【解決手段】携帯用情報機器は、第1筐体と、前記第1筐体と隣接して設けられ、前記第1筐体に対して、互いに面方向と垂直な方向に並ぶ平板形態と、互いに面方向で重なるように積層される積層形態との間で相対的に回動可能に連結された第2筐体と、前記第1筐体及び前記第2筐体の隣接端部を跨ぐように設けられ、前記積層形態時に前記第1筐体と前記第2筐体の前記隣接端部間に形成される隙間を覆う背表紙部材と、前記背表紙部材の表面の少なくとも一部に設けられ、前記積層形態時に前記第1筐体と前記第2筐体との間に形成される内部空間と対向するクッション部と、を備える。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る携帯用情報機器について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、一実施形態に係る携帯用情報機器10を閉じて積層形態とした状態での斜視図である。
図2は、
図1に示す携帯用情報機器10を開いて平板形態とした状態での模式的な平面図である。
図3は、
図2に示す携帯用情報機器10の内部構造を模式的に示す平面図である。
【0020】
図1〜
図3に示すように、携帯用情報機器10は、第1筐体12Aと、第2筐体12Bと、背表紙部材14と、ディスプレイ16と、を備える。本実施形態の携帯用情報機器10は、本のように二つ折りに折り畳み可能なタブレット型PCである。携帯用情報機器10は、携帯電話、スマートフォン、電子手帳、携帯用ゲーム機等であってもよい。
【0021】
各筐体12A,12Bは、互いに隣接して配置されている。各筐体12A,12Bは、例えば背表紙部材14に対応する辺(隣接端部12Aa,12Ba)以外の3辺に側壁を起立形成した矩形の板状部材で形成されている。各筐体12A,12Bは、例えばステンレスやマグネシウム、アルミニウム等の金属板、又は、炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂板で構成される。
【0022】
以下、
図1〜
図3に示すように、携帯用情報機器10について、筐体12A,12Bの並び方向、つまり背表紙部材14の短手方向(幅方向)をX方向と呼び、X方向と直交する隣接端部12Aa,12Baに沿った方向、つまり背表紙部材14の長手方向をY方向と呼ぶ。
【0023】
筐体12A,12Bは、互いの隣接端部12Aa,12Baが一対のヒンジ17を介して連結されている。筐体12A,12B間は、ヒンジ17により、
図1に示す積層形態と
図2に示す平板形態との間で相対的に回動可能である。ヒンジ17は、例えば筐体12A,12Bの隣接端部12Aa,12BaのY方向両端部にそれぞれに配置され、ディスプレイ16の外周縁部の外側に位置している。本実施形態の携帯用情報機器10は、ヒンジ17による筐体12A,12B間の回動中心がディスプレイ16の表面16aと一致する。
【0024】
筐体12A,12Bは、平板形態時に互いに面方向と垂直なX方向に並び、互いの隣接端部12Aa,12Ba同士が当接する(
図2及び
図4A参照)。筐体12A,12Bは、積層形態時には互いに面方向で重なるように積層され、互いの隣接端部12Aa,12Ba間が離間して大きな隙間を形成する(
図4B参照)。
【0025】
図3に示すように、第1筐体12Aの内面12Abには、マザーボード18、通信モジュール19、及び冷却ファン20等がねじ等で固定されている。第2筐体12Bの内面12Bbには、アンテナ21及びバッテリ装置22等がねじ等で固定されている。マザーボード18は、当該携帯用情報機器10の全体的な制御を行うための電子基板であり、図示しない中央演算装置(CPU)やメモリ等の各種電子部品が実装されている。通信モジュール19は、アンテナ21で送受信するWLAN(Wireless Local Area Network)やWWAN(Wireless Wide Area Network)等の各種無線通信の情報処理を行うデバイスである。アンテナ21は、通常複数設置される。冷却ファン20は、マザーボード18に実装された中央演算装置等を冷却するための冷却デバイスである。バッテリ装置22は、当該携帯用情報機器10の電源であり、図示しない電源ケーブルを介して外部電源から充電可能である。筐体12A,12B内には、上記以外の電子部品も各種取り付けられる。
【0026】
図4Aは、平板形態での携帯用情報機器10の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
