特開2021-183506(P2021-183506A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2021-183506飲食物収容容器用蓋及び飲食物収容容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-183506(P2021-183506A)
(43)【公開日】2021年12月2日
(54)【発明の名称】飲食物収容容器用蓋及び飲食物収容容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/06 20060101AFI20211105BHJP
   B65D 21/02 20060101ALI20211105BHJP
【FI】
   B65D47/06 110
   B65D21/02 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-89445(P2020-89445)
(22)【出願日】2020年5月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000177209
【氏名又は名称】日本ストロー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【弁理士】
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 敬次
(72)【発明者】
【氏名】冨田 博士
【テーマコード(参考)】
3E006
3E084
【Fターム(参考)】
3E006AA02
3E006BA08
3E006CA01
3E006CA03
3E006DA03
3E006DB06
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084AA34
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CB02
3E084CC03
3E084CC07
3E084DA01
3E084DB13
3E084DC03
3E084DC07
3E084FC07
3E084GA08
3E084GB12
3E084KB01
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】持ち運ぶことができる飲食物収容容器の数を効率的に高めることができる飲食物収容容器用蓋及びその蓋を用いた飲食物収容容器を提供する。
【解決手段】飲食物収容容器用蓋3は、飲料カップ2の開口2A3を覆う天面板部4と、天面板部4の外周側から該天面板部の裏面側に連続的に伸びて飲料カップ2の開口2Aを天面板部4が覆うようにしたとき飲料カップ2の開口縁部2Aaに係合可能となる側周壁部5と、を備える。その蓋3における天面板部4の表面には、少なくとも、飲料カップ2の下部が嵌合できる凹所6が形成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の開口を覆う天面板部と、該天面板部の外周側から該天面板部の裏面側に連続的に伸びて前記容器本体の開口を前記天面板部が覆うようにされたとき該容器本体の開口周縁部に係合可能となる側周壁部と、を備える飲食物収容容器用蓋において、
前記天面板部の表面に、少なくとも、前記容器本体の下部が嵌合できる凹所が形成されている、
ことを特徴とする飲食物収容容器用蓋。
【請求項2】
請求項1において、
前記凹所の内周壁が、該凹所の開口から該開口に近い側において、前記容器本体の下部を緩嵌合するための緩嵌合部として形成されている一方、該凹所の内周壁には、該緩嵌合部よりも凹所の底部側において、該容器本体の下部を密嵌合するための密嵌合部が形成されている、
ことを特徴とする飲食物収容容器用蓋。
【請求項3】
請求項1において、
前記凹所の内周壁は、該凹所の底部から開口に向けて段階的に拡径されて、内径が異なった複数の内周壁部をもって形成され、
前記複数の内周壁部のうちの一つが、前記容器本体の下部を嵌合するための内周壁部とされ、
前記複数の内周壁部のうちの他のものが、前記容器本体の下部外径とは異なる下部外径を有する容器本体の下部を嵌合するための内周壁部とされている、
ことを特徴とする飲食物収容容器用蓋。
【請求項4】
請求項3において、
前記複数の内周壁部のうちの一つが、前記凹所の底部から立ち上がる下段側内周壁部とされ、
前記複数の内周壁部のうちの他のものが、前記下段側内周壁部の上側において、段差部を経て拡径された状態の下で前記凹所の開口にまで立ち上がる上段側内周縁部とされている、
