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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-185765(P2021-185765A)
(43)【公開日】2021年12月13日
(54)【発明の名称】乗用型圃場作業車
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20211115BHJP
【FI】
   A01B69/00 303V
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-91616(P2020-91616)
(22)【出願日】2020年5月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】尼崎 喬士
(72)【発明者】
【氏名】八尾 勇太
【テーマコード(参考)】
2B043
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043BA03
2B043BB06
2B043BB14
2B043DA04
2B043DA05
2B043DB18
2B043DC03
2B043EA08
2B043EA15
2B043EA35
2B043EB01
2B043EB05
2B043EC14
2B043ED22
(57)【要約】
【課題】乗用型圃場作業車において、車体の前後傾斜による見通しや操縦性の悪化を確実に回避して走行できるようにする。
【解決手段】車体の前後傾斜角を検出する傾斜角センサ33と、傾斜角センサ33による検出情報を基に車体の走行制御を行う走行制御手段37と、が備えられている。走行制御手段37は、車体の前後傾斜角が設定角以上の牽制用角度になると、車体の前進走行を牽制し、当該牽制を行うとき、車体の後進を許容する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前後傾斜角を検出する傾斜角センサと、
前記傾斜角センサによる検出情報を基に前記車体の走行制御を行う走行制御手段と、が備えられ、
前記走行制御手段は、前記前後傾斜角が設定角以上の牽制用角度になると、前記車体の前進走行を牽制し、当該牽制を行うとき、前記車体の後進を許容するように構成されている乗用型圃場作業車。
【請求項2】
車体の前後傾斜角を検出する傾斜角センサと、
前記傾斜角センサによる検出情報を基に前記車体の走行制御を行う走行制御手段と、が備えられ、
前記走行制御手段は、前記前後傾斜角が設定角以上の牽制用角度になると、前記前後傾斜角が前記牽制用角度になったときの進行方向と同じ進行方向に前記車体が進行することを牽制し、当該牽制を行うとき、前記前後傾斜角が前記牽制用角度になったときの進行方向と逆の進行方向に前記車体が進行することを許容するように構成されている乗用型圃場作業車。
【請求項3】
エンジンからの動力が入力され、入力された動力を変速して走行装置に伝達する静油圧式の無段変速装置が備えられ、
前記無段変速装置は、油圧ポンプと油圧モータとを接続する駆動回路、および、前記駆動回路に備えられたアンロードバルブを有し、
前記走行制御手段は、前記アンロードバルブを作動させることによって前記牽制を行うように構成されている請求項1または2に記載の乗用型圃場作業車。
【請求項4】
前記エンジンからの動力が伝達される中継伝動軸と前記無段変速装置の入力軸とを連動連結するカップリングと、
前記無段変速装置に冷却風を供給する回転ファンと、が備えられ、
前記回転ファンは、前記カップリングに支持されている請求項3に記載の乗用型圃場作業車。
【請求項5】
前記回転ファンは、前記カップリングに外嵌合するボス部と、前記ボス部から前記回転ファンの径方向外側に向けて突設された回転羽根とを有している請求項4に記載の乗用型圃場作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型圃場作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型圃場作業車には、たとえば特許文献1に示される乗用管理機がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−78616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗用型圃場作業車では、畦を乗り越えて圃場から圃場へ移動することがある。このとき、畦の高さが高いほど車体の前後傾斜角が急角度になり、運転部が急角度で傾斜して走行方向前方を見通し難くなる。また、操縦し難くなる。
