【解決手段】本システム、デバイス、及び技術は、心電図(ECG)データを感知するように構成された複数の体表面電極を含む。本システム、デバイス、及び技術は、複数の履歴ECGデータ及び複数の履歴ECGデータのそれぞれに基づいて決定された対応する不整脈位置を受信することと、複数の履歴ECGデータ及び対応する不整脈位置に基づいて学習システムを訓練することと、学習システムに基づいてモデルを生成することと、を行うように構成された、ニューラルネットワークを含むプロセッサを含む。新しいECGデータが、複数の体表面電極から受信され得、プロセッサは、新しいECGデータに基づいて新しい不整脈位置を提供し得る。更に、新しいコヒーレントマッピング調整が、履歴コヒーレントマッピング調整を使用して訓練されたモデルに基づいて提供され得る。
受信された前記複数の履歴ECGデータ及び対応する不整脈位置が、前記対応する不整脈位置における成功裏に治療された不整脈に対応する、請求項1に記載のシステム。
ニューラルネットワークを備える前記プロセッサが、前記対応する不整脈位置のうちの少なくとも1つにスコアを割り当てるように更に構成されており、前記スコアは、前記対応する不整脈位置のうちの前記少なくとも1つのノイズ確率に対応する、請求項1に記載のシステム。
前記対応する不整脈位置のうちの少なくとも1つにスコアを割り当てることを更に含み、前記スコアが、前記対応する不整脈位置のうちの前記少なくとも1つのノイズ確率に対応している、請求項11に記載の方法。
前記コヒーレントマッピング調整が、呼吸変化、心腔壁へのカテーテルの機械的影響、及び不整脈中の心腔動態の変化のうちの少なくとも任意の1つ又はそれらの組み合わせを含む、請求項16に記載のシステム。
ニューラルネットワークを備える前記プロセッサが、前記新しいマッピングデータの少なくとも一部分にスコアを割り当てるように更に構成されており、前記スコアが、前記新しいマッピングデータの前記少なくとも一部分のノイズ確率に対応する、請求項16に記載のシステム。
前記スコアが0〜1の範囲内であり、ニューラルネットワークを備える前記プロセッサが、スコアが0の結果として、前記モデルの少なくとも1つの新しいコヒーレントマッピング調整をフィルタ除去するように更に構成されている、請求項19に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
開示される主題の例示的な実施形態によると、医療処置は、不整脈が治療され得るように、不整脈位置をマッピングするために成功裏に使用される履歴心電図(ECG)データを適用して、不整脈位置を推定することによって最適化され得る。
【0009】
加えて、開示される主題の例示的な実施形態によると、心臓マッピング/レンダリングは、位置ベースのマッピングに加えて、いくつかの要因に基づいて改善され得る。このような要因は、所与の心臓マッピングから望ましくない外部性が補正される期間(例えば、30秒)にわたる、所与の患者及び対応するマッピングの評価に基づいて改善され得る。このような望ましくない外部性は、これらに限定されないが、ノイズ、周期的データ(例えば、呼吸)、位置補正などであり得る。本明細書に開示されるように、訓練データは、所与のモデルが、ある期間(例えば、30秒)にわたる新しい患者の評価を必要とすることなく、新たな心臓マッピングのためのこのような望ましくない外部性を自動的に補正するように訓練されるように提供され得る、複数のそのような修正を含み得る。
【0010】
図1は、患者の生体指標(すなわち、患者データ)を遠隔監視及び通信するための例示的なシステム100のブロック図である。
図1に示す実施例では、システム100は、患者104に関連付けられた患者生体計測監視及び処理装置102、ローカルコンピューティングデバイス106、遠隔コンピューティングシステム108、第1のネットワーク110、及び第2のネットワーク120を含む。
【0011】
一実施形態によれば、監視及び処理装置102は、患者の身体の内部にある装置(例えば、皮下移植可能)であってもよい。監視及び処理装置102は、経口注射、静脈又は動脈を介した外科的挿入、内視鏡処置、又は腹腔鏡処置を含む任意の適用可能な方法を介して患者に挿入されてもよい。
【0012】
一実施形態によれば、監視及び処理装置102は、患者の外部にある装置であってもよい。例えば、以下により詳細に記載されるように、監視及び処理装置102は、取り付け可能なパッチ(例えば、患者の皮膚に取り付けられる)を含んでもよい。監視及び処理装置102はまた、1つ以上の電極を有するカテーテル、プローブ、血圧カフ、体重計、ブレスレット又はスマートウォッチ生体計測トラッカー、グルコースモニタ、持続気道陽圧(continuous positive airway pressure、CPAP)マシン、又は患者の健康若しくは生体指標に関する入力を提供し得る実質的に任意のデバイスを含み得る。
【0013】
一実施形態によれば、監視及び処理装置102は、患者の内部にある構成要素及び患者の外部にある構成要素の両方を含むことができる。
【0014】
単一の監視及び処理装置102が、
図1に示されている。しかしながら、例示的なシステムは、複数の患者生体計測監視及び処理装置を含んでもよい。患者生体計測監視及び処理装置は、1つ又は2つ以上の他の患者生体計測監視及び処理装置と通信してもよい。追加的に又は代替的に、患者生体計測監視及び処理装置は、ネットワーク110と通信し得る。
【0015】
1つ又は2つ以上の監視及び処理装置102は、患者生体計測データ(例えば、電気信号、血圧、体温、血糖値又は他の生体計測データ)を取得することができ、かつ取得された患者の生体指標を表す患者生体計測データの少なくとも一部分、並びに1つ又は2つ以上の他の監視及び処理装置102から取得された患者の生体指標に関連付けられた追加情報を受信することができる。追加情報は、例えば、ウェアラブルデバイスなどの追加のデバイスから得られる診断情報及び/又は追加情報であってもよい。各監視及び処理装置102は、それ自体の取得された患者の生体指標、並びに1つ又は2つ以上の他の監視及び処理装置102から受信されたデータを含むデータを処理してもよい。
【0016】
