特開2021-186531(P2021-186531A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スターデジタル通信株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2021186531-体位変換装置 図000003
  • 特開2021186531-体位変換装置 図000004
  • 特開2021186531-体位変換装置 図000005
  • 特開2021186531-体位変換装置 図000006
  • 特開2021186531-体位変換装置 図000007
  • 特開2021186531-体位変換装置 図000008
  • 特開2021186531-体位変換装置 図000009
  • 特開2021186531-体位変換装置 図000010
  • 特開2021186531-体位変換装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-186531(P2021-186531A)
(43)【公開日】2021年12月13日
(54)【発明の名称】体位変換装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/05 20060101AFI20211115BHJP
   A47C 27/10 20060101ALI20211115BHJP
【FI】
   A61G7/05
   A47C27/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-97529(P2020-97529)
(22)【出願日】2020年6月4日
(71)【出願人】
【識別番号】519153165
【氏名又は名称】スターデジタル通信株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144277
【弁理士】
【氏名又は名称】乙部 孝
(72)【発明者】
【氏名】下島 生午
【テーマコード(参考)】
3B096
4C040
【Fターム(参考)】
3B096AD03
4C040AA04
4C040AA05
4C040CC03
4C040EE02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】日常的に使われているベッドやマットレス、布団の上でも使用でき、且つ安価で持ち運びも可能な機能性の高い安価な体位変換装置を提供する。
【解決手段】要介護者の体位変換を行う体位変換置であって、前記要介護者を空気の注入により右側臥位にする左エアーバック13と、前記要介護者を空気の注入により左側臥位にする右エアーバック12と、前記要介護者の膝部分を空気の注入により持ち上げる膝上げエアーバック14と、前記要介護者を空気の注入により要介護者の背を起こして座位にする背起こしエアーバック11と、各々の前記エアーバックへの空気の注入を行う送気ポンプと、各々の前記エアーバックからの排気を行う排気ポンプと、各々の前記エアーバックと、前記送気ポンプ及び前記排気ポンプとの接続を弁の開閉により切り替える空気弁室と、を備え、前記弁の開閉を制御して仰臥状態の要介護者の体位変換を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
要介護者の体位変換を行う体位変換置であって、
前記要介護者を空気の注入により右側臥位にする左エアーバックと、
前記要介護者を空気の注入により左側臥位にする右エアーバックと、
前記要介護者の膝部分を空気の注入により持ち上げる膝上げエアーバックと、
前記要介護者を空気の注入により前記要介護者の背を起こす背起こしエアーバックと、
各々の前記エアーバックへの空気の注入を行う送気ポンプと、
各々の前記エアーバックからの排気を行う排気ポンプと、
各々の前記エアーバックと、前記送気ポンプ及び前記排気ポンプとの接続を弁の開閉により切り替える空気弁室と、を備え、
前記弁の開閉を制御して前記要介護者の体位変換を行う体位変換装置。
【請求項2】
各々の前記エアーバックが、基体シートの表面又は裏面に取り付けられて一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の体位変換装置。
