特開2021-186657(P2021-186657A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2021-186657電極アレイを有するカテーテルを使用した不可逆電気穿孔法(IRE)アブレーションの適用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-186657(P2021-186657A)
(43)【公開日】2021年12月13日
(54)【発明の名称】電極アレイを有するカテーテルを使用した不可逆電気穿孔法(IRE)アブレーションの適用
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20211115BHJP
【FI】
   A61B18/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2021-56876(P2021-56876)
(22)【出願日】2021年3月30日
(31)【優先権主張番号】16/889,565
(32)【優先日】2020年6月1日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK47
(57)【要約】      (修正有)
【課題】不可逆電気穿孔法を適用するためのシステムを提供する。
【解決手段】カテーテルの遠位端に取り付けられ、患者の器官内の空洞に挿入され、前記空洞の内側表面と接触させられる複数の電極のアレイ50に接続された、プロセッサ41であって、ユーザから、前記空洞の前記内側表面上の、アブレーションされる1つ以上の組織セグメントを指定する入力を受け取り、不可逆電気穿孔法(IRE)信号で駆動されると指定された前記組織セグメントをアブレーションする、前記アレイ50内の前記電極の1つ以上の対を選択する、ように構成されているプロセッサ41と、前記IRE信号を前記電極の前記対に印加することによって、前記指定された組織セグメントをアブレーションするように構成されているIRE発生器37と、を備えるシステム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不可逆電気穿孔法を適用するためのシステムであって、
カテーテルの遠位端に取り付けられ、患者の器官内の空洞に挿入され、前記空洞の内側表面と接触させられる複数の電極のアレイに接続された、プロセッサであって、
ユーザから、前記空洞の前記内側表面上の、アブレーションされる1つ以上の組織セグメントを指定する入力を受け取り、
不可逆電気穿孔法(IRE)信号で駆動されると指定された前記組織セグメントをアブレーションする、前記アレイ内の前記電極の1つ以上の対を選択する、
ように構成されているプロセッサと、
前記IRE信号を前記電極の前記対に印加することによって、前記指定された組織セグメントをアブレーションするように構成されているIRE発生器と、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記ユーザに、前記空洞に対する前記アレイの位置を可視化し、可視化された前記位置に応じて前記入力を受け取るように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサが、前記ユーザに、前記アレイ内の、前記空洞の前記内側表面と接触している前記電極の部分的サブセットを示し、前記サブセットに応じて前記入力を受け取るように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記ユーザに、前記空洞の前記内側表面上の、前記アレイと接触している1つ以上の領域を示し、前記1つ以上の領域に応じて前記入力を受け取るように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記アレイが、平坦なアレイである、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
不可逆電気穿孔法の適用方法であって、
カテーテルの遠位端に取り付けられた複数の電極のアレイを、患者の器官内の空洞内に挿入することと、
前記アレイを前記空洞の内側表面と接触させることと、
ユーザから、前記内側表面上の、アブレーションされる1つ以上の組織セグメントを指定する入力を受け取ることと、
前記入力に応じて、プロセッサを使用して、不可逆電気穿孔法(IRE)信号で駆動されると指定された前記組織セグメントをアブレーションする、前記アレイ内の前記電極の1つ以上の対を選択することと、