図1では、ネットワーク110は、近距離ネットワーク(例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、又はパーソナルエリアネットワーク(PAN))の一例である。情報は、近距離ネットワーク110を介し、Bluetooth、Wi−Fi、Zigbee、Z−Wave、近接場通信(near field communication、NFC)、ウルトラバンド、Zigbee、又は赤外線(infrared、IR)などの様々な近距離ワイヤレス通信プロトコルのうちのいずれか1つを使用して、監視及び処理装置102とローカルコンピューティングデバイス106の間で送信され得る。
【0017】
ネットワーク120は、有線ネットワーク、無線ネットワークであってもよく、又は1つ又は2つ以上の有線及び無線ネットワークを含んでもよい。例えば、ネットワーク120は、長距離ネットワーク(例えば、広域ネットワーク(WAN)、インターネット、又はセルラーネットワーク)であってもよい。情報は、様々な長距離無線通信プロトコル(例えば、TCP/IP、HTTP、3G、4G/LTE、又は5G/New Radio)のいずれか1つを使用して、ネットワーク120を介して送信されてもよい。
【0018】
患者監視及び処理装置102は、患者生体計測センサ112、プロセッサ114、ユーザ入力(UI)センサ116、メモリ118、及び送信受信機(すなわち、送受信機)122を含むことができる。患者監視及び処理装置102は、ネットワーク110を介して、任意の数の様々な患者の生体指標を継続的又は周期的に監視、記憶、処理、及び通信してもよい。患者の生体指標の例としては、電気信号(例えば、ECG信号及び脳生体指標)、血圧データ、血糖データ、及び体温データが挙げられる。患者の生体指標は、心臓血管疾患(例えば、不整脈、心筋症、及び冠動脈疾患)及び自己免疫疾患(例えば、I型及びII型糖尿病)などの任意の数の様々な疾患にわたって治療するために監視及び通信され得る。
【0019】
患者生体計測センサ112は、例えば、生体計測患者の生体指標の種類を感知するように構成された1つ又は2つ以上のセンサを含み得る。例えば、患者生体計測センサ112は、電気信号(例えば、心臓信号、脳信号又は他の生体電気信号)を取得するように構成された電極、体温センサ、血圧センサ、血糖センサ、血液酸素センサ、pHセンサ、加速度計、及びマイクロフォン)を含み得る。
【0020】
以下でより詳細に説明されるように、患者生体計測監視及び処理装置102は、心臓のECG信号を監視するためのECGモニタであり得る。ECGモニタの患者生体計測センサ112は、ECG信号を取得するための1つ又は2つ以上の電極を含んでもよい。ECG信号は、様々な心臓血管疾患の治療に使用され得る。
【0021】
別の例では、患者生体計測監視及び処理装置102は、I型及びII型糖尿病などの様々な疾患を治療するために、患者の血糖値を継続ベースで連続的に監視するための連続的グルコースモニタ(continuous glucose monitor)であってもよい。CGMは、患者の間質液から血糖値を監視することができる、皮下に配置された電極を含んでもよい。CGMは、例えば、ユーザの介入のないインスリンの計算された送達のために、血糖データがインスリンポンプに送られる閉ループシステムの構成要素であってもよい。
【0022】
送受信機122は、別個の送信機及び受信機を含むことができる。あるいは、送受信機122は、単一のデバイスに統合された送信機及び受信機を含んでもよい。
【0023】
プロセッサ114は、患者生体計測センサ112によって取得されたメモリ118内の患者生体計測データなどの患者データを記憶し、送受信機122の送信機を介してネットワーク110上で患者データを通信するように構成されてもよい。1つ又は2つ以上の他の監視及び処理装置102からのデータはまた、以下により詳細に記載されるように、送受信機122の受信機によって受信されてもよい。
【0024】
一実施形態によれば、監視及び処理装置102は、例えば、タップ又はタッチなどのユーザ入力を受信するように構成された圧電センサ又は静電容量センサであり得るUIセンサ116を含む。例えば、UIセンサ116は、患者104が監視及び処理装置102の表面をタップ又はタッチすることに応答して、容量結合を実施するように制御され得る。ジェスチャ認識は、抵抗容量性、表面容量性、投影容量性、表面弾性波、圧電及び赤外線タッチなどの、様々な容量型のうちのいずれか1つを介して実装することができる。静電容量センサは、表面のタップ又はタッチが監視デバイスを起動させるように、表面の小さい領域又は長さにわたって配置されてもよい。
【0025】
以下でより詳細に説明するように、プロセッサ114は、UIセンサ116であり得る静電容量センサの異なるタッピングパターン(例えば、シングルタップ又はダブルタップ)に選択的に応答するように構成され得、その結果、動作期間の異なるタスク(例えば、データの取得、記憶、又は送信)が、検出されたパターンに基づいてアクティブ化され得る。いくつかの実施形態では、ジェスチャが検出されると、可聴フィードバックが処理装置102からユーザに与えられてもよい。
【0026】
システム100のローカルコンピューティングデバイス106は、患者生体計測監視及び処理装置102と通信し、第2のネットワーク120を介して遠隔コンピューティングシステム108へのゲートウェイとして機能するように構成されてもよい。ローカルコンピューティングデバイス106は、例えば、ネットワーク120を介して他のデバイスと通信するように構成された、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット、又は他のポータブルスマートデバイスであってもよい。あるいは、ローカルコンピューティングデバイス106は、例えば、モデム及び/又はルータ能力を含む固定された基地局、PCの無線モジュールを介して処理装置102と遠隔コンピューティングシステム108との間で情報を通信するための実行可能プログラムを使用するデスクトップコンピュータ又はラップトップコンピュータ、又はUSBドングルなどの、固定式又はスタンドアローンデバイスであってもよい。患者の生体指標は、ローカルエリアネットワーク(LAN)(例えば、パーソナルエリアネットワーク(PAN))などの近距離無線ネットワーク110を介して、近距離無線技術規格(例えば、Bluetooth、Wi−Fi、ZigBee、Z−波、及び他の近距離無線規格)を使用して、ローカルコンピューティングデバイス106と患者生体計測監視及び処理装置102との間で通信されてもよい。