【課題】大地における土壌環境全般にわたる雨水浸透機能の再生及び地形崩壊防止が図れ、長期間その機能が維持することのできる土壌通気浸透排水システム及び土壌通気浸透排水施工方法を提供する。
【解決手段】本発明の土壌通気浸透排水システムは、地盤改良に用いられる対象領域において、土壌の所定領域に、少なくとも一つ形成された立穴、及び/又は対象領域に亘って形成された長尺溝と、立穴及び/又は長尺溝には、空気や水の通排気性が確保されたシガラミ構造からなる構造物が配置される。シガラミ構造からなる構造物は、長さや幅の異なる部材であって、縦、横、斜めの直線又は曲線の少なくとも一つ以上の部材で構成される不定形の面を有して構成されている。
地盤改良に用いられる土壌通気浸透排水システムを適用する対象領域において、前記対象領域の土壌の所定領域に、少なくとも一つ形成された立穴、及び/又は対象領域に亘って形成された長尺溝と、該立穴及び/又は長尺溝には、空気や水の通排気性が確保されたシガラミ構造からなる構造物が配置され、前記シガラミ構造からなる構造物は、長さや幅の異なる部材であって、縦、横、斜めの直線又は曲線の少なくとも一つ以上の部材で構成される不定形の面を有して構成されたこと特徴とする土壌通気浸透排水システム。
前記シガラミ構造からなる構造物は、外形部を形成する外面を備え、前記外面は、長さや幅の異なる部材であって、縦、横、斜めの直線又は曲線の少なくとも一つ以上の部材で不規則に組み込まれた不定形の組込み部材と、該組込み部材間で形成された間隙とで構成されていることを特徴とする請求項1記載の土壌通気浸透排水システム。
前記シガラミ構造からなる構造物は、中空部材で構成され、前記空気や水が、前記組込み部材間で形成された間隙を、前記土壌浸透気水脈として等加速度運動で、渦流となって流通することを特徴とする請求項2に記載の土壌通気浸透排水システム。
前記中空部材は所定領域に形成された横方向の長尺溝に配置され、前記中空部材の外面には間隙が形成され、前記間隙は、前記間隙を構成する材料と前記間隙の面積比率を、間隙を構成する材料の総面積≦間隙の総面積で構成され、前記間隙から、前記水と前記空気が土壌浸透気水脈として等加速度運動で、渦流となって流通するように構成したことを特徴とする請求項3に記載の土壌通気浸透排水システム。
前記中空部材は所定領域に形成された横方向の長尺溝に配置され、前記中空部材の外面には間隙が形成され、前記間隙は、前記間隙を構成する材料と前記間隙の面積比率を、間隙を構成する材料の総面積≦間隙の総面積とし、前記間隙から、前記水と前記空気が土壌浸透気水脈として等加速度運動で、渦流となって流通することを特徴とする請求項3に記載の土壌通気浸透排水システム。
前記立穴に配置された中空部材と、長尺溝に配置された中空部材とが連結され、前記長尺溝に配置された中空部材は、土壌通気浸透排水システムを適用する対象領域の長尺溝の土壌中に一定の領域に亘って配置され、前記中空部材の外面は、長さや幅の異なる部材であって、縦、横、斜めの直線又は曲線の少なくとも一つ以上の部材で不規則に組み込まれた不定形の組込み部材と、該組込み部材間で形成された間隙とで構成されていることを特徴とする請求項3又は4記載の土壌通気浸透排水システム。
前記立穴に配置された中空部材と、長尺溝に配置された中空部材との連結は、立穴に配置された中空部材の中央から外れた位置で、長尺溝に配置された中空部材の先端が、立穴に配置された中空部材に対して、下方に向けて連結されていることを特徴とする請求項6記載の土壌通気浸透排水システム。
前記立穴に配置された中空部材と、長尺溝に配置された中空部材との連結は、前記立穴に配置された中空部材の一つに対して、長尺溝に配置された二つの中空部材が連結され、前記長尺溝に配置された二つの中空部材は、前記立穴に配置された中空部材の外面と高さ位置において、接続位置が異なっていることを特徴とする請求項6又は7記載の土壌通気浸透排水システム。
前記立穴及び/又は長尺溝に配置される中空部材の上面には、中空部材を覆うグレーチング蓋が配設され、該グレーチング蓋は、複数種以上の間隙を形成するやたら構造の井桁となっている枠から構成されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の土壌通気浸透排水システム。
前記土壌通気浸透排水システムを適用する対象領域の立穴及び/又は長尺溝に、配置された前記中空部材の周囲には、乾留により得られる炭化物を含む充填材を配置することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の土壌通気浸透排水システム。
前記充填材の周囲に通気性及び通水性を確保しつつ泥の侵入を防止したす泥こし機能有する泥侵入防止材を配置してなることを特徴とする請求項11に記載の土壌通気浸透排水システム。
前記中空部材を配置した下部、上部、周囲の一部に支持部材としての捨てコンクリート、石組み、砕石、砂利を含む石質系と、杭、植栽、木組み支柱を含む木質系の有機素材と、その他金属系のピンや杭のうち、少なくとも一つ以上を配置し、前記中空部材の支持機能をシガラミ構造として多様化したことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の土壌通気浸透排水システム。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の技術は、前述したように、極めて優れた土壌通気排水システムであるが、大地における土壌環境全般にわたる雨水浸透機能の再生及び地形崩壊防止できる、より改善された土壌通気排水システムが望まれていた。
そこで、本発明者は、鋭意研究し、これまでの集水するパイプと、集水した水を回収するマス(桝)の容積との比率を基にしたシステムは、これまでの既存材料の比率に準じた構造体を考慮して行われていた点に着目し、より効率よく、永続的なシステムについて研究し、本発明をなすに至った。
【0012】
すなわち、これまで、土壌排水システム及び施工において、表層地面の水の動きは停滞するか浸食されるかが問題であった。よって、停滞は捌かせばよいし、浸食はその浸食力を弱める処置か、そこをカバーすればよしとされてきた。
しかしながら、自然界の循環機能は、一定の空気と水の流れに伴う通気・通水、保水・保気の循環機能であるという知見に基づいて、本発明者は、これら循環機能は、等圧機能−等加速度運動に他ならないことを見出した。そして、この状態(本明細書では、以下「安息状態」という)が保たれた時、循環型の土壌通気浸透排水システムと施工が解決される知見を得て、特に表層地面の表層5cm足らず(実際は地形にもよるが、5cm〜20cm程度)の小さな地層の循環機能が日常的に保たれることによって、動植物の生息するエリア全体の土壌層に循環機能が連鎖的に作用することにより現場実証法的に解決されてきた経験則から、上記各課題を解決する上で表層5cm(実際は地形にもよるが、5cm〜20cm程度)の気水脈改善の日常化が不可欠であることを確認した。
【0013】
そこで、川中に杭を打ち横木を噛ますことで水流の向きを変え、水の圧力を抑制する構造であるシガラミ構造に着目し、大地における土壌環境全般にわたる雨水浸透機能の再生及び地形崩壊防止を達成するために、川中でなく、所定領域の土壌においてもシガラミ構造を利用し、水及び空気について、直線的な排水・排気等の観点を見直し、渦流による多様性に富んだ不定形で、流線形、波紋形、らせん状構造取り入れた土壌通気浸透排水システムを発明するに至ったものである。
【0014】
本発明者は所定領域内における土壌内の空気の流れ及び水の流れについて、下流域から上流域の流域全体の機能を改善し、浸透桝或いは暗渠排水管及び開渠排水等の用途を持たせると共に、従来の直線的な水や空気の流れによる改善は、流れの運動が段々と圧力を増す加速度的であることに着目した。
【0015】
本発明の目的は、水流や空気流を等速で対応できるシステムを構築し、植物の繁茂環境を改善でき、大地における土壌環境全般にわたる雨水浸透機能の再生及び地形崩壊防止が図れ、長期間その機能が維持することのできる土壌通気浸透排水システム及び土壌通気浸透排水施工方法を提供することにある。
【0016】
なお、本明細書において、等加速度運動(motion of uniform acceleration)とは,加速度が一定の運動で,一定の大きさと方向をもつ力を受けているときの運動を意味し、地表表面では,重力(gravity)は近似的に均一で一定と考えられるため,地表近くの物体の運動は等加速度運動を意味する。一般に、等加速度運動では,物体の初速度がゼロ度又は加速度の方向と初速度の方向との成す角度が 0 度又は 180 度の場合は,物体は一直線上を移動する直線運動となる。一方,初速度の方向と加速度の方向の成す角度が 0度又は,180 度以外の場合は,移動の軌跡が放物線を描くことになる。また自然界の動きに直線はなく、らせん形、あるいはらせん状の渦巻きの形をとる。らせん形は混沌から秩序を発生させる流体エネルギーの本来の姿である。
更に本明細書において、「土壌浸透気水脈」とは、空気と水が一対を成して動く動線、構造体、脈絡を意味し、「渦流」とは直線的な加速度での土壌浸透気水脈ではない状態を意味する。
また本明細書において、「やたら構造」とは、空気と水の渦流モーメントに沿った構造で、流線形、波紋状、らせん形等の合成された構造を指し、構造を構成する各材料の太さ等も不均等なのにバランスが崩れることがなく、一見適当に見える組み込み方でも、計算されたうえでの無秩序を表現しているものをいうものである。
更にまた、本明細書で「孔」と表現するのは、円孔に限らず、シガラミ構造によって生み出される孔類似の間隙を含むものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題は、本発明の土壌通気浸透排水システムによれば、地盤改良に用いられる土壌通気浸透排水システムを適用する対象領域において、前記対象領域の土壌の所定領域に、少なくとも一つ形成された立穴、及び/又は対象領域に亘って形成された長尺溝と、該立穴及び/又は長尺溝には、空気や水の通排気性が確保されたシガラミ構造からなる構造物が配置され、前記シガラミ構造からなる構造物は、長さや幅の異なる部材であって、縦、横、斜めの直線又は曲線の少なくとも一つ以上の部材で構成される不定形の面を有して構成されたこと、により解決される。
【0018】
このように対象領域の土壌に、少なくとも一つ形成された立穴、及び/又は対象領域に亘って形成された長尺溝と、該立穴及び/又は長尺溝には、空気や水の通排気性が確保されたシガラミ構造からなる構造物が配置され、前記シガラミ構造からなる構造物は、長さや幅の異なる部材であって、縦、横、斜めの直線又は曲線の少なくとも一つ以上の部材で構成される不定形の面を有しているので、シガラミ構造からなる構造物そのものが、規則性を重んじるこれまでの構造物とは異なり、自然界の不規則な環境に整合した状態で、土壌における通気浸透排水が可能となり、大地における土壌環境全般にわたる雨水浸透機能の再生及び地形崩壊防止できる。
