【解決手段】携帯用情報機器10は、本体筐体14と、本体筐体14内に設けられたアンテナ素子40、電子部品27およびバッテリー28と、バッテリー28におけるアンテナ素子40と電子部品27との間に介在する側壁の少なくとも一部に設けられる第1シールド膜54と、バッテリー28における天面28eおよび底面28fの少なくとも一方で、第1シールド膜54に沿って設けられる第1シールドクッション56とを備える。第1シールドクッション56はバッテリー28と上カバー22とによって弾性的に圧縮されて挟持され、アンテナ素子40と電子部品27とは第1シールド膜54および第1シールドクッション56によって電磁的に遮蔽されている。
【背景技術】
【0002】
ノートブック型パーソナルコンピュータ(ノート型PC)のような電子機器は、WWAN(Wireless Wide Area Network)やWLAN(Wireless Local Area Network)等の各種無線通信のアンテナを搭載している(例えば特許文献1参照)。さらに、このような電子機器は、音楽や音声等の出力用のスピーカーを搭載している(例えば特許文献2参照)。スピーカーはスピーカーボックスに設けられることがある。さらにまた、このような電子機器は電源としてバッテリーを備えていることがある。
【0003】
ノート型PCは、マザーボードおよびキーボードなどを備えた本体筐体と、該本体筐体に対してヒンジにより開閉可能なディスプレイ筐体とを有する。このような電子機器の筐体は、その小型化および薄型化が進んでおり、特にノート型PCの場合、いわゆる大画面化・ナローベゼル化によって枠体が細くなりつつある。従ってアンテナやスピーカーをディスプレイ筐体に設けることが困難になっており、これらを本体筐体に設けることがある。
【0004】
スピーカーボックスは、高質な音響出力のためにはある程度大きい容量が必要とされている。スピーカーボックスはステレオ音声の出力のために本体筐体の左右両端に設けられることがある。
【0005】
アンテナは電波の送受信性能を考慮すると筐体の端部に設けることが望ましい。アンテナの構成要素のうちアンテナ素子は筐体と一体化すると送受信性能が向上するとともにスペース効率がよい。このような背景からアンテナ素子とスピーカーボックスとは近い位置に配置される場合がある。また、電子機器の可動時間を長く確保するためにバッテリーの容積は大型化しつつある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、アンテナを本体筐体に設ける場合には、CPUなどの電磁ノイズ源から遮蔽するためのシールド手段を設けることが望ましい。しかしながら、アンテナの周辺には大型化されつつあるスピーカーボックスやバッテリーが配置されることがあり、シールド手段としての専用のシールド壁を設けることはスペース上の観点から好ましくない。
【0008】
本発明は上記の課題を考慮してなされたものであり、スペース効率がよく、しかもアンテナに対する電磁ノイズの影響を抑制することのできる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の態様に係る電子機器は、電子機器であって、筐体と、前記筐体内に設けられたアンテナ素子と、前記筐体内に設けられた電子部品と、前記筐体内に設けられたバッテリーと、前記バッテリーにおける前記アンテナ素子と前記電子部品との間に介在するバッテリー側壁の少なくとも一部に設けられた第1シールド膜と、前記バッテリーにおけるバッテリー天面およびバッテリー底面の少なくとも一方で、前記第1シールド膜に沿って設けられ、該第1シールド膜と導通する第1シールドクッションと、を備え、前記第1シールド膜および前記第1シールドクッションは電磁遮蔽材で構成され、前記第1シールドクッションは前記バッテリーと前記筐体とによって弾性的に圧縮されて挟持されている。
【0010】
このように携帯用情報機器では、アンテナ素子と電子部品との間に介在するバッテリー側壁の少なくとも一部に第1シールド膜を設け、さらにバッテリーに天面およびバッテリー底面の少なくとも一方で、第1シールド膜に沿って第1シールドクッションを備えている。このような第1シールド膜、第1シールドクッションにより第1シールド構造体が形成され、アンテナに対する電磁ノイズの影響を抑制することができる。また、この第1シールド構造体は専用の遮蔽壁を設けることなく、バッテリーの一部を利用して形成されていることからスペース効率がよい。
