【解決手段】携帯用情報機器は、第1筐体と、前記第1筐体と隣接して設けられ、前記第1筐体に対して、互いに面方向と垂直な方向に並ぶ平板形態と、互いに面方向で重なるように積層される積層形態との間で相対的に回動可能に連結された第2筐体と、前記第1筐体及び前記第2筐体の隣接端部を跨ぐように設けられ、前記積層形態時に前記第1筐体と前記第2筐体の前記隣接端部間に形成される隙間を覆う背表紙部材と、を備える。前記背表紙部材は、前記第1筐体と前記第2筐体の並び方向に沿って3個以上並んで設けられ、互いに対向する側面同士が相対的に回動可能な状態で隣接した複数の支柱部材と、前記支柱部材の前記対向する側面間に設けられ、前記対向する側面同士が当接した際に該側面間の相対移動を抑制する位置ずれ防止部と、を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る携帯用情報機器について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、一実施形態に係る携帯用情報機器10を閉じて積層形態とした状態での斜視図である。
図2は、
図1に示す携帯用情報機器10を開いて平板形態とした状態での模式的な平面図である。
図3は、
図2に示す携帯用情報機器10の内部構造を模式的に示す平面図である。
【0019】
図1〜
図3に示すように、携帯用情報機器10は、第1筐体12Aと、第2筐体12Bと、背表紙部材14と、ディスプレイ16と、を備える。本実施形態の携帯用情報機器10は、本のように二つ折りに折り畳み可能なタブレット型PCである。携帯用情報機器10は、携帯電話、スマートフォン、電子手帳、携帯用ゲーム機等であってもよい。
【0020】
各筐体12A,12Bは、互いに隣接して配置されている。各筐体12A,12Bは、例えば背表紙部材14に対応する辺(隣接端部12Aa,12Ba)以外の3辺に側壁を起立形成した矩形の板状部材で形成されている。各筐体12A,12Bは、例えばステンレスやマグネシウム、アルミニウム等の金属板、又は、炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂板で構成される。
【0021】
以下、
図1〜
図3に示すように、携帯用情報機器10について、筐体12A,12Bの並び方向、つまり背表紙部材14の短手方向(幅方向)をX方向と呼び、X方向と直交する隣接端部12Aa,12Baに沿った方向、つまり背表紙部材14の長手方向をY方向と呼ぶ。
【0022】
筐体12A,12Bは、互いの隣接端部12Aa,12Baが一対のヒンジ17を介して連結されている。筐体12A,12B間は、ヒンジ17により、
図1に示す積層形態と
図2に示す平板形態との間で相対的に回動可能である。ヒンジ17は、例えば筐体12A,12Bの隣接端部12Aa,12BaのY方向両端部にそれぞれに配置され、ディスプレイ16の外周縁部の外側に位置している。本実施形態の携帯用情報機器10は、ヒンジ17による筐体12A,12B間の回動中心がディスプレイ16の表面16aと一致する。
【0023】
筐体12A,12Bは、平板形態時に互いに面方向と垂直なX方向に並び、互いの隣接端部12Aa,12Ba同士が当接する(
図2及び
図4A参照)。筐体12A,12Bは、積層形態時には互いに面方向で重なるように積層され、互いの隣接端部12Aa,12Ba間が離間して大きな隙間を形成する(
図4B参照)。
【0024】
