特開2021-185812(P2021-185812A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2021-185812標的配列核酸の検出方法、ウイルスの検出方法、及び、ウイルスの検出キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-185812(P2021-185812A)
(43)【公開日】2021年12月13日
(54)【発明の名称】標的配列核酸の検出方法、ウイルスの検出方法、及び、ウイルスの検出キット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6825 20180101AFI20211115BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20211115BHJP
   C12Q 1/70 20060101ALI20211115BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20211115BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20211115BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20211115BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20211115BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20211115BHJP
   C12N 15/10 20060101ALN20211115BHJP
【FI】
   C12Q1/6825 ZZNA
   C12Q1/6844 Z
   C12Q1/70
   C12M1/34 B
   C12Q1/6876 Z
   G01N33/50 P
   G01N33/53 M
   G01N33/569 G
   C12N15/10 114Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-93786(P2020-93786)
(22)【出願日】2020年5月28日
(71)【出願人】
【識別番号】519164415
【氏名又は名称】BioSeeds株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100194515
【弁理士】
【氏名又は名称】南野 研人
(72)【発明者】
【氏名】マニシュ ビヤニ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA28
2G045CB21
2G045DA12
2G045DA13
2G045DA14
2G045FB01
2G045FB02
2G045FB05
4B029AA07
4B029BB01
4B029BB13
4B029CC02
4B029CC08
4B029CC13
4B029FA01
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ10
4B063QQ16
4B063QQ17
4B063QQ18
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR83
4B063QS25
4B063QS32
4B063QS34
4B063QX01
4B063QX04
(57)【要約】
【課題】 短時間で容易に低コストでウイルスを検出できる検出方法を提供する。
【解決手段】ゲノム中の標的配列核酸の検出方法であって、前記ゲノム中の標的配列核酸を鋳型配列として前記標的配列核酸を増幅する増幅工程と、前記増幅工程により増幅された標的配列核酸を電気化学的に検出する検出工程を含み、前記検出工程は、前記増幅工程で増幅された標的配列核酸の増幅産物中の相補的に結合する二本鎖部分に結合する酸化還元物質の存在下、作用極及び対極に印加して前記両極間の電流を測定することにより実施される、標的配列核酸の検出方法。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲノム中の標的配列核酸の検出方法であって、
前記ゲノム中の標的配列核酸を鋳型配列として前記標的配列核酸を増幅する増幅工程と、
前記増幅工程により増幅された標的配列核酸を電気化学的に検出する検出工程を含み、
前記検出工程は、前記増幅工程で増幅された標的配列核酸の増幅産物中の相補的に結合する二本鎖部分に結合する酸化還元物質の存在下、作用極及び対極に印加して前記両極間の電流を測定することにより実施される、
標的配列核酸の検出方法。
【請求項2】
前記検出工程において、特定の電圧の範囲において、予め決めた基準電流値よりも前記両電極の電流値が高い場合は、前記ゲノム中に標的配列核酸が存在するとの陽性判定を行い、前記基準電流値よりも前記両電極の電流値が低い場合は、前記ゲノム中に標的配列核酸が存在しないとする陰性判定を行う、
請求項1記載の標的配列核酸の検出方法。
【請求項3】
前記検出工程は、前記増幅産物に特異的に相補結合可能なプローブ核酸の存在下で前記両電極間の電流の測定が実施され、
前記プローブ核酸は、その一端に金で表面が被覆された磁気性微粒子が結合し、その他端に前記酸化還元物質が結合しているプローブ核酸である、
【請求項4】
前記酸化還元物質が、メチレンブルーである、
請求項1から3のいずれか一項に記載の標的配列核酸の検出方法。
【請求項5】
ウイルスの検出方法であって、
前記ウイルスの検出方法は、ウイルスゲノム中のウイルスに特異的な配列を標的配列核酸として検出する方法であり、
