【解決手段】吸収性物品に用いられ、吸収性物品の着用者の体液を吸収及び保持する吸収体10であって、着用者の肌側に配置される、フラッフパルプを吸収基材として含有する第1の吸収体10Aと、着用者の非肌側に配置される、フラッフパルプを含有しない第2の吸収体10Bとの積層体であり、第2の吸収体10Bは、高吸収性シート15と、高吸収性シート15を包む親水性シート20とを備え、高吸収性シート15は、表面が起毛した起毛面11aを有する基体不織布11と、基体不織布11の起毛面11aの起毛繊維11x間に固着担持された高吸収性ポリマー12とを備え、基体不織布11には、長手方向に延びる開口部16が設けられていること、を特徴とする吸収体10、及び吸収体10を備える吸収性物品1。
前記高吸収性ポリマーがホットメルト接着剤により前記基体不織布の前記起毛面の前記起毛繊維間に固着担持されており、前記起毛面におけるホットメルト接着剤量が10g/m2以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1やその他多くの高吸収性シートは、不織布と高吸収性ポリマーとをホットメルト接着剤を用いて固定するため、肌触りが硬くなることにより着用感が低下し、また、フィット性が得られないため違和感を生ずるという問題があった。また、フラッフパルプと高吸収性ポリマーで構成される従来の吸収体に比べると、高吸収性シートの多くは、不織布に高吸収性ポリマーが接着手段により固定されることにより、高吸収性ポリマーが高密度に存在するため、吸収時間が長くかかり、尿の拡散性に劣るため、吸収性という観点においても十分に満足できるものではなかった。
【0008】
さらに、特許文献2に記載の高吸収性シートでは、上記のような構造を有することにより股間へのフィット性の改善はなされているものの、高吸収性シート特有の肌触りが硬いという点は改善されておらず、着用感について十分に満足できるものではなかった。また、特許文献1に記載の高吸収性シートと同様に吸収性について十分に満足できるものではなかった。
【0009】
以上のように、特許文献1及び特許文献2に記載の吸収体及び該吸収体を用いた吸収性物品は、吸収性及び着用感の双方を十分に満たしたものではなかった。
【0010】
本発明の目的は、吸収性及び着用感の良好な吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、着用者の肌側に配置されるフラッフパルプを吸収基材とする第1の吸収体と、非肌側に配置される所定の高吸収性シートからなる第2の吸収体と、を積層して用いることによって、所望の吸収体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、下記の吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品に係る。
【0012】
(1)吸収性物品に用いられ、前記吸収性物品の着用者の体液を吸収及び保持する吸収体であって、
前記着用者の肌側に配置される、フラッフパルプを吸収基材として含有する第1の吸収体と、
前記着用者の非肌側に配置される、フラッフパルプを含有しない第2の吸収体と、の積層体であり、
前記第2の吸収体は、高吸収性シートと、前記高吸収性シートを包む親水性シートと、を備え、
前記高吸収性シートは、表面が起毛した起毛面を有する基体不織布と、前記基体不織布の前記起毛面の起毛繊維間に固着担持された高吸収性ポリマーと、を備え、
前記基体不織布は、長手方向に延びる開口部が設けられている、ことを特徴とする吸収体。
(2)前記第2の吸収体は、ハンディ圧縮機KES−G5による圧縮エネルギーWCが2.0gf・cm/cm
2以上8.0gf・cm/cm
2以下であり、圧縮回復性RCが35%以上65%以下である、上記(1)の吸収体。
(3)前記基体不織布における前記高吸収性ポリマーの坪量が200g/m
2以上1200g/m
2以下である、上記(1)又は(2)の吸収体。
(4)前記高吸収性ポリマーがホットメルト接着剤により前記基体不織布の前記起毛面の前記起毛繊維間に固着担持されており、前記起毛面におけるホットメルト接着剤量が10g/m
2以下である、上記(1)〜(3)のいずれかの吸収体。
(5)前記基体不織布の前記開口部の幅方向の寸法が1mm以上15mm以下である、上記(1)〜(4)のいずれかの吸収体。