【0005】
本発明の目的は、車体の前後傾斜による見通しや操縦性の悪化を確実に回避して走行できる乗用型圃場作業車を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による乗用型圃場作業車は、
車体の前後傾斜角を検出する傾斜角センサと、前記傾斜角センサによる検出情報を基に前記車体の走行制御を行う走行制御手段と、が備えられ、前記走行制御手段は、前記前後傾斜角が設定角以上の牽制用角度になると、前記車体の前進走行を牽制し、当該牽制を行うとき、前記車体の後進を許容するように構成されている。
【0007】
乗用型圃場作業車にあっては、一般に、畦を乗り越えるなどの際、前進によって行われるが、進行方向前方の見通しや操縦性が悪くなる前後傾斜角を設定角として設定することにより、前進に伴って車体の前後傾斜角が牽制用角度(設定角以上の角度)になると、更に前進走行することが牽制されるので、進行方向前方の見通しや操縦性が悪くなるまで車体の前後傾斜角が急角度になることを回避できる。前進走行が牽制されても、後進を行えるので、走行方向前方の見通しや操縦性が悪くなることを確実に回避して走行できる。
【0008】
別の本発明による乗用型圃場作業車は、
車体の前後傾斜角を検出する傾斜角センサと、前記傾斜角センサによる検出情報を基に前記車体の走行制御を行う走行制御手段と、が備えられ、前記走行制御手段は、前記前後傾斜角が設定角以上の牽制用角度になると、前記前後傾斜角が前記牽制用角度になったときの走行方向と同じ走行方向に前記車体が走行することを牽制し、当該牽制を行うとき、前記前後傾斜角が前記牽制用角度になったときの走行方向と逆の走行方向に前記車体が走行することを許容するように構成されている。
【0009】
本構成によると、走行方向前方の見通しや操縦性が悪くなる前後傾斜角を設定角として設定することにより、前進および後進のいずれに伴って車体の前後傾斜角が牽制用角度(設定角以上の角度)になると、前後傾斜角が牽制用角度になったときの走行方向と同じ走行方向に走行することが牽制されるので、走行方向前方の見通しや操縦性が悪くなるまで車体の前後傾斜角が急角度になることを回避できる。前後傾斜角が牽制用角度になったときの走行方向と同じ走行方向に走行することが牽制されても、牽制された走行方向と逆の走行方向に走行できるので、走行方向前方の見通しや操縦性が悪くなることを確実に回避して走行できる。
【0010】
本発明においては、
エンジンからの動力が入力され、入力された動力を変速して走行装置に伝達する静油圧式の無段変速装置が備えられ、前記無段変速装置は、油圧ポンプと油圧モータとを接続する駆動回路、および、前記駆動回路に備えられたアンロードバルブを有し、前記走行制御手段は、前記アンロードバルブを作動させることによって前記牽制を行うように構成されていると好適である。
【0011】
本構成によると、駆動回路にアンロードバルブを備え、アンロードバルブと走行制御手段とを連係させるだけで所定の牽制を行わせられるので、車体の前後傾斜角が急角度になって進行方向前方の見通しや操縦性が悪くなることを確実に回避して走行できる乗用型圃場作業車を安価に得られる。
【0012】
本発明においては、
前記エンジンからの動力が伝達される中継伝動軸と前記無段変速装置の入力軸とを連動連結するカップリングと、前記無段変速装置に冷却風を供給する回転ファンと、が備えられ、前記回転ファンは、前記カップリングに支持されていると好適である。
【0013】
本構成によると、回転ファンをカップリングに支持するだけで、回転ファンを無段変速装置の近くに配置でき、かつ、中継伝動軸から入力軸に伝達される動力によって回転ファンを駆動できるので、無段変速装置が効率よく冷却される冷却構造を安価に得られる。
【0014】
本発明においては、
前記回転ファンは、前記カップリングに外嵌するボス部と、前記ボス部から前記回転ファンの径方向外側に向けて突設された回転羽根とを有していると好適である。
【0015】
本構成によると、ボス部の外径が大きくなるので、ボス部の周方向に並べられる回転羽根の数を多くして風量が多い回転ファンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】乗用型管理機の全体を示す左側面図である。