前記IRE信号を前記電極の前記対に印加することによって、前記指定された組織セグメントをアブレーションすることと、
を含む方法。
【請求項7】
前記入力を受け取ることが、前記ユーザに、前記空洞に対する前記アレイの位置を可視化することと、可視化された前記位置に応じて前記入力を受け取ることと、を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記入力を受け取ることが、前記ユーザに、前記アレイ内の、前記空洞の前記内側表面と接触している前記電極の部分的サブセットを示すことと、前記サブセットに応じて前記入力を受け取ることと、を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記入力を受け取ることが、前記ユーザに、前記空洞の前記内側表面上の、前記アレイと接触している1つ以上の領域を示すことと、前記1つ以上の領域に応じて前記入力を受け取ることと、を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記アレイを前記空洞の前記内側表面と接触させることが、前記複数の電極を使用してインピーダンスを測定することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記アレイを前記空洞の前記内側表面と接触させることが、前記アレイの形状を測定することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記アレイを前記空洞の前記内側表面と接触させることが、前記アレイと前記表面との間の接触力を測定することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記アレイが、平坦なアレイである、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、医療用プローブに関し、詳細には、多電極カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用プローブであって、その遠位端の上に配置された複数の電極を有する様々な医療用プローブが、特許文献に提案されている。例えば、米国特許第9,867,978号は、狭い円筒形のチャネルを通って展開するのに適するように、軸方向に沿った形状に折り畳まれることができる可撓性足場材上の電極のアレイを記載している。上記の電極アレイは、脳の脳室システム内に配置することができ、脳内の電気的活動の空間的及び時間的位置を正確に特定し、正確に脳組織を電気的に刺激するための低侵襲性プラットフォームを構成し、脳内の異常な電気的活動によって引き起こされる病気を診断し、機能を回復させる。
【0003】
別の例として、米国特許出願公開第2005/0065509号には、電気エネルギーで肋膜をアブレーションするための装置が記載され、その装置には、カニューレの管腔内に配置され、カニューレの遠位端から展開可能な電極のアレイが含まれている。電極がカニューレから展開されたときには、カニューレの長手方向軸に対して実質的に垂直な方向に延伸し、平面を画定し得る。使用中、カニューレは、遠位端が肋膜に隣接するまで胸腔に挿入されてもよい。電極は、カニューレから前進され、電極の遠位部分が互いから離れて、一平面内に位置する。遠位部分は肋膜と接触して配置され、電極から電気エネルギーが送達されて、肋膜をアブレーションする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下に記載される本発明の一実施形態は、カテーテルの遠位端に取り付けられた複数の電極のアレイを、患者の器官内の空洞内に挿入することを含む方法を提供する。そのアレイは空洞の内側表面と接触させられる。内側表面上の、アブレーションされる1つ以上の組織セグメントを指定する、ユーザからの入力が受け取られる。入力に応じて、プロセッサを使用して、アレイ内の1つ以上の電極対が選択され、選択された電極の対は、不可逆電気穿孔法(IRE)信号で駆動されると、指定された組織セグメントをアブレーションする。指定された組織セグメントは、IRE信号を電極の対に印加することによってアブレーションされる。
【0005】
いくつかの実施形態では、入力を受け取ることは、ユーザに、空洞に対するアレイの位置を可視化することと、その可視化された位置に応じて入力を受け取ることと、を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、入力を受け取ることは、ユーザに、アレイ内の、空洞の内側表面と接触している電極の部分的サブセットを示すことと、そのサブセットに応じて入力を受け取ることと、を含む。