ことを特徴とする飲食物収容容器用蓋。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、
前記凹所の内周壁に、該凹所の開口から底部内面に至る溝が形成されている、
ことを特徴とする飲食物収容容器用蓋。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、
前記側周縁部の先端が、載置面に対する載置端として、前記凹所の底部よりも該凹所底部の裏面側外方に位置されている、
ことを特徴とする飲食物収容容器用蓋。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、
飲み口が、前記凹所の径方向外方位置に設けられて、飲料容器用蓋とされている、
ことを特徴とする飲食物収容容器用蓋。
【請求項8】
請求項7において、
前記飲み口が、前記天面板部表面から上方に突設され、
前記飲み口の先端面に、前記天面板部の表面側と裏面側とを連通する飲料流出入孔が形成され、
前記飲み口には、該飲み口における先端面の外側縁から前記側周縁部の先端側に向けて垂下する縦壁部が形成され、
前記縦壁部のうち、前記飲み口における先端面の外側縁に連続する部分が、該飲み口における先端面の外側縁よりも内方側に引っ込むように傾斜されている、
ことを特徴とする飲食物収容容器用蓋。
【請求項9】
有底筒状の容器本体と、該容器本体の開口を施蓋する蓋と、を備え、該蓋が、前記容器本体の開口を覆う天面板部と、該天面板部の外周側から該天面板部の裏面側に連続的に延びて前記容器本体の開口を前記天面板部が覆うようにされたとき該容器本体の開口周縁部に係合可能となる側周壁部と、を備えている飲食物収容容器において、
前記蓋における天面板部の表面に、少なくとも、前記容器本体の下部が嵌合できる凹所が形成されている、
ことを特徴とする飲食物収容容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食物収容容器における有底筒状の容器本体の開口を覆う飲食物収容容器用蓋及びその蓋を用いた飲食物収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、持ち帰り形態(テイクアウト形態)の飲食物商品には、飲食物収容容器における有底円筒状の容器本体内に飲食物を収容した上でその容器本体の開口を蓋により施蓋するものがある。この飲食物収容容器に用いられる蓋は、一般に、特許文献1に示すように、その飲食物収容容器における容器本体の開口を覆う天面板部と、その天面板部の外周縁から天面板部の裏面側に伸びて、天面板部が容器本体の開口を覆ったときにその容器本体の開口周縁部に係合可能となる側周壁部と、を一体的に備えている。
【0003】
ところで、複数の飲食物収容容器を同時に運びたい場合がある。例えば、テイクアウトショップにおいて、複数の飲食物商品を飲食物収容容器にそれぞれ収容された状態で購入し、その複数の飲食物収容容器を持ち帰るような場合である。このような場合、飲食物収容容器が片手で把持できるものであれば、一人の購入者は、両手を使用することにより、2つの飲食物収容容器を持ち帰ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−247397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、飲食物収容容器の外径が購入者の手にとって大きい場合には(例えばラージサイズ)、その購入者が各片手でその飲食物収容容器をそれぞれ持つことは容易ではない。また、一人の購入者が飲食物収容容器を同時に3つ以上持ち帰りたい場合があり、そのような場合には、最早、その数の全部を手で持って帰ることはできない。
【0006】
このような場合、厚紙を用いて形成された搬送用具を用いることが考えられる。この搬送用具は、厚紙を折り込むことによりベースを形成し、そのベース上面に飲食物収容容器の下部を嵌め込むための凹所を複数形成することとなっており、複数の飲食物収容容器を同時に持ち運ぶに当たり、その各凹所に飲食物収容容器の下部をそれぞれ嵌め込んだ上で、そのベースを手で持って運ぶこととなる。しかし、上記搬送用具を用いて多くの数の飲食物収容容器を持ち運ぼうとした場合、それに応じた多数の凹所を形成するためのベース上面の面積を大きくすると共に、そのベースの強度を高めなければならない。その一方で、上記搬送用具は、一人の購入者が持ち運べるベース上面の平面的な大きさには自ずと限界があり、これに伴い、そのベース上面に形成される凹所の数は制約されることになる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、その目的は、持ち運ぶことができる飲食物収容容器の数を効率的に高めることができる飲食物収容容器用蓋及びその蓋を用いた飲食物収容容器を提供することにある。