前記標的配列核酸の検出は、請求項1から4のいずれか一項に記載の検出方法により実施されるウイルスの検出方法。
【請求項6】
請求項5記載のウイルスの検出方法に用いる検出キットであって、
標的核酸増幅試薬、検出試薬、及び、電極セットを含み、
前記標的配列核酸増幅試薬は、前記ウイルスゲノムの特異的な配列を認識するプライマーを含み、
前記検出試薬は、増幅産物中の相補的に結合する二本鎖部分に結合する酸化還元物質、又は、一端に金で表面が被覆された磁気性微粒子が結合し、他端に前記酸化還元物質が結合しているプローブ核酸を含み、
前記電極セットは、作用極及び対極を含む、
検出キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的配列核酸の検出方法、ウイルスの検出方法、及び、ウイルスの検出キットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒト及び鳥のインフルエンザ及び重症急性呼吸器症候群(SARS)等のウイルス性の感染症が起きており、最近では、新型コロナウイルスによる世界的な感染(パンデミック)が世界的な問題となっている。このため、ウイルス性感染症の拡大防止のために、ウイルスの検出が必須である。先行特許文献1には、PCR法を用いた鳥インフルエンザウイルスのNA亜型判定用のプライマーセットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−252659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、PCRを含む従来のウイルスの検出方法は、時間と手間がかかり、コストも高いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、ウイルスを短時間で簡単に低コストで検出できる標的配列核酸の検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の標的配列核酸の検出方法は、ゲノム中の標的配列核酸の検出方法であって、前記ゲノム中の標的配列核酸を鋳型配列として前記標的配列核酸を増幅する増幅工程と、前記増幅工程により増幅された標的配列核酸を電気化学的に検出する検出工程を含み、前記検出工程は、前記増幅工程で増幅された標的配列核酸の増幅産物中の相補的に結合する二本鎖部分に結合する酸化還元物質の存在下、作用極及び対極に印加して前記両極間の電流を測定することにより実施される、方法である。
【0007】
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ウイルス等の感染症の病原体を短時間で容易にかつ低コストで検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】核酸増幅方法の一例を示す説明図である。
図2】核酸増幅産物の電気化学的検出法の一例を示す図である。
図3】本発明の検出方法の手順の一例を示す図である。
図4】新型コロナウイルの合成ゲノムRNAを検出した結果を示す図である。
図5】新型コロナウイルの合成ゲノムRNAを検出した結果を示す図である。
図6】新型コロナウイルの合成ゲノムRNAをDNAに変換して検出した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の前記検出工程において、特定の電圧の範囲において、予め決めた基準電流値よりも前記両電極の電流値が高い場合は、前記ゲノム中に標的配列核酸が存在するとの陽性判定を行い、前記基準電流値よりも前記両電極の電流値が低い場合は、前記ゲノム中に標的配列核酸が存在しないとする陰性判定を行う、という態様であってもよい。
【0011】
本発明の前記検出工程は、前記増幅産物に特異的に相補結合可能なプローブ核酸の存在下で前記両電極間の電流の測定が実施され、前記プローブ核酸は、その一端に金で表面が被覆された磁気性微粒子が結合し、その他端に前記酸化還元物質が結合しているプローブ核酸である、という態様であってもよい。
【0012】
本発明において、前記酸化還元物質は、例えば、メチレンブルーである。
【0013】
本発明のウイルスの検出方法は、ウイルスゲノム中のウイルスに特異的な配列を標的配列核酸として検出する方法であり、前記標的配列核酸の検出は、本発明の標的配列核酸の検出方法により実施される。
【0014】
本発明の検出キットは、本発明のウイルスの検出方法に用いる検出キットであって、標的核酸増幅試薬、検出試薬、及び、電極セットを含み、前記標的配列核酸増幅試薬は、前記ウイルスゲノムの特異的な配列を認識するプライマーを含み、前記検出試薬は、増幅産物中の相補的に結合する二本鎖部分に結合する酸化還元物質、又は、一端に金で表面が被覆された磁気性微粒子が結合し、他端に前記酸化還元物質が結合しているプローブ核酸を含み、前記電極セットは、作用極及び対極を含む、検出キットである。
以下、本発明について、実施例と共に、具体的に説明する。
【0015】
以下、本発明について、実施例と共に、具体的に説明する。
【0016】
本発明の増幅工程に用いる核酸増幅方法は特に制限されず、例えば、PCR法でもよいし、等温増幅法でもよい。等温RNA / RPAテクノロジーの組み合わせの概略図を図1に示す。 図1に示すRNA増幅法は、逆転写酵素とRNAポリメラーゼ酵素を用いて40℃前後で標的RNA配列を増幅することができる方法である(Anal Biochem 2003:314、77-86)。 ds (二本鎖)DNAはRNA増幅反応中に生成され、RPA(リコンビナーゼポリメラーゼ増幅)のテンプレートとしてさらに利用して、リコンビナーゼ酵素、DNAポリメラーゼ、SSB(一本鎖DNA結合)たんぱく質を含む一連の酵素で、約40°CでDNA配列を増幅できる。