【請求項3】
前記背起こしエアーバックが基体シートの裏面に取り付けられた主背起こしエアーバックと前記基体シートの表面に取り付けられた二つの副背起こしエアーバックからなり、前記主背起こしエアーバックと前記二つの副背起こしエアーバックと、が通気孔を介して接続され、前記二つの副背起こしエアーバックが前記要介護者の左右の両側に設けられ前記要介護者の左右の安定化を図ることを特徴とする請求項1又は2に記載の体位変換装置。
【請求項4】
前記右エアーバックと前記左エアーバックとが所定の時間間隔にて自動で切り替えられて作動し、前記背起こしエアーバックと前記膝上げエアーバックとが手動で作動することを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の体位変換装置。
【請求項5】
前記空気弁室が前記送気ポンプへつながる送気口と、排気弁を介して前記排気ポンプとつながる排気口と各々の前記エアーバックに空気弁を介して送排気管とつながる送排気口と、前記空気弁室の圧力を検知する圧力センサーと、を備えることを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の体位変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝たきり状態の要介護者の体位変換「左右の寝返り、背起こし、膝上げ」を容易に行う体位変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医学の発展や最近の高齢化社会到来と共に、自力で体を動かすことができない寝たきりの状態の老人や要介護者の増加が見込まれ、10年後には1,000万人をこえるだろうと予想されている。しかしながら要介護者を受け入れ可能な施設数はその数が限られており、今後、益々施設数も不足する傾向にあることから、自宅で介護を行う人たちも増加すると予測される。それらに伴い背起こし、膝上げ、寝返りベッドや寝返り補助クッションなどが開発・販売されている。
【0003】
例えば、特許文献1には要介護者の身体の左右のエアーマットの一方に空気を送り要介護者の身体を変換させている発明が開示されている。また特許文献2にはシーツを横に傾けることによる床ずれ防止を行う寝返り装置も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−175147号公報
【特許文献2】特開2013−103117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの介護補助装置はモーター駆動を利用したもので装置自体が大きなものであることと購入価格が高いため、購入できる施設や個人が限られている。このため益々増加する低所得層の寝たきり要介護者を抱えた家庭での金銭的問題、付き添い介護者の身体的・肉体的苦痛の問題が数多く発生する懸念がある。
【0006】
上述した事情に鑑みてこの発明の目的は、日常的に使われているベッドやマットレス、布団の上でも使用でき、且つ安価で持ち運びも可能な機能性の高い安価な体位変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、要介護者の体位変換を行う体位変換置であって、前記要介護者を空気の注入により右側臥位にする左エアーバックと、前記要介護者を空気の注入により左側臥位にする右エアーバックと、前記要介護者の膝部分を空気の注入により持ち上げる膝上げエアーバックと、前記要介護者を空気の注入により前記要介護者の背を起こして座位にする背起こしエアーバックと、各々の前記エアーバックへの空気の注入を行う送気ポンプと、各々の前記エアーバックからの排気を行う排気ポンプと、各々の前記エアーバックと、前記送気ポンプ及び前記排気ポンプとの接続を弁の開閉により切り替える空気弁室と、を備え、前記弁の開閉を制御して要介護者の体位変換を行う体位変換装置である。
【0008】
