【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、上記問題点に鑑みて、為されたものである。目標は超高層の木造建築物の防消火設備として従来の水を用いた湿式防消火設備に代わり、新たな防消火設備を活用する手段を提供する。具体的には水に代わり窒素を用いた乾式防消火設備を導入する。
【0022】
美術館や博物館等で貴重な美術品が水消火により損傷されることを避けるため窒息性ガスを吹込んで消火させる設備は既に実用化されている。窒息性ガスとして実績あるガスはハロゲン系ガスと窒素である。これ等のガスは通常は専用ボンベに充填され、消火を対象とする建屋の近傍に保管され、万一の発災時にはここから火災の発生場所へ向けて放出される。前述の「あべのハルカス」の建設に際しても、建屋内の電気室やコンピュータ管理室等にはこの方式が導入されている。
【0023】
建屋内に窒素を吹き込むと、内部の空気は窒素とほぼ均一に混合し、排気口を経由して大気に放出される。学術的にはこの混合を「完全混合」と呼ぶ。窒素の吹込みにより建屋内の酸素濃度は徐々に低下し、可燃性ガスが燃焼できない濃度に達する。この時の酸素濃度を「限界酸素濃度」という。この値は可燃性ガスにより固有の値を持ち、水素の場合5.0%、一酸化炭素では5.6%である。
【0024】
可燃物が固体の場合も高温により固体が分解され水素や一酸化炭素等の可燃性ガスを発生するので、燃焼を止めるには気体の場合と同様に建屋内の酸素濃度が可燃性ガスの限界酸素濃度以下になるまで窒素を吹き込めば良い。吹き込まれた窒素は建屋内の空気と混合し、建屋内の酸素濃度を徐々に低下させる。この際、窒素を大量に吹き込むことにより建屋内が過圧にならないよう、建屋内のガスを十分に排気できる排気経路を確保することが必要である。
【0025】
通常ボンベに貯蔵可能なガス量は数m3/本であるから、消火対象とする建屋の容量は概ね数10m3〜100m3程度に限定される。このため従来の乾式消火法の対象は建屋全体ではなく、建屋の中で最も貴重な部屋に限定せざるを得なかった。従ってこれ等の設備を使って、容積で数万m3規模以上の高層建築物等の大型建屋を消火の対象とする試みは日本を含め世界中でも未だ公開されていない。
【0026】
上記の乾式防消火法の対象となる建屋は超高層建屋の他に、貴重な絵画や美術品を収納する博物館、法隆寺や金色堂に代表される神社・仏閣、通販向けの大型物流倉庫、内部で塗料等可燃性危険物を取り扱う工場、更に事故時に可燃性ガスを発生する恐れのある密閉型建屋等、広範囲な建屋が挙げられる。
【0027】
これ等の対象物の一部には従来の消火方法である煙検知器とスプリンクラーを組み合わせた水を使う防消火法が使用されていた。本発明はこの湿式防消火法に代わる新たな防消火法を提案する。具体的には今後新設される建屋に予め、新たな工夫を加えることにより、建屋の全域に渡って窒素を活用する乾式防消火法の技術を提供する。
【0028】
窒素を超高層建屋に導入する際、最も注意しなければならない重要な課題は酸欠症即ち酸素欠乏に伴う人的災害や事故の防止である。従来窒素等を使う乾式防消火法が対象としたのは美術館の特別鑑賞室やコンピュータ制御室等の限られたらスペースで、かつ室内では少人数の滞在を前提としていた。
【0029】
今回対象とする超高層建築物は建屋の容積が数十万m3以上で、かつ建屋内に常時数百人以上の人間が滞在している。人間は酸素なしの環境下では生きていけない。酸素濃度の低下と共に死の危険が迫る。万一の発災時に窒素を使用する場合、これ等の人達の命を如何にして酸欠事故から守るか、この二次災害については万全な防止策を事前に確立しなけらばならない。これは本発明の実現へ向けて最大の難問である。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の具体策を容易に理解し易いよう最初に対象物の概要を例示する。建屋の構造材は木造材を主体とし高さ350m、70階建で、階当たりの床面積は6,500m2と仮定する。各階の高さは350/70=5.0m、建屋の総容量は228万m3となる。この形状は前述した住友林業(株)の「W350計画」とほぼ同一である。この建屋に窒素を用いた乾式防消火設備を計画する。
