【実施例1】
【0015】
図1には、本実施例にかかる圧電センサ100の断面構造が示されている。
圧電センサ100は、内部に圧電素子110,120が上段,下段にそれぞれ設けられた構成となっている。これら圧電素子110,120は、上部カバー130,中間カバー140,下部カバー150,底部カバー160を重ねたもので、外形および内部空間が筒状に構成されている。
【0016】
圧電素子110,120は、例えば、真鍮などによる金属板MP上に圧電体PE1,PE2が形成されている。なお、本実施形態では、公知の圧電スピーカー(圧電マイク)と同様の構成となっており、圧電体PE1,PE2の一方の電極が金属板MPとなっている。すなわち、圧電体PE1の一方の電極はハンダEAに接続されており、他方の電極は金属板MPとなり、これがハンダEBに接続されている。引き出し用のリード線は、ハンダEA,EBに電気的に接続されることで、圧電体PE1の電気信号が出力されるようになっている。なお、ハンダを採用する場合、金属板MPの種類によっては、ハンダの濡れ性のよい銅の被膜等を形成する場合がある。
【0017】
前記圧電素子110,120は、同じ形状としてよい。具体的には、前記第一の圧電体の長さと、幅と、厚さとがそれぞれ前記第二の圧電体の長さと、幅と、厚さと同じ大きさであり、前記第一の圧電素子が有する第1の振動板の厚みとの長さと、幅と、厚さとがそれぞれ前記第二の圧電素子が有するが有する第2の振動板の長さと、幅と、厚さと同じ大きさである、といった具合である。
【0018】
また、底部カバー160には、回路基板CBが設けられており、後述するアンプ112,122などの回路部品が設けられている。ハンダEA,EBには、不図示のリード線が接続されており、回路基板CBに設けられたアンプと電気的に接続されている。なお、回路基板CBは、リード線を介して圧電センサ100外部に設けられた処理装置220(
図2参照)と接続されてもよい。
【0019】
底部カバー160の上面内側には、リング状の係合突起162が設けられている。この契合突起162は、下部カバー150の下端開口部が係合している。下部カバー150の上部は金属板MPの設置領域から外側に向かい幅広に形成された拡径部152が設けられている。この拡径部152の段差154に中間カバー140が設置され、段差154と中間カバー140の間にシーリング156が形成されている。このシーリング156は密着性を高めるためのものである。さらには、この段差154とシーリング156に圧電素子120が挟まれている。圧電素子120の全周にシーリング156が設けられている。中間カバー140の下側は、内側に突出して内周フランジ142が設けられており、この内周フランジ142と前記圧電素子120の周囲との間に、シーリング144の設置領域がある。一方、前記内周フランジ142の上側の段差146には、シーリング148を挟んで圧電素子110が配置されている。
【0020】
中間カバー140の上側には、スペーサ132を介して上部カバー130が設けられている。このスペーサ132によって、上部カバー130と中間カバー140の密閉性を高めている。
【0021】
上部カバー130の上側中央には、導入チューブ134が設けられている。導入チューブ134には空気の通路となるチューブを介して、空気パッドに接続されている。空気パッドが受ける振動による空気圧変化が導入チューブを介して圧電素子110に伝わる。一方、上部カバー130の下側は拡径しており、この拡径部136によって下部カバー150の拡径部152が覆われるようになっている。上部カバー130の拡径部136の先端内側には、突起138が設けられており、これによって、上部カバー130と下部カバー150とが中間カバー140を挟んで気密性よく密着して係合されるようになっている。以上の構成により、圧電センサ100には、導入チューブ134側から、空間102,104,106が順に形成されている。そして、空間102と圧電素子110によって第一の部屋が構成されており、空間104と圧電素子120とによって第二の部屋が構成されている。
【0022】
導入チューブ134から伝わる振動による空気圧変化は、空間102を介して、圧電素子110で受け、その空気圧変化は圧電素子110の裏面から空間104を介して、圧電素子120に伝わる。圧電素子110により伝わる空気圧変化が弱められる。この振動の伝達は機械的な受け渡しのため、細かな振動まで伝えることできる。なお、従来技術で述べたように、圧電体以降の回路処理によって飽和信号が発生すると思われるが、本発明では、圧電素子を複数用いることで、機械的に振動を減衰させるので、飽和信号によって取り除かれてしまった信号までも取り出すことができる。
【0023】
次に、
図2(A)には、上記圧電センサ100を利用する圧力測定装置200が示されている。同図において、測定部210のエアーパッド212の空気圧出力側は、導入チューブ134を介して圧電センサ100の空間102に連通しており、圧電素子110に空気圧変化が伝わるようになっている。それに伴い、圧電体PE1が変形する。そして、圧電素子110が撓むと、空間104に空気圧変化が生じるので、圧電素子110の撓みが空間104を介して圧電素子120に伝わり、圧電体PE2が変形するようになっている。圧電素子110, 120上にそれぞれ設けられた圧電体PE1,PE2では、空気圧の変化が電圧信号に変換され、変換後の信号は、アンプ112,122を介して、処理装置220のゲイン設定部222,232にそれぞれ入力されるようになっている。これらゲイン設定部222,232の出力側は処理部224に接続されており、処理部224には記憶部226や表示部228が接続されている。