図4Bは、
図4Aに示す携帯用情報機器10を積層形態とした状態での側面断面図である。
図4A及び
図4Bは、左右の筐体12A,12Bの隣接端部12Aa,12Ba及びその周辺部を拡大した図である。
【0027】
図3〜
図4Bに示すように、ディスプレイ16は、筐体12A,12B間に亘って延在している。ディスプレイ16は、例えばタッチパネル式の液晶ディスプレイである。ディスプレイ16は、柔軟性の高いペーパー構造を持った有機EL等のフレキシブルディスプレイである。
図4A及び
図4Bに示すように、ディスプレイ16は、第1プレート24A及び第2プレート24Bで支持され、プレート24A,24B間に亘っている。
【0028】
第1プレート24Aは、第1筐体12Aの上面開口を覆うように配置される。第2プレート24Bは、第2筐体12Bの上面開口を覆うように配置される。プレート24A,24Bは、互いに隣接して配置されている。プレート24A,24Bは、その表面24Ab,24Bbでディスプレイ16を支持している。ディスプレイ16の裏面16bは、両面テープ等の粘着剤を用いてプレート24A,24Bの表面24Ab,24Bbに貼り付けられる。プレート24A,24Bは、薄く且つ硬質のプレート状部材である。本実施形態のプレート24A,24Bは、炭素繊維等の強化繊維をエポキシ樹脂等のマトリクス樹脂に含浸した繊維強化樹脂板である。プレート24A,24Bは、ステンレス等の金属板等で形成されてもよい。
【0029】
プレート24A,24Bは、互いの隣接端面24Aa,24Baを除く3辺の外周端面に複数の取付片25が突設されている(
図2参照)。各取付片25は、例えば筐体12A,12Bの内面から起立したボス部(図示せず)にねじ止めされる。ディスプレイ16は、プレート24A,24Bを介して筐体12A,12Bに相対的に固定される。これによりプレート24A,24Bは、筐体12A,12Bと一体となって回動し、これに伴ってディスプレイ16が折曲動作する。プレート24A,24Bは、取付片25の一部又は全部に代えて、例えば裏面をボス部等に直接的にねじ止めして固定してもよい。
【0030】
図4Aに示す平板形態において、プレート24A,24Bは、互いに面方向と垂直な方向に並んで隣接し、互いの隣接端面24Aa,24Ba同士が当接する。これによりディスプレイ16は、平板状に開かれた1枚の大画面を形成する。
図4Bに示す積層形態では、プレート24A,24Bは、互いの隣接端面24Aa,24Ba同士が離間するこの際、ディスプレイ16は、略U字状に折り畳まれる。
【0031】
図2、
図4A及び
図4Bに示すように、ディスプレイ16は、プレート24A,24Bの隣接端面24Aa,24bを跨ぐ範囲に折曲領域Rを有する。折曲領域Rは、筐体12A,12Bの隣接端部12Aa,12Baを跨ぐように設けられ、X方向に短く且つY方向に長い帯状の領域である。折曲領域Rは、筐体12A,12B間が平板形態から積層形態に変化する際に折り曲げられる部分である。ディスプレイ16は、折曲領域Rのみが柔軟な構造でもよい。
【0032】
ディスプレイ16は、第1プレート24A側の領域のうち、折曲領域Rを除いた部分の裏面16bが表面24Abに固定される。ディスプレイ16は、第2プレート24B側の領域のうち、折曲領域Rを除いた部分の裏面16bが表面24Bbに固定される。ディスプレイ16の裏面16bの表面24Ab,24Bbへの固定は、例えば両面テープ等の粘着剤を用いる。一方、折曲領域Rは、プレート24A,24Bと固定されず、表面24Ab,24Bbに対して相対移動可能な状態にある。
【0033】
プレート24A,24Bは、それぞれの裏面に係止爪26A,26Bが設けられている。係止爪26Aは、第1プレート24Aの裏面から隣接端面24Aa,24Baを跨いで第2プレート24Bの裏面に当接する位置まで突出している。係止爪26Bは、第2プレート24Bの裏面から隣接端面24Ba,24Aaを跨いで第1プレート24Aの裏面に当接する位置で突出している。係止爪26A,26Bは、それぞれ1個ずつでもよいが、本実施形態ではそれぞれ複数(3個)を並列している(
図2参照)。3個の係止爪26A,26Bは、例えばそれぞれ1枚のプレートの一辺に並んでいる。係止爪26A,26Bは、
図4Aに示す平板形態時、それぞれの先端上面が相手側のプレート24A,24Bの裏面に当接し、プレート24A,24B間の段差を抑制する。これによりプレート24A,24Bは、その表面24Ab,24Bbが極めて平坦な平面に維持される。係止爪26A,26Bは、省略してもよい。
