【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の硬化性組成物は、
主鎖が分岐鎖を有し且つ分子末端に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)と、
主鎖が直鎖状であり且つ分子末端に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(B)とを含有し、
上記ポリオキシアルキレン系重合体(A)の含有量と上記ポリオキシアルキレン系重合体(B)の含有量の比[ポリオキシアルキレン系重合体(A)の質量部/ポリオキシアルキレン系重合体(B)の質量部]が1以上であることを特徴とする。
【0010】
[ポリオキシアルキレン系重合体(A)]
硬化性組成物は、主鎖が分岐鎖を有し且つ分子末端に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)を含有している。ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。本発明において、ポリオキシアルキレン系重合体の「主鎖」とは、分子中において最も長い分子鎖をいう。なお、主鎖が分岐鎖を有し且つ分子末端に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)を単に「ポリオキシアルキレン系重合体(A)」ということがある。
【0011】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、主鎖が分岐鎖を有している。ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖が分岐鎖を有していることによって、硬化性組成物の硬化物において、分岐鎖が絡み合い、分子間の隙間を低減させることにより、硬化物の吸水性を低下させている。このように、硬化物の吸水性を低下させることによって、硬化物が吸水に伴って膨潤することを防止し、硬化物の耐水接着性を向上させている。
【0012】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖は、一般式(1)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましい。
−(O−R
1)
n− (1)
(式中、R
1は炭素数が1〜14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)
【0013】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖は、一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0014】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖骨格としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、及びポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレン共重合体などが挙げられ、硬化性組成物の硬化物の柔軟性が向上するので、ポリオキシプロピレンが好ましい。
【0015】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、主鎖に分岐鎖を有している。「分岐鎖」とは、2個以上の炭素を有する分子鎖をいう。従って、メチル基は分岐鎖に含まれない。
【0016】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖に有する分岐鎖は、上述の通り、硬化性組成物の硬化物において、分子鎖同士の絡み合いによる分子間の隙間の低減を図るものであるので、ある程度の分子鎖長を有している必要がある。従って、分岐鎖は、2個以上の炭素数を有する。分岐鎖の炭素数は、硬化性組成物の粘度を低下させて取り扱い性を向上させることができるので、14個以下が好ましく、13個以下がより好ましく、12個以下がより好ましい。
【0017】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖に有する分岐鎖としては、炭素数が2個以上有しておれば、特に限定されないが、ポリオキシアルキレン系重合体(B)との相溶性が向上し、硬化性組成物の取り扱い性及び硬化性組成物の硬化物の柔軟性及び耐水接着性が向上するので、ポリオキシアルキレン鎖が好ましい。
【0018】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖に有する分岐鎖は、一般式(2)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましい。
−(O−R
2)
m− (2)
(式中、R
2は炭素数が1〜14のアルキレン基を表し、mは、繰り返し単位の数であって2以上の整数である。)
【0019】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖に有する分岐鎖は、一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0020】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖に有する分岐鎖の骨格としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、及びポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレン共重合体などが挙げられ、硬化性組成物の硬化物が優れた柔軟性を維持しつつ、優れた耐水接着性を有するので、ポリオキシプロピレンが好ましい。
【0021】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)において、分岐鎖を有する主鎖骨格構造としては、一般式(3)で示される構造を含むことが好ましい。
【0022】
【化1】
(式中、R
3、R
4及びR
5はそれぞれ、炭素数が1〜14のアルキレン基を表す。R
6は、炭素数が1〜6のアルキレン基である。R
3、R
4、R
5及びR
6は互いに同一であっても相違してもよい。x及びyは、繰り返し単位の数であって正の整数である。zは、繰り返し単位の数であって2以上の整数である。)