【0007】
他の実施形態では、入力を受け取ることは、ユーザに、空洞の内側表面上の、アレイと接触している1つ以上の領域を示すことと、その1つ以上の領域に応じて入力を受け取ることと、を含む。
【0008】
一実施形態では、アレイを空洞の内側表面と接触させることは、複数の電極を使用してインピーダンスを測定することを含む。
【0009】
別の実施形態では、アレイを空洞の内側表面と接触させることは、アレイの形状を測定することを含む。更に別の実施形態では、アレイを空洞の内側表面と接触させることは、アレイとその表面との間の接触力を測定することを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、アレイは、平坦なアレイである。
【0011】
また、本発明の別の実施形態によれば、プロセッサとIRE発生器とを含むシステムが更に提供される。プロセッサは、カテーテルの遠位端に取り付けられ、患者の器官内の空洞に挿入され、空洞の内側表面と接触させられる複数の電極のアレイに接続される。また、プロセッサは、(a)ユーザから、空洞の内側表面上の、アブレーションされる1つ以上の組織セグメントを指定する入力を受け取り、かつ(b)不可逆電気穿孔法(IRE)信号で駆動されると、指定された組織セグメントをアブレーションする、アレイ内の電極の1つ以上の対を選択する、ように構成されている。IRE発生器は、IRE信号を電極の対に印加することによって、指定された組織セグメントをアブレーションするように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
図1】本発明の例示的一実施形態による、複数の電極の平坦なアレイを含む、カテーテルベースの、不可逆電気穿孔法(IRE)アブレーションシステムを模式的に描写した図である。
図2】本発明の例示的一実施形態による、図1のカテーテルの複数の電極の平坦なアレイの側面図である。
図3】本発明の例示的一実施形態による、不可逆電気穿孔法(IRE)アブレーション用に選択された電極の対を強調している、図2の複数の電極の平坦なアレイの側面図である。
図4】本発明の例示的一実施形態による、図2の複数の電極の平坦なアレイを用いた不可逆電気穿孔法(IRE)を模式的に表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概論
パルスフィールドアブレーション(PFA)とも呼ばれる不可逆電気穿孔法(IRE)は、患者の器官の空洞の表面組織の組織細胞を、高電圧パルスにさらすことによって死滅させるための侵襲性治療様式として使用され得る。具体的には、IREパルスは、心不整脈を治療するために、心筋組織細胞(例えば心腔の心筋組織細胞)を死滅させるという潜在的用途を有する。特に注目に値するのは、双極電気パルスの使用(例えば、カテーテルの、組織と接触している一対の電極を使用)によって、電極間の組織細胞を死滅させることである。膜内外電位差が閾値を超えて細胞死をもたらし組織変性部の発達をもたらす際に、細胞破壊が生じる。
【0014】
選択された組織をアブレーションするためにIREを効果的に使用するためには、IREパルスを提供する電極を、選択された組織と接触させることができるということが重要である。これは、例えばフォーカルカテーテル又はバスケットカテーテルなどの、実質的に任意のカテーテルで可能であるが、組織の大きな領域がアブレーションされる場合には、これらのタイプのカテーテルは、電極が正確に位置決めされるように移動される必要がある。更に、心臓壁が動いている間も、電極が心臓表面の組織との接触を維持する必要があり、そのことは、特に、施術をより複雑にし、かつアブレーションを完了するのに必要な時間を増加させる可能性がある。
【0015】
複数の電極が同時に、互いにごく近接し、かつ表面組織と接触させられて位置決めされる場合に、それらの電極を使用すれば、IREアブレーションの有効性を高めることができる。なぜならば、そのような電極の使用により、印加される電界が強化されるためであり、また場合によっては、電界の方向を局所的に制御して、より良い選択能力を実現でき、心臓細胞のみを不可逆電気穿孔しやすくするからである。
【0016】
以下に記載される本発明の例示的な実施形態では、多数の電極を有する、例えば平坦なアレイカテーテルなどのアレイカテーテルを使用して、その平坦なアレイが挿入される患者の器官内の空洞の内側表面にIREパルスを印加する。
【0017】