(6)前記基体不織布が複数の前記開口部を幅方向に備える場合、幅方向の間隔が30mm以上120mm以下である、上記(1)〜(5)のいずれかの吸収体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、吸収性及び着用感の良好な吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、吸収性物品の着用とは、体液の吸収前後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態をいう。吸収性物品において、長手方向とは吸収性物品を身体に着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る、図中Yで示す方向であり、幅方向とは長手方向に対して直交する、図中Xで示す方向であり、厚み方向とは各構成部材を積層する、図中Zで示す方向である。肌側面とは、吸収性物品の着用時において、着用者の肌に当接する表面又は肌を臨む表面であり、非肌側面とは、着用者の衣服に接触する表面又は衣服を臨む表面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0016】
<吸収性物品>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態について説明する。
図1は第1実施形態に係る吸収性物品1を示す。
図2は高吸収性シート15を示す。
図3は第2実施形態に係る吸収体10を示す。
図4は第3実施形態に係る吸収体10aを示す。これらの図面は本実施形態の吸収性物品1中の各構成部材の形状や寸法、大小関係等を規定するものではない。
【0017】
本実施形態の吸収性物品1は、ベビー用又は成人用を問わず種々の吸収性物品として使用できるが、代表的には、軽失禁パッド、尿吸収パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等が挙げられる。アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしての吸収性物品1とを組み合わせてもよい。吸収性物品1の、長さ方向の寸法、及び幅方向の寸法はいずれも特に限定されないが、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、及び50mm以上500mm以下の範囲である。吸収性物品1の寸法を前記の範囲に調整することで、種々の用途の吸収性物品が得られる。
【0018】
吸収性物品1は、
図1に示すように、吸収性物品1を着用したときに相対的に肌側に位置する、液透過性のトップシート25と、トップシート25に対向して配置され、吸収性物品1を着用したときに相対的に非肌側に位置する液不透過性のバックシート30と、トップシート25とバックシート30との間に配置された吸収体10と、トップシート25の肌側表面に設けられた一対の立体ギャザー40と、を備える。吸収体10はトップシート25とバックシート30との間に挟まれた構造となり、尿等の体液はトップシート25を通して吸収体10に吸収及び保持される。吸収性物品1の用途やタイプに応じて、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を適宜設けることができる。
【0019】
本実施形態の吸収体10は、トップシート25側(又は肌側)に配置された吸収体10A(第1の吸収体)と、バックシート30側(非肌側)に配置された吸収体10B(第2の吸収体)と、の積層体である。そして、吸収体10Aはフラッフパルプを吸収基材として含有するものであり、吸収体10Bは高吸収性シート15が親水性シート20で包まれたものであり、フラッフパルプを含有しない。高吸収性シート15は、トップシート25を臨む起毛面11aを有する基体不織布11と、基体不織布11の起毛面11aの起毛繊維11x間に固着担持された高吸収性ポリマー12と、を含むものであり、長手方向に延びる開口部16を有する。
【0020】
本実施形態によれば、トップシート25を介して着用者の肌と対向するようにフラッフパルプ吸収体である吸収体10Aが配置され、この部分的な構造は従来の吸収性物品と同様であるものの、吸収体10Aのバックシート30側には、吸収体10Aとは別種の、フラッフパルプ非含有の高吸収性シート15を親水性シート20で包んだ吸収体10Bが積層配置され、さらに高吸収性シート15に、体液吸収性を向上させ得る長手方向に延びる開口部16を設けた、所定の構造を有する吸収性物品1が提供される。なお、吸収体10Aは、後述するように、吸収基材としてのフラッフパルプと共に、吸収成分として例えば高吸収性ポリマーを含むことがある。
