【解決手段】OTAチャンバ50内に設けられ、DUT100のアンテナ110との間で無線信号を送信又は受信する試験用アンテナと、クワイエットゾーンQZ内に配置されたDUT100に対して試験用アンテナを使用して、DUT100の送信特性又は受信特性の測定を行う測定装置とを備え、試験用アンテナは、リフレクタ7を介してDUTのアンテナ110との間で無線信号を送信又は受信するリフレクタ反射型の試験用アンテナ6aと、ミラー9b・・・9fを介してDUTのアンテナ110との間で無線信号を送信又は受信するミラー反射型の試験用アンテナ6b、6c、6d、6e、6fとを含む。
前記ミラーが複数あり、前記ミラー反射型の試験用アンテナからの前記無線信号を反射する前記複数のミラーは、前記被試験対象の配置位置(P0)において、前記リフレクタ反射型の試験用アンテナからの電波到来方向を基準に互いに異なる到来角度を形成するよう配置される、請求項1に記載の試験装置。
前記ミラーが複数あり、前記複数のミラーは、各ミラー面が前記被試験対象の配置位置(P0)を通る一平面と交差するように配置される、請求項1又は2に記載の試験装置。
前記ミラーが複数あり、前記ミラー反射型の試験用アンテナの電波送信方向を前記複数のミラーの一つに向けるよう変更する方向変更手段(60)を更に備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の試験装置。
前記ミラー反射型の試験用アンテナから対応する前記ミラーを経由して前記被試験アンテナまでの距離は、2D2/λより大きく、ここで、Dは前記被試験アンテナのアンテナサイズ、λは前記ミラー反射型の試験用アンテナから送信される電波の波長である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の試験装置。
前記被試験アンテナとの間で直接、前記無線信号を送信又は受信する直接型の試験用アンテナ(6h、6i、6j、6k)を更に含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の試験装置。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態に係る試験装置及び試験方法について、図面を参照して説明する。なお、各図面上の各構成要素の寸法比は、実際の寸法比と必ずしも一致していない。
【0033】
(第1の実施形態)
本実施形態に係る試験装置1は、アンテナ110を有するDUT100の送信特性又は受信特性を測定するものであり、例えば、DUT100のRF特性やRRM特性を測定するようになっている。このために、試験装置1は、OTAチャンバ50と、複数の試験用アンテナ6a、6b、6c、6d、6e、6f(以下、試験用アンテナ6と記すこともある)と、姿勢可変機構56と、統合制御装置10と、NRシステムシミュレータ20と、信号処理部40と、信号切替部41とを備えている。なお、本実施形態のOTAチャンバ50は、本発明の電波暗箱に対応し、本実施形態の統合制御装置10とNRシステムシミュレータ20と信号処理部40と信号切替部41は、本発明の測定装置2に対応する。
【0034】
図1は、試験装置1の外観構造を示し、
図2は、試験装置1の機能ブロックを示す。ただし、
図1においては、OTAチャンバ50について正面から透視した状態における各構成要素の配置態様を示している。
【0035】
図1及び
図2に示すように、OTAチャンバ50は、周囲の電波環境に影響されない内部空間51を有している。試験用アンテナ6は、OTAチャンバ50の内部空間51に設置され、DUT100の送信特性又は受信特性を測定するための無線信号をアンテナ110との間で送信又は受信するようになっている。姿勢可変機構56は、OTAチャンバ50の内部空間51におけるクワイエットゾーンQZ内に配置されたDUT100の姿勢を変化させるようになっている。統合制御装置10、NRシステムシミュレータ20、信号処理部40、及び信号切替部41は、姿勢可変機構56により姿勢を変化させたDUT100に対して1又は2の試験用アンテナ6を用いて、DUT100の送信特性又は受信特性の測定を行うようになっている。
【0036】
試験装置1は、例えば、
図1に示すような複数のラック90aを有するラック構造体90と共に用いられ、各ラック90aに各構成要素を載置した態様で運用される。
図1は、ラック構造体90の3つのラック90aに、それぞれ統合制御装置10、NRシステムシミュレータ20、及びOTAチャンバ50を載置した例を示す。以下、各構成要素を説明する。
【0037】
(OTAチャンバ)
OTAチャンバ50は、5G用の無線端末の性能試験に際してのOTA試験環境を実現するものであって、
図1、
図2に示すように、例えば、直方体形状の内部空間51を有する金属製の筐体本体部52により構成されている。OTAチャンバ50は、内部空間51に、DUT100と、DUT100のアンテナ110と対向する複数の試験用アンテナ6を、外部からの電波の侵入及び外部への電波の放射を防ぐ状態に収容する。後で説明するが、試験用アンテナ6としては、例えば、ホーンアンテナ等の指向性を持ったミリ波用のアンテナを用いることができる。
【0038】
また、OTAチャンバ50の内面全域、つまり、筐体本体部52の底面52a、側面52b及び上面52c全面には、電波吸収体55が貼り付けられ、内部空間の無響特性を確保すると共に、外部への電波の放射規制機能が強化されている。このように、OTAチャンバ50は、周囲の電波環境に影響されない内部空間51を有する電波暗箱を実現している。本実施形態で用いる電波暗箱は、例えば、Anechoic型のものである。
【0039】
(DUT)
被試験対象とされるDUT100は、例えばスマートフォンなどの無線端末である。DUT100の通信規格としては、セルラ(LTE、LTE−A、W−CDMA(登録商標)、GSM(登録商標)、CDMA2000、1xEV−DO、TD−SCDMA等)、無線LAN(IEEE802.11b/g/a/n/ac/ad等)、Bluetooth(登録商標)、GNSS(GPS、Galileo、GLONASS、BeiDou等)、FM、及びデジタル放送(DVB−H、ISDB−T等)が挙げられる。また、DUT100は、5Gセルラ等に対応したミリ波帯の無線信号を送受信する無線端末であってもよい。
【0040】
本実施形態において、DUT100は5G NRの無線端末である。5G NRの無線端末については、ミリ波帯の他、LTE等で使用する他の周波数帯も含む既定の周波数帯を通信可能周波数範囲とすることが5G NR規格によって規定されている。よって、DUT100のアンテナ110は、DUT100の送信特性又は受信特性の被測定対象である既定の周波数帯(5G NRバンド)の無線信号を送信又は受信するものである。アンテナ110は、例えばMassive−MIMOアンテナ等のアレーアンテナであり、本発明における被試験アンテナに相当する。
【0041】
本実施形態において、DUT100は、OTAチャンバ50内での送受信に関する測定中、複数の試験用アンテナ6のうち選択された1又は2の試験用アンテナを介して試験信号及び被測定信号を送受信できるようになっている。
【0042】
(姿勢可変機構)
次に、OTAチャンバ50の内部空間51に設けられた姿勢可変機構56について説明する。
図1に示すように、OTAチャンバ50の筐体本体部52の内部空間51側の底面52aには、クワイエットゾーンQZ内に配置されたDUT100の姿勢を変化させる姿勢可変機構56が設けられている。姿勢可変機構56は、例えば、2軸の各軸周りに回転する回転機構を備える2軸ポジショナである。姿勢可変機構56は、試験用アンテナ6を固定した状態で、DUT100を2軸周りの回転自由度をもって回転させるようなOTA試験系(Combined-axes system)を構成する。具体的には、姿勢可変機構56は、駆動部56aと、ターンテーブル56bと、支柱56cと、被試験対象載置部としてのDUT載置部56dと、を有する。
【0043】
