水及び/又はチアミン以外の水溶性ビタミンを含有する組成物に、さらにチアミン硝酸塩及びジベンゾイルチアミン塩酸塩の中から選択される1種以上のチアミンを含有させた組成物を充填したことを特徴とする、ソフトカプセル。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりによって健康食品の需要が拡大している。健康食品に用いられる剤形の1つとしてソフトカプセル(軟カプセル)が広く普及している。ソフトカプセルは内容液を皮膜に充填するため、味や臭いをマスキングできること、内容液を酸素から遮断できることなど、優れた特性を有する。
【0003】
さらに、ソフトカプセルは、幅広い種類の機能性素材を含有できる点においても優れている。例えば、顆粒や錠剤は水を多く含有する機能性素材や油脂を用いると製剤性を著しく低下させるため使用が困難であることから、乾燥粉末を用いる必要がある。また、飲料のように水が主体の剤形の場合、水相と油相の分離による品質劣化が懸念されるため、油脂や脂溶性の機能性素材が含有させることは推奨できない。一方、ソフトカプセルは、油脂を主剤とする点で他の剤型と異なり乳化剤も含むため、水を多く含有する機能性素材や脂溶性の機能性素材を同時に含有することができる。例えば、チアミン(ビタミンB1)やシアノコバラミン(ビタミンB12)などの水溶性の機能性素材、DHAやEPAなどの脂溶性の機能性素材、ペースト状の植物発酵物などの水を多く含有する機能性素材を、同時に含有できる。そのため、健康食品の剤型として、ソフトカプセルの需要は高い。
【0004】
しかしながら、複数の機能性素材を同時に含有させる場合、相互作用による成分の減衰を考慮しなければならない。例えば、幅広い健康食品に含有されるチアミンは、チアミン以外の水溶性ビタミンや水の存在下で減衰することが知られている(特許文献1の段落0003)。水溶性ビタミンや水を多く含有する機能性素材は、チアミンと同様、健康食品として人気の高い機能性素材であり、これらを同時に摂取したいと考える消費者は多い。そのため、チアミンと、チアミン以外の水溶性ビタミンや水を多く含有する機能性素材を同時に含有し、かつチアミンの減衰を抑えたソフトカプセルの開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、チアミンの減衰を抑えたソフトカプセルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために、種々の物質について鋭意検討を積み重ねた結果、チアミン以外の水溶性ビタミンや水を多く含有する機能性素材の存在下であっても、特定のチアミンを用いることにより、チアミンの減衰を抑えられることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明の概要は、以下の通りである。
<1> 水及び/又はチアミン以外の水溶性ビタミンを含有する組成物に、さらにチアミン硝酸塩及びジベンゾイルチアミン塩酸塩の中から選択される1種以上のチアミンを含有させた組成物を充填したことを特徴とする、ソフトカプセル。
<2> 前記組成物中の水分量が、0.5重量%以上であることを特徴とする、<1>に記載のソフトカプセル。
<3> 前記組成物中の水が、機能性素材に由来することを特徴とする、<1>又は<2>のいずれか一項に記載のソフトカプセル。
<4> 前記機能性素材が、ペースト状であることを特徴とする、<3>に記載のソフトカプセル。
<5> 前記機能性素材が、発酵物であることを特徴とする、<3>又は<4>のいずれか一項に記載のソフトカプセル。
<6> 前記機能性素材が、植物発酵物であることを特徴とする、<3>〜<5>のいずれか一項に記載のソフトカプセル。
<7> 前記チアミン以外の水溶性ビタミンがリボフラビン、ピリドキシン、シアノコバラミン及び/又はその塩の中から選ばれる1種以上であることを特徴とする、<1>〜<6>のいずれか一項に記載のソフトカプセル。