【0008】
前記目的を達成するために本発明にあっては、下記(1)〜(9)とした構成とされている。
【0009】
(1)容器本体の開口を覆う天面板部と、該天面板部の外周側から該天面板部の裏面側に連続的に伸びて前記容器本体の開口を前記天面板部が覆うようにされたとき該容器本体の開口周縁部に係合可能となる側周壁部と、を備える飲食物収容容器用蓋において、
前記天面板部の表面に、少なくとも、前記容器本体の下部が嵌合できる凹所が形成されている構成とされている。
【0010】
上記構成によれば、当該蓋をもって容器本体の開口を施蓋すれば、その蓋における凹所に別の飲食物収容容器の下部を嵌合できることになり、飲食物収容容器を順次、倒すことなく安定した状態で積み上げることができ、飲食物収容容器を積み上げた状態で支障なく持ち運ぶことができる。このため、当該蓋における天面板部に凹所を形成するだけの簡単な構成により、飲食物収容容器を手で直接もって運ぶ場合、搬送用具を用いる場合のいずれの場合でも、持ち運ぶことができる飲食物収容容器の数を増大させることができ、持ち運ぶことができる飲食物収容容器の数を効率的に高めることができる。また、当該蓋を容器本体から外して飲料を飲むに際しては、当該蓋の側周壁部が区画する領域の径(側周壁部先端(下端)における径)が凹所の径(容器本体の底面外径)よりも大きいことから、当該蓋の凹所に容器本体の下部を嵌合してその蓋(側周縁部先端(下端))を介して容器本体をテーブル上面等の載置面に載置したときには、テーブル上面等の載置面に容器本体自体を載置する場合よりも、安定性を高めることができる。このため、特に、振動を生じる乗り物等において、当該蓋を、容器本体の転倒防止を高める容器受け又はコースタとして用いることができる。
【0011】
(2)前記(1)の構成の下で、
前記凹所の内周壁が、該凹所の開口から該開口に近い側において、前記容器本体の下部を緩嵌合するための緩嵌合部として形成されている一方、該凹所の内周壁には、該緩嵌合部よりも凹所の底部側において、該容器本体の下部を密嵌合するための密嵌合部が形成されている構成とされている。
【0012】
この構成によれば、当該蓋が用いられる容器本体とは異なる別の容器本体の下部を当該蓋の凹所に嵌合するに当たり、その容器本体の下部を、緩嵌合部に容易に進入させた上で、密嵌合部に押し込むことができ、凹所に対して容器本体の下部を容易に密嵌合状態で嵌合することができる。
【0013】
(3)前記(1)の構成の下で、
前記凹所の内周壁は、該凹所の底部から開口に向けて段階的に拡径されて、内径が異なった複数の内周壁部をもって形成され、
前記複数の内周壁部のうちの一つが、前記容器本体の下部を嵌合するための内周壁部とされ、
前記複数の内周壁部のうちの他のものが、前記容器本体の下部外径とは異なる下部外径を有する容器本体の下部を嵌合するための内周壁部とされている構成とされている。
【0014】
上記構成によれば、下部外径が同じである容器本体の下部だけでなく、下部外径が異なる容器本体の下部を当該蓋の該当内周壁部に嵌合できることになり、当該蓋を用いれば、飲食物収容容器上に、同一の下部外径の飲食物収容容器だけでなく、異なった下部外径の飲食物収容容器を積み上げ保持でき、便宜性を高めることができる。
【0015】
(4)前記(3)の構成の下で、
前記複数の内周壁部のうちの一つが、前記凹所の底部から立ち上がる下段側内周壁部とされ、
前記複数の内周壁部のうちの他のものが、前記下段側内周壁部の上側において、段差部を経て拡径された状態の下で前記凹所の開口にまで立ち上がる上段側内周縁部とされている構成とされている。
【0016】
この構成によれば、当該蓋が用いられる容器本体と同じ下部外径を有する容器本体の下部を下段側内周壁部に嵌合でき、その容器本体の下部外径よりも大きい下部外径を有する容器本体の下部を上段側内周壁部に嵌合できることになり、当該蓋上に、下部外径が異なる2種類の容器本体のいずれかを安定的に積み上げることができる。
【0017】
(5)前記(1)〜(4)のいずれかの構成の下で、
前記凹所の内周壁に、該凹所の開口から底部内面に至る溝が形成されている構成とされている。
