【解決手段】後輪の軸心よりも高い位置に横向き伝動ケース部13を備えた門形の後車軸ケース11Rを備え、車体フレーム10の後部に、横向き伝動ケース部13よりも後方側でメインフレーム10Aの後部同士を繋ぐ横向きフレーム10Bと、横向き伝動ケース部13の後方箇所においてメインフレーム10Aから下方へ向けて延出された下部支点ブラケット15と、が設けられ、横向きフレーム10B上にトップリンク取付部50が設けられ、下部支点ブラケット15の下端部にロアーリンク取付部52が設けられ、ロアーリンク取付部52は、横向き伝動ケース部13の下縁と同程度の高さ位置に設定されている。
前記バルブケースは、前後方向で前記昇降シリンダの配設箇所と重複し、かつ左右方向で前記昇降シリンダが存在する位置よりも、前記第二吊り下げ部材に連結された前記リフトアームが存在する側に偏倚して配設されている請求項6記載の乗用作業機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の先行技術によれば、車体フレームの後部において、メインフレームから上方へ起立する上向きフレームと、下方へ向けて延出された下向きフレームとが備えられ、上向きフレームの上端部にトップリンクの取付部が備えられ、下向きフレームにロアーリンクの取付部が備えられている。
このように構成された構造のものでは、最低地上高の高い作業機を得られるものではあるが、トップリンクの揺動支点位置、及びロアーリンクの揺動支点位置が、上向きフレームの上端部、及び車体フレームの後方延長部における下向きフレームに設けられている。
これよって、トップリンクの揺動支点位置、及びロアーリンクの揺動支点位置が地表面から比較的高い位置に存在することになる。このような高い位置の揺動支点を回動中心とするリンク機構に作業装置を連結して昇降作動させる場合には、リンク機構の昇降作動量に帯する作業装置の前後移動量を少なくするように、リンク長さを長くする必要がある。このため、最低地上高の高い作業機を構成する際に、リンク長さが長くなって、作業装置を含む作業機全体の大型化を招く虞があり、この点で改善の余地がある
【0005】
本発明は、作業機の最低地上高が高い状態を維持しながら、作業装置を昇降作動させるリンク機構の小型化を図り得る乗用作業機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による乗用作業機では、
左右一対の前輪に動力を伝える動力伝達機構が内装された前車軸ケースと、
左右一対の後輪に動力を伝える動力伝達機構が内装された後車軸ケースと、
前記前車軸ケース及び前記後車軸ケースに支持される車体フレームと、が備えられ、
前記車体フレームにエンジン及びトランスミッションケースが支持され、
前記車体フレームは、前記前車軸ケースと前記後車軸ケースにわたって架設された左右一対のメインフレームが備えられ、
前記後車軸ケースが、左右の前記後輪を下部に支持する左右一対の縦向き伝動ケース部と、前記後輪の軸心よりも高い位置で、前記縦向き伝動ケース部の上部同士を連結する横向き伝動ケース部と、を備えて前後方向視で門形に形成され、
前記車体フレームの後部に、前記横向き伝動ケース部よりも後方側で前記メインフレームの後部同士を繋ぐ横向きフレームと、前記横向き伝動ケース部の後方箇所において前記メインフレームから下方へ向けて延出された下部支点ブラケットと、が設けられ、
前記横向きフレーム上にトップリンクを連結可能なトップリンク取付部が設けられ、
前記下部支点ブラケットの下端部にロアーリンクを連結可能なロアーリンク取付部が設けられ、
前記ロアーリンク取付部は、前記横向き伝動ケース部の下縁と同程度の高さ位置に設定されていることを特徴とする。
【0007】
本構成によると、後車軸ケースが、左右の後輪を下部に支持する左右一対の縦向き伝動ケース部と、後輪の軸心よりも高い位置で、縦向き伝動ケース部の上部同士を連結する横向き伝動ケース部と、を備えて前後方向視で門形に形成され、その後車軸ケースと前車軸ケースとにわたって左右一対のメインフレームを備える車体フレームが架設されている。これにより、横向き伝動ケース部の下縁高さを後輪の軸心よりも高くして、車体の最低地上高を高く保つことができる。