【0034】
次に、背表紙部材14及びこれと関連する要素について説明する。
図5は、背表紙部材14の平面図である。
図6は、背表紙部材14の模式的な側面図である。
図6では、後述する複数のカバー部材52のうち、一部を取付状態で、一部を分解状態で図示している。
図7Aは、背表紙部材14の一部を拡大した模式的な斜視図である。
【0035】
図4A及び
図4Bに示すように、背表紙部材14は、筐体12A,12B間が平板形態から積層形態に変化した際に形成される隣接端部12Aa,12Ba間の隙間を覆う部材である。これにより背表紙部材14は、積層形態時に筐体12A,12Bの内側に収容されたディスプレイ16、プレート24A,24B、マザーボード18、バッテリ装置22等の各要素が外観に露呈することを防止する。背表紙部材14は、X方向に可撓性を有する薄い板状部材である。背表紙部材14は、隣接端部12Aa,12Ba間を跨ぎながら内側から覆うように、筐体12A,12Bの内面12Ab,12Bb間に亘って設けられている。
【0036】
図4A、
図5及び
図7Aに示すように、背表紙部材14は、シート状部材32と、先端支柱部材34と、基端支柱部材35と、複数枚の支柱部材36a,36b,36c,36dと、を有する。
【0037】
シート状部材32は、可撓性を有する高強度のシートであり、積層形態時に筐体12A,12Bの隣接端部12Aa,12Ba間の隙間を覆うことができるX方向の幅寸法を有する(
図4B参照)。シート状部材32は、例えば炭素繊維、ガラス繊維、又はPET(ポリエチレンテレフタレート)繊維等を三軸で織った1枚の三軸織物であり、例えばこのような三軸織物をマトリクス樹脂に含浸させた三軸織物プリプレグで構成される。シート状部材32は、二軸織物等の他の織物の他、樹脂シートや金属シート等もよい。
【0038】
各支柱部材34,35,36a〜36dは、樹脂や金属等で形成された薄く且つ幅狭に形成された短冊状のプレートである。本実施形態の場合、先端支柱部材34及び基端支柱部材35は、中間の支柱部材36a〜36dよりもX方向に幅広に構成されている。各支柱部材34,35,36a〜36dは、X方向の幅寸法は全て同一でもよいし、適宜異なってもよい。背表紙部材14は、第1筐体12Aから第2筐体12Bに向かって順に、先端支柱部材34、支柱部材36a〜36d、基端支柱部材35が並んでいる。
【0039】
各支柱部材34,35,36a〜36dは、接着剤或いは両面テープ等の粘着剤を用いてシート状部材32の表面に固着される。背表紙部材14は、筐体12A,12Bの回動動作に応じて平板形状から略U字形状まで折り曲げされる。各支柱部材34,35,36a〜36d及びシート状部材32は、樹脂で一体成形されてもよい。各支柱部材34,35,36a〜36dは、長手方向の両端部にそれぞれ薄板部38を有し、この薄板部38はヒンジ17の下面側で摺動可能に保持される(
図3参照)。
【0040】
先端支柱部材34は、第1筐体12A側の脚が上底及び下底と直交した台形状の断面形状を有する。先端支柱部材34は、第1筐体12Aの内面12Ab上に載置され、内面12Abに対して相対的にX方向にスライド可能である。先端支柱部材34の第2筐体12B側を向いた側面34aは、隣接する支柱部材36aの側面40aと対向する。側面34aは、背表紙部材14の裏面(シート状部材32側の面)から表面(第1プレート24A側の面)に向かって、次第に第2筐体12Bから第1筐体12Aに向かう方向に傾斜した傾斜面である(
図4A参照)。つまり側面34aは、下から上に向かって次第に支柱部材36aから離間する方向に傾斜している。
【0041】
先端支柱部材34は、ばね42によってX方向の付勢力を受けている(
図3参照)。ばね42は、先端支柱部材34を介して背表紙部材14をX方向で第1筐体12A側に向かって常時付勢している。
【0042】
基端支柱部材35は、第2筐体12B側の脚が上底及び下底と直交した台形状の断面形状を有する。基端支柱部材35は、第2筐体12Bの内面12Bb上に載置され、内面12Bbに対して相対的に移動不能に固定されている。基端支柱部材35は、長手方向の適宜位置に板厚方向に貫通した取付孔43が形成されている(