例示的な一実施形態では、医師は、カテーテルの遠位端に取り付けられたアレイを空洞内に挿入し、アレイを空洞の内側表面と接触させる。医師は、内側表面上の、アブレーションされる1つ以上の組織セグメントを指定する。その指定の入力に応じて、プロセッサが、アレイ内の電極の1つ以上の対を選択し、それらの電極の対がIRE信号で駆動されると、指定された組織セグメントをアブレーションする。プロセッサが制御するIREパルス発生器が、IRE信号を電極の対に印加することによって、指定されたセグメントをアブレーションする。
【0018】
いくつかの例示的な実施形態では、アレイは平坦であるが、他の例示的な実施形態では、アレイは、例えばバスケットカテーテルのアレイなどのように湾曲している。アレイは、典型的には二次元アレイであるが、一次元アレイであってもよい。
【0019】
例示的な一実施形態では、医師(すなわち、ユーザー)からの入力は、空洞に対するアレイの位置を医師に対して可視化したものに基づいて行われる。別の例示的な一実施形態では、ユーザは、アレイ内の電極のうち、空洞の内側表面と接触している部分的サブセットを、入力として受け取る。更に別の例示的な一実施形態では、ユーザは、空洞の内側表面上の、アレイと接触している1つ以上の領域を示すものを、入力として受け取る。
【0020】
例示的な一実施形態では、医師は、カテーテルの電極アレイ内のどの電極が組織と接触しているかに関して示すものを受け取る。そのためには、例えば、Biosense Webster社に譲渡された米国特許出願公開第2019/0365463号に記載されているような、カテーテルの個々の電極の周波数応答を測定することによって、その電極が組織と物理的に接触しているかどうかを判定する方法を使用する。その後、以下に説明するように、アレイの少なくともこれらの電極を選択する。
【0021】
別の例示的な一実施形態では、医師は、開示された電極のアレイの、典型的には大きなエリアを使用して、アレイの電極と接触していると見なされる別個の組織領域を、例えば、各領域ごとに1つの電極のサブセットを選択することによって、同時にアブレーションし得る。
【0022】
例示的な一実施形態では、電極は、チューブ上の短い円筒として形成されるが、電極用の絶縁導線がチューブ内に設けられ、チューブは、例えば、Biosent−Webster社(カリフォルニア州)によって製造されたPicasso(商標)カテーテルにおいて見られるような、「ハエ叩き」形式で配備されている。電極をチューブの周囲に、比較的大量の円筒として形成することによって、電極は、それ自体が破壊されることなく、高いIRE電圧を伝達することができる。灌注流体もまた、チューブを通って搬送され得るが、それによって、電極の縁部を冷却して、電圧破壊を回避することができる。
【0023】
別の例示的な一実施形態では、電極は、拡張可能で可撓性を有する遠位端アセンブリの上に形成されるが、そのアセンブリは可撓性を有する2つの基材を備え、それらの基材上に、電極のアレイが、電極に至る導線と共に印刷されている。両基材は、平坦で可撓性を有するニチノール下地シートの両側でそれぞれセメント結合され、その中に灌注チャネルが形成される。灌注は、チャネルに接続された、基材内の孔を介して、電極付近の血液に冷却剤を流すことによって行われる。
【0024】
あるいは、血液と熱的に接触するチャネル内の閉ループ内を、冷却用の流体が循環するようになっていてもよい。拡張可能で可撓性を有する遠位端アセンブリで、2つの冷却オプションを有するものが、「Flexible Distal−End Assembly With Double−Sided Electrode Array And Irrigation」と題された、2020年4月17日出願の、米国特許出願第16/852165号(その開示内容は、参照により、本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0025】
上記の開示される方法では、カテーテルは、電気的追跡システム及び/又は磁気的追跡システムを使用して、組織の所望の部分に誘導される。ひとたび所定の位置にカテーテルが配置されると、カテーテルを使用する医師は、提供されたプロトコルを利用して、IREアブレーションにどの電極が使用されるべきかを選択し、かつIREパルスのパラメータを選択する。
【0026】
アレイ(例えば、平坦なアレイ)カテーテルを使用し、電極対及びIREパラメータを選択することによって、開示される方法は、広いエリア及び複雑な組織の解剖学的構造に対して、効率的かつ一貫したアブレーションを実現することができる。
【0027】