図3に示すように、第1筐体12Aの内面12Abには、マザーボード18、通信モジュール19、及び冷却ファン20等がねじ等で固定されている。第2筐体12Bの内面12Bbには、アンテナ21及びバッテリ装置22等がねじ等で固定されている。マザーボード18は、当該携帯用情報機器10の全体的な制御を行うための電子基板であり、図示しない中央演算装置(CPU)やメモリ等の各種電子部品が実装されている。通信モジュール19は、アンテナ21で送受信するWLAN(Wireless Local Area Network)やWWAN(Wireless Wide Area Network)等の各種無線通信の情報処理を行うデバイスである。アンテナ21は、通常複数設置される。冷却ファン20は、マザーボード18に実装された中央演算装置等を冷却するための冷却デバイスである。バッテリ装置22は、当該携帯用情報機器10の電源であり、図示しない電源ケーブルを介して外部電源から充電可能である。筐体12A,12B内には、上記以外の電子部品も各種取り付けられる。
【0025】
図4Aは、平板形態での携帯用情報機器10の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
図4Bは、
図4Aに示す携帯用情報機器10を積層形態とした状態での側面断面図である。
図4A及び
図4Bは、左右の筐体12A,12Bの隣接端部12Aa,12Ba及びその周辺部を拡大した図である。
【0026】
図3〜
図4Bに示すように、ディスプレイ16は、筐体12A,12B間に亘って延在している。ディスプレイ16は、例えばタッチパネル式の液晶ディスプレイである。ディスプレイ16は、柔軟性の高いペーパー構造を持った有機EL等のフレキシブルディスプレイである。
図4A及び
図4Bに示すように、ディスプレイ16は、第1プレート24A及び第2プレート24Bで支持され、プレート24A,24B間に亘っている。
【0027】
第1プレート24Aは、第1筐体12Aの上面開口を覆うように配置される。第2プレート24Bは、第2筐体12Bの上面開口を覆うように配置される。プレート24A,24Bは、互いに隣接して配置されている。プレート24A,24Bは、その表面24Ab,24Bbでディスプレイ16を支持している。ディスプレイ16の裏面16bは、両面テープ等の粘着剤を用いてプレート24A,24Bの表面24Ab,24Bbに貼り付けられる。プレート24A,24Bは、薄く且つ硬質のプレート状部材である。本実施形態のプレート24A,24Bは、炭素繊維等の強化繊維をエポキシ樹脂等のマトリクス樹脂に含浸した繊維強化樹脂板である。プレート24A,24Bは、ステンレス等の金属板等で形成されてもよい。
【0028】
プレート24A,24Bは、互いの隣接端面24Aa,24Baを除く3辺の外周端面に複数の取付片25が突設されている(
図2参照)。各取付片25は、例えば筐体12A,12Bの内面から起立したボス部(図示せず)にねじ止めされる。ディスプレイ16は、プレート24A,24Bを介して筐体12A,12Bに相対的に固定される。これによりプレート24A,24Bは、筐体12A,12Bと一体となって回動し、これに伴ってディスプレイ16が開閉する。プレート24A,24Bは、取付片25の一部又は全部に代えて、例えば裏面をボス部等に直接的にねじ止めして固定してもよい。
【0029】
図4Aに示す平板形態において、プレート24A,24Bは、互いに面方向と垂直な方向に並んで隣接し、互いの隣接端面24Aa,24Ba同士が当接する。これによりディスプレイ16は、平板状に開かれた1枚の大画面を形成する。
図4Bに示す積層形態では、プレート24A,24Bは、互いの隣接端面24Aa,24Ba同士が離間するこの際、ディスプレイ16は、略U字状に折り畳まれる。
【0030】
図2、
図4A及び
図4Bに示すように、ディスプレイ16は、プレート24A,24Bの隣接端面24Aa,24bを跨ぐ範囲に折曲領域Rを有する。折曲領域Rは、筐体12A,12Bの隣接端部12Aa,12Baを跨ぐように設けられ、X方向に短く且つY方向に長い帯状の領域である。折曲領域Rは、筐体12A,12B間が平板形態から積層形態に変化する際に折り曲げられる部分である。ディスプレイ16は、折曲領域Rのみが柔軟な構造でもよい。