【0018】
この構成によれば、溝は、当該蓋のブレ止めと回転防止、さらには、当該蓋の積み重ね時のブロッキングを防止するだけでなく、飲食物収容容器内に冷たい飲食物を収容した状態の下で、当該蓋を容器受け又はコースタとして使用すべく、その容器本体の下部を当該蓋の凹所に嵌合したときには、その容器本体の外側側面に結露が生じても、その結露水をその容器本体の外側側面を伝って落下させ、その結露水を、溝を利用してさらに凹所内に落とし込むことができる。このため、容器本体における外側側面から結露水を排除できると共に、その結露水を視認できない状態(凹所内に収容状態)として、飲食物収容容器の使用時の見栄えを向上させることができる。
【0019】
(6)前記(1)〜(5)のいずれかの構成の下で、
前記側周縁部の先端が、載置面に対する載置端として、前記凹所の底部よりも該凹所底部の裏面側外方に位置されている構成とされている。
【0020】
この構成によれば、当該蓋の凹所に容器本体の下部を嵌合して当該蓋を容器受け又はコースタとして用いるときには、側周縁部のきわめて細い先端(下端)だけが伝導面積として載置面に当接し、載置面と当該蓋の裏面との間には断熱層としての空気層が存在することになる。これにより、容器本体内に収容される飲食物の温度が変化することを極力抑制することができる。
【0021】
(7)前記(1)〜(6)のいずれかの構成の下で、
飲み口が、前記凹所の径方向外方位置に設けられて、飲料容器用蓋とされている構成とされている。
【0022】
この構成によれば、飲み口を有する飲料容器用蓋であっても、前述の(1)と同様の作用効果を得ることができる。
【0023】
(8)前記(7)の構成の下で、
前記飲み口が、前記天面板部表面から上方に突設され、
前記飲み口の先端面に、前記天面板部の表面側と裏面側とを連通する飲料流出入孔が形成され、
前記飲み口には、該飲み口における先端面の外側縁から前記側周縁部の先端側に向けて垂下する縦壁部が形成され、
前記縦壁部のうち、前記飲み口における先端面の外側縁に連続する部分が、該飲み口における先端面の外側縁よりも内方側に引っ込むように傾斜されている構成とされている。
【0024】
この構成によれば、飲み口先端面と、縦壁部のうち、飲み口先端面の外側縁から連続する部分とが、尖った形状を形成しており、その尖った形状の先端(飲み口先端面の外側縁又は縦壁部の上端)に至った飲料は、微視的には、表面張力に基づき、その粒形化(接触角の増大化)、その増径化が促進される傾向となり、その粒形化した飲料の重量は、飲み口先端面の外側縁部分での表面張力に基づく引っ張り力に早期に打ち勝つことになる。このため、飲料を飲む者が飲み口から口を外したときには、同時に、飲み口先端面の外側縁において、飲料の液切れが的確に行われ、飲料の液滴が縦壁部を伝うような事態の発生を防止できる。また、縦壁部は、飲み口先端面の外側縁に連続する部分と、それに続く部分と、その両者が形成するへこみ部分とを形成することになり、飲料を飲む者の下唇を縦壁部に沿わせつつ、上記各部分により、その下唇の移動を抑制できる。これにより、飲み口に対する飲料を飲む者の口の安定化を図ることができ、飲み易さを高めることができる。
【0025】
(9)有底筒状の容器本体と、該容器本体の開口を施蓋する蓋と、を備え、該蓋が、前記容器本体の開口を覆う天面板部と、該天面板部の外周側から該天面板部の裏面側に連続的に延びて前記容器本体の開口を前記天面板部が覆うようにされたとき該容器本体の開口周縁部に係合可能となる側周壁部と、を備えている飲食物収容容器において、
前記蓋における天面板部の表面に、少なくとも、前記容器本体の下部が嵌合できる凹所が形成されている構成されている。
【0026】
この構成によれば、前述の(1)の蓋を用いることから、持ち運ぶことができる数を効率的に高めることができる飲食物収容容器を提供できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、持ち運ぶことができる飲食物収容容器の数を効率的に高めることができる飲食物収容容器用蓋及びその蓋を用いた飲食物収容容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態に係る蓋と、その蓋によって開口が施蓋される飲料カップとを示す斜視図。
図2】第1実施形態に係る蓋をもって施蓋された飲料カップを示す平面図。
図3図2のX3−X3線断面図。
図4図3の部分拡大図。
図5】第1実施形態に係る蓋の凹所に飲料カップの下部を嵌合した状態を示す状態説明図。
図6図2のX6−X6線拡大断面図。