システムの説明
図1は、本発明の例示的一実施形態による、平坦な電極アレイカテーテル21を含む、カテーテルベースの、不可逆電気穿孔法(IRE)アブレーションシステム20を模式的に描写した図である。システム20は、インセット25においてはシャフト22の遠位端に取り付けられて示されている、複数の電極55の平坦なアレイ50(図2)、例としては、前述のPicasso(商標)カテーテルの位置を決定し、患者28の心臓26の標的となる心臓組織をIREアブレーションするために使用される。
【0028】
医師30は、カテーテルの近位端の近くのマニピュレータ32を使用し、かつ/又はシース23からの偏向を利用して、シャフト22を操作することによって、平坦なアレイ50を心臓26内の標的となる組織位置に誘導する。平坦なアレイ50は折り畳まれた構成で、シース23を通して挿入され、シース23が後退した後でのみ、平坦アレイ50が、その意図された機能的形状を回復する。平坦なアレイ50を折り畳まれた構成で収容することにより、シース23はまた、標的となる位置までの経路に沿った血管の外傷を最小限に抑える働きもする。
【0029】
典型的には、平坦なアレイ50は、例えば、心臓を空間的にマッピングすること、及び心臓組織のアブレーションを行う前に心臓内のそれぞれの電位をマッピングすることなど、診断又は治療処置に使用される。
【0030】
上述のように、平坦アレイ50は、電極の大面積アセンブリの上に配設された複数の電極(図2に見られる)を含み、複数の用途(すなわち、誘導、感知、及びアブレーション)を有する。電極は、コンソール24内のプロセッサ制御式スイッチング回路38(例えば、リレーのアレイ)を含むIREパルス発生器37に、シャフト22を通って延びるワイヤによって接続される。回路38を使用して、システムプロセッサ又は医師は、IREパルスを印加するために、どの電極をパルス発生器37に接続するかを選択してもよい。
【0031】
コンソール24は、典型的には汎用コンピュータであるプロセッサ41を含み、そのプロセッサ41は、パッチ電極49から信号を受け取るための好適な、フロントエンド及びインターフェース回路44を有する。電極49からの信号は、以下に記載される先進的カテーテル位置決定(Advanced Catheter Location ACL)式のカテーテル位置追跡方法で使用される、心電図(ECG)信号及び/又は位置信号であってもよい。プロセッサ41は、患者26の胸部の皮膚に取り付けられたパッチ電極49に、ケーブル39を通って延びるワイヤによって接続されている。
【0032】
いくつかの例示的な実施形態では、プロセッサ41は、心臓26内の平坦な電極アレイ50の電極の位置座標を正確に判定する。プロセッサ41は、(カテーテル上の)電極とACLパッチ電極49との間の測定されたインピーダンスなどの入力情報に基づいて(すなわち、下記のACL法を使用して)、位置座標を判定する。コンソール24は、心臓内に位置するカテーテルの遠位端を示すディスプレイ27を駆動する。
【0033】
プロセッサ41が、平坦なアレイ50の電極の少なくとも一部分の、患者の心臓内における推定位置を計算すると、その後は、その電極から受け取った任意の所与の信号、例えば電気生理学的信号を、信号が取得された位置と関連付けることができる。
【0034】
システム20を使用するACL式電極位置感知方法は、様々な医療的用途において実装されているが、その例としては、Biosense−Webster社(カリフォルニア州、アーバイン)により製造されているCARTO(商標)システムが挙げられる。上記の方法に関しては、米国特許第7,756,576号、同第7,869,865号、及び同第7,848,787号に詳細に記述されており、これらの開示は全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
コンソール24は、磁気感知サブシステムを更に含む。患者28は、ユニット43によって駆動される磁場発生器コイル42を含むパッドによって発生された磁界内に置かれる。コイル42によって生成された磁界は、平坦なアレイ50の直ぐ近位側に取り付けられた、磁気センサ51(インセット25内に図示)内に位置信号を生成する。信号は、対応する電気的入力情報としてプロセッサ41に更に提供され、プロセッサ41は、それらの入力情報を使用して、例えば、ACL法により導出された電極の位置及び/又は空洞内での平坦なアレイ50の配向を補正するための、平坦なアレイ50のロール角を計算する。
【0036】
