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  • 特開2021185776-育苗カバー及び育苗カバー製造装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-185776(P2021-185776A)
(43)【公開日】2021年12月13日
(54)【発明の名称】育苗カバー及び育苗カバー製造装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 13/02 20060101AFI20211115BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20211115BHJP
   B26D 7/32 20060101ALI20211115BHJP
   B26D 1/02 20060101ALI20211115BHJP
   B26D 1/00 20060101ALI20211115BHJP
【FI】
   A01G13/02 Z
   B26D3/00 603A
   B26D7/32 A
   B26D1/02 C
   B26D1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-91999(P2020-91999)
(22)【出願日】2020年5月27日
(71)【出願人】
【識別番号】597048919
【氏名又は名称】株式会社九州イノアック
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 重信
(72)【発明者】
【氏名】有永 健二
【テーマコード(参考)】
3C021
3C027
【Fターム(参考)】
3C021LA02
3C027AA02
3C027AA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】変形しにくく、積み重ねやすい育苗カバーを提供する。そのような育苗カバーを効率よく製造することができる育苗カバー製造装置を提供する。
【解決手段】育苗カバー10は、筒状の胴部11と、胴部11の上端に筒状の肩部14を介して接続され、上端が開口した筒状の首部15と、を備えている。胴部11には、胴部11を一周するリブ12が形成されている。胴部11の外径は、リブ12が形成された部分を除いて、上方に向かうにつれて次第に小さくなっている。胴部11の内径も、リブ12が形成された部分を除いて、上方に向かうにつれて次第に小さくなっている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の胴部と、
前記胴部の上端に筒状の肩部を介して接続され、上端が開口した筒状の首部と、を備え、
前記胴部には、前記胴部を一周するリブが形成されており、
前記胴部の外径は、前記リブが形成された部分を除いて、上方に向かうにつれて次第に小さくなっており、
前記胴部の内径も、前記リブが形成された部分を除いて、上方に向かうにつれて次第に小さくなっている、育苗カバー。
【請求項2】
前記リブは複数形成されている、請求項1に記載の育苗カバー。
【請求項3】
底壁と、前記底壁の周縁から立ち上がる立壁とを有する底部と、
前記底部の上端に接続された筒状の胴部と、
前記胴部の上端に筒状の肩部を介して接続され、上端が開口した筒状の首部と、を備え、
前記胴部には、前記胴部を一周するリブが形成されており、
前記胴部の外径は、前記リブが形成された部分を除いて、上方に向かうにつれて次第に小さくなっており、
前記胴部の内径も、前記リブが形成された部分を除いて、上方に向かうにつれて次第に小さくなっている樹脂製のボトルから育苗カバーを製造する育苗カバー製造装置であって、
前記首部を保持する保持部と、
前記保持部に前記首部が保持された状態で、前記立壁に刃を挿入可能な刃挿入部と、
前記保持部に前記首部が保持され、前記刃が前記立壁に挿入された状態で、前記ボトルを軸線周りに回転させる回転部と、を備えている、育苗カバー製造装置。
【請求項4】
前記刃は、両刃であり、刃先が略山状をなす、請求項3に記載の育苗カバー製造装置。
【請求項5】