要介護者を空気の注入により右側臥位にする左エアーバックと、前記要介護者を空気の注入により左側臥位にする右エアーバックと、前記要介護者の膝部分を空気の注入により持ち上げる膝上げエアーバックと、前記要介護者を空気の注入により要介護者の背を起こして座位にする背起こしエアーバックと、各々の前記エアーバックへの空気の注入を行う送気ポンプと、各々の前記エアーバックからの排気を行う排気ポンプと、各々の前記エアーバックと、前記送気ポンプ及び前記排気ポンプとの接続を弁の開閉により切り替える空気弁室と、を備え、前記弁の開閉を制御して仰臥状態の要介護者の体位変換を行うので、要介護者に必要な体位変換の容易化が図れる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記各々のエアーバックが、基体シートの表面又は裏面に取り付けられて一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の体位変換装置である。
【0010】
各々のエアーバックが、基体シートの表面又は裏面に取り付けられて一体化され1つの敷物状態となっているので、設置及び取り外しの容易化を図れる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記背起こし用エアーバックが基体シートの裏面に取り付けられた主背起こしエアーバックと前記基体シートの表面に取り付けられた二つの副背起こし用エアーバックからなり、前記主背起こし用エアーバックと前記二つの副背起こし用エアーバックとが、前記基体シートに設けられた通気孔を介して接続され、前記二つの副背起こし用エアーバックが前記要介護者の左右の両側に設けられ前記要介護者の左右の安定化を図ることを特徴とする請求項1又は2に記載の体位変換装置である。
【0012】
前記背起こしエアーバックが基体シートの裏面に取り付けられた主背起こし用エアーバック11と前記基体シートの表面に取り付けられた二つの副背起こし用エアーバック112,113から構成される。主背起こし用エアーバック11と前記基体シートの表面に取り付けられた二つの副背起こし用エアーバック112,113は前記基体シートに設けられた通気孔を介して接続され、二つの副背起こし用エアーバック112,113が前記要介護者の左右の両側に設けられ前記要介護者の左右の安定化を図るので、主背起こし用エアーバック11による背起こしに伴う要介護者の身体の安定化を図れる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記右エアーバックと前記左エアーバックとは所定の時間間隔にて自動で切り替えて作動し、前記背起こしエアーバックと前記膝上げエアーバックとは手動にて作動することを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の体位変換装置である。
【0014】
前記右エアーバックと前記左エアーバックとは所定の時間間隔にて自動で切り替えて作動し、前記背起こしエアーバックと前記膝上げエアーバックとは手動で作動するので、自動的に左右の体位変換の実現を図れる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記空気弁室が前記送気ポンプへつながる送気口と、排気弁を介して前記排気ポンプとつながる排気口と各々の前記エアーバックに空気弁を介して送排気管とつながる送排気口と、前記空気弁室の圧力を検知する圧力センサーと、を備えることを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の体位変換装置である。
【0016】
前記空気弁室が前記送気ポンプへつながる送気口と、排気弁を介して前記排気ポンプとつながる排気口と各々の前記エアーバックに空気弁を介して送排気管とつながる送排気口と、前記空気弁室の圧力を検知する圧力センサーと、を備えるので、全体の構成が簡素でありエアーバックの取り扱いの安全性の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る体位変換装置の構成図である。
図2】主装置の説明図である。
図3】空気の流れの説明図である。
図4】エアーバックの配置の説明図である。
図5】各エアーバックの機能の説明図である。
図6】自動での左右の体位変換のフロー図である。
図7】手動での左右の体位変換のフロー図である。
図8】手動での背起こしの体位変換のフロー図である。
図9】手動での膝上げの体位変換のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