【0019】
またシガラミ構造からなる構造物は、外形部を形成する外面を備え、前記外面は、長さや幅の異なる部材であって、縦、横、斜めの直線又は曲線の少なくとも一つ以上の部材で不規則に組み込まれた不定形の組込み部材と、該組込み部材間で形成された間隙とで構成されていると良い。
【0020】
このように、シガラミ構造からなる構造物は、空気と水が渦流として流通し、等加速度運動として流通するので、定型構造物とは異なり、水や空気の土壌浸透気水脈に際して、自然状態に即して邪魔にならず、流通浸透排水を円滑に土壌浸透気水脈として渦流で流通できるようにすることが可能である。
【0021】
このとき、シガラミ構造からなる構造物は、中空部材で構成され、前記空気や水が、前記組込み部材間で形成された間隙を、前記土壌浸透気水脈として等加速度運動で、渦流となって流通するように構成すると好適である。
【0022】
また、前記中空部材は所定領域に形成された横方向の長尺溝に配置され、前記中空部材の外面には間隙が形成され、前記間隙は、前記間隙を構成する材料と前記間隙の面積比率を、間隙を構成する材料の総面積≦間隙の総面積で構成され、前記間隙から、前記水と前記空気が土壌浸透気水脈として等加速度運動で、渦流となって流通するように構成すると良い。
【0023】
さらに前記中空部材は所定領域に形成された横方向の長尺溝に配置され、前記中空部材の外面には間隙が形成され、前記間隙は、前記間隙を構成する材料と前記間隙の面積比率を、間隙を構成する材料の総面積≦間隙の総面積とし、前記間隙から、前記水と前記空気が土壌浸透気水脈として等加速度運動で、渦流となって流通するように構成すると良い。
以上のように、中空部材を立方向又は横方向に向くように配置すると、浸透性の開渠排水路、暗渠排水管、浸透桝などとして活用することができる。
【0024】
このとき、前記立穴に配置された中空部材と、長尺溝に配置された中空部材とが連結され、前記長尺溝に配置された中空部材は、土壌通気浸透排水システムを適用する対象領域の長尺溝の土壌中に一定の領域に亘って配置され、前記中空部材の外面は、長さや幅の異なる部材であって、縦、横、斜めの直線又は曲線の少なくとも一つ以上の部材で不規則に組み込まれた不定形の組込み部材と、該組込み部材間で形成された間隙とで構成されていると好適である。
【0025】
また、前記立穴に配置された中空部材と、長尺溝に配置された中空部材との連結は、立穴に配置された中空部材の中央から外れた位置で、長尺溝に配置された中空部材の先端が、立穴に配置された中空部材に対して、下方に向けて連結されているようにすると好適である。
【0026】
さらに、前記立穴に配置された中空部材と、長尺溝に配置された中空部材との連結は、前記立穴に配置された中空部材の一つに対して、長尺溝に配置された二つの中空部材が連結され、前記長尺溝に配置された二つの中空部材は、前記立穴に配置された中空部材の外面と高さ位置において、接続位置が異なっているように構成すると良い。
【0027】
このように、間隙を構成する材料と間隙の面積比率を、間隙を構成する材料の総面積≦間隙の総面積としているので、水や空気が流通する孔や間隙(開口面)の面積の方が大きく形成されることになり、水や空気が渦流として、円滑に通過できるとともに、間隙を構成する材料の総面積≦間隙の総面積としているので、間隙を通して水、空気が通気浸透排水することができ、間隙を構成する部材に阻止される土砂や小石による目詰まりが少なく、メンテナンスが容易である。
【0028】
このとき、前記立穴に配置された中空部材と、長尺溝に配置された中空部材とが連結され、前記長尺溝に配置された中空部材は、土壌通気浸透排水システムを適用する対象領域の長尺溝の土壌中に一定の領域に亘って配置され、前記中空部材の外面は、長さや幅の異なる部材であって、縦、横、斜めの直線又は曲線の少なくとも一つ以上の部材で不規則に組み込まれた不定形の組込み部材と、該組込み部材間で形成された間隙とで構成されているように構成するとよい。
【0029】
前記立穴及び/又は長尺溝に配置される中空部材の上面には、中空部材を覆うグレーチング蓋が配設され、該グレーチング蓋は、複数種以上の間隙を形成するやたら構造の井桁となっている枠から構成されていると好適である。つまり、グレーチング蓋の下で、グレーチング枠との立体的な構造で、井桁構造とすると好適であり、風圧を調整することができる。
【0030】
また前記グレーチング蓋は、前記井桁に切れ目が形成されていると好適である。このように切れ目が形成されていると、枠に水、空気、土砂等の圧力が所定以上加わったときに、切れ目があるために、枠が変形し、所定以上の圧力を逃がすことが可能となり、グレーチング蓋の破壊を防止すると共に、水、空気、土砂等の圧力を円滑に回避することが可能となる。
以上のように、グレーチング蓋を用いると、グレーチング蓋による表面排水を行い、中空部材への風を通りやすい性質を利用して、風の荷重(風圧)を緩和することが可能となる。このようにすると、グレーチング蓋の下で、グレーチング枠との立体的な構造で、風圧を調整するために、井桁構造を応用することができる。
【0031】
前記土壌通気浸透排水システムを適用する対象領域の立穴及び/又は長尺溝に、配置された前記中空部材の周囲には、乾留により得られる炭化物を含む充填材を配置すると好適である。つまり、渦流の生み出す相対的エネルギーモーメントによるシガラミ構造にすると好適である。
このように、乾留により得られる炭化物の持つ水、空気の浄化力及び土壌環境の親和性により通気・通水性を有する充填材周囲の土壌の植物繁茂環境を改善し、植物の繁茂を促進し、土壌中に植物の根が広がることにより一層土壌の通気性、通水性を向上させることができる。
【0032】
また、乾留により得られる炭化物は、長期間にわたり水、空気の浄化力を保持するため、長期間その機能が維持される土壌通気排水システムとすることができる。さらに、中空部材中に回収される水、空気が浄化された状態で回収されるため、後処理が簡単になる。
このように、中空部材を縦方向又は横方向に向くように配置すると、開渠排水路、浸透枡或いは暗渠排水などとして活用することができる。
【0033】
そして、前記充填材の周囲に通気性及び通水性を確保しつつ泥の侵入を防止した泥こし機能を備えた泥侵入防止材を配置すると好適である。
このように泥侵入防止材を用いると、充填材の間隙への泥の侵入による充填材及び中空部材への目詰まりを防止し、長期間の使用に耐える土壌通気排水システムとすることができる。本発明では、中空部材を構成する部材の総面積に対して、水や空気が流通する開口面の面積の方が大きく形成されているので、中空部材自体の目詰まりは少ないものの、中空部材と配置位置の土壌との間で、通気性及び通水性を阻害することを予防することができる。そして、その場における土圧・水圧・空気圧に応じた耐圧機能としてそれぞれの部材が、相対的耐圧機能を備えることになる。
【0034】
但し、中空部材の支持度合いが強すぎると、このシステムや施工における間隙を動く空気と水の動きが低下し、このシステム及び施工法の機能が低下することになる。よってこの調整の加減として、この中空部材にかかる土圧及びその周辺の間隙にかかる間隙圧及び、対象領域内土壌、地形にかかる地形圧といった実態を考慮したシステムを構成するために、次のような構成が望まれる。すなわち、前記中空部材を配置した下部、上部、周囲の一部に支持部材としての捨てコンクリート、石組み、砕石、砂利を含む石質系と、杭、植栽、木組み支柱を含む木質系の有機素材と、その他金属系のピンや杭のうち、少なくとも一つ以上を配置し、前記中空部材の支持機能をシガラミ構造として多様化したように構成すると好適である。
【0035】
前記課題は、本発明の土壌通気浸透排水施工方法によれば、地盤改良に用いられる土壌通気浸透排水施工方法であって、
土壌通気浸透排水システムを適用する対象領域の所定位置に少なくとも一つの立穴を形成する立穴形成工程と、
前記立穴形成工程で形成した立穴の土壌中に、通排気性が確保され不定形の面で構成されたシガラミ構造として形成された中空部材を配置する中空部材配置工程と、
前記中空部材配置工程で配置した中空部材の周囲に乾留により得られる炭化物を含む充填材を配置する充填材配置工程と、
前記充填材配置工程の後で、充填材の周囲に通気性及び通水性を確保しつつ泥の侵入を防止する泥侵入防止材を配置する泥侵入防止材配置工程と、
前記立穴形成工程で形成した立穴を埋め戻し、その後整地する、埋め戻し整地工程と、
最後に、土壌通気浸透排水システムを適用する対象領域に、少なくとも植物、グランドカバーを配置できるように土壌を形成する土壌形成工程と、
を備えることにより解決される。
【0036】
前記課題は、本発明の土壌通気浸透排水施工方法によれば、地盤改良に用いられる土壌通気浸透排水施工方法であって、
土壌通気浸透排水システムを適用する対象領域の所定領域に長尺溝を形成する長尺溝形成工程と、
前記長尺溝形成工程で形成した長尺溝に、通排気性が確保され不定形の面で構成されたシガラミ構造として形成された中空部材を配置すると中空部材配置工程と、
前記中空部材配置工程で配置した中空部材の周囲に乾留により得られる炭化物を含む充填材を配置する充填材配置工程と、
前記充填材配置工程の後で、充填材の周囲に通気性及び通水性を確保しつつ泥の侵入を防止する泥侵入防止材を配置する泥侵入防止材配置工程と、
前記長尺溝形成工程で形成した長尺溝を埋め戻し、その後整地する、埋め戻し整地工程と、
最後に、土壌通気浸透排水システムを適用する対象領域に、少なくとも植物、グランドカバーを配置できるように土壌を形成する土壌形成工程と、を備えることにより解決される。
【0037】
前記課題は、本発明の土壌通気浸透排水施工方法によれば、地盤改良に用いられる土壌通気浸透排水施工方法であって、
土壌通気浸透排水システムを適用する対象領域の所定位置に所定数の立穴部を形成し、この穴部から所定方向に延びる長尺溝を形成する立穴及び長尺溝形成工程と、
前記立穴及び長尺溝形成工程で形成した立穴及び長尺溝に、前記中空部材を配置し、前記立穴と長尺溝に配設された中空部材を連結した中空部材配置・連結工程と、
前記中空部材中の周囲に乾留により得られる炭化物を含む充填材を配置する充填材配置工程と、
前記充填材配置工程の後で、充填材の周囲に通気性及び通水性を確保しつつ泥の侵入を防止した泥侵入防止材を配置する泥侵入防止材配置工程と、
前記縦穴及び長尺溝を、通気浸透性を確保しつつ埋め戻し、整地する、埋め戻し整地工程と、
土壌通気浸透排水システムを適用する対象領域に整地し、少なくとも植物を含むグランドカバーを配置できるように通気浸透性を確保しつつ土壌を形成する土壌形成工程と、