【0021】
本実施形態の吸収性物品1によれば、吸収体10Aよりも親水性シート20の方が体液の吸液性が比較的高いことから、トップシート25を介した体液が、吸収体10Aだけでなく、吸収体10Bにも略均等に供給され、吸収体10Aが多くの体液を吸収してその内部の吸収成分である高吸収性ポリマーがゲルブロッキングを起こす頻度が低下し、ゲルブロッキングに伴うごつごつ感が現出し難くなり、吸収体10A中のフラッフパルプが良好な触感を使用中全般にわたって維持し、着用感が向上する。また、吸収体10Bは、高吸収性シート15の周縁部分特に長手方向末端部分まで体液が行き渡り、ゲルブロッキングが起こり難い構造となっており、吸収体10Aも体液を吸収することから、体液を繰り返し吸収することができ、複数回の体液吸収でも良好な拡散性を示し、吸収速度も使用初期の水準に維持される。また、吸収体10Aと吸収体10Bとの積層により、その優れた着用感及び吸収性を維持しつつ、吸収体10全体として薄型化することが可能になり、着用者の身体へのフィット感、他者からの着用の認知性等の観点から、有利である。
【0022】
以下、シート状又は板状の各構成部材について、トップシート25、吸収体10、バックシート30及び立体ギャザー40の順でさらに詳しく説明する。なお、これらの構成部材は、シート状及び板状以外の立体構造を有していてもよい。
【0023】
(トップシート)
トップシート25は、吸収体10に向けて体液を速やかに通過させる液透過性のシート状部材であり、吸収体10を挟んで、バックシート30に対向して配置される。トップシート25は、着用者の肌に当接する場合があることから、柔らかな感触で、肌に刺激を与えないような性質を有する基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性不織布、同種又は異種の親水性不織布の積合体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性不織布は、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いて、エアスルー法、サーマルボンド法、スパンレース法、スパンボンド法等の公知の方法で加工することにより得られる。
【0024】
また、トップシート25には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート25には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0025】
強度、加工性及び液戻り量の観点から、トップシート25の坪量は、15g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。トップシート25の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収体10へと誘導するために必要とされる、吸収体1を覆う形状であればよい。
【0026】
(吸収体)
本実施形態の吸収体10は、
図1〜
図2に示すように、相対的にトップシート25側に配置される第1の吸収体である吸収体10Aと、相対的にバックシート30側に配置される第2の吸収体である吸収体10Bと、の積層体である。
【0027】
本実施形態の吸収体10のうち、吸収体10Bは、圧縮エネルギーWCが2.0gf・cm/cm
2以上8.0gf・cm/cm
2以下の範囲又は2.4gf・cm/cm
2以上6.6gf・cm/cm
2以下の範囲であり、圧縮回復性RCが35%以上65%以下の範囲又は40%以上58%以下の範囲である実施形態を包含する。圧縮エネルギーWCを前述の範囲に調整することで、吸収性物品1のクッション性が一層良好になる。圧縮エネルギーWCは、数値が高いほど圧縮され易いことを意味する。吸収体10の圧縮回復性RCを前述の範囲に調整することで、吸収性物品1に適度な弾力性が付与され、着用感が向上する。圧縮回復性RC(%)は、圧縮に対する弾性を示すもので、数値が高いほど圧縮に対する反発性を有することを意味する。圧縮エネルギーWC及び圧縮回復性RCは、例えば、吸収体10Bに含まれる各構成要素の材質、厚み、坪量、後述する基体不織布11の起毛度等を適宜選択することにより調整できる。
【0028】
(圧縮エネルギーWC及び圧縮回復性RC)
