特開2021-186238(P2021-186238A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2021186238-圧電センサ 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-186238(P2021-186238A)
(43)【公開日】2021年12月13日
(54)【発明の名称】圧電センサ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20211115BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20211115BHJP
   G01L 9/08 20060101ALI20211115BHJP
   G01L 19/06 20060101ALI20211115BHJP
【FI】
   A61B5/11 100
   A61B5/02 310M
   G01L9/08
   G01L19/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-94276(P2020-94276)
(22)【出願日】2020年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090413
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 康稔
(72)【発明者】
【氏名】松田 勲
(72)【発明者】
【氏名】茂木 孝之
【テーマコード(参考)】
2F055
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
2F055AA39
2F055BB20
2F055CC02
2F055DD01
2F055EE23
2F055FF38
2F055GG22
2F055HH08
4C017AA09
4C017AA14
4C017AC03
4C017FF05
4C038VA04
4C038VB32
4C038VB33
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】 防水性の向上を図ることで信頼性を高め、屋外などでも長期間使用することができる圧電センサを提供する。
【解決手段】 ベッドや椅子などに設置されたエアーパッドから、被験者の生体情報である脈波や呼吸の振動の空気振動が、導入チューブ134を通じて、空間202に空気圧変動として伝わる。すると、空気圧変動によって受圧部200が撓んで変形し、空気圧変動が空間102に伝わる。すると、圧電素子110が撓み、空気圧変動が電気信号に変換される。導入チューブ134から水分ないし湿気が入り込んだとすると、それらは空間202内に侵入するが、受圧部200が防水壁として機能するとともに、接着層204にも防水機能があることから、水分は空間202内に留まり、空間102には侵入しない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受圧部と、
前記受圧部のおもて面を内壁として構成する第一の部屋と、
前記第一の部屋に取り付けられた導入口と、
圧電体が少なくとも一方の面に設けられた圧電素子と、
前記受圧部のうら面と、前記圧電素子とをそれぞれ内壁として構成する第二の部屋と、
を有する圧電センサ。
【請求項2】
前記圧電素子は、前記第二の部屋の内壁となるおもて面と、うら面を有し、
前記圧電素子のうら面を内壁として構成する第三の部屋をさらに有する、
請求項1に記載の圧電センサ。
【請求項3】
前記第二の部屋を、前記第一の部屋に対して密閉した請求項1又は2のいずれかに記載の圧電センサ。
【請求項4】
前記受圧部がゴム材料を含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の圧電センサ。
【請求項5】
前記ゴム材料の伸び率が800%〜100%である請求項4に記載の圧電センサ。
【請求項6】
前記ゴム材料の伸び率が1000%〜100%である請求項4に記載の圧電センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を利用して圧力などの検出を行う圧電センサに関し、例えば、脈(脈拍ないし脈波)や呼吸などの生体情報の測定に好適な圧電センサの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々なセンサを用いて、室内環境ないし屋外環境などで人の活動状況をモニタリングしたり、人体のバイタル信号を検出し、精神状態や身体状態をモニタリングしたりすることで、人体の異常を検知して不測の事態を回避するソリューションが普及しつつある。
【0003】
このような生体情報を計測する圧電センサとしては、例えば、下記特許文献1記載の「圧力検出装置および生体情報計測システム」がある。これは、被測定体に生じる微小な圧力変動を高精度に測定することを目的としたもので、圧力検出装置は、圧電素子を壁面の一部とする入力室が設けられており、この入力室内に、導入部から、圧電素子に対して傾斜する方向に向けて空気を導入するようにしたものである。下記特許文献2には「生体情報計測装置」が開示されており、被験者に直接又は間接に接触するように配置され、封入袋によって略密閉された内部の空隙に空気が封入されたエアマットの外表面又は内部に圧力センサを設け、これにより空隙に封入された空気の圧力変動に応じた信号を得て、これから生体情報を得るようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-219341号公報
【特許文献2】特開2005-110969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、工業用途で使用されている圧電センサは、ヘッド部分が金属封止されており、防水対策は十分だが、反面感度が悪く、かつ高速回転するモーターなど高周波機械振動の検出を得意としており、生体情報(バイタル情報)など微弱な低周波振動検出には不向きである。一方、上述した背景技術においては、エアマットの透水性が高いために、防水対策が十分とはいえず、エアマット側から水分が圧電素子側に侵入する恐れがある。湿気が侵入すると、圧電素子や基板の回路が劣化・腐食して故障する原因となり、屋外での使用や、屋内であっても長期間浸水の可能性がある環境での使用は困難である。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、防水性の向上を図ることで信頼性を高め、屋外などでも長期間使用することができる圧電センサを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の圧電センサは、受圧部と、前記受圧部のおもて面を内壁として構成する第一の部屋と、前記第一の部屋に取り付けられた導入口と、圧電体が少なくとも一方の面に設けられた圧電素子と、前記受圧部のうら面と、前記圧電素子とをそれぞれ内壁として構成する第二の部屋と、を有する。主要な形態の一つによれば、前記圧電素子は、前記第二の部屋の内壁となるおもて面と、うら面を有し、前記圧電素子のうら面を内壁として構成する第三の部屋をさらに有する。あるいは、前記第二の部屋を、前記第一の部屋に対して密閉する。
【0008】
他の形態によれば、前記受圧部がゴム材料を含む。更には、前記ゴム材料の伸び率が800%〜100%である。あるいは、前記ゴム材料の伸び率が1000%〜100%である。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測定対象から生ずる流体圧の変動を、受圧部により防水して圧電素子に伝えるようにしたので、防水性が向上して信頼性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例の圧電センサの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1(A)には、本実施例にかかる圧電センサ100の断面構成が示されている。同図において、圧電センサ100は、内部に圧電素子110が設けられた構成となっている。圧電素子110は、上部カバー130及び底部カバー140を重ねたもので、外形及び内部空間が筒状に構成されている。圧電素子110は、例えば、真鍮などによる金属板MP上に圧電体PEが形成されている。
【0013】
なお、本実施形態では、公知の圧電スピーカー(圧電マイク)と同様の構成となっており、圧電体PEの一方の電極が金属板MPとなっている。すなわち、圧電体PEの一方の電極はハンダEAに接続されており、他方の電極は金属板MPとなり、これがハンダEBに接続されている。引き出し用のリード線は、ハンダEA,EBに電気的に接続されることで、圧電体PEの電気信号が出力されるようになっている。なお、ハンダを採用する場合、金属板MPの種類によっては、ハンダの濡れ性のよい銅の被膜等を形成する場合がある。
【0014】
また、底部カバー140には、回路基板CBが設けられており、アンプなどの回路部品が設けられている。ハンダEA,EBには不図示のリード線が接続されており、回路基板CBに設けられたアンプと電気的に接続されている。
【0015】
底部カバー140の上部は拡径しており、この拡径部に段差143が設けられている。そして、この段差143に圧電素子110が配置されている。圧電素子110は、上述した金属板MPが、例えば接着剤145によって前記段差143に固定されている。一方、前記上部カバー130の下部は拡径しており、この拡径部に段差132が設けられている。そして、この段差132と、前記底部カバー140の上端との間に、受圧部200が接着材によって固定されている。これにより、受圧部200と、上部カバー130及び底部カバー140との間に接着層204が形成されている。更に、上部カバー130の上側中央には、被測定体に生じる圧力変動に応じて変化する空気圧が供給される導入チューブ134が設けられている。以上の各部により、圧電センサ100には、導入チューブ134側から、空間202,102,103が順に形成されている。このように、底部カバー140と受圧部200と接着層204によって、圧電素子110は密閉されている。そして、受圧部200と空間202によって第一の部屋が構成されており、圧電素子110と空間102によって第二の部屋が構成されている。
【0016】
次に、上述した受圧部200としては、防水壁として機能することから、透水性が低く、導入チューブ134からの空気圧の振動が良好に圧電素子110に伝達されるような素材が好ましい。防水機能を実現するには、透水性の低い樹脂や金属などを用いてもよいが、圧力変動を伝える受圧機能と防水機能を両立させるには、ゴム材料が好ましい。
【0017】
表1には、受圧部200に好適なゴム材料が示されている。同図に示すゴム材料について受圧部200を試作し、検出感度と100時間の浸水試験を実施したところ、すべて実用上問題がないとの結果が得られた。
【表1】
【0018】
表1において、「伸び」は、「JIS K6251:2010」における切断時伸びに相当する。切断時伸びを求めるための計測手法としては、例えば、
a,「JIS K6251:2010」で規定の通り、引張試験機で試験片が切断するまでの最大引張力及び切断時の引張力を測定する。
b,ダンベル状試験片の場合には,切断時伸びを求めるために,適切な方法によって切断時の標線間距離を測定する。
c,リング状試験片の場合には,切断時伸びを求めるために,切断時のプーリ中心の移動距離となるつかみ具間の距離を測定する。
表1の結果からすると、伸び率が800%〜100%が好ましく、少なくとも1000%〜100%の材料であれば、十分な受圧性を確保することができる。
【0019】
次に、接着層204としては、防水層として機能するのであれば、どのようなものを用いてもよい。例えば、アサヒボンド工業製エポキシ樹脂接着剤「ゴムエース」を用いて、前記表1のゴム材料によって形成した受圧部200を接合し、圧電素子110の検出感度試験と100時間の浸水試験を行ったところ、表1のいずれの材料であっても、実用上問題がないとの結果が得られた。
【0020】
次に、本実施例の全体の作用を説明する。例えば、前記特許文献1のように、ベッドや椅子などに設置されたエアーパッドから、被験者の生体情報である脈波や呼吸の振動の空気振動が、導入チューブ134を通じて、空間202に空気圧変動として伝わる。すると、空気圧変動によって受圧部200が撓んで変形し、空気圧変動が空間102に伝わる。すると、圧電素子110の圧電体PEが撓み、空気圧変動が電気信号に変換される。
【0021】
この場合において、導入チューブ134から水分ないし湿気が入り込んだとすると、それらは空間202内に侵入するが、受圧部200が防水壁として機能するとともに、接着層204にも防水機能があることから、水分は空間202内に留まり、空間102には侵入しない。このため、水分ないし湿気が圧電素子110やその周囲の回路部品に侵入して腐食することを、良好に防止することができる。また、防水性が向上することで、信頼性も高くなり、屋外などで長期間使用することができる。また、受圧部200が弾力性を有することから、外部から導入される空気圧変動は良好に圧電素子110に伝達され、空気圧変動の検出感度も確保される。
【実施例2】
【0022】
次に、図1(B)を参照しながら、本発明の実施例2について説明する。本実施例は、圧電センサ101内に、2つの圧電素子110,120を設けた例である。同図において、圧電センサ101は、内部に圧電素子110,120が上段,下段にそれぞれ設けられた構成となっている。これら圧電素子110,120は、上部カバー130,中間カバー141,下部カバー150,底部カバー160を重ねた筒状の空間内に配置されている。底部カバー160の上面内側には、係合突起162が設けられており、これに下部カバー150の下端開口側が係合している。下部カバー150の上部は拡径して拡径部152が設けられており、この拡径部152の段差154に気密性を高めるためのシーリング156を挟んで圧電素子120が配置されている。
【0023】
圧電素子120上には、中間カバー141が配置されている。中間カバー141の下側は縮径して内周フランジ142が設けられており、この内周フランジ142と前記圧電素子120の周囲との間に、気密性を高めるためのシーリング144が施されている。一方、前記内周フランジ142の上側の段差146には、シーリング148を挟んで圧電素子110が配置されている。中間カバー141の上側は、上述した実施例1と同様の構成となっている。以上の各部により、圧電センサ101には、導入チューブ134側から、空間202,102,104,106が順に形成されている。
【0024】
本実施例によれば、圧電素子110の圧電体PE1撓みは空間104の空気圧変動となり、これにより圧電素子120の圧電体PE2が撓み、空気圧変動が電気信号に変換される。圧電素子110,120からそれぞれ出力された電気信号は、回路基板CBのアンプによる増幅やゲイン調整の後、適宜の周波数帯域フィルタリング処理,ピーク検出,ピークカウントなどの処理を行なって、脈波や呼吸などの必要なデータを得る。
【0025】
本実施例によれば、2つの圧電素子110,120から信号が得られるので、例えば、一方の圧電素子の出力信号が飽和しても、他方の圧電素子の出力信号から必要な情報を得ることができるといった利点がある。
【0026】
<他の実施例> なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)図1に示した圧電センサの構造は一例であり、同様の機能を奏するように形状や寸法を適宜設定してよい。
(2)前記実施例では、生体情報である脈や呼吸を測定することとしたが、各種の空気圧変動の測定に適用してよい。
(3)前記実施例では、空気圧の変動を測定することとしたが、空気以外の気体や各種の液体といった流体を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、測定対象から生ずる流体圧の変動を、受圧部により防水して圧電素子に伝えるようにしたので、防水性が向上して信頼性も高く、屋外などでも長期間使用することができるので、生体情報などの圧電センサとして好適である。
【符号の説明】
【0028】
100,101:圧電センサ
102,103,104,106:空間
110,120:圧電素子
130:上部カバー
132:段差
134:導入チューブ
140:底部カバー
141:中間カバー
142:内周フランジ
143:段差
144:シーリング
145:接着剤
146:段差
148:シーリング
150:下部カバー
152:拡径部
154:段差
156:シーリング
160:底部カバー
162:係合突起
200:受圧部
202:空間
204:接着層
EA,EB:電極
CB:回路基板
MP:金属板
PE:圧電体
図1