【0031】
ディスプレイ16は、第1プレート24A側の領域のうち、折曲領域Rを除いた部分の裏面16bが表面24Abに固定される。ディスプレイ16は、第2プレート24B側の領域のうち、折曲領域Rを除いた部分の裏面16bが表面24Bbに固定される。ディスプレイ16の裏面16bの表面24Ab,24Bbへの固定は、例えば両面テープ等の粘着剤を用いる。一方、折曲領域Rは、プレート24A,24Bと固定されず、表面24Ab,24Bbに対して相対移動可能な状態にある。
【0032】
プレート24A,24Bは、それぞれの裏面に係止爪26A,26Bが設けられている。係止爪26Aは、第1プレート24Aの裏面から隣接端面24Aa,24Baを跨いで第2プレート24Bの裏面に当接する位置まで突出している。係止爪26Bは、その先端部が、第2プレート24Bの裏面から隣接端面24Ba,24Aaを跨いで第1プレート24Aの裏面に当接する位置で突出している。係止爪26A,26Bは、それぞれ1個ずつでもよいが、本実施形態ではそれぞれ複数(3個)を並列している(
図2参照)。3個の係止爪26A,26Bは、例えばそれぞれ1枚のプレートの一辺に並んでいる。係止爪26A,26Bは、
図4Aに示す平板形態時、それぞれの先端上面が相手側のプレート24A,24Bの裏面に当接し、プレート24A,24B間の段差を抑制する。これによりプレート24A,24Bは、その表面24Ab,24Bbが極めて平坦な平面に維持される。係止爪26A,26Bは、省略してもよい。
【0033】
次に、背表紙部材14について説明する。
図5は、背表紙部材14の平面図である。
図6は、背表紙部材14の模式的な側面図である。
図7は、背表紙部材14の一部を拡大した斜視図である。
【0034】
図4A及び
図4Bに示すように、背表紙部材14は、筐体12A,12B間が平板形態から積層形態に変化した際に形成される隣接端部12Aa,12Ba間の隙間を覆う部材である。背表紙部材14は、積層形態時に筐体12A,12Bの内側に収容されたディスプレイ16、プレート24A,24B、マザーボード18、バッテリ装置22等の各要素が外観に露呈することを防止する機能を有する。背表紙部材14は、積層形態時に隣接端部12Aa,12Ba間に形成された隙間に介在し、筐体12A,12B間を積層方向に支える支柱としての機能も有する。背表紙部材14は、X方向に可撓性を有する薄い板状部材である。背表紙部材14は、隣接端部12Aa,12Ba間を跨ぎながら内側から覆うように、筐体12A,12Bの内面12Ab,12Bb間に亘って設けられている。
【0035】
図4A〜
図5に示すように、背表紙部材14は、シート状部材32と、複数枚の支柱部材34,35,36a,36b,36c,36dと、位置ずれ防止部38と、を有する。
【0036】
シート状部材32は、背表紙部材14のベースシートである。シート状部材32は、可撓性を有する高強度のシート状部材であり、積層形態時に筐体12A,12Bの隣接端部12Aa,12Ba間の隙間を覆うことができるX方向の幅寸法を有する(
図4B参照)。シート状部材32は、例えば炭素繊維やガラス繊維等を三軸で織った1枚の三軸織物であり、例えばこのような三軸織物をマトリクス樹脂に含浸させた三軸織物プリプレグで構成される。シート状部材32は、二軸織物等の他の織物の他、樹脂シートや金属シート等もよい。
【0037】
支柱部材34,35,36a〜36dは、背表紙部材14の骨格となるフレーム部材である。各支柱部材34,35,36a〜36dは、樹脂や金属等で形成された薄く且つ幅狭に形成された短冊状のプレートである。背表紙部材14は、第1筐体12Aから第2筐体12Bに向かって順に、支柱部材34,36a〜36d,35が並んでいる。本実施形態の場合、両端の支柱部材34,35は、中間の支柱部材36a〜36dよりもX方向に幅広に構成されている。各支柱部材34,35,36a〜36dは、X方向の幅寸法は全て同一でもよいし、適宜異なってもよい。