前記保持部は、前記刃によって前記底部が切り離された切断済ボトルを所定位置まで移動させて、前記首部を上とし前記胴部を下とした姿勢で前記切断済ボトルを複数積み重ねる、請求項3又は請求項4に記載の育苗カバー製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、育苗カバー及び育苗カバー製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、育苗カバー兼苗保護キャップが開示されている。育苗カバーは、カップ部の上方に弁状部が設けられている。この育苗カバーは、反転して苗保護キャップとして使用できる、とのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−360080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、市販の飲料用のペットボトルの底を切り離して、育苗カバーとして用いることが検討されている。しかし、飲料用のペットボトルは底を切り離すことを前提として設計されておらず、ペットボトルを切断する際に変形を生じて、うまく切断できない場合がある。また、飲料用のペットボトルは底を切り離した後に積み重ねることを前提として設計されておらず、積み重ねて収納し、運搬するのに向いていない。
【0005】
本開示は、変形しにくく、積み重ねやすい育苗カバーを提供することを目的としている。また、そのような育苗カバーを効率よく製造することができる育苗カバー製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の育苗カバーは、
筒状の胴部と、
前記胴部の上端に筒状の肩部を介して接続され、上端が開口した筒状の首部と、を備え、
前記胴部には、前記胴部を一周するリブが形成されており、
前記胴部の外径は、前記リブが形成された部分を除いて、上方に向かうにつれて次第に小さくなっており、
前記胴部の内径も、前記リブが形成された部分を除いて、上方に向かうにつれて次第に小さくなっている。
【0007】
本開示の育苗カバー製造装置は、
底壁と、前記底壁の周縁から立ち上がる立壁とを有する底部と、
前記底部の上端に接続された筒状の胴部と、
前記胴部の上端に筒状の肩部を介して接続され、上端が開口した筒状の首部と、を備え、
前記胴部には、前記胴部を一周するリブが形成されており、
前記胴部の外径は、前記リブが形成された部分を除いて、上方に向かうにつれて次第に小さくなっており、
前記胴部の内径も、前記リブが形成された部分を除いて、上方に向かうにつれて次第に小さくなっている樹脂製のボトルから育苗カバーを製造する育苗カバー製造装置であって、
前記首部を保持する保持部と、
前記保持部に前記首部が保持された状態で、前記立壁に刃を挿入可能な刃挿入部と、
前記保持部に前記首部が保持され、前記刃が前記立壁に挿入された状態で、前記ボトルを軸線周りに回転させる回転部と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、変形しにくく、積み重ねやすい育苗カバーを提供することができる。また、そのような育苗カバーを効率よく製造することができる育苗カバー製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、育苗カバーの使用状態を表す図である。
図2図2は、ボトルの断面図である。
図3図3は、育苗カバーを複数積み重ねた状態を表わす断面図である。
図4図4は、育苗カバー製造装置によってボトルから育苗カバーを製造する工程を説明する図である。
図5図5は、刃の平面図である。
図6図6は、図5のVI−VI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
上記育苗カバーにおいて、前記リブは複数形成されていてもよい。この構成によれば、リブの数に応じて育苗カバーの剛性を向上することできる。
【0011】
上記育苗カバー製造装置において、前記刃は、両刃であり、刃先が略山状をなしていてもよい。この構成によれば、刃先が略山状をなすから、所定の位置に確実に刃を挿入することができる。また、刃が両刃であるから、刃が片刃である構成に比して、刃が上下に流れにくく、確実に底部を切り離すことができる。
【0012】
上記育苗カバー製造装置において、前記保持部は、前記刃によって前記底部が切り離された切断済ボトルを所定位置まで移動させて、前記首部を上とし前記胴部を下とした姿勢で前記切断済ボトルを複数積み重ねてもよい。この構成によれば、複数の切断済ボトルをコンパクトに収納することができ、また、複数の切断済ボトルを運搬しやすい。
【0013】
<実施例1>
実施例1に係る育苗カバー10について具体的に説明する。育苗カバー10は、図1に示すように、農作物や花などの苗を育成する際に、苗に被せて用いられるカバーである。育苗カバー10は、下端16側を苗が植えられた植栽面S1に差し込んだ状態で使用される。育苗カバー10は、害虫よけや温湿度のコントロールを行うことによって、苗の育成の補助する役目を果たす。
【0014】