【0024】
これらのうち、アンプ112,122は、入力電気信号に対して所定の増幅もしくは減衰を行うためのものである。ゲイン設定部222,232は、入力電気信号に対して増幅もしくは減衰の処理を行うためのもので、そのゲイン調整量は処理部224によって制御されている。処理部224は、前記ゲイン調整の他、入力信号に対する周波数帯域のフィルタリングなどの処理を行う機能を備えている。記憶部226は、制御処理プログラム,各種設定値,測定値などを記憶しており、表示部228は測定結果を表示する。
【0025】
次に、本実施例の全体の動作を説明する。エアーパッド212は、例えばベッドや椅子などに設置され、被験者の生体情報である脈波や呼吸の振動を取得する。エアーパッド212の空気圧変動は導入チューブ134を通じて、圧電センサ100の空間102に空気圧変動として伝わる。すると、空気圧変動によって圧電素子110が撓んで圧電体PE1が変形し、空気圧変動が電圧信号に変換される。一方、圧電素子110の撓みは空間104の空気圧変動となり、これにより圧電素子120が撓んで圧電体PE2が変形し、空気圧変動が電圧信号に変換される。
【0026】
圧電素子110,120からそれぞれ出力された電気信号は、アンプ112,122で増幅または減衰された後、ゲイン設定部222,232でゲイン調整が行われて処理部224に入力される。処理部224では、入力信号に対して、
a,飽和が生じたときはゲインを下げ、飽和が解消したときはゲインを上げる。
b,フィルタリング,ピーク検出,ピークカウントなどの処理を行なって、脈波や呼吸などの必要なデータを得る。
c,測定結果を記憶部226に保存したり、表示部228に表示する。
といった動作が行われる。
【0027】
図3には、前記実施例による測定結果の一例が示されている。同図(A)には、圧電素子110,120の出力信号強度が示されており、横軸は周波数となっている。同図は、アンプ112と122の増幅度と、ゲイン設定部222と232のゲイン設置値を、いずれも同じとした場合の圧電素子110,120の信号を比較して示すもので、強度は異なるものの、周波数特性はほぼ一致している。上段の圧電素子110は、エアーパッド212からの空気圧変動が空間102によって直接影響するのに対し、下段の圧電素子120には圧電素子110と空間104を介して影響するので、上段の圧電素子110のほうが下段の圧電素子120よりも高い信号強度となっている。
【0028】
図3(B)には、圧電素子110,120の出力信号電圧の時間変化の一例が示されている。同図の例では、生体によるエアーパッド212からの空気圧変動が強く、点線で示す上段の圧電素子110は信号が飽和しているが、下段の圧電素子120は飽和していない。このような場合、上段の圧電素子110の出力信号に対しては、処理部224によってゲイン設定部222のゲインが非飽和状態となるように制御される。一方、下段の圧電素子120の信号は飽和していないので、この信号を参照して、脈や呼吸のデータを得ることができる。具体的には、下段の圧電素子120の実線のグラフのうち、周波数の低い変化は呼吸を表し、パルス状の波形は脈を表すので、フィルタリングなどの処理を施すことで両者を分離し、ピーク数をカウントすることで、脈拍数や呼吸数を得ることができる。
【0029】
以上のように、本実施例によれば、圧電素子110,120を設けることとしたので、上段の圧電素子110の出力信号が飽和し、ゲイン調整を行って非飽和の状態となるまでに待ち時間を必要とする場合でも、下段の圧電素子120の出力信号に基づいて測定を継続して行うことができ、更には、全体として測定精度の向上を図ることができる。
【0030】
<他の実施例> なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例では、上段の圧電素子110の信号強度が、下段の圧電素子120の信号強度より大きくなるようにしたが、ゲイン設定部222,232のゲイン調整を行うことで、圧電素子110,120の信号強度が同じ強さとなるようにして、圧電素子110,120の両方の信号を利用して生体情報の測定を行うようにしてもよい。その場合、例えば、それぞれ異なるフィルタ,例えば上段の圧電素子110に対してはBPF(バンドパスフィルタ)を適用して呼吸情報を取得し、下段の圧電素子120に対してはLPF(ローパスフィルタ)を適用して脈情報を取得するといった具合にすれば、異なる目的の信号を精度よく取得することができる。
(2)また、通常時は、信号強度が高い上段の圧電素子110の出力信号を利用して脈や呼吸の測定を行い、強い空気圧変動があって
図3(B)のように信号が飽和したときに、下段の圧電素子120の出力信号を利用して脈や呼吸の測定を行うようにしてもよい。
(3)
図1に示した圧電センサの構造は一例であり、同様の機能を奏するように形状や寸法を適宜設定してよい。
(4)前記実施例では、生体情報である脈や呼吸を測定することとしたが、各種の空気圧変動の測定に適用してよい。
(5)前記実施例では、空気圧の変動を測定することとしたが、空気以外の気体や各種の液体といった流体を使用してもよい。