図2】ステアリングホィールの支持構造を示す斜視図である。
図3】車体フレームにおけるエンジン支持部を示す平面図である。
図4】エンジンの支持構造、および吸気ダクトを示す側面図である。
図5】エンジンの支持構造、および吸気ダクトを示す前面図である。
図6】前車輪および後車輪に対する動力伝達構造を示す平面図である。
図7】カップリングおよび回転ファンを示す前面図である。
図8】カップリングおよび回転ファンを示す断面図である。
図9】無段変速装置の油圧回路図、および走行制御のブロック図である。
図10】走行制御のフロー図である。
図11】別の実施形態を備える走行制御のブロック図である。
図12】別の実施形態を備える走行制御のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一例である実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、乗用型管理機(「乗用型圃場作業車」の一例)の車体に関し、図1に示される矢印Fの方向を「車体前方」、矢印Bの方向を「車体後方」、矢印Uの方向を「車体上方」、矢印Dの方向を「車体下方」、図1の紙面表側の方向を「車体左方」、紙面裏側の方向を「車体右方」とする。
【0018】
〔乗用型管理機の全体〕
図1に示すように、乗用型管理機は、左右一対の操向可能かつ駆動可能な前車輪1(走行装置の一例)、および、左右一対の操向可能かつ駆動可能な後車輪2(走行装置の一例)によって自走可能な車体を備えている。車体の前部に、エンジン3を有する原動部4が形成されている。車体の後部に、運転部5が形成されている。運転部5には、運転座席6、前車輪1及び後車輪2を操向操作するステアリングホィール7、搭乗空間を覆うキャビン8が備えられている。車体の前部に、薬液を散布する散布装置9が設けられている。散布装置9には、車体横幅方向に沿う方向に延びる状態で原動部4の前方に設けられたセンタ散布ブーム9a、センタ散布ブーム9aの両横側方に振り分けて設けられた左右一対のサイド散布ブーム9bが備えられている。左右のサイド散布ブーム9bは、支持枠9cから車体横外側に向けて張り出される散布姿勢と、支持枠9cから車体後上方に向けて延ばされる格納姿勢とに姿勢変更可能である。車体の後部に、散布装置9によって散布される薬液を貯留する薬剤タンク10が支持されている。
【0019】
〔ステアリングホィールの支持構造〕
図2に示されるように、ステアリングホィール7を支持するステアリングポスト11が、車体前後方向視で門型の支持部材13における横梁部13aに立設されている。支持部材13は、車体フレーム12を構成する左右の主フレーム部12aに支持されている。図2に示されるように、横梁部13aの内側に、車体前後方向に沿う方向の棒状支持部材14が車体横幅方向に並ぶ状態で備えられている。棒状支持部材14は、丸棒部材によって構成されている。パワーステアリング装置用の油圧配管15が横梁部13aに備えられた貫通穴を上下方向に通る状態で配管されている。油圧配管15は、棒状支持部材14によって下方から受け止めて支持されている。横梁部13aの上方にワイヤハーネス43が配線されている。
【0020】
〔エンジンに関する構成〕
図3,4,5に示されるように、車体フレーム12を構成する左右の主フレーム部12aそれぞれの前後二か所に、エンジンマウント部16が形成されている。エンジン3の車体フレーム12への支持は、エンジン3の左下部および右下部それぞれの前後二か所に形成された連結部3aがエンジンマウント部16にクッションゴムを介して連結することによって行われている。車体フレーム12のエンジンマウント部16の配置は、仕様が異なるエンジンの支持に共用できる配置になっている。
【0021】
図4に示されるように、エンジン用のエアクリーナ17に吸気ダクト18が接続されている。吸気ダクト18の接続筒部18aは、エアクリーナ17の吸気筒部17aに筒状のゴムカラー19を介して外嵌させて接続されている。エンジンの仕様が異なり、エンジンに接続されるエアクーナの吸気筒部が太い場合、ゴムカラー19を装着しないことにより、吸気ダクト18の接続筒部18aをエアクリーナの吸気筒部に外嵌させて接続できる。吸気ダクト18は、仕様が異なるエンジンにおけるエアクリーナの吸気用に共用できる。図4,5に示されるように、吸気ダクト18の吸気口18bは、車体上下方向に沿う方向に細長い長方形に形成されている。吸気口18bの配置高さは、エンジン用のラジエータ20の上端20aの高さと、ラジエータ20の下端20bの高さとの間の高さになっている。