図5参照)。取付孔43は、ねじ44が挿通される。ねじ44は、取付孔43を通して第2筐体12Bの内面12Bbに設けた図示しない雌ねじ部に螺合される。これにより基端支柱部材35、つまり背表紙部材14が第2筐体12Bに対して固定される。基端支柱部材35の第1筐体12A側を向いた側面35aは、隣接する支柱部材36dの側面40bと対向する。側面35aは、背表紙部材14の裏面から表面に向かって、次第に第1筐体12Aから第2筐体12Bに向かう方向に傾斜した傾斜面である(
図4A参照)。つまり側面35aは、下から上に向かって次第に支柱部材36dから離間する方向に傾斜している。
【0043】
各支柱部材36a〜36dは、台形状の断面形状を有する。各支柱部材36a〜36dは、第1筐体12Aの内面12Ab上に載置され、内面12Abに対して相対的にX方向にスライド可能である。各支柱部材36a〜36dはそれぞれ、第1筐体12A側を向いた側面40aと、第2筐体12B側を向いた側面40bと、を有する。各側面40aは、背表紙部材14の裏面から表面に向かって、次第に第1筐体12Aから第2筐体12Bに向かう方向に傾斜した傾斜面である。各側面40bは、背表紙部材14の裏面から表面に向かって、次第に第2筐体12Bから第1筐体12Aに向かう方向に傾斜した傾斜面である。4枚の支柱部材36a〜36dのうち、両端の支柱部材36a,36dは互いに左右称形状であり、中央の支柱部材36b,36cは互いに左右対称形状である。支柱部材36a〜36dの設置本数は適宜変更可能である。
【0044】
このように、背表紙部材14は、基端支柱部材35が第2筐体12Bに固定され、先端支柱部材34及び支柱部材36a〜36dが第1筐体12Aに対してX方向に相対移動可能に支持される。背表紙部材14は、基端支柱部材35を第1筐体12Aに固定し、先端支柱部材34を第2筐体12B側に配置した構成としてもよい。
【0045】
図5〜
図7Aに示すように、背表紙部材14の表面14aには、複数の溝部46と、複数の逃げ溝48と、が形成されている。
【0046】
溝部46は、背表紙部材14の長手方向で、例えば3個設けられている。各溝部46は、背表紙部材14の表面14aの一部を凹ませたものであり、X方向に沿って運河状に延びている。つまり各溝部46は、各支柱部材34,35,36a〜36dの表面14aのY方向で同一位置を凹ませることで、X方向に連通した溝形状をなしている。
【0047】
各溝部46は、左右の筐体12A,12B間に亘るケーブル50(
図3、
図6及び
図7A参照)の通り道となる。ケーブル50は、溝部46に通されることにより、筐体12A,12Bの回動動作時に表面14a上で位置ずれや浮き上がりを生じることが抑制される。これにより筐体12A,12Bの回動動作時に、ケーブル50が他の部品に挟まれたり、過度な力を受けて接続端子が抜去されたりする不具合の発生が抑制される。
【0048】
逃げ溝48は、背表紙部材14の長手方向で、例えば4個設けられている。各逃げ溝48は、溝部46と同様な構造であるが、溝部46よりもY方向の幅寸法が小さい。逃げ溝48は、筐体12A,12Bの回動動作時に各プレート24A,24Bの隣接端面24Aa,24Baから突出した係止爪26A,26Bが表面14aに干渉することを回避するための逃げ部である。
【0049】
図6に示すように、背表紙部材14の表面14aには、溝部46を覆うカバー部材52が取り付けられる。なお、
図3、
図5、
図7Aは、カバー部材52を取り外した状態を図示している。
【0050】
図7Bは、
図7Aに示す背表紙部材14にカバー部材52を取り付けた状態を示す斜視図である。
図8Aは、カバー部材52の模式的な平面図である。
図8Bは、
図8A中のB−B線に沿う模式的な断面図である。
【0051】
図6〜
図7Bに示すように、カバー部材52は、溝部46を覆うことでケーブル50の浮き上がりや脱落を防止する蓋体としての機能を有する。カバー部材52は、さらに、背表紙部材14の表面14aとの接触から筐体12A,12B内の部品(本実施形態ではプレート24A,24B)を保護する保護部材としての機能と、を有する。カバー部材52は、溝部46のX方向全長に亘って設けられ、溝部46のY方向両側の壁部の表面14aに配置される。カバー部材52は、背表紙部材14のY方向で全長に亘って設けられてもよい。
【0052】
図7B〜
図8Bに示すように、カバー部材52は、先端シート部52aと、クッション部52bと、取付部52cと、補助カバー部52dと、を有する。
【0053】
先端シート部52aは、クッション部52bよりも薄い積層シートである。先端シート部52aは、カバー部材52の第1筐体12A側の第1端部を含む所定範囲に設けられている。先端シート部52aは、カバー部材52の表面側(プレート24A,24B6側)から裏面側(背表紙部材14側)に向かって順に、表面シート54と、ベースシート55と、裏面シート56と、を積層した3層構造である(