【0023】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、分子末端に加水分解性シリル基を有している。加水分解性シリル基は、主鎖の両末端のうちの何れか一方の末端のみに、又は、両末端に結合していることが好ましい。加水分解性シリル基が主鎖の末端に結合していると、硬化性組成物の硬化物の優れた柔軟性を維持して優れた常態接着性を付与しつつ、優れた耐水接着性を付与することができる。なお、ポリオキシアルキレン系重合体(A)が分子中に複数個の加水分解性シリル基を有する場合、加水分解性シリル基は同一であっても互いに相違していてもよい。
【0024】
加水分解性シリル基としては、例えば、ケイ素原子と結合した加水分解性基を有するケイ素含有基又はシラノール基のように、湿気又は架橋剤の存在下、必要に応じて触媒などを使用することによって縮合反応を生じる基をいう。なお、シラノール基とは、ケイ素原子に直接、ヒドロキシ基が結合している官能基(≡Si−OH)を意味する。
【0025】
加水分解性シリル基の加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。
【0026】
なかでも、加水分解性シリル基としては、硬化性組成物の硬化物の柔軟性を維持して優れた常態接着性を付与しつつ、優れた耐水接着性を付与することができるので、アルコキシシリル基が好ましい。
【0027】
アルコキシシリル基は、−SiR
7j(OR
8)
3-jで示される構造を有していることが好ましい。式中、R
7は、置換基を有してもよい炭素数が1〜20のアルキル基又は水素原子を表す。R
8は、炭素数が1〜6のアルキル基を表す。jは、0〜2の整数を表す。
【0028】
アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;プロピルジメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、硬化性組成物の硬化物の柔軟性を維持し、優れた常態接着性を付与しつつ、優れた耐水接着性を付与することができるので、ジアルコキシシリル基が好ましく、ジメトキシシリル基がより好ましい。
【0029】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)において、1分子中における加水分解性シリル基の平均個数は、1〜3個が好ましく、1〜2個がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A)における加水分解性シリル基の数が上記範囲内にあると、硬化性組成物の硬化物の柔軟性が向上する。
【0030】
なお、本発明において、ポリオキシアルキレン系重合体中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、
1H−NMRにより求められるポリオキシアルキレン系重合体中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められるポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0031】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、硬化性組成物の硬化物が優れた柔軟性を維持して優れた耐水接着性を有するので、主鎖骨格がポリオキシプロピレンであって分岐鎖を有し、主鎖骨格の末端に加水分解性シリル基としてジメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体が好ましい。
【0032】
主鎖骨格がポリオキシプロピレンであって分岐鎖を有し、主鎖骨格の末端に加水分解性シリル基としてジメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体として市販品を用いることができる。市販品は、AGC社から商品名「エクセスター6250」及び「エクセスター3430」にて市販されているものを用いることができる。
【0033】
本発明において、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、例えば、末端に水酸基などの官能基を有するポリオキシアルキレン系重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基及び不飽和基を有する有機化合物を反応させ、次いで、得られた反応生成物に加水分解性基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化することによって製造することができる。
【0034】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量は、18000以下が好ましく、17000以下がより好ましく、15000以下がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量は、5000以上が好ましく、6000以上がより好ましく、7000以上がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量が18000以下であると、硬化性組成物の硬化物の耐水接着性が向上すると共に、硬化性組成物の粘度を低く抑えることができ、硬化性組成物の取り扱い性を向上させて、硬化性組成物に優れた塗工性を付与することができる。ポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量が5000以上であると、硬化性組成物の硬化物の優れた柔軟性を維持して、硬化物に優れた常態接着性を付与することができる。
【0035】
なお、本発明において、ポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量及び重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。具体的には、ポリオキシアルキレン系重合体6〜7mgを採取し、採取したポリオキシアルキレン系重合体を試験管に供給した上で、試験管に0.05質量%のBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を含むo−DCB(オルトジクロロベンゼン)溶液を加えてポリオキシアルキレン系重合体の濃度が1mg/mLとなるように希釈して希釈液を作製する。