【0022】
〔前車輪および後車輪を駆動する構成〕
左右の前車輪1および左右の後車輪2は、図6に示される動力伝達構造に基づいてエンジン3からの動力が伝達されて駆動される。動力伝達構造においては、エンジン3の後方に設けられたミッション21が備えられている。ミッション21の前部に、静油圧式の無段変速装置22が連結されている。エンジン3からの動力が無段変速装置22に入力され、無段変速装置22によって前進駆動力と後進駆動力とに変換されてミッション21に入力される。ミッション21に入力された前進駆動力および後進駆動力がミッション21から前向きに延びる前回転軸23を介して前車軸装置24における前輪駆動ケース24aに入力される。前輪駆動ケース24aに入力された駆動力が前輪駆動ケース24aの左右端部から下向きに延びる前輪支持ケース24bに入力され、前輪支持ケース24bから前車輪1に伝達される。ミッション21に入力された前進駆動力および後進駆動力がミッション21から後向きに延びる後回転軸25を介して後車軸装置26における後輪駆動ケース26aに入力される。後輪駆動ケース26aに入力された駆動力が後輪駆動ケース26aの左右端部から下向きに延びる後輪支持ケース26bに入力され、後輪支持ケース26bから後車輪2に伝達される。
【0023】
エンジン3から無段変速装置22への入力は、図6に示される動力伝達機構27によって行われる。動力伝達機構27においては、無段変速装置22の入力軸22aの前方に設けられた中継伝動軸28が備えられている。エンジン3の出力プーリ3bの動力が伝動ベルト29を介して中継伝動軸28に伝達される。中継伝動軸28の動力が中継伝動軸28と入力軸22aとを連動連結しているカップリング30(図7,8参照)を介して入力軸22aに伝達される。
【0024】
図7,8に示されるように、カップリング30に、回転ファン31が支持されている。回転ファン31は、カップリング30における鍔部に外嵌するボス部31aと、ボス部31aから回転ファン31の径方向外側に向けて突設された回転羽根31bとを有している。ボス部31aは、カップリング30に外嵌され、かつ、カップリング30に連動連結されている。具体的には、ボス部31aのカップリング30に対する連動連結は、ボス部31aの内部に備えられた鍔部31cとカップリング30におけるフランジ30aとを連結ボルト31dによって連結することによって行われる。回転羽根31bは、ボス部31aの周方向での複数箇所から突設されている。カップリング30が中継伝動軸28から入力軸22aに伝達される動力によって回転されて回転ファン31がカップリング30によって駆動され、回転する回転ファン31によって冷却風が無段変速装置22に供給される。
【0025】
〔無段変速装置の構成〕
図9に示されるように、無段変速装置22は、エンジン3からの動力によって駆動される可変容量形の油圧ポンプP、ミッション21に出力する油圧モータM、油圧ポンプPと油圧モータMとを接続する一対の駆動回路32を有し、エンジン3からの動力が入力され、入力された動力を前進駆動力と後進駆動力とに変速して前車輪1および後車輪2に伝達する。
【0026】
詳述すると、無段変速装置22においては、エンジン3からの動力が入力されると、入力された動力によって油圧ポンプPが駆動される。エンジン3から無段変速装置22への動力伝達は、図6に示される動力伝達機構27によって行われる。油圧ポンプPの斜板(図示せず)が前進側に傾斜操作されると、油圧ポンプPが前進駆動状態に変速され、油圧ポンプPが吐出する圧油が一対の駆動回路32のうちの第1の駆動回路32aによって油圧モータMに供給されて油圧モータMが前進側に駆動され、油圧モータMの前進駆動力がミッション21に入力されることによって前車輪1および後車輪2に伝達される。このとき、油圧モータMが吐出する圧油が一対の駆動回路32のうちの第2の駆動回路32bによって油圧ポンプPに戻される。
【0027】
油圧ポンプPの斜板(図示せず)が後進側に傾斜操作されると、油圧ポンプPが後進駆動状態に変速され、油圧ポンプPが吐出する圧油が第2の駆動回路32bによって油圧モータMに供給されて油圧モータMが後進側に駆動され、油圧モータMの後進駆動力がミッション21に入力されることによって前車輪1および後車輪2に伝達される。このとき、油圧モータMが吐出する圧油が第1の駆動回路32aによって油圧ポンプPに戻される。