図7】第1実施形態に係る蓋が飲料カップ受け又はコースタとして用いられている状態を示す説明図。
図8】第2実施形態に係る蓋を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1において、符号1は、第1実施形態に係る飲食物収容容器としての飲料容器である。この飲料容器1は、有底円筒状の容器本体としての飲料カップ2と、その飲料カップ2の開口2Aを塞ぐ蓋3と、を備えている。
【0031】
前記飲料カップ2は、飲料Dを収容するものである。この飲料カップ2における開口2Aは、平面視円形状の開口周縁部2Aaにより区画されており、その開口周縁部2Aaは、その径方向外方に全周に亘って若干、張り出されている。この飲料カップ2の外形は、本実施形態においては、その外径がその開口2Aから底部2B側に向けて徐々に縮径されたものとなっており、この飲料カップ2の下部2Cは、上記全体的な縮径傾向の下で、蓋3における後述の凹所6に対する嵌合部として局部的に縮径されている。この場合、飲料カップ2の下部2C外径は、その下部2Cとそれよりも上側部分(飲料カップ2)の境界近くを径方向内方に膨出させることにより縮径されており、飲料カップ2における下部2Cの外側側面は、その膨出部先端よりも上方側においては、上方に向うに従って拡径するように傾斜され、膨出部先端よりも下方側においては、下方に向かうに従って拡径するように傾斜されることが好ましい(図3図4参照)。
【0032】
前記蓋3は、図1図4に示すように、天面板部4と、側周壁部5と、を一体的に備えている。天面板部4は、蓋3の径方向内方側に配置されて蓋3の主要部分を占めるものであり、蓋3が飲料カップ2の開口2Aを塞いだときには、その天面板部4は、飲料カップ2の開口2A上に配置されてその開口2Aの大部分を覆うことになる。
【0033】
側周壁部5は、前記天面板部4の外周側に全周に亘って連なった状態で形成されている。この側周壁部5は、本実施形態においては、天面板部4の外周部から拡径しつつ天面板部4の裏面側外方へと伸びており、その先端部(下端部)5aは、径方向外方への拡張部5bを経て垂下している。これにより、側周壁部5は、飲料カップ2の開口2Aを天面板部4が覆ったときには、側周壁部5の拡張部5bが飲料カップ2の開口周縁部(張り出し部)2Aaに載ると共に、その側周壁部5の先端部5a内面が飲料カップ2の開口周縁部(張り出し部)2Aaに係合保持されることになる。本実施形態においては、天面板部4と側周壁部5との連続部分(天面板部4の外周縁部分)が外に膨らむような滑らかな湾曲面をもって湾曲されており、蓋3のうち、その連続部分から拡張部5b(先端部5a近く)に至るまでの間も飲料カップ2の開口2Aを覆うことになる。このような蓋3(天面板部4及び側周壁部5)は、樹脂を用いて一体成形されている。
【0034】
前記蓋3における天面板部4の表面には、図1図4に示すように、その径方向内方側部分を該天面板部4の裏面側外方に向けて膨出させることにより、平面視円形状の凹所6が形成されている。この凹所6は、その内周壁7が飲料カップ2の下部2Cを嵌合できる大きさ(内径)に形成され、この凹所6の内周壁7には、凹所6の開口6Aから底部6Bに向けて順に、飲料カップ2の下部2Cを緩嵌合できる緩嵌合部8と、該飲料カップ2の下部2Cを密嵌合できる密嵌合部9とが形成されている。緩嵌合部8は、内径が飲料カップ2の下部2C外径よりも若干、大きくされた内周壁部として形成されている。密嵌合部9は、本実施形態においては、緩嵌合部8の下端に続く部分を凹所6全周に亘って径方向内方に若干、膨出させることにより、環状突部(符号9を用いる)として形成されており、その環状突部9先端が形成する内径は、飲料カップ2の下部2C外径よりも若干、小さくされている。この場合、図3図4に示すように、環状突部9の上面(凹所6開口6A側の面)については、飲料カップ2を密嵌合部9に的確に案内すべく、下方に向かうほど径方向内方に向かうように傾斜され、環状突部9の下面については、下方に向かうほど径方向外方に拡がるように傾斜されることが好ましい。
【0035】
前記凹所6の内周壁7には、図1図2に示すように、複数(本実施形態においては4つ)の溝11が形成されている。この複数の溝11は、凹所6の周回り方向に等間隔ごとに配置されており、その各溝11は、凹所6の開口6Aから凹所6の底部6B内面に至るように伸びている。この各溝11は、当該蓋3のブレ止めと回転防止、さらには、当該蓋3の積み重ね時のブロッキング防止を図るだけでなく、飲料カップ2の下部2Cが凹所6内に嵌合されたときに、凹所6の内周壁7と飲料カップ2の外側側面との間において排水路12を構成することになる。排水路12については、後述する。