いくつかの実施形態では、ローカルコンピューティングデバイス106はまた、以下により詳細に記載されるように、取得された患者電気信号及び取得された患者電気信号に関連する情報を表示するように構成されてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、遠隔コンピューティングシステム108は、監視された患者の生体指標及び監視された患者に関連付けられた情報のうちの少なくとも一方を、長距離ネットワークであるネットワーク120を介して受信するように構成されてもよい。例えば、ローカルコンピューティングデバイス106が携帯電話である場合、ネットワーク120は、無線セルラーネットワークであってもよく、情報は、上述の無線技術のいずれかなどの無線技術規格を介してローカルコンピューティングデバイス106と遠隔コンピューティングシステム108との間で通信されてもよい。以下により詳細に記載されるように、遠隔コンピューティングシステム108は、患者の生体指標及び関連する情報のうちの少なくとも一方を医療専門家(例えば、医師)に提供する(例えば、視覚的に表示及び/又は聴覚的に提供する)ように構成されてもよい。
【0028】
図2は、ネットワーク120と通信するコンピューティング環境200の実施例のシステム図である。いくつかの例では、コンピューティング環境200は、パブリッククラウドコンピューティングプラットフォーム(Amazon Web Services又はMicrosoft Azureなど)、ハイブリッドクラウドコンピューティングプラットフォーム(HP Enterprise OneSphereなど)又はプライベートクラウドコンピューティングプラットフォームに組み込まれる。
【0029】
図2に示すように、コンピューティング環境200は、本明細書で説明される実施形態が実装され得るコンピューティングシステムの一実施例である遠隔コンピューティングシステム108(以下、コンピュータシステム)を含む。
【0030】
遠隔コンピューティングシステム108は、1つ又は2つ以上のプロセッサを含み得るプロセッサ220を介して、様々な機能を実行し得る。これら機能は、監視された患者の生体指標及び関連する情報を分析することと、医師によって決定された又はアルゴリズム駆動された閾値及びパラメータに従って、警告、追加の情報又は命令を(例えば、ディスプレイ266を介して)提供することとを含み得る。以下でより詳細に説明されるように、遠隔コンピューティングシステム108を使用して、患者情報のダッシュボードを(例えば、ディスプレイ266を介して)医療従事者(例えば、医師)に提供し得、このような情報は、医療従事者が他の患者よりも重大な必要性を有する患者を識別し、優先することを可能にし得る。
【0031】
図2に示すように、コンピュータシステム210は、バス221などの通信メカニズム、又はコンピュータシステム210内の情報を通信するための他の通信メカニズムを含み得る。コンピュータシステム210は、情報を処理するためにバス221と連結された1つ又は2つ以上のプロセッサ220を更に含む。プロセッサ220は、1つ又は2つ以上のCPU、GPU、又は当技術分野において既知の任意の他のプロセッサを含み得る。
【0032】
コンピュータシステム210はまた、プロセッサ220によって実行される情報及び命令を格納するためにバス221に連結されたシステムメモリ230を含む。システムメモリ230は、読み出し専用システムメモリ(read only system memory、ROM)231及び/又はランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)232などの揮発性及び/又は不揮発性メモリの形態のコンピュータ可読記憶媒体を含み得る。システムメモリRAM232は、他の動的ストレージデバイス(複数可)(例えば、ダイナミックRAM、スタティックRAM、及びシンクロナスDRAM)を含み得る。システムメモリROM231は、他の静的ストレージデバイス(複数可)(例えば、プログラマブルROM、消去可能PROM、及び電気的消去可能PROM)を含み得る。加えて、システムメモリ230を使用して、プロセッサ220による命令の実行中に一時変数又は他の中間情報を格納し得る。基本入力/出力システム233(basic input/output system、BIOS)は、始動中などにコンピュータシステム210内の要素間で情報を伝送するルーチンを含み得、このルーチンはシステムメモリROM231に格納され得る。RAM232は、プロセッサ220によって直ちにアクセス可能であり、及び/又はプロセッサ220によって現在操作されているデータ及び/又はプログラムモジュールを備え得る。システムメモリ230は、例えば、オペレーティングシステム234、アプリケーションプログラム235、他のプログラムモジュール236及びプログラムデータ237を更に含み得る。
【0033】
図示されたコンピュータシステム210はまた、磁気ハードディスク241及び取り外し可能な媒体ドライブ242(例えば、フロッピーディスクドライブ、コンパクトディスクドライブ、テープドライブ、及び/又はソリッドステートドライブ)などの、情報及び命令を格納するための1つ又は2つ以上のストレージデバイスを制御するために、バス221に連結されたディスクコントローラ240を含む。ストレージデバイスは、適切なデバイスインターフェース(例えば、スモールコンピュータシステムインターフェース(small computer system interface、SCSI)、インテグレイティッドデバイスエレクトロニクス(integrated device electronics、IDE)、ユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus、USB)、又はFireWire)を使用して、コンピュータシステム210に追加され得る。
【0034】
