【実施例】
【0013】
本発明の作業機の懸架装置及び作業機について、図に基づいて説明する。
図1乃至
図4は、本発明の作業機の懸架装置及び作業機を表わす図である。
図1(a)は、本発明の作業機の懸架装置及び作業機の正面図である。
図1(b)は、
図1(a)の平面図である。
図2は、
図1のA−A線断面図である。
図3は、本発明の作業機の懸架装置による作業部の動作を表わす図である。
図4は、
図3における作業部のピッチング動作の中心を表わす図である。
なお、本実施例において、本発明の作業機は、走行機体(トラクター)の進行方向前方に位置し、走行機体に備える昇降装置(ローダ装置)に取り付けられているものであるが、走行機体に直接取り付けてもよい。また、本発明の作業機の懸架装置は、3点リンク装置に装着される作業機に装着して使用することができるものである。
【0014】
本発明の作業機10は、作業部12に本発明の作業機の懸架装置14を取り付けるものである。本発明の作業機の懸架装置14は、作業機10の作業部12の上方に位置し走行機体に連結固定される固定部16と、固定部16に一端を回動自在に取り付け、作業部12の上部に他端を回動自在に取りつける回動部18とを備えるものである(
図1乃至
図3)。
作業部12は、回動部18を介して、固定部16の下方に連結されることから(
図1及び
図2)、作業部12が地面に接地したままの状態で進行すると、作業部12は地面の起伏面の変化に応じて上下動するとともに、作業部12が走行機体の進行方向に対する左右方向を軸にして回転するピッチング動作を行う(
図3)。これにより、作業部12を地面(起伏面)に追従させる場合、固定部16を操作しなくても、回動部18の回動動作により作業部12が自ら起伏面の変化に応じて上下動することから、固定部16及び固定部16が固定される走行機体に作業部12の振動・揺動が伝達しないため、作業時における作業機および作業機を装着する走行機体にかかる負荷を軽減することができる。
また、作業部12のピッチング動作の中心Pを作業部12の外部に設ける(
図2)。これにより、作業部12が走行機体の進行方向に対する左右方向を軸にして上下に回転する上下動を大きくすることができることから、大きな起伏面に作業部12を追従させることができる(
図3及び
図4)。
本発明の作業機の懸架装置14により、刈払い作業を行う場合、刈刃や作業部が作業面である地面に衝突することを防止できる。これにより、作業機や作業機を装着した走行機体にかかる負荷を軽減できる。また、同時に、刈り跡が残らず、刈取り面が不揃いになることを防止できる。
【0015】
図1乃至
図4に示す、作業機の懸架装置14は、固定部16を回動部18の一端(進行方向前方の端部)を回動自在に取りつける第一フレームで形成し、作業部12上部に回動部18の他端(進行方向後方の端部)を回動自在に取りつける第二フレーム12aを設け、回動部18を上下に配置される2つのリンク18a,18bで形成し、側面視(
図2及び
図3)において、上部のリンク18a、下部のリンク18b、第一フレーム16、第二フレーム12aを4つの辺とする空間20を形成するものである。
図1乃至
図4では、第一フレーム16の前方部に上部のリンク18a及び下部のリンク18bの一端を取り付ける楕円状に形成したリンク取付部16aを設けて、4つの辺からなる空間20を形成している。図中において、リンク取付部16aは、第一フレーム16の前方部に固定されており、空間20の一つの辺を形成するように設けられている。上部のリンク18a及び下部のリンク18bの各一端は、リンク取付部16aの長軸の両端部分にそれぞれ回動自在に取り付けられている。
【0016】
空間20は、作業部12が接地する地面の地形(起伏)により変形し、作業部12の上下動及びピッチング動作(進行方向前後への上下動)に伴う揺動・振動を緩和する。これにより、第一フレーム16及び第一フレーム16が連結固定される走行機体にかかる負荷を軽減することができる。
(平坦な地面での作業時)
平坦な地面では、第二フレーム12aの位置に応じた四角形の空間20が形成される(
図3(a))。
(前上がりの大きな起伏面での作業時)
作業部12が前上がりの大きな起伏面に面した場合、第二フレーム12aの位置が上方に移動し、空間20は、平坦な地面時の四角形の形状から横長の形状に変形する(
図3(b))。
(前下がりの大きな起伏面での作業時)
作業部12が前下がりの大きな起伏面に面した場合、第二フレーム12aの位置が下方に移動し、空間20は、平坦な地面の四角形の形状から縦長の形状に変形する(
図3(c))。
作業機の懸架装置14の空間20は、作業部12の外部に設けられるピッチング動作の中心Pとして作業部12がピッチングするように形成されている(
図4)。
【0017】
図1乃至
図4において、下部のリンク18bの他端が取り付けられる第二フレーム12aは函体に形成されており、下部のリンク18bを分岐して下部のリンク18bの他端を函体の左右の両側面に回動自在に取り付けている。なお、下部のリンク18b及び第二フレーム12aは、上記形態に限るものではなく、下部のリンク18bが第二フレーム12aに回動自在に取り付けられていれば足りる。
【0018】