図8B参照)。
【0054】
図8Bに示すように、表面シート54は、カバー部材52のX方向の全長に亘って延在しており、カバー部材52の表面を形成する。先端シート部52aにおいて、表面シート54は、ベースシート55の表面と接着剤や粘着剤を用いて固着される。表面シート54は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)で形成された可撓性を有する薄いシートである。表面シート54の厚さは、例えば0.08mmである。表面シート54は、PTFEのような自己潤滑性を有する樹脂で形成されると、後述するスライド動作時に開口部60a内を摺動する際の摩擦や摩耗を低減できるため好ましい。表面シート54は、PTFE以外、例えばナイロン系樹脂等で形成されてもよい。表面シート54は、透明又は半透明であることが好ましい。
【0055】
ベースシート55は、カバー部材52のX方向の全長に亘って延在しており、カバー部材52のベースとなる。先端シート部52aにおいて、ベースシート55は、表面シート54と裏面シート56との間に挟まれた状態で積層され、シート54,56と接着剤や粘着剤を用いて固着される。ベースシート55は、例えばPETで形成された可撓性を有する薄いシートである。ベースシート55の厚さは、例えば0.2mmであり、表面シート54よりも厚い。ベースシート55は、ナイロン系樹脂等やステンレス等の金属薄膜で形成されてもよい。ベースシート55は、透明又は半透明であることが好ましい。
【0056】
裏面シート56は、カバー部材52のX方向の全長に亘って延在しており、カバー部材52の裏面を形成する。裏面シート56は、ベースシート55の裏面に積層され、ベースシート55と接着剤や粘着剤を用いて固着される。裏面シート56は、表面シート54と同一の材質(例えばPTFE)、且つ同一の厚さ(例えば0.08mm)でよい。裏面シート56は、表面シート54と異なる材質で異なる厚さでもよい。裏面シート56は、透明又は半透明であることが好ましい。
【0057】
クッション部52bは、先端シート部52a及び補助カバー部52dよりも厚い積層シートである。クッション部52bは、X方向で先端シート部52aと取付部52cとの間に設けられ、支柱部材36b〜36dの表面14aの少なくとも一部に重なる位置にある。クッション部52bは、積層形態時に筐体12A,12B間に形成される内部空間、つまりディスプレイ16の折曲領域Rやプレート24A,24Bと対向する位置に設けられる(
図4B参照)。
【0058】
図8Bに示すように、クッション部52bは、カバー部材52の表面側から裏面側に向かって順に、表面シート54と、保護シート57と、クッション材58と、ベースシート55と、裏面シート56と、を積層した5層構造である。クッション部52bにおいて、表面シート54、ベースシート55、及び裏面シート56は、先端シート部52aのものと共用である。
【0059】
保護シート57は、クッション部52bのX方向の全長に亘って延在しており、具体的にはクッション材58の表面を覆う位置のみに設けられている。保護シート57は、表面シート54とクッション材58の間に挟まれた状態で積層され、表面シート54の裏面及びクッション材58の表面と接着剤や粘着剤を用いて固着される。保護シート57は、例えばPETで形成された可撓性を有する薄いシートである。保護シート57の厚さは、表面シート54やベースシート55よりも薄く、例えば0.05mmである。保護シート57は、クッション材58の表面を保護可能な素材であれば、PET以外の樹脂や金属箔等で形成されてもよい。
【0060】
クッション材58は、保護シート57とベースシート55の間に挟まれた状態で積層され、保護シート57の裏面及びベースシート55の表面と接着剤や粘着剤を用いて固着される。クッション材58は、例えばポリウレタン樹脂で形成され、可撓性を有するスポンジ状のシートである。クッション材58の厚さは、クッション部52bの5層で最も厚く、例えば0.25mmである。これによりクッション材58は高い衝撃吸収性能を発揮する。クッション材58は、表面に予め保護シート57が貼り付けられた状態で、ベースシート55と表面シート54との間に配設される。クッション材58は、所定のクッション性を有する材質や構造であればよく、例えばポリウレタン以外の樹脂のスポンジ状部材の他、柔軟なゴムで形成されてもよい。