育苗カバー10は、図2に示すように、樹脂製のボトル20から製造できる。ボトル20は、樹脂材料を射出成形して形成されたプリフォームからブロー成形によって製造できる。ボトル20、すなわち育苗カバー10を構成する樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、又はこれらの共重合体等の熱可塑性ポリエステル、これらの樹脂、あるいは他の樹脂とのブレンド物が好適であり、特に、ポリエチレンテレフタレート等のエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルを好適に使用することができる。更に、アクリロニトリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体等も使用することができる。更に、植物由来のバイオマス系プラスチック、例えば、ポリ乳酸(PLA)を用いることも可能である。上述された樹脂には、成形品の品質を損なわない範囲で、種々の添加剤、例えば、着色剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、核剤、酸化防止剤、帯電防止剤、防虫剤、殺虫剤等を配合することができる。
【0015】
育苗カバー10は、図1及び図2に示すように、筒状の胴部11と、胴部11の上端から筒状の肩部14を介して接続され、上端が開口した筒状の首部15と、を備えている。育苗カバー10は、上方から見て胴部11、肩部14、および首部15が同心円状をなす。胴部11の上端は首部15の下端よりも内径および外径が大きい。肩部14は、下端から上端にかけて緩やかに湾曲しつつ縮径する。胴部11の下端には、後述する立壁23において切断ライン26よりも上側の部分23Aが接続している。胴部11は、立壁23の上側の部分23Aを介して下方に向けて開口している。
【0016】
首部15は、育苗カバー10の内部と外部に通じて、空気の流通路を構成する。首部15は、ボトル20をブロー成形する際におけるエアの吹き込み口である。首部15は、他の部位よりも肉厚で高剛性である。首部15には、後述する保持部31によって保持される際に係止される突条部が設けられている。
【0017】
胴部11には、胴部11を一周するリブ12が形成されている。リブ12は複数形成されている。胴部11において、リブ12を除いた部分、つまり、上下方向に沿って延びた部分を一般部13と称する。リブ12は、一般部13から径方向内側に向けて凹んで、胴部11の周方向に延びた溝状をなす。複数のリブ12は、胴部11の軸線方向に間隔をあけて配置されている。
【0018】
図1に示すように、育苗カバー10の下端16近傍領域には、リブ12が配置されていない。詳細には、リブ12は、育苗カバー10の下端16から10mmまでの範囲、より好ましくは下端16から20mmまでの範囲、さらに好ましくは下端16から35mmまでの範囲に配置されていない。育苗カバー10の下端16近傍領域は、上下に方向に沿ってストレート状に延びた形状をなしている。このような構成により、本実施形態とは異なり育苗カバーの下端近傍領域にリブが形成された構成に比して、育苗カバー10の下端16側を植栽面S1に差し込みやすくなっている。
【0019】
胴部11の外径は、図2に示すように、リブ12が形成された部分を除いて、上方に向かうにつれて次第に小さくなっている。胴部11の内径も、リブ12が形成された部分を除いて、上方に向かうにつれて次第に小さくなっている。つまり、胴部11において、一般部13は、上方に向かって徐々に細くなっている。換言すれば、胴部11の一般部13は、円錐の外周面に沿って延びたような形状をなしている。
【0020】
育苗カバー10は、図3に示すように、首部15を上とし胴部11を下とした姿勢で複数積み重ね可能な構成である。複数の育苗カバー10は、上側の育苗カバー10の胴部11内に下側の育苗カバー10の胴部11が挿入される形態で積み重ねられる。上下に積み重ねられた育苗カバー10において、下側の育苗カバー10の所定部分が上側の育苗カバー10内に収容される。下側の育苗カバー10において上側の育苗カバー10に収容される部分は、育苗カバー10の全高を1とした場合に、上端から上側1/2以上の部分であることが好ましく、上端から上側2/3以上の部分であることがより好ましい。下側の育苗カバー10において上側の育苗カバー10に収容される部分は、首部15の高さ寸法を考慮すると、通常、上端から上側9/10以下の部分である。育苗カバー10が上下に積み重ねられた場合、上側の育苗カバー10における最も下側に位置するリブ12の内面が、下側の育苗カバー10における一般部13の外面に接触する。
【0021】