を備えた、ことにより解決される。
【0038】
このように、本発明の土壌通気浸透排水施工方法によれば、シガラミ構造を有効に利用し、大地における土壌環境全般にわたる雨水浸透機能の再生及び地形崩壊防止が図れ、長期間その機能が維持することのできる土壌通気浸透排水システムを構築することが可能となる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の土壌通気浸透排水システムは、中空部材が、通排気性が確保された不定形の面を備えて構成されているので、中空部材そのものが規則性を重んじる構造物とは異なり、自然界の不規則な環境に整合した状態で、土壌における通気浸透排水が可能となり、大地における土壌環境全般にわたる雨水浸透機能の再生及び地形崩壊防止できる。
【0040】
そして、本発明に伴い、この中空部材の周囲に用いられる各部材自身及びその間隙内に、相対的に一定の空気と水が保たれる循環型保水・保気機能効果を生み出すことが可能となる。つまり、大地環境の機能再生の一つの要素が達成可能となる。
【0041】
また中空部材をシガラミ構造としているので、定型構造物とは異なり、水や空気の流通浸透排水に際して、自然状態に即して邪魔にならず、流通浸透排水を円滑にできるようにすることが可能である。特に、中空部材を構成する部材の総面積に対して、水や空気が通過する開口面の面積、つまり空間の方が同等以上として形成されているので、水や空気の通過が円滑にできるとともに、土砂や小石による目詰まりが少なく、メンテナンスが容易である。そしてシガラミ構造となっているので、空気或いは水の量が所定量の時に、空気と水が渦流を成して円滑に抜け易いる構造とすることが可能となる。つまり、大地環境の機能再生の他の要素が達成可能となる。
【0042】
また中空部材の外周には、空隙が多数形成されて、この空隙を通して水、空気が通気浸透排水することができ、間隙を構成する材料と前記間隙の面積比率を、間隙を構成する材料の総面積≦間隙の総面積としているので、部材の面積に阻止される土砂や小石や枝葉による目詰まりが少なく、メンテナンスが容易である。
そして立穴に配置された中空部材と長尺溝に配置された中空部材が連結され、土壌通気浸透排水システムを適用する対象領域の土壌中に一定の領域に亘って配置されることにより、土壌通気浸透排水システムを適用する対象領域における雨水等に対して、通気浸透排水性が確保された不定形の面を備えた中空部材により、十分な土壌通気浸透排水が確保できる。
【0043】
そして、シガラミ構造からなる構造物が、各々不定形形状となっているので、人工的な構造と異なり、土壌通気浸透排水に関する自然の作用に適合するようにできる。そしてこのシガラミ構造は、往復運動と回転運動の合成の結果生まれるヤタラ構造としてさらに特定できる。本明聖書で、「ヤタラ構造」は、規律・秩序・節度のなく、むちゃくちゃな状態の構造でありながら、全体として、自然界と馴染む構造を指すものとしている。
また、しがらみ、ヤタラ構造を利用したグレーチング蓋を用いると、グレーチング蓋による表面排水を行い、中空部材への風の通りやすい性質を利用して、風圧を調整し緩和する、つまり水脈ライン上の風の流れを促すことが可能となる。
上記のように、井桁構造によれば、グレーチング蓋の下で、井桁構造を応用し、グレーチング枠との立体的な構造で、風圧を調整できる。
【0044】
中空部材の周囲に乾留により得られる炭化物を含む充填材を配置しているので、乾留により得られる炭化物の持つ水、空気の浄化力及び土壌環境の親和性により通気・通水性を有する充填材周囲の土壌の植物繁茂環境を改善し、植物の繁茂を促進し、土壌中に植物の根が広がることにより土中の水脈機能が相対的に活性化する。そして、乾留により得られる炭化物は長期間にわたり水、空気の浄化力を保持するため、長期間その機能が維持される土壌通気浸透排水システムとすることができる。さらに、中空部材中に回収される水、空気が浄化された状態で回収されるため、後処理が簡単になると同時に自然の生態系機能も相対的に活性化することになる。
【0045】
泥侵入防止材を用いると、充填材の間隙への泥の侵入による充填材及び中空部材への目詰まりを防止し、長期間の使用に耐える土壌通気浸透排水システムとすることができる。本発明では、中空部材を構成する部材の総面積に対して、水や空気が流通する開口面の面積の方が大きく形成されているので、中空部材自体の目詰まりは少ないものの、中空部材と配置位置の土壌との間で、通気性及び通水性を阻害することを予防することができる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1及び
図2は土壌通気浸透排水システムの実施形態の一部分を説明する模式的断面、
図3は
図1のWの位置を説明する概略拡大図、
図4(a)〜(f)は中空部材、グレーチング蓋等の構成を担う部材の一例を示す概略平面図、
図5(a)、(b)は、長尺溝に配置される中空部材の一例を示す説明図、
図6は立穴に配置される中空部材の概略図で、(a)は単体、(b)は長尺溝に配置される中空部材との連結を説明する概略斜視図、
図7は土壌通気浸透排水施工方法の立穴形成工程及び長尺溝形成工程を示す図、
図8は立穴及び長尺溝に炭などを敷き、中空部材を配置するときの説明図、
図9は立穴及び長尺溝に中空部材を配置し、グレーチング蓋を配置するときの説明図、
図10は中空部材を長尺溝に配置して固定するときの状態の説明図、
図11は充填材配置工程の後に、泥侵入防止材を配置し、グレーチング蓋を配置した状態を示す説明図、
図12は泥侵入防止材配置工程の説明図、
図13は埋戻し工程の説明図、
図14は土壌形成工程の説明図、
図15は中空部材を長尺溝から地表に出した状態の説明図、
図16は土壌通気浸透排水システムの部分断面を説明するイメージ図、
図17は立穴に単体で中空部材を配置した状態の概略断面を示す説明図、
図18は
図17の埋戻し工程の説明図、
図19は
図17の土壌形成工程の説明図、
図20は土壌通気浸透排水システムを適用した一例を示す説明図、
図21は土壌通気浸透排水システムを適用した一例の概略断を示す説明図、
図22は
図17〜
図19で示す土壌通気浸透排水システムを適用した一例を示す説明図、
図23は
図17〜
図19で示す土壌通気浸透排水システムを適用した他の例を示す説明図である。
なお、
図24〜
図93は、本発明を補足するものであり、より具体的な内容を示したものである。
【0048】
以下実施態様における部材等は、部材を構成する材料のもつ形、質、重さのそれぞれのオリジナル性質にあいまった多様性を考慮することによって、より相乗的目詰まり解消機能等を生み出せるように構成できる。つまり、多様性(例えば3種以上)をセットで用いられることにより、それぞれ単体で配置される以上の相乗的効果機能が生み出されるものである。
【0049】
シガラミ構造の説明(ここでの定義)として、●不定形構造の中でも、いわゆる宇宙エネルギーの一つとも言える渦流エネルギーによって、空気と水の流れの圧力により回転運動と往復運動が合成された結果生み出される構造、●波紋状、らせん状の空気と水の流体エネルギーの上下・左右の立体的蛇行運動によって生み出された構造。よって、材のある程度の構造上の条件を特定できる。
【0050】
(三様)材の三種:(1)形、(2)質、(3)重さ
三種三様の組み合わせは、多様性を基準に、実証法的に実用化していく。対象領域の自然状態である水量含めた集水量及び人の土地利用含めたその場の土圧等を考慮して このシステムの規模特定を実用化する。
対象領域(場)の三種:(1)地形、質、重さ(土圧)※人為条件である人の土地利用も含む
【0051】
本発明におけるシガラミ構造とは、不定形構造の中でも、いわゆる宇宙エネルギーの一つとも言える渦流エネルギーによって、空気と水の流れの圧力により回転運動と往復運動が合成された結果生み出される構造。または、波紋状、らせん状の空気と水の流体エネルギーの上下・左右の立体的蛇行運動によって生み出された構造である。
よって、材のある程度の構造上の条件を特定できる。
シガラミ構造を生み出すために、単一ではなく多様性が必要であるが、それは三種三様を基準にした組み合わせによっておおよそ多様性を実現できる。まず、材を形と質と重さの三種から、それぞれに対して、三様を組み合わせる。形の三様は例えば大・中・小、重さの三様は軽〜重のうち三種類など。
その三種三様の組み合わせは、多様性を基準に、実証法的に実用化していく。
対象領域の自然状態である水量含めた集水量及び人為条件である人の土地利用も含めたその場の土圧等を考慮して対象領域(場)の地形、質、重さ(土圧)の三種に注目しながら、このシステムの規模特定を実用化する。
【0052】
一般に、土地造成や大型の人工構造物の建設等により土壌の通水性と通気性が減少し、植物の繁 茂環境が悪化した敷地や、公園、緑地等の現在植物繁茂環境が良好な敷地において、本発明に係る土壌通気浸透排水システムが、土壌の保水及び保気性の向上、通気性及び通水性の改善、維持を目的として適用されるものである。そして、地下水を涵養することにより、水害の軽減・地球温暖化の防止などといった働きを果たすことが可能であり、雨水を資源として有効活用することができる。
【0053】
図1は、本発明の土壌通気浸透排水システムSを適用する対象領域に、縦方向の立穴Hに配設された中空部材10と、この中空部材10と長尺溝M(横方向)に配設された長尺の中空部材Pとが連結された状態を示すものである。
地盤改良に用いられる土壌通気浸透排水システムSを適用する対象領域(例えば
図20)において、土壌Dの所定位置と所定間隔で、立穴Hを掘削する。立穴Hの径、深さ、間隔、地形は、土壌Dの通水性、通気性、耐圧、保水・保気、泥こしの各機能状態による悪化の程度等の土壌環境に応じて選択される。
【0054】
このとき、立穴Hに連続して、長尺の中空部材P(
図5(a)(b)参照)を配置する長尺溝(通路)Mを掘削する(
図7参照)。この長尺溝(通路)Mは、所謂やたら掘りにより、底面は平らにさらうのではなく、左右交互にクサビ状の凹凸が形成されるようになる。そして溝は緩やかな蛇行曲線の溝となるように掘ると好適であるが、ある程度の幅で掘削されていれば、この幅において、長尺の中空部材Pを直線状でなく配置できるので、直線状の溝であってもよい。
長尺の中空部材Pは、空気や水の通排気性が確保されたシガラミ構造からなる構造物で、本例ではコルゲート管のような部材で、周囲面は縦、横、斜めの直線又は曲線の少なくとも一つ以上の部材で構成される不定形の面を有して構成され、フレキシブルなものとなっている。
【0055】
図1の例では、立穴に配置される中空部材10と長尺の中空部材Pを接続しているが、中空部材10に水が相対的等速―水量、水圧、土圧に応じたその場の流速(等速)で、円滑に流れるように長尺の中空部材Pも相対的に考慮した勾配を付けて、長尺溝Mを掘削する。このとき、逆流しないように、長尺溝Mの深さを決定するが、