そして、メインフレームの後部同士を繋ぐ横向きフレーム上にトップリンクを連結可能なトップリンク取付部が設けられ、メインフレームから下方へ向けて延出された下部支点ブラケットの下端部にロアーリンクを連結可能なロアーリンク取付部が設けられ、そのロアーリンク取付部が、横向き伝動ケース部の下縁と同程度の高さ位置に設定されている。これによって、トップリンク取付部とロアーリンク取付部との間における必要な高低差をつけながら、ロアーリンク取付部の高さ位置が、最低地上高に相当する横向き伝動ケース部の下縁と同程度の高さに設定される。その結果、ロアーリンク取付部の高さ位置が、そのロアーリンク取付部の存在によって最低地上高がより低くなることを避けながら、極力地面に近づけられる。これにより、ロアーリンク取付部と作業装置とを連結する所定長さのロアーリンクの水平面に対する傾斜角度が、より緩やかになる。
これによって、比較的短いロアーリンクを採用しながらロアーリンクの昇降作動量に対する作業装置の前後移動量を少なくすることができ、作業装置を含む作業機全体の大型化を招く虞が少なくなる。
【0008】
本発明において、前記下部支点ブラケットは、前記横向き伝動ケース部の後面に当接して連結されていると好適である。
【0009】
本構成によると、ロアーリンク取付部を設けるための下部支点ブラケットを、横向き伝動ケース部の後面に対する連結部材として活用することができ、車体フレームに対する後車軸ケースの連結構造を強固にすることができる。
【0010】
本発明において、前記ロアーリンク取付部に連結された前記ロアーリンクを昇降操作するリフトアームが備えられ、
前記リフトアームの左右方向に沿う揺動支点軸が左右一対の支持ブラケットに枢支され、
前記支持ブラケットが、前記横向き伝動ケース部の上部に対して脱着可能に取り付けられていると好適である。
【0011】
本構成によると、リフトアームの揺動支点軸を支持する左右一対の支持ブラケットが、横向き伝動ケース部の上部に対して脱着可能に取り付けられているので、強度メンバーである後車軸ケースを、支持ブラケットの取り付け対象部材として活用することができる。
そして、左右一対の支持ブラケットが横向き伝動ケース部の上部に対して脱着可能に取り付けられているので、支持ブラケットを取り外すことで、リフトアームが取り付けられない仕様の車体フレーム上に、別装置を載置する際の邪魔になることを避けられ、汎用性に優れた乗用作業機を得やすい。
【0012】
本発明において、左右一対の前記支持ブラケット同士は、互いに同一仕様の部材によって構成されていると好適である。
【0013】
本構成によると、左右の支持ブラケット同士を、互いに同一仕様の部材によって構成することにより、部品の兼用化が可能となり、製造コストの低減化を図ることができる。
【0014】
本発明において、左右一対の前記メインフレームの左右方向での中央位置に対して、左右の前記リフトアーム同士は互いに等距離を隔てた位置に設けられ、
左右の前記リフトアームの前記揺動支点軸を揺動操作する操作腕部の左右方向での中心位置、及び、その操作腕部を前後方向に押し引き操作する昇降シリンダの中心軸線の位置が、前記中央位置に対して左右方向で一方向側に偏倚して配置され、
前記揺動支点軸を枢支する前記支持ブラケットのボス部が、前記中央位置に対しては左右で異なる距離を隔てて、かつ、前記操作腕部の左右方向での中心位置、ならびに前記昇降シリンダの中心軸線の位置に対しては左右方向で等距離を隔てて配置され、
前記操作腕部と左右の前記ボス部との間、及び前記中央位置から近い側の前記ボス部と、このボス部に近い位置の前記リフトアームとの間に、前記揺動支点軸に外嵌するスペーサを設けてあると好適である。
【0015】
本構成によると、リフトアームの揺動支点軸を揺動操作する操作腕部の左右方向での中心位置、及び、その操作腕部を前後方向に押し引き操作する昇降シリンダの中心軸線の位置を、比較的自由な位置に設定し易い。したがって、メインフレームの左右方向での中央位置に対して操作腕及び昇降シリンダを左右方向に偏倚させて配置しても支障なく用いることができ、操作腕部及び昇降シリンダの配置に関する設計上の自由度を高めることができる。
【0016】
本発明において、左右の前記リフトアームのうち、一方の前記リフトアームと、そのリフトアームと左右方向で同じ側に位置する前記ロアーリンクとが棒状の第一吊り下げ部材で連結され、
他方の前記リフトアームと左右方向で同じ側に位置する前記ロアーリンクと、前記他方の前記リフトアームと、が伸縮シリンダを備えた第二吊り下げ部材で連結され、