【0031】
始めに窒素を使用した建屋内の支燃性ガスを窒素で置換する際の基本的な事項を記す。窒素による乾式防消火法は燃焼の3要素である、可燃物、着火源、支燃性ガスの中で、支燃性ガスを無くする方法である。窒素を用いて火災周囲の支燃性ガス中の酸素濃度を限界値まで下げれば火種は完璧に消火できる。従って建屋が密閉型であるという条件さえ満たせば、乾式法は湿式法に比べ簡潔で、消火効率が圧倒的に高い。
【0032】
更に乾式法は設備の組合せが極めてシンプルである。この方式に必要なものは建屋に吹き込む窒素がデッドスペース無しに均一に拡散するように「窒素の吹き出し配管を設置する」こと、及び吹き込んだ多量の窒素ガスで建屋内が過圧にならないよう「排気用のベントを設ける」ことの2項目である。
【0033】
一方、乾式防消火法は大型建屋内の空気中の酸素濃度を低下させるためには多量の窒素が必要になる。将来水素時代の到来に併せて導管を用いた広域の窒素インフラが完成すれば、この課題は容易に解決できる。しかし現状で窒素を多量に供給できる唯一の手段は液化窒素ローリ車よる供給である。
【0034】
乾式防消火法の更なる利点は窒素という気体を使うので、どんな高さの建築物の消火にも対応が可能である。湿式防消火法のような消火対象物の高さに関する懸念は皆無である。次に本発明における液化窒素ローリ車を使った窒素の供給方法を記す。
【0035】
液化窒素ローリ車とは窒素を超低温の液状にして真空断熱された特殊容器に充填し、これを車両に搭載して運搬する特別車両である。現在この種の車両は国内では広く普及しており、全国で数百台の液化窒素ローリ車が毎日、運行している。
【0036】
液化窒素ローリ車の搭載容量は大型車で約7ton(重量)、ガス状態に換算すれば約6,000m3/台である。しかしこの量を持っても前記の建屋の容量に比べて極めて少量であり、その対応は難題である。
【0037】
次に窒素を使って建屋内の酸素ガス濃度を低減させる方法について記す。既述したように建屋内の可燃物を一酸化炭素、水素を主体の可燃性ガスと仮定した場合、その燃焼に必要な酸素濃度は5%以上(=学術用語で限界酸素濃度という)に保たなければならない。逆の見方では建屋内の空気を窒素で置換して空気中の酸素濃度を5%以下すれば全ての火源は消炎する。
【0038】
容積(Am3)を有する建屋の内部に容量(Vm3)の窒素を吹き込み建屋内の同量のガスを放出させて、建屋内の酸素濃度を通常濃度(a
1=21%)から目標の酸素濃度(a2=5%)まで低減させる場合、その低減曲線は「完全混合式」に従い、次の関数で示される。ここでeはネピアの数と呼ばれる定数である。
【0039】
上式より空気中の酸素a1を限界酸素濃度a2まで低下させる窒素量 Vは
V= −2.303*A*log(a
2/a
1)
例えば建屋容積A=100,000m3、a1=21.0、a2=5.0を代入すれば、窒素量V=143,000m3 となる。即ち容積Am3の建屋内の酸素を窒素で置換して燃焼を継続できない酸素濃度まで低減させるには、容量で建屋容量Aの約1.43倍の窒素が必要である。
【0040】
次に液化窒素ローリ車で運ばれる窒素を如何にして防消火に有効に活用するかについて、具体的な手段を記す。第一番目の手段は建屋側の対策である。前項の試算で示したように窒素導入の対象物の容積は数百万m3の及ぶ。一方で窒素を供給する側の供給能力は1万m3/台に満たない。この両者のアンバランスの調整である。これには建屋全体の構造を改造し、液化窒素ローリ車で運ばれてきた窒素を目標とする空間にだけ限定して供給する方策を見出す。