図21で示すように、排水できる層に厚みが出来るように立穴に配置される中空部材10内の水面より高い位置に、長尺の中空部材Pの底が位置するように行う。
【0056】
なお本例において長尺の中空部材Pは、外周面が不特定面で構成されたコルゲート管のような長尺部材(パイプ状)を用いている。長尺部材(パイプ状)の径は80〜100mmのもので、より機能的に言うならば、らせん曲線の組合せによるメッシュ構造で、施設時に曲げることができるように構成されている。
【0057】
本例における中空部材10と中空部材Pの接続は、
図2(b)で示すように、中空部材10の中心から外れた位置で対向するように連結されると、中空部材Pからの流れが、中空部材10内で渦様の流れとなり円滑に流通する。また、中空部材10と中空部材Pの上下方向の接続位置は、
図2(a)で示すように、高い位置側の中空部材Pを中空部材10の高い位置で連結し、低い位置側の中空部材Pを中空部材10の低い位置で連結している。
【0058】
図3は
図1のWの位置を説明する概略拡大図であり、地ならしとグランドカバーの部分を示す断面図である。表層5cm〜20cmを掘削した土の上(いちばん表面)に「チップと炭」(粗腐葉土、炭)の層G1及びG2をグランドカバーGとした例である。このグランドカバーGの下側には、土が、ほぐれて堆積している層G3となっている。
【0059】
また
図1で示すように、立穴Hの底部には泥浸入防止のため透水性の軽量な砂等の敷砂20や砂利、砕石、植物枝葉を設置する。
敷砂20が設置された立穴Hの底部に、充填材60を配置する。そして敷砂20は泥浸入防止のため、透水性の軽量の砂等から構成され、そして敷砂20の次に充填材60を配置する。この充填材60は炭、軽石、砂等を混ぜたものを用いる。
そして、充填材60の上部に、泥浸入防止材70を配置する。この泥浸入防止材70は、伐採した樹木の枝や粗朶(そだ)などで構成されている。し、さらに複数の捨てコンクリート30を配置する。
この捨てコンクリート30が固化する前に、外周に通水性、通気性を確保された中空部材10を、その下端が捨てコンクリート30やその他支持部材で適宜の固化により固定されるように設置する。中空部材10を構成する径は、立穴Hの径より小さく、好ましくは約半分または3分の2程度の範囲(相対選択とする)とすると好適である。なお、符号80は埋戻し土壌、符号90は芝生等の植栽である。
【0060】
中空部材10(中空部材P)の材質としては、 コンクリート、樹脂、金属製等どのようなものでも良いが、好ましくは有機材料、例えば木等の天然素材が最も好ましく、中空部材10の重量により周囲土壌を圧密しない軽量で耐圧性の材料が望ましい。
そして、中空部材10(中空部材P)は、例えば
図4の(a)〜(f)で示すように、通排気性が確保され不定形の面からなる部材11を複数接合して構成されており、シガラミ構造として形成されている。
【0061】
本実施形態のシガラミ構造は、不定形の柵状の枠材12で形成されている。不定形の柵状の枠材12は、
図4の(a)〜(f)では平面で描かれているが、立体的に配置されて、不定形の面からなる部材11を構成することができる。また井桁構造によれば、グレーチング蓋の下で、井桁構造を応用し、グレーチング枠との立体的な構造とすることが可能である。
なお、符号13は枠材12で形成される開口面である。また枠材12には、所定位置に切れ目14が形成され、枠材12に加わる圧力が大きい場合には変形してして。円滑に流れるようになっている。
【0062】
そして、本例では、中空部材10(中空部材P)を構成する部材(枠材)12の総面積に対して、水や空気が流通する開口面(枠材12間の開口部:間隙)13の面積の方が同等以上で形成されている。つまり、間隙13を構成する柵状の枠体(枠材)12と間隙13による面積比率を、間隙13を構成する材料の総面積≦間隙の総面積とし、間隙13から、水と空気が土壌浸透気水脈として等加速度運動で、渦流となって流通する。
【0063】
そして、中空部材10(中空部材P)の底部と、立穴H及び中空部材10との環状空間に通気性、通水性の高い充填材60を充填する。通気性、通水性の高い充填材60としては、乾留により得られた炭化物を主材料とし、それに軽石、砂、又は砕いた炭化物等を混ぜたものとし、充填材60を含めた構築に関する全体重量を軽量にし、その重量により土壌を圧密するのを防止する。乾留により得られる炭化物としては、木炭、竹炭等である。乾留により得られる炭化物は、様々な大きさの細孔が存在し、ポーラスな構造であるため、その表面積が非常に大きく水、空気の浄化能力が非常に大きい。さらに、圧密状態における通気、通水、保気、保水機能が非常に高い。
【0064】
そのため、周囲土壌中から有機ガス等を含む空気や、有害な物質が溶け込んだ水が充填材60中に流入しても、炭化物が有機ガス、有害物質を吸収し浄化する機能を持ち、充填材60中に有機ガスや有害物質が滞留するのを防止し、通気性、透水性を中期期間長期間維持できる。乾留により得られる炭化物の細孔中の空気や水が程よく循環すると、有機ガス、有害物質を分解するバクテリアが自然発生し、その効果かがより一層発揮される。なお、これらのバクテリアを予め付着させておくと、その効果が相乗的に期待できる。なお、上記充填材以外に、その場における土壌そのものが、団粒構造を保つ範囲において使用されることも有効である。
【0065】
浸透雨水が中空部材10(中空部材P)の周辺に浸透してきた場合、雨水の動きの前に土壌内から空気が押し出されてくる。この空気が、雨水の水圧で押し出されてきた時、円滑に中空部材10の中及びその周辺に移動してくれないと、その後から押し出されてくる雨水が、空気の抵抗を受けて集水が弱くなることになる。よって、開口面が大なり小なりの複数の間隙(孔)などで、確保されていることで様々な水圧に伴う空気圧を抜くことが可能となる。
【0066】
図1で示すように、立穴に配置される中空部材10には、通水性、通気性が確保されたフレキシブルな長尺の中空部材(パイプ状)Pが連結され、この長尺の中空部材Pは土壌Dに形成された通路(長尺溝M)に配置される。長尺の中空部材Pは周囲の土壌Dの圧力に耐えるもの(圧力でつぶれないもの)であれば、網目の円筒体ではなく、空気と水の渦流モーメントに沿った構造で、流線形、波紋状、らせん形等の合成された構造で形成されている。
つまり、定型的な規則だった構成ではなく、特定なものと定めず、手当たり次第な様子の構造、いわゆる、やたら構造で形成することができる。これにより長尺の中空部材P自体が目詰まりすることがなく、通気性及び通水性に優れているものとなる。
【0067】
上述の実施態様では、中空部材10として、シガラミ構造のものを説明したが、通気性及び通水性、即ち通気浸透排水性が確保された不定形の面で構成された中空部材10、例えば外形部を形成する外面を備え、外面は、長さや幅の異なる部材であって、縦、横、斜めの直線又は曲線の少なくとも一つ以上の部材で不規則に組み込まれた不定形の組込み部材10aを用いて、この組込み部材10aの間で形成された間隙13とで構成するようにすることができる。このとき、間隙13を構成する材料(組込み部材10a)と間隙13の面積比率を、間隙13を構成する材料(組込み部材10a)の総面積≦間隙13の総面積で構成すると好適である。
【0068】
立穴に配置される不定形の立体構造物である中空部材10の上面は、解放面となっており、この上面の解放面を覆うようにグレーチング蓋40が配設されている。
グレーチング蓋40は、前述の中空部材10(中空部材P)の材質と同様で、その形状は
図4(a)〜(f)で示すように、中空部材10の空気と水の渦流に沿った構造で、流線形、波紋状、らせん形等の合成された構造、上記したシガラミ構造や、いわゆるやたら構造で構成されている。グレーチング蓋40の材質は鉄(亜鉛メッキ)、ステンレス、アルミニウム、FRP製、木材等の天然素材などが用いられる。
【0069】
つまり、グレーチング蓋40の平面視形状は、
図4(a)〜(f)で示すような、長さ等が異なる不定形からなる部材を組み合わせたもの、長さ等が異なる部材を組み合わせたもの、長さ等が異なる外周辺からなる部材を組み合わせ楕円形・二等辺三角形・不等辺三角形となるようにしたもので、中空部材10の上面の解放面の形状に合わせて形成したもの等、多面体の構造となるように構成されている。
なお、部材の角部15は、流線形状にして、水、空気、その他の流通を阻害する流動物が、引っかからないような形状をしている。
さらに、図示はしないが、長さ等が異なる外周辺からなる各枠部材を組み合わせたもので中空部材10の上面の形状に合わせて不等辺五角形となるようにしたものも用いることができる。
【0070】
一般に、「雨水浸透枡」は、地表の雨水を効率的に土中へ浸透させるため、枡の底は砂利など水が土に浸透しやすい状態とし、地表に降り注いだ雨水を枡の中で一時的に貯蓄させ、徐々に地中へと浸透させてゆく。雨水浸透枡の設置により不飽和の地層や帯水層まで雨水が到達することが可能となり、十分な水量が供給されることによって湧水泉を復活させることに繋がる。更に、一度土の中にしみ込んだ雨水はゆっくりと時間をかけて河川へと到達するため、大量の水が一気に流入するために起こる都市型水害を緩和する効果がある。つまり、自然の天然水脈における、浸透分散機能にならう設備が構成されることが重要である。ここでは、間接的な対応として、流域機能の再生・改善を図るため、土壌の団粒化として、土壌層の均等化、植物根層の再生安定化、土壌層の通気・通水機能として土壌層の保水・保気機能の再生、土壌層の耐圧機能の再生、気象機能の再生を図ることが重要である。
【0071】
そこで、本発明に係る中空部材10を雨水浸透枡(住宅地などに降った雨水を地面へと浸透させることのできる設備)として、利用し、浸透の速度を緩やかにすることができるため、設備一つ一つが巨大である必要はない。多くの場所で少量ずつ浸透させて処理できるよう広範囲に分散させて設置することにより、その効果をよく発揮する。このため、雨水浸透枡は個別住宅での使用に適した、設置・管理が容易で小型かつ安価なものとなっている。
【0072】
中空部材10の上面をグレーチング蓋40で覆うが、立穴及び長尺の溝上部は、基本的に埋戻さず、やむおえない場合は、ふさいだ機能を他の場で代替できるようにして、抜く必要がある。なお相対的には均等分配を行う。さらに、土壌通気浸透排水システムを適用する対象領域に整地、植物等を配置できるように充填材60などを配置する。この場合も、上述と同様に基本的に埋戻さないで土壌80を形成する。また、上記通気性、通水性の高い充填材60としては、主材料としての乾留により得られた炭化物、天然素材などに軽石、砂等を混ぜたものとし、全体重量を軽量に、その重量により土壌を圧密するのを防止し、それぞれの目地、相互通気・通水機能を確保する。乾留により得られる炭化物としては、木炭、竹炭等であり、少なくとも2種以上の材料で、上述のやたら構造としたものであることが好ましい。