駆動部56aは、回転駆動力を発生させるステッピングモータなどの駆動用モータからなり、例えば、底面52aに設置される。ターンテーブル56bは、駆動部56aの回転駆動力により、互いに直交する2軸のうちの一方の軸の周りに所定角度回転するようになっている。支柱56cは、ターンテーブル56bに連結され、ターンテーブル56bから一方の軸の方向に延びて、駆動部56aの回転駆動力によりターンテーブル56bと共に回転するようになっている。DUT載置部56dは、支柱56cの側面から2軸のうちの他方の軸の方向に延びて、駆動部56aの回転駆動力により他方の軸の周りに所定角度回転するようになっている。DUT100は、DUT載置部56dに載置される。
【0044】
なお、上記の一方の軸は、例えば、底面52aに対して鉛直方向に延びる軸(図中のY軸)である。また、上記の他方の軸は、例えば、支柱56cの側面から水平方向に延びる軸である。このように構成された姿勢可変機構56は、DUT載置部56dに保持されているDUT100を、例えば、DUT100の中心を回転中心(「配置位置」ともいう)として、試験用アンテナ6およびリフレクタ7に対して3次元のあらゆる方向にアンテナ110が向く状態に順次姿勢を変化させ得るように回転させることができる。
【0045】
OTA試験系では、姿勢可変機構56の2つの回転軸の交点である回転中心(原点ともいう)に、DUT100の中心又はアンテナ110の中心が配置されるようになっている。DUT100の「配置位置P0」は、OTA試験系の原点であり、OTAチャンバ50内に配置されたDUT100の中心又はアンテナ110の中心の位置である。すなわち、DUT100の配置位置P0は、姿勢可変機構56によりDUT100を2軸周りに回転させたときの不動の回転中心に対応する。なお、DUT100内のアンテナ110の位置及びアンテナサイズが分かっている場合には、DUT100の配置位置P0をアンテナ110の中心の位置とすると、遠方界を形成するために必要な試験用アンテナ6からアンテナ110までの距離を大幅に短くすることができる。
【0046】
(リンクアンテナ)
OTAチャンバ50において、筐体本体部52の所要位置には、DUT100との間でリンク(呼)を確立又は維持するための2種類のリンクアンテナ5、8がそれぞれ保持具57、59を用いて取り付けられている。リンクアンテナ5は、LTE用のリンクアンテナであり、ノンスタンドアローンモード(Non-Standalone mode)で使用される。一方、リンクアンテナ8は、5G用のリンクアンテナであり、5Gの呼を維持するために使用される。リンクアンテナ5、8は、姿勢可変機構56に保持されるDUT100に対して指向性を有するようにそれぞれ保持具57、59によって保持されている。なお、上記のリンクアンテナ5、8を使用する代わりに、試験用アンテナ6をリンクアンテナとして兼用することも可能であるため、以下においては、試験用アンテナ6がリンクアンテナの機能を兼ねるものとして説明する。
【0047】
(近傍界と遠方界)
次に、近傍界と遠方界について説明する。
図5は、無線端末100Aに向けてアンテナATから放射された電波の伝わり方を示す模式図である。アンテナATは、後で説明する一次放射器としての試験用アンテナ6aやミラー反射型の試験用アンテナ6b、6c、6d、6e、6fと同等のものである。無線端末100Aは、DUT100と同等のものである。
図5において、(a)は、電波がアンテナATから無線端末100Aへ直接伝わるDFF(Direct Far Field)方式を示し、(b)は、電波がアンテナATから回転放物面を有する反射鏡7Aを介して無線端末100Aへ伝わるIFF(Indirect Far Field)方式を示している。
【0048】
図5(a)に示すように、アンテナATを放射源とする電波は、同位相の点を結んだ面(波面)が放射源を中心にして球状に拡がりながら伝搬する性質がある。このとき、破線で示すような、散乱、屈折、反射などの外乱により生じる干渉波も発生する。また、放射源から近い距離では、波面は湾曲した球面(球面波)であるが、放射源から遠くなると波面は平面(平面波)に近くなる。一般に、波面を球面と考える必要のある領域が近傍界(NEAR FIELD)と呼ばれ、波面を平面とみなしてよい領域が遠方界(FAR FIELD)と呼ばれている。
図5(a)に示す電波の伝搬にあって、無線端末100Aは、正確な測定を行ううえで、球面波を受信するよりも、平面波を受信する方が好ましい。
【0049】
平面波を受信するためには、無線端末100Aが遠方界に設置される必要がある。DUT100内でのアンテナ110の位置及びアンテナサイズが分かっていないとき、遠方界は、アンテナATから2D
02/λ以遠の領域となる。ここで、D
0は、無線端末100Aの最大直線サイズ、λは電波の波長である。
【0050】
具体的には、例えば、無線端末100Aの最大直線サイズD
0=0.2m、電波の周波数43.5GHzとした場合、アンテナATから11.6mの位置が近傍界と遠方界との境界となり、それより遠い位置に無線端末100Aを置く必要が生じる。
【0051】
一方、DUT100内でのアンテナ110の位置及びアンテナサイズが分かっているとき、遠方界は、アンテナATから2D
2/λ以遠の領域となる。ここで、Dは、アンテナサイズ、λは電波の波長である。
【0052】
具体的には、例えば、無線端末100AのアンテナサイズD=0.03m、電波の周波数43.5GHzとした場合、アンテナATから26.2cmの位置が近傍界と遠方界との境界となり、それより遠い位置に無線端末100Aを置く必要が生じる。また、例えば、無線端末100AのアンテナサイズD=0.04m、電波の周波数43.5GHzとした場合、アンテナATから46.5cmの位置が近傍界と遠方界との境界となる。
【0053】
なお、本実施形態においては、対象とするDUT100の最大直線サイズDは、例えば、20cm程度であり、取り扱う周波数範囲は24.25GHz〜43.5GHzを想定している。
【0054】
図5(b)は、アンテナATの電波を反射させて、無線端末100Aの位置にその反射波を到達させるように、回転放物面を有する反射鏡7Aを配置する方法を示す(CATR(Compact Antenna Test Range)方式)。この方法によれば、アンテナATと無線端末100A間の距離を短縮でき、反射鏡7Aの鏡面での反射後直ぐの距離から平面波の領域が拡がるため、伝搬ロスの低減効果も見込むことができる。平面波の度合は、同位相の波の位相差で表すことができる。平面波の度合として許容し得る位相差は、例えば、λ/16である。位相差は、例えば、ベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)で評価することができる。
【0055】
(試験用アンテナ)
次に、試験用アンテナ6について説明する。
図7は、本実施形態に係る試験装置1のOTAチャンバ50の天板を取り除いて上方から見た平面図であり、
図8は、OTAチャンバ50の正面側の側板(
図7における下側の側板)を取り除いて正面側から見た正面図である。
【0056】
図7、
図8に示すように、試験用アンテナ6は、1個のリフレクタ反射型の試験用アンテナ6aと、5個のミラー反射型の試験用アンテナ6b、6c、6d、6e、6fとを含んでいる。リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aは、リフレクタ7を介してアンテナ110との間でDUT100の送信特性又は受信特性を測定するための無線信号(以下、測定用の無線信号ともいう)を送信又は受信するようになっている。ミラー反射型の試験用アンテナ6b、6c、6d、6e、6fは、それぞれミラー9b、9c、9d、9e、9fを介して、DUT100が備えるアンテナ110との間で、DUT100の送信特性又は受信特性を測定するための無線信号を送信又は受信するようになっている。各試験用アンテナ6は、水平偏波アンテナと垂直偏波アンテナを備えている(
図2参照)。以下、ミラー9b、9c、9d、9e、9fを単にミラー9と記すこともある。
【0057】
(リフレクタ反射型の試験用アンテナ)
まず、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aについて説明する。
リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aは、一次放射器として機能し、水平偏波アンテナ6aHと垂直偏波アンテナ6aVを備えている(
図2参照)。リフレクタ7は、曲面状に湾曲した反射面を有し、測定用の無線信号の電波を反射するものであり、後述するオフセットパラボラ(
図6参照)型の構造を有するものである。リフレクタ7は、例えばアルミニウム製である。リフレクタ7は、
図1に示すように、OTAチャンバ50の側面52bの所要位置にリフレクタ保持具58を用いて取り付けられている。
【0058】
リフレクタ7は、その回転放物面から定まる焦点位置Fに配置されている一次放射器としての試験用アンテナ6aから放射された試験信号の電波を回転放物面で受け、姿勢可変機構56に保持されているDUT100に向けて反射させる(送信時)。また、リフレクタ7は、上記試験信号を受信したDUT100がアンテナ110から放射する被測定信号の電波を回転放物面で受け、試験用アンテナ6aに向けて反射させる(受信時)。リフレクタ7は、これら送信と受信が同時に可能な位置及び姿勢で配設されている。すなわち、リフレクタ7は、試験用アンテナ6aとDUT100のアンテナ110との間で送受信される無線信号の電波を、回転放物面を介して反射するようになっている。
【0059】
図6は、リフレクタ7の構造を示す模式図である。リフレクタ7は、オフセットパラボラ型であり、回転放物面の軸RSに対して非対称な鏡面(真円型のパラボラの回転放物面の一部を切り出した形状)を有している。一次放射器としての試験用アンテナ6aは、そのビーム軸BSが回転放物面の軸RSに対して、例えば、角度α(例えば30°)傾いたオフセット状態にて、オフセットパラボラの焦点位置Fに配置されている。別言すれば、試験用アンテナ6aは、仰角αでリフレクタ7に対向するように配置され、試験用アンテナ6aの受信面が無線信号のビーム軸BSに対して直角となる角度で保持されている。
【0060】
この構成により、試験用アンテナ6から放射された電波(例えば、DUT100に対する試験信号)を回転放物面で該回転放物面の軸方向と平行な方向に反射させるとともに、回転放物面の軸方向と平行な方向に回転放物面に対して入射する電波(例えば、DUT100から送信された被測定信号)を該回転放物面で反射させ、試験用アンテナ6aへと導くことができる。別言すれば、リフレクタ7は、試験用アンテナ6aから放射された球面波の電波を平面波の電波に変換してDUT100に送ると共に、DUT100から放射されリフレクタ7に入射する平面波の電波を試験用アンテナ6に集束させるものである。オフセットパラボラは、パラボラ型に比べて、リフレクタ7自体が小さくて済むうえに、鏡面が垂直に近づくような配置が可能であるので、OTAチャンバ50の構造を小型化し得る。
【0061】
図8から分かるように、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aは、DUT100の配置位置P0を通る水平面HPより下方に配置されている。試験用アンテナ6aから放射されリフレクタ7で反射した電波ビームはZ軸負方向に伝搬され、半径r2のクワイエットゾーンQZを形成するようになっている。リフレクタ7の開口中心の位置P0を反射した電波ビームの中心が、Z軸負方向に伝搬されてDUT100の配置位置P0に到達するようになっている。
【0062】
(ミラー反射型の試験用アンテナ)
次に、ミラー反射型の試験用アンテナ6について説明する。
【0063】
ミラー反射型の試験用アンテナ6は、測定用の無線信号の電波を反射するミラー9を介してDUT100のアンテナ110との間で無線信号を送信又は受信するようになっている。具体的には、ミラー反射型の試験用アンテナ6は、第1の試験用アンテナ6b、第2の試験用アンテナ6c、第3の試験用アンテナ6d、第4の試験用アンテナ6e、及び第5の試験用アンテナ6fを含んでいる。また、ミラー9は、第1のミラー9bと、第2のミラー9cと、第3のミラー9dと、第4のミラー9eと、第5のミラー9fとを含んでいる。各ミラー9は、例えばアルミニウム製であり、平坦な鏡面を有している。
【0064】
具体的には、第1の試験用アンテナ6bは、第1のミラー9bを介してDUT100のアンテナ110との間で無線信号を送受信し、第2の試験用アンテナ6cは、第2のミラー9cを介して無線信号を送受信し、第3の試験用アンテナ6dは、第3のミラー9dを介して無線信号を送受信し、第4の試験用アンテナ6eは、第4のミラー9eを介して無線信号を送受信し、第5の試験用アンテナ6fは、第5のミラー9fを介して無線信号を送受信するようになっている。
【0065】
また、ミラー反射型の試験用アンテナ6b、6c、6d、6e、6fは、それぞれ水平偏波アンテナ6bH、6cH、6dH、6eH、6fHを有し、またそれぞれ垂直偏波アンテナ6bV、6cV、6dV、6eV、6fVを有している(
図2参照)。
【0066】
ミラー9は、各ミラーの反射面がDUT100の配置位置P0を通る水平面HPと交差するように配置されている。具体的には、ミラー9b、9c、9d、9e、9fは、DUT100の配置位置P0を中心に半径r1の仮想球面S上でかつ水平面HP上に配置されている。「ミラーが仮想球面S上でかつ水平面HP上に配置されている」とは、各ミラー9b、9c、9d、9e、9fの反射面上において電波ビームの中心が反射する反射点P2、P3、P4、P5、P6が仮想球面S上でかつ水平面HP上に位置していることをいう。
【0067】
ミラー9b、9c、9d、9e、9fは、その配置が水平面HP上に限定されるものではなく、DUT100の配置位置P0を通る任意の平面上に配置されるようにしてもよいし、必ずしも同一平面上に配置されていなくてもよい。また、ミラー9b、9c、9d、9e、9fは、DUT100から同一距離に配置されている必要は無く、ミラー9b、9c、9d、9e、9fのそれぞれとDUT100が異なった距離をとってもよい。
【0068】
ミラー反射型の試験用アンテナ6b、6c、6d、6e、6fは、DUT100の配置位置P0を通る水平面HPより下方に配置されている。ミラー反射型の試験用アンテナ6から放射された電波ビームは、対応するミラー9において鏡面反射するようになっている。この電波ビームの各ミラー9における入射角及び反射角は、各ミラー9により反射された電波ビームがDUT100に到達する限り、ミラーごとに異なっていてもよいし同じであってもよい。本実施形態では、ミラー反射型の試験用アンテナ6b、6c、6d、6e、6fは、OTAチャンバ50の底面52a上に支持具により支持されているが、水平面HPより上方あるいは水平面HP上に配置してもよい。
【0069】
本実施形態では、ミラー反射型の試験用アンテナ6とDUT100との間の電波の伝搬経路中に1つのミラー9が配置されているが、2以上のミラーを配置してもよい。すなわち、電波の伝搬中に複数個のミラーにより複数回の鏡面反射を起こさせて、遠方界測定に要するアンテナ間距離を確保するようにしてもよい。
【0070】
本実施形態では、ミラー反射型の試験用アンテナ6からの無線信号を反射するミラー9b、9c、9d、9e、9fは、DUT100の配置位置P0において、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6a及びリフレクタ7からの電波到来方向を基準に互いに異なる到来角度を形成するよう配置されている。これにより、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aとミラー反射型の試験用アンテナ6b、6c、6d、6e、6fの1つとの組み合わせにより到来角度が異なるので、ミラー反射型の試験用アンテナ6b、6c、6d、6e、6fを切り替えて使用することにより到来角度を変えてDUT100のRRM特性等の送受信特性の遠方界測定を効率的に行うことができる。
【0071】