前記伸縮シリンダに対して圧油を給排するモンローバルブと、前記リフトアームの昇降シリンダに対して圧油を給排する昇降バルブと、が共通のバルブケースに内蔵され、
前記バルブケースが、前記後車軸ケースよりも前方位置で、かつ前記車体フレームの左右方向での中央部に配設された運転座席の下方に、平面視で前記運転座席と重複するように配設されていると好適である。
【0017】
本構成によると、伸縮シリンダに対して圧油を給排するモンローバルブと、リフトアームの昇降シリンダに対して圧油を給排する昇降バルブと、が共通のバルブケースに内蔵されているので、個々のバルブを別々のバルブケースに内蔵するような構造に比べて、全体としてバルブケースの小型化を図ることができる。しかも、小型化されたバルブケースが運転座席下の空き空間を利用して配置されるので、配置されたバルブケースが地上高を低くするほどに下方へ突出することも避けられ、機体全体としてコンパクトに構成され易い。
【0018】
本発明において、前記バルブケースは、前後方向で前記昇降シリンダの配設箇所と重複し、かつ左右方向で前記昇降シリンダが存在する位置よりも、前記第二吊り下げ部材に連結された前記リフトアームが存在する側に偏倚して配設されていると好適である。
【0019】
本構成によると、バルブケースの配設箇所が、前後方向で昇降シリンダと重複し、左右方向で昇降シリンダが存在する位置よりも、第二吊り下げ部材に連結されたリフトアームが存在する側に偏倚しているので、バルブケースから昇降シリンダや伸縮シリンダへの配管距離を短く設定することができ、油圧機器関連構造をよりコンパクトに構成し易い。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、本発明を適用した乗用作業機において、走行機体の作業走行時における前進側の進行方向(
図1,2における矢印F参照)が「前」、後進側への進行方向(
図1,2における矢印B参照)が「後」、その前後方向での前向き姿勢を基準としての右側に相当する方向(
図2における矢印R参照)が「右」、同様に左側に相当する方向(
図2における矢印L参照)が「左」である。
【0022】
〔乗用作業機の基本構成〕
本発明に係る乗用作業機の一例として、
図1乃至
図3に運転キャビン付きのブームスプレーヤ、即ち乗用管理機が示される。
このブームスプレーヤにおける走行機体1は、車体フレーム10と、前車軸ケース11Fに支持された左右一対の前輪1F,1Fと、後車軸ケース11Rに支持された左右一対の後輪1R,1Rと、を備えている。
車体フレーム10は、前後方向に沿う左右一対のメインフレーム10A,10Aと、左右のメインフレーム10A,10A同士を前後における複数箇所で接続する横向きフレーム10Bと備え、メインフレーム10A,10Aが、車体フレーム10の前部下方に位置する前車軸ケース11Fと、車体フレーム10の後部下方に位置する後車軸ケース11Rと、にわたって設けられている。前車軸ケース11Fの左右両端部に前輪1F,1Fが水平軸芯回りで回転可能に支持され、後車軸ケース11Rの左右両端部に後輪1R,1Rが水平軸芯回りで回転可能に支持される。
【0023】
前車軸ケース11F及び後車軸ケース11Rの夫々における左右両端部は下方に延出されている。この下方に延出された箇所が上下向き軸芯回りに回動可能である。これにより、前輪1F,1Fと後輪1R,1Rとの夫々は四輪操向が可能に構成されている。
前車軸ケース11F及び後車軸ケース11Rのうち、
図1乃至
図4、及び
図7に基づいて後車軸ケース11Rの具体構成を説明する。前車軸ケース11Fも後車軸ケース11Rとほぼ同一の構造で、かつほぼ同一の形状であるため、前車軸ケース11Fについては詳細な説明は省略する。
【0024】
後車軸ケース11Rは、
図1乃至
図4、及び
図7に示すように、左右の後輪1R,1Rを下部に支持する左右一対の縦向き伝動ケース部12,12と、後輪1R,1Rの軸心x1よりも高い位置で、縦向き伝動ケース部12,12の上部同士を連結する横向き伝動ケース部13と、を備えて、前後方向視で門形に形成されている。前車軸ケース11Fも前後方向視で後車軸ケース11Rとほぼ同様の門形に形成されている。
【0025】