【0036】
溶解濾過装置を用いて145℃にて回転速度25rpmにて1時間に亘って上記希釈液を振とうさせてポリオキシアルキレン系重合体をBHTを含むo−DCB溶液に溶解させて測定試料とする。この測定試料を用いてGPC法によってポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量及び重量平均分子量を測定することができる。
【0037】
ポリオキシアルキレン系重合体における数平均分子量及び重量平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o−DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500〜8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
【0038】
[ポリオキシアルキレン重合体(B)]
硬化性組成物は、主鎖が直鎖状であり且つ分子末端に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(B)を含む。ポリオキシアルキレン系重合体(B)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、主鎖が直鎖状であり且つ分子末端に加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(B)を単に「ポリオキシアルキレン系重合体(B)」ということがある。
【0039】
硬化性組成物は、主鎖が直鎖状であるポリオキシアルキレン系重合体(B)を含有していることによって、硬化性組成物の硬化物に柔軟性を付与し、優れた常態接着性を付与することができる。更に、硬化性組成物の粘度を低減させて取り扱い性を向上させ、硬化性組成物に優れた塗工性を付与することができる。なお、主鎖が「直鎖状」とは、主鎖が上述した分岐鎖を有していないことをいう。
【0040】
ポリオキシアルキレン系重合体(B)の主鎖は、一般式(4)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましい。
−(O−R
9)p− (4)
(式中、R
9は炭素数が1〜14のアルキレン基を表し、pは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)
【0041】
ポリオキシアルキレン系重合体(B)の主鎖は、一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0042】
ポリオキシアルキレン系重合体(B)の主鎖骨格としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、及びポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレン共重合体などが挙げられ、硬化性組成物の硬化物の柔軟性が向上するので、ポリオキシプロピレンが好ましい。
【0043】
ポリオキシアルキレン系重合体(B)は、分子末端に加水分解性シリル基を有している。加水分解性シリル基は、主鎖の何れか一方の末端又は両末端に結合していることが好ましく、主鎖の何れか一方の末端のみに結合していることが好ましい。加水分解性シリル基が主鎖の末端に結合していると、硬化性組成物の硬化物の優れた柔軟性を維持して優れた常態接着性を付与しつつ、優れた耐水接着性を付与することができる。加水分解性シリル基が主鎖の両末端のうち、何れか一方の末端にのみ結合していると、硬化性組成物の硬化物の耐水接着性が向上する。なお、ポリオキシアルキレン系重合体(B)が分子中に複数個の加水分解性シリル基を有する場合、加水分解性シリル基は同一であっても互いに相違していてもよい。
【0044】
ポリオキシアルキレン系重合体(B)において、加水分解性シリル基は、主鎖の末端に、炭素数が1〜25のアルキレン基(好ましくは、炭素数が1〜6のアルキレン基)を介して結合していることが好ましい。加水分解性シリル基が炭素数が1〜25のアルキレン基を介して結合していると、硬化性組成物の硬化物の常態接着性が向上する。
【0045】
ポリオキシアルキレン系重合体(B)において、加水分解性シリル基は、主鎖の末端に、ウレタン結合を介して結合していてもよい。加水分解性シリル基がウレタン結合を介して主鎖の末端に結合していると、硬化性組成物の硬化物の常態接着性が向上する。硬化性組成物の硬化物の柔軟性が向上するので、ウレタン結合と加水分解性シリル基とがアルキレン基(好ましくは、炭素数が1〜25のアルキレン基)を介して結合していることが好ましい。
【0046】
ポリオキシアルキレン系重合体(B)に有する加水分解性シリル基は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)に有する加水分解性シリル基と同様であるので、同一の構造に関する説明は省略する。なお、ポリオキシアルキレン系重合体(A)の加水分解性シリル基と、ポリオキシアルキレン系重合体(B)の加水分解性シリル基とは同一であっても相違してもよい。
【0047】
アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;プロピルジメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、硬化性組成物の硬化物の柔軟性を維持し、優れた常態接着性を付与しつつ、優れた耐水接着性を付与することができるので、ジアルコキシシリル基、トリメトキシシリル基が好ましく、ジアルコキシシリル基がより好ましく、ジメトキシシリル基がより好ましい。
【0048】
ポリオキシアルキレン系重合体(B)において、1分子中における加水分解性シリル基の平均個数は、1〜2個が好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(B)における加水分解性シリル基の数が上記範囲内にあると、硬化性組成物の硬化物の強靱性が向上する。
【0049】
ポリオキシアルキレン系重合体(B)は、市販されているものを用いることができる。主鎖骨格がポリオキシプロピレンであり、主鎖骨格の一方の末端に加水分解性シリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体(B)としては、例えば、カネカ社から商品名「SAT135」及び「SAT145」、AGC社から商品名「エクセスターS1000N」、並びに、ワッカー社から商品名「XM20」にて市販されている。