外部磁界を使用するこの位置検知方法は、様々な医療用途において実装されているが、その例としては、Biosense Webster社(カリフォルニア州アーバイン)により製造されているCARTO(商標)システムが挙げられる。上記の方法に関しては、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に詳述されており、これらの開示は全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
プロセッサ41は、通常、ソフトウェアにおいて本明細書に記載されている機能を実行するようにプログラムされている。ソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができるか、又は代替として若しくはこれに加えて、磁気メモリ、光学メモリ若しくは電子メモリなどの、非一時的実体的媒体上に提供及び/又は記憶することができる。具体的に言えば、プロセッサ41は、自身が図4に記載されているステップを実行することを可能にする専用アルゴリズムを稼働させる。
【0038】
図1は、簡潔性かつ明瞭性のために、開示される技術に関する要素のみを示す。システム20は、典型的に、開示される技術には直接関連せず、したがって図1及び対応する説明から意図的に省略されている、追加のモジュール及び要素を備える。上述したACL法と同様の平坦なアレイ50上の電極の、心臓26内での位置を追跡するために使用され得る別の位置追跡技術が、2018年4月30日出願の、「Improved Active Voltage Location(AVL)Resolution」と題された米国特許出願第15/966,514号に記載されている。なお、同出願は、本特許出願の譲受人に譲渡され、その文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
二層式電極アレイ用及び灌注用の可撓性遠位端アセンブリ
図2は、本発明の例示的な実施形態による、図1のカテーテル21の複数の電極55の平坦なアレイ50の側面図である。図示の電極アレイアセンブリ(すなわち、電極の平坦なアレイ)は、前述のPicasso(商標)カテーテルのものであるが、上述したように、他の平坦な電極アレイアセンブリを使用してもよい。
【0040】
図示されているように、平坦なアレイ50は、チューブ57上に取り付けられた円筒形電極55のアレイを備える。アレイは、電極間距離70及び72によって特徴付けられる。電極間距離70及び72は、任意の2つの電極55間に加えられる双極電気パルスの所与の電圧に対して、それらの電極55間の組織に印加される電界の強度を決定する。更に、力線60及び61によって示されるように、例えば、より良い選択性を以って心筋細胞を死滅させるために最も好適であるとみなされる電界の方向に従って、電極対が選択され得る。
【0041】
図2は、電極55のサブセットを含む領域62を概略的に説明するが、それらの電極55は、IREアブレーションを適用するために、スイッチング回路38に命令を下すプロセッサ41を使用して選択される。図3に関連づけて、解剖学的要因主導の選択法及び/又は生理学的要因主導の選択法、並びにIREアブレーションのための電極55のサブセットの使用法について説明する。
【0042】
最後に、冷却流体は、電圧破壊を回避するために、チューブ57を通って電極縁部まで搬送される。冷却流体は、閉ループ内で循環してもよい。あるいは場合により、チューブは、電極の縁部付近の血液中に、冷却流体(例えば、生理食塩水溶液)を流す(灌注する)ための灌注孔59を含んでもよい。
【0043】
図3は、本発明の例示的一実施形態による、図2の複数の電極55の平坦アレイ50の側面図であり、別個の組織領域74及び174をそれぞれ、不可逆電気穿孔法(IRE)によりアブレーションするために選択された電極75のサブセット及び電極175のサブセットが強調表示されている。
【0044】
図示されている例示的な一実施形態では、プロセッサ41は、例えば、カテーテルの個々の電極と組織との物理的接触を決定するための電気的、機械的、又は他の利用可能な方法の1つを使用して、電極アレイの電極75のサブセット及び電極175のサブセットが、それぞれ組織領域74及び174と接触していると判定する。図示されているように、選択された電極75及び175は、組織と接触していないと見なされる電極76とは対照的に、黒色で影付きで表されている。したがって、プロセッサ41は、電極75及び175を選択した後、スイッチングアセンブリ38に、電極75及び電極175をIREパルス発生器37に接続させ、電極75の対の間に双極IREパルスを印加させ、電極175の対の間には双極IREパルスを別個に印加させるように、命令する。しかしながら、2つの領域が近接している場合、プロセッサは、電極75及び電極175を一つにまとめて、IREアブレーションのための最良の電極接続構成を決定してもよい。