【0036】
前記蓋3には、図1図3に示すように、前記凹所6の径方向外方位置において飲み口14が形成されている。この飲み口14は、天面板部4から側周壁部5にかけての領域において、天面板部4表面からその上方に多少、膨出するように形成され、その先端面14aは、飲料を飲む者の口に含めることができる程度の大きさをもって、天面板部4の径方向の長さよりも周方向(図2中、上下方向)の長さが長くなるように細幅形状に形成されている。
【0037】
この飲み口14の先端面14aには、図1図2に示すように、飲料流出入孔としての2つのストロー用穴15a、15bが形成されている。この2つの穴15a、15bは、天面板部4の周方向に並設された状態で形成され、その2つの穴15aと穴15bとは、本実施形態においては、同方向に直接的に連なっている。各穴15a、15bは、一般的な所定径(例えば6mm)のストローを差し込むことができることになっており、その各穴15a、15bに相当径のストローが差し込まれたときには、そのストローは、各穴15a、15bの周縁部との係合により、起立された状態が保持される。これにより、2つの穴15a、15bのいずれか一方の穴にストローを差し込むことにより、そのストローにより飲料カップ22内の飲料を吸引しながら飲料を飲むことができ、そのとき、他方の穴を、ストローによる飲料吸引時の空気取り入れ孔として用いることができる。
【0038】
また、飲み口14においては、2つの穴15a、15bが直接的に連なって拡大された穴を形成していることから、その2つの穴15a、15bを利用することにより、飲料を飲む者は、飲み口14を口に含んでその飲み口14から直接、飲料カップ22内の飲料を飲むこともできる。勿論、蓋3を飲料カップ2から外して、その飲料カップ2の開口周縁部2Aaに口をつけ又はストローを用いて飲料カップ2内の飲料を飲むこともできる。
【0039】
本実施形態においては、図1図2図6に示すように、前記2つの穴15a、15bは、飲み口先端面14aに浅いへこみ部16を形成した上で、そのへこみ部16に形成されている。このへこみ部16は、飲み口14の先端面14aの周囲から2つの穴15a、15bに向かうに従って蓋3の裏面側(下側)に向うように傾斜されており、飲料カップ2内の飲料を飲まないときには、仮に、飲み口先端面14aに飲料が存在しても、その飲料は、飲み口先端面14aにはとどまらずに2つの穴15a、15bを介して飲料カップ2内に導かれる。
【0040】
前記飲み口14は、図1図3図6に示すように、縦壁部17を有している。縦壁部17は、基本的に、飲み口先端面14aの幅方向外側縁(図2中、先端面14a左側において上下方向に伸びる線)14aaから側周壁部5の拡張部5bに向けてその先端面14の周方向の長さを略維持しつつ垂下している一方、縦壁部17のうち、飲み口先端面14aの幅方向外側縁14aaに連続する部分17aは、飲み口先端面14aの幅方向外側縁14aaよりも内方側に引っ込むように傾斜されている。これにより、飲み口先端面14aと、縦壁部17のうち、飲み口先端面14aの外側縁14aaから連続する部分17aとは、液切れ構造として、天面板部4の周方向に略一定幅を維持しつつ尖った形状を形成することになり、その尖った形状の先端(飲み口先端面14aの幅方向外側縁14aa又は縦壁部17の上端)では、微視的に、表面張力の作用に基づき、その尖った形状の先端に至った飲料Dの液滴19の粒形化(接触角の増大化)、その増径化が促進されて、その粒形化した液滴19の重量(Mg(M:粒形化した部分の質量、g:重力加速度))は、飲み口先端面14aの幅方向外側縁14aa部分での表面張力に基づく引っ張り力(γL(γ:表面張力、L:飲み口先端面14aにおける幅方向外側縁14aaの周方向の長さ(図5中、直交方向の長さ))に対して早期に打ち勝つことになる。
【0041】
他方で、飲料カップ2内の飲料が飲まれないときには、飲み口先端面14aでは、前述した如く、飲料(液滴)はへこみ部16の傾斜により直ちに2つの穴15a、15bを介して飲料カップ2内に導かれることになり、飲み口先端面14aには飲料(液滴)は存在しない。このため、飲料Dを飲む者が飲み口14から口を外したときには、同時に、飲み口先端面14aの幅方向外側縁14aaにおいて、飲料Dの液切れが的確に行われ、飲料Dの液滴19が縦壁部17を伝うような事態の発生を防止できる。
【0042】