車体フレーム10上では、前部に原動部3が設けられ、その後方に搭乗部4が設けられている。原動部3は、エンジンボンネット30に内装された状態で、動力源となるエンジン31を備えている。搭乗部4は、操縦操作具等が内装された運転キャビン40を備えている。
車体フレーム10の前端部に対して液体散布装置2(薬剤散布装置に相当する)の液体散布用のブームユニット20が連結されている。
そして、運転キャビン40の後方における車体フレーム10上に、薬液貯留タンク28が設けられている。この薬液貯留タンク28は、ブームユニット20とともに液体散布装置2を構成している。薬液貯留タンク28は運転キャビン40の後方に隣接している。薬液貯留タンク28の左右両側部は、運転キャビン40の後部における左右側部のうち、機体側面視において運転キャビン40のドア40Bの後部の位置する箇所まで延出する。このため、薬液貯留タンク28は平面視でU字状に形成され、運転キャビン40の後部を囲む形状となっている。
【0026】
車体フレーム10の後端部には、作業装置6を昇降操作可能に連結する昇降機構5が取り付けられている。
この実施形態では、作業装置6として中耕作業を行うための中耕作業機を例示しているが、これに限らず、除草装置等の他の作業装置を取り付けるものであってもよい。
【0027】
〔搭乗部〕
搭乗部4には、運転キャビン40が備えられている。
運転キャビン40は、空調装置(図示せず)が内装された屋根部46を備えている。屋根部46で覆われたキャビン内空間には、フロントパネル42、及び操縦操作用の操向ハンドル43等を含む操縦操作具が内装されている。
運転キャビン40の前面にフロントガラス40Aが設けられ、運転キャビン40の左側部に、開閉可能なドア40Bが設けられている。運転キャビン40の内部に、運転者が搭乗可能なキャビン内空間が形成されている。このキャビン内空間に、運転座席41と、フロントパネル42と、が備えられている。運転座席41は走行機体1の中央部に備えられ、運転者が着席可能なように構成されている。フロントパネル42は走行機体1の中央部に備えられ、運転座席41の前方かつフロントガラス40Aの後方に位置する。
【0028】
フロントパネル42に、操向ハンドル43と、例えば主変速レバー(図示せず)等の各種操作具と、が備えられている。操向ハンドル43は、搭乗部4の前部に設けられるとともに人為操作によって前輪1F,1Fと後輪1R,1Rとの夫々の操向操作を可能なように構成されている。走行機体1の前後進の切換え操作や走行速度の変更操作が、例えば主変速レバー等の操作によって可能であり、ブームユニット20や作業装置6の操作がフロントパネル42等に備えた各種操作具によって可能である。
【0029】
ドア40Bよりも機体左側に、サイドステップ44が設けられ、サイドステップ44の機体横外側部における後部から下方に乗降ステップ45が延出されている。換言すると、乗降ステップ45はサイドステップ44の左横外側に設けられるとともに下方へ延出されている。詳述はしないが、運転キャビン40におけるドア40Bの前部にスライド機構が設けられ、ドア40Bは前後方向にスライド可能に構成されている。これによって、ドア40Bは、キャビン内空間の左側面を閉塞する閉じ状態と、キャビン内空間の左側面を開放する開き状態と、に切換可能に構成されている。つまり、
図1に示す閉じ状態にあるドア40Bが、前方へスライドするとドア40Bは開き状態に切換えられる。そして、開き状態のドア40Bが後方へスライドすると、ドア40Bは、もとの
図1示す閉じ状態に切換えられる。運転者は、乗降ステップ45を登ってサイドステップ44の後部に立ち、ドア40Bを開く(開き状態に切換える)ことによってキャビン内空間に入ることができる。
【0030】
車体フレーム10には、左右のメインフレーム10A,10A同士を上方から跨ぐ状態で連結する門形フレーム10Cが備えられている。この門形フレーム10Cに支持された座席支持装置(図示せず)を介して、運転座席41が車体フレーム10に対して取り付けられ、運転キャビン40内に入り込んだ状態で装着されている。
【0031】
〔液体散布装置〕
ブームユニット20は、センタブーム21と、左右一対のサイドブーム22L,22Rと、を有する。このブームユニット20が、昇降リンク機構19及びローリング機構18を介して、車体フレーム10の前端部に支持されている。