【0061】
取付部52cは、背表紙部材14に対するカバー部材52の取付部である。取付部52cは、例えば硬質の樹脂で形成され、矩形の断面形状を有する。取付部52cは、カバー部材52のY方向で全幅に亘って延在し、X方向の長さ寸法が基端支柱部材35の幅寸法よりも多少小さいか又は同一である。取付部52cは、クッション部52bの側部で表面シート54の表面に両面テープや接着剤を用いて固定される。
【0062】
取付部52cは、その長手方向(Y方向)の両端部にそれぞれ取付孔59が貫通形成されている。取付孔59は、背表紙部材14を第2筐体12Bに固定するためのねじ44が挿通される。これによりカバー部材52は、第2筐体12Bに対して背表紙部材14と共締めされる。カバー部材52は、背表紙部材14のみにねじや接着剤等で固定されてもよい。取付部52cは、省略してもよく、この場合、クッション部52b又は補助カバー部52dの一部を背表紙部材14の表面14aに接着剤や両面テープ等で固着するとよい。取付部52cにも表面シート54を設けてもよい。取付部52cは、ベースシート55及び裏面シート56を設けなくてもよい。
【0063】
補助カバー部52dは、平面視で溝部46から外れた位置に配置される。補助カバー部52dは、溝部46の外側(第2筐体12B側)でケーブル50の浮き上がりを防止するための補助的なカバー部である。補助カバー部52dは、取付部52cよりも第2筐体12B側に張り出した薄いシート片である。
【0064】
図8Bに示すように、補助カバー部52dは、表面シート54、ベースシート55、及び裏面シート56を積層した3層構造であり、先端シート部52aと同一構造且つ同一の厚さである。補助カバー部52dは、例えば表面シート54を省略した構成としてもよい。補助カバー部52dは、取付部52cのY方向一端側から第2筐体12B側に突出しており、平面視略台形状である。補助カバー部52dは、平面視矩形状に形成されてもよいし、取付部52cのY方向全長から第2筐体12B側に突出した構成でもよい。補助カバー部52dは、省略してもよい。
【0065】
次に、カバー部材52の背表紙部材14への取付構造について説明する。
【0066】
図6及び
図7Bに示すように、カバー部材52は、各溝部46の全体を覆うように設けられ、取付部52cが基端支柱部材35の表面14aに配置される。ねじ44が取付孔59,43を通して第2筐体12Bに締め付けられることで、カバー部材52は、背表紙部材14と共に第2筐体12Bと固定される。
【0067】
先端シート部52aは、先端支柱部材34の溝部46のY方向両側の壁部の表面14aを一段低くした段差60aの底面載置される(
図6参照)。先端支柱部材34の表面14aには、先端シート部52aを上から跨ぐ保持部材60が配置される。保持部材60は、先端支柱部材34の表面14aに設けられたねじ孔34c(
図5参照)にねじ62を用いて固定される(
図7B参照)。
【0068】
図6に示すように、保持部材60と段差60aの底面との間には、段差60a分の高さ分の隙間(以下、段差60aと同一符号を付して「開口部60a」と呼ぶ)が形成される。つまり開口部60aには、先端シート部52aがX方向に摺動可能な状態で挿入される。このため、先端シート部52aは可能な限り薄いことが好ましい。そこで、本実施形態のカバー部材52は、先端シート部52aにクッション材58や保護シート57を設けていない。但し製造効率を考慮し、先端シート部52aはクッション部52bと同一構造としてもよい。また、先端シート部52aは、その外面がPTFE製の表面シート54及び裏面シート56で形成されるため、開口部60aでの摺動が円滑である。
【0069】
これによりカバー部材52は、第2筐体12B側の取付部52c(及び補助カバー部52d)が背表紙部材14に対して相対的に移動不能に固定され、第1筐体12A側の先端シート部52a及びクッション部52bが背表紙部材14に対してX方向に相対的に移動可能に支持される。カバー部材52は、取付部52cを第1筐体12A側に配置し、先端シート部52aを第2筐体12B側に配置しても勿論よい。
【0070】
本実施形態のカバー部材52は、背表紙部材14に対して表裏や配置を誤って取り付けることを防止するための位置決め孔52eを有する。位置決め孔52eは、取付部52cのY方向両端部にそれぞれ設けられ、それぞれ近接する取付孔59とのピッチが異なる。基端支柱部材35の表面14aには、位置決め孔52eに対応した位置に位置決めピン35bが突設されている(