【0041】
このため建屋側の方策として建屋の空間を万一の災害発生時に「窒素の吹込み可能空間」と「窒素の吹込み不可能空間」とに予め明確に区分する。更に防消火設備からの窒素の吹込み先は建屋の中で「窒素吹込み可能エリア向けとして指定された空間」にだけ窒素を集中して吹き込む。当然のことながら、この手段は建屋の設計時に実行されなければならない。この区分の詳細については後述する。
【0042】
第二番目の手段は建屋に供給する多量の窒素の運搬方法を見つけることである。この窒素源の確保は重要である。現在、窒素の製造所として有望な候補は鉄鋼所、都市ガス供給会社、化学学工場等がある。中でも鉄鋼所は銑鉄から鋼への工程で、多量の酸素を製造して使用しているが、その酸素の製造時に多量の窒素を副生している。
【0043】
この窒素は液状で副生し、一部は工場内で安全対策として自消されるが、大部分用途が無く大気へ放出されている。その量は年間数十億トン以上で、量的な保有量は既に十分にある。従って輸送手段さえあればこの問題は解決が可能である。
【0044】
第三番目の手段は窒素の活用に伴う負の効果と言われる酸欠事故に対する防止対策を確立することである。人間は大気中の酸素濃度が下がり、10%レベルまで低下すると意識を失い、更に6%以下では数分で死に至る。これ等の症例は人間の人為的ミスのよって引き起こされるケースが圧倒的に多いが、稀に作為的な行為や悪意によって引き起こされる危険性がある。
【0045】
この酸欠防止対策は事前に十分検討され、必ず実行されなければならない。この防護手段なくして本提案の実践は困難である。防護手段の詳細については次の「実施に向けての最良の形態」で説明する。
【0046】
次に上記の活用手段を実行するための具体的な方策を記す。前述したように試算する建屋の全容積は2,280,000m3である。この建屋を窒素で置換して、建屋内の空気中の酸素濃度を燃焼限界濃度以下まで下げる方策を記す。
【0047】
この建屋の空気中の酸素濃度を21%から5%まで低下させるには、建屋容積の1.43倍の窒素量が必要であることは既に記載した。 これを搭載容量のガス換算量で6,000m3 の液化窒素ローリ車で置換するとすれば、必要な液化窒素ローリの台数は2,280,000*1.43/6,000=543台が必要となる。
【0048】
この台数の確保は実際には不可能である。都心の交通事情を勘案すれば、初期消火に出動できる液化窒素ローリ車は多くとも10台以下、出来れば5台程度に抑える必要がある。このために建屋本体の改造を行う。改造の第一歩は建屋本体のブロック化である。即ち、建屋全体を「窒素置換を可能とする空間」と「置換が不可能とする空間」にブロック化して区分する。
【0049】
対象とする建屋の形状は矩形、円筒形、多角系のいずれでもよいが、この試算では円筒形と仮定する。 円筒形の場合、前述した通り 1階当たりの床面積は6,500m2、その半径=45.5mの円となる。次にこの面積を円の中心を原点として、更に小さな円を描き、床面積全体を内円部分(以降A部と称す)と内円と外円に囲まれたドーナツ状の部分(以降B部と称す)に2分割する。
【0050】
2分割された各々の面積比を仮にA部;B部=20;80とすれば、建屋の一階当たりの床面積6,500m2は中心部A部で1,300m2、外周部B部で5,200m2に分割される。建屋の半径は、A部で20.4m、B部は45.5mとなる。即ち、前述の分割により、円形の面積は内径の半径=20.4m、外径の半径=45.5mの2重円を有する構造に2分割される。
【0051】
次に2分割された各々の空間の機能を説明する。A部は正常時、非常時とも常に新鮮な空気で満たされた空間で、主に移動空間として利用する。この空間に配置するのはエレベーアタ、エスカレータ、階段等の移動のための設備とトイレである。更に余ったスペースには生花プランター、自販機、不燃性のテーブル、椅子等を置いて社員の憩いや顧客との打ち合わせの場所として利用する。