看護者の労力負担が多大である要介護者の体位の変換を空気の力を使い薄膜のエアーバックを活用して行う体位変換装置である。
【0019】
図1に本発明のエアーバックとこれ空気の躁排気を行う主装置20の概要を示す。基体シート10に4個のエアーバックが付着され、各エアーバックが送排気管21,22,23,24を介して主装置20の空気弁室30と接続される。各エアーバックは送排気の制御を行う主装置20を介して空気の送排気が行われる。図1に示す体位変換装置は空気をエアーバックに注入しエアーバックが膨らむ力を利用して、寝たきりの要介護者の「背起こし」「膝上げ」「寝返り」を行うことができる。エアーバックは樹脂や布に樹脂をコーティングしたもので作成することが好適である。
【0020】
「背起こし」「膝上げ」「寝返り」を行うエアーバックは主装置20の空気弁室30とそれぞれが送排気管21,22,23,24で接続されている。主装置内の送気ポンプ26により圧縮された空気を空気弁室の送気口37から空気弁室30へ送り、そこから空気弁31,32,33,34を介して送排気管21,22,23,24へ送られる。エアーバックに送気された空気は所定の動作後に排気ポンプ27で排出される。これらの送排出動作は主装置20又はリモコン40により操作することができ、介護者と寝たきり要介護者のどちらでも操作することができる。
【0021】
図2に主装置20とリモコン40の外観を示す。ともに操作ボタンが配され、ボタンを操作することで後述する動作をエアーバックにさせて要介護者の体位変換を行う。
【0022】
図3を用いてエアーバックへ送る空気と排気の仕組みを説明する。体位変換装置は制御装置28と送気ポンプと26と、排気ポンプ27と、空気制御部30を備えている。この空気制御部30の送気口37から空気が後述する基体シート装着されている背起こしバック11、右エアーバック12、左エアーバック13、膝上げエアーバック14へ送排気菅21,22,23,24を通じて送られる。
【0023】
エアーの送気、排気、動作の停止は図2の主装置又はリモコンのスイッチにより操作される。空気制御部30には空気圧センサー36が設けられており、送気の入れ過ぎによりバックの破裂を防止するため空気圧センサー36からの信号に基づいて自動的に送気を停止する。
【0024】
各エアーパックにつながる空気制御部30の送排気口にはエアーの流通を停止できる空気弁31,32,33,34が備えられている。また排気用開閉バルブとなる第5空気弁35が空気弁室30の排気口39に設置されており、排気ポンプ27による空気の出入りを制御できる構造となっている。
【0025】
図4を用いて体位変換を行うエアーバックの説明をする。図4に示すエアーバックが付着された基体シートの厚さは極めて薄く一体化されており折り畳みが可能なので簡単に移動や設置が可能である。
【0026】
基体シート10に付着されるエアーバックは、背起こしバックを構成する主背起こしエアーバック11、右副背起こしエアーバック112及び左副背起こしエアーバック113と、左右の体位変換用の右エアーバック12、左エアーバック13、膝上げエアーバック14で構成される。
【0027】
主背起こしエアーバック11は基体シートの裏に付着されており、基体シートの表に付着される2個の右副背起こしエアーバック112及び左副背起こしエアーバック113と基体シートに開けられた通気孔を介して空気が出入りする。したがって、主背起こしエアーバックへの空気の出入りに従って副背起こしエアーバックも同じように空気が出入りする。主背起こしエアーバックに空気が送られ要介護者の背起こしが開始すると2個の副背起こしエアーバック112,113にも空気が送られて膨らむことで背起こしされたた要介護者の左右を両側から支えることができる。
【0028】
背起こしエアーバックを膨らませる場合は次の手順で行うこととなる。リモコン又は制御装置本体の「背起こし」スイッチを押すと送気ポンプ26が起動して空気を送りだす。