また、本発明において、前記増幅工程で増幅された標的配列核酸の増幅産物中の相補的に結合する二本鎖部分は、一分子の核酸内での二本鎖部分(例えば、DNA又はRNAのステム構造)でもよいし、二分子の核酸間での二本鎖部分(例えば、二本鎖DNA、二本鎖RNA、DNAとRNAの二本鎖)でもよいし、これらの組み合わせの二本鎖部分でもよい。
【0017】
図2に、本発明の検出工程の原理を示す。図2におい、DEPSOR(使い捨て電気化学印刷センサー)は、本発明者が開発した技術である。図2には、 2つのモードの検出モードが示されている。一つのモードは、プローブ核酸を使用するモードであり、プローブ核酸の一端は金でコーティングされた磁性ナノ粒子(AuMNP)が結合し、プローブ核酸の他端に酸化還元物質(メチレンブルー、MB)が結合している。プローブ核酸は、増幅産物と特異的に結合する相補配列を有する。金と酸化還元物質の相互作用による電子トンネル効果は、プローブ核酸の長さによって調整可能である。プローブ核酸の存在下、作用極と対極に印加すると、増幅産物のターゲット配列の有無により、両電極間に流れる電流値が変化し、この変化によってターゲット配列の有無(陽性、陰性)を判定できる。もう一つのモードは、酸化還元物質(MB)の存在下で、作用極と対極に印加すると、酸化還元物質が、増幅産物中で形成される相補的二本鎖部分に結合(例えば、インターカーレーション)か否かで、両電極間に流れる電流値が変化し、この変化によってターゲット配列の有無(陽性、陰性)を判定できる。
【0018】
図3に、ウイルスの確認的分子診断テストのための3つの簡単な操作手順を示す。(1) 鼻咽頭フロック綿棒とFTAカードを生体サンプルの収集に使用し、RNA抽出および増幅用のすぐに使用できるコンポーネントを含む「DEPSOR-RNAバイアル」に浸す。
(2) 65℃5分間、41℃15分間のワンポットRNA増幅反応。
(3) DEPSOR-RNAチューブを電気化学測定(示差パルスボルタンメトリー)のためにDEPSOR機器に接続し、増幅されたRNAをモバイルアプリで定量化する。
【0019】
図4及び図5に、本発明によるコロナウイルスCOVID-19の合成RNAの検出結果を示す。SARS-CoV-2のNタンパク質領域由来の406塩基のRNA断片をインビトロで合成し、134塩基のRNA断片を増幅し定量するための鋳型として用いた。図3に示すように、2フェントグラムもの少量のRNAがたった10分で増幅され、電気泳動とDEPSOR技術により検出(確認)された。
【0020】
図4は、RNAの増幅と分析を示す。図4(a)は、SARS-CoV-2上のRNAアンプリコンターゲットの相対位置とシーケンスを示す。 図4(b-c)は、RNAアンプリコンの電気泳動分析の結果を示す(134 ntsは、矢印で示す)。図4(bは、異なるインキュベーション時間(10および30分)に対するテンプレート有り(20ng)または無しの選択的評価の結果を示す。 図4(c)は、異なるインキュベーション時間(10、15、および30分)に対する(0.2 pg)またはテンプレートなしの高感度評価の結果を示す。図4(d)は、DEPSORとメチレンブルー色素を使用したRNAアンプリコンの電気化学分析の結果を示す。
【0021】
図5は、10分でのRNA増幅の選択性と感度の評価を示す。図5(a)は、0.02〜20 pgテンプレートの範囲の非COVID-19 RNAまたはCOVID-19 RNAの存在下でのRNAアンプリコン(134 nt、赤い矢印)の電気泳動分析を示す。 図5(b-c)は、DEPSORとメチレンブルー色素を使用したRNAアンプリコンの電気化学分析の結果を示す。
【0022】
図4及び図5から明らかなように、本発明によれば、SARS-CoV-2(合成)のNタンパク質領域からの134 nts RNAアンプリコンは、等温RNA増幅を使用してわずか10分で正常に増幅され、ゲル電気泳動(LoD 20フェムトグラム(260,000コピー)RNA)または電気化学によって検出された(LoD 2ピコグラムRNA)。
【0023】
図6に示すように、SARS-CoV-2分離Wuhan-Hu-1(MN908947)のRdRp(100 bp)、Eタンパク質(113 bp)およびNタンパク質(128 bp)領域からのDNAの3つのフラグメントは、 in vitroで合成され、RPAで増幅し電気泳動法とラテラルフローストリップを使用して定量化するためのテンプレートとして使用された。
【0024】
図6は、DNAの増幅と分析を示す図である。図6(a-b)はSARS-CoV-2上のDNAアンプリコンターゲットの相対位置とシーケンスを示す。図6(c)は、RPA産物(矢印、レーン1〜3)およびPCR産物(レーン6〜8)の電気泳動分析の結果を示す。図6(d)は、103から109のテンプレートを使用したRPA製品のラテラルフロー分析を示す。
【0025】
図6に示すように、RPAを使用すると、設計された3つのフラグメントすべてが39℃で20分で正常に増幅されたことがわかる。 これらの増幅産物は、電気泳動およびラテラルフローストリップで確認された。
【0026】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、ウイルスを短時間で簡単に低コストで検出できる。また、本発明はウイルス以外の細菌や寄生虫等の感染症の病原体も検出できる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2021年4月20日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]