【0038】
各支柱部材34,35,36a〜36dは、全体としてシート状部材32の表面を覆うように設けられている。各支柱部材34,35,36a〜36dは、その底面39が接着剤或いは両面テープ等の粘着剤を用いてシート状部材32の表面32aに固着される。背表紙部材14は、筐体12A,12Bの回動動作に応じて平板形状(
図4A参照)と略U字形状(
図4B参照)との間で折り曲げされる。各支柱部材34,35,36a〜36d及びシート状部材32は、樹脂で一体成形されてもよい。各支柱部材34,35,36a〜36dは、長手方向の両端部にそれぞれ薄板部41を有し、この薄板部41はヒンジ17の下面側で摺動可能に保持される(
図3参照)。
【0039】
第1筐体12A側の端部に配置された支柱部材34は、第1筐体12A側の脚が上底及び下底と直交した台形状の断面形状を有する。支柱部材34は、第1筐体12Aの内面12Ab上に載置され、内面12Abに対して相対的にX方向にスライド可能である。支柱部材34の第2筐体12B側を向いた側面34aは、隣接する支柱部材36aの側面40aと対向する。側面34aは、支柱部材34の底面39から表面14aに向かって、次第に第2筐体12Bから第1筐体12Aに向かう方向に傾斜した傾斜面である(
図4A参照)。つまり側面34aは、下から上に向かって次第に支柱部材36aから離間する方向に傾斜している。
【0040】
支柱部材34は、ばね42によってX方向の付勢力を受けている(
図3参照)。ばね42は、支柱部材34を介して背表紙部材14をX方向で第1筐体12A側に向かって常時付勢している。
【0041】
第2筐体12B側の端部に配置された支柱部材35は、第2筐体12B側の脚が上底及び下底と直交した台形状の断面形状を有する。支柱部材35は、第2筐体12Bの内面12Bb上に載置され、内面12Bbに対して相対的に移動不能に固定されている。支柱部材35は、長手方向の適宜位置に板厚方向に貫通した取付孔43が形成されている(
図5参照)。取付孔43は、ねじ44が挿通される。ねじ44は、取付孔43を通して第2筐体12Bの内面12Bbに設けた図示しない雌ねじ部に螺合される。これにより支柱部材35、つまり背表紙部材14が第2筐体12Bに対して固定される。支柱部材35の第1筐体12A側を向いた側面35aは、隣接する支柱部材36dの側面40bと対向する。側面35aは、支柱部材35の底面39から表面14aに向かって、次第に第1筐体12Aから第2筐体12Bに向かう方向に傾斜した傾斜面である(
図4A参照)。つまり側面35aは、下から上に向かって次第に支柱部材36dから離間する方向に傾斜している。
【0042】
各支柱部材36a〜36dは、台形状の断面形状を有する。各支柱部材36a〜36dは、第1筐体12Aの内面12Ab上に載置され、内面12Abに対して相対的にX方向にスライド可能である。各支柱部材36a〜36dはそれぞれ、第1筐体12A側を向いた側面40aと、第2筐体12B側を向いた側面40bと、を有する。各側面40aは、支柱部材36a〜36dの底面39から表面14aに向かって、次第に第1筐体12Aから第2筐体12Bに向かう方向に傾斜した傾斜面である。各側面40bは、支柱部材35の底面39から表面14aに向かって、次第に第2筐体12Bから第1筐体12Aに向かう方向に傾斜した傾斜面である。4枚の支柱部材36a〜36dのうち、両端の支柱部材36a,36dは互いに左右称形状であり、中央の支柱部材36b,36cは互いに左右対称形状である。支柱部材36a〜36dの設置本数は適宜変更可能であり、5本以上でもよい。但し、円滑な折曲動作を考慮すると、背表紙部材14は、両端の支柱部材34,35と共に、中間の支柱部材36a〜36dが少なくとも1本以上は設置される必要がある。
【0043】