図7に示すように、例えば、ミラー反射型の試験用アンテナ6bからミラー9bを介して送られる電波ビームは、DUT100の配置位置P0においてリフレクタ反射型の試験用アンテナ6aからの電波到来方向(Z軸)を基準に30°の到来角度を形成する。同様に、ミラー反射型の試験用アンテナ6c、6d、6e、6fからそれぞれミラー9c、9d、9e、9fを介して送られる電波ビームは、それぞれ60°、90°、120°、150°の到来角度を形成するようになっている。すなわち、第1〜第5の試験用アンテナ6b、6c、6d、6e、6fは、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aと共に、相対的な到来角度30°、60°、90°、120°、150°を実現することができる。このように、所定の角度範囲内を均等に漏れなく測定できるので、DUT100のRRM特性等の送受信特性の遠方界測定を精度よく行うことができる。これにより、規格3GPP TR 38.810 V16.2.0 (2019-03)に規定されたRRM特性を精度よく測定することができる。
【0072】
ここで、「到来角度(AoA)」とは、DUT100の配置位置P0を通る特定の直線(例えばZ軸)に対して、試験用アンテナ6から配置位置P0に到来する電波ビーム又は電波ビームの中心が形成する角度をいう。到来角度は、2つの試験用アンテナによっても規定することができる。この場合は、一の試験用アンテナから配置位置P0に到来する電波ビームの方向である電波到来方向を基準に、他の試験用アンテナから配置位置P0に到来する電波ビーム又は電波ビームの中心が形成する角度を「到来角度」又は「相対的な到来角度」という。
【0073】
アンテナ110のアンテナサイズDが分かっている場合には、ミラー反射型の試験用アンテナ6b、6c、6d、6e、6fから対応するミラー9b、9c、9d、9e、9fを経由してDUT100のアンテナ110までの距離は、2D2/λより大きくするとよい。Dはアンテナ110のアンテナサイズ、λはミラー反射型の試験用アンテナ6から送信される電波の波長である、これにより、DUT100の遠方界測定を行うことができる。
【0074】
図9は、OTAチャンバ50内でのミラー9fとミラー反射型の試験用アンテナ6fの配置を示す模式図である。
図9では、他のミラーと試験用アンテナは図示を省略している。試験用アンテナ6fは、水平面HPより下方に配置され、ミラー9fは、ミラー面上の電波ビームの反射点P6が水平面HP上に位置するように、配置されている。試験用アンテナ6fから放射された電波ビームは、ミラー9fで反射してDUT100の配置位置P0に送られる。また、DUT100のアンテナ110から放射された電波ビームは、ミラー9fで反射して試験用アンテナ6fに送られる。仮に、ミラー9fが無いとすると、OTAチャンバ50の外部に試験用アンテナ6Aが配置されることとなり、遠方界測定に要するアンテナ間距離(P0−PA間距離)を確保することができない。ミラー9fにより電波ビームの伝搬経路を曲げることにより、試験用アンテナ6fをOTAチャンバ50内に配置すると共に、遠方界測定に必要なアンテナ間距離を確保することができる。
【0075】
具体的には、
図9において、P0−P6間距離とP6−P16間距離とを合わせた距離は、遠方界測定に要するアンテナ間距離であるP0−PA間距離に等しくなっている。P6は、試験用アンテナ6fから放射された電波ビームがミラー9f上で反射する反射点を示し、P16は、試験用アンテナ6fの開口中心であり、PAは仮想的な試験用アンテナ6Aの開口中心である。P0−P6間の伝搬経路は水平面HP上にある。なお、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aから放射された電波ビームは、リフレクタ7上の反射点P1で反射されてDUT100の配置位置P0に送られ、P1−P0間の伝搬経路も、水平面HP上にある。
【0076】
リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aは、いわゆる間接遠方界(IFF)を形成し、ミラー反射型の試験用アンテナ6b、6c、6d、6e、6fは、直接遠方界(DFF)を形成するようになっている。間接遠方界とは、球面波を平面波に変換するようなリフレクタを用いる反射型のアンテナにより形成される遠方界をいい、直接遠方界とは、そのようなリフレクタを用いないアンテナにより形成される遠方界をいう。なお、ミラー反射型の試験用アンテナ6は、ミラーを用いて電波ビームを反射させているが、試験用アンテナから遠方界までに電波ビームの進む距離は、ミラーのない場合と同じであるので、DEF型のアンテナと考えることができる。
【0077】
ミラー反射型の試験用アンテナ6b、6c、6d、6e、6f及びミラー9b、9c、9d、9e、9fは、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aのリフレクタ7を反射してクワイエットゾーンQZを通る電波ビームの経路外に配置されている。この構成により、本実施形態に係る試験装置1は、良好なクワイエットゾーンQZを形成することができる。
【0078】
なお、本実施形態では、ミラー反射型のアンテナ6及びミラー9をそれぞれ5個ずつ備えているが、個数はこれに限定されず、試験内容により各個数を任意の数とし得る。
【0079】
また、本実施形態では、ミラー反射型の各試験用アンテナ6b、6c、6d、6e、6fが形成するクワイエットゾーンは、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aが形成するクワイエットゾーンQZと同一であるとしているが、これに限定されない。ミラー反射型の各試験用アンテナ6b、6c、6d、6e、6fが形成するクワイエットゾーンと、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aが形成するクワイエットゾーンQZとが異なっていてもよい。例えば、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aが形成するクワイエットゾーンQZの方を広くしておくと、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aを単独で使用してRF特性等を測定する場合に、広いクワイエットゾーンを利用することができる。
【0080】
次に、本実施形態に係る試験装置1の統合制御装置10及びNRシステムシミュレータ20について、
図2〜
図4を参照して説明する。
【0081】
(統合制御装置)
統合制御装置10は、以下に説明するように、NRシステムシミュレータ20や姿勢可変機構56を統括的に制御するものである。このために、統合制御装置10は、例えばイーサネット(登録商標)等のネットワーク19を介して、NRシステムシミュレータ20や姿勢可変機構56と相互に通信可能に接続されている。
【0082】
図3は、統合制御装置10の機能構成を示すブロック図である。
図3に示すように、統合制御装置10は、制御部11、操作部12、及び表示部13を有している。制御部11は、例えば、コンピュータ装置によって構成される。このコンピュータ装置は、例えば、
図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)11aと、ROM(Read Only Memory)11bと、RAM(Random Access Memory)11cと、外部インタフェース(I/F)部11dと、図示しないハードディスク装置等の不揮発性の記憶媒体と、各種入出力ポートとを有する。
【0083】
CPU11aは、NRシステムシミュレータ20を対象とする統括的な制御を行うようになっている。ROM11bは、CPU11aを立ち上げるためのOS(Operating System)やその他のプログラム及び制御用のパラメータ等を記憶するようになっている。RAM11cは、CPU11aが動作に用いるOSやアプリケーションの実行コードやデータ等を記憶するようになっている。外部インタフェース(I/F)部11dは、所定の信号が入力される入力インタフェース機能と所定の信号を出力する出力インタフェース機能を有している。
【0084】