【0050】
ポリオキシアルキレン系重合体(B)の数平均分子量は、30000以下が好ましく、25000以下がより好ましく、20000以下がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(B)の数平均分子量は、3000以上が好ましく、4000以上がより好ましく、5000以上がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(B)の数平均分子量が30000以下であると、硬化性組成物の粘度を低く抑えることができ、硬化性組成物の取り扱い性を向上させて、硬化性組成物に優れた塗工性を付与することができる。ポリオキシアルキレン系重合体(B)の数平均分子量が3000以上であると、硬化性組成物の硬化物の優れた柔軟性を維持して、硬化物に優れた常態接着性を付与することができる。
【0051】
硬化性組成物において、ポリオキシアルキレン系重合体(A)の含有量と、ポリオキシアルキレン系重合体(B)の含有量の比(質量比)[ポリオキシアルキレン系重合体(A)の質量部/ポリオキシアルキレン系重合体(B)の質量部]は1以上であり、1.1以上が好ましく、1.2以上がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A)の含有量と、ポリオキシアルキレン系重合体(B)の含有量の比(質量比)[ポリオキシアルキレン系重合体(A)の質量部/ポリオキシアルキレン系重合体(B)の質量部]は、5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3.5以下がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A)の含有量と、ポリオキシアルキレン系重合体(B)の含有量の比(質量比)[ポリオキシアルキレン系重合体(A)の質量部/ポリオキシアルキレン系重合体(B)の質量部]が1以上であると、硬化性組成物の硬化物の優れた柔軟性を維持しながら、硬化物の耐水接着性を向上させることができると共に、硬化物に優れた強靱性を付与することができる。ポリオキシアルキレン系重合体(A)の含有量と、ポリオキシアルキレン系重合体(B)の含有量の比(質量比)[ポリオキシアルキレン系重合体(A)の質量部/ポリオキシアルキレン系重合体(B)の質量部]が5以下であると、硬化性組成物の硬化物の柔軟性を維持しながら、硬化物に強靱性を付与することができる。
【0052】
[無機充填材]
硬化性組成物は無機充填材を含有していてもよい。無機充填材と、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(B)とを併用することによって、硬化性組成物の硬化物の優れた柔軟性を維持しつつ、硬化物に優れた強靱性を付与することができる。
【0053】
無機充填材としては、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、微粉末シリカ、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、及びガラスバルーンなどが挙げられ、炭酸カルシウムが好ましい。無機充填材は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0054】
炭酸カルシウムとしては、例えば、重質炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウムが好ましく挙げられる。
【0055】
重質炭酸カルシウムは、例えば、天然のチョーク(白亜)、大理石、石灰石などの天然の炭酸カルシウムを微粉状に粉砕することにより得ることができる。
【0056】
沈降炭酸カルシウムは、例えば、石灰石を原料として用い、化学的反応を経て製造することができる。沈降炭酸カルシウムとしては、軽質炭酸カルシウム、及び膠質炭酸カルシウムなどが挙げられ、膠質炭酸カルシウムが好ましい。軽質炭酸カルシウムの一次粒子径は1〜3μmが好ましい。又、軽質炭酸カルシウムは、紡錘形状又は柱状の形状を有することが好ましい。膠質炭酸カルシウムの一次粒子径は、0.02〜0.1μmが好ましい。膠質炭酸カルシウムは、立方体状を有することが好ましい。
【0057】
炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウム及び沈降炭酸カルシウムのうちいずれか一方を用いてもよく、双方を用いてもよい。重質炭酸カルシウムと沈降性炭酸カルシウムとを組み合わせて用いることにより、硬化性組成物にチキソ性を付与することができ、塗工ムラを防ぐことができる。
【0058】
炭酸カルシウムは、その表面に表面処理が施されていてもいなくてもよい。表面処理された炭酸カルシウムと表面処理されていない炭酸カルシウムは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。炭酸カルシウムに表面処理が施されている場合、表面処理は、脂肪酸や脂肪酸エステルなどを用いて行なわれていることが好ましい。
【0059】
硬化性組成物中における無機充填材の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して100質量部以上が好ましく、150質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中における無機充填材の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して500質量部以下が好ましく、400質量部以下がより好ましい。無機充填材の含有量が100質量部以上であると、硬化性組成物の硬化物に優れた強靭性を付与することができる。無機充填材の含有量が500質量部以下であると、硬化性組成物の硬化物の優れた柔軟性付与して、硬化物の耐水接着性を向上させることができる。
【0060】
[シランカップリング剤]
硬化性組成物は、シランカップリング剤を含有していてもよい。シランカップリング剤を含有することにより、硬化性組成物の硬化物に優れた常態接着性及び耐水接着性、特に常態接着性を付与することができる。
【0061】