このように、背表紙部材14は、支柱部材35が第2筐体12Bに固定され、支柱部材34及び支柱部材36a〜36dが第1筐体12Aに対してX方向に相対移動可能に支持される。背表紙部材14は、支柱部材35を第1筐体12Aに固定し、支柱部材34を第2筐体12B側に配置した構成としてもよい。
【0044】
図5〜
図7に示すように、背表紙部材14の表面14aには、複数の溝部46と、複数の逃げ部48と、が形成されている。
【0045】
溝部46は、背表紙部材14の長手方向で、例えば3個設けられている。各溝部46は、背表紙部材14の表面14aの一部を凹ませたものであり、X方向に沿って運河状に延びている。つまり各溝部46は、各支柱部材34,35,36a〜36dの表面14aのY方向で同一位置を凹ませることで、X方向に連通した溝形状をなしている。各溝部46は、左右の筐体12A,12B間に亘るケーブル50(
図3及び
図6参照)の通り道となる。ケーブル50は、溝部46に通されることにより、筐体12A,12Bの回動動作時に表面14a上で位置ずれや浮き上がりを生じることが抑制される。これにより筐体12A,12Bの回動動作時に、ケーブル50が他の部品に挟まれたり、過度な力を受けて接続端子が抜去されたりする不具合の発生が抑制される。
【0046】
図4A、
図4B及び
図6に示すように、溝部46の上部開口は、カバー部材52で覆われている。カバー部材52は、溝部46を覆うことでケーブル50の浮き上がりや脱落をより確実に防止する蓋体として機能する。カバー部材52は、可撓性を有するシートである。カバー部材52は、X方向で第2筐体12B側の端部が支柱部材35の表面14aにねじ44で固定され、第1筐体12A側の端部が支柱部材34の表面14a上でX方向に相対的にスライド可能に支持される。カバー部材52の第1筐体12A側の端部は、支柱部材34の表面14aと、この表面14aに固定された保持部材54との間で摺動可能に保持されている。これによりカバー部材52は、背表紙部材14の表面14a側で背表紙部材14と共に折れ曲がり動作する(
図4A及び
図4B参照)。
図6は、3つのカバー部材52のうち、図中で最も左側のカバー部材52を分解状態で図示している。
【0047】
逃げ部48は、背表紙部材14の長手方向で、例えば4個設けられている。各逃げ部48は、溝部46と同様に表面14aを凹ませた溝部であるが、溝部46よりもY方向の幅寸法が小さい。
図6に示すように、逃げ部48は、筐体12A,12Bの回動動作時に各プレート24A,24Bの隣接端面24Aa,24Baから突出した係止爪26A,26Bが表面14aに干渉することを回避するための逃げ部である。従って、逃げ部48は、Y方向で係止爪26A,26Bと対応する位置に形成されている。
【0048】
次に、位置ずれ防止部38について説明する。位置ずれ防止部38は、積層形態時に背表紙部材14の剛性を維持するためのものである。位置ずれ防止部38は、互いに隣接する支柱部材34,36a間、支柱部材36a,36b間、支柱部材36b,36c間、支柱部材36c,36d間、支柱部材36d,35間に設けられ、積層形態時に相互間の相対移動による位置ずれを抑制するものである。
【0049】
図4A、
図4B及び
図7に示すように、位置ずれ防止部38は、互いに係脱可能な突起56及び係合穴58を有する。各支柱部材34,35,36a〜36dは、溝部46及び逃げ部48が設けられていない部分に高台部14bを有する。高台部14bは、溝部46及び逃げ部48が設けられた部分よりも板厚が大きい厚肉部である。位置ずれ防止部38は、各支柱部材34,35,36a〜36dの高台部14bを利用して設けられている。
図5に示すように、位置ずれ防止部38は、例えば背表紙部材14のY方向で両端の高台部14bと、中央又はその近傍の高台部14bとに設けられている。位置ずれ防止部38の設置位置や設置数は適宜変更可能である。