【0045】
プロセッサ41は、双極IREパルスを含むIREアブレーションプロトコルを選択するために使用される。カテーテル21の電極75及び電極175と共に使用され得るIREアブレーション設定の一例が、表Iによって与えられている。
【0046】
【表1】
【0047】
表Iのプロトコルに見られるように、印加される電界の方向は、ユーザにより選択される。図3は、電極75と接触している異なる組織領域78、80、82、84、及び86がIREパルスを受け取って、それぞれ方向88、90、92、94、及び96に沿って配向された電界を生じるように、医師30が選択してパルスを印加しているのを示す。このような選択は、例えば、心筋線維細胞を選択的に死滅させるために適した既知の心筋線維細胞のアラインメントに適したものであってもよい。ユーザが電界方向を選択することを可能にするための可能な手段の1つは、選択された電界方向をプロセッサに入力して、その入力にしたがって、それらの間にパルスを印加する電極75の対を選択させるグラフィカルユーザインターフェースである。しかしながら、多数の予め設定された可能な方向のうちの1つを選択することなど、他の方法が使用されてもよい。
【0048】
図4は、本発明の例示的一実施形態による、図2の複数の電極55の平坦なアレイ50を用いた不可逆電気穿孔法(IRE)を適用する方法を、模式的に表すフローチャートである。ここに提示された実施形態では、このアルゴリズムは、平坦アレイ誘導工程102において、医師30が、例えば、電極55をACL感知電極として使用して、患者の器官内の標的となる組織の位置(例えば、心臓の小孔など)へと平坦なアレイ50を誘導する場合に開始されるプロセスを実行する。
【0049】
次に、平坦アレイ位置決め工程104において、医師30は、平坦なアレイ50を小孔に位置決めする。続いて、電極物理的接触判定及び電極選択工程106において、プロセッサ41は、どの電極55が組織と接触しているかを決定し、医師30は、IREパルスを印加させるために、これらの電極の少なくとも一部を選択する。
【0050】
次に、電極構成設定工程108において、プロセッサ41は、ユーザ入力を受け取るが、その入力は、例えば工程106からの入力であってもよく、かつ/又は、電界が組織に印加されるべき1つ以上の予め定められた方向(例えば、遠位端の長手方向軸に対しての方向)の形での入力であってもよい。上記の予め定められた方向は、上述のように、組織領域ごとに異なっていてもよい。必要な電界方向に基づいて、プロセッサ41は、それらの間にIREパルスが印加されるべき、選択された電極の対を決定する。
【0051】
次に、対電極接続工程110において、プロセッサ41は、決定された構成にしたがって、スイッチングアセンブリ38を制御して、電極の対をIREパルス発生器37に接続させる。
【0052】
次いで、IREパラメータ選択工程112において、プロセッサ41は、IREアブレーションパラメータ(例えば、パルスの数及びピーク電圧)を含むアブレーションプロトコル(例えば、メモリからのアップロード)を受け取る。この段階で、医師はパラメータの一部を修正し得る。あるいは、プロトコルは、上記の手順のより早い段階でロードされ、この段階で利用可能に準備されていてもよい。
【0053】
最後に、IRE処理工程114において、プロセッサ41は、IREパルス発生器37に、選択された電極55の対を介して、方向性IREパルスを組織に印加するように命令する。
【0054】
図4は、純粋に明確にするために示されている例示的なフローである。潅注を適用するなど、追加の工程が含まれてもよい。代替的実施形態では、任意の他の好適な方法のフローが用いられ得る。例えば、心筋細胞の配向に関する十分な情報がない場合には、プロセッサ41は、スイッチングアセンブリ38を制御して、組織の同じ領域に対して複数の(典型的には2つの)異なる配向で、IREパルスを印加させてもよい。例えば、プロセッサ41は、スイッチングアセンブリ38を制御して、2つの互いに直交する方向にIREパルスを印加してもよい。
【0055】
本明細書に記述される例示的実施形態は、主に心臓用途に関するものであるが、本明細書に記載される方法及びシステムは、神経科、耳鼻咽喉科、及び腎臓部の除神経術などの他の医療用途で用いることもできる。
【0056】