コンピュータシステム210はまた、コンピュータユーザに情報を表示するための、陰極線管(cathode ray tube、CRT)又は液晶ディスプレイ(liquid crystal display、LCD)などのモニタ又はディスプレイ266を制御するためにバス221に連結されたディスプレイコントローラ265を含み得る。図示されたコンピュータシステム210は、ユーザ入力インターフェース260、及び、コンピュータユーザとインタラクションし、プロセッサ220に情報を提供するためのキーボード262及びポインティングデバイス261などの、1つ又は2つ以上の入力デバイスを含む。ポインティングデバイス261は、例えば、プロセッサ220に方向情報及びコマンド選択を通信するための、及びディスプレイ266上のカーソル移動を制御するための、マウス、トラックボール、又はポインティングスティックであり得る。ディスプレイ266は、ポインティングデバイス261及び/又はキーボード262による方向情報及びコマンド選択の通信を補完するか、又は置換することを可能にし得るタッチスクリーンインターフェースを提供し得る。
【0035】
コンピュータシステム210は、システムメモリ230などのメモリに含まれる1つ又は2つ以上の命令の1つ又は2つ以上のシーケンスを実行するプロセッサ220に応答して、本明細書に説明される機能及び方法の一部分又はそれぞれを実行し得る。このような命令は、ハードディスク241又は取り外し可能な媒体ドライブ242などの別のコンピュータ可読媒体からシステムメモリ230に読み出され得る。ハードディスク241は、本明細書に記載される実施形態によって使用される1つ又は2つ以上のデータストア及びデータファイルを含み得る。データストアコンテンツ及びデータファイルは、セキュリティを改善するために暗号化されてもよい。プロセッサ220はまた、システムメモリ230に含まれる命令の1つ又は2つ以上のシーケンスを実行するために、マルチ処理構成で採用され得る。代替的な実施形態では、ハードワイヤード回路は、ソフトウェア命令の代わりに、又はソフトウェア命令と組み合わせて使用することができる。したがって、実施形態は、ハードウェア回路とソフトウェアとの任意の特定の組み合わせに限定されない。
【0036】
上述のように、コンピュータシステム210は、本明細書に記載された実施形態に従ってプログラムされた命令を保持するための、及び本明細書に説明されるデータ構造、テーブル、レコード、又は他のデータを含むための、少なくとも1つのコンピュータ可読媒体又はメモリを含み得る。本明細書で使用されるコンピュータ可読媒体という用語は、実行のためにプロセッサ220に命令を提供することに関与する、任意の非一時的な有形媒体を指す。コンピュータ可読媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、及び伝送媒体を含むがこれらに限定されない多くの形態をとることができる。不揮発性媒体の非限定的な実施例としては、ハードディスク241又は取り外し可能な媒体ドライブ242などの、光ディスク、ソリッドステートドライブ、磁気ディスク、及び光磁気ディスクが挙げられる。揮発性媒体の非限定的な実施例としては、システムメモリ230などの動的メモリが挙げられる。伝送媒体の非限定的な実施例としては、バス221を構成するワイヤを含む、同軸ケーブル、銅線、及び光ファイバが挙げられる。伝送媒体はまた、電波及び赤外線データ通信の間に生成されるものなどの音響波又は光波の形態をとることができる。
【0037】
コンピューティング環境200は、ローカルコンピューティングデバイス106、及びパーソナルコンピュータ(ラップトップ又はデスクトップ)、モバイルデバイス(例えば、患者モバイルデバイス)、サーバ、ルータ、ネットワークPC、ピアデバイス又は他の共通ネットワークノードなどの1つ又は2つ以上の他のデバイスへの論理接続を使用して、ネットワーク化された環境内で動作するコンピュータシステム210を更に含み得、通常、コンピュータシステム210に関して上述した要素の多く又は全てを含む。ネットワーク環境で使用される場合、コンピュータシステム210は、インターネットなどのネットワーク120を介して通信を確立するためのモデム272を含み得る。モデム272は、ネットワークインターフェース270を介して、又は別の適切なメカニズムを介してシステムバス221に接続され得る。
【0038】
図1及び
図2に示されるようなネットワーク120は、インターネット、イントラネット、ローカルエリアネットワーク(local area network、LAN)、広域ネットワーク(wide area network、WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(metropolitan area network、MAN)、直接接続若しくは一連の接続、セルラー電話ネットワーク、又はコンピュータシステム610と他のコンピュータ(例えば、ローカルコンピューティングデバイス106)の間の通信を容易にし得る任意の他のネットワーク若しくは媒体を含む、当技術分野で一般的に知られている任意のネットワーク又はシステムであり得る。
【0039】
図3は、本開示の1つ以上の機能が実装され得る例示的なデバイス300のブロック図である。デバイス300は、例えば、ローカルコンピューティングデバイス106であり得る。デバイス300は、例えば、コンピュータ、ゲームデバイス、ハンドヘルドデバイス、セットトップボックス、テレビ、携帯電話、又はタブレットコンピュータを含むことができる。デバイス300は、プロセッサ302、メモリ304、ストレージデバイス306、1つ以上の入力デバイス308、及び1つ以上の出力デバイス310を含む。デバイス300はまた、任意選択的に、入力ドライバ312及び出力ドライバ314を含むことができる。デバイス300は、人工知能アクセレレータを含む、
図3に示されていない追加の構成要素を含み得ることを理解されたい。
【0040】
様々な代替例では、プロセッサ302は、中央処理装置(central processing unit、CPU)、グラフィック処理ユニット(graphics processing unit、GPU)、同じダイ上に配置されたCPU及びGPU、又は1つ以上のプロセッサコアを含み、各プロセッサコアはCPU又はGPUであり得る。様々な代替例では、メモリ304は、プロセッサ302と同一のダイ上に位置するか、又はプロセッサ302とは別個に位置する。メモリ304は、揮発性メモリ又は不揮発性メモリ、例えば、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、ダイナミックRAM、又はキャッシュを含む。
【0041】