図5参照)。取付部52cは、各位置決め孔52eに各位置決めピン35bが嵌挿されることにより、表裏や配置を誤って取り付けることが抑制されている。特にクッション部52bは、後述するようにクッション材58の表面を保護シート57で保護している必要があり、この点で位置決め孔52e及び位置決めピン35bは特に重要である。同様に、保持部材60にも、位置決め孔60bが一対設けられ、先端支柱部材34の表面14aには各位置決め孔60bに嵌挿可能な位置決めピン34bが一対設けられている。
【0071】
次に、筐体12A,12Bが回動動作した際のカバー部材52の動作及び作用効果を説明する。
【0072】
図4Aに示す平板形態において、背表紙部材14は、先端支柱部材34から基端支柱部材35までがX方向に沿って平板状に配置され、互いに当接した筐体12A,12Bの隣接端部12Aa,12Baを跨いでいる。この状態では、背表紙部材14は、先端支柱部材34が最も第1筐体12A側にスライドした位置にある。また、互いに対向する側面34a,40a間、側面40b,40a間、側面40b,35a間には、それぞれ略V字状の隙間が形成されている。
【0073】
カバー部材52は、背表紙部材14と同様に、取付部52cが基端支柱部材35に固定され、背表紙部材14の表面14aに沿って第1筐体12A側へとX方向に延在している。カバー部材52の先端シート部52aは、その先端が先端支柱部材34に形成した開口部60aを挿通している。
【0074】
次に、携帯用情報機器10が平板形態から積層形態に回動される動作を説明する。上記の通り、携帯用情報機器10は、ヒンジ17による筐体12A,12B間の回動中心がディスプレイ16の表面16aに一致している。このため、筐体12A,12B間を平板形態から積層形態に折り畳む際、その回動中心に対して、カバー部材52は外側にあり、背表紙部材14はカバー部材52よりもさらに外側にある。
【0075】
従って、このような回動動作時、背表紙部材14は、回動中心との内輪差によってX方向の引張力を受ける。このため、背表紙部材14は、第2筐体12Bに固定された基端支柱部材35によって先端支柱部材34が第2筐体12B側へと引き寄せられ、第1筐体12Aの内面12Ab上をスライドする。同様に、この回動動作時、カバー部材52についても、回動中心との内輪差によってX方向の引張力を受ける。このため、カバー部材52については、第2筐体12Bに固定された取付部52cによって先端シート部52aが第2筐体12B側へと引き寄せられ、背表紙部材14の表面14a上をスライドする。
【0076】
図4Bに示す積層形態では、湾曲形状となった背表紙部材14が、筐体12A,12Bの隣接端部12Aa,12Ba間に形成された大きな隙間を内側から覆い隠した状態となる。この際、背表紙部材14は、互いに対向する側面34a,40a間、側面40b,40a間、側面40b,35a間が当接し、先端支柱部材34から基端支柱部材35までが湾曲した背骨のように連続し、全体として高い剛性を有する支柱となる。これにより背表紙部材14は、互いに離間した筐体12A,12B間を補強する支柱として機能する。このため、携帯用情報機器10は、積層された筐体12A,12B間を押し潰す方向の外力が付与された際、背表紙部材14が筐体12A,12B間で突っ張り、ディスプレイ16の折曲領域Rが押し潰されることを抑制する。
【0077】
ところで、プレート24A,24Bは、平板形態で互いの隣接端面24Aa,24Baが隙間なく当接し、ディスプレイ16を段差なく支持可能な平坦面を形成する必要がある。このため、隣接端面24Aa,24Baは鋭利なエッジで形成され、積層形態ではこのエッジが背表紙部材14の表面14aに向かって突き出した状態となる(
図4B参照)。その結果、積層形態時の携帯用情報機器10が落下等の衝撃を受けると、隣接端面24Aa,24Baが背表紙部材14の硬質な表面14aに衝撃的に当接し、欠けや割れ等の破損を生じる懸念がある。特に本実施形態では、プレート24A,24Bが繊維強化樹脂板のため、エッジが衝撃で欠け易い。
【0078】
この点、本実施形態のカバー部材52は、積層形態時に背表紙部材14の表面14aに沿って湾曲し、クッション部52b(クッション材58)がプレート24A,24Bの隣接端面24Aa,24Baと対向する(
図4B参照)。このため、積層形態時の衝撃等により、隣接端面24Aa,24Baがカバー部材52に干渉した場合であっても、その衝撃をクッション部52bが吸収するため、隣接端面24Aa,24Baのエッジが破損することが抑制される。
【0079】
本実施形態の場合、カバー部材52は、溝部46に重なる位置にしか設けられていない。しかしながら、カバー部材52は、背表紙部材14の表面14aよりもクッション部52bの厚み分だけ隣接端面24Aa,24Ba側に膨出する。このため、携帯用情報機器10が積層形態時に衝撃等を受けた際、隣接端面24Aa,24Baが真っ先にクッション部52bに当接し、他の硬質な表面14aに干渉することが抑制される。しかもカバー部材52のクッション部52bは、クッション材58の表面に、例えばPETで形成され、表面シート54よりも傷や捲れに強い保護シート57を設けている。すなわち、仮に保護シート57がなく、表面シート54とクッション材58だけの構成の場合、表面が柔らかすぎるので、プレート24A,24Bのエッジで表面シート54及びクッション材58が巻き込まれ、いずれも破損する可能性がある。この点、本実施形態のクッション部52bは保護シート57を備えることで表面が固くなり、プレート24A,24Bのエッジが表面をスライドしても表面シート54及びクッション材58が巻き込まれることが防止され、両者が破損することを抑制できる。なお、係止爪26A,26Bは、背表紙部材14の表面14aに設けた逃げ溝48により、表面14aとの干渉が回避されている。
【0080】
本実施形態では、背表紙部材14をX方向に通過するケーブル50の浮き上がり等を防止する上で、カバー部材52は、重要な役目を果たすため設置することが好ましいが、クッション部52bはカバー部材52以外に設けてもよい。すなわち、クッション部52bは、例えば背表紙部材14の表面14aに直接的に貼り付けてもよい。この場合もクッション部52bは、少なくとも保護シート57をクッション材58の表面に設けることで、クッション材58の破損を抑制できる。但し、クッション部52bをカバー部材52と一体に設けることで、部品点数の削減や製造工程の削減が可能となる。カバー部材52は、ケーブル50を押さえる目的ではなく、クッション部52bの設置のためだけに設けてもよい。この場合も、カバー部材52を設けることで、クッション部52bの設置が容易となる。また背表紙部材14の動きにカバー部材52が摺動することで、クッション部52bが背表紙部材14の動きにより円滑に追従できるとようになる。
【0081】
本実施形態のカバー部材52は、一部にポリウレタン等で形成されたクッション材58からなるクッション部52bを設けているため、この部分は不透明で裏側のケーブル50が視認できない。ところが、先端シート部52aは、積層された3枚のシート54〜56が全て透明又は半透明に形成されている。このため、先端シート部52aの裏側のケーブル50を上から容易に視認でき、例えば製造時の組間違い等を抑制できる。なお、クッション材58も透明又は半透明に構成でき、また取付部52cを省略した構成とすれば、カバー部材52の全体を通して裏側のケーブル50を視認可能となる。
【0082】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0083】
上記では、折曲領域Rを持ったフレキシブルディスプレイであるディスプレイ16を例示したが、ディスプレイは各筐体12A,12Bの上面にそれぞれ配置された構成(デュアルディスプレイ)でもよい。この場合、プレート24A,24Bは、不要となるが、積層形態時に各ディスプレイの端面に対向する位置にクッション部52bを設ければ、各ディスプレイの端面の破損を抑制できる。また、フレキシブルディスプレイであるディスプレイ16を用いた構成であっても、携帯用情報機器10の仕様等によってはプレート24A,24Bが不要となることもある。この場合にも、携帯用情報機器10は、クッション部52bを有することで、例えばマザーボード18の端面と背表紙部材14との干渉によるマザーボード18の破損を抑制できる。
【0084】
上記では、本のように二つ折りに折り畳み可能な携帯用情報機器10を例示したが、本発明は、同形の筐体同士を二つ折りに折り畳む構成以外、例えば大形の筐体の左右縁部にそれぞれ小形の筐体を折り畳み可能に連結した観音開きの構成、1つの筐体の左右縁部にそれぞれ折り畳み方向の異なる筐体を連結したS型の折り畳み構成、大形の筐体の左右一方の縁部に小形の筐体を折り畳み可能に連結したJ型の折り畳み構成等、各種構成に適用可能であり、筐体の連結数は4以上としてもよい。