<8> チアミンの減衰を抑えたソフトカプセルの製造方法であって、水及び/又はチアミン以外の水溶性ビタミンを含有する組成物に、さらにチアミン硝酸塩及びジベンゾイルチアミン塩酸塩の中から選択される1種以上のチアミンを含有させた組成物を充填したことを特徴とする、ソフトカプセルの製造方法。
<9> 前記組成物中の水分量が、0.5重量%以上であることを特徴とする、<8>に記載のソフトカプセルの製造方法。
<10> 前記チアミン以外の水溶性ビタミンがリボフラビン、ピリドキシン、シアノコバラミン及び/又はその塩の中から選ばれる1種以上であることを特徴とする、<8>又は<9>のいずれか一項に記載のソフトカプセルの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定のチアミンを用いることにより、チアミン以外の水溶性ビタミンや水の存在下であってもソフトカプセルの内容液に含まれるチアミンの減衰を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、チアミン硝酸塩及びジベンゾイルチアミン塩酸塩の中から選択される1種以上のチアミン(以下、「特定のチアミン」ともいう)と、水及び/又はチアミン以外の水溶性ビタミンを含有することを特徴とする組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう)、並びに、本発明の組成物を内容液として皮膜に充填したことを特徴とするソフトカプセルに関する。以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
(特定のチアミン)
一般に、食品に用いられるチアミンとして、チアミン、ジベンゾイルチアミン、チアミンジスルフィド、フルスルチアミン、ベンフォチアミン及びこれらの硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩などが知られている。本発明で用いられる特定のチアミンとは、チアミン硝酸塩、ジベンゾイルチアミン塩酸塩を意味する。本発明においては、特定のチアミンを用いることで、水を多く含有する機能性素材やチアミン以外の水溶性ビタミンの存在下であっても、チアミンの減衰を抑えることができる。
【0012】
本発明の組成物における特定のチアミンの含有量は特に制限されないが、他の水溶性ビタミンや機能性素材をバランスよく含有させる観点から、10.0重量%以下が好ましく、5.0重量%以下が特に好ましく、1.0重量%以下が最も好ましい。また、摂取粒数を少なくする観点から、0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上が特に好ましく、0.1重量%以上が最も好ましい。
【0013】
本発明の組成物における特定のチアミンの1日当たりの摂取量は特に制限されないが、体内でのチアミンの効果をより発揮する観点から、0.01mg以上30mg以下が好ましく、0.1mg以上20mg以下であることが特に好ましく、0.5mg以上15mg以下であることが最も好ましい。
【0014】
(水)
本発明の組成物は、特定のチアミンと共に水を含有し得る。水を含有することで、機能性素材の乳化状態を安定させ、さらに組成物中に均一に分散させることができる。チアミンは水の存在下で減衰することが知られているが、本発明においては特定のチアミンを用いることにより、水の存在下においても、チアミンの減衰を抑えることができる。
【0015】
本発明の組成物に特定のチアミンと共に水を含有する場合、本発明の組成物における水分量は特に制限されないが、水溶性の機能性素材の油脂への乳化を安定させる観点から0.5重量%以上が好ましく、1.0重量%以上が特に好ましく、1.5重量%以上が最も好ましい。また、油相と水相の分離を抑える観点から、10重量%以下が好ましく、5重量%以下が特に好ましく、特定のチアミンの減衰を抑えられる観点から3.5重量%以下が最も好ましい。
【0016】
本発明の組成物における特定のチアミンに対する水の重量比は特に制限されないが、水溶性の機能性素材の油脂への乳化を安定させつつ、摂取粒数を少なくする観点からチアミン1重量部に対して、水0.01重量部以上30重量部以下が好ましく、0.1重量部以上20重量部以下が特に好ましく、1重量部以上15重量部以下が最も好ましい。