外部I/F部11dは、ネットワーク19を介して、NRシステムシミュレータ20に対して通信可能に接続されている。また、外部I/F部11dは、OTAチャンバ50における姿勢可変機構56ともネットワーク19を介して接続されている。入出力ポートには、操作部12及び表示部13が接続されている。操作部12は、コマンドなど各種情報を入力するための機能部であり、表示部13は、上記各種情報の入力画面や測定結果等、各種情報を表示する機能部である。
【0085】
上述したコンピュータ装置は、CPU11aがRAM11cを作業領域としてROM11bに格納されたプログラムを実行することにより制御部11として機能する。制御部11は、
図3に示すように、呼接続制御部14、信号送受信制御部15、及びDUT姿勢制御部17を有している。呼接続制御部14、信号送受信制御部15、及びDUT姿勢制御部17も、CPU11aがRAM11cの作業領域でROM11bに格納された所定のプログラムを実行することにより実現されるものである。
【0086】
呼接続制御部14は、試験用アンテナ6を駆動してDUT100との間で制御信号(無線信号)を送受信させることにより、NRシステムシミュレータ20とDUT100との間に呼(無線信号を送受信可能な状態)を確立する制御を行う。
【0087】
信号送受信制御部15は、操作部12におけるユーザ操作を監視し、ユーザによりDUT100の送信特性及び受信特性の測定に係る所定の測定開始操作が行われたことを契機に、呼接続制御部14での呼接続制御を経て、NRシステムシミュレータ20に対して信号送信指令を送信する。更に、信号送受信制御部15は、NRシステムシミュレータ20に対して、試験用アンテナ6を介して試験信号を送信させる制御を行うとともに、NRシステムシミュレータ20に信号受信指令を送信し、試験用アンテナ6を介して被測定信号を受信させる制御を行う。
【0088】
また、信号送受信制御部15は、2つの試験用アンテナを用いて行うRRM特性等の送受信特性の試験では、到来角度の設定、使用する試験用アンテナの選択を行うようになっている。具体的には、所定の複数の到来角度(例えば、30°、60°、90°、120°、150°)のうち1つの到来角度を選択して測定条件として設定(RAM11c等に記憶)する。到来角度はユーザが選択してもよいし、制御部11等が自動で選択するようにしてもよい。信号送受信制御部15は、設定された到来角度に基づいて、複数の試験用アンテナ6から使用する試験用アンテナを選択する。例えば、設定した到来角度が30°の場合、信号送受信制御部15は、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aとミラー反射型の第1の試験用アンテナ6bとを、使用する試験用アンテナとして選択する。このため、例えば、ROM11bには、あらかじめ、到来角度と試験用アンテナとの対応関係を示す到来角度−試験用アンテナ対応テーブル17bが記憶されている。なお、到来角度の設定や、使用する試験用アンテナの選択は、制御部11又はNRシステムシミュレータ20の制御部22が行うようにしてもよい。
【0089】
DUT姿勢制御部17は、姿勢可変機構56に保持されているDUT100の測定時の姿勢を制御するものである。この制御を実現するために、例えば、ROM11bには、あらかじめ、DUT姿勢制御テーブル17aが記憶されている。DUT姿勢制御テーブル17aは、例えば、駆動部56aとしてステッピングモータを採用している場合には、該ステッピングモータの回転駆動を決定する駆動パルス数(運転パルス数)を制御データとして格納している。
【0090】
DUT姿勢制御部17は、DUT姿勢制御テーブル17aをRAM11cの作業領域に展開し、該DUT姿勢制御テーブル17aに基づき、上述したように、アンテナ110が3次元のあらゆる方向に順次向くようにDUT100が姿勢変化するよう姿勢可変機構56を駆動制御する。
【0091】
(NRシステムシミュレータ)
図4に示すように、本実施形態に係る試験装置1のNRシステムシミュレータ20は、信号測定部21、制御部22、操作部23、及び表示部24を有している。信号測定部21は、信号発生部21a、デジタル/アナログ変換器(DAC)21b、変調部21c、RF部21dの送信部21eにより構成される信号発生機能部と、RF部21dの受信部21f、アナログ/デジタル変換器(ADC)21g、解析処理部21hにより構成される信号解析機能部とを有している。なお、信号測定部21は、使用する2つの試験用アンテナに対応できるように、2セット設けるようにしてもよい。
【0092】
信号測定部21の信号発生機能部において、信号発生部21aは、基準波形を有する波形データ、具体的には、例えば、I成分ベースバンド信号と、その直交成分信号であるQ成分ベースバンド信号を生成する。DAC21bは、信号発生部21aから出力された基準波形を有する波形データ(I成分ベースバンド信号及びQ成分ベースバンド信号)をデジタル信号からアナログ信号に変換して変調部21cに出力する。変調部21cは、I成分ベースバンド信号と、Q成分ベースバンド信号とのそれぞれに対してローカル信号をミキシングし、更に両者を合成してデジタル変調信号を出力する変調処理を行う。RF部21dは、変調部21cから出力されたデジタル変調信号から各通信規格の周波数に対応した試験信号を生成し、生成した試験信号を送信部21eにより信号処理部40に出力する。
【0093】
信号処理部40は、使用する一の試験用アンテナとの間で送受信する信号の周波数変換等の信号処理を行う第1信号処理部40aと、使用する他の試験用アンテナとの間で送受信する信号の周波数変換等の信号処理を行う第2信号処理部40bと、を備えている。第1信号処理部40aは、使用する一の試験用アンテナに送信する試験信号に信号処理を施して信号切替部41に出力する。第2信号処理部40bは、使用する他の試験用アンテナに送信する試験信号に信号処理を施して信号切替部41に出力する。信号切替部41は、制御部22の制御下で第1信号処理部40aと、使用する一の試験用アンテナとが接続され、第2信号処理部40bと、使用する他の試験用アンテナとが接続されるように、信号経路を切り替える。よって、第1信号処理部40aから出力される試験信号は、信号切替部41を介して、使用する一の試験用アンテナに送られ、該試験用アンテナからDUT100に向けて出力される。また、第2信号処理部40bから出力される試験信号は、信号切替部41を介して、使用する他の試験用アンテナに送られ、該試験用アンテナからDUT100に向けて出力される。
【0094】
また、信号測定部21の信号解析機能部において、RF部21dは、上記試験信号をアンテナ110により受信したDUT100から送信された被測定信号を、信号切替部41及び信号処理部40を経由して受信部21fで受信したうえで、該被測定信号をローカル信号とミキシングすることで中間周波数帯の信号(IF信号)に変換する。ADC21gは、RF部21dの受信部21fでIF信号に変換された被測定信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換して解析処理部21hに出力する。
【0095】
解析処理部21hは、ADC21gが出力するデジタル信号である被測定信号を、デジタル処理によって、I成分ベースバンド信号とQ成分ベースバンド信号とにそれぞれ対応する波形データを生成したうえで、該波形データに基づいてI成分ベースバンド信号及びQ成分ベースバンド信号を解析する処理を行う。解析処理部21hは、DUT100に対する送信特性(RF特性)の測定において、例えば、等価等方放射電力(Equivalent Isotropically Radiated Power:EIRP)、全放射電力(Total Radiated Power:TRP)、スプリアス放射、変調精度(EVM)、送信パワー、コンスタレーション、スペクトラムなどを測定可能である。また、解析処理部21hは、DUT100に対する受信特性(RF特性)の測定において、例えば、受信感度、ビット誤り率(BER)、パケット誤り率(PER)などを測定可能である。ここで、EIRPは、DUT100のアンテナ110の主ビーム方向の無線信号強度である。また、TRPは、DUT100のアンテナ110から空間に放射される電力の合計値である。