【0073】
中空部材10の周囲に配置される充填材60は、通気性及び通水性を確保しつつ、泥の浸入を防止する泥浸入防止材70を配置する。泥浸入防止材70としては、伐採した 樹木の枝や粗朶を配置してもよい。泥浸入防止材70の選択は、周囲土壌中に含まれる泥成分の量等に応じて適宜選択する。充填材60の周囲に泥浸入防止材70を配置することにより、充填材60の間隙に泥が浸入しないので、充填材60、中空部材10の開口部の目詰まりが防止、上述のようなやたら構造を構成することで確保できる。
要するに、充填材60を充填した中空部材10と立穴Hについて、埋戻しをしないで、これらの環状空間の上部に薄い土壌層を形成し、芝等を植生して生きた植物の根で表土を濾過する構造とすることができる。
【0074】
乾留により得られる炭化物は、土壌に対する環境親和性に優れているので、長期間の使用により炭化物が粉炭状態になっても周囲土壌の植物繁茂環境を向上させる。周囲土壌に植物が繁茂することにより、植物の根が土壌中に張り巡らされ、土壌の通気性、通水性をより向上させる。このとき、水脈ライン上における上記の構造は、目詰まりを起こしやすいため、ある間隔で天穴構造をもって地上部に空気圧を抜くように構成されている。上述のように、中空部材10と溝Mとの間隙に通気性、通水性の高い充填材60を充填している。
【0075】
上記中空部材10について説明しているが、長尺の中空部材(パイプ状)についても、同様に施工することができる。これは、中空部材Pを長尺溝Mに沿って横方向に配置すると、暗渠排水などとして活用することができる。このとき、所定間隔で中空部材10と長尺の中空部材Pとを接合するなどができ、長尺の中空部材Pと接合する場合には、所定位置に長尺の中空部材Pより大きめの中空部材10が所定間隔・位置で配置されるので、ある程度多めの雨水にも対応することが可能となり、ゲリラ豪雨などのように、短時間で大量の雨水にも対応可能に、構成することもできる。
【0076】
本例において、立穴に配置された中空部材10の概略のサイズは、
図6(a)で示すように、上端側の径が250mm〜300mmで、下端側(底面側)の径が100mm〜150mmの尻すぼみ形状となっており、深さ(高さ)は250mm〜350mmのものとなっている。
【0077】
立穴に配置された中空部材10と、長尺溝に配置された中空部材Pとの連結は、立穴に配置された中空部材10の網目のうち、中空部材10の中央から外れた位置をカット(切断)して連結穴15を形成する。本例では中空部材の下端側(底面側)より少し高い位置で中空部材10の中央から外れた位置と、高さ方向の中央位置で中空部材10の幅方向の径の中央から外れた位置に、二か所連結穴15を形成する。
この連結穴15に、長尺溝に配置された中空部材Pを差し込むことによって行う。このとき、長尺溝に配置された長尺の中空部材Pの端部が、立穴に配置された中空部材10に対して、下方に向けて連結する。
これにより、長尺溝に配置された長尺の中空部材Pからの水、空気の流れが、立穴に配置された中空部材10に入るときに、渦状の流れとなって、円滑に流通するようになる。
【0078】
次に、土地盤改良に用いられる土壌通気浸透排水施工方法について、図に基づいて説明する。なお、
図7乃至
図21は、各工程を示している。
図7は土壌通気浸透排水施工方法の立穴形成工程及び長尺溝形成工程を示す図であり、立穴形成工程及び長尺溝形成工程を、連結できるように形成した例を示している。対象領域の所定位置に少なくとも一つの立穴Hを形成する立穴形成工程を行う。この時、同時に或いは別途、対象領域の所定領域に長尺溝を形成する長尺溝形成工程を行う。
長尺溝M(通路)は所定の幅の溝で掘削することができるが、この場合には長尺溝Mの幅で、長尺の中空部材Pを、直線状ではなく、ある程度蛇行したように配置することができる。
そして、中空部材Pは
図10で示すように、固定部材17(例えば、長尺のピン等で構成された留め具)により、中空部材Pの端側で、長尺溝Mの底の土壌に突き刺し、固定できるように構成したいる。中空部材Pは三次元的に曲がりを入れて、固定部材17は、中空部材Pの幅方向(径方向)の両端に千鳥状に打つ。このとき固定部材17は、中空部材Pの中を流れる空気、水等を阻害しないように、図で示すように斜めに取り付け、固定する。なお、固定部材17は、中空部材Pの所定間隔毎に、中空部材Pの左右交互で固定している。また本例では、固定部材17として、長尺のピンを用いているが、中空部材10(中空部材P)の材質などを用いることもできる。
本例は、立穴Hから所定方向に延びる長尺溝M(通路)を同時に連結して形成した例であるが、立穴形成工程及び長尺溝形成工程は別々に形成し、それぞれ単独で形成することができる。
【0079】
図8及び
図9は中空部材10及び中空部材Pの配置工程を示し、
図8は立穴及び長尺溝に炭などを敷き、中空部材10及び中空部材Pを土壌中に配置する工程(この時の固定の仕方も、植物の根がそれぞれの場の土壌に張力を効かせながら食い付くように、土中に侵入するような固定を工夫するとよい。)、
図9は立穴及び長尺溝に中空部材10、Pを配置し、グレーチング蓋40を配置するときの説明図、
図10は中空部材を長尺溝に配置して固定するときの状態の説明図である。
【0080】
図11は、充填材配置工程の後に、泥侵入防止材を配置し、グレーチング蓋を配置した状態を示す説明図である。
図12は、泥侵入防止材配置工程の説明図であり、炭化物を含む充填材60を配置する充填材配置工程である。
泥侵入防止材の配置は、流線形に柵(シガラ)む構造とし、水や空気の流下方向と枝刺しの向きが、対向するようになって配置させる。これにより、泥こしが行われる。
【0081】
図13は埋戻し工程の説明図である。この埋め戻し工程も、渦流方向に沿って、流線形、回転形、波紋状、らせん状に力を加えながら、整地し、埋め戻し施工を行う工程である。
【0082】
図14は土壌形成工程の説明図である。
【0083】
図15は中空部材を長尺溝から地表に出した状態の説明図である。
【0084】
図16は土壌通気浸透排水システムの部分断面を説明するイメージ図である。
【0085】
図17は立穴に単体で中空部材を配置した状態の概略断面を示す説明図である。
図18は
図17の埋戻し工程の説明図である。
図19は
図17の土壌形成工程の説明図である。
【0086】
図20は土壌通気浸透排水システムを適用した一例を示す説明図である。
【0087】
図21は土壌通気浸透排水システムを適用した一例の概略断を示す説明図である。
【0088】
図22は
図17〜
図19で示す土壌通気浸透排水システムを適用した一例を示す説明図である。
【0089】
図23は
図17〜
図19で示す土壌通気浸透排水システムを適用した他の例を示す説明図である。
【0090】
以下、参考までに、本発明について述べる。
健全な大地があること、それを元に「すべての生き物たち」が健全さを取り戻すこと。それが、あらゆる産業の復興に必要なのであり、今ほど「大地の再生」が求められている時代はない。
健全な空気と水の流れを取り戻すことから始まるのであり、生き物たち――とくに植物たちと足並みを合わせ、その力を最大限に生かしていくことが大切。
【0091】
ここでは、次に示すように
●空気視点を取り戻す、という観点から、
1)大地の疲弊、そのサインと解決法、2)その場にあるものを使う、3)やりすぎない、脈は直線や直角を嫌う、4)小さな水切りが与える変化、5)火を燃やす、6)炭の効用と枝葉のフィルター、7)メンテナンスと風の草刈り
●地上部の空気通し改善、という観点から、
1)風の流れを作る、そのために草を刈る
2)風の草刈り1(草を味方にする高刈り・撫で刈り)
3)風の草刈り2(風の抜け道をつくりブロック・カマボコ状に)
4)風の草刈り3(エンジンカッターの使い方)
5)つる植物、ススキ
6)低潅木の風の剪定
7)樹木の伐採法
8)伐採枝、物の置き方
●水切りと水脈の観点から
1)表層の水切り改善
2)コルゲート管と有機資材
3)埋め戻し・地ならし
4)グランドカバー・水まきと風まき
5)点穴
6)水脈メンテナンス
7)抵抗柵(杭の打ち方)
8)水路・沢の管理
9)人工水路の管理
10)U 字溝の処理
2-7 ブロワーと水やり(a)ブロワー清掃、b)水やり)
2-8 重機の使用法
について、説明する。
【0092】
空気視点を取り戻す(1章 総則)
1. 大地の疲弊、そのサインと解決法
近代土木のコンクリートやアスファルトによって地中の空気の動きが止められ、水はけが悪くなり土壌が腐敗して植物が育ちにくくなりました。便利さを優先するあまり、空気や水の流れを保ちながら生物環境を豊かにし、浄化機能を持っていた池や湿地や土や石積みの水路などが、埋め立てや暗渠化、コンクリート三面張り水路となり、消えていきました。
その結果、雨の日は地面に雨水が浸透せず「水たまり」ができるようになりました。水たまりができるのは地面が詰まっているサインです。底には泥だまりができ、乾けばホコリを立てる。泥だまりが厚い堆積を繰り返せば、ヘドロ化して有機ガスを発生させ
る。そのドブのような臭いは人だけが不快なのではなく、周囲の植物を弱らせます。ヤブ化は大地と植物の疲弊のサインなのです。
【0093】
植物が弱れば根っこが細根を出せず、植物自体が地面の空気通しをする力がますます弱まります。この負のスパイラルに陥っている場所が、現代は都会から田舎までかなりの面積を覆っていのです。
当然ながら地下水は涵かんよう養されず、大雨のときのオーバーフロー水(それは泥アクを大量に含む)だけが川や湖に流れ込む、ということになります。地球温暖化の原因は、CO2 の増加やヒートアイランド現象だけではありません。この現代土木構造物による遮断と泥アクによる「地中の空気や水の流れの詰まり」も大きいのです。また洪水の頻発もその原因は異常豪雨だけでなく、流域全体の浸透機能の弱まりに起因しているのです。
【0094】
水たまりができるのは地面の空気穴が泥の膜によって塞がれているからです。移植ゴテで表層5cmを引っ掻いて水たまりの水を排水溝に誘導してやればよいのです。水は移動するだけでなく縦方向にも浸透します。すると裸地にも草が生えてきます。地中にタネがあるのに発芽しないのは、土の中の空気が動かないからです。泥アクが消えると明るくなり、空気感が変わります。草が生え、苔の色がよくなります。その溝には炭と枝葉を入れ、周囲には粗腐葉土やチップのグランドカバーで仕上げるのが「大地の再生」のやり方です。
【0095】
既にコンクリート構造物に変わった場所は、現代的なアレンジを施して同じ機能を回復させます。コンクリートが悪いのではない、現代土木に空気視点がなく、その構造が閉鎖的に使われることが悪いのです(新たなコンクリート構造物を開発する必要があり