【0017】
(チアミン以外の水溶性ビタミン)
本発明の組成物は、特定のチアミンと共にチアミン以外の水溶性ビタミンを含有し得る。チアミンは、チアミン以外の水溶性ビタミンの存在下で減衰することが知られているが、本発明においては特定のチアミンを用いることにより、チアミン以外の水溶性ビタミンの存在下においても、チアミンの減衰を抑えることができる。チアミン以外の水溶性ビタミンは一般に食品に用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシンアミド(ビタミンB3)、パントテン酸(ビタミンB5)、ピリドキシン(ビタミンB6)、ビオチン(ビタミンB7)、葉酸(ビタミンB9)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、アスコルビン酸(ビタミンC)及びこれらの塩が挙げられる。上記の塩としては特に制限されないが、硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ナトリウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。本発明においては、チアミンと同様に体内で不足しやすい、リボフラビン、ピリドキシン、シアノコバラミン及びこれらの塩を同時に含有させることが好ましく、これらの水溶性ビタミンより1種以上を含有させることがより好ましく、2種以上を含有することが特に好ましく、3種以上を含有させることが最も好ましい。
【0018】
本発明の組成物に含有される、特定のチアミン及びチアミン以外の水溶性ビタミンは、食品用として市販されているものを適宜使用できる。例えば、ビタミン1種類を精製、濃縮したものや、水溶性ビタミン、脂溶性ビタミンを任意に含有する製剤、ビタミンと賦形剤を混合させた製剤を用いることができる。製剤を用いることにより、例えば、シアノコバラミンや葉酸のような体内での必要量が他のビタミンと比べて少ないビタミンを、組成物中に均一に分散させることができる。
【0019】
本発明の組成物に、特定のチアミンと共にチアミン以外の水溶性ビタミンを含有する場合、チアミン以外の水溶性ビタミンの含有量は特に制限されない。体内で不足する量はビタミンの種類によって異なるため、これらを補うための必要量に応じて適宜設定することができる。例えば、リボフラビンやピリドキシン及びこれらの塩の場合、本発明の組成物における含有量は、0.001重量%以上10重量%以下であることが好ましく、0.01重量%以上5重量%以下であることが特に好ましく、0.1重量%以上1重量%以下であることが最も好ましい。また、シアノコバラミン及びその塩の場合、0.000001重量%以上0.1重量%以下であることが好ましく、0.00001重量%以上0.05重量%以下であることが特に好ましく、0.0001重量%以上0.01重量%であることが最も好ましい。
【0020】
本発明の組成物に、特定のチアミンと共にチアミン以外の水溶性ビタミンを含有する場合、特定のチアミンに対する、チアミン以外の水溶性ビタミンの重量比は特に制限されないが、例えば、リボフラビンやピリドキシン及びこれらの塩の場合、特定のチアミン1重量部に対して、0.01重量部以上50重量部以下であることが好ましく、0.05重量部以上20重量部以下であることが特に好ましく、0.1重量部以上10重量部以下であることが最も好ましい。また、シアノコバラミン及びその塩の場合、チアミン1重量部に対して、0.00001重量部以上0.05重量部以下であることが好ましく、0.00005重量部以上0.02重量部以下であることが特に好ましく、0.0001重量部以上0.01重量部以下であることが最も好ましい。
【0021】
本発明の組成物は、特定のチアミンと共にチアミン以外の水溶性ビタミン及び水の両方を含有することが好ましい。チアミンは他の水溶性ビタミンや水により減衰することが知られており、その両方を含有する場合特に減衰しやすいが、本発明においては特定のチアミンを用いることにより、チアミン以外の水溶性ビタミン及び水の共存下においてチアミンの減衰を抑えることができる。