ボトル20は、図2に示すように、底部21と、底部21の上端に接続された筒状の胴部11と、胴部11の上端から筒状の肩部14を介して接続され、上端が開口した筒状の首部15と、を備えている。ボトル20において、育苗カバー10と共通する構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0022】
底部21は、底壁22と、底壁22の周縁から立ち上がる立壁23とを有している。ボトル20の下部が底部21によって閉塞されることで、ボトル20は首部15からエアを吹き込んでブロー成形可能とされる。底壁22は、平面視円形状をなし、中央部が上方に膨出した形状をなしている。底壁22は、立壁23を径方向内側から支持して、立壁23に剛性を付与する役目を果たす。
【0023】
立壁23には、底部21を切り離すための切断ライン26が設定されている。ボトル20は、切断ライン26で切断されて、底部21と、育苗カバー10を構成する部分とに分割される。切断ライン26は、ボトル20の軸線と直交する平面内に位置している。切断ライン26の位置は、育苗カバー10の下端16の位置に相当する。立壁23において切断ライン26よりも上側の部分を部分23Aと称し、切断ライン26よりも下側の部分を部分23Bと称する。上側の部分23Aの外径は、胴部11の下端の外径と同じか、胴部11の下端の外径よりも大きい。上側の部分23Aの内径も、胴部11の下端の内径と同じか、胴部11の下端の内径よりも大きい。下側の部分23Bには、立壁23を一周するリブ25が形成されている。リブ25は、切断ライン26に対して下側に近接して配置されている。リブ25の構成は、胴部11におけるリブ12と同様でありその説明を省略する。
【0024】
ボトル20の肉厚は、切断ライン26の位置において切断ライン26よりも上方の部位よりも薄い。このような構成により、ボトル20は、切断ライン26よりも上方の部位に比して、切断ライン26の切断開始位置に刃35を挿入しやすく、また、切断ライン26に沿って刃35を進めやすくなっている。また、立壁23における切断ライン26、すなわち胴部11における下端16の肉厚は、胴部11における上部及び上下方向中間部よりも薄い。さらに、首部15の肉厚は肩部14の肉厚よりも厚く、肩部14の肉厚は胴部11の肉厚よりも厚い。このような構成により、後述する切断工程において、刃35とボトル20の間に生じる摩擦力によって首部15及び肩部14がねじれ変形することを抑制できる。以下、図2に示す全高260mmのボトル20のサンプルを例として、具体的に説明する。このボトル20において、切断ライン26はボトル20の下端から21mmの位置である。8つのサンプルについて高さ位置H1〜H6の肉厚を測定し、その平均値を算出した。高さ位置H1は、ボトル20の下端から240mmの位置であり、首部15に含まれる。高さ位置H2は、ボトル20の下端から220mmの位置であり、肩部14に含まれる。高さ位置H3は、ボトル20の下端から165mmの位置であり、胴部11における一般部13に含まれる。高さ位置H4は、ボトル20の下端から80mmの位置であり、胴部11における一般部13に含まれる。高さ位置H5は、ボトル20の下端から22mmの位置であり、切断ライン26近傍に位置する。高さ位置H6は、ボトル20の下端から10mmの位置であり、立壁23における下側の部分23Bに含まれる。高さ位置H1(首部15)の平均肉厚は1.457mmであった。高さ位置H2(肩部14)の平均肉厚は0.459mmであった。高さ位置H3(一般部13)の平均肉厚は0.328mmであった。高さ位置H4(一般部13)の平均肉厚は0.333mmであった。高さ位置H5(切断ライン26近傍)の平均肉厚は0.275mmであった。高さ位置H6(立壁23における下側の部分23B)の平均肉厚は0.249mmであった。つまり、切断ライン26近傍の高さ位置H5の肉厚は、高さ位置H1から高さ位置H4のいずれの肉厚よりも薄かった。また、立壁23における切断ライン26(胴部11における下端16)近傍の高さ位置H5の肉厚は、胴部11における高さ位置H3(上部)及び高さ位置H4(上下方向中間部)よりも薄かった。さらに、首部15における高さ位置H1の肉厚は、肩部14における高さ位置H2の肉厚よりも厚かった。肩部14における高さ位置H2の肉厚は、胴部11における高さ位置H3,H4の肉厚よりも厚かった。なお、ボトル20を形成するためのプリフォームは、首部を除いて、ほぼ均一な肉厚を有している。ボトル20は、プリフォームが下方の位置ほど大径に延伸されることによって、切断ライン26付近の肉厚が小さくなったものと推測される。ボトル20における各部の肉厚は、ブロー成形時における成形条件を調整して、適宜変更可能である。
【0025】