尚、飲み口先端面14aと、飲み口先端面14aの外側縁14aaから連続する部分17aとが形成する尖った形状の先端部には、図6に示すように、飲料を飲む者の口のつけ易さの観点から、丸みが付けられているが、飲料の液切れ効果を高める観点からは、その丸みを低下させることが好ましい。
【0043】
前記縦壁部17は、図1図3図6に示すように、飲み口先端面14aの幅方向外側縁14aaに連続する部分17aに続く部分17bの構成として、下方に向かうに従って先端面14aの幅方向外側縁14aaよりも外方に向かうように傾斜され、その縦壁部17の傾斜下端は、側周縁部5の拡張部5bに連なっている。これにより、縦壁部17は、飲み口先端面14aの幅方向外側縁14aaに連続する部分17aと、それに続く部分17bと、その両者17a、17bが形成するへこみ部分17cとを形成することになり、飲料を飲む者の下唇を縦壁部17に沿わせつつ、上記部分17a,17b,17cにより、その下唇の移動を抑制できることになる。この結果、飲み口14に対する飲料を飲む者の口の安定化を図ることができ、飲み易さを高めることができる。
【0044】
このような飲料容器1に飲料を収容し、そのような複数の飲料容器1を持ち運ぶに際しては、図5に示すように、飲料容器1における蓋3の凹所6に別の飲料容器1の下部2Cを嵌合することにより、複数の飲料容器1を安定した状態で積み上げることができる。
【0045】
すなわち、当該蓋3においては、積み上げるべき別の飲料容器1(同一下部外径の飲料カップ2)の下部2Cを、緩嵌合部8に容易に進入させた上で、密嵌合部9に押し込むことができる。これにより、蓋3における凹所6の密嵌合部9である環状突部(膨出部)を飲料カップ2の底部2B外周縁部ないし下部2C外周面により押し退けて(変形させて)(図4参照)、その下部2C外周面を密嵌合部(環状突部)9に圧着させることができ、飲料カップ2の下部2Cは、密嵌合部9に押圧された状態の下で凹所6内に嵌合される(図5参照)。この結果、複数の飲料容器1を安定した状態で積み上げることができ、飲料容器1を手で直接もって運ぶ場合、搬送用具を用いる場合のいずれの場合においても、持ち運ぶことができる飲料容器1の数を増大させて、持ち運ぶことができる飲料容器1の数を効率的に高めることができる。勿論この場合、積み上げた別の飲料容器1の蓋3の凹所6にさらに別の飲料容器1を嵌合することにより飲料容器1の積み上げ数を増大させることができる。
【0046】
この場合、蓋3における凹所6内に対する飲料カップ下部2Cの嵌合度合いの調整に関しては、凹所6内の底部6Bと飲料カップ2の底部2Bとの当接関係、凹所6の開口6A周縁部と飲料カップ下部2Cの外側側面(下部2Cとその上側部分との段差部分)の当接、係合関係を、ストッパ手段として利用することができる。
【0047】
またこの場合、天面板部4における飲み口14の2つの穴15a、15bが並設されていることを利用し、ストローを折り曲げ、その一端側と他端側とを各穴15a、15bに差し込み、その2つの穴15a、15bを塞ぐことが好ましい。飲料が収容された飲料カップ2を持ちながら歩く等の状況において、飲み口14から外部に飲料がこぼれ散ることを的確に防止できるからである。
【0048】
前述した如く、飲料カップ2内の飲料を飲む際には、当該蓋3を飲料カップ2の開口周縁部2Aaから外して、飲料カップ2内の飲料を飲むことができる。この場合、飲料カップ2の下部2Cを蓋3の凹所6に嵌合できることを利用して、その蓋3を、図7に示すように、飲料カップ2の底面を拡大するカップ受け(容器受け)又はコースタとして用いることができる。蓋3の側周壁部5における先端部2Cが区画する領域の径が凹所6の径(飲料カップ2の底面外径)よりも大きいことから、蓋3の凹所6に飲料カップ2の下部2Cを嵌合してその蓋3を介して飲料カップ2をテーブル上面25に載置したときには、テーブル上面25に飲料カップ2自体を載置する場合よりも、安定性を高めることができるからである。このため、特に、振動を生じる乗り物である自動車、鉄道車両等において、蓋3を、飲料カップ2の転倒防止を高めるカップ受け又はコースタとして用いることができる。この場合、飲料カップ2の下部2Cを蓋3における凹所6の密嵌合部9により一体化した状態で、飲料カップ2内の飲料を飲んだり、飲料カップ2内の飲料を飲む際に、飲料カップ2を蓋3における凹所6から外して使用したりすることができる。
【0049】