ストレージデバイス306は、固定又は取り外し可能な記憶手段、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、光ディスク、又はフラッシュドライブを含む。入力デバイス308は、これらに限定されないが、キーボード、キーパッド、タッチスクリーン、タッチパッド、検出器、マイクロフォン、加速度計、ジャイロスコープ、生体計測スキャナ、又はネットワーク接続(例えば、ワイヤレスIEEE802信号の送信及び/又は受信のためのワイヤレスローカルエリアネットワークカード)を含む。出力デバイス310は、これらに限定されないが、ディスプレイ、スピーカ、プリンタ、触覚フィードバックデバイス、1つ以上のライト、アンテナ、又はネットワーク接続(例えば、ワイヤレスIEEE802信号の送信及び/又は受信のためのワイヤレスローカルエリアネットワークカード)を含む。
【0042】
入力ドライバ312は、プロセッサ302及び入力デバイス308と通信し、プロセッサ302が入力デバイス308から入力を受信することを可能にする。出力ドライバ314は、プロセッサ302及び出力デバイス310と通信し、プロセッサ302が出力デバイス310に出力を送信することを可能にする。入力ドライバ312及び出力ドライバ314は任意の構成要素であり、入力ドライバ312及び出力ドライバ314が存在しない場合、デバイス300は同じ方式で動作することに留意されたい。出力ドライバ316は、ディスプレイデバイス318に結合された加速処理デバイス(accelerated processing device、「APD」)316を含む。APDは、プロセッサ302から計算コマンド及びグラフィックレンダリングコマンドを受容し、それらの計算コマンド及びグラフィックレンダリングコマンドを処理し、表示のためにディスプレイデバイス318に画素出力を提供する。以下に更に詳細に説明されるように、APD 316は、1つ以上の並列処理ユニットを含み、単一命令多重データ(single-instruction-multiple-data、「SIMD」)パラダイムに従って計算を実行する。したがって、様々な機能性が、様々な代替形態において、APD 316によって又はそれと共に実行されるものとして本明細書に説明されているが、APD 316によって実行されるものとして説明される機能性は、追加的に又は代替的に、ホストプロセッサ(例えば、プロセッサ302)によって駆動されず、グラフィカル出力をディスプレイデバイス318に提供する、同様の能力を有する他のコンピューティングデバイスによって実行される。例えば、SIMDパラダイムに従って処理タスクを実行する任意の処理システムは、本明細書に説明される機能性を実行し得ることが企図される。代替的に、SIMDパラダイムに従って処理タスクを実行しないコンピューティングシステムは、本明細書に記載される機能性を実行することが企図される。
【0043】
図4は、
図3の例示的なデバイスを組み込んだ人工知能システム200のグラフィック描写を示す。システム400は、データ410、マシン420、モデル430、複数の転帰440及び基盤となるハードウェア450を含む。システム400は、複数の転帰440を予測できるようにするモデル430を構築しながら、データ410を使用してマシン420を訓練することによって動作する。システム400が、ハードウェア450に対して動作してもよい。このような構成では、データ410は、ハードウェア450に関連し得、例えば装置102から生じ得る。例えば、データ410は、進行中のデータ又はハードウェア450に関連する出力データであり得る。マシン420は、ハードウェア450に関連付けられた、又はこれに関連付けられ得るコントローラ又はデータコレクタとして動作し得る。モデル430は、ハードウェア450によって達成される転帰を予測するために、ハードウェア450の動作をモデル化すると共に、ハードウェア450から収集されたデータ410をモデル化するように構成され得る。ハードウェア450は、予測される転帰440を使用して、ハードウェア450からの所定の望ましい転帰440を提供するように構成され得る。
【0044】
図5は、
図4の人工知能システム500において実行される方法を示す。方法500は、ステップ510でハードウェアからデータを収集することを含む。このデータは、ハードウェアからの現在収集されている履歴データ又は他のデータを含んでもよい。例えば、このデータは、外科的処置中の測定を含んでもよく、処置の転帰と関連付けることができる。例えば、心臓の温度を収集し、心臓処置の転帰と相関させることができる。
【0045】
方法500は、ステップ520でハードウェア上でマシンを訓練することを含む。訓練は、ステップ510で収集されたデータの分析及び相関を含み得る。例えば、心臓の場合、温度及び転帰のデータを訓練して、処置中の心臓の温度と転帰との間に相関又は関連が存在するか否かを判定し得る。
【0046】
方法500は、ステップ530でハードウェアに関連するデータに基づいてモデルを構築することを含む。モデルの構築が、以下に説明するように、物理的ハードウェア又はソフトウェアモデリング、アルゴリズムモデリングなどを含んでもよい。このモデリングが、収集され訓練されたデータを表現することを目指してもよい。
【0047】
方法500は、ステップ540でハードウェアに関連するモデルの転帰を予測することを含む。この転帰の予測が、訓練されたモデルに基づいてもよい。例えば、心臓の場合、処置中の温度が97.7〜100.2の時に処置から肯定的な転帰が得られると、所与の処置において、処置中の心臓の温度に基づいて転帰を予測することができる。このモデルは初歩的なものであるが、例示的な目的のため、及び本発明の理解を深めるために提供されている。
【0048】
本システム及び方法は、マシンを訓練し、モデルを構築し、アルゴリズムを使用して結果を予測するように動作する。これらのアルゴリズムを使用して、訓練されたモデルを解き、ハードウェアに関連する転帰を予測してもよい。これらのアルゴリズムは、一般に分類アルゴリズム、回帰アルゴリズム及びクラスタリングアルゴリズムに区分することができる。
【0049】
例えば、分類アルゴリズムは、予測される変数である従属変数が複数のクラスに分割され、所与の入力に対して1つのクラス、すなわち従属変数を予測する状況で使用される。したがって、分類アルゴリズムは、転帰を所定数の一定の事前定義された転帰から予測するために使用される。分類アルゴリズムが、単純ベイズアルゴリズム、決定木、ランダムフォレスト分類器、ロジスティック回帰、サポート・ベクター・マシン及びk近傍法を含んでもよい。