【0028】
〔走行制御の構成〕
図9に示されるように、車体の前後傾斜角を検出する傾斜角センサ33と、制御装置34と、が連係されている。制御装置34には、車体の走行方向を検出する走行方向センサ35が連係されている。走行方向センサ35は、車体の走行方向を前進方向と後進方向とに切り換える前後進レバー36の操作位置に基づいて車体の走行方向を検出する。走行方向センサとしては、前後進レバー36の操作位置を検出するセンサの他、前車輪1や後車輪2の回転方向を検出するセンサなど、検出対象が各種異なるセンサの採用が可能である。
【0029】
制御装置34は、マイクロコピュータを利用して構成されている。制御装置34には、走行制御手段37、および、牽制用角度設定手段38が備えられている。牽制用角度設定手段38には、走行方向前方の見通しが悪くなるときの車体の前後傾斜角として設定した設定角度以上の前後傾斜角を牽制用角度[AK]として設定して保存されている。
【0030】
走行制御手段37は、車体の前後傾斜角が牽制用角度[AK]になると、車体の前進走行を牽制するように構成され、当該牽制を行うとき、車体の後進走行を許容するように構成されている。具体的には、走行制御手段37においては、図10に示されるように、傾斜角センサ33による検出情報(検出傾斜角[A])が読み込まれ、検出傾斜角[A]が牽制用角度設定手段38によって設定されている牽制用角度[AK]に等しいか否か判別される。等しいと判別されると、走行方向センサ35による検出情報が読み込まれ、車体の走行方向が前進方向か否か判別される。走行方向が前進方向であると判別されると、前進走行の牽制が行われる。前進走行の牽制は、後進走行を許容しつつ行われる。
【0031】
たとえば畦を前進走行によって乗り越えようとするとき、車体の前後傾斜角が設定角以上(牽制用角度[AK])になると、走行制御手段37によって前進走行が牽制され、更に前進走行することができない。しかし、走行制御手段37が後進走行を許容し、前進走行の牽制を後進走行によって回避して走行できる。
【0032】
図9に示されるように、無段変速装置22における一対の駆動回路32のうち、前進駆動状態の油圧ポンプPが吐出する圧油を油圧モータMに供給する第1の駆動回路32aに、アンロードバルブ39が備えられている。走行制御手段37は、アンロードバルブ39を作動させることによって前進走行を牽制する。すなわち、走行制御手段37は、アンロードバルブ39を作動させ、前進駆動状態の油圧ポンプPが第1の駆動回路32aに吐出する圧油をアンロードバルブ39によってタンク44に戻させて油圧モータMを停止させて前車輪1および後車輪2を前進側に駆動させない。走行制御手段37は、前進走行を牽制しても、車体を後進させる操作が行われると、前後進レバー36が後進位置に切り替えられて後進走行の検出状態になる走行方向センサ35による検出情報を基に、アンロードバルブ39を非作動状態に操作し、油圧モータMの後進駆動を可能にして前車輪1および後車輪2の後進駆動を可能にする。
【0033】
〔別実施形態〕
(1)図11は、別の実施形態を備える走行制御手段40を示すブロック図である。別の実施形態を備える走行制御手段40は、車体の前後傾斜角が牽制用角度[AK]になると、前後傾斜角が牽制用角度[AK]になったときの走行方向と同じ走行方向に車体が走行することを牽制するように構成され、当該牽制を行うとき、前後傾斜角が牽制用角度[AK]になったときの走行方向と逆の走行方向に車体が走行することを許容するように構成されている。
【0034】
具体的には、走行制御手段40においては、図12に示されるように、傾斜角センサ33による検出情報(検出傾斜角[A])が読み込まれ、検出傾斜角[A]が牽制用角度設定手段38によって設定されている牽制用角度[AK]に等しいか否か判別される。等しいと判別されると、走行方向センサ35による検出情報が読み込まれ、車体の走行方向が前進方向か否か判別される。走行方向が前進方向であると判別されると、前進走行の牽制が行われる。前進走行の牽制は、後進走行を許容しつつ行われる。走行方向が後進方向であると判別されると、後進走行の牽制が行われる。後進走行の牽制は、前進走行を許容しつつ行われる。
【0035】