吸収体10Bの圧縮エネルギーWC及び圧縮回復性RCは、例えば、ハンディ圧縮試験機を用いて測定できる。ハンディ圧縮試験機としては、商品名:KES−G5(カトーテック(株)製)等が挙げられる。吸収体10Bの、ハンディ圧縮試験機KES?G5による、圧縮エネルギーWC及び圧縮回復性RCの測定方法は、以下のとおりである。まず、吸収体10Bの着用者股間部に当接する領域から10cm×10cmの試料を切り取って試験台に置き、次いで、面積2cm
2の円形平面をもつ銅製の加圧子を試料上方から、速度0.01cm/秒、最大圧縮応力20gf/cm
2の条件で試料に押し込み圧縮し、データを測定する。得られたデータから、数値処理により圧縮エネルギーWC及び圧縮回復性RCを算出する。
【0029】
本実施形態の吸収体10の平面形状は特に限定されず、例えば、砂時計状、略長方形状(矩形状)、I字状、長円形状、楕円形状、長方形の4角が丸まった角丸四角形等の形状とすることができる。また、本実施形態の吸収体10は、長手方向寸法(又は長手方向最大寸法)及び幅方向寸法‘(又は幅方向最大寸法)は特に限定されず、吸収性物品1の用途や形態等に応じて適宜選択できるが、長手方向寸法は、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、又は150mm以上500mm以下の範囲であり、また、吸収体10の幅方向寸法は、例えば、50mm以上500mm以下の範囲、又は60mm以上400mm以下の範囲である。
【0030】
(吸収体10A)
吸収体10Aは、吸収基材としてのフラッフパルプ(不図示)を含む吸収体であり、好ましくは、吸収基材としてのフラッフパルプと、吸収成分としての高吸収性ポリマー(不図示)と、を含む吸収体である。フラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものが挙げられる。フラッフパルプの坪量は、吸収性能及び肌触りの観点から、その坪量は例えば50g/m
2以上800g/m
2以下の範囲である。本実施形態では、フラッフパルプと共に他の吸収基材を使用することができる。他の吸収基材としては、生理用ナプキンやおむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等が挙げられる。
【0031】
吸収体10Aに使用される高吸水性ポリマー(以下「SAP」ともいう)としては、体液を吸収しかつ逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン−アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量あたりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。SAPは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0032】
高吸収性ポリマーの形態は特に限定されないが、ゲルブロッキング等の発生を抑制する観点から、好ましくは粒子状であり、より好ましくは中位粒子径を有する粒子状である。高吸収性ポリマーの中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は50μm以上550μm以下の範囲である。吸収体10AにおけるSAPの坪量は、吸収性能及び肌触りの観点から、例えば10g/m
2以上500g/m
2以下の範囲であり、吸収体10A中のSAP含有量は例えば吸収体10A全量の15質量%以上50質量%以下の範囲である。
【0033】
吸収体10Aの形態としては、例えば、吸収基材中にSAP粒子を混合分散して形成した積層マットの形態が挙げられる。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体10Aの形状の安定化の目的から、吸収体10Aをキャリアシートに包んでもよい。キャリアシートとしては、例えば、ティシュ、吸収紙や、エアレイド不織布等の親水性不織布が挙げられる。吸収体10Aの形状や各寸法は、吸収体10の形状や各寸法に準じる。
【0034】
(吸収体10B)
吸収体10Bは、高吸収性シート15と、高吸収性シート15をそのバックシート30側面(非肌側面)から包む親水性シート20と、を備える。吸収体10Bの形状や各寸法は、吸収体10の形状や各寸法に準じる。また、吸収体10Bは、吸収体10Aよりも長手方向及び/又は幅方向の各寸法を大きくしてもよい。例えば、吸収体10Aと吸収体10Bとの積層体を上方から観察したときに、吸収体10Bの周縁、特に長手方向の周縁が視認できるようにしてもよい。
【0035】