【0050】
一般的に、単純ベイズアルゴリズムは、ベイズ定理に従い、確率論的アプローチに従う。他の確率論に基づくアルゴリズムも使用可能であり、一般に、例示的な単純ベイズアルゴリズムについて以下に説明するものと同様の確率論の原理を使用して動作することが理解されよう。
【0051】
図6は、単純ベイズ計算の確率の例を示す。ベイズ定理の確率論的アプローチは、本質的には、データに直接ジャンプする代わりに、アルゴリズムがターゲットのクラスごとに一組の事前確率を有することを意味する。データが入力された後、単純ベイズアルゴリズムは、事前確率を更新して事後確率を形成してもよい。これは、以下の式:
【0053】
この単純ベイズアルゴリズム及びベイズアルゴリズムは、一般に、入力がn個のクラスの所与のリストに属しているか否かを予測する必要がある場合に有用であり得る。n個全てのクラスの確率は非常に低いため、確率論的アプローチを使用することができる。
【0054】
例えば、
図6に示すように、ゴルフをプレーする人は、第1のデータセット610に示されている外の天気を含む要因に依存する。第1のデータセット610は、第1の列に天気を示し、第2の列にその天気に関連するプレーの結果を示す。頻度テーブル620では、特定の事象が発生する頻度が生成される。頻度テーブル620では、ある人が各気象条件においてゴルフをプレーするか又はプレーしない頻度が求められる。そこから、尤度テーブルがコンパイルされ、初期確率が生成される。例えば、天気が曇りである確率は0.29だが、プレーの一般的な確率は0.64である。
【0055】
事後確率が、尤度テーブル630から生成されてもよい。これらの事後確率を、気象条件及びゴルフがそれらの気象条件でプレーされるか否かについての質問に答えるように構成してもよい。例えば、外が晴れであり、かつゴルフがプレーされる確率は、ベイズ式:
P(はい|晴れ)=P(晴れ|はい)×P(はい)/P(晴れ)
によって表されてもよい。
【0056】
尤度テーブル630によると、
P(晴れ|はい)=3/9=0.33、
P(晴れ)=5/14=0.36、
P(はい)=9/14=0.64
である。
【0057】
したがって、P(はい|晴れ)=.33×.64/.36又は約0.60(60%)である。
【0058】
一般に、決定木はフローチャートに似たツリー構造であり、各外部ノードは属性のテストを示し、各ブランチはそのテストの結果を表す。リーフノードは、実際の予測ラベルを含む。決定木は、ツリーのルートから始まり、リーフノードに到達するまで属性値が比較される。決定木は、高次元のデータを処理する場合や、データの準備に費やされた時間がほとんどない場合に、分類器として使用できる。決定木は、単純決定木、線形決定木、代数決定木、確定的決定木、ランダム化決定木、非確定的決定木及び量子決定木の形態をとることができる。例示的な決定木を、以下に
図7で示す。
【0059】
図7は、ゴルフをプレーするか否かを決定する際の、上記のベイズの例と同じ構造に沿った決定木を示している。決定木において、第1のノード710は、決定木を下に進むための選択肢として、天気が晴れ712、曇り714及び雨716である場合を調べる。天気が晴れである場合、木の枝は、気温を調べる第2のノード720に続く。この例では、ノード720の気温は、高722又は正常724であり得る。ノード720で気温が高722である場合、ゴルフ「いいえ」723の予測結果が発生する。ノード720で気温が正常724である場合、ゴルフ「はい」725の予測結果が発生する。
【0060】
更に、第1のノード710から、曇り714、ゴルフ「はい」715の結果が発生する。
【0061】
第1のノードの天気710から、雨716の結果として、(再び)第3のノード730が気温を調べる。第3のノード730で気温が正常732である場合、ゴルフをプレーする「はい」733となる。第3のノード730で気温が低734である場合、ゴルフをプレーしない「いいえ」735となる。
【0062】
この決定木から、あるゴルファーは曇天715の場合、正常の気温の晴天725の場合及び正常の気温の雨天733の場合はゴルフをプレーするが、このゴルファーは晴天の高温723又は降雨の低温735の場合はプレーしない。
【0063】
ランダムフォレスト分類器は、決定木のコミッティーであり、各決定木は、データの属性のサブセットを与えられ、そのサブセットに基づいて予測する。決定木の実際の予測値のモードが考慮され、最終的なランダムフォレストの回答が提供される。ランダムフォレスト分類器は一般に、スタンドアロンの決定木に存在する過剰適合を軽減することで、より堅牢で正確な分類器となっている。
【0064】
図8は、衣服の色を分類するための例示的なランダムフォレスト分類器を示す。
図8に示すように、ランダムフォレスト分類器は、5つの決定木8101、8102、8103、8104及び8105(集合的に又は概略的に決定木810と呼ばれる)を含む。それぞれの木は、衣服の色を分類するように設計されている。個々の木は概ね
図7の決定木として動作するので、木及び決定の各々については説明しない。この図では、5つの木のうち3つ(8101、8102、8104)が衣服が青色であると判定し、1つが衣服が緑色(8103)であると判定し、残りの木は衣服が赤色(8105)であると判定する。ランダムフォレストは、5つの木のこれらの実際の予測値を受け取り、実際の予測値のモードを計算して、衣服が青色であるというランダムフォレストの回答を提供する。
【0065】
ロジスティック回帰は、バイナリ分類タスクのもう1つのアルゴリズムである。ロジスティック回帰は、シグモイド関数とも呼ばれるロジスティック関数に基づいている。このS字曲線は、任意の実数値を取り、これを0と1との間でマッピングして、漸近的にこれらの限界に近づくことができる。ロジスティックモデルは、合格/不合格、勝ち/負け、生存/死亡又は健康/病気など、特定のクラス又は事象が存在する確率をモデル化するために使用できる。これを、画像に猫、犬、ライオンなどが含まれているかどうかの判定など、いくつかのクラスのイベントをモデル化するように拡張してもよい。画像で検出される各オブジェクトには、0と1との間の確率が割り当てられ、これらの確率の合計は1となる。
【0066】