この時図3のVALVE−2,3,4,5は閉の状態でありVALVE−1のみ開の状態なので、圧縮された空気は送排気管21の中を流れ、背起こしエアーバック内に流れ込みエアーバックを膨らまし、その膨らむ空圧の力で主背起こしエアーバックが要介護者の背中を持ち上げるとともに左右の副背起こしエアーバック112,113が要介護者の左右の安定化を図る。要介護者が適度な位置で停止スイッチを押すと、VALVE−1は閉状態となり送り出された空気が閉じ込められエアーバックは安定する。なお停止スイッチを押さない場合、背起こしエアーバック11は最大の大きさまで膨らむが空気圧力検知センサー36による信号を受けて主装置の制御装置に28より送気ポンプ26が自動的に停止する。
【0029】
背起こしエアーバック11から圧縮された空気を抜いて縮ませ、背起こし状態から元の寝た状態に戻すには次の動作を行う。リモコン又は制御装置本体の下げるスイッチを押すと、空気弁室30のVALVE−1(第1空気弁31)とVALVE−5(第5空気弁35)が開の状態となり排気口39から空気が外気又は排気ポンプ27へ抜けて背起こしエアーバック11は元の平らなシート状態となる。
【0030】
「寝返りエアーバック左右」と「膝上げエアーバック」を使用する場合も、同様に使用しない空気弁は閉じ、使用する空気弁は開く制御行うこととなる。ここではエアーバックが裏表に張りけられたシートの構造上と要介護者の身体の仕組みの関係上、「背起こし」と「膝上げ」は同時に行うことはできるが、「背起こし」と「寝返り」動作は同時には行えない構造となっている。
【0031】
図5(A)はエアーバックを膨らませて要介護者が背起きした状態を示している。主背起こしエアーバック11は基体シート10の裏面に張り付けてあり、基体シート10に乗っている身体の重さにより膨張時の移動を抑えている。一方副背起こしエアーバック112,113はシートの表面に張り付けてある、主背起こしエアーバック11と副背起こしエアーバック112,113とはシートを通じて空気が出入りできるようになっている。主背起こしエアーバック11に送気を挿入すると副背起こしエアーバック112,113も同時に膨らむようになっている。副背起こしエアーバック112,113は主背起こしエアーバック11が膨らんだ時に要介護者の身体が横にずれることを防止する。
【0032】
図5(B)は要介護者の膝部分を持ち上げる膝上げ時の様子を示している。エアーバックの操作は手動と自動の2種類から選択ができる。主装置20又はリモコン40の膝上げボタンを操作すると送気ポンプ26が動作し送気を行う。VALVE−4(第4空気弁34)を開き、空気弁VALVE−4以外の空気弁を閉じて膝上げエアーバックへ空気を送気する。最大圧力は空気圧力検知センサー36で検知され制限される。膝上げエアーバック14、の膨らみを排気するときは主装置20又はリモコン40の膝下げボタンを操作すると、空気弁室30の排気口39から外気へ又は排気ポンプ27へ排気される。
【0033】
図5(C)は寝返りエアーバックの様子を示している。要介護者の状態としては仰向け(仰臥位)と左向(左側臥位)き右向き(右側臥位)の3種類あり、手動操作も可能だが、自動操作にすると3種類の動作を60分・90分・120分の何れか選択にて繰り返すことができる。この時間間隔は褥瘡予防のための体位変換のガイドラインでは、「基本的に2時間以内の間隔で、体位変換を行うよう勧められる」。また2009年のNPUAP/EPUAP合同ガイドラインでも「体位変換の頻度は、患者の組織耐久性や活動性のレベル、全身状態、治癒の目的、皮膚の状態のアセスメントによって決定する」と記載されているのでガイドラインに沿って状況に合わせての設定が可能である。
【0034】
寝返りエアーバックを膨らませる場合は次の手順で行うこととなる。リモコン又は制御装置本体の「自動寝返り」スイッチを押すと、制御回路内のオートタイム機能が起動し、先ず要介護者から見て左側のエアーバックを膨らませるため、送気ポンプが起動して左側の寝返りエアーバック(左エアーバック13)に送気しエアーバックを膨らませる。左側のエアーバックが最大まで膨らむと、要介護者の身体は右側に傾き安定した右側臥位の状態となる。一定時間経過すると膨らんでいた左側のエアーバックの空気は排出されシートは元の平らな状態となる。
【0035】