ます)。
現代の里山には有機資材が溢れており、風通しの手入れをするだけでその材料が簡単に入手できます。屋敷周りの植物の剪定だけでもかなり枝葉が出るものです。剪定によって風通しをよくする(水脈の上の風通しはとくに重要)わけですが、同時に「大地の再生」の水脈整備に使われる有機資材が簡単に手に入るのです。また、スギ・ヒノキの荒廃人工林が蔓延しているため、とくに崩壊地などでは長丸太が入手しやすく、杭や土留め柵として良い素材となります。
【0096】
便利な暮らしと現代土木によって浸透水が奪われ、雨水の多くは暗渠やU 字溝に集められ、直接川へ流れるようになりました。浸透水がなければ河川や湖水の湧き水も激減し、水は浄化されず、淀んで石にも泥アクがつくようになります。放置された農地や山林もまた水脈を詰まらせて、グライ化(※1)した土から有害なガスを放出させています。「大地の再生」でこれを改善・克服すれば植物の根が大地を耕し始め、再生作業に味方してくれるようになります。また姿も穏やかな成長となり、植物たちは互いに棲み分けを始めてコンパクトになり自然に風通しが蘇よみがえるのです。
【0097】
私たちが現在目にしているほとんどの植物空間は、実は疲弊した植物たちの断末魔の姿なのです。かといって根元からばっさり切って見栄えを優先するような作業をすると、風通しや陽当たりが激変し、植物たちは大慌てでまた強根を出し、ササやツル植物に覆われるという繰り返しになってしまいます。たとえばブヨやヤブ蚊が多いのは大地が詰まっている証拠で、詰まっているからササ類が苦しくて根を伸ばし、それで暴れてヤブになっているのです。
部分的に刈ることで穏やかな風みちを作り、等速に流れるような、浸透しやすい溝を掘ってつないでやる。風や水が走り過ぎるなら緩衝帯を作る。そうすることで大地は守られ、詰まっていた土中の空気が動き出し、微生物の活動が活性化し、農林水産業の核になるベースが豊かに再生していきます。それだけではなく、建物も風化しにくくなり、人の健康も守られます。逆に水と空気の流れが悪くなる・滞ると植物がダメージを受け、ひいては土砂崩壊など災害を誘発します。
【0098】
「大地の再生」を通して、流域に安全で生産性の高い環境を速やかに実現していくこと、これが子供たちの未来に残す私たちの大きな責務です。
※1:グライ化……地中に酸素がなくなり還元状態になることで主に青灰色に粘土化し、メタン、硫化水素などに起因する腐敗臭(ドブ臭)のあるガスを出す土
【0099】
2. その場にあるものを使う
現在の土木工事はスクラップ・アンド・ビルドを繰り返してきました。災害現場でさえ、崩れた土砂や流木を大移動し、そこに前と同じような土木構造物を、いっそう強固に(ということはまた空気を詰まらせる形で)作ろうとします。災害が起きるのは大地が詰まりや疲弊を解消するために動いたと見るべきで、解放後の形はいわば大地の新たな答えであり造形なのです。ならばその地形を生かして土木工事を再構成するべきで、とくに初期の仮復旧は災害で出た石・土・丸太・枝など現地素材を最大限に活用したいものです。
庭の再生などもできるだけあるものを用いて風合いを出していく。そのようなやり方が現代では(そして今後も)むしろ主流になるのであり、運搬処理費用が軽減され、施主のみならず地域にも喜ばれます。
【0100】
3. やりすぎない、脈は直線や直角を嫌う
途方にくれるような耕作放棄地を再生したいとき、全部のヤブを徹底して刈り払う必要はなく、何本か風道を開けることから始めます。そして風がほ程よく流れるように、田畑の中の雑草は腰の高さで刈る。石垣の下部はきれいに刈り払って、水路があればその上を風が流れるようにする。風がどういうふうに通り抜けるか全体を考え、作業は常にひかえ目に深追いしないようにする。今日はどのぐらいのエネルギーをかけれるか、その作業量を考えながら、全体のバランスを崩さないようにムラなくつなぐ。1カ所に時間をかけすぎない。
【0101】
これまで里山整備のボランティアの人たちはて徹底的に刈り払うことを部分的に繰り返してきました。しかし、風が通り過ぎるとかえって再生する植物たちはまた暴れ始めるのです。イタチごっこになっていつまで経っても終わりません。むしろ省力的に数本の風みちを空けてやるほうがはるかに合理的なのです。これに水脈整備を加えることで、地中の空気が動き、植物が細根を出し穏やかにコンパクトに姿を変える。つまり、自ら空間を作るようになり、植物が逆に応援してくれるのようになるのです。
【0102】
風や水の流れをデザインするときは直線や直角を避け、蛇行や流線型を目指すようにします。すると風や水は自然に渦流を作りながら動きます。渦ができるとホコリや泥アクが溜まりにくくなり土の団粒化が起きます。団粒化が起きるとホコリが立たず空気が通りやすくなります。本来は「木の根と石が抵抗を作り流れをやさしくする」のですが、直線的な人工構造物がそのリズムを壊すことで詰まりが生じるのです。だから現代の構造物の周囲はメンテナンスが必要になるのです。
【0103】
4. 小さな水切りが与える変化
斜面の変換点には土圧がかかります。また透水性のない構造物で遮断されている場所も同じです。だからその接点に空気抜きとしての水脈溝(通気浸透水脈)を掘ることが効果的です。その溝には伐採枝などを噛み合うように入れると溝が崩れず微生物や菌類の住処にもなります。また補助として有孔管(ポリプロピレン製の「ゴルゲート管」)を入れるとさらに効果的です。溝の曲がりや合流点などにはやや大きめな三角錐の穴(点穴)を点在させると、縦方向にも空気が動き、地下浸透もしやすくなります。
【0104】
小さな水切りが毛細血管ならこの水脈溝は動脈といえます。そしてその脈は沢や河川へ、そして海へとつながっていきます。小さな水切りから始めたこれらの変化は、周囲の山や尾根筋の風や水をも動かす力を持っています。風や水は手をつなぐように一体だからです。満たしたホースの先端を解放すれば、100m 先の水も瞬時に動く、と考えれば解りやすいでしょう。
小さな水切りの溝は、水がないときも大気圧に押された空気がそこを通路として常に動いています。それらが地中の空気に、地上の風に影響を与え続けます。風が変わると植物たちが変化するのがわかります。空間が爽やかに、明るくなるのです。そして鳥や虫たちが祝福するかのように集まり、嬉しそうに飛び回るのです。
【0105】
6. 炭の効用と枝葉のフィルター
地中に空気を通すには、構造物による遮断をなくすことはもちろんですが、地中に有機物があることが重要です。すなわち最も有用なのは生きた植物の細根ですが、もしそこが植物の生えていない裸地であるなら、枝葉などの有機物を漉き込み、表面に木質チップや粗腐葉土などの有機物をグランドカバーとしてかぶせることが有効です。しかしそれらは分解の過程で有機ガスを出し、とくに地中での分解は有機ガスをこもらせるので、ガスを吸着・分解・放散させるために「炭」を抱き合わせます。
【0106】
炭の材料はどんな樹木でもよく、もちろん竹でもかまいません。炭を作る場合は木・竹の種類や伐る時期も問いません。生木や青竹も枯れた竹も使うことができます。また、専門の窯で焼いたような高級な炭の必要はなく、焚き火でできるような熾炭でも十分使えます。
炭は多孔質構造なので糸状菌やバクテリアなどの有用微生物が棲みついて繁殖し、土中の有機物の分解を促して土の団粒化を進め、保水性や浸透性を向上させます。さらに炭自身に豊富なミネラルを含むため、土壌改良効果があります。
ただし炭の微細な穴は泥で詰まりやすい。そのために伐採した植物の枝葉を泥漉こしとして用います。つまり炭と枝葉はお互いに「有機ガスの吸着」「炭の泥漉し」という持ちつ持たれつの関係を作るのです。
【0107】
7. メンテナンスと風の草刈り
地中の枝葉が分解し、炭の泥漉し作用も弱まった頃には、地表に植物が繁茂し始め、地中に張り巡らされた植物の根が空気通しをしてくれるようになります。その頃には構築した水脈溝や点穴は泥で詰まっていることもあるので、定期的にメンテナンスしてその構造を維持していくことも重要です。そして、草が生え出せば「風の草刈り・選定」での管理が必要になります。
草刈りは何のためにするのか? 敷地を見栄え良く整理するためではありません。地表の風を「風の草刈り」でコントロールするためです。敷地全体を均一に程よく風が通るように、草刈りによって風みちの空間づくりをしていくのです。
とくに水脈の上は風の開口部として常に開かれている必要があります。水脈と風の流れが連動することで、周囲の地中全体の空気が動き、有機ガスが抜け、植物が元気になって細根を出すようになります。すると植物たちの成長が落ち着き、樹木がしっかりと育つようになると、木の根が浸透水脈や抵抗柵の役割をするようになり、自然の雨風の手入も手伝って、その後の管理はずっと楽になっていくのです。
【0108】
2-2 地上部の空気通し改善
1)風の流れを作る、そのために草を刈る
風が通らないと有機ガスが停滞し、植物が弱る。風通しがよくなると植物も穏やかになり枝もコンパクトになる。徒長した花芽は思い切って刈ったほうがあとに出る脇芽にきれいな花が咲く。
【0109】
2)風の草刈り1(草を味方にする高刈り・撫で刈り)
草が風で揺れる場所・曲がる場所で刈る。いわゆる「高刈り・撫なで刈り」をする。再生するとき分岐がたくさん出て、地中には細根が発達する。再生も遅くなるので地際で刈るより作業量はずっと少なくなる。
道具はのこガマやナイロンコードの刈払機でちぎるように刈る(鋭利な切り口よりも再生スピードが遅くなり、そのぶん栄養が脇芽や3番手に向かいやすい)。
【0110】
3)風の草刈り2(風の抜け道をつくりブロック・カマボコ状に)
高刈り・撫なで刈りするだけでなく、全体がブロック状に別れるように風の抜け道をいくつか作る(そこだけは地際から刈る)。そして側面はカマボコ状に整えると風が滑らかに均等に流れ、草の中に風が入りやすい。
樹木の根元周りと畝溝、農道・作業道だけは低く(足のくるぶしくらいの高さ)刈る。草丈に触れるような垂れた下枝があれば剪定して風通しをよくしておく。
【0111】
2-3 水切りと水脈
1)表層の水切り改善
基本は水たまりに溝を切って水を流してやること。そして水みちの詰まりの改善である。土が軟らかい所を狙ってやや蛇行させ、「走らない」「淀まない」等速のリズムを保つこと。走れば地形を壊して泥アクを出し、淀めば泥アクが堆積して地下の詰まりを導き有機ガスを発生させる。アクは縦方向にも消えていくので、分散・等速の水流を作ることで浸透が促される。溝の深さは5cm程度でよい。石混じりで草が生えているような地面の場合はやや大きな水切りになるので、三つグワ、唐グワ等での作業になる。その際ただ平滑なU 字溝的な溝を掘るのではなく、V字に左右交互に掘ることで、浸透しやすく渦ができる流れを作ることができる。水脈の上の地上部は草刈りでほどよい風通しを確保する。泥アクが消えると木道なども滑らなくなる。また爽やかな緑が回復していく(たとえばゼニゴケがスギゴケに変化)。