育苗カバー製造装置30は、樹脂製のボトル20から育苗カバー10を製造する装置である。育苗カバー製造装置30は、図4に示すように、投入されたボトル20を切断し、切断済ボトル29を複数積み重ねて送り出す構成である。育苗カバー製造装置30において、ボトル20を切断する部位を切断部P1と称し、切断済ボトル29を積み重ねる部位を積重部P2と称する。切断済ボトル29は、そのまま、或いは任意の工程を経て育苗カバー10として出荷される。
【0026】
育苗カバー製造装置30は、首部15(図2参照)を保持する保持部31と、保持部31に首部15が保持された状態で、立壁23(図2参照)に刃35を挿入可能な刃挿入部34と、保持部31に首部15が保持され、刃35が立壁23に挿入された状態で、ボトル20を軸線周りに回転させる回転部37と、を備えている。
【0027】
保持部31は、切断部P1と積重部P2の間を移動可能である。保持部31は、切断部P1においてボトル20の首部15を保持して、刃挿入部34に対してボトル20の位置を規定する。保持部31は、刃35によって底部21が切断された切断済ボトル29を積重部P2(所定位置)まで移動させて、首部15を上とし胴部11を下とした姿勢で切断済ボトル29を複数積み重ねる。
【0028】
刃挿入部34は、刃35を備え、刃35の刃先をボトル20側に向けた姿勢で設置されている。刃挿入部34は、図4の左上に示す待機位置と、刃35がボトル20に挿入される挿入位置(図4の右上図参照)との間で移動可能である。
【0029】
刃35は、図5及び図6に示すように、両刃であり、刃先が略山状をなす。略山状をなす刃先の頂部の角度θ1は、例えば45°以上150°以下であり、好ましくは60°以上120°以下であり、より好ましくは80°以上100°以下である。両刃の刃研ぎ角度θ2は、例えば5°以上60°以下であり、好ましくは10°以上40°以下であり、より好ましくは15°以上20°以下である。角度θ1,θ2は、ボトル20の形状および肉厚に応じて適宜設定できる。刃の材質は、耐久性の観点から、SKH50、SKH51等の高速度鋼が好適である。
【0030】
回転部37は、図4に示すように、保持部31から上方に延びる形態で設置されている。回転部37が回転駆動すると、保持部31を介して回転力がボトル20に付与される。
【0031】
育苗カバー10の製造方法は、ボトル20を保持して、立壁23に刃35を挿入する挿入工程と、立壁23に刃35が挿入された状態でボトル20を回転させ、刃35によって底部21が切り離された切断済ボトル29を得る回転工程と、切断済ボトル29を複数積み重ねる積重工程と、を備えている。
【0032】
挿入工程では、図4の左上に示すように、保持部31によってボトル20を保持して、刃挿入部34を待機位置から挿入位置に移動させる。すると、刃35における刃先の頂部が切断ライン26の法線方向に沿って移動して、切断ライン26の切断開始位置に挿入される。
【0033】
回転工程では、図4の右上に示すように、回転部37を回転駆動して、ボトル20を軸線周りに回転させる。ボトル20が回転すると、刃35が切断ライン26に沿って進んでボトル20が切断される。ボトル20が一回転して刃35が切断開始位置に至ると底部21が切り離される。底部21が切り離された切断済ボトル29は保持部31に保持された状態で切断部P1に留まる。
【0034】
積重工程では、図4の左下及び右下に示すように、切断済ボトル29を保持した保持部31を切断部P1から積重部P2に移動させ、積重部P2に切断済ボトル29を載置する。複数の切断済ボトル29の積み重ねは次のようにして行われる。まず、保持部31は、首部15を上とし胴部11を下とした姿勢で1段目の切断済ボトル29を積重部P2に載置する。次に、保持部31は、2段目以降の切断済ボトル29の内部に直前に載置された切断済ボトル29の胴部11を挿入し、2段目以降の切断済ボトル29を直前に載置された切断済ボトル29の上側に載置する。この動作が所定の回数繰り返されて、複数の切断済ボトル29の積み重ねが完了する。
【0035】
次に、本実施形態の作用・効果について説明する。本実施形態の育苗カバー10によれば、胴部11にリブ12が形成されているから、ボトル20を切断する際にボトル20が変形しにくく、ボトル20を切断して育苗カバー10を製造しやすい。さらに、リブ12によって胴部11の剛性を確保することができ、育苗カバー10として使用する際に使い勝手が良い。仮に育苗カバーを上下一対の成形型を用いて射出成形する場合には、胴部を一周するリブがアンダーカット形状となり、リブを形成しにくい。一方、本実施形態の育苗カバー10は、ブロー成形されたボトル20から製造することができ、胴部11を一周するリブ12を形成しやすい。また、ボトル20は、例えば、既存のペットボトルをブロー成形するための成形装置を一部変更して製造することができ、育苗カバー10の製造コスト低減に寄与できる。