一定時間が経過すると今度は右側のエアーバック(右エアーバック12)が最大まで膨らみ要介護者の身体は左側に傾き安定した状態(左側臥位)となる。更に一定時間経過すると膨らんでいた右側のエアーバックの空気は排出されシートは元の平らな状態となる。以降この動作をマイコン設定により自動的に繰り返すことができ要介護者の床ずれを防止する。この繰り返し時間は要介護者の体調等に合わせて60分・90分・120分の何れかが選択できる。またで、オムツの取り換え等にも使用できるように手動による寝返りも可能としている。ここでの開発ポイントは要介護者が寝寝返りする時の身体の支点である。図5(C)に示すように、膨らむエアーバックはこの寝返り回転支点までその底面が基体シート10に張り付けられていることから確実に体を持ち上げ回転させることができる。
【0036】
図6を用いて自動で左右のエアーバックを切り替えて体位変換を行う過程を説明する。なお、タイマー動作や各空気弁、送気ポンプが、排気ポンプなどの制御は周知のハードウエアやマイコンなどのソフトウエアで行える。主装置20又はリモコン40の自動スイッチを押すと、S0:動作開始、S1:自動開始スイッチで自動動作が開始されてA1:空気弁が全て閉じられる。S2:要介護者の仰向け状態がTimer1で60分維持される。A1:60分経過すると第3空気弁33が開く。S3,S4:そして送気ポンプで空気圧が満杯になるまで右エアーバック12へ送気する。空気圧センサーが所定の圧力(満杯)を検知するとS5:送気ポンプが停止し、A3:第3空気弁33が閉じる。要介護者は左向きの状態で左側臥位となる。S6:Timer2で60分経過を調べ、60分経過すると第3空気弁33と排気弁の第5空気弁35が開く。S7:排気ポンプが作動して開いた空気弁33とこれに接続されている送排気管23を通して右エアーバック12の空気が排気ポンプ27へ送られ排気される。S8:Timer4で30秒間排気ポンプ27の動作が維持される。S9:30秒経過すると排気ポンプ27が停止する。要介護者は仰向けの状態になる。
【0037】
続いて、右側臥位への体位変換を行う過程を説明する。左側臥位から仰臥位に戻ってS10:要介護者の仰向け状態がTimer1で60分維持される。A5:60分経過するとVALVE−3(第3空気弁33)、VALVE−5(第5空気弁35)が閉じ、A6:VALVE−2(第2空気弁32)が開く。S11、S12:そして送気ポンプ26で空気圧が満杯になるまで左エアーバック13へ送気する。空気圧センサーが所定の圧力(満杯)を検知するとS13:送気ポンプが停止し、A7:第2空気弁32(VALVE−2)が閉じる。要介護者は右向きの状態で右側臥位となる。S6:Timer3で60分経過を調べ、60分経過するとA8:第2空気弁32と排気弁の第5空気弁35が開く。S15:排気ポンプが作動して開いた空気弁32とこれに接続されている送排気管22を通して左エアーバック13の空気が排気ポンプ27へ送られ排気される。S16:Timer4で30秒間排気ポンプ27の動作が維持される。S17:30秒経過すると排気ポンプ27が停止する。要介護者は仰向けの状態になる。A9:第2空気弁32、第5空気弁35が閉まる。要介護者は仰向けの状態が続く。
【0038】
図7を用いて手動での側臥位への体位変換の過程を説明する。図7(A)は右側へ体位を変換する場合である。S0:電源ONになり体位変換装置が稼働可能になる。A1:全ての空気弁が閉じる。S1:主装置20又はリモコン40の右傾けのスイッチを押す。A2:VALVE−2(第2空気弁32)が開く。また、S2:送気ポンプが始動する。空気が左エアーバック13へ送られる。S3:空気圧が所定の圧になると信号が出力されるが体感で決めてもよい。S4:圧力センサーの出力を得て送気ポンプが自動停止する。要介護者が仰向け状態へ戻ることを希望するとS5:排気スイッチを押す。A3:VALVE−2(第2空気弁)及びVALVE−5(第5空気弁)を開放する。S6:排気ポンプを稼働し、S7:30秒待つ。S8:排気ポンプが停止する。左エアーバック13の空気が抜けて平らになり要介護者は仰向けの状態になる。A4:VALVE−2(第2空気弁32)、VALVE−5(第5空気弁)を閉じる。
【0039】
