させて、○○社故障受付係までご連絡ください。電話番号は・・・」といった連絡指示通知を行う。
【0085】
なお、通知部23は、乖離が検出されていないが、転舵装置42の異常が検出されている場合は、例えば、図示しない警告ランプ等を点灯して、運転者Dに対して転舵装置42の異常を知らせるようにする。
【0086】
図5Aおよび
図5Bに示したように、通知部23は、乖離発生時に、転舵装置42の異常の有無で通知内容を変えることで、運転者Dに対して適切な通知を行うことができる。
【0087】
次に、
図6を用いて、実施形態に係る異常検出装置1が実行する処理の処理手順について説明する。
図6は、実施形態に係る異常検出装置1が実行する処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0088】
図6に示すように、まず、乖離検出部21は、操舵角センサ40の検出値に基づいて算出された算出転舵角を取得する(ステップS101)。つづいて、乖離検出部21は、転舵角センサ41から転舵輪(後輪RW)の実際の転舵角である実転舵角を取得する(ステップS102)。なお、ステップS101およびステップS102は、処理順序が入れ替わってもよい。
【0089】
つづいて、乖離検出部21は、算出転舵角と実転舵角とに乖離があるか否かを判定する(ステップS103)。異常検出部22は、乖離検出部21によって乖離が検出された場合(ステップS103,Yes)、転舵装置42が異常であるか否かを判定する(ステップS104)。
【0090】
異常検出部22は、転舵装置42の異常を検出した場合(ステップS104,Yes)、通知部23が運転者Dに対する乖離の通知を行い、記憶処理部24が乖離情報31を記憶部30に記憶し(ステップS105)、処理を終了する。
【0091】
一方、ステップS103において、乖離検出部21は、算出転舵角と実転舵角とに乖離がなかった場合(ステップS103,No)、処理をステップS101へ移行する。また、ステップS104において、異常検出部22は、転舵装置42の異常を検出しない、つまり転舵装置42が正常であった場合(ステップS104,No)、運転者Dに対する乖離の通知を行い(ステップS106)、処理を終了する。
【0092】
上述してきたように、実施形態に係る異常検出装置1は、乖離検出部21と、異常検出部22と、通知部23と、記憶処理部24とを備える。乖離検出部21は、運転者Dの操舵部材(ステアリングST)への操舵操作(回転操作)に応じた操舵信号を転舵装置42へ出力することで転舵輪が転舵する車両Cにおいて、操舵操作から算出される算出転舵角と転舵輪における実際の転舵角である実転舵角との乖離を検出する。異常検出部22は、転舵装置42の異常を検出する。通知部23は、乖離検出部21によって乖離が検出された場合に、運転者Dに対して乖離に関する通知を行う。記憶処理部24は、乖離検出部21によって乖離が検出され、かつ、異常検出部22によって異常が検出された場合に、乖離を示す乖離情報31を記憶部30に記憶する。これにより、運転者Dに対して乖離を通知しつつ、乖離情報31が過度に記憶されることを防止できる。
【0093】
なお、上述した実施形態では、車両Cが前進する場合について示したが、車両Cが後進(バック走行)する場合であっても、異常検出装置1は同様の処理を適用することができる。
【0094】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。