【0112】
2)コルゲート管と有機資材
コルゲート管を入れる水脈の場合は重機のブレーカーで掘削した後、剣スコップで溝(深さ20 〜 30cmほど)を仕上げていくが、その際も平滑なU 字溝的な溝を掘るのではなく、V 字に左右交互に掘る(下図)。
水脈にコルゲート管を入れる場合は溝の中でやや蛇行させて配置する。人工的な流路は直線や直角になりがちだが、適度な凹凸や曲がりを入れてやることで空気や水は渦流で動き、浄化や浸透機能が高まる。「管をくねくねと曲げてやろう」と頭で作るのではなく、コルゲート管の動きにあわせ自然にできる曲線で収める。
コルゲート管は型枠用のセパレーターや竹串などを利用して一定間隔で地面に固定するが、流路を邪魔しないように管の中心を避け、そして千鳥に打つ。
その上に枝や割竹などの有機資材を入れていくが、ただ投げ入れるのではなく、編み込むように・噛み合うように入れていき(これを「しがらみ」という)、上からよく踏み込んでおく。大枝・中枝・小枝をバランスよく入れていく。あるところに大枝が集中したり、小枝ばかりにならないように。その比率は自然の木の幹枝のつき方に準じる。
【0113】
このしがらみ構造で構築すると水脈の機能――構造の強固さ、水脈としてのガイド、渦のでき方、微生物の増加――などが全然ちがってくるので、細心の注意を払う。
そして炭と落ち葉や葉付き枝をかける。葉っぱを置くだけで「しがらみの空間・コルゲート管の孔・炭」それぞれに対してかなりの泥漉し効果があるが、入れ過ぎても詰まってしまう。自然の樹木に付いている枝と葉っぱの比率で全体が収まると詰まらない。
【0114】
3)埋め戻し・地ならし
水脈はただ埋めるのではなく溝の中央部で水と空気のつながりを保ちたいので繊細な感覚が要求される。三つグワを使う場合、溝に向かって掻き下ろすのではなく、逆に上げ気味にして先に石を落としていく(?き上げることで細かい土は落ちず、石だけが転がり落ちる)。石は枝と土斜面の間に入り込み、土圧を支える(三つグワで押し込んでやる)。そのすき間にまた小さな石が載って最後に土がかぶさる、という階層構造ができると、泥漉し効果できてコルゲート管も詰まりにくい。
【0115】
4)グランドカバー・水まきと風まき
水脈周りの地面に仕上げのグランドカバーとして炭や粗腐葉土(チップ)をまく。箕みによる資材のまき方には風のように散らばって広がりをもつ「風まき」と、水が落ちるようにドドッとまく「水まき」がある。グランドカバーには前者を、水脈への投下・埋め戻しのときなどは後者を使い分ける。
【0116】
5)点穴
水脈の変化点には「点穴」と呼ぶ深さ30 〜 40cmほどの穴を掘る。これは縦方向に空気や水を通す役目をし、また雨のときには泥だまりになる。ずっと直線が続く場合も数メートルおきに点穴を作る。
水脈幅よりやや大きく直径を取って逆円錐状に掘って炭を入れ、放射状に枝や竹を入れて土留めと水・空気流のガイドとする。効果を高めるために短く切ったコルゲート管を立てることもある。
傾斜地の果樹園などでは作業道の山側に水脈を作り、谷側に点穴を穿うがつのも効果的である。また元気のない樹木の根周りに小さな点穴を作るのもよい。炭を入れた点穴はマツ枯れ・ナラ枯れに効果が高い。
【0117】
6)水脈のメンテナンス
時が経って埋まってしまった水脈は、三つグワを使って掘り起こしメンテをする。斜面では下から上に、溝に足を入れて掘る。溝をただ真っ直ぐ掘削するのではなく、土から教えられる柔らかいところを掘っていく(多少ジグザグになっていい)。掘削して枝が出て来たら、今度は三つグワの先で押し付けて安定させる。ただ掘ればいいのではない。掘削、開き、押し……という複雑な作業を同時にこなすのだ。これはイノシシがやっている作業とまったく同じである。彼らに習えばいいだけだ。
【0118】
7)抵抗柵(杭の打ち方)
雨水が斜面を一気に流れるような場所には障害物「抵抗柵」をつくり、流速を弱め水を分散・停滞させ、浸透を促す。抵抗柵は自然の川の蛇行に習い、流れに直角に置くのではなくやや斜めに傾ける。
周囲に丸太や枝、竹などがあれば、外部から資材を持ち込む必要はなく、それらを工夫して使っていく。それらを杭で止めれば流れを誘導する抵抗柵ができる。その際、2本の杭は同じ側に打たず互い違いに打つ。そのほうが植物の根と同じように、どの方向にも働く。そして強く打ちすぎない。ちょうどいい硬さの加減で止めておく。植物の根も地中にガチガチに入っていくことはなく必ず隙間がある。大地に対して締めすぎない、わずかなゆるみがあってよい。
横棒の隙間には草と石をおいて間をふさぎ、杭には番線でしばる。そして杭の出すぎた部分をノコで切る。雨風が通って安定する自然さで作り終える。「雨降って地固まる」……最後は降った雨が整地する。
【0119】
9)人工水路の管理
すでにコンクリートで固められてしまった三面張りの水路などは、中の土砂や落ち葉をすべてさらい上げることはせず、落ち葉や腐葉土の適当な堆積を残して。クワで蛇行した筋みちをつけてやる。さらに両脇に枝葉の有機物を追加して、石で重みをかぶせて動かないように止める。つまりコンクリート水路の中に新たな自然水路を「入れ子」のように作る。
水路の外側はコンクリートと地面の境界を少し掘ってやり、所々に点穴を作ってやる。この溝にも雨のときは水が流れるので、できるなら下流側のどこかでコンクリートの壁の天端を欠いて水路に落ちるようにしてやるとよい。その際、「天端」に尖った部分を作らないようにする。空気や水が滑らかに通るような曲線を描くように、自然がやったような作業の風合いを出すのが大事。
【0120】
10)U 字溝の処理
コンクリートのU 字溝は撤去して石積み水路にするか通気・通水できる新たな構造物に変える。できなければ取り急ぎ底面に1 〜 1.5m のピッチでブレーカーで穴を開けるとよい。水を地中に浸透させ、地中の空気を抜くという効果がある。常に通水がある場合は水分過多にならないように小さめに開ける。ふだん流れのないU 字溝には炭をまき、竹の枝葉などを敷いて石の重しを置くと泥漉しと浸透の効果が高まる。
【0121】
1)ブロワー清掃
物の配置や片付けを終えた後、ブロワー清掃することで片付けたすべての空間に風とが行き渡っているかを確認することができる。空間を最終的に仕上げる重要な仕事でもある。三つグワ、ケンスコ、レーキ(表層整形)、さらに熊手、竹ぼうき、手ぼうき(表層均し)、そして最終的にブロワー清掃。すべて深さに応じたエネルギーを水と風に習った作業として使う道具であり、それぞれの道具の手応えを常に感じ取ることが大切。ブロワーはうまく使えば手仕事の3倍のスピードで仕事ができ、しかもずっときれいになる。
現場では泥が層になって溜まっているようなところを見つけてホコリを飛ばしていく。汚れだまりの「点」が広がって「線」になっている(なるような)ところを見つける。全部やる必要はなく、サッと時間をかけないで次元を同じにしてやる。それだけで現場の作業は円滑に進み、場も痛まない。
【0122】
2)水やり
水やりもブロワーに同じで、均等に水が分かれ地面に浸透していかねばならないし、ダメならそこに不具合を発見できる。水まきは風と水を土の中に通す作業で、「息のできる水まき」と「息をつまらせる水まき」がある。水まきは植物の治療の最重要な処方である。
枕木などの構造物の上もただ漫然とかけるのではなく、テンションをかけて谷に泥を落とすイメージで水をまく。谷には空気が通っているから落ちた泥を団粒化してくれる。
弱っている木には柔らかくかける(泥水が出ないように)
どこまで自分の距離で水かけできるか範囲を常に把握する。
縁石のキワなどは空気が通るように、片手にドライバーを持って地面に突き刺し、すき間をあけながらまく。
散水ノズルは均等に散布されるものがよいが、慣れれば直接ホースに親指を当てて調整しながらまくこともできる。
【0123】
以下、添付図面に即して説明する。
図24は、通気浸透水脈 基本イメージ図であり、
植栽土木
水脈地形の仕上げとして埋戻し造形整地の時、地形の安定と機能促進の手立てとして、植栽を当てがい、有機物のグランドカバーを施すと、より安定した有機的水脈環境が保たれる。
※水脈ラインの中空部材は、水脈の相対的規模に応じた材として、竹・丸太・大枝・中枝等の植物有機材や、人工パイプ等もそれぞれしがらませ(柵ませ)水脈の中心軸を造作する。
※さらにこの中空部材の中心軸の柵構造は、らせん状に数種類の多様性で柵むことで、より機能が高まるものと考えられる。
よって、中空部材の材質は、植物有機材に限らず、線状構造のものであれば、人工資材としてのプラスチック他多様性が可能である。
植栽、雨、空気(風)、粗枝、丸太杭、杭、竹杭等
植物の地中に根を張っている状態と同じように土圧を支える耐圧機能を狙う。
(縦方向の耐圧柵み構造)
※上部立穴としての主に縦方向の通気浸透機能を促進したり、保全の機能を狙う。
※左記、立穴的構造体(柵構造A-A’断面部)は、不等間隔であり、それらはあたかも流れの中心軸が木の幹に対して各大枝が自然的に分配されているように配置される(脈の構造として不等間隔)※右記、平面略図参照。そして、そのリズムは地形の急峻さや土壌の硬さに応じて密になる。
※参照:流木がまるごと水脈に流され、水圧、土圧によって、柵構造に組み込まれていくイメージ。
【0124】
図25は、渦流昨日は定形(のようで、であって)。不定形リズムを説明するものである。
固い地面
土が固いときはこの型もありうる
タコつぼ型
(1)穴の中に炭を入れ、竹や枝を柵み(しがらみ)構造に組みながら大・中・小の枝を不定期に絡ませる。
柵み
ただの放射線状
(2)その上に刈り草や木の葉を巻くように収める。または枝はを柵みに組みながら被せる。
(3)周囲を軽く埋め戻す(完成)
完成後の断面図
肩部分をグレゆるめる(その場の固さ、締まり、具合によって調整)
コルゲート管を立てるときは竹杭などで支えをつくることも考慮。
※注意←強く締めすぎないこと
【0125】
図26は、水脈埋戻しを説明するものである。
施工前
×溝に直接埋め戻すと先に土が落ちて詰まる
施工中
〇横下記で往復運動の整地。先に大きな石や枝が落ちる。
施工後
断面図 結果的に水脈が詰まりにくい階層構造になる 元の盛土面
水と重たい空気は下方へ、軽い水蒸気と空気は上方へ対流
カマボコ型流線形に
途中クワの背で側面を叩き締める(水締め加減で)
【0126】
図27は、
断面図
結果的に水脈が詰まりにくい階層構造になる 元の盛土面
カマボコ型流線形に
水と重たい空気は下方へ、軽い水蒸気と空気は上方へ対流
【0127】
図28は説明図
溝を埋めるのではなく、溝の中央部で水と空気のつながりを保ちたいので繊細な施工が要求される。三つグワを使う場合、溝に向かってかき下ろすのではなく、掻き上げることで細かい土は落ちず、石だけが転げ落ちる。石は枝と土斜面の間に入り込み、土圧を支える。
図2.3-9 三つグワの動かし方
〇横かき カマボコ型地形で流線形状に!