【0022】
(油脂)
本発明の組成物には、特定のチアミン、水及び/又はチアミン以外の水溶性ビタミンと共に、ソフトカプセルの基剤として一般的な油脂を用いることができる。このような油脂としては特に制限されないが、例えば、ベニバナ油(サフラワー油)、アマニ油、ブドウ油、ナタネ油、ヒマシ油、ヤシ油、コーン油、ひまわり油、大豆油、椿油、エゴマ油、ごま油、とうもろこし油、パーム油、パーム核油、綿実油、米油、オリーブ油、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、ヘーゼルナッツオイル、ウォルナッツオイル、マスタードオイル、ココナッツオイル、ヘンプシードオイル、ティーシードオイル、中鎖脂肪酸油などの植物性油脂、牛、乳、豚、魚(いわし、さば、さめ、さんま、たらなど)から得られる動物性油脂、及び、これらの硬化油、分別油、エステル交換油脂などが挙げられる。上記油脂は、1種を用いても良く、2種以上の油脂の混合物であってもよい。
【0023】
本発明の組成物が油脂を含む場合、その含有量は特に制限はないが、油相と水相の分離を抑える観点から、50重量%以上99重量%以下が好ましく、55重量%以上95重量%が特に好ましく、60重量%以上90重量%以下が最も好ましい。また、水に対する油脂の重量比は特に制限されないが、水1重量部に対して、3重量部以上300重量部以下であることが好ましく、5重量部以上250重量部以下であることが特に好ましく、10重量部以上200重量部以下であることが最も好ましい。
【0024】
本発明の組成物中の特定のチアミンに対する油脂の重量比は特に制限されないが、特定のチアミンは脂溶性ではないため、油相と水相が分離しない程度に含有することができる。このような油脂の重量比としては、特定のチアミン1重量部に対して、10重量部以上9500重量部以下であることが好ましく、20重量部以上9000重量部以下であることが特に好ましく、50重量部以上8000重量部以下であることが最も好ましい。
【0025】
(他の機能性素材)
本発明の組成物には、特定のチアミンやチアミン以外の水溶性ビタミンに加えて、一般に食品に用いられる機能性素材を含有することができる。このような機能性素材としては特に制限されないが、例えば、脂溶性ビタミン、ミネラル、アミノ酸、香辛料、乳酸菌、穀物、果実、海産加工物、植物発酵物などを挙げられる。ソフトカプセルは他の剤型に比べて製造工程、例えば乳化工程や充填工程において熱が加わりにくいため、熱により分解や変性、失活を起こしやすい機能性素材を好適に用いることができ、特に、熱により失活しやすい酵素を含有する発酵物(植物発酵物)を用いることが好ましい。
【0026】
本発明の組成物で用いられる植物発酵物としては、一般的な食品素材、例えば、野菜、山菜、果物、海藻、穀物、豆類、糖類、菌糸類、酵素などを、好適に組み合わせて発酵させたものを用いることができる。発酵方法は特に制限されず、好気的発酵方法、嫌気的発酵方法を好適に用いることができる。また、発酵させた素材は水や油脂、アルコールなどの液体を多く含有するペースト状であることが多いが、ペースト状のままを本発明の組成物に用いることもできるし、噴霧乾燥などで粉末状に乾燥させてから用いることもできる。
【0027】
本発明の組成物で用いられるペースト状の機能性素材は、スラリー状の素材とは異なる。一般にペースト状とスラリー状の間に性状に関する明確な定義はないが、例えば、ペースト状はドロドロしたノリ状の流動性を持ち、スラリー状はサラサラした泥状の流動性を持つと表現される。そこで本発明においては、水分量の違いに着目し、素材に含有される水が5〜50重量%のものをペースト状と定義し、50〜90重量%のものをスラリー状と定義する。また、素材に含まれる水が0〜5重量%のものを粉末状、90〜100重量%のものを液体状と定義する。ただし、5重量%、50重量%、90重量%付近のものは明確に定義することができないため、技術常識の範囲内で使い分けることができるものとする。
【0028】