シランカップリング剤としては、例えば、アミノシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、イソシアネートシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤、カルボキシシランカップリング剤、ハロゲンシランカップリング剤、カルバメートシランカップリング剤、アルコキシシランカップリング剤、及び酸無水物シランカップリング剤などが挙げられる。なかでも、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(B)との相乗効果によって、硬化性組成物の常態接着性と耐水接着性が向上するので、アミノシランカップリング剤とエポキシシランカップリング剤の併用が好ましい。
【0062】
アミノシランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’−ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリエトキシリル)プロピル]ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。
【0063】
なかでも、アミノシランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−(2−アミノエチル)−3−プロピルトリエトキシシランが好ましく挙げられ、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランがより好ましく挙げられる。
【0064】
エポキシシランカップリング剤とは、一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子と、エポキシ基を含有する官能基とを含む化合物を意味する。エポキシシランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、及び2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられ、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0065】
硬化性組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。シランカップリング剤の含有量が0.5質量部以上であると、硬化性組成物の硬化物に十分な常態接着性を付与することができる。シランカップリング剤の含有量が20質量部以下であると、硬化性組成物の貯蔵安定性及び取り扱い性を向上させることができる。
【0066】
[シラノール縮合触媒]
硬化性組成物は、シラノール縮合触媒を含有していてもよい。シラノール縮合触媒とは、ポリオキシアルキレン系重合体が有する加水分解性シリル基が加水分解するなどにより形成されたシラノール基同士の脱水縮合反応を促進させるための触媒である。
【0067】
シラノール縮合触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ジオクチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ジオクチル錫ジラウレート、ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド、及びジブチル錫オキシビスエトキシシリケートなどの有機錫系化合物;テトラ−n−ブトキシチタネート、及びテトライソプロポキシチタネートなどの有機チタン系化合物;1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカー5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカー5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナー5−エンなどのシクロアミジン系化合物;ジブチルアミン−2−エチルヘキソエートなどが挙げられる。また、他の酸性触媒や塩基性触媒もシラノール縮合触媒として用いることができる。これらのシラノール縮合触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0068】
なかでも、シラノール縮合触媒としては、硬化性組成物を均一に硬化させることができるので、有機錫系化合物が好ましく、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)がより好ましい。
【0069】
硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して10質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましい。シラノール縮合触媒の含有量が0.1質量部以上であると、硬化性組成物の硬化性が向上する。シラノール縮合触媒の含有量が10質量部以下であると、硬化性組成物の硬化物は優れた常態接着性を有する。
【0070】
[可塑剤]
硬化性組成物は、反応基を有しない可塑剤を含有していてもよい。可塑剤としては、特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシルなどの非芳香族二塩基酸エステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチルなどの脂肪族エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステルなどのポリアルキレングリコールのエステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェートなどのリン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン−アクリロニトリル、ポリクロロプレン;塩素化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニルなどの炭化水素系油;プロセスオイル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリオールの水酸基をエステル基、エーテル基などに変換した誘導体などのポリエーテル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルなどのエポキシ系可塑剤類;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などの2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤類;アクリル系可塑剤を始めとするビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体類などが挙げられる。なお、可塑剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0071】