(高吸収性シート)
本実施形態の高吸収性シート15は、トップシート25を臨む表面が起毛面11aであり、かつ長手方向に延びて幅方向に隣り合う2つの開口部(本実施形態ではスリット)16を有する基体不織布11と、基体不織布11の起毛面11aの起毛繊維11x間に固着担持された高吸収性ポリマー12と、を含む。高吸収性ポリマー12は、例えばホットメルト接着剤により起毛面11aに固着担持される。本実施形態では、基体不織布11は、トップシート25側(又は肌側)面が起毛面11aであり、バックシート30側(又は非肌側)面が非起毛面11bであるが、これに限定されず、吸収性物品1の着用感をさらに向上させる観点等から、バックシート30側面をも起毛面にしてもよい。また、本実施形態の高吸収性シート15は単層であるが、これに限定されず、複数層の高吸収性シート15の積層体を親水性シート20で包んで用いてもよい。
【0036】
(基体不織布)
図1〜
図2に示すように、基体不織布11は、長手方向に延びる開口部16として、基体不織布11を厚み方向に貫通する2本のスリットを有する。2本の開口部16は、長手方向に略平行に延び、かつ幅方向に間隔を空けて設けられている。開口部16は本実施形態のスリットに限定されず、起毛面11a及び/又は非起毛面11bに開口する溝部でもよい。開口部16の本数は本実施形態の2本に限定されず、1本でも、3本以上でもよい。開口部16は本実施形態の長手方向に延びるものに限定されず、幅方向に延びるものや、斜め方向にのびるものでもよい。
【0037】
開口部16の幅方向の寸法は基体不織布11の材質、強度や寸法、起毛面11aの起毛度等に応じて適宜選択されるが、例えば1mm以上15mm以下の範囲である。また、基体不織布11が長手方向に延びる(又は幅方向に隣り合う)複数の開口部16を有するとき、開口部16同士の幅方向の間隔は例えば、30mm以上120mm以下の範囲である。また、開口部16の長手方向の寸法は、例えば、基体不織布11の長手方向の最大寸法に対して50%以上95%以下の範囲である。開口部16の各寸法を前述の範囲から選択することにより、基体不織布11の強度を損なうことなく、基体不織布11の末端、特に長手方向末端まで体液を行き渡らせることができる。
【0038】
また、
図2に示すように、基体不織布11のトップシート25を臨む表面11aは、基体不織布11を構成する繊維11xが起毛した状態である。そのため、不織布本来の嵩高さに加えて、高吸収性シート15に適度な厚みと柔らかさが付与されることにより、適度なクッション性が発生し、着用時の着用感及びフィット感を向上させることができる。また、基体不織布11を上記のように起毛させることにより、基体不織布11の起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12を分散させて固着担持させ得るとともに、高吸収性ポリマー12の周囲に体液の吸収による膨潤が可能な空間を付与することができる。基体不織布11の片側表面11aを起毛させる方法としては、回転ノコ刃により毛羽立たせる方法、ニードルパンチにより毛羽立たせる方法等が挙げられ、インラインでの生産性やコストの観点から回転ノコ刃により毛羽立たせる方法を用いることが好ましい。
【0039】
本実施形態における起毛の状態は特に限定されず、目視で起毛状態が確認できればそれでよいが、より具体的には、基体不織布11の起毛率は5%以上90%以下が好ましく、8%以上80%以下であることがより好ましい。なお、起毛率とは、起毛加工による基体不織布11の厚さの増加率を意味する。例えば、起毛前の基体不織布11の厚さをT1、起毛後の基体不織布11の厚さをT2としたとき、起毛率(%)は、[(T2―T1)/T1]×100で表すことができる。上記厚さは、ハイトゲージ((株)ミツトヨ製)を用いて無荷重下の厚さを測定することで求められる。
【0040】
基体不織布11としては、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の不織布や、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布を積層した複合不織布等が挙げられる。これらの不織布の中でも、嵩を高くする観点等から、エアスルー不織布が好ましい。
【0041】
基体不織布11の厚さは特に限定されないが、着用感及び吸収性能のバランスの観点から、0.3mm以上11.0mm以下の範囲、0.5mm以上5.0mm以下の範囲又は0.5mm以上2.0mm以下の範囲である。また、基体不織布11の坪量は特に限定されないが、例えば、20g/m