図11に示されるように、無段変速装置22における一対の駆動回路32のうち、前進駆動状態の油圧ポンプPが吐出する圧油を油圧モータMに供給する第1の駆動回路32aに、第1のアンロードバルブ41が備えられている。一対の駆動回路32のうち、後進駆動状態の油圧ポンプPが吐出する圧油を油圧モータMに供給する第2の駆動回路32bに、第2のアンロードバルブ42が備えられている。
【0036】
走行制御手段40は、第1のアンロードバルブ41を作動させることによって前進走行を牽制する。すなわち、走行制御手段40は、第1のアンロードバルブ41を作動させ、前進駆動状態の油圧ポンプPが第1の駆動回路32aに吐出する圧油を第1のアンロードバルブ41によってタンク44に戻させて油圧モータMを停止させ、前車輪1および後車輪2を前進側に駆動させない。走行制御手段40は、前進走行を牽制しても、車体を後進させる操作が行われると、前後進レバー36が後進位置に切り替えられて後進走行の検出状態になる走行方向センサ35による検出情報を基に、第1のアンロードバルブ41を非作動状態に操作し、油圧モータMの後進駆動を可能にして前車輪1及び後車輪2の後進駆動を可能にする。
【0037】
走行制御手段40は、第2のアンロードバルブ42を作動させることによって後進走行を牽制する。すなわち、走行制御手段40は、第2のアンロードバルブ42を作動させ、後進駆動状態の油圧ポンプPが第2の駆動回路32bに吐出する圧油を第2のアンロードバルブ42によってタンク44に戻させて油圧モータMを停止させ、前車輪1および後車輪2を後進側に駆動させない。走行制御手段40は、後進走行を牽制しても、車体を前進させる操作が行われると、前後進レバー36が前進位置に切り替えられて前進走行の検出状態になる走行方向センサ35による検出情報を基に、第2のアンロードバルブ42を非作動状態に操作し、油圧モータMの前進駆動を可能にして前車輪1および後車輪2の前進駆動を可能にする。
【0038】
(2)上記した実施形態では、アンロードバルブ39、第1のアンロードバルブ41を作動させることによって前進走行を牽制し、第2のアンロードバルブ42を作動させることによって後進走行を牽制するよう構成した例を示したが、これに限らない。たとえば、前進クラッチおよび後進クラッチを備え、前進クラッチを切り操作することによって前進走行を牽制し、後進クラッチを切り操作することによって後進走行を牽制するよう構成したものであってもよい。
【0039】
(3)上記した実施形態では、前車輪1および後車輪2が備えられた例を示したが、これに限らない。例えば、クローラ走行装置、あるいは、車輪とミニクローラとを組み合わせた走行装置が備えられたものであってもよい。
【0040】
(4)上記した実施形態では、回転ファン31を設けた例を示したが、回転ファンを設けないものであってもよい。
【0041】
(5)車体の左右傾斜角を検出する左右傾斜角センサを設け、傾斜角センサ33による検出情報、および走行方向センサ35による検出情報を基に行われる走行制御と同様の走行制御が走行制御手段40によって左右傾斜角センサによる検出情報、および走行方向センサ35による検出情報を基に行われるように構成すると有利である。すなわち、車体の左右傾斜角が設定角以上の牽制用角度になると、走行方向センサ35が前進走行を検出している場合、走行制御手段40が後進走行を許容しつつ前進走行を牽制し、走行方向センサ35が後進走行を検出している場合、走行制御手段40が前進走行を許容しつつ後進走行を牽制するように構成する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、乗用型管理機に限らず、コンバイン、田植機など各種の乗用型圃場作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 走行装置(前車輪)
2 走行装置(後車輪)
3 エンジン
22 無段変速装置
22a 入力軸
28 中継伝動軸
30 カップリング
31 回転ファン
31a ボス部
31b 回転羽根
32a 駆動回路(第1の駆動回路)
32b 駆動回路(第2の駆動回路)
33 傾斜センサ
37 走行制御手段
39 アンロードバルブ
40 走行制御手段
41 アンロードバルブ(第1のアンロードバルブ)
42 アンロードバルブ(第2のアンロードバルブ)
AK 牽制用角度
図1
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