【0052】
一方B部は社員が執務を行う居住空間である。ここには事務室、会議室、食堂、調理室および集会ホール等を配置する。この空間の特色は常時は調温、調湿された空気で満たされるが、万一の火災等の非常時には外部より窒素を導入して室内の酸素濃度を下げ、火炎を消火できる構造とする。
【0053】
B部に滞在する社員は非常時には酸欠の危険があり、警報等で警告を受けた場合は、直ちに安全な空間に避難しなければならない。この避難先がA部である。両空間は不燃性の壁で完全に遮断され、その出入りは専用ドアだけである。即ち、建屋の何処かで火災が発生した場合、非常放送により館内に避難指示が出されると、発災点に近い居室にいる社員は、全員上記の専用ドアを通って同一階にあるA部に避難する。A部に移動した社員は火災の程度によっては各種移動手段を使って他階に移動することも可能である。以上の建屋の概要と関連施設を[
図1]に示す。
【0054】
次にB部で発災したケースを想定して、その消火手順を説明する。。手順を理解しやすいよう、消火対象とするエリアはB部の中から一つの階を選んで、この1階分の全体を1ブロックと見なして消火するケースで説明する。[
図1]ではこのブロックを斜線でハッチングして示す。
【0055】
このブロックの容積はV=6,500*0.8*5.0=26,000m3である。消火に必要な窒素量は先に記載した計算式から、窒素量A=26,000*1.43*0.95=35,300m3となる。但し、0.95はブロック容積Vから、フロアの備品や家具の容積を除外した有効空間係数である。この窒素量は液化窒素ローリ車で約6台分に相当する。この程度の量であれば現行で何とか配車可能である。
【0056】
以上の計算では消火対象をワンフロア全体を選び、これを1ブロックとしたが、実際の建屋ではフロアは平面上を縦方向の仕切壁で数分割する。この分割を6分割とすれば、対象容積は6階分に相当する容積となる。従って実際の消火ではこの縦分割された容積を1ブロックとし、これを消火対象として考えればよい。このように平面上で6分割し、6階分をまとめた場合でも必要窒素量Aは35,300m3となり、その量は分割しない場合と変わらない。以上の概要を[
図2]に示す。但し、[
図2]は平面上で6分割し、上半分の3階分を窒素で消火する(=後述する)図である。
【0057】
上記のような多量の窒素を短時間に消火対象のブロックに供給するには、幾つかの工夫が必要である。その方法を以下に示す。液化窒素ローリ車からの窒素は最初に地下の密閉室に設置した気化器へ送られ、中低圧の窒素ガスとなる。ここから複数の鋼鉄製導管を用いて建屋の外周を経由して建屋の最上階まで運ばれる。気化器の設置場所を密閉室にした理由は万一気化器から窒素が漏洩した場合でも、窒素が他の空間に酸欠等の悪影響を与えることを避けるためである。
【0058】
この導管を各ブロック内に設置した供給ヘッダーに連結する。供給ヘッダーは各ブロック内の定められた階の外周に、リング状に設置する。更にこのヘッダーから枝管を分岐し、この枝管に取り付けた複数の吹き出し口から、消火対象となる空間内に窒素を吹き込む。またヘッダーには遠隔操作で開閉可能の供給元弁を取り付ける。
【0059】
供給元弁はブロック内の各ヘッダーに取り付ける。取り付ける位置はヘッダーから枝管に分岐する大元である。従って1ブロック内では供給元弁の数は複数個となる。例えば平面上で6等分に分割して上下に6階建のブロックの場合、3階毎にヘッダーを設けるとすれば、ヘッダーは2箇所で供給元弁の数は全部で2*6=12個となる。
【0060】