したがって、上記の実施形態は例として挙げたものであり、本発明は上述に具体的に示し説明したものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の記載を一読すると当業者が着想すると思われるそれらの変形及び修正であって、先行技術に開示されていない変形及び修正を含む。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部と見なすものとする。
【0057】
〔実施の態様〕
(1) 不可逆電気穿孔法の適用方法であって、
カテーテルの遠位端に取り付けられた複数の電極のアレイを、患者の器官内の空洞内に挿入することと、
前記アレイを前記空洞の内側表面と接触させることと、
ユーザから、前記内側表面上の、アブレーションされる1つ以上の組織セグメントを指定する入力を受け取ることと、
前記入力に応じて、プロセッサを使用して、不可逆電気穿孔法(IRE)信号で駆動されると指定された前記組織セグメントをアブレーションする、前記アレイ内の前記電極の1つ以上の対を選択することと、
前記IRE信号を前記電極の前記対に印加することによって、前記指定された組織セグメントをアブレーションすることと、
を含む方法。
(2) 前記入力を受け取ることが、前記ユーザに、前記空洞に対する前記アレイの位置を可視化することと、可視化された前記位置に応じて前記入力を受け取ることと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記入力を受け取ることが、前記ユーザに、前記アレイ内の、前記空洞の前記内側表面と接触している前記電極の部分的サブセットを示すことと、前記サブセットに応じて前記入力を受け取ることと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記入力を受け取ることが、前記ユーザに、前記空洞の前記内側表面上の、前記アレイと接触している1つ以上の領域を示すことと、前記1つ以上の領域に応じて前記入力を受け取ることと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記アレイを前記空洞の前記内側表面と接触させることが、前記複数の電極を使用してインピーダンスを測定することを含む、実施態様1に記載の方法。
【0058】
(6) 前記アレイを前記空洞の前記内側表面と接触させることが、前記アレイの形状を測定することを含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記アレイを前記空洞の前記内側表面と接触させることが、前記アレイと前記表面との間の接触力を測定することを含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記アレイが、平坦なアレイである、実施態様1に記載の方法。
(9) 不可逆電気穿孔法を適用するためのシステムであって、
カテーテルの遠位端に取り付けられ、患者の器官内の空洞に挿入され、前記空洞の内側表面と接触させられる複数の電極のアレイに接続された、プロセッサであって、
ユーザから、前記空洞の前記内側表面上の、アブレーションされる1つ以上の組織セグメントを指定する入力を受け取り、
不可逆電気穿孔法(IRE)信号で駆動されると指定された前記組織セグメントをアブレーションする、前記アレイ内の前記電極の1つ以上の対を選択する、
ように構成されているプロセッサと、
前記IRE信号を前記電極の前記対に印加することによって、前記指定された組織セグメントをアブレーションするように構成されているIRE発生器と、
を備えるシステム。
(10) 前記プロセッサが、前記ユーザに、前記空洞に対する前記アレイの位置を可視化し、可視化された前記位置に応じて前記入力を受け取るように構成されている、実施態様9に記載のシステム。
【0059】
(11) 前記プロセッサが、前記ユーザに、前記アレイ内の、前記空洞の前記内側表面と接触している前記電極の部分的サブセットを示し、前記サブセットに応じて前記入力を受け取るように構成されている、実施態様9に記載のシステム。
(12) 前記プロセッサが、前記ユーザに、前記空洞の前記内側表面上の、前記アレイと接触している1つ以上の領域を示し、前記1つ以上の領域に応じて前記入力を受け取るように構成されている、実施態様9に記載のシステム。
(13) 前記アレイが、平坦なアレイである、実施態様9に記載のシステム。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】
2021186657000001.pdf