【0096】
解析処理部21hは、DUT100のRRM特性について、例えば、選択された一の試験用アンテナから選択された他の試験用アンテナへのハンドオーバ動作が正常に行われるか否か等を解析することもできるようになっている。
【0097】
制御部22は、上述した統合制御装置10の制御部11と同様、例えば、CPU、RAM、ROM、各種入出力インタフェースを含むコンピュータ装置によって構成される。CPUは、信号発生機能部、信号解析機能部、操作部23及び表示部24の各機能を実現するための所定の情報処理や制御を行う。
【0098】
操作部23、表示部24は、上記コンピュータ装置の入出力インタフェースに接続されている。操作部23は、コマンドなど各種情報を入力するための機能部であり、表示部24は、上記各種情報の入力画面や測定結果など、各種情報を表示する機能部である。
【0099】
本実施形態では、統合制御装置10とNRシステムシミュレータ20とを別装置としているが、1つの装置として構成してもよい。この場合には、統合制御装置10の制御部11とNRシステムシミュレータ20の制御部22とを統合して1つのコンピュータ装置により実現してもよい。
【0100】
(信号処理部)
次に、信号処理部40について説明する。
【0101】
信号処理部40は、NRシステムシミュレータ20と信号切替部41の間に設けられ、使用する一の試験用アンテナとの間で送受信する信号の周波数変換等の信号処理を行う第1信号処理部40aと、使用する他の試験用アンテナとの間で送受信する信号の周波数変換等の信号処理を行う第2信号処理部40bと、を備えている。
【0102】
第1信号処理部40aは、アップコンバータ、ダウンコンバータ、増幅器、周波数フィルタ等を備え、使用する一の試験用アンテナに送信する試験信号に対して、周波数変換(アップコンバート)、増幅、周波数選択等の信号処理を施して信号切替部41に出力する。また、第1信号処理部40aは、使用する一の試験用アンテナから信号切替部41を介して入力される被測定信号に対して、周波数変換(ダウンコンバート)、増幅、周波数選択等の信号処理を施して信号測定部21に出力するようになっている。
【0103】
第2信号処理部40bは、アップコンバータ、ダウンコンバータ、増幅器、周波数フィルタ等を備え、使用する他の試験用アンテナに送信する試験信号に対して、周波数変換(アップコンバート)、増幅、周波数選択等の信号処理を施して信号切替部41に出力する。また、第2信号処理部40bは、使用する他の試験用アンテナから信号切替部41を介して入力される被測定信号に対して、周波数変換(ダウンコンバート)、増幅、周波数選択等の信号処理を施して信号測定部21に出力するようになっている。
【0104】
信号切替部41は、信号処理部40と試験用アンテナ6の間に設けられ、制御部22の制御下で第1信号処理部40aと、使用する一の試験用アンテナとが接続され、且つ/又は、第2信号処理部40bと、使用する他の試験用アンテナとが接続されるように、信号経路を切り替えるようになっている。信号切替部41は、信号処理部40に含まれるようにしてもよい。
【0105】
(試験方法)
次に、本実施形態に係る試験装置1を用いて行う試験方法について、
図10のフローチャートを参照して説明する。以下では、2つの試験用アンテナを用いて行う試験(例えばRRM特性等の送受信特性の測定)について説明するが、これは試験方法の一例であり、試験の種類により具体的な試験方法が異なるのは勿論である。
【0106】
まず、ユーザは、OTAチャンバ50の内部空間51内に設けられた姿勢可変機構56のDUT載置部56dに対して試験対象のDUT100をセットする(ステップS1)。
【0107】
次いで、ユーザは、統合制御装置10の操作部12を用いて、DUT100の送信特性及び受信特性についての測定の開始を制御部11に指示する測定開始操作を行う。この測定開始操作は、NRシステムシミュレータ20の操作部23により行うようにしてもよい。
【0108】
制御部11は、予め定められた到来角度のうち1つを設定する(ステップS2)。例えば、予め定められた到来角度が30°、60°、90°、120°、150°の場合、制御部11は、そのうちの1つの到来角度(例えば30°)を選択し、測定すべき到来角度として設定(例えばRAM11cに記憶)する。到来角度の設定はユーザが行ってもよい。
【0109】
次いで、制御部11は、ステップS2で設定された到来角度から、その到来角度を実現する2つの試験用アンテナ6を選択する。例えば、設定された到来角度が30°の場合、試験用アンテナ6aと試験用アンテナ6bを選択し、設定された到来角度が60°の場合、試験用アンテナ6aと試験用アンテナ6cを選択し、設定された到来角度が90°の場合、試験用アンテナ6aと試験用アンテナ6dを選択し、設定された到来角度が120°の場合、試験用アンテナ6aと試験用アンテナ6eを選択し、設定された到来角度が150°の場合、試験用アンテナ6aと試験用アンテナ6fを選択する。
【0110】
次いで、NRシステムシミュレータ20の制御部22は、選択された試験用アンテナ6に信号経路を切り替える制御を行う。具体的には、NRシステムシミュレータの制御部22は、選択された2つの試験用アンテナの情報を制御部11から取得し、切替信号を信号切替部41に送る。信号切替部41は、切替信号に従って、選択された試験用アンテナ6と信号処理部40とが接続されるように信号経路を切り替える。
【0111】
制御部11の呼接続制御部14は、選択された試験用アンテナ6を使用し、DUT100との間で制御信号(無線信号)を送受信することにより呼接続制御を実施する(ステップS4)。具体的には、NRシステムシミュレータ20は、DUT100に対して試験用アンテナ6を介して所定周波数を有する制御信号(呼接続要求信号)を無線送信する。一方、該呼接続要求信号を受信したDUT100は、接続要求された周波数を設定したうえで制御信号(呼接続応答信号)を返信する。NRシステムシミュレータ20は、この呼接続応答信号を受信し正常に応答が行われたことを確認する。これら一連の処理が呼接続制御である。この呼接続制御により、NRシステムシミュレータ20とDUT100との間に、選択された試験用アンテナ6を介して所定周波数の無線信号を送受信可能な状態が確立される。
【0112】
なお、NRシステムシミュレータ20から試験用アンテナ6を介して送られてくる無線信号をDUT100により受信する処理は、ダウンリンク(DL)処理と称される。逆に、DUT100により試験用アンテナ6を介してNRシステムシミュレータ20に対して無線信号を送信する処理は、アップリンク(UL)処理と称される。試験用アンテナ6は、リンク(呼)を確立する処理、ならびにリンク確立後のダウンリンク(DL)及びアップリンク(UL)の処理を実行するために用いられるものであり、リンクアンテナの機能を兼ねている。
【0113】
ステップS4での呼接続の確立後、統合制御装置10のDUT姿勢制御部17は、クワイエットゾーンQZ内に配置されたDUT100の姿勢を姿勢可変機構56により所定の姿勢に制御する(ステップS5)。
【0114】
姿勢可変機構56によりDUT100が所定の姿勢に制御された後、統合制御装置10の信号送受信制御部15は、NRシステムシミュレータ20に対して信号送信指令を送信する。NRシステムシミュレータ20は、この信号送信指令に基づき、選択された試験用アンテナ6を介してDUT100に試験信号を送信する(ステップS6)。
【0115】
NRシステムシミュレータ20による試験信号送信制御は、以下のように実施される。NRシステムシミュレータ20(
図4参照)において、信号発生部21aは、上記信号送信指令を受けた制御部22の制御下で、試験信号を生成するための信号を発生する。次いで、DAC21bは、信号発生部により発生された信号をデジタル/アナログ変換処理する。次いで、変調部21cは、デジタル/アナログ変換により得られたアナログ信号に変調処理を行う。次いで、RF部21dは、変調信号から各通信規格の周波数に対応した試験信号を生成し、送信部21eは、この試験信号(DLデータ)を信号処理部40に送る。
【0116】