上部のリンク18aの両端及び下部のリンク18bの一端を自在継手(各2つの材の結合する角度を自由に変化する継手)を用いて取り付けるようにしてもよい。上部のリンク18aの一端(進行方向前方側の端部)と第一フレーム16(リンク取付部16a)、上部のリンク18aの他端(進行方向後方側の端部)と第二フレーム12a、下部のリンク18bの一端(進行方向前方側の端部)と第一フレーム16(リンク取付部16a)を、自在継手を用いて、揺動自在に取り付ける。これにより、下部のリンク18bの一端(リンク取付部16aに取り付けられる端部)を通る鉛直軸を中心に回動するヨーイング動作が可能となる(
図5(a))。また、下部のリンク18bの一端を通り進行方向の水平軸を中心にしたローリング動作が可能となる(
図5(b))。自在継手を用いることにより、
図3および
図4に示す前述の作業部12の上下動及びピッチング動作と同時に、上記ヨーイング動作及びローリングを行うことが可能となる。地形のあらゆる起伏面に対して、作業部12が適切な角度で地面に接することが可能となる。
図5において、図(a)は平面図、図(b)は正面図である。
なお、ヨーイング及びローリングの動作の際、第一フレーム16は動かない。
また、ピッチング、ヨーイング、ローリングの各動作は、作業部12が地面に接した状態で行われ、その接地状態に応じた動作をする。
【0019】
側面視における、上部のリンク18aの一端と下部のリンク18bの一端の距離X(リンク取付部16aに回動自在に取り付けられている上部のリンク18aの回動用孔部と下部のリンク18bの回動用孔部との距離)を上部のリンク18aの他端と下部のリンク18bの他端の距離Y(第二フレーム12aに回動自在に取り付けられている上部のリンク18aの回動用孔部と下部のリンク18bの回動用孔部との距離)より長くする(X>Y)ようにしてもよい(
図2)。これにより、作業部12の上下動(
図3)に連動し、作業部12が前傾又は後傾となるようなピッチング動作をすることから、起伏の激しい地形(小さな起伏が連続する地形)の短い傾斜面(起伏面)に合わせて作業部12をピッチング動作させることができ、作業部12を地面(起伏面)に追従させることができる。
【0020】
上部のリンク18aを長手方向に伸縮させるようにしてもよい。上部のリンク18aの長さを変更することにより、作業部12の上下動(
図3)に伴うピッチング角度(
図4)を調整することができる。
【0021】
上部のリンク18aの他端を摺動可能にする長孔の摺動用孔部22を第二フレーム12aに設けるようにしてもよい(
図6(a))。これにより、小さな起伏に応じた小さなピッチング動作が可能となる。摺動用孔部22は、回動用孔部(固定用孔部)を中心にした長孔であり、ピッチング動作は、
図3及び
図4に示す大きな起伏面に応じる上部のリンク18a及び下部のリンク18bを用いたものと異なり、下部のリンク18bの他端の取付部(第二フレーム12aへの取付部)である回動用孔部(固定用孔部)を軸にしてピッチング動作をする(
図6(b))。作業部12の前後幅のほぼ中央でピッチング動作をすることにより、小さな起伏面に対しても、より精度よく作業部12を追従させることができる(
図7)。上記ピッチング動作は、
図3及び
図4に示す上部のリンク18aと下部のリンク18bを用いたピッチング動作中にも同時に動作することができる。
なお、摺動用孔部22によるピッチング動作において、上部のリンク18aの他端(進行方向後方側)が摺動用孔部22の摺動範囲を超えると、
図3及び
図4に示す上部のリンク18aと下部のリンク18bを用いたピッチング動作に移行する。
また、摺動用孔部22とともに、第二フレーム12aに円穴である回動用孔部24(固定用孔部)を設け、両孔部22,24を併用することによって(
図6(a))、摺動用孔部22によるピッチング動作を省略させることができる。これにより、作業者が作業する地形の状況や作業者の好みに合わせて、使用する孔部22,24を選択できることから、作業効率を向上させることができる。
【0022】
第一フレーム16に、第一フレーム16を左右にスライドさせる、走行機体に連結可能な第一フレームガイド部材26を設けるようにしてもよい(
図8)。第一フレームガイド部材26は、第一フレーム16を固定し、左右にスライドさせる伸縮手段26aを備えるスライドシャフト26bを有するものである。
図8において、図(a)は第一フレームガイド部材26の正面図、図(b)は図(a)の平面図である。
第一フレームガイド部材26は走行機体に固定され、本発明の作業機10(第一フレーム16・上部のリンク18a・下部のリンク18b・第二フレーム12aから構成される本発明の作業機の懸架装置14及び作業部12)を左右方向にスライドさせるものである(
図9)。第一フレームガイド部材26は、作業部12を走行機体の左右の側方側に突出させて作業をしたい場合に用いる。
なお、
図7は、作業部12を走行機体の左の側方側に突出させて作業を行っている様子を表わす図である。
【0023】
以上のように、本発明の作業機の懸架装置及び作業機によると、大きな起伏が形成されている地面に対し作業部を接地させた状態で作業部を上下動させかつピッチング動作をさせることができることから、刈払い作業を行う場合、刈刃や作業部が作業面である地面に衝突することを防止できる。これにより、作業機や作業機を装着した走行機体にかかる負荷を軽減できるとともに、刈り跡が残らず、刈取り面が不揃いになることを防止できる。
なお、本実施例における作業部は、草刈り装置を想定しているが、本発明の作業機の懸架装置及び作業機の作業部は、草刈り装置に限定するものではない。