ロジスティックモデルでは、「1」とラベル付けされた値の対数オッズ(オッズの対数)は、1つ又は2つ以上の独立変数(「予測子」)の線形結合であり、独立変数はそれぞれ、バイナリ変数(インジケータ変数でコード化された2つのクラス)又は連続変数(任意の実数値)であり得る。「1」とラベル付けされた値の対応する確率は、0(確実に「0」の値)と1(確実に「1」の値)との間で変化する可能性があることから、このようにラベル付けされ、ロジスティック関数は、対数オッズを確率に変換する関数であることから、このように称される。対数オッズスケールの測定単位は、ロジスティック単位の別名であるロジットと呼ばれる。プロビットモデルなどの、ロジスティック関数の代わりにシグモイド関数が異なる類似のモデルも使用できる。ロジスティックモデルの特徴は、独立変数のうちの1つを増加させると、与えられた結果のオッズが一定の割合で乗法的にスケーリングされ、各独立変数がそれ自体のパラメータを有することと定義される。バイナリ従属変数の場合、これはオッズ比を一般化する。
【0067】
バイナリロジスティック回帰モデルでは、従属変数には2つのレベル(カテゴリ)がある。3つ以上の値を持つ出力は、多項ロジスティック回帰によってモデル化され、複数のカテゴリが順序付けられている場合は、順序ロジスティック回帰(例えば、比例オッズ順序ロジスティックモデル)によってモデル化される。ロジスティック回帰モデル自体は、出力の確率を入力に関して単純にモデル化し、統計的分類を実行しない(分類器ではない)が、例えば、カットオフ値を選択し、確率がカットオフよりも大きい入力を1つのクラスとして、確率がカットオフ未満である入力を他のクラスとして分類することにより、分類器の作成に使用できる。これは、バイナリ分類器を作成する一般的な方法である。
【0068】
図9は、例示的なロジスティック回帰を示す。この例示的なロジスティック回帰は、変数のセットに基づいた結果の予測を可能にする。例えば、個人の成績点平均に基づいて、学校に受け入れられる結果が予測され得る。成績点平均の過去の履歴と合格との関係により、予測を行うことができる。
図9のロジスティック回帰は、成績点平均変数920の分析が、0から1によって定義される結果910を予測することを可能にする。S字曲線の下端930では、成績点平均920は、受け入れられないという結果910を予測する。S字曲線の上端940では、成績点平均920は、受け入れられるという結果910を予測する。ロジスティック回帰を使用して、住宅価値、保険セクタの顧客生涯価値などを予測することができる。
【0069】
サポート・ベクター・マシン(support vector machine:SVM)を使用して、2つのクラス間のマージンを可能な限り離してデータを並べ替えることができる。これは、マージン最大化分離と呼ばれる。SVMは、その目的のためにデータセット全体を使用する線形回帰とは異なり、超平面をプロットしながらサポートベクトルを考慮することができる。
【0070】
図10は、例示的なサポート・ベクター・マシンを示す。例示的なSVM1000では、データは、正方形1010及び三角形1020として表される2つの異なるクラスに分類され得る。SVM1000は、ランダムな超平面1030を描画することによって動作する。この超平面1030は、超平面1030と各クラスからの最も近いデータポイント1050との間の距離(線1040で示される)を比較することによって監視される。超平面1030に最も近いデータポイント1050は、サポートベクターとして知られている。超平面1030は、これらのサポートベクター1050に基づいて描かれ、最適な超平面は、各サポートベクター1050からの最大距離を有する。超平面1030とサポートベクター1050との間の距離は、マージンとして知られている。
【0071】
SVM1000は、超平面1030とサポートベクター1050との間の距離が最大になるように超平面1030を使用することによって、データの分類に使用され得る。このようなSVM1000は、例えば心臓疾患を予測するために使用され得る。
【0072】
k近傍法(k Nearest Neighbors:KNN)は、一般に基本的なデータ分散を想定しておらず、合理的に短い訓練フェーズを実行する一連のアルゴリズムを指す。一般に、KNNは複数のクラスに分割された多数のデータポイントを使用して、新しいサンプルポイントの分類を予測する。運用上、KNNは新しいサンプルで整数Nを指定する。新しいサンプルに最も近いシステムのモデル内のN個のエントリが選択される。これらのエントリの最も一般的な分類が決定され、その分類が新しいサンプルに割り当てられる。KNNは一般に、訓練セットが増加するにつれて記憶空間を増加させる必要がある。これは、推定時間が訓練ポイントの数に比例して増加することも意味する。
【0073】
回帰アルゴリズムでは、出力は連続量であるため、目標変数が連続的な変数である場合に回帰アルゴリズムを使用することができる。線形回帰は、回帰アルゴリズムの一般的な例である。線形回帰は、一貫した変数を考慮して、真の品質(住宅コスト、コール回数、全ての取引など)を測定するために使用可能である。変数と結果との間の関係が、最適な線を当てはめることによって求められる(このことから線形回帰と呼ばれる)。この最適線は回帰線として知られ、直接条件Y=a×X+bで表される。線形回帰は、次元数が少ないアプローチで最もよく使用される。
【0074】
図11は、例示的な線形回帰モデルを示す。このモデルでは、予測変数1110が測定変数1120に対してモデル化される。予測変数1110及び測定変数1120のインスタンスのクラスタは、データポイント1130としてプロットされている。次に、データポイント1130は、最適線1140に当てはめられる。次に、後続の予測で最適線1140を使用するが、測定変数1120が与えられている場合、線1140を使用してそのインスタンスの予測変数1110を予測する。線形回帰を使用して、金融ポートフォリオ、給与予測、不動産及び交通機関の到着予定時刻をモデル化及び予測することができる。
【0075】
クラスタリングアルゴリズムを、データセットのモデル化及び訓練に使用してもよい。クラスタリングでは、入力は、特徴の類似性に基づいて2つ又は3つ以上のクラスタに割り当てられる。クラスタリングアルゴリズムは、通常、ガイダンスなしでデータからパターン及び有用な洞察を学習する。例えば、K平均クラスタリングなどの教師なし学習アルゴリズムを使用して、視聴者を興味、年齢、地理などに基づいて類似のグループにクラスタリングすることができる。