図7(B)は手動で左側へ体位を変換する場合である。S0:電源ONになり体位変換装置が稼働可能になる。A1:全ての空気弁が閉じる。S1:主装置20又はリモコン40の左傾けのスイッチを押す。A2:VALVE−3(第3空気弁33)が開く。また、S2:送気ポンプが始動する。右エアーバックに空気が送られる。S3:空気圧が所定の圧になると信号がでる。或いは体感で決めてもよい。S4:圧力センサーの出力を得て送気ポンプが自動停止する。要介護者が仰向け状態へ戻ることを希望するとS5:排気スイッチを押す。A3:VALVE−3(第3空気弁33)及びVALVE−5(第5空気弁)を開放する。S6:排気ポンプを稼働し、S7:30秒待つ。S8:排気ポンプが停止する。左エアーバックの空気が抜けて平らになり要介護者は仰向けの状態になる。A4:A3:VALVE−3(第3空気弁33)、VALVE−5(第5空気弁)を閉じる。
【0040】
図8を用いて手動での背起こしの過程を説明する。S1:電源ONになり体位変換装置が作動可能になる。A1:全ての空気弁が閉じる。S2:主装置20又はリモコン40の背起こしのスイッチを押す。A2:VALVE−1(第1空気弁31)が開く。また、S3:送気ポンプが始動する。背起こしエアーバックへ空気が送られる。S4:空気圧が所定の圧になると信号がでる。或いは体感で決めてもよい。S5:停止ボタンを押す、又はA3:圧力センサーの出力を得て送気ポンプが自動停止する。要介護者が仰向け状態へ戻ることを希望するとS6:排気スイッチを押す。A4:VALVE−1(第1空気弁31)及びVALVE−5(第5空気弁)を開放する。S7:排気ポンプを稼働し、S8:30秒待つ。背起こしエアーバックの空気が抜けて平らになり要介護者は仰向けの状態になる。
【0041】
図9を用いて手動での膝上げの過程を説明する。S0:電源ONになり体位変換装置が稼働可能になる。A1:全ての空気弁が閉じる。S1:主装置20又はリモコン40の膝上げのスイッチを押す。A2:VALVE−4(第4空気弁)が開く。また、S2:送気ポンプが始動する。膝上げエアーバック14へ空気が送られる。S3:空気圧が所定の圧になると信号がでる。或いは体感で決めてもよい。S4:圧力センサーの出力を得て送気ポンプが自動停止する。要介護者が仰向け状態へ戻ることを希望するとS5:排気スイッチを押す。A3:VALVE−4(第4空気弁)及びVALVE−5(第5空気弁)を開放する。S6:排気ポンプを稼働し、S7:30秒待つ。S8:排気ポンプが停止する。膝上げエアーバックの空気が抜けて平らになり要介護者は仰向けの状態になる。A4:VALVE−4(第4空気弁)及びVALVE−5(第5空気弁)を閉じる。
【0042】
上記に説明した発明により従来介護者が行っていた体への負担(要介護者を動かす重労働)及び精神的負担(定期的に要介護者の身体を動かす介護)を減らすことが可能となる。
本発明は、ベッドやマットレス、畳上の日本式敷布団の上でも簡単に設置することができる。このように既存のどのような寝具にも対応できることにより、既存の寝具を買い替えることなく寝たきりの要介護者の「背起こし」「膝上げ」「寝返り」が介護者の手を借りずにできることは、今後増加傾向の独居老人や貧困家庭に於いても有益な手段となる。また安価な手段で要介護者へのこのような介護ができることは、高価な自動介護ベッドへの国の補助金を減らすことにも大きな貢献となる。従って本発明は前述のように体位変換が必要な場合に介護者の労力を著しく軽減し得ると共に要介護者も自分で所望の向きを維持することのできる体位変換装置を提供するものである。よって日本の産業に資するものである。
【符号の説明】
【0043】
10 基体シート
11 主背起こしエアーバック
112 右副背起こしエアーバック
113 左副背起こしエアーバック
12 右エアーバック(右側寝返りバック)
13 左エアーバック(左側寝返りバック)
14 膝上げエアーバック
20 主装置
21 第1送排気菅
22 第2送排気菅
23 第3送排気菅
24 第4送排気菅
26 送気ポンプ(圧縮空気ポンプ、送風ポンプ)
27 排気ポンプ
28 制御装置
30 空気弁室(空気制御部)
31 第1空気弁(VALVE−1)
32 第2空気弁(VALVE−2)
33 第3空気弁(VALVE−3)
34 第4空気弁(VALVE−4)
35 第5空気弁(排気弁)(VALVE−5)
36 空気圧力検知センサー
37 送気管
38 排気管
39 排気口
40 リモコン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9