本発明の組成物で用いられるペースト状の機能性素材の加工方法は特に制限されないが、例えば、主原料をミキサー等で破砕して得ることもできるし、培地での培養後に濃縮して得ることもできるし、主原料をタンクに漬け込み発酵・熟成を経て得ることもできる。また、適切な流動性を保つために加水することもできるし、加熱蒸発することもできる。
【0029】
本発明の組成物に用いられる他の機能性素材の剤型としては特に制限されず、例えば粉末状、ペースト状、スラリー状、液体状などが挙げられるが、粉末状に比べて油相への分散が早く製造コストを抑えられること、適度な水が含有されるため油相と水相の分離を抑えられることなどの理由から、ペースト状が、特に好ましい。
【0030】
本発明の組成物におけるペースト状の機能性素材の含有量は、体内での効果をより発揮する観点から、0.1重量%以上が好ましく、2重量%以上が特に好ましく、5重量%以上が最も好ましい。また、組成物に含まれる水が多いと油相と水相が分離するため、油相と水相の分離を抑える観点から、30重量%以下が好ましく、20重量%以下が特に好ましく、15重量%以下が最も好ましい。
【0031】
本発明の組成物でペースト状の機能性素材を用いる場合、その水分量は5〜50重量%の範囲であれば特に制限されないが、水相と油相の分離を抑える観点から、50重量%以下が好ましく、40重量%以下が特に好ましく、35重量%以下が最も好ましい。また、ペースト状の機能性素材に含まれる水により水溶性の機能性素材の乳化を安定させる観点から、5重量%以上が好ましく、8重量%以上が特に好ましく、10重量%以上が最も好ましい。
【0032】
(製造用剤)
本発明の組成物には、ソフトカプセルに一般に用いられる製造用剤、例えば、界面活性剤(乳化剤)やワックス類などを適宜含有させることができる。本発明で用いられる界面活性剤としては、特に制限されないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン及びサポニンが挙げられる。水溶性の機能性素材の乳化がより安定する観点から、グリセリン脂肪酸エステルが好ましい。また、本願発明で用いられるワックス類としては、特に制限されないが、例えば、ミツロウ、米ぬかロウ、カルマウバロウなどを挙げられる。
【0033】
(皮膜)
本発明の組成物は、一般に用いられるソフトカプセルの皮膜に充填される。このような皮膜の組成は、例えば、ゼラチン、脂肪酸エステル、ソルビトール、カラメル色素、デンプン、プルラン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ソルビトール液、酸化チタンなどが挙げられ、1種又は2種以上を好適に組み合わせることができる。特に、酸素や水を透過しにくく、安価に入手可能なゼラチンを用いることが好ましい。
【0034】
(製造方法)
本発明の別の態様はチアミンの減衰を抑えたソフトカプセルの製造方法であって、水及び/又はチアミン以外の水溶性ビタミンを含有する組成物に、さらにチアミン硝酸塩及びジベンゾイルチアミン塩酸塩の中から選択される1種以上のチアミンを充填したことを特徴とする、ソフトカプセルの製造方法である。特定のチアミンを用いることにより、チアミン以外の水溶性ビタミンや水の存在下であってもソフトカプセルの内容液に含まれるチアミンの減衰を抑えたソフトカプセルを製造することができる。
【0035】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0036】
(比較例)
(内容液の調製)
オリーブ油77.6重量%及びグリセリン脂肪酸エステル12重量%を乳化釜に投入し、下記に記す機能性素材を投入後、攪拌して乳化させることで、ソフトカプセルの内容液を調製した。機能性素材としては、水溶性ビタミン(チアミン塩酸塩0.4重量%、リボフラビン0.3重量%、ピリドキシン塩酸塩0.4重量%、シアノコバラミン製剤0.7重量%)及びペースト状の植物発酵物8.6重量%を用いた。なお、本試験で用いたシアノコバラミン製剤中のシアノコバラミンの含有量は0.1重量%であり、残量はデキストリンであった。また、本試験で用いたペースト状の植物発酵物は水を35重量%含有するものであり、植物性原材料を発酵・熟成して加工されたものである。具体的には、野菜、果実、穀類など10種類以上の植物性原料を黒砂糖、酵母菌と共にタンクに漬け込み、自然発酵させたのちに、加熱により濃縮することで作製された。