2以上200g/m
2以下の範囲、20g/m
2以上160g/m
2以下の範囲、又は20g/m
2以上80g/m
2以下の範囲である。
【0042】
基体不織布11としてエアスルー不織布を用いる場合、エアスルー不織布の坪量が20g/m
2以上200g/m
2以下の範囲であり、厚みが0.3mm以上11.0mm以下の範囲であり、エアスルー不織布を構成する繊維の太さが1.6dtex以上14dtex以下の範囲、1.8dtex以上9.0dtex以下の範囲又は2.0dtex以上6.0dtex以下の範囲である。前述の範囲でエアスルー不織布を構成する繊維の太さを調整することにより、エアスルー不織布の起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12を分散させて固着担持させやすくなり、起毛面11aにおける高吸収性ポリマー12の均一分散性が向上する。
【0043】
(高吸収性ポリマー)
高吸収性ポリマー12としては、吸収体10Aで用いる高吸収性ポリマーと同じものを使用できる。なお、吸収体10Aで用いる高吸収性ポリマーと、吸収体10Bで用いる高吸収性ポリマー12とは、同種のものでも異種のものでもよい。高吸収性ポリマー12の体液吸収性を阻害せず、かつ、着用時の肌触りを損なわないという観点から、起毛面11a全体におけるホットメルト接着剤の量は例えば10g/m
2以下の範囲である。ホットメルト接着剤としては融点が100℃以上180℃以下のものを特に限定なく使用でき、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン系共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン系共重合体等の合成ゴム系ホットメルト接着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法が利用できる。
【0044】
(親水性シート)
図1及び
図3に示す第1実施形態の親水性シート20は、基体不織布11の非起毛面11b、その幅方向両端面、及び基体不織布11の起毛面11aとそれに固着担持された高吸収性ポリマー12の全体、すなわち高吸収性シート15の全体を包み、その幅方向両端がトップシート25と基体不織布11との層間で重なり合うように、内三つ折りされた立体形状を有し、吸収体10Bを構成する。
【0045】
図3に示す第1実施形態において、親水性シート20の重なり合う部分(以下「重なり領域」ともいう)の存在により、吸収体10Bは、重なり領域の存在による着用感、フィット感の低下を起こさず、吸収体10Bの剛性がさらに向上し、体液の吸収能力が向上する。また、体液の拡散速度及び吸収速度がより一層高くなる。さらに、吸収体10Bの強度が一層向上し、体液吸収後に身体から取り外すときの吸収体10Bの破れや破損が一層防止され、また、繰返し吸収回数をさらに多くすることができる。
【0046】
吸収体10Bにおける重なり領域の幅寸法は、例えば、吸収体10Bの幅寸法の5%以上50%以下の範囲である。5%未満では、重なり領域を設けても、体液の拡散速度、及び吸収速度の向上効果が不十分になる傾向がある。また、50%を超えると、体液の拡散速度、及び吸収速度が向上しない一方で吸収体の固さが増して着用感やフィット感が悪くなる傾向がある。
【0047】
図4に示す第2実施形態の親水性シート20は、基体不織布11の非起毛面11b、その幅方向両端面、及び基体不織布11の起毛面11aの幅方向両端部周辺を覆い、その幅方向両端20a、20bが高吸収性シート15とトップシート25との層間で対向するように、内三つ折りされた立体形状を有し、吸収体10Bの変形例である吸収体10Cを構成する(
図4)。第2実施形態では、高吸収性シート15は、基材不織布11の起毛面11aの幅方向中央部を残して、親水性シート20により部分的に包まれている。
前述した第1実施形態及び上述した第2実施形態のように、高吸収性シート15(又は基体不織布11と高吸収性ポリマー12と)の全体又は一部包むことにより、吸収体10Bへの体液の流入性や、高吸収性ポリマー12の基体不織布11からの脱落がより一層防止され、吸収体10B及びその変形例である吸収体10Cの強度も増す。
【0048】
親水性シート20としては、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布等の親水性不織布等が挙げられる。親水性シート20の坪量は、吸収体10Bへの体液流入性の向上等の観点から、例えば、7g/m