昇降リンク機構19は、上下向きの第一油圧シリンダ23を有する。第一油圧シリンダ23はピストンロッドが第一油圧シリンダ23の下部に位置した単ロッド式のシリンダである。この第一油圧シリンダ23の伸縮動作によって昇降リンク機構19は上下昇降可能に構成されている。
【0032】
昇降リンク機構19の遊端部にローリング機構18が支持され、ローリング機構18に、センタブーム21と、一対のサイドブーム22L,22Rと、が支持される。センタブーム21の長手方向は機体横向きに配置される。センタブーム21の長手方向両端部に、左右夫々のサイドブーム22L,22Rの長手方向一端部が枢支される。センタブーム21の長手方向両端部の枢支箇所の夫々に第二油圧シリンダ24L,24Rが設けられている。
各第二油圧シリンダ24L,24Rは、センタブーム21の長手方向端部と、その端部に枢支連結された左右夫々のサイドブーム22L,22Rと、にわたって連結され、これらの第二油圧シリンダ24L,24Rの伸縮動作によって左右夫々のサイドブーム22L,22Rが揺動可能に構成されている。
【0033】
第二油圧シリンダ24Lが伸長動作した場合、サイドブーム22Lは機体横向きに延び、センタブーム21の向きと同じになる。この場合、サイドブーム22Lは走行機体1よりも機体横外側に延びる。第二油圧シリンダ24Lが収縮動作した場合、サイドブーム22Lは後上がりに傾斜する状態で折り畳まれる。サイドブーム22Lの場合と同様に、第二油圧シリンダ24Rが伸長動作した場合にサイドブーム22Rは機体横向きに延びる。また、第二油圧シリンダ24Rが収縮動作した場合、サイドブーム22Rは後上がりに傾斜する状態で折り畳まれる。サイドブーム22L,22Rは後上がりに傾斜した状態で、サイドブーム22L,22Rの遊端部は前後方向において走行機体1の後端部に対応する箇所に位置し、かつ、上下方向において運転キャビン40の上端部よりも下側に位置する。
【0034】
センタブーム21と一対のサイドブーム22L,22Rとの夫々に、長手方向に沿って薬剤供給管25が備えられ、この薬剤供給管25に多数の散布ノズル26が備えられる。また、車体フレーム10における運転座席41の下方箇所に散布用ポンプ27(
図1等参照)が支持される。散布用ポンプ27は、薬液貯留タンク28に貯留された液体の薬剤を薬剤供給管25に向けて吐出可能に構成されている。
【0035】
薬剤の散布を行う場合、運転者は、左右一対のサイドブーム22L,22Rを機体横向きに延ばし、エンジン31の動力に基づいて散布用ポンプ27を駆動する。これにより、薬液貯留タンク28に貯留された液体の薬剤が薬剤供給管25を通じて多数の散布ノズル26から散布される。散布用ポンプ27は液体散布装置2としてのブームユニット20を散布駆動可能に構成されている。この状態で、前輪1F,1Fと後輪1R,1Rとの回転駆動によって走行機体1が圃場を走行し、圃場に薬剤が散布される。
【0036】
また、薬剤の散布を行わない場合、運転者は、左右一対のサイドブーム22L,22Rを後上がりの向きに折り畳む。これにより、ブームスプレーヤが農道を走行したり保管用の納屋に駐機したりする場合に、サイドブーム22L,22Rの遊端部が他の物体と接触する虞が軽減される。
【0037】
〔昇降機構〕
作業装置6を昇降操作するための昇降機構5は次のように構成されている。
図3乃至
図7に示すように、昇降機構5は、車体フレーム10と作業装置6とを連結するリンク機構5Aと、リンク機構5Aを昇降作動させる昇降装置5Bと、を備えている。
【0038】
〔リンク機構〕
リンク機構5Aは、長さ調節可能に構成された一本のロッド状のトップリンク51と、左右方向幅よりも上下方向幅が広い板状の長尺部材で構成された左右一対のロアーリンク53,53と、を備えている。
トップリンク51の基端部は、左右のメインフレーム10Aの後部同士を繋ぐ横向きフレーム10Bの上面に固定された上部支点ブラケット14に備えたトップリンク取付部50に対して、水平方向に沿う横軸心p1回りで上下揺動可能に連結されている。
ロアーリンク53の基端部は、横向き伝動ケース部13よりも後方箇所において、左右のメインフレーム10Aから下方へ向けて延出された下部支点ブラケット15の下部に備えたロアーリンク取付部52に対して、水平方向に沿う横軸心p2回りで上下揺動可能に連結されている。
【0039】
このロアーリンク取付部52は、
図3及び