【0037】
(皮膜への充填)
得られた内容液をゼラチン、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリンからなる皮膜に充填することで、ソフトカプセルを作製した。内容液中の水分量は3.0重量%であった。
【0038】
(安定性試験の実施と、チアミン塩酸塩の分析)
作製したソフトカプセルをアルミパウチに充填し、40℃、75%RH(相対湿度)の恒温槽に入槽し、60日間後、120日後、180日後に恒温槽から取り出した。続いて、入槽前及び入槽後のソフトカプセルから内容液を回収し、水を加え超音波にて溶解後、メンブレンフィルタにてろ過した。得られたろ液に含まれるチアミン塩酸塩の濃度を、高速液体クロマトグラフィを用いて分析した。得られた分析値をもとに、入槽60日後、120日後、180日後のソフトカプセルの内容液に含まれるチアミン塩酸塩の減衰率を次式に従い、算出した。
【0042】
測定値に基づき、チアミン塩酸塩の減衰率に関する近似式を得た。安定性試験の経過日数をt(日)、減衰率をF(t)(%)として、近似式は以下の通りである。
【0044】
近似式に基づき、比較例における30日後のチアミン塩酸塩の減衰率(F(30))を算出した結果、40.0%であった。
【0045】
(実施例1)
チアミンとしてチアミン硝酸塩を選択したこと以外は、比較例と同様にソフトカプセルを作製した。作製したソフトカプセルをアルミパウチに充填し、40℃、75%RHの恒温槽に入槽し、30日後のソフトカプセルの内容液に含まれるチアミン硝酸塩の含有量を同様の方法にて分析し、減衰率を算出した。
【0046】
(実施例2)
チアミンとしてジベンゾイルチアミン塩酸塩を選択し、内容液全体に対する割合を0.6重量%としたこと以外は、比較例と同様にソフトカプセルを作製した。作製したソフトカプセルをアルミパウチに充填し、40℃、75%RHの恒温槽に入槽し、30日後のソフトカプセルの内容液に含まれるジベンゾイルチアミン塩酸塩の含有量を同様の方法にて分析し、減衰率を算出した。
【0047】
実施例1及び実施例2の30日後のソフトカプセルにおけるチアミンの減衰率(%)及び、比較例の近似式を用いて得られたチアミンの減衰率(F(30))(%)を表2に示す。
【0049】
チアミンを含有する実施例及び比較例の内容液は、水及びチアミン以外の水溶性ビタミン(リボフラビン、ピリドキシン、シアノコバラミン)も共に含有することから、チアミンの減衰が予測された。実際に、チアミン塩酸塩を用いた比較例では、減衰率が大きく、30日後にはチアミンが40%程度減衰することが示唆された。一方、チアミン硝酸塩又はジベンゾイルチアミン塩酸塩を用いた場合には、その減衰を抑えられており、30日後においても実施例1では5%程度、実施例2では1%程度であり、ほとんど減衰しなかった。以上より、水及びチアミン以外の水溶性ビタミンを含有する組成物において、特定のチアミンを用いることで、その減衰を抑えられることが分かった。
【0050】
(製造例1〜20)
以下に製造例、及び、各製造例における組成物中の水分量を記す。表3、及び、表4の各製造例で得られた組成物を、ゼラチン、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリンからなる皮膜に充填することで、ソフトカプセルを作製した。ソフトカプセルに占める内容液の重量は300mgであり、1日に1〜3粒を摂取目安とした。なお、製造例で用いたペースト状の機能性素材(植物発酵物、黒酢、カキエキス、ブルーベリーエキス)中の水分量はいずれも35重量%であり、粉末状の機能性素材(植物発酵物、黒酢、カキエキス、ブルーベリーエキス)中の水分量はいずれも5重量%であった。
【0053】
製造例1〜20で作製したソフトカプセルの内容液は、特定のチアミンを使用することから、ソフトカプセル中でのチアミンの減衰を抑制できるものである。