2以上45g/m
2以下の範囲である。高吸収性シート15(又は基体不織布11)の非起毛面11bと親水性シート20とを固着する際には、ホットメルト接着剤や熱エンボス加工により固着することが好ましい。
【0049】
<吸収体の製造方法>
吸収体10の製造方法としては、特に制限はないが、以下の方法が一例として挙げられる。まず、フラッフパルプと高吸収性ポリマー等とを用い、公知の方法に従って、吸収体10Aを得る。これとは別に、開口部16を形成した基体不織布11の片側表面を回転ノコ刃又はニードルパンチを用いて、起毛させる。次いで、高吸収性ポリマー12をホットメルト接着剤等により、基体不織布11の起毛面11aの起毛繊維11x間に固着担持させる。その後、基体不織布11の起毛面11a側と親水性シート20とをホットメルト接着剤等で接着し、吸収体10Bを得る。そして、吸収体10Aと吸収体10Bとを積層し、必要に応じてホットメルト接着剤等により一部を接着することにより、吸収体10が得られる。
【0050】
(バックシート)
バックシート30は、吸収体10が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布の積層体である複合不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合フィルム等が挙げられる。
【0051】
強度及び加工性の点から、バックシート30の坪量は、例えば、15g/m
2以上40g/m
2以下の範囲である。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシート30には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート30に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート30に穿孔のためにエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0052】
(立体ギャザー)
また、吸収性物品1は、
図1に示すように、使用者の排泄した体液の横漏れを防止するため、吸収性物品1の長手方向に沿って、トップシート25の肌側面の両側端部に、一対の立体ギャザー40を備えている。吸収性物品1の幅方向における立体ギャザー40の幅方向一端は、バックシート30の肌側面の両側端部付近(又は非肌側面の両側端部付近)に固定され、その幅方向途中部はトップシート25の肌側面の両側端部付近に固定され、その幅方向他端はトップシート25に固定されない自由端40aとなるように、立体ギャザーシートが配される。この自由端40a付近に立体ギャザー用弾性伸縮部材(不図示)を長手方向に沿って設けることで、立体ギャザー40の自由端40aに起立性を付与し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。立体ギャザー40の幅方向一端の固定位置は、例えば、バックシート30の非肌側面の幅方向両端、トップシート25とバックシート30とを部分的又は全体的に接合した袋体の幅方向両端、トップシート25の肌側面の幅方向両端等が挙げられる。なお、本実施形態の吸収性物品1は、立体ギャザーを含まない実施形態をも包含する。
【0053】
立体ギャザー用弾性部材としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が使用され、立体ギャザーシートとしては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は液不透過性の不織布、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布等が使用される。
【0054】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1は、公知の製造方法により製造できるが、例えば、吸収体10をトップシート25とバックシート30との間に配置する工程と、トップシート25とバックシート30とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定する工程と、バックシート30及び/又はトップシート25の所定位置に立体ギャザー40を設置する工程と、を含む製造方法が挙げられる。そして、吸収性物品1が尿取りパッドや軽失禁パッドである場合は、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折りたためばよい。また、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を必要に応じて設けることができる。
【0055】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例】
【0056】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明の実施形態について、より具体的に説明する。
【0057】
(実施例1)
まず、基体不織布としてエアスルー不織布(坪量30g/m
2、幅方向寸法60mm、長手方向寸法300mm)を用意し、エアスルー不織布に
図1に示す開口部(スリット)を成形した。次いで、基体不織布の片側表面を回転ノコ刃で物理的に起毛させ(起毛後厚さ1.2mm、起毛率25%)、高吸収性ポリマーを基体不織布の起毛した部分の繊維間に分散させ(坪量380g/m
2)、ホットメルト接着剤により固着担持させた。さらに、親水性シートとしてエアスルー不織布(幅方向寸法140mm、長手方向寸法300mm、坪量50g/m
2)を用意し、基体不織布の非起毛面側と、ホットメルト接着剤を塗布した親水性シートとを接着した。次に、親水性シートを内三つ折りして、親水性シートの幅方向両端を基体不織布の起毛面の上方で重なり合わせ、重なり領域をホットメルト接着剤で固定し、親水性シートにより、基体不織布の起毛面全体、幅方向両端面、及び非起毛面全体を覆い、
図3に示す構造を有し、バックシート側に配置される吸収体10Bを得た。
【0058】
表1に示す量のフラッフパルプ及び高吸収性ポリマーを用いて、トップシート側に配置される吸収体10Aを作製した。
得られた吸収体10Aと吸収体10Bとを積層し、ホットメルト接着剤により部分的に固着し、実施例1の吸収体10を作製した。得られた吸収体10と、トップシートとしてのエアスルー不織布(坪量20g/m
2)と、バックシートとしての通気性ポリエチレンフィルム(坪量35g/m
2)とを用い、
図1に示す構造を有する吸収体10を備える、実施例1の吸収性物品を作製した。
【0059】
(比較例1)
吸収体10に代えて、吸収体10Aをバックシート側に配置し、吸収体10Bをトップシート側に配置した吸収体14を用いる以外は、実施例1と同様にして、
図5に示す構造を有する、比較例1の吸収性物品2を作製した。
【0060】
(比較例2)
表1に示す量のフラッフパルプ及び高吸収性ポリマーを用いて、吸収体10A1を作製した。吸収体10Bに代えて吸収体10A1を用い、吸収体17を作製した。吸収体10に代えて吸収体17を用いる以外は、実施例1と同様にして、
図6に示す構造を有する、比較例2の吸収性物品3を作製した。
【0061】
(比較例3)
吸収体10Aをバックシート側に配置し、吸収体10A1をトップシート側に配置する以外は、比較例2と同様にして、
図7に示す構造を有する、比較例3の吸収性物品4を作製した。
【0062】
実施例1及び比較例1〜3で得られた各吸収性物品(製品)及び各吸収体について、次のような評価試験を実施した。結果を表1に示す。
(製品厚み)
実施例1及び比較例1〜3の各吸収性物品の厚みを、70gf/cm
2荷重下で測定した。
(総吸収量)
予め重量を測定した実施例1及び比較例1〜3の各吸収体を、生理食塩水に完全に浸かるように5分間浸漬させる。5分後、吸収体を金網の上において30秒水切りをして、吸収後の重量を測定し、吸収前後の重量差を計測することで、総吸収量(g)を測定した。
(繰り返し吸収速度)
底面140×100mm、外径40mm、内径35mm、重量1400gの治具を用いて、荷重下150mlの生理食塩水を10分間隔で3回注水し、3回目の注水分150mlを吸収する時間を測定した。
(液戻り)
繰り返し吸収速度3回測定終了から10分後に、35gf/cm
2の荷重条件で、55mm径のろ紙に1分間で逆戻り吸収した水分量を測定した。
(拡散長さ)
吸収速度3回測定終了後の生理食塩水を吸収した領域の最大長さを測定した。
(着用感、装着から交換まで)
20名のモニターテストを実施し、下記の基準で評価した。
◎:「着用感が良い」が16人以上20人以下のとき
○:「着用感が良い」が11人以上15人以下のとき
△:「着用感が良い」が6人以上10人以下のとき
×:「着用感が良い」がいないか、1人以上5人以下のとき
【0063】
【表1】