このように供給元弁の数は一つの建物でかなりの数になるので、誤って作動させないよう注意しなければならない。この危険を防止するには後述する監視回路に「煙検知による火災発生情報」を組み込めば窒素を吹き込む必要のないブロックの供給元弁が誤って開かれる危険はある程度抑えられるが、更に誤作動防止のため安全対策の冗長化が求められる。この冗長化については後述する。
【0061】
複数の供給元弁を設置する理由は窒素の供給先を限定して供給時間を短縮して、消火スピードを上げるためである。例えば6階建てのブロックで6階で火災が発生したと仮定した場合、供給元弁が最下段階に1個しか無ければ吹き込まれた窒素が最下段から6階に到達するにはかなりの時間を要する。もし4階に供給元弁があれば、その時間は最下段にある場合に比べて1/2に短縮できる。これは初期消火にとって極めて効果的である。この場合は消火に必要な窒素の量も半量で良い。
【0062】
このように防消火機器の取付け位置や数を詳細に指定した理由は万一これ等の機器から窒素が漏洩した場合、窒素が防消火の対象とならないブロックや移動空間(=A空間)に流入して酸欠事故を引き起こす危険を回避するためである。以上の工夫により、乾式防消火設備からの窒素を消火を必要とするブロックだけに限定して安全に吹き込むことが可能となる。
【0063】
複数階を含むブロックに窒素を吹き込む場合、吹き込まれた窒素は該当する階の空間を窒素で置換した後、予め準備された通気口を通り、その階の上段階に流れる。この通気口は、当該階の天井部から更に上段階に繋がるように配置し、窒素は空気・窒素の混合ガスとなって通気口を通り、順次上の階に流れ、最後はブロックの最上階の天井からベント管を経由して大気に放出される。
【0064】
この際、窒素が内部の空気と十分に混合するよう若干の工夫を行う。これには通気口の上部に防音型のダンパーを取り付ける。このダンパーは下の階の圧力が上階の圧力より数百mm程度高くなった時に開放する構造とする。この結果、吹き込まれた窒素は空間内で完全混合して、逆流やショートパスすることなしに上段階に流れ、消火効率を高めることができる。ダンパーを防音型にした理由は下階の音が上階に伝わり難くするためである。以上のダンパーの概要を[
図3]に示す。
【0065】
排気口とベント管については非常時に多量に吹き込まれる窒素で建屋内が過圧されないよう十分な排出能力を持たせることが大切である。排気口には常時ラプチュアデスク等の破裂板を取り付けて大気と遮断する。ラプチュアデスクとは薄い金属板で出来た安全器具で、建屋内が過圧された場合にこの金属板が破裂して内部のガスを大気へ放出する機能を持つ安全装置である。排気口は各ブロック毎に設置されるが、ベント管は一般的には各排気口を纏めて建屋の最上部へ導きガスを大気へ放出する。
【0066】
更にブロック本体の構造に関しては各ブロック同志の間を上下の境界面には延焼防止用の断熱床を設け、また水平の境界面では仕切り壁の断熱性を強化する補強を行う。これ等の改造は強度面でもブロック空間同志の補強になるので、万一ガス爆発等でブロッ空間内に過圧が掛かる場合に建屋を守るための保護壁になる。
【0067】
上記のようにブロックを複数階に分割することは、各階当たりの窒素置換に要する時間を短縮できるので、消火に係る時間を節減できる効果がある。また今回の試算ではワンブロックを水平断面で6分割したが、この分割数にこだわる必要はない。建屋の用途により分割数は4分割でも8分割でも構わない。
【0068】
建屋全体の外観については自由にデザインすることが可能である。今回の試算で建屋の内外周を共に円形と仮定したが、他にも矩形や多面形としても良い。本発明で参考とした住友林業クラスの容量の建屋であれば、外周を6面形又は8面形とし、これに内周壁を円形又は同形とすることが最良の組み合わせである。イメージは丸い花芯から5枚の花弁を持つ五辨の椿で、この形は建屋の強度や人間の動線から判断して本発明に相応しいデザインの一例である。。