可塑剤の数平均分子量は、1000以上が好ましく、1500以上がより好ましい。可塑剤の数平均分子量は、2900以下がより好ましく、2800以下がより好ましく、2500以下がより好ましい。可塑剤の数平均分子量が1000以上であると、硬化性組成物の硬化物に柔軟性を付与しつつ、強靱性も付与することができ好ましい。可塑剤の数平均分子量が2900以下であると、硬化性組成物の粘度を抑制して取り扱い性を向上させることができると共に、硬化性組成物の硬化物の柔軟性を向上させることができる。
【0072】
[他の添加剤]
硬化性組成物は、酸化防止剤、脱水剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、揺変剤、顔料、染料、沈降防止剤及び溶剤など他の添加剤を含んでいてもよい。なかでも、酸化防止剤が好ましく挙げられる。
【0073】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。硬化性組成物中における酸化防止剤の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、0.3〜10質量部がより好ましい。
【0074】
[脱水剤]
硬化性組成物は、脱水剤を含有していることが好ましい。脱水剤によれば、硬化性組成物を保存している際に、空気中などに含まれている水分によって硬化性組成物が硬化することを抑制することができる。
【0075】
脱水剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシランなどのシラン化合物;並びにオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、及びオルト酢酸エチルなどのエステル化合物などを挙げることができる。脱水剤としては、ニビルトリメトキシシランが好ましい。なお、脱水剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0076】
硬化性組成物中における脱水剤の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100質量部に対して0.5〜20質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましく、1〜5質量部が特に好ましい。脱水剤の含有量が0.5質量部以上であると、硬化性組成物の貯蔵安定性が向上する。脱水剤の含有量が20質量部以下であると、硬化性組成物の貯蔵安定性及び取り扱い性が向上する。
【0077】
硬化性組成物は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及びポリオキシアルキレン系重合体(B)、並びに必要に応じて他の添加剤を混合する方法により製造することができる。混合は減圧下で行うことが好ましく、硬化性組成物は、外気中の水分との反応を防止するため、密封された容器に保管することが好ましい。
【0078】
硬化性組成物の23℃における粘度は、1.5万mPa・s以上が好ましく、2万mPa・s以上がより好ましい。硬化性組成物の23℃における粘度は、15万mPa・s以下が好ましく、8万mPa・s以下がより好ましい。なお、硬化性組成物の23℃における粘度は、JIS K6833に準拠してB型粘度計を用いて23℃で回転数10rpmの条件にて測定された値をいう。
【0079】
硬化性組成物の硬化物の最大応力(Tmax)は、1.3以上が好ましい。硬化性組成物の硬化物の最大応力(Tmax)は、5以下が好ましい。硬化物の最大応力(Tmax)が1.3以上であると、硬化性組成物の硬化物の常態接着性及び耐水接着性が向上する。
【0080】
硬化性組成物の硬化物の伸び(Emax)は、150%以上が好ましい。硬化性組成物の硬化物の伸び(Emax)は、800%以下が好ましい。硬化物の伸び(Emax)が150%以上であると、硬化物の優れた柔軟性を維持して、硬化物に優れた耐水接着性を付与することができる。
【0081】
なお、硬化性組成物の硬化物の最大応力(Tmax)及び伸び(Emax)は下記の要領で測定された値をいう。硬化性組成物をポリエチレン板上に膜厚が2.0mmとなるように塗工した後、23℃、相対温度50%の環境下で14日間に亘って養生して、硬化性組成物を硬化させて硬化物シートを作製する。得られた硬化物シートをJIS K 6251に準拠した3号ダンベル形状に抜き取って試験片を作製した後、インストロン引張試験機(例えば、インストロンジャパン社製)を用いてクロスヘッドスピード500mm/分で試験片の引張試験を行い、最大引張応力(Tmax)、及び、試験片が破断した時の標点間距離の変位を測定し、伸び(Emax)を求める。
【0082】
硬化性組成物は、接着剤、シーリング剤などに好適に用いることができ、建築用接着剤(例えば、床用接着剤など)により好適に用いることができる。硬化性組成物は、空気中の湿気(水分)や、床仕上げ材、床下地材などの被着体に含まれている湿気(水分)によって硬化し、被着体同士を十分な接着力でもって接着一体化させることができる。
【0083】
硬化性組成物は、例えば、床構造の構築に用いられる。床構造は、例えば、床基盤上に敷設された床下地材上に、硬化性組成物を硬化させてなる硬化物層を介して床仕上げ材が接着一体化されることによって構築される。床構造は、床基盤と、上記床基盤上に敷設されている床下地材と、上記床下地材上に形成され且つ上記床下地材と接着一体化している、硬化性組成物を硬化させてなる硬化物層と、上記硬化物層上に敷設され且つ上記硬化物層と接着一体化している床仕上げ材とを含んでいる。
【0084】
床仕上げ材を構成する部材としては、例えば、合板及びミディアム・デンシティ・ファイバーボード(MDF:Medium Density Fiberboard)などの木質系材料、タイル、塩化ビニルシート、及び石材などが挙げられる。
【0085】
床下地材を構成する部材としては、例えば、合板、パーチクルボード、木根太、石膏ボード、スレート板、及びコンクリート板などが挙げられる。