図7に示すように、最低地上高h1に相当する高さであるところの、横向き伝動ケース部13の下縁13aと同程度の高さ位置に設定されている。
図7に拡大した図で示されるように、横向き伝動ケース部13の外周部で、下縁13aに相当する高さ位置の一部には、PTO軸60の支持部材61が脱着可能にボルト連結されている。
このPTO軸60、及び支持部材61は、横向き伝動ケース部13の下縁13aよりも低く位置する状態で連結されているので、このPTO軸60、及び支持部材61が取り付けられた状態では、横向き伝動ケース部13の下縁13aの高さは、乗用作業機の最低地上高となるものではないが、PTO軸60、及び支持部材61を取り外した状態で、最低地上高h1に相当する高さとなる。つまり、PTO軸60や支持部材61のように脱着することができない部材であるところの、横向き伝動ケース部13の下縁13aの高さが、本発明でいう最低地上高h1に相当する。
【0040】
この実施形態では、
図7に示すように、横向き伝動ケース部13の下縁13aから下方に向けて、僅かに突出する膨出部分13bが設けられ、ここに支持部材61の連結用ボルト61aのネジ穴(図示せず)が形成されている。したがって、厳密には、最低地上高h1よりも低い膨出部分13bが存在していることになる。
しかしながら、PTO軸60や支持部材61を用いない仕様の乗用作業機では、前述した膨出部分13bを存在させる必要はない。また、膨出部分13bを設けた場合にも、その膨出量は僅かであり、存在範囲もごく僅かで、無視し得る程度のものであるから、本発明では、このような膨出部分13bの存在の有無に関わらず、横向き伝動ケース部13の下縁13aの高さを最低地上高h1に相当する高さとして定義する。
【0041】
下部支点ブラケット15は、
図5乃至
図7に示すように、メインフレーム10Aの下面側に溶接固定され、メインフレーム10Aから下方へ向けて延出されている。そして、
図5に示すように、平面視では後方側が開放されたチャンネル状に形成されており、横向き伝動ケース部13の後面に対して、連結ボルト15aで脱着可能に連結されている。
横向き伝動ケース部13の前面には、メインフレーム10Aの下面側に溶接固定され、メインフレーム10Aから下方へ向けて延出された前部ブラケット16が設けられている。この前部ブラケット16は、前方が開放されたチャンネル状に形成されており、連結ボルト16aで横向き伝動ケース部13の前面に連結されている。この前部ブラケット16の下部には、図示しないが、後輪1R,1Rをステアリング操作するためのパワーステアリング装置(図示せず)が支持されている。
【0042】
〔昇降装置〕
昇降装置5Bは、ロアーリンク53を昇降操作する左右一対のリフトアーム54と、各リフトアーム54の遊端側の端部を左右のロアーリンク53の長さ方向の中間部に連結する吊り下げ部材55と、リフトアーム54を水平方向に沿う揺動軸心x2回りで揺動操作するための昇降シリンダ56と、を備えている。
昇降シリンダ56は、その中心軸線CL2が走行機体1の前後方向に沿う状態で配設されており、後述する昇降バルブ63からの圧油の給排用に伴って前後方向に押し引き作動するように構成されている。
【0043】
リフトアーム54は、揺動軸心x2を備えた揺動支点軸54aの左右方向の端部に、後方側へ向けて延出された昇降アーム部54L,54Rが一体に連結されている。揺動支点軸54aの左右方向での中央部には、操作腕部54Cが前方下方へ向けて一体に連結されている。
操作腕部54Cの前端部は、車体フレーム10の横向きフレーム10Bに前端部を連結されている昇降シリンダ56の後端部に連結されている。したがって、昇降シリンダ56の伸縮作動に伴って、操作腕部54Cが回動操作される。これに伴って、揺動支点軸54aの左右端部に備えた昇降アーム部54L,54Rも揺動軸心x2回りに回動し、吊り下げ部材55を介して連結されるロアーリンク53が横軸心p2周りで揺動作動する。
【0044】
吊り下げ部材55は、第一吊り下げ部材55Rと、第二吊り下げ部材55Lと、を備えている。
第一吊り下げ部材55Rは、昇降アーム部54L,54Rのうちの、右側の昇降アーム部54Rと右側のロアーリンク53とを連結している。
第二吊り下げ部材55Lは、昇降アーム部54L,54Rのうちの、左側の昇降アーム部54Lと左側のロアーリンク53とを連結している。
第一吊り下げ部材55Rは、
図5,6に示すように棒状のロッド部材で構成され、第二吊り下げ部材55Lは、
図4,5に示すように、中間部に長さ調節用の伸縮シリンダ57が介装されている。この伸縮シリンダ57が後述するモンローバルブ64からの圧油の給排作用に伴って伸縮作動されることにより、作業装置6が走行機体1に対して、相対的にローリング作動可能であるように連結されている。
【0045】
揺動支点軸54aは、
図5乃至
図7に示すように、左右一対の支持ブラケット58に枢支されて、揺動軸心x2回りで回動可能に支持されている。この揺動支点軸54aを枢支する支持ブラケット58は、後車軸ケース11Rにおける横向き伝動ケース部13の上部に対して脱着可能に取り付けられている。
横向き伝動ケース部13の上部には、取付面が水平方向に沿う水平方向座部13cと、その水平方向座部13cの後方で取付面が上下方向に沿う鉛直方向座部13dと、が設けられている(
図6参照)。この水平方向座部13cと鉛直方向座部13dとは、取付面の延長線同士がほぼ直交するように形成されている。そして支持ブラケット58の下部には、水平方向座部13c及び鉛直方向座部13dの取付面に対向して当接する取付面が設けられている。つまり、支持ブラケット58の下部に形成される取付面は、横向き伝動ケース部13に備えた水平方向座部13c及び鉛直方向座部13dの取付面と同形状であるように、取付面の延長線同士がほぼ直交している。
支持ブラケット58の上部には、揺動支点軸54aを枢支するためのボス部58aが設けられている。
【0046】
図5乃至
図7に示されているように、左右の支持ブラケット58,58は、互いに同一の仕様で構成されている。このように同一仕様のものを用いることにより、部品点数の削減を図ることができる。
そして、この支持ブラケット58,58、及び昇降シリンダ56は、
図5及び
図7に示すように、走行機体1の左右方向での中央位置を示す機体中心線CL1に対して、昇降シリンダ56の中心軸線CL2が少し右側に偏って位置する状態に配置されている。しかし、左右のリフトアーム54,54、及び左右のメインフレーム10A,10Aのそれぞれは、左右方向における機体中心線CL1からの離間距離が、左右で等距離であるように配置されている。
これにより、左右の支持ブラケット58,58のうち、左側の支持ブラケット58は、左側のリフトアーム54から機体中心線CL1に近づく側に離れ、かつ右側の支持ブラケット58よりも機体中心線CL1に近づく位置に配置されている。
右側の支持ブラケット58は、揺動支点軸54aの右端部に連結された右側のリフトアーム54の機体内方側の端面に、ボス部58aの機体外方側の端面が当接する位置で、揺動支点軸54aを支持している。
【0047】
左右の支持ブラケット58,58同士の間における離間距離は、揺動支点軸54aの左右方向での中間部箇所に固定された操作腕部54Cの左右方向幅よりも大きく形成されている。したがって、左右の支持ブラケット58,58と操作腕部54Cとの間には間隔が生じている。また、揺動支点軸54aは、左側の支持ブラケット58よりも、さらに横外方へ延出された位置で左側のリフトアーム54と連結されている。
したがって、左右の支持ブラケット58,58の各ボス部58a,58aと操作腕部54Cとの間、及び左側の支持ブラケット58のボス部58aと左側のリフトアーム54との間には、揺動支点軸54aに外嵌した状態でスペーサ59が設けられている。
スペーサ59は、左右の支持ブラケット58,58の各ボス部58a,58aと操作腕部54Cとの間隔に相当する左右方向長さを有した左右一対の第一スペーサ59a,59aと、左側の支持ブラケット58と左側のリフトアーム54との間に位置する揺動支点軸54aに外嵌する第二スペーサ59bと、を備えている。第一スペーサ59a,59a同士は、互いに同じ左右方向長さに形成され、第二スペーサ59bは第一スペーサ59aよりも左右方向長さが、やや短く形成されている。
【0048】
〔バルブケース〕
図3に示すように、車体フレーム10の左右方向での中央部に配設された運転座席41の下方に、平面視で運転座席41と重複するようにバルブケース62が配設されている。
バルブケース62は、リフトアーム54の昇降シリンダ56に対して圧油を給排する昇降バルブ63と、第二吊り下げ部材55Lに設けた伸縮シリンダ57に対して圧油を給排するモンローバルブ64と、が共通のバルブブロックに内蔵されたものである。ここでいうバルブケース62とは、昇降バルブ63及びモンローバルブ64のみならず、車体フレーム10に対する昇降バルブ63及びモンローバルブ64の取付部材をも含むものである。
【0049】
バルブケース62は、前後方向で昇降シリンダ56の配設箇所と重複し、かつ左右方向で昇降シリンダ56が存在する位置よりも、第二吊り下げ部材55Lに連結された左側のリフトアーム54が存在する側に偏倚して配設されている。
そして、左右方向で昇降シリンダ56に近い箇所に位置する昇降バルブ63から、昇降シリンダ56に向けて圧油供給配管63aが延出されている。左右方向で伸縮シリンダ57に近い側に位置するモンローバルブ64と伸縮シリンダ57との間では、左側のリフトアーム54と左側のメインフレーム10Aとの間を通して圧油給排管64aが延設されている。
【0050】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態について説明する。下記の各別実施形態は、矛盾が生じない限り、複数組み合わせて上記実施形態に適用してもよい。なお、本発明の範囲は、これら実施形態の内容に限定されるものではない。
【0051】
(1)上述した実施形態では、リンク機構5Aとして、トップリンク51が単一のロッド状部材で構成された、三点リンク形式の構造であるものを例示したが、必ずしもこの構造に限定されるものではない。
例えば、トップリンク51が、複数本の板状部材で構成されたものであるなど、適宜に変更して用いることは可能である。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0052】
(2)上述した実施形態では、左右一対のリフトアーム54と、左右一対のロアーリンク53とを連結する吊り下げ部材55として、第一吊り下げ部材55Rが棒状のロッド部材で構成され、第二吊り下げ部材55Lが、中間部に長さ調節用の伸縮シリンダ57が介装された構造のものを例示したが、必ずしもこの構造に限定されるものではない。
例えば、第一吊り下げ部材55Rと第二吊り下げ部材55Lとが、共に棒状のロッド部材で構成されたものであったり、第一吊り下げ部材55Rと第二吊り下げ部材55Lとが、共に中間部に長さ調節用の伸縮シリンダ57が介装された構造のものであったりしてもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0053】
(3)上述した実施形態では、ロアーリンク53の基端部を支持するためのロアーリンク取付部52を、平面視では後方側が開放されたチャンネル状に形成された下部支点ブラケット15に設け、かつ、その下部支点ブラケット15が、横向き伝動ケース部13の後面に対して連結可能に構成された構造のものを例示したが、必ずしもこの構造に限定されるものではない。
例えば、下部支点ブラケット15が矩形筒状の部材等で構成され、横向き伝動ケース部13の後面に連結されずに、メインフレーム10Aから下方へ向けて単に延出されている構造にものであっても差し支えない。
可能に連結されている。
【0054】
(4)上述した実施形態では、ロアーリンク取付部52が、横向き伝動ケース部13の外周部で、下縁13aに相当する高さ位置に設けられた構造のものを例示しが、横向き伝動ケース部13の外周部の下縁13aと厳密に一致するものに限らず、横向き伝動ケース部13の外周部の下縁13aよりもある程度低い位置、もしくは、横向き伝動ケース部13の外周部の下縁13aよりもある程度高い位置に設けられたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0055】
(5)上述した実施形態では、走行機体1の左右方向での中央位置を示す機体中心線CL1に対して、昇降シリンダ56の中心軸線CL2が少し右側に偏って位置する状態であるものを例示したが、必ずしもこの構造に限定されるものではない。
例えば、機体中心線CL1に対して、昇降シリンダ56の中心軸線CL2が少し左側に偏って位置する状態であったり、機体中心線CL1と昇降シリンダ56の中心軸線CL2とが一致する状態であったり、してもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。