【0036】
本実施形態の育苗カバー10によれば、胴部11のリブ12を除く部分において外径と内径が上方に向かうにつれて次第に小さくなっているから、上側の育苗カバー10の胴部11内に下側の育苗カバー10の胴部11を挿入する形態で育苗カバー10を積み重ねることができ、育苗カバー10を積み重ねやすい。このため、複数の育苗カバー10をコンパクトに収納することができ、また、複数の育苗カバー10を運搬しやすい。さらに、本実施形態では、リブ12によって積み重ねられた育苗カバー10同士の接触面積が低減され、積み重ねられた状態の育苗カバー10から一の育苗カバー10を容易に取り出すことができる。また、仮に胴部に変形を生じた育苗カバーを他の育苗カバーに積み重ねると、変形を生じた育苗カバーが傾いて育苗カバー同士を軸方向に沿って積み重ねることができない。一方、本実施形態では、リブ12によって胴部11の変形が抑制されるから、複数の育苗カバー10を軸線方向に沿って安定的に積み重ねることができる。
【0037】
本実施形態では、リブ12は複数形成されている。この構成によれば、リブ12の数に応じて育苗カバー10の剛性を向上することできる。育苗カバー10がブロー成形されたボトル20から製造される場合には、胴部11を一周するリブ12を複数形成しやすく好ましい。
【0038】
本実施形態の育苗カバー製造装置30によれば、手作業でボトル20を切断する場合に比して、上記のような育苗カバー10を効率よく製造することができる。詳細には、保持部31が他の部位よりも高剛性な首部15を保持するから、ボトル20を安定的に切断加工したり、移動させたりすることができる。また、ボトル20の胴部11にリブ12が形成されている構成上、ボトル20が変形しにくく、刃挿入部34によって立壁23に刃35を挿入しやすい。さらに、育苗カバー製造装置30は、ボトル20を軸線周りに回転させる回転部37を備えているから、ボトル20を短時間で精度よく切断できる。例えば、育苗カバー製造装置30によれば、1本当たり1秒以下の加工時間でボトル20から切断済ボトル29を得ることができる。
【0039】
本実施形態では、刃35は、両刃であり、刃先が略山状をなす。この構成によれば、刃先が略山状をなすから、刃35挿入時に、刃35から切断開始位置の両側に均等に押圧力が作用する。このため、ボトル20の変形を抑制しつつ切断ライン26における切断開始位置に確実に刃35を挿入することができる。ボトル20の切断時において、刃が上下に流れるとボトル20が一回転しても刃が切断開始位置からずれて、底部21が切り離されない。本実施形態では、刃35が両刃であるから、刃が片刃である構成に比して、刃35が上下に流れにくく、底部21を確実に切り離すことができる。
【0040】
本実施形態では、保持部31は、刃35によって底部21が切り離された切断済ボトル29を所定位置まで移動させて、首部15を上とし胴部11を下とした姿勢で切断済ボトル29を複数積み重ねる。この構成によれば、複数の切断済ボトル29をコンパクトに収納することができ、また、複数の切断済ボトル29を運搬しやすい。
【0041】
<他の実施形態>
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施の形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、胴部が立壁における上側の部分を介して下方に向けて開口していたが、胴部は直接下方に向けて開口していてもよい。
(2)上記実施形態以外にも、育苗カバーにおけるリブの構成、数及び位置は適宜変更可能である。例えば、リブは、一般部から径方向外側に向けて突出して、胴部の周方向に延びた突条をなしていてもよい。この場合において、育苗カバーが上下に積み重ねられた場合、下側の育苗カバーにおけるリブの外面が、上側の育苗カバーにおける一般部の内面に接触してもよい。
(3)上記実施形態以外にも、刃挿入部の構成は適宜変更可能である。例えば、刃は、回転刃等によって構成されてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…育苗カバー、11…胴部、12…リブ、13…一般部、14…肩部、15…首部、16…下端、20…ボトル、21…底部、22…底壁、23…立壁、23A…上側の部分、23A…下側の部分、25…リブ、26…切断ライン、29…切断済ボトル、30…育苗カバー製造装置、31…保持部、34…刃挿入部、35…刃、37…回転部
図1
図2
図3
図4
図5
図6