地ならししてカマボコ状に
大きな石からや土の中の植物有機材(根・枝・草等が水に流されるように)から先に落ちるので詰まりにくい。
・・・ドカバー・水まきと風まき
・・・りの地面に仕上げのグランドカバーとして炭や粗腐葉土(チップ)をまく。箕・・・材のまき方には風のように散らばって広がりをもつ「風まき」と、水が落ちる・・・ドッとまく「水まき」がある。グランドカバーには前者を、水脈への投下・埋・・・ときなどは後者を使い分ける。
図2.3-10
風まき 高目に両手で横振り・縦振り等の振動を加えて空気に乗せていく
水まき 仮目に振りながら水に習ったように流しまく。空気まきより多目の量となる
土は圧縮すると詰まって空気を通さなくなる
炭や自身・・・持ってい・・・も空気を・・・
粗腐葉土・チップ 炭が上△ 粗腐葉土・チップ〇
炭がない場合は縦に空気が通るように整地する
炭は泥で詰まるので粗腐葉土・チップをセ・・・トに使うと泥漉(こ)しになる(時として混ぜて使用)
5)点穴
水脈の変化点には「点穴」と呼ぶ深さ30〜40cmほどの穴を掘る。※土相の状態によって異なる
空気や水を通す役目をし、また雨のときには泥だまりになる。水脈には数メートルおきに点穴を作る。
水脈幅よりやや大きく直径を取って逆円錐状に掘って炭を入れ、放射状に溝を形成して土留めと水・空気流のガイドとする。
図2.3-12 点穴の作り方
上段左から (断面)〇
上段真ん中 タコつぼ型※必ずしも×土相の状態によってはこの形もあり得る
固い場合など
上段右 コルゲート管を立・・・きは竹杭で支えを
下段左から (上から)水脈溝に作るときは溝よりはやや大きく深く作る
斜めに下り 斜めに上る
下段真ん中 水と空気の作る柵(しがら)み構造の木組み
(1)穴の中に炭を入れ、竹や枝を放射状に置く
(2)刈り草や木の葉を巻くように収める
(3)周囲を・・・
【0128】
図29は説明図
元気のない樹木の根周りに小さな点穴を作るのもよい。炭を入れた点穴は・・・ラ枯れに効果が高い。
図2.3-13 果樹園の水脈と点穴
断面図 (左から)点穴 作業道 斜面変換点 溝(コルゲート管) 土圧 地中の空気と水の流れ 浸透分解される 作業道 斜面変換点 土圧
平面図 (左から)抵抗柵:抵抗柵によって弱められた空気と水の水脈は等連化する。横方向の水脈と縦方向の水脈が透過性を回復して均等分配され循環型となる
地表の水の流れ 点穴 溝(コルゲート管)
メンテナンス
・・・って埋まってしまった水脈は。三つグワを・・・起こしメンテをする。斜面からでは下から上に、・・・れて掘る。溝をただまっすぐ掘削するので・・・から教えられる柔らかいところを掘ってい・・・グザグになっていい)。掘削して枝が出て・・・度は三つグワの先で押し付けて安定させる。掘削、開き、押し……と・・・作業を同時にこなすのだ。これはイノシシ・・・る作業とまったく同じである。彼らに習え・・・だ。
図2.3-14 水脈メンテのフォーム
水脈の上に足を置き、下流から上流に向かって掘り起こす
雨水が斜面を一気に流れるような場所には障害物「抵抗柵」をつくり、流・・・とともに、水を分散・停滞させ、浸透を少しでも促す。抵抗柵は自然の川の蛇・・・流れに直角に置くのではなくやや斜めに傾ける。
周囲に丸太や枝、竹などがあれば、外部から資材を持ち込む必要はなく、・・・杭は同じ側に打たず互い違いに打つ。そのほうが植物の根と同じように、その・・・働く。そして強く打ちすぎない。ちょうどいい硬さの加減で止めておく。植物・・・中にガチガチにはいっていくことはなく必ず隙間がある。大地に対して締めす・・・ずかなゆるみがあってよい。
横棒の隙間には草と石をおいて間をふさぎ、杭には番線でしばる。そして・・・た部分をノコで切る。雨風が通って安定する自然さで作り終える。「雨降って・・・……最後は降った雨が整地する。
図2.3-15 抵抗柵の作り方(杭の打ち方)
杭は強く打ちすぎない(∵杭の周辺の土相に空気と水の締めフチ遮断が全くないため)
杭は同じ側に打・・・違いに打つ
(1)番線を横木の下に通す
(2)シノでねじって締め上げる
(3)余分な杭頭と番線をカット
細い杭 太い杭(角材や小丸太でもよい) 水の流れ
地面とのすき間に刈草・竹枝葉・・・入れると、ほどよく空気が通り水の勢いが弱まっていく
【0129】
図30は説明図
施工前
登山道の水切り 霧溝が浅くても幅広にすれば水量は同じ
施工後
出口をS字で終らせる 〇
90°で終らせるとアクがたまる ×
※水切りの角度 抵抗のつけ見合い は地形の状態と地形の質(土質及びその場の状態(固さ・やわらかさ具合)によって決まる
出口を深く切り過ぎない(水流で土が削られる)
【0130】
図31は説明図
図2.3-12 点穴の作り方
上段左から (断面)〇
上段真ん中 タコつぼ型※必ずしも×土相の状態によってはこの形もあり得る
固い場合など
上段右 コルゲート管を立・・・きは竹杭で支えを
下段左から (上から)水脈溝に作るときは溝よりはやや大きく深く作る
斜めに下り 斜めに上る
下段真ん中 水と空気の作る柵(しがら)み構造の木組み
(1)穴の中に炭を入れ、竹や枝を放射状に置く
(2)刈り草や木の葉を巻くように収める
(3)周囲を・・・
【0131】
図32は説明図
図19左上の内容で、
・・・た小さな石が載って行き、最後に土で被覆される、という階層・・・効果ができてコルゲート管も詰まりにくい。
図2.3-9 三つグワの動かし方
×
〇 横かき→かまぼこ型地形で流線形状に!
地ならししてカマボコ状に 大きな石や土の中の植物有機材(根・枝・草等が水に流されるように)から先に落ちるので詰まりにくい
【0132】
図33は説明図
見立てのポイント・施工手法
地上部の風通し、泥アクの回避・・・
高木樹勢の・・・退
根拭一体の通気
通水不良
ヤブの空気通し
建物のコンクリート基礎による通気・通水不良
カベ、屋根裏の湿気
嫌気性害虫の発生―シロアリ、ムカデ、ヤブカ
既設管(水道・ガス等)斜面変換点
コンクリート水路の壁面の通気・通水・遮断
表層の泥水の発生・水たまりの
配管時の締めつけ、直線的配管
既存物の整理
農地の排水不良と作物不作 あぜ周辺のヤブ化
雑草・雑木の繁茂
グライ土壌の発生
水路や沢の流れの回復 水脈上部の風通し 畝溝の通気 目詰まり・停滞 斜面変換点の詰まり U字溝 土圧 植物枝枯、立枯れ、喰害
斜面のオーバーハング(地形浸食)崩壊
流線形状の風の草刈、・・・宅、整枝
【0133】
図34は説明図
・・・つこと。走れば地形を壊して泥アクを出し、淀めば泥アクが堆積して地下の詰まりを導き有機ガスを発生させる。アクは縦方向にも消えていくので、分散・等速の水流を作ることで浸透が促される。溝の深さは5cm程度で良い。
石混じりで草が生えているような地面の場合はやや大きな水切りになるので、三つ
図2.3-1 移植ゴテで水切り、水たまりの水を流す
低い方
ここから
傾斜地の場合 →水切り 側溝があればそこに落とし込む →仕上げ 枝など チップや粗腐葉土などをまく(グランドカバー)水が流れきったら溝に小枝などを入れておくと溝が崩れず長持ちし、次の雨の時も機能してくれる。人や車がまたぐ場合は溝の上に板などをかけておく
地形改善の後に地表・・・を相対的に枝葉・草等の有機材でグランドカバーを施す
固い地面のときの基本的なフォーム
柔らかい(雨のとき)の彫り上げた土は左官ゴテのようにつかってカマボコ型に均す
【0134】
図35は説明図
コルゲート管と有機資材
コルゲート管を入れる水脈の場合は重機のブレーカーで掘削した後、剣スコップで溝(深さ20〜30cmほど)を仕上げていくが、その際も平滑なU字溝的な溝を掘るのではなく、V字に左右交互に掘る(下図)。
図2.3-4 水脈溝の掘り方
× 直線的でない
△ 部分的、流線形でない
〇 部分と全体が相対的・・・流線形状となる。コマやいのししの渦流掘削
水脈溝を掘ったらまず炭が入る。次にコルゲート管を入れていくが、ただ直線に引き伸ばして入れるのではなく溝の中でやや蛇行させて配置する。人工的な流路は直線や直角になりがちだが、適度な凹凸や曲がりを入れてやることで空気や水や渦流で動き、浄化や浸透機能が高まる。「管をくねくねと曲げてやろう」と頭で作るのではなく、コルゲート管の動きにあわせ自然にできる曲線で収める。
コルゲート管は型枠用のセパレーターや竹串などを利用して一定間隔で地面に固定するが、流路を邪魔しないように管の中心を避け、そして千鳥に打つ。
【0135】
図36は説明図
・・・込むように・噛み合うように入れていき(これを「しがらみ」という)、上からよく踏み込んでおく。大枝、中枝、小枝をバランスよく入れていく。あるところに大枝が集中したり、小枝ばかりにならないように。その比率は自然の木の幹枝のつき方に準じる。
このしがらみ構造で構築すると水脈の機能―構造の強固さ、水脈としてのガイド、渦のでき方、微生物の増加など―が全然ちがってくるので、最新の注意を払う。
図2.3-6 水脈への枝の入れ方
コルゲート管のない場合もある場合も同じ
枝を交互に絡ませて「しがらみ」を作り、上から足で踏む。上に飛び出た枝は切って挿入する
そして炭と落ち葉や葉付き枝をかける。葉っぱを置くだけで「しがらみの空間・コルゲート管の孔・炭」それぞれに対してかなりの泥漉し効果があるが、入れすぎても詰まってしまう。自然の樹木に付いている枝と葉っぱの比率で全体が収まると詰まらない。
【0136】
図37は説明図
・・・てしまう。自然の樹木に付いている枝と葉っぱの比率で全体が収まると詰まらない。
図2.3-7 通気浸透水脈溝の内部構造
側面図
下流 割竹 竹の枝葉
断面図 (上から時計回りに)
ここだけ開いている なだらかなカマボコ状 上にも炭 コルゲート管 炭 割竹 竹の枝葉 埋め戻し土
【0137】
図38は説明図
(1)番線を横木の下に通す
(2)シノでねじって締め上げる
(3)余分な杭頭と番線をカット
細い杭
太めの杭(角材や小丸太でもよい)
水の流れ
地面とのす・・・入れると、水の勢いが・・・
【0138】
図39は説明図
平面図 風が通り始めるとヤブ化が収まり植物がおとなしくなる
⇒けもの道を作るように部分的に風穴を開ける
A-A’ 〇 断面図 腰のあたりで高刈りする
× 風が通り過ぎると植物が暴れ出す
【0139】
図40は説明図
<前述図説の詳細>
中空部材にかかる土圧を軽減するための耐圧機能の軸
埋め戻し整地ライン
溝 地形
水脈施工で溝地形を開いた時の盛り土ライン
※水脈施工の溝や点穴地形を開いた盛り土を、最終的に埋戻し整地をした後、水脈自体に埋戻土及び周囲土圧がかかってくる。この土圧を相対的に軽減することで通気、通水機能が保たれることが重要なポイントになる。
←流方向
点穴(深み)地形 水脈溝 地形
※赤点線は中空部材にかかる(土圧)→に対する耐圧機能の表現であり、この耐圧機能によって⇔(通気・通水機能)が促されることがこの施工の重要なポイントである。
【0140】
図41〜
図74は説明図
2-8 重機の使用法
○重機の選択
○重機の操作
重機とどういう付き合い方をするか、その目的と考え方を大事にみていく。重機は移植ゴテや三つグワの延長であり、テクニックよりも操作する人の気持ちがはるかに重要である。
水脈を掘るときはバケットではなくブレーカーを用いる。水脈はとくに断面の形状が大切なのでバケット直接掘ると直方体型の溝ができてしまい、とくに底の形状がよくない。ブレーカーは先を突き刺してただ直線でなぞるのではなく、左右に振りながら地面を引っ掻く感じで動かしていく。その後に剣スコ部隊にブレーカーによってほぐれた土を掘り出してもらう。硬い地盤が出てきたときも削岩できるブレーカーが有利である。