このように蓋3をカップ受け又はコースタとして使用するときには、前述した如く、前記溝11に基づき、凹所6周壁部(天面板部4)と飲料カップ2の外側側面との間において、複数の排水路12が形成される。この場合、排水路12の略半円状の上端開口13は導入口として機能することになり、飲料カップ2の外側側面に液滴状の結露水19が生じたときには、その結露水19は、飲料カップ2の外側側面を伝って落下し、その落下した結露水19は導入口13に入り込むことになる(図7参照)。この結果、飲料カップ2の外側側面から結露水19を排除できると共に、その結露水19を視認できない状態(凹所6内に収容状態)として、飲料カップ2の使用時の見栄えを向上させることができる。
【0050】
また、この蓋3をカップ受け又はコースタとして使用するときには、図7に示すように、側周縁部5における先端部5aのきわめて細い端面だけが伝導面積としてテーブル上面25に当接し、テーブル上面と蓋3の裏面との間には断熱層としての空気層26が介在されることになる。これにより、飲料カップ2内の飲食物の温度が変化することを抑制できることになる。
【0051】
図8は第2実施形態を示す。この各第2施形態において、前記第1実施形態と同一構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0052】
図8に示す第2実施形態は、蓋2の凹所6が、下部外径が異なる2種類の飲料カップ2を嵌合できるようにしたものを示す。この第2実施形態においては、凹所6の内周壁7が、その凹所6の底部6Bから開口2Aに向けて段階的に拡径されることにより、内径が異なった下段側内周壁部20と上段側内周壁部21とをもって形成され、その下段側内周壁部20と上段側内周壁部21との間には段差部22が形成されている。下段側内壁部20は、蓋3が用いられる飲料カップ2の下部2C外径と同じ飲料カップ2−1の下部2Cを嵌合できる内径とされ、上段側内壁部21は、上記飲料カップ2の下部2C外径よりも大きい飲料カップ2−2の下部2Cを嵌合できる内径とされている。この場合の各内周壁部20,21と、それに対応する飲料カップ2−1,2−2の下部2Cとの嵌合度合いは、密嵌合に限らず、安定性が確保されている限り、多少、緩くした嵌合状態であってもよい。
【0053】
これにより、蓋3上に、下部2C外径が異なる2種類の飲料カップ2(例えば、スモールサイズとラージサイズ)のいずれかを安定的に積み上げることができることになり、飲料カップ2の積み上げ種類の自由度を高めることができる。
【0054】
尚、各図において、各要素の厚み、液滴の大きさ等については、実際の図示が容易でないため、理解を容易にすべく、多少、誇張して描かれている。
【0055】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては、次の態様を包含する。
(1)蓋3、飲料カップ2の材料としては、樹脂製のものに限らず、紙製のもの等、種々のものを用いること。
(2)飲料Dを収容する飲料容器1に限らず、種々の飲食物を収容する飲食物収容容器に適用可能であること。
(3)飲料カップ2の外径については、全体を通して一定径であるもの、開口2Aから底部2Bに向けて徐々に縮径したもの等、種々のものを用いること。
(4)凹所6の密嵌合部9として、その密嵌合部9の内周壁部分全体の内径を、飲料カップ2の下部2C外径よりも小さくすること。
(5)第2実施形態において、凹所6を、下部外径が異なる3種類以上のカップ容器2の下部を嵌合できるようにすること(内径の異なる3種類の内周壁部の形成)。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、持ち運ぶことができる飲食物収容容器(飲料容器1)の数を効率的に高めることができることに利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 飲料容器(飲食物収容容器)
2 飲料カップ(容器本体)
2A 飲料カップ2の開口
2B 飲料カップ2の底部
2C 飲料カップ2の下部
3 蓋
4 天面板部
5 側周壁部
5a 側周壁部の先端部
6 凹所
6A 凹所の開口
6B 凹所の底部
7 凹所の内周壁
8 緩嵌合部
9 密嵌合部
11 溝
14 飲み口
14a 飲み口先端面
14aa 飲み口先端面の幅方向外側縁(飲み口先端面の外側縁)
15a,15b ストロー用穴(飲料流出入口)
17 縦壁部
17a 飲み口先端面の外側縁に連続する部分
20 下段側内周壁部
21 上段側内周壁部
22 段差部
25 テーブル上面(載置面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8