【0011】
前記第1シールドクッションは、前記バッテリーの縁を形成するフレームに合わせて設けられていてもよい。フレームは強度部材であり第1シールドクッションを支持させるのに好適である。
【0012】
前記筐体は、キーボードが設けられ電波遮蔽部を含む筐体天板と、前記筐体天板と対向して設けられ電波遮蔽部を含む筐体底板と、を備え、前記第1シールド膜は前記バッテリー側壁から前記バッテリー天面および前記バッテリー底面の一部まで延在し、前記筐体天板と前記筐体底板とは、前記第1シールドクッションおよび前記第1シールド膜を介して導通していてもよい。これにより、筐体天板の電波遮蔽部と筐体底板の電波遮蔽部との間が一体的にシールド構造体を形成してシールド効果が高まる。
【0013】
前記第1シールドクッションは前記バッテリーにおける前記バッテリー天面と前記筐体天板との間にのみ設けられていてもよい。バッテリー底面と筐体底板との間では第1シールドクッションを省略することにより部品点数を削減することができる。
【0014】
前記筐体内に設けられたスピーカーボックスと、前記スピーカーボックスにおける前記アンテナ素子と前記電子部品との間に介在するボックス側壁の少なくとも一部に設けられた第2シールド膜と、前記スピーカーボックスにおけるボックス底面の少なくとも一方で、前記第2シールド膜に沿って設けられ、該第2シールド膜と導通する第2シールドクッションと、を備え、前記第2シールド膜および前記第2シールドクッションは電磁遮蔽材で構成され、前記第2シールドクッションは前記ボックス底面と前記筐体底板とによって弾性的に圧縮されて挟持され、前記第2シールドクッションは前記ボックス底面と前記筐体底板との間にのみ設けられていてもよい。このような第2シールド膜、第2シールドクッションにより第2シールド構造体が形成され、アンテナに対する電磁ノイズの影響を一層抑制することができる。また、この第2シールド構造体は専用の遮蔽壁を設けることなく、スピーカーボックスの一部を利用して形成されていることからスペース効率がよい。
【0015】
前記第1シールド膜および前記第1シールドクッションは、前記バッテリーにおける四方の前記バッテリー側壁のうち、少なくとも前記アンテナ素子に最も近い前記バッテリー側壁に設けられていると、シールド効果が高い。
【0016】
前記第1シールド膜および前記第1シールドクッションは、前記バッテリーにおける四方の前記バッテリー側壁のうち、前記電子部品に最も近い前記バッテリー側壁を除く箇所に設けられていると、部品点数を削減できる。
【0017】
前記筐体における前記アンテナ素子の周囲は電波透過性材料で構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記態様によれば、第1シールド膜、第1シールドクッションによりシールド構造体が形成され、アンテナに対する電磁ノイズの影響を抑制することができる。また、このシールド構造体は専用の遮蔽壁を設けることなく、バッテリーの一部を利用して形成されていることからスペース効率がよい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明にかかる電子機器の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器としての携帯用情報機器10の平面図である。本実施形態では、携帯用情報機器10としてノート型PCを例示する。携帯用情報機器10は、例えばデスクトップ型PCやタブレット型PC等でもよい。携帯用情報機器10は、ディスプレイが折り畳み可能な、いわゆるフォルダブル型であってもよい。
【0022】
図1に示すように、携帯用情報機器10は、キーボード12およびタッチパッド13を有する本体筐体(筐体)14と、ディスプレイ装置16を有するディスプレイ筐体18とを備える。キーボード12は、本体筐体14の上面において略中央から後端部にかけて広がっている。キーボード12の横幅は本体筐体14のほぼ全幅にわたっている。タッチパッド13は本体筐体14の上面において前寄りに設けられている。ディスプレイ筐体18は、本体筐体14の後端部に対して左右一対のヒンジ20,20を介して回動可能に連結されている。ディスプレイ筐体18は薄型でありその枠体は細い。ディスプレイ装置16は、例えば液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイである。
【0023】
図1は、ヒンジ20によってディスプレイ筐体18を本体筐体14から開いて使用形態とした携帯用情報機器10を上から見下ろした図である。以下、
図1に示す使用形態とされた携帯用情報機器10のディスプレイ装置16を正面から視認する方向を基準とし、本体筐体14について手前側を前、奥側を後、キーボード12を備えている側を上方、その反対側を下方、幅方向を左右と呼んで説明する。また、本体筐体14やこれに搭載される各部品について、本体筐体14を平面的に見た状態で、外周側よりも中央側を内側、中央側よりも外周側を外側と呼んで説明する。なお、これらの方向は説明の便宜上のものである。従って、製品での各部品の配置や設置姿勢等により、例えば上記の上下方向や左右方向が反転することもある。
【0024】
本体筐体14は、上カバー(筐体天板)22と、下カバー(筐体底板)24とで形成された薄い箱状の筐体である。上カバー22は前壁22a、側壁22b,22cおよび後壁22dを備える薄皿形である。ヒンジ20は、後壁22dに沿って配置されている。本体筐体14は、上カバー22の下方開口部をプレート状の下カバー24が覆うことによって箱体を形成している。本体筐体14は扁平形状で、平面視で略矩形である。
【0025】
図2は、本体筐体14の内部構造を模式的に示す底面図であり、下カバー24を取り外して本体筐体14内を上カバー22の内面側から見た図である。
【0026】
図2に示すように、本体筐体14の内部には、電子回路基板26と、ファン25と、バッテリー28と、左右一対のスピーカー30L,30Rと、左右一対のアンテナ32L,32Rとが収納されている。スピーカー30L,30Rはステレオ音声の再生が可能である。以下、スピーカー30L,30Rを代表的にスピーカー30とも呼び、アンテナ32L,32Rを代表的にアンテナ32とも呼ぶ。
【0027】
電子回路基板26は、携帯用情報機器10のマザーボードである。電子回路基板26は、例えばCPU27a、電源回路27b、メモリ27c等の電子部品27が実装されたPCB(プリント基板)である。電子部品27は電子回路基板26の片面に実装されていてもよいし、両面に実装されていてもよい。これらの電子部品27は電磁ノイズの発生源となり得る。本体筐体14の内部には、さらに、図示しない冷却モジュール、SSD(Solid State Drive),ハードディスク装置等が収納されている。これらの装置も電子部品を含んでおり、電磁ノイズの発生源となり得る。電子回路基板26は本体筐体14における後寄りに設けられている。
【0028】
スピーカー30はスピーカーボックス36と、スピーカーユニット38とを有する。アンテナ32はアンテナ素子40とアンテナ回路42(
図4参照)とを有する。スピーカーボックス36は本体筐体14に対してフローティング状態となるように接続されている。
【0029】
アンテナ素子40は本体筐体14の縁に設けられている。具体的には、アンテナ素子40は、側壁22b,22cと前壁22aとによって形成される角部45L,45Rに沿って設けられており、側壁22b,22cと前壁22aとに沿った略L字形状となっている。スピーカーボックス36はアンテナ素子40よりも内側に設けられており、該アンテナ素子40に沿った略L字形状となっている。すなわち、スピーカーボックス36は、アンテナ素子40と電子部品27との間に設けられており、電子部品27の位置から見て該電子部品27を覆っている。スピーカーボックス36は、前壁22aに沿ってアンテナ素子40よりも内側に延在しており、該延在している部分にスピーカーユニット38が設けられている。スピーカーボックス36は略L字形状であることから大きな空洞部が形成され、高質な低音再生が可能である。
【0030】
スピーカー30Lとスピーカー30Rとは適度に離れておりステレオ音声の再生に適する。アンテナ32Lとアンテナ32Rとは適度に離れており相互干渉が少ない。スピーカー30Lとスピーカー30R、およびアンテナ32Lとアンテナ32Rとは基本的に左右対称構造であるがレイアウト上の理由などによっては一部が異なっていてもよい。アンテナ32は、例えばWWANやWLANの仕様であり、第5世代移動通信システム「5G」にも適応可能である。
【0031】
スピーカーボックス36の底面(ボックス底面)36aには第2シールドクッション44が設けられている。第2シールドクッション44は、スピーカーボックス36のL字形状の全長にわたってL字を形成している。第2シールドクッション44は、電磁波ノイズをシールド可能であって、且つ柔軟性を有する材料、例えば導電性クッション状部材で形成されている。導電性クッション状部材としては、例えば、銅に錫めっきを施した材料で形成したスポンジや、ポリエチレン等の樹脂にカーボンを練り込んだスポンジ等が挙げられる。
【0032】
スピーカーボックス36における電子回路基板26の電子部品27と対向する側面の全面には第2シールド膜46が形成されている。具体的には、第2シールド膜46は、スピーカーボックス36のL字の内側面(ボックス側壁)36b、内寄りの第1端面(ボックス側壁)36cおよび後ろ側の第2端面(ボックス側壁)36dとに施されている。第2シールド膜46は、電磁波ノイズをシールド可能な材料、例えば導電性を持った金属板、導電性塗料、またはメッキ層として形成されている。第2シールドクッション44と第2シールド膜46とは接触し導通している。
【0033】
第2シールド膜46は、例えばLDS(Laser Direct Structuring)メッキで形成されている。すなわち、スピーカーボックス36は金属触媒が含有されたLDS材で射出成形し作製され、必要な箇所にレーザ照射をすることにより活性化させ、さらに所定の金属をメタライズすることにより第2シールド膜46が形成される。このような手法によれば小さくかつ複雑な形状の部品に対して、所望の箇所だけに第2シールド膜46を形成することができる。第2シールド膜46は後述する第1シールド膜54のように金属箔を用いてもよい。
【0034】
図3は、バッテリー28を斜め上方から見た一部分解斜視図である。バッテリー28は携帯用情報機器10の電源である。バッテリー28は充放電が可能な二次電池であり、例えばリチウムイオン式やニッケル水素式である。バッテリー28は本体筐体14に収納可能な板型である。
【0035】
図2および
図3に示すように、バッテリー28は、本体であるセル50と、縁を形成するフレーム52とを有する。セル50は複数の集合体であってもよい。セル50が複数室から構成されている場合には、フレーム52は個々のセル50の境部に設けられていてもよい。フレーム52はバッテリー28の四方の縁を形成しており、前フレーム52a、左フレーム52b、右フレーム52cおよび後フレーム52dを有する。
【0036】
バッテリー28は本体筐体14における中央から前端近傍にかけて広がっている。バッテリー28の後フレーム52dは平面視でキーボード12と重なる位置に配置されている。バッテリー28の前フレーム52aは、一対のスピーカーボックス36における幅方向延在部の端面36baにほぼ接している。バッテリー28の左フレーム52bおよび右フレーム52cは、左右のスピーカーボックス36の前後方向延在部の端面36bbにほぼ接している。このように、バッテリー28は本体筐体14の内部でデッドスペースがほとんどなくなるように大きな面積を占めており、大きい充電容量が確保されている。
【0037】
前フレーム52aおよび左フレーム52bは、スピーカー30Lよりも内側に設けられており、該スピーカー30Lに沿ったL字を形成している。前フレーム52aおよび右フレーム52cは、スピーカー30Rよりも内側に設けられており、該スピーカー30R沿ったL字を形成している。すなわち、バッテリー28のフレーム52a〜52cは、アンテナ素子40およびスピーカー30と電子部品27との間に設けられており、電子部品27の位置から見て該電子部品27を覆っている。また換言すれば、バッテリー28はアンテナ素子40と電子部品27との間に設けられている。
【0038】
図3に示すように、バッテリー28は四方の側壁、すなわち前壁(バッテリー側壁)28a、左壁(バッテリー側壁)28b、右壁(バッテリー側壁)28cおよび後壁(バッテリー側壁)28dを有する。これらの側壁28a〜28dはアンテナ素子40と電子部品27との間に介在している。また、バッテリー28は天面(バッテリー天面)28eおよび底面(バッテリー底面)28fを有する。
【0039】
側壁28a〜28dの少なくとも一部には第1シールド膜54が設けられる。本実施形態にかかる携帯用情報機器10では、第1シールド膜54は前壁28aに設けられる前壁シールド膜54aと、左壁28bに設けられる左壁シールド膜54bと、右壁28cに設けられる右壁シールド膜54cとを有し、後壁28dには設けられていない。第1シールド膜54は側壁から天面28eの一部および底面28fの一部まで延在している。
【0040】
第1シールド膜54は電磁遮蔽材であり、例えば銅箔やアルミニウム箔であり、バッテリー28に張り付けられている。第1シールド膜54は、上記の第2シールド膜46のようにLDSメッキとしてもよい。前壁シールド膜54a、左壁シールド膜54bおよび右壁シールド膜54cは一体でもよいし、別体のものをバッテリー28に張り付けて互いに接続させ導通させてもよい。第1シールド膜54は、バッテリー28の取付座57の部分は露呈させてもよいし、取付座57を覆ってもよい。前壁シールド膜54aは前フレーム52aを覆い、左壁シールド膜54bは左フレーム52bを覆い、右壁シールド膜54cは右フレーム52cを覆っている。
【0041】
バッテリー28における天面28eおよび底面28fの少なくとも一方で、第1シールド膜54に沿って第1シールドクッション56が設けられる。本実施形態にかかる携帯用情報機器10では、第1シールドクッション56は天面28eにのみ設けられており、底面28fには設けられていない。
【0042】
第1シールドクッション56は電磁遮蔽材で構成され、例えば上記の第2シールドクッション44と同じ材質である。第1シールド膜54がバッテリー28の天面28eまで延在している部分と第1シールドクッション56とは、例えば導電性テープで固定されており、両者は導通する。
【0043】
第1シールドクッション56は、前フレーム52aに合わせて設けられる前クッション56aと、左フレーム52bに合わせて設けられる左クッション56bと、右フレーム52cに合わせて設けられる右クッション56cとを有し、後フレーム52dには設けられていない。前クッション56a、左クッション56bおよび右クッション56cは一体でもよいし、別体のものをバッテリー28に張り付けて互いに接続させ導通させてもよい。フレーム52は強度部材であり第1シールドクッション56を支持させるのに好適である。
【0044】
図4は、
図1におけるIV〜IV線視による断面図である。
図4に示すように、上カバー22はアンテナ素子40の周囲に設けられた電波透過部58と、それ以外の電波遮蔽部60とから構成されている。下カバー24はアンテナ素子40の周囲に設けられた電波透過部62と、それ以外の電波遮蔽部64とから構成されている。上カバー22および下カバー24において電波透過部58,62はアンテナ素子40近傍の限られた部分だけに設けられ、それ以外の部分は電波遮蔽部60,64である。
【0045】
下カバー24における電波透過部62と電波遮蔽部64との相互の接続部62a,64aは厚肉構造となっており、接続強度が確保されている。電波遮蔽部64における接続部64a以外の部分は薄肉構造であり、本体筐体14が薄型化される。接続部64aは他の部分よりも厚肉であることから、内側からみて壁を形成している。
【0046】
電波遮蔽部60,64はマグネシウム等の金属板やカーボン板などの電波遮蔽材で構成されており、携帯用情報機器10の電気的グランドとなっている。電波透過部58,62は樹脂等の電波透過性材料で構成されている。上カバー22の電波透過部58と電波遮蔽部60とは同一平面を形成している。下カバー24の電波遮蔽部64は平面状であるが、電波透過部62は前方に向かって上向きとなる曲面状となっている。スピーカーボックス36の前方部分下面は、電波透過部62に沿った局面状となっている。スピーカーボックス36の後方部分の端面36baは上下方向に沿った面を形成しており、第2シールド膜46を設けるのに好適である。電波透過部58,62が設けられていることにより、アンテナ素子40は電波の送受信が容易となる。
【0047】
アンテナ32のアンテナ素子40は本体筐体14における縁に設けられており、前壁22aの一部を兼ねている。アンテナ素子40は、厳密には上カバー22と下カバー24とで形成される空間内にはないが、実質的には本体筐体14内にある。アンテナ32のアンテナ回路42はFPC(Flexible printed circuits)であって、アンテナ素子40とつながっている。アンテナ素子40の内側には、ほぼ隣接してスピーカー30のスピーカーボックス36が配置されている。スピーカーボックス36の内側には、ほぼ隣接してバッテリー28が配置されている。つまり、スピーカーボックス36はアンテナ素子40とバッテリー28との間に設けられている。
【0048】
スピーカーボックス36は上カバー22と下カバー24とで形成される内部空間の大部分を占め、大きい空洞部が確保されている。第2シールドクッション44はスピーカーボックス36の底面36aと下カバー24の電波遮蔽部64とによって弾性的に圧縮されて挟持されている。第2シールドクッション44の下面は接続部62aおよび接続部64aに跨って接触している。第2シールド膜46、第2シールドクッション44および電波遮蔽部64を第2シールド構造体66と呼ぶ。第2シールド構造体66の構成要素は互いにほぼ隙間なく接触し、且つ導通しており電磁ノイズの遮蔽効果がある。なお、第2シールドクッション44は、スピーカーボックス36ではなく下カバー24に固定されていてもよい。
【0049】
上記のとおり第2シールドクッション44はスピーカーボックス36の下面にのみ設けられており、上面には設けられてなく部品点数削減およびコスト削減が図られている。スピーカーボックス36はスピーカーユニット38を備えているため多少の振動が発生する。第2シールドクッション44は振動吸収作用があるが、スピーカーボックス36の振動をわずかながら下カバー24に伝達しうる。しかしながら下カバー24には特段の振動要素がなく共振などは発生しない。また、下カバー24には図示しないゴム足が設けられており、携帯用情報機器10が載置される机面などに振動が伝達されない。一方、上カバー22にはキーボード12などの振動要素が存在しているが、スピーカーボックス36と上カバー22との間には振動伝達要素がなく、上カバー22は振動しない。
【0050】
第1シールドクッション56はバッテリー28の天面28eと上カバー22の電波遮蔽部60とによって弾性的に圧縮されて挟持されている。第1シールドクッション56は下面が第1シールド膜54に接触し、上面が電波遮蔽部60に接触している。第1シールド膜54の下端部は下カバー24の電波遮蔽部64に接触している。すなわち、上カバー22の電波遮蔽部60と下カバー24の電波遮蔽部64とは、第1シールドクッション56および第1シールド膜54を介して導通している。電波遮蔽部60、第1シールド膜54、第1シールドクッション56および電波遮蔽部64を第1シールド構造体68と呼ぶ。第1シールド構造体68の構成要素は互いにほぼ隙間なく接触し、且つ導通しており電磁ノイズの遮蔽効果がある。上記のとおり第1シールドクッション56はバッテリー28の天面28eにのみ設けられており、底面28fには設けられてなく部品点数削減およびコスト削減が図られている。なお、第1シールドクッション56はバッテリー28ではなく、上カバー22に固定されていてもよい。
【0051】
本体筐体14の内部で、
図4における右方向にはノイズ発生源となる電子部品27が設けられている。しかしながら、アンテナ素子40と電子部品27とは第1シールド構造体68および第2シールド構造体66によって電磁的に遮蔽されており、アンテナ32の電波の送受信に対してノイズの影響を低減することができる。
【0052】
第1シールド構造体68と第2シールド構造体66とは近接しており相乗的効果が得られる。ただし、設計条件によっては第1シールド構造体68および第2シールド構造体66のいずれか一方を省略しても相応の効果は得られる。第2シールド構造体66では、スピーカーボックス36と上カバー22との間に僅かな隙間が生じうるが、その箇所のすぐ内側には第1シールド構造体68の比較的厚い第1シールドクッション56が設けられていることから、電磁ノイズが上カバー22の近傍に沿って漏出することが防止される。
【0053】
バッテリー28の底面28fには第1シールドクッション56が設けられていない。したがって、下カバー24の形状精度によっては第1シールド膜54と電波遮蔽部64との間に僅かながら隙間が生じうるが、その箇所のすぐ外側には接続部64aによって壁が形成されており、しかも該接続部64aの上面には比較的厚い第2シールドクッション44が設けられていることから、電磁ノイズが下カバー24の近傍に沿って漏出することが防止される。
【0054】
携帯用情報機器10では、第1シールド膜54および第1シールドクッション56は、バッテリー28における四方の側壁のうちアンテナ素子40に最も近い側壁に設けられている。すなわち、アンテナ32L(
図2参照)については、アンテナ素子40は角部45Lに沿ったL字形状であることから最も近い側壁である前壁28aおよび左壁28bに第1シールド膜54および第1シールドクッション56が設けられている。また、右側のアンテナ32R(
図2参照)については、アンテナ素子40は角部45Rに沿ったL字形状であることから最も近い側壁は前壁28aおよび右壁28cに第1シールド膜54および第1シールドクッション56が設けられている。仮に、アンテナ素子が前壁22aの中央附近に設けられている場合には、第1シールド膜54および第1シールドクッション56は、少なくとも該アンテナ素子に最も近い前壁28aに設けるとよい。このように、バッテリー28の四方の側壁のうちアンテナ素子40に最も近い最も近い箇所に第1シールド膜54および第1シールドクッション56を設けると電磁ノイズの遮蔽効果が高い。
【0055】
携帯用情報機器10では、第1シールド膜54および第1シールドクッション56は、バッテリー28における四方の側壁のうち、ノイズ発生源である電子部品27に最も近い側壁を除く箇所に設けられている。すなわち、バッテリー28における四方の側壁のうち電子部品27に最も近い側壁である後壁28dには第1シールド膜54および第1シールドクッション56が設けられていない。電子部品27に最も近い後壁28dはアンテナ素子40からは遠いため電磁ノイズの遮蔽効果が比較的低いため、第1シールド膜54および第1シールドクッション56を設けないことにより部品点数削減およびコスト削減が図られる。また、携帯用情報機器10がノート型PCである場合には、
図2に示すように、バッテリー28の後壁28dは平面視でキーボード12と重なる配置となりうるため、上カバー22で第1シールドクッション56を押圧させるのに適してなく、電波遮蔽部60と導通を図ることも困難であり、第1シールドクッション56の電磁ノイズの遮蔽効果が得られにくいためである。
【0056】
図5は、変形例にかかる電子機器としての携帯用情報機器10Aの断面図である。携帯用情報機器10Aは、例えば
図1の携帯用情報機器10と同様の外観である。
図5における第1シールド構造体68Aは上記の第1シールド構造体68Aに相当するものである。第1シールド構造体68Aはバッテリー28の側壁に設けられた第1シールド膜54と、上下一対の第1シールドクッション70a,70bを有する。第1シールド膜54は上記のものと同様である。第1シールドクッション70aは、上記の第1シールドクッション56と同様にバッテリー28の天面28eと上カバー22の電波遮蔽部60とによって挟持されている。第1シールドクッション70bはバッテリー28の底面28fと下カバー24の電波遮蔽部64とによって挟持されている。このような第1シールドクッション70bを設けると電波遮蔽部64との間に隙間が生じにくく、遮蔽効果が高まる。
【0057】
また図示を省略するが、設計条件により第1シールドクッション70aを省略してもよい。すなわち、上記の携帯用情報機器10の場合とは逆に、第1シールドクッション70bだけをバッテリー28の底面28fと下カバー24との間に設けてもよい。
【0058】
上述したように、携帯用情報機器10,10Aでは、バッテリー28におけるアンテナ素子40と電子部品27との間に介在する側壁28a〜28dの少なくとも一部に第1シールド膜54を設け、さらにバッテリー28における天面28eおよび底面28fの少なくとも一方で、第1シールド膜54に沿って第1シールドクッション56,70a、70bを備えている。このような第1シールド膜54、第1シールドクッション56,70a、70bにより第1シールド構造体68,68Aが形成され、アンテナ32に対する電磁ノイズの影響を抑制することができる。また、第1シールド構造体68,68Aおよび第2シールド構造体66は専用の遮蔽壁を設けることなく、バッテリー28やスピーカーボックス36の一部を利用して形成されていることからスペース効率がよい。
【0059】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。