【0076】
K平均クラスタリングは、一般に、単純な教師なし学習アプローチとみなされる。K平均クラスタリングでは、同様のデータポイントを一緒にクラスタリングし、クラスタの形でバインドすることができる。データポイントを一緒にバインドする方法の1つは、データポイント群の重心を計算することによって行われる。効果的なクラスタの決定では、K平均クラスタ化で、各ポイントのクラスタの重心からの距離が評価される。データポイントと重心との間の距離に応じて、データは最も近いクラスタに割り当てられる。クラスタリングの目的は、一連のラベルなしデータの固有のグループ化を決定することである。K平均における「K」は、形成されたクラスタの数を表す。クラスタの数(基本的には、データの新しいインスタンスが分類され得るクラスの数)は、ユーザが決定できる。この決定は、例えば、フィードバックを使用し、訓練中にクラスタのサイズを見ることで行うことができる。
【0077】
K平均は、主に、データセットが明確で十分に分離された点を有する場合に使用され、そうでなければ、クラスタが分離されていない場合、モデル化はクラスタを不正確にし得る。また、K平均は、データセットが多数の外れ値を含む場合、又はデータセットが非線形である場合に、回避され得る。
【0078】
図12は、K平均クラスタリングを示す。K平均クラスタリングでは、データポイントがプロットされ、K値が割り当てられる。例えば、
図12のK=2の場合、データポイントは、描写1210に示されるようにプロットされる。次に、ステップ1220で、ポイントが同様の中心に割り当てられる。クラスタの重心が、1230に示すように特定される。重心が特定されると、1240に示すように、データポイントと各クラスタの重心との間の距離が最小となるようにポイントがクラスタに再割り当てされる。次に、クラスタの新しい重心を描写1250に示すように決定することができる。データポイントがクラスタに再割り当てされると、新しいクラスタ重心が形成され、反復又は一連の反復が発生してクラスタのサイズを最小化し、最適な重心の重心を決定することができる。次に、新しいデータポイントが測定されると、その新しいデータポイントが重心及びクラスタと比較され、そのクラスタで特定され得る。
【0079】
アンサンブル学習アルゴリズムを使用してもよい。これらのアルゴリズムは、複数の学習アルゴリズムを使用して、構成要素である学習アルゴリズムのいずれかのみから得られるよりも優れた予測パフォーマンスを実現する。アンサンブル学習アルゴリズムは、仮説空間を検索するタスクを実行して、特定の問題について適切な予測を行うのに適した仮説を見つける。仮説空間に特定の問題に非常に適した仮説が含まれている場合でも、適切な仮説を見つけるのは非常に難しい場合がある。アンサンブルアルゴリズムは、複数の仮説を組み合わせてより良い仮説を形成する。アンサンブルという用語は通常、同じ基本学習器を使用して複数の仮説を生成する方法で用いられる。複数分類器システムのより広い概念は、同じ基本学習器によって誘導されない仮説のハイブリダイゼーション(hybridization of hypotheses)も網羅する。
【0080】
アンサンブルの予測を評価するには、通常、単一のモデルの予測を評価するよりも多くの計算が必要になるため、アンサンブルは、多くの余分な計算を実行することにより、貧弱な学習アルゴリズムを補う方法と考えることができる。決定木などの高速アルゴリズムは、一般にはランダムフォレストなどのアンサンブル法で使用されているが、より低速のアルゴリズムでもアンサンブル法の恩恵を受けることができる。
【0081】
アンサンブルは、訓練後に使用して予測を行うことができるため、それ自体が監視付き学習アルゴリズムである。したがって、訓練されたアンサンブルは、単一の仮説を表す。ただし、この仮説は、それが構築されたモデルの仮説空間内に含まれているとは限らない。したがって、アンサンブルは、それらが表すことができる関数により多くの柔軟性を持たせることができる。この柔軟性により、理論的には、単一のモデルよりも訓練データを過剰適合させることができるが、実際には、一部のアンサンブル法(特にバギング)は、訓練データの過剰適合に関連する問題を軽減する傾向がある。
【0082】
経験的に、モデル間にかなりの多様性がある場合、アンサンブルアルゴリズムはより良い結果をもたらす傾向がある。したがって、多くのアンサンブル法は、それらが組み合わせるモデル間の多様性を促進することを目指している。直感的ではないが、(エントロピ削減決定木などの)非常に慎重なアルゴリズムよりも強力なアンサンブルを生成するために、(ランダム決定木などの)よりランダムなアルゴリズムを使用することができる。ただし、様々な強力な学習アルゴリズムの使用は、多様性を促進するためにモデルを簡略化しようとする手法を使用するよりも効果的であることが示されている。
【0083】
アンサンブルの構成要素分類器の数は、予測の精度に大きな影響を与える。アンサンブルのサイズとビッグデータストリームの量及び速度とを先験的に決定することは、これを、オンラインアンサンブル分類器にとって、更に重要にする。理論上のフレームワークは、理想的な数の構成要素分類器がアンサンブルに存在し、分類器がこの数より多いか又は少ないと精度が低下することを示唆している。理論上のフレームワークは、クラスラベルと同じ数の独立した構成要素分類器を使用すると、最も高い精度が得られることを示している。
【0084】
アンサンブルのいくつかの一般的なタイプには、ベイズ最適分類器、ブートストラップ集約(バギング)、ブースティング、ベイズモデル平均化、ベイズモデルの組み合わせ、モデルのバケット及びスタッキングが含まれる。
図13は、バギングが並行して実行されており(1310)、ブースティングが順次に実行されている(1320)例示的なアンサンブル学習アルゴリズムを示している。
【0085】
ニューラルネットワークは、ニューロンのネットワーク又は回路、あるいは現代的な意味では、人工ニューロン又はノードで構成される人工ニューラルネットワークである。生物学的ニューロンのつながりが、重みとしてモデル化される。正の重みは興奮性のつながりを反映し、負の値は抑制性のつながりを意味する。入力は重みで修正され、線形結合を使用して合計される。活性化関数が、出力の振幅を制御することができる。例えば、出力の許容範囲は通常0〜1であるが、−1〜1の場合もある。
【0086】
これらