【解決手段】排便時期学習予測システムは、大腸の内部から生ずる腸音情報を取得する聴診装置と、大腸の内部に超音波を発生させ、大腸からのエコー信号を検知する超音波検知装置と、前記エコー信号から得られる便情報を特徴量として学習し、排便時期を予測する学習予測装置とを備える排便時期学習予測システムであって、前記超音波検知装置は、前記聴診装置が腸の内部から生じた蠕動音を前記腸音情報として取得したことを契機に、前記エコー信号の検知を開始することを特徴とする。
学習予測装置は前記エコー信号により求められる便の固さに基づく排便の予想時期を事前確率とし、前記エコー信号および聴音情報の少なくともいずれか一方により求められる便情報を適用して逐次ベイズ推定により排便時期を予測する、排便時期学習予測システム。
前記便情報として前記エコー情報および聴音情報の少なくともいずれか一方を数理処理することにより得られる数理処理情報を含む、請求項1または請求項2に記載の排便時期学習予測システム。
【背景技術】
【0002】
高齢者などでは、排泄に不安を抱えるユーザは多く存在する。また、近年、排泄のために定期的に対象者の見回りを行うなど、介護従事者の負担が大きいことが指摘されており、特に頻度の高い排泄の介助などに対する方策など、介護従事者の負担軽減のための技術が求められている。さらに、排泄のために対象者を定期的に起こしてトイレに連れて行くなど、対象者の眠りを妨げてしまうという問題が指摘されている。
【0003】
その一方、「トイレに自分で行きたい」、「介護者に手間をかけさせたくない」などの理由で対象者が一人で無理にトイレに行くことが報告されている。その結果、対象者の転落や落下事故につながることが懸念されている。施設内や家庭内で、このようなことが起こらないような方策が望まれていた。
【0004】
そのような方策として、例えば、特許文献1に記載の排泄予測方法では、被介護者の過去の介護記録を機械学習によって解析し、被介護者の排泄が発生するパターンを学習して、その学習結果から被介護者の排泄時間を予測する方法がとられている。
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、介護記録には、排尿データ、排便データ、水分摂取データ、及び食事データなどの非常に多岐にわたる介護記録に係るデータが必要になるとともに、介護記録を適切にデータ化する必要があった。すなわち、介護記録は介護担当者などが作業により作成するもので、作業量が膨大になるとともに、担当者の癖などによりデータに偏りが生じることでデータの正確性に課題があった。また、排尿データ、排便データ、水分摂取データ、及び食事データなどのデータ群は、排便における人体の状態を直接観察するものではないため、因果関係が弱く、機械学習を行う場合に学習モデルの構築が困難であった。
【0006】
一方で、排便における人体、特に直腸の状態を直接観察する技術として、例えば、特許文献2に記載の診断装置及び診断方法がある。この診断装置および診断方法では、超音波を利用して大腸から得られる超音波エコー信号の情報を用いて、大腸内部の便の状態を評価することが可能となっており、排便における人体の状態を直接観察するため、引用文献1に比較して、因果関係が強く、機械学習を行う場合に学習モデルの構築も容易になる。しかしながら、引用文献2には、排便時期予測において、どのように診断装置及び診断方法を適用するか記載されていない。
【0007】
また、排便時期を予測する技術として、特許文献3に示すように、超音波エコー信号により直腸の太さを検出して排便の時期を予測する排便予測装置及び排便予測方法がある。この排便予測装置及び排便予測方法では、直腸の前壁(腹部側の壁)からの反射波と直腸の後壁(背部側の壁)からの反射波と2つの反射波の時間差から腸の太さを検出し、直腸の太さが排便タイミングであると想定した太さとなったか否かを判定し排便時期を予測する。なお、特許文献3の排便予測装置及び排便予測方法は、腸音から大蠕動運動を判定し、超音波エコー信号を送信する周期を変更するものの、超音波エコー信号を常時発信するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜3においては、それぞれを組み合わせれば、機械学習による排便時期の予測を可能にするものの、排便予測の現実的な解決方法を提案するものではなかった。特に、機械学習においては膨大な量のデータの中から有効なデータを効率的に取得する必要があり、特許文献1〜3を組み合わせたとしてもデータ取得の観点から排便時期予測に関する解決手段を提供するものではなかった。
【0010】
そこで本発明は、それらの課題を解決すべく、データ取得の観点から、有用なデータを効率的に取得し、排便時期予測を実行できる排便時期学習予測システムおよび排便時期学習予測方法を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ここで本発明の発明者が排便時期を予測するためのシステムについて検討したところ、排便において、大腸内の便の状態が、大腸内から生じる腸音と密接に関連することが見いだされた。この知見に基づき、本発明は、以下の特徴を有する。
【0012】
(1)本発明に係る排便時期学習予測システムは、大腸の内部から生ずる腸音情報を取得する聴診装置と、大腸の内部に超音波を発生させ、大腸からのエコー信号を検知する超音波検知装置と、前記エコー信号から得られる便情報を特徴量として学習し、排便時期を予測する学習予測装置とを備える排便時期学習予測システムであって、前記超音波検知装置は、前記聴診装置が腸の内部から生じた蠕動音を前記腸音情報として取得したことを契機に、前記エコー信号の検知を開始することを特徴とする。
【0013】
この排便時期学習予測システムによれば、聴音装置が大腸の内部から生じた蠕動音を腸音情報として取得したことを契機に、便情報の取得を開始するため、蠕動音を生じる前の便情報を取得することがない。これにより、不要な情報を適用されることなく、排便の時期に強い因果関係を有するデータが学習予測に利用されるため、排便時期の学習予測が簡易になるとともに精度が向上する。すなわち、この排便時期学習予測システムでは、有用なデータを効率的に取得し、排便時期予測を実行できる。
【0014】
(2)前記した排便時期学習予測システムにおいて、前記学習予測装置はエコー信号を基に求められる便の固さに基づく排便の予想時期を事前確率とし、エコー信号により求められる便情報を適用して逐次ベイズ推定により排便時期を予測してもよい。
【0015】
そのようにすれば、事前に用意されたエコー信号に基づく便の固さと排便時期の関係を事前確率として、超音波検知装置により検知されるエコー信号および聴診装置により検知される腸音情報の少なくともいずれか一方から求められる便情報を適用した逐次ベイズ推定により、精度の高い排便時期の学習予測が可能となる。また、事前確率とする便情報と排便時期の関係は、排便時期学習予測システムが利用されるほど蓄積されるため、排便時期予測を、さらに高精度に行うことができる。
【0016】
(3)前記した排便時期学習予測システムにおいて、前記便情報として前記エコー情報および聴音情報の少なくともいずれか一方を数理処理することにより得られる数理処理情報を含んでいてもよい。そのようにすれば、既に確立された、数理処置より得られた排便の固さに関する情報を利用して、排便時期の予測が可能になる。これにより、排便時期の予測を高精度に行うことができる。特に、便情報としては、大腸内部の便の状態が、正常便、硬便(直腸性便秘)、ガス蓄積、軟便(弛緩性便秘)、のいずれに該当するかを評価した情報であってもよく、さらに、これら便の評価情報と、腸音情報である蠕動音とを特徴量として機械学習を実行してもよい。
【0017】
(4)前記した排便時期学習予測システムにおいて、前記便情報として前記エコー情報および聴音情報の少なくともいずれか一方から生成される便量情報を含んでいてもよい。そのようにすれば、数理処置より得られた排便の固さに関する情報に加え便の量を示す便量情報を取得し、排便時期の予測に利用することになる。これにより、パラメータとなる便情報が充実するため排便時期予測を、さらに高精度に行うことができる。
【0018】
(5)前記した排便時期学習予測システムは、排便があったことを検出する排便検出装置を備えていてもよい。そのようにすれば、排便があったことを教師データとして教師あり学習を自動的に行うことができる。
【0019】
(6)本発明に係る排便時期学習予測方法は、大腸の内部の状態に応じて生ずる腸音情報を取得する腸音取得ステップと、大腸の内部に超音波を発生させ、大腸からのエコー信号を検知するエコー信号検知ステップと、前記エコー信号検知ステップの後に、エコー信号および聴音情報の少なくともいずれか一方に基づき生成される便情報を特徴量にベイズ推定を実行する学習予測ステップとを含み、前記エコー信号検知ステップは、前記聴診ステップにより前記腸音情報として蠕動音が取得された後に開始されることを特徴とする。
【0020】
この排便時期学習予測方法によれば、聴音装置が大腸の内部から生じた蠕動音を腸音情報として取得したことを契機に、便情報の取得を開始するため、蠕動音を生じる前の便情報を取得することがない。これにより、不要な情報が適用されることなく、排便の時期に強い因果関係を有するデータが学習予測に利用されるため、排便時期の学習予測が簡易になるとともに精度が向上する。
【0021】
(7)さらに、前記学習予測ステップの後に、排便を検出する排便検出ステップを含み、前記排便検出ステップにより排便が検出されなかった場合に、再びエコー信号検知ステップに戻るようにしてもよい。そのようにすれば、エコー信号検知ステップおよび学習予想ステップを繰り返すことになり、逐次ベイズ推定による精度の高い排便時期の学習予測が可能となる。また、事前確率とする便情報と排便時期の関係は、排便時期学習予測システムが利用されるほど蓄積されるため、排便時期予測を、さらに高精度に行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、大腸の状態から直接的に排便の時期を高精度に予測することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<排便時期学習予測システム1について>
図1は本発明の第1の実施形態による排便時期学習予測システム1の全体構成を示す概略図である。
図1に示すとおり、排便時期学習予測システム1は、複数の観察装置10と、複数の通信装置30と、学習予測装置40とを備えている。
【0025】
排便時期学習予測システム1において、少なくとも1つの観察装置10が1つの通信装置30に接続されている。また、複数の通信装置30がネットワークNを介して学習予測装置40に接続されている。なお、1つの観察装置10は、対象者Pの着用する排便捕捉具50に装着されている。
【0026】
図2は、観察装置10、および通信装置30の構成を示すブロック図である。観察装置10は、聴診装置60と、超音波検知装置70と、排便検出装置20と、制御装置80とを備える。
【0027】
聴診装置60は、対象者Pの大腸内から生じる腸音情報を取得する。本実施形態において、腸音情報とは、人体を媒介して振動により伝わる音を電子信号に変換した情報であり、いわゆる可聴域の周波数の周波数帯域を含む。
【0028】
聴診装置60は、対象者Pの大腸内から生じる音を収集し、腸音情報を生成する聴音部61と、聴音部61の生成した腸音情報をフィルタリング等により必要な腸音情報のみ選別する音処理部62とを備える。また、本実施形態において、聴診装置60は、プラス電極63、マイナス電極63、アース電極63の3つ電極63を備え、心電情報を取得する。聴診装置60は心電情報を取得することにより、音処理部62にて心電情報に関連する腸音情報をノイズとして除去することができる。
【0029】
聴音部61は、一般的なダイヤフラム型聴診器のチェストピース部分とほぼ同じ構造とされている。聴音部61には、音を電気信号に変換するマイクロフォンが内蔵されている。聴音部61は、集音した音をマイクロフォンにより電気信号(音信号)に変換して腸音情報として、音処理部62に送信する。聴音部61は、対象者Pの下腹部Pa、特に前方左側(中央から約15cm程度の位置)に略密着するように装着されて、対象者Pの下腹部Paから発せられる音(大腸の蠕動音など)を集音する。
【0030】
音処理部62は、聴音部61から得られた音信号と、電極63から得られた心電情報とを合成処理して、音信号から心音に係る信号をキャンセルし、腸音情報から心音を排除可能とされている。さらに、音処理部62は、超音波検知装置70から発せられる超音波の周波数帯域をフィルタリングして、超音波検知装置70から発生する音を腸音情報から排除するようにしてもよい。音処理部62は、生成した腸音情報を連続的に制御装置80に送信する。また、音処理部62は、聴音部61から得られた音信号に数理処理を行い、便情報を生成してもよい。
【0031】
超音波検知装置70は、大腸の内部に超音波を発生させ、大腸からのエコー信号を検知する。本実施形態において、超音波検知装置70は、対象者Pの大腸内に超音波の波動を送り、その波動の反射である超音波をエコー信号として検知する。具体的には、超音波検知装置70から発せられた超音波が大腸の内部の状態に応じて反射され、その反射波をエコー信号として検知する。
【0032】
超音波検知装置70は、対象者Pの体内に向けて超音波を発生させ、対象者Pの体内で反射した超音波を取得するプローブ部71と、プローブ部71が取得した超音波を電子信号で変換したエコー信号を生成する超音波情報処理部72とを備えている。
【0033】
プローブ部71は、大腸に向けて超音波を発し、体内で反射した超音波を検出し、エコー信号を生成する。プローブ部(超音波発生部)71は、対象者Pの下腹部Pa、特に前方左側に略密着するように装着される(
図1を参照)。プローブ部71は、深部プローブ部と、表在部プローブ部とを備えている。深部プローブ部は、例えば3MHz程度の超音波を使用するものである。表在部プローブ部は、例えば7〜10MHz程度の超音波を使用するものである。
【0034】
超音波検知装置70は、エコー信号に対して数理処理を行い、数理処理情報を便情報として生成する。なお、本実施形態において、数理処理情報とは、エコー信号の伝搬方向の減衰係数に基づく情報、エコー信号を伝搬方向に対して垂直方向に平均処理した情報等を含む。
【0035】
また、超音波情報処理部72は、プローブ部71から得られた超音波信号から、対象者Pの腸内(特に大腸の内部)の状態を可視化した画像情報(超音波画像情報)を便情報としてエコー信号に基づき生成する。なお、本実施形態において、画像情報とは、体内の臓器等が動いている状態を視覚的に観察できる動画情報である。しかし、画像情報は、体内の一瞬の状態を視覚的に観察できる静止画情報であってもよい。
【0036】
さらに、超音波検知装置70は、腸の内部に存在する便の量を示す便量情報を便情報として生成する。なお、本実施形態において、便量情報は、腸の内部を通過する単位時間あたりの便量を、ドップラーにより計測し、積分することで大腸の内部に存在する便を算出してもよい。
【0037】
さらに、超音波情報処理部72は、画像情報、数理処理情報、便量情報を便情報として連続的に制御装置80に送信する。
【0038】
排便検出装置20は、対象者Pの排便があったことを検出する。排便検出装置20は、センサ部21(チップ体)21と、排便送信部22とを備えている。本実施形態の排便検出装置20では、センサ部21に超小型臭いセンサが設けられている。排便検出装置20では、センサ部21が排便の臭いを検知することにより、排便があったことを検出する。センサ部21は、いわゆるおむつである排泄捕捉具50に装着される。便情報送信部22は、排便があったことを示す排便情報を通信装置30に送信する。
【0039】
制御装置80は、いわゆる小型情報処理装置で、制御部81と観察情報送受信部82とを備える。制御部81は、聴診装置60、超音波検知装置70、排便検出装置20および制御装置80自身を制御する。具体的には、聴診装置60、超音波検知装置70および排便検出装置20の起動、停止等の動作や、観察情報送受信部82、排便情報送信部22による情報の送信を制御する。
【0040】
制御部81は、例えば、聴診装置60が蠕動音を聴腸音情報として取得したことを契機として、超音波検知装置70を起動し、エコー情報の検知を開始するよう超音波検知装置70を制御する。また、制御部81は、例えば、排便検出装置20が排便のあったことを検出したことを契機として、聴診装置60および超音波検知装置70が情報の取得を停止するように聴診装置60および超音波検知装置70を制御する。
【0041】
観察情報送受信部82は、制御部81の制御により、聴診装置60、超音波検知装置70から受信した情報、および排便情報送信部22からの情報を通信装置30に連続的または断続的に送信する。なお、制御装置80は、情報記憶部(図示しない)を備えていてもよく、制御部81は、聴診装置60、超音波検知装置70から受信した各情報を情報記憶部に記憶し、制御部81の制御に基づいて必要な情報を観察情報送受信部82から送信するようにしてもよい。
【0042】
通信装置30は、観察装置10と学習予測装置40に介在し、第5世代移動通信システムによりインターネットNを介して観察装置10と学習予測装置40との通信を確立する。これにより、動画データ(映像情報)などを含む便情報であっても、公衆回線によりリアルタイムでスムーズに送信することができる。そのため、WI−FIルーターなどを別途設置することを要さず、観察装置10を学習予測装置40に接続することができる。なお、通信装置30は、近距離無線通信規格に対応した通信方式システム(いわゆる、Bluetooth(登録商標))により観察装置10および排便検出装置20に対して各情報を送受信する。
【0043】
また、通信装置30には発光部(図示なし)が設けられており、照明装置として機能する。これにより、病院、福祉施設などの施設または一般家庭において、照明装置である通信装置30は、施設内のいたるところに概略等距離に配置され、病院内の腸音情報、便情報等を収集し、学習予測装置に送信することができる。なお、発光部は、従来よく知られるLED発光部であってもよい。
【0044】
さらに、通信装置30は、撮影部(図示なし)が設けられており、撮影装置として機能する。これにより、病院などの施設において、照明装置である通信装置30は、施設内の各部屋に設置され、各部屋の患者の不穏行動を撮影し、学習予測装置に送信することができる。なお、撮影部は、従来よく知られるIRカメラのような赤外線を利用した撮影装置であってもよい。また、通信装置30は、施設内の複数の装置に無線通信により接続され、基地局として機能するようにしてもよい。
【0045】
図3は、排便の条件を学習し、排便時期を予測する学習予測装置40および通信装置30の構成を示すブロック図である。
【0046】
予測学習装置40は、いわゆるコンピュータ等の情報処理装置である。予測学習装置40は、制御装置80の腸内情報送受信部82から通信装置30を介して送信された情報を集積し、集積した情報を蓄積し、蓄積された情報に基づいて推論モデルを構築する。すなわち、予測学習装置40は、AI(Artificial Intelligence)を用いて、蓄積された複数の情報から特徴量を抽出して反復学習を行い、学習結果を法則化(モデル化)する機械学習装置として機能する。
【0047】
予測学習装置40における、各部は、プログラムによって実現しても良いし、モジュール化して実現しても良い。また、以下においては、各部を動作主体として記述するが、CPUを動作主体とし、CPUがプログラムとしての各部を実行するように読み替えても良い。なお、前記各部はいわゆるクラウド上に置かれてもよい。
【0048】
予測学習装置40は、通信装置30を介して受信した腸音情報、エコー信号に基づく便情報、および排便情報等を含む複数の観察情報を取得する。予測学習装置40は、取得した複数の観察情報から、腸音情報や便情報などから特徴量を抽出して学習し記憶する。また、予測学習装置40は、記憶された情報から排便時期を予測する。
【0049】
予測学習装置40は、入出力部41と、記憶部42と、腸音情報分析評価部43と、便情報分析評価部44と、モデル構築部45とを備える。
【0050】
入出力部41は、腸音情報、便情報ならびに排便情報等を含む複数の情報を、通信装置30を介して入力される。これら情報は、連続的に入力されてもよいし、断続的に入力されてもよい。
【0051】
記憶部42は、情報を記憶するいわゆるメモリである。記憶部42は、入出力部41が受信した情報をキャッシュメモリにより一時的に記憶する。また、記憶部42は、腸音情報分析評価部43で分析評価された腸音分析評価情報と便情報分析評価部44で分析評価された便状態分析評価情報、および学習予測部からの学習予測情報を記憶する。
【0052】
腸音情報分析評価部43は、記憶部42に一時的に記憶された腸音情報を取出し、腸音情報の分析評価を行う。本実施形態において、腸音情報分析評価部43は、腸音情報を音響分析し、評価を行う。例えば、蠕動音を特徴量として抽出し、音響分析を行い、腸の動きを評価する。なお、分析評価された腸音情報は、エコー信号と同期できるタイムコードのような同期情報を含んでいてもよい。
【0053】
便情報分析評価部44は、記憶部42に一時的に記憶された便情報を取出し、便情報の分析評価を行う。本実施形態において、便情報分析評価部44は、便情報を分析し、大腸内部の便の状態を評価する。具体的に説明すると、便情報分析評価部44は、便情報に含まれる数理処理情報に基づいて大腸内部の便の状態が、(1)正常便、(2)硬便(直腸性便秘)、(3)ガス蓄積、(4)軟便(弛緩性便秘)、のいずれに該当するかを評価する。
【0054】
より具体的に説明すると、便情報分析評価部44は、数理処理情報に含まれる超音波の進行方向情報と減衰情報とから硬便やガス蓄積の状態、軟便の状態を検出することにより、大腸内部の状態として、正常便、硬便(直腸性便秘)、ガス蓄積、軟便(弛緩性便秘)で有るか否かを検出できるものである(例えば、特開2016−195748を参照)。なお、分析評価された便状態分析評価情報は、腸音情報と同期できるタイムコードのような同期情報を含んでいてもよい。
【0055】
入出力部41は、さらに、排便があった場合の排便情報を取得し、入出力部41の受けた排便情報は、記憶部42に記憶されるとともに学習予測部45に送られる。
【0056】
学習予測部45は、排便の時期予想するための情報から、いわゆる機械学習により学習し、学習により得られた推論モデルに基づいて排便の時期を予測する。本実施形態において、学習予測部45は、ベイズ推定により排便の時期を学習予測する。具体的には、学習予測部45は、超音波検知装置70により検知されるエコー信号を数理処理することにより求められる便の固さに基づく排便の予想時期が、事前確率として記憶部42に記憶されており、その事前確率を用いて、超音波検知装置70により新しく検知されたエコー信号から求められる便情報を適用し、ベイズ推定を行う。
【0057】
さらに、超音波検知装置70による新たなエコー信号の検知と、ベイズ推定とは、所定の時間をおいて繰り返し行われることにより、逐次ベイズ推定が行われる。逐次ベイズ推定により所定の時間内に排便の起こる確率が事後確率として求められる。また、学習予測部45のベイズ推定により得られた事後確率は、記憶部42に蓄積され、次の排便学習予測の事前確率として利用される。
【0058】
入出力部41は、予測学習装置40の外からの要求に応じて、記憶部42に記憶された情報を適宜出力する。例えば、排便時期学習予測システム1外の情報処理装置の要求に応じて記憶部に記憶された情報を出力することができる。
【0059】
排便予測報知部46は、排便時期予測部45により予測された排便時期が所定の時間T2の範囲に所定の確率以上の場合に、排便時期が近づいていることを報知するための報知情報を、入出力部41を介して通信端末30に送信する。
【0060】
<排便時期学習予測方法について>
排便時期学習予測システム1が行う排便学習予測方法について、
図4を参照して詳細に説明する。
【0061】
ステップS1において、排便時期学習予測システム1は、大腸の聴診を開始する(腸音取得ステップ)。具体的には、制御装置80が、聴診装置60が大腸で生じる蠕動音を腸音情報として取得するために、聴診装置60を起動させる。排便時期学習予測システム1は、聴診装置60を起動させた後に、ステップS2に処理を移行する。
【0062】
ステップS2において、排便時期学習予測システム1は、蠕動音が腸内で発生したか否かを判定する(蠕動音判定ステップ)。具体的には、制御装置60が、大腸で生じる蠕動音を腸音情報として聴診装置60が取得したか否かを判定する。蠕動音が取得された場合(ステップS2=YES)には、ステップS3に処理を移行し、蠕動音が取得されなかった場合(ステップS2=NO)には、ステップS1に処理を戻す。すなわち、ステップS2において、蠕動音が取得されるまで聴診装置60は大腸の聴診を継続的に行う。
【0063】
ステップS3において、排便時期学習予測システム1は、エコー信号の取得を開始する(エコー信号検知ステップ)。具体的には、制御装置80が、大腸内の便の状態を示す便情報を超音波検知装置70が取得するために、超音波検知装置70を起動する。すなわち、ステップS3では、ステップS2において、蠕動音が取得された場合に超音波検知装置70が起動することになるため、超音波検知装置70は、聴診装置60が腸の内部から生じた蠕動音を腸音情報として取得したことを契機にエコー信号の検知を開始する。排便時期学習予測システム1は、エコー信号の取得を開始した後に、ステップS4に処理を移行する。
【0064】
ステップS4において、検知されたエコー信号に基づいて排便時期の学習予測を実行する(学習予測ステップ)。具体的には、エコー信号により求められる便情報を特徴量としてベイズ推定を行う処理が実行される。本実施形態において、ベイズ推定を行うための事前確率には、予め記憶部42に記憶された、エコー信号により求められる便の固さに基づく排便の予想時期に関する情報を適用してもよい。排便時期学習予測システム1は、ベイズ推定を実行した後に、ステップS5に処理を移行する。
【0065】
ステップS5において、ベイズ推定により得られた事後確率から排便の可能性が高いか否かを判定する(排便可能性判定ステップ)。具体的には、ベイズ推定により得られた事後確率から、所定の時間内に排便が起こる可能性が高いか否かを判定する。可能性が高いとされた場合(ステップS5=YES)には、ステップS6に処理を移行し、可能性が低いとされた場合(ステップS5=NO)には、ステップS7に処理を移行する。
【0066】
例えば、ステップS5では、直前のベイズ推定のもととなるエコー信号が検知された時刻から5分以内に排便が起こる可能性が8割以上と判定された場合は、ステップS6に処理を移行し、直前のベイズ推定のもととなるエコー信号が検知された時刻から5分以内に排便が起こる可能性が8割未満と判定された場合は、ステップS7に処理を移行する。所定の時間、排便の起こる可能性は、適宜設定できる。
【0067】
ステップS6において、排便時期学習予測システム1は、排便時期が近いことを報知する。具体的には、排便予測報知部46は、排便予測報知部46が予想される排便時期(例えば、「5分以内に排便がある」など)の排便時期情報を、通信端末30を介して排便報知装置(図示なし)に送信する。排便時期情報を受信した排便報知装置は、アラートなどにより排便時期が近いことを報知する。排便時期学習予測システム1は、排便時期が近いことを報知した後に、ステップS7に処理を移行する。
【0068】
ステップS7において、排便時期学習予測システム1は、ベイズ推定を実行したときから所定時間経過するまで待機する(待機ステップ)。具体的には、排便時期学習予測システム1は、次のエコー信号を取得するのに適すると想定される時間が経過するまで新たなエコー信号を取得しない。例えば、エコー信号から便の固さ情報を数理処理で求める時間を所定時間としてもよいし、便の移動を想定した時間を所定時間としてもよい。排便時期学習予測システム1は、所定時間経過した後に、ステップS8に処理を移行する。
【0069】
ステップS8において、排便時期学習予測システム1は、排便が起こったか否かを判定する(排便検出ステップ)。具体的には、排便検出装置20が、センサ部21が排便の臭いを検知することにより、対象者Pの排便が起こったことを検出することで排便が起こったか否かを判定する。排便が起こったと判定された場合(ステップS8=YES)は、排便時期学習予測方法を終了し、排便が起こらなかったと判定された場合(ステップS8=NO)には、ステップS3に処理を戻す。
【0070】
ステップS8において、排便が起こらなかった場合に、再びエコー信号の検知に処理が戻され、さらに、再びベイズ推定が行われる。すなわち、排便が起こるまではエコー信号の検知とベイズ推定が繰り返されるため、排便時期学習予測方法は逐次ベイズ推定を行うこととなる。
【0071】
〈排便時期学習予測システムの使用例〉
以上に説明してきた排便時期学習予測システム1の使用例を
図5および
図6を用いて説明する。
【0072】
図5に示すように排便時期学習予測システム1は、観察装置10は、種々の対象者Pに下腹部に装着される。本実施形態において、観察装置10は、立位の対象者P、座位の対象者Pに装着された例を示すが、仰臥位、背臥位の対象者Pに装着されてもよい。
【0073】
また、通信装置30は、対象者Pが存在する1つの部屋の照明器具として天井に設けられ、当該部屋の中の対象者Pの観察装置10および排便検出装置20と通信する例について示している。しかし、通信装置30は、無線通信可能であれば、他の部屋の対象者Pの観察装置10および排便検出装置20と通信してもよい。通信装置30は、相互に通信可能となるように施設内に複数設けられ、施設内ネットワークを形成してもよい。
【0074】
図6に示すように、排便時期学習予測システム1は、学習予測装置40と接続し、対象者Pの操作可能な場所に置かれ対象者Pの使用する情報処理装置190を含んでいてもよい。情報処理装置190は、学習予測装置40と接続しており、学習予測装置40を操作できるようにしてもよく、また学習予測装置40から、排便時期が近づいていることを報知のような情報を受けてもよい。
【0075】
さらに、排便時期学習予測システム1は、学習予測装置40と接続し、対象者Pの操作可能に携帯されるスマートフォンを通信端末130として含んでいてもよい。通信端末130は、学習予測装置40から、排便時期が近づいていることを報知のような情報を受けてもよい。
【0076】
〈排便時期学習予測システムの変形例〉
【0077】
本実施形態において、学習予測装置40は、便情報の数理処理情報の分析評価を行い、排便時期の学習予測を行う形態について説明した。しかし、学習予測装置40は、数理処理情報に加え、画像情報、便量情報、さらに腸音情報に基づいて排便時期の学習予測を行ってもよい。
【0078】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。