信号処理部40は、OTAチャンバ50内に設けられており、周波数変換(アップコンバート)、増幅、周波数選択等の信号処理を行い、切替部140に出力する。切替部140は、信号処理部40により信号処理がなされた信号を、選択された試験用アンテナ6に送り、試験用アンテナ6が該信号をDUT100に向けて出力する。なお、制御部11の試験用アンテナ6の選択に応じた2つの試験用アンテナの信号処理を行うために、信号処理部40では複数の信号の処理も行うことができる。この場合は、試験用アンテナ6a、6b、6c、6d、6e、6fと、2つの信号処理部40との接続を切り替えるスイッチング機構を設けて複数の試験信号の信号処理を行う。
【0117】
なお、信号送受信制御部15は、ステップS6で試験信号送信の制御を開始した後、DUT100の送信特性及び受信特性の測定が終了するまでの間、試験信号を適宜のタイミングで送信するよう制御する。
【0118】
一方、DUT100は、試験用アンテナ6を介して送られてくる試験信号(DLデータ)を、ステップS5による上記姿勢制御に基づいて順次変化する異なる姿勢の状態でアンテナ110により受信するとともに、該試験信号に対する応答信号である被測定信号を送信する。
【0119】
ステップS6で試験信号の送信を開始した後、引き続き、信号送受信制御部15による制御下で受信処理が行われる(ステップS7)。この受信処理では、試験用アンテナ6が、上記試験信号を受信したDUT100から送信される被測定信号を受信し、信号切替部41に出力する。信号切替部41は、信号経路の切り替えなどを行い、被測定信号を信号処理部40に出力する。信号処理部40は、周波数変換(ダウンコンバート)、増幅、周波数選択等の信号処理を行い、NRシステムシミュレータ20に出力する。
【0120】
NRシステムシミュレータ20は、信号処理部40により周波数変換された被測定信号を測定する測定処理を実行する(ステップS8)。
【0121】
具体的には、NRシステムシミュレータ20のRF部21dの受信部21fは、信号処理部40により信号処理された被測定信号を入力する。RF部21dは、制御部22の制御下で、受信部21fに入力された被測定信号をより周波数が低いIF信号に変換する。次いで、ADC21gは、制御部22の制御下で、IF信号をアナログ信号からデジタル信号に変換して解析処理部21hに出力する。解析処理部21hは、I成分ベースバンド信号とQ成分ベースバンド信号とにそれぞれ対応する波形データを生成する。更に、解析処理部21hは、制御部22の制御下で、生成された波形データに基づいて被測定信号を解析する。なお、制御部11の試験用アンテナ6の選択に応じた2つの試験用アンテナの信号処理を行うために、信号処理部40は複数の信号の処理も行うことができる。この場合は、試験用アンテナ6a、6b、6c、6d、6e、6fと、信号処理部40との接続を切り替えるスイッチング機構を設けて複数の試験信号の処理を行う。
【0122】
より具体的には、NRシステムシミュレータ20において、解析処理部21hは、制御部22の制御下で、被測定信号の解析結果に基づいてDUT100の送信特性及び受信特性を測定する。
【0123】
例えば、DUT100の送信特性(RF特性)については次のように行う。まず、NRシステムシミュレータ20が、制御部22の制御下で、試験信号としてアップリンク信号送信のリクエストフレームを送信する。DUT100は、該アップリンク信号送信のリクエストフレームに応答してアップリンク信号フレームを被測定信号としてNRシステムシミュレータ20に送信する。解析処理部21hは、このアップリンク信号フレームに基づいてDUT100の送信特性を評価する処理を行う。
【0124】
また、DUT100の受信特性(RF特性)については例えば次のように行う。解析処理部21hは、制御部22の制御下で、NRシステムシミュレータ20から試験信号として送信した測定用フレームの送信回数と、測定用フレームに対してDUT100から被測定信号として送信されるACK及びNACKの受信回数の割合をエラー率(PER)として算出する。
【0125】
また、DUT100のRRM特性については、例えば解析処理部21hが、制御部22の制御下で、選択された一の試験用アンテナから選択された他の試験用アンテナへのハンドオーバ動作が正常に行われるか否か等をDUT100の姿勢を変えて試験するようにしてもよい。
【0126】
ステップS8において、解析処理部21hは、制御部22の制御下で、DUT100の送信特性及び受信特性の測定結果を図示しないRAM等の記憶領域に記憶する。この測定結果は、表示部24又は表示部13に表示するようにしてもよい。
【0127】
次いで、統合制御装置10の制御部11は、所望の全ての姿勢に関してDUT100の送信特性及び受信特性の測定が終了したか否かを判定する(ステップS9)。ここで、測定が終了していないと判定された場合(ステップS9でNO)、ステップS5に戻って処理を続行する。
【0128】
制御部11は、全ての姿勢について測定が終了していると判定された場合(ステップS9でYES)、全ての到来角度について測定が終了しているか否かを判定する(ステップS10)。
【0129】
制御部11は、全ての到来角度について測定が終了していないと判定された場合(ステップS10でNO)、ステップS2に戻って処理を続行する。制御部11は、全ての到来角度について測定が終了していると判定された場合(ステップS10でYES)、試験を終了する。
【0130】
以上述べたように、本実施形態に係る試験装置1は、リフレクタ7を介してDUT100のアンテナ110との間で無線信号を送信又は受信するリフレクタ反射型の試験用アンテナ6aと、ミラー9を介してアンテナ110との間で無線信号を送信又は受信するミラー反射型の試験用アンテナ6b、6c、6d、6e、6fとを含んでいる。ミラー9により電波の伝搬方向を変えることができるので、OTAチャンバ50内の限られた小スペースにおいて電波の伝搬距離を長くすることができる。これにより、遠方界測定に必要な、試験用アンテナ6とDUT100のアンテナ110との間の距離を確保することができる。この構成により、従来のDFF方式のアンテナを用いるものより、OTAチャンバ50を小型化し、試験装置1を低コスト化することができる。
【0131】
しかも、試験用アンテナ6は、リフレクタ7を用いて無線信号を間接的に送受信するリフレクタ反射型の試験用アンテナ6aと、ミラー9を介して無線信号を送受信するミラー反射型の試験用アンテナ6b、6c、6d、6e、6fとを含むハイブリッドな構成となっている。これにより、構造が複雑なリフレクタ反射型の試験用アンテナの個数を最小限に抑える一方、ミラー反射型の試験用アンテナに比べて比較的広いクワイエットゾーンを形成し得るリフレクタ反射型の試験用アンテナ6aを単独で用いる場合には、広いクワイエットゾーンを利用することもできる。したがって、本実施形態に係る試験装置1は、DUT100のRF特性やRRM特性等の送受信特性についての遠方界測定を精度よく低コストで実施することができる。
【0132】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る試験装置について説明する。
【0133】
第2の実施形態に係る試験装置は、1つのミラー反射型の試験用アンテナ6g及び方向変更機構60が用いられている点で、5つのミラー反射型の試験用アンテナ6b、6c、6d、6e、6fが用いられている第1の実施形態と相違している。その他の構成要素は同一であり、同一の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0134】
図11は、OTAチャンバ50Aの正面側の側板を取り除いて正面側から見た正面図であり、
図12は、OTAチャンバ50A内でのミラー9b、9c、9d、9e、9fとミラー反射型の試験用アンテナ6gの配置を示す模式図である。
図11及び
図12に示すように、本実施形態に係るOTAチャンバ50A内には、第1のミラー9bと、第2のミラー9cと、第3のミラー9dと、第4のミラー9eと、第5のミラー9fとが設置されている。また、OTAチャンバ50A内には、複数のミラー9b、9c、9d、9e、9fから選択された一つを介して無線信号を送受信する試験用アンテナ6gが設置されている。試験用アンテナ6gは、水平偏波アンテナと垂直偏波アンテナを有している。
【0135】
ミラー9b、9c、9d、9e、9fは、第1の実施形態と同様に、各ミラー面がDUT100の配置位置P0を通る水平面HPと交差するように配置されている。第1の実施形態と異なるのは、各ミラー9が、1つのミラー反射型の試験用アンテナ6gから放射された電波ビームをDUT100に向けて反射するような姿勢で配置されている点である。
【0136】
本実施形態に係る試験装置は、ミラー反射型の試験用アンテナ6gの電波送信方向を複数のミラー9b、9c、9d、9e、9fの一つに向けるよう変更する方向変更機構60を更に備えている。なお、本実施形態の方向変更機構60は、本発明の方向変更手段に対応する。
【0137】
図13に示すように、試験用アンテナ6gは、DUT100の配置位置P0を通る水平面HPより下方に配置されている。ミラー9b、9c、9d、9e、9fは、ミラー面上の電波ビームの反射点P2、P3、P4、P5、P6が水平面HP上に位置するように、配置されている。試験用アンテナ6gは、方向変更機構60によりミラー9b、9c、9d、9e、9fの任意の一つに方向を設定できるようになっている。
【0138】
例えば、試験用アンテナ6gがミラー9fの方向に向けられている場合、試験用アンテナ6gから放射された電波ビームは、ミラー9fで反射してDUT100の配置位置P0に送られる。また、DUT100のアンテナ110から放射された電波ビームは、ミラー9fで反射して試験用アンテナ6gに送られる。このとき仮に、ミラー9fが無いとすると、OTAチャンバ50Aの外部に試験用アンテナ6Aが配置されることとなり、遠方界測定に要するアンテナ間距離(P0−PA間距離)を確保することができない。ミラー9fにより電波ビームの伝搬経路を曲げることにより、試験用アンテナ6fをOTAチャンバ50A内に配置すると共に、遠方界測定に必要なアンテナ間距離を確保することができる。
【0139】
具体的には、
図12において、P0−P6間距離とP6−P7間距離とを合わせた距離は、遠方界測定に要するアンテナ間距離であるP0−PA間距離に等しくなっている。P7は、試験用アンテナ6gの開口中心であり、P0−P6間の伝搬経路は水平面HP上にある。
【0140】
試験用アンテナ6gがミラー9f以外のミラーの方向に向けられている場合も同様である。例えば、試験用アンテナ6gがミラー9bに向けられている場合は、試験用アンテナ6gから放射された電波ビームは、ミラー9bで反射してDUT100の配置位置P0に送られる。また、DUT100のアンテナ110から放射された電波ビームは、ミラー9bで反射して試験用アンテナ6gに送られる。P0−P2間距離とP2−P7間距離とを合わせた距離は、遠方界測定に必要とされる最短のアンテナ間距離以上に設定される。
【0141】
図13は、第2の実施形態に係るミラー9bとミラー反射型の試験用アンテナ6gを示す模式図である。
図13に示すように、試験用アンテナ6gは、OTAチャンバ50Aの底面52a上に設置された方向変更機構60に取り付けられている。方向変更機構60は、試験用アンテナ6gを底面52aに平行な回転軸部61を中心に回転できると共に、回転軸部61に垂直な回転軸部62を中心に回転できるようになっている。これにより、試験用アンテナ6gは、電波ビームの放射方向をミラー9b、9c、9d、9e、9fのうち選択された1つのミラーの方向に自在に変更できるようになっている。方向変更機構60は、2軸ポジショナであるが、ミラー9の配置によっては1軸ポジショナであってもよい。
【0142】
図13に示すように、ミラー9bは、OTAチャンバ50Aの底面52a上に設置されたミラー保持具70に取り付けられている。ミラー保持具70は、支柱71と、ミラー9bを取り付けるための取付部74とを有している。取付部74は、底面52aに垂直な回転軸部72を中心として回転できると共に、回転軸部72に垂直な回転軸部73を中心として回転できるようになっている。これにより、取付部74に取り付けられたミラー9bは、姿勢を自在に調整できるようになっており、試験用アンテナ6gから放射された電波ビームがミラー9bで反射してDUT100に向かうように、ミラー9bの姿勢が調整される。
【0143】
なお、本実施形態では、1つのミラー反射型のアンテナ6gと、5つのミラー9b、9c、9d、9e、9fが用いられているが、個数はこれに限定されず、試験内容により任意の個数とし得る。
【0144】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る試験装置について説明する。
【0145】
第3の実施形態に係る試験装置は、1つのミラー9dが用いられている点で、5つのミラー9b、9c、9d、9e、9fが用いられている第1の実施形態と相違している。同一の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0146】
図14は、本実施形態に係るOTAチャンバ50Bの天板を取り除いて上方から見た平面図であり、
図15は、OTAチャンバ50Bの正面側の側板を取り除いて正面側から見た正面図である。
図14及び
図15に示すように、OTAチャンバ50B内に、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aと、それに対応するリフレクタ7と、ミラー反射型の試験用アンテナ6dと、それに対応するミラー9dとが設けられている。本実施形態では、更に、OTAチャンバ50B内に、DUT100のアンテナ110との間で直接、無線信号を送信又は受信する直接型の試験用アンテナ6h、6i、6j、6kが設けられている。各試験用アンテナ6は、水平偏波アンテナと垂直偏波アンテナを有している。
【0147】
ミラー9dは、ミラー面上の電波ビームの反射点P4がDUT100の配置位置P0を通る水平面HP上に存在するように、配置されている。ミラー反射型の試験用アンテナ6dは、DUT100の配置位置P0を通る水平面HPより下方に配置されている。
【0148】
ミラー反射型の試験用アンテナ6dから放射された電波ビームは、ミラー9dで反射してDUT100の配置位置P0に送られる。また、DUT100のアンテナ110から放射された電波ビームは、ミラー9dで反射して試験用アンテナ6dに送られる。P0−P4間距離とP4−P14間距離とを合わせた距離は、遠方界測定に必要とされる最短のアンテナ間距離以上に設定されている。
【0149】
本実施形態では、直接型の試験用アンテナ6h、6i、6j、6kは、DUT100の配置位置P0を中心に半径r1の仮想球面S上でかつ水平面HP上に配置されている。具体的には、直接型の試験用アンテナ6h、6i、6j、6kそれぞれの反射面上の電波ビームの反射点P22、P23、P25、P26が、水平面HP上にある。なお、直接型の試験用アンテナ6h、6i、6j、6kは、DUT100から同一距離に配置されている必要は無く、試験用アンテナ6h、6i、6j、6kのそれぞれとDUT100が異なった距離をとってもよい。
【0150】
上記述べたように、本実施形態に係る試験装置は、遠方界測定に必要なアンテナ間距離を直線距離で確保できるものについては、直接型の試験用アンテナ6h、6i、6j、6kを用い、遠方界測定に必要なアンテナ間距離を直線距離で確保できないものについてだけ、ミラー反射型の試験用アンテナ6dを用いるような態様に好適である。これにより、ミラーの個数を必要最小限に抑えることができる。
【0151】
なお、本実施形態では、4つの直接型の試験用アンテナ6h、6i、6j、6kと、1つのミラー反射型の試験用アンテナ6dが用いられているが、個数はこれに限定されず、試験内容により任意の個数とし得る。
【0152】
また、本発明は、電波暗箱だけではなく電波暗室にも適用できる。
【0153】
以上述べたように、本発明は、被試験対象のRF特性やRRM特性等の送受信特性についての遠方界測定を精度よく低コストで実施できるという効果を有し、無線端末の試験装置及び試験方法の全般に有用である。