【0050】
突起56は、各支柱部材34,35,36a〜36dの高台部14bのうち、第2筐体12B側を向いた側面34a,40bにそれぞれ設けられている。つまり突起56は、支柱部材34,36a〜36dの側面34a,40bからそれぞれ突出している。突起56は、例えば円錐台形状であり、側面34a,40bから突出した先端に向かって次第に先細りのテーパ形状である。突起56は、角錐台形状や円柱形状等でもよい。なお、突起56は、円錐台形状や角錐台形状のように、先細りテーパ形状がより好ましい。そうすると、突起56は、係合穴58に対する係脱時に製造公差やがたつきを円滑に吸収できるからであり、後述するリブ60も同様である。
【0051】
係合穴58は、突起56と対向配置され、突起56が係脱可能な穴である。係合穴58は、各支柱部材34,35,36a〜36dの高台部14bのうち、第1筐体12A側を向いた側面35a,40aにそれぞれ設けられている。つまり係合穴58は、支柱部材35,36a〜36dの側面35a,40aにおける突起56と対向する部分に形成され、突起56を挿抜可能な内径の穴である。係合穴58は、例えば穴の奥側に向かって内径が縮小した角錐台形状の穴である。係合穴58は、円錐台形状や円柱形状等でもよい。各支柱部材34,35,36a〜36dの製造交差やがたつき等を考慮し、係合穴58の内径は、突起56の外径よりもある程度大きく形成されている。
【0052】
平板形態において、突起56は、対向する係合穴58から抜去された状態にある(
図4A及び
図7参照)。突起56及び係合穴58は、筐体12A,12B間が平板形態から積層形態へと回動すると、次第に近接する。そして、積層形態では、突起56が係合穴58に完全に係合する(
図4B参照)。これにより背表紙部材14は、積層形態時には、互いに当接した側面34a,40a間、側面40b,40a間、側面40b,35a間のそれぞれの相対移動が、突起56と係合穴58との係合作用下に抑制される。
【0053】
従って、携帯用情報機器10は、
図4Bに示す積層形態時に筐体12A,12B間を押し潰す外力Fを受けた際、アーチ形状を成して連続した各支柱部材34,35,36a〜36d間の位置ずれが抑制される。つまり各支柱部材34,35,36a〜36dは、アーチの内周側又は外周側(図中の矢印D参照)、つまり側面34a,35a,40a,40bの面方向と垂直な方向に相対移動することが抑制される。このため、背表紙部材14は、各支柱部材34,35,36a〜36dが互いに連続しつつ互いに係合し、筐体12A,12B間を支える高剛性の支柱となる。これにより、携帯用情報機器10は、
図4Bに示す積層形態時に筐体12A,12B間を押し潰す外力Fを受けた際、背表紙部材14が強固な支柱として筐体12A,12B間で突っ張り、外力Fを受け止めることができる。その結果、携帯用情報機器10は、積層形態時に筐体12A,12B間が押し潰され、内部に収容したディスプレイ16やその他の電子部品等が負荷を受けて不具合を生じることが抑制される。なお、積層形態において、支柱部材34,35,36a〜36dは、湾曲したアーチ形状ではなく、例えば両端の支柱部材34、35と、これと隣接する支柱部材36a,36dとの間が直角に曲がり、支柱部材36a〜36dが筐体12A,12Bの積層方向に一直線上に並んだ凹形状となる構成等でもよい。
【0054】
突起56及び係合穴58は、互いに係脱可能に対向配置されていれば、側面34a,35a,40a,40bのいずれの面に設けられてもよい。また、
図6に示す構成例では、1つの側面34a,35a,40a,40bに突起56及び係合穴58を1つ又は2つ設けているが、3つ以上設けてもよい。
図8に示すように、位置ずれ防止部38は、例えば1つの高台部14b(図中の支柱部材36c参照)の側面40a,40bのそれぞれに突起56を設け、隣接する1つの高台部14b(図中の支柱部材36b参照)の側面40a,40bのそれぞれに係合穴58を設けた構成としてもよい。
【0055】
図9に示すように、位置ずれ防止部38は、突起56及び係合穴58に代えて、リブ60及び係合穴62を用いた構成としてもよい。リブ60は、側面34a等の長手方向に延在した長尺な板辺状の突起である。リブ60の長手方向に直交する平面での切断断面は、突起56と同様に特に限定されず、例えば矩形状、台形形状、ドーム形状、三角形状等でよい。係合穴62は、リブ60が係脱可能な形状の穴部であり、リブ60と同様に、側面40a等の長手方向に延在した長穴である。
【0056】
図10に示すように、位置ずれ防止部38は、突起56及び係合穴58に代えて、摩擦抵抗付与部64を用いた構成としてもよい。摩擦抵抗付与部64は、例えば積層形態時に当接する側面34a,40a間、側面40b,40a間、側面40b,35a間のそれぞれに、当接時の摩擦抵抗(摺動抵抗)を増大させることで、互いの相対移動を抑制する。摩擦抵抗付与部64は、例えば各側面34a等に表面処理を施すことで摩擦抵抗を増大させてもよい。摩擦抵抗付与部64は、例えば各側面34a等にゴム等の摩擦抵抗が高い部材のシート等を貼り付けることで摩擦抵抗を増大させてもよい。摩擦抵抗付与部64は、対向する側面34a,40aの一方、側面40b,40aの一方、側面40b,35aの一方のみに設けてもよい。
【0057】
位置ずれ防止部38は、突起56及び係合穴58からなる構成、リブ60及び係合穴62からなる構成、摩擦抵抗付与部64からなる構成のいずれか1つ又は2つ以上を組み合わせて構成してもよい。例えば位置ずれ防止部38は、1つの側面34aに突起56を設け、さらに突起56の周囲に摩擦抵抗付与部64を設けてもよい。また、背表紙部材14は、その長手方向で3つの位置ずれ防止部38のうち、1つを突起56及び係合穴58からなる構成とし、1つをリブ60及び係合穴62からなる構成とし、1つを摩擦抵抗付与部64からなる構成等としてもよい。
【0058】
ところで、上記した通り、各支柱部材34,35,36a〜36dは、例えばシート状部材32の表面32aに接着剤Aで固定されている。ここで背表紙部材14は、筐体12A,12B間の回動動作時に各支柱部材34,35,36a〜36dが相対移動する。このため、仮に、接着剤Aが、
図11Aに示すように各支柱部材34等の底面39からはみ出した状態で固化している場合、接着剤Aが固化した異物A1が対向する側面40b,40a間等に介在した状態となる。この場合、背表紙部材14が、
図11Bに示すように折れ曲がると、側面40b,40a間等が次第に近接した際、間に異物A1が挟まり、背表紙部材14が
図4Bに示す設計通りのアーチ形状を描くことができなくなる懸念がある。そうすると、背表紙部材14に過度な負荷が掛かり、背表紙部材14や筐体12A,12Bが破損し、或いは筐体12A,12B間を所望の角度まで閉じることができなくなる懸念がある。
【0059】
そこで、背表紙部材14は、仮に異物A1が発生したとしても所望のアーチ形状に折れ曲がることを可能とする構造を備えてもよい。具体的には、背表紙部材14は、
図12A及び
図12Bに示すように、各支柱部材34,35,36a〜36dの側面34a,35a,40a,40bに切欠部66を設けてもよい。なお、
図11A及び
図11Bは、支柱部材36a〜36cを代表的に図示しているが、他の支柱部材34,35,36dの側面34a,35a,40a,40bも同様な構成とすればよい。切欠部66は、各側面40a等とシート状部材32への接着面(底面39)との間の角部に形成されている。切欠部66は、角部の面取り形状やR形状等で形成されるとよい。
【0060】
背表紙部材14は、各支柱部材34等がこのような切欠部66を有することにより、
図12Bに示すように折れ曲がる際、異物A1を切欠部66で避けることができる。その結果、背表紙部材14は、異物A1が形成された状態であっても、適正な折曲動作を行うことができる。ところで、背表紙部材14は、各支柱部材34,35,36a〜36dが透明又は半透明の材質で形成されていることが好ましい。そうすると、背表紙部材14は、接着剤Aの底面39からのはみ出しを目視で容易に発見できるため、異物A1の発生自体を低減することができる。
【0061】
切欠部66は、上記した位置ずれ防止部38と併用すると、背表紙部材14のより円滑な折曲動作と積層形態時の剛性の確保とに貢献する。しかしながら、切欠部66は、位置ずれ防止部38を持たない背表紙部材14に対しても有効に適用可能であることは勿論である。
【0062】
以上のように、本実施形態に係る携帯用情報機器10は、筐体12A,12Bの隣接端部12Aa,12Ba間に形成される隙間を覆う背表紙部材14を備える。そして、背表紙部材14は、支柱部材34,35,36a〜36d間の相対移動を抑制するための位置ずれ防止部38を有する。
【0063】
従って、携帯用情報機器10は、積層形態時の筐体12A,12B間の隙間が背表紙部材14に覆われることで、外観品質の低下が抑制される。さらに携帯用情報機器10は、積層形態時に筐体12A,12Bの隣接端部12Aa,12Ba間で背表紙部材14が支柱して機能する。その際、背表紙部材14は、互いに当接した側面34a,40a間等の相対移動が位置ずれ防止部38の作用により抑制され、全体として高い剛性が維持された支柱となる。その結果、携帯用情報機器10は、積層形態時に筐体12A,12B間が押し潰され、内部の電子部品等が不具合を生じることが抑制される。特に、本実施形態の携帯用情報機器10は、折曲領域Rを有するディスプレイ16を備え、積層形態時に折曲領域Rが隣接端部12Aa,12Ba側に配置される。このため、仮に筐体12A,12B間が押し潰されると、ディスプレイ16は、U字に湾曲した折曲領域Rが潰されて屈曲し、破損する懸念がある。この点、当該携帯用情報機器10は、積層形態時に背表紙部材14が強固な支柱として機能するため、ディスプレイ16の折曲領域Rが保護される。
【0064】
特に、平板形態時において、背表紙部材14の支柱部材34,35,36a〜36dは、互いに対向する側面34a,40a間等が離間し、又は積層形態時よりも狭い面積で当接する(
図4A参照)。一方、積層形態において、支柱部材34,35,36a〜36dは、互いに対向する側面34a,40a間等が略全面で当接する。このため、背表紙部材14は、平板形態と積層形態との間での円滑な折曲動作が確保されると共に、積層形態時には位置ずれ防止部38が確実にその機能を発揮できる。
【0065】
位置ずれ防止部38は、全ての対向する側面34a,40a間、側面40b,40a間、側面40b,35a間に設けることが望ましい。しかしながら、背表紙部材14の構造等によっては、対向する側面34a,40a間等の一部のみに設けてもよく、それでも十分な効果を発揮できる場合もある。
【0066】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0067】
上記では、折曲領域Rを持ったフレキシブルディスプレイであるディスプレイ16を例示したが、ディスプレイは各筐体12A,12Bの上面にそれぞれ配置された構成(デュアルディスプレイ)でもよい。
【0068】
上記では、本のように二つ折りに折り畳み可能な携帯用情報機器10を例示したが、本発明は、同形の筐体同士を二つ折りに折り畳む構成以外、例えば大形の筐体の左右縁部にそれぞれ小形の筐体を折り畳み可能に連結した観音開きの構成、1つの筐体の左右縁部にそれぞれ折り畳み方向の異なる筐体を連結したS型の折り畳み構成、大形の筐体の左右一方の縁部に小形の筐体を折り畳み可能に連結したJ型の折り畳み構成等、各種構成に適用可能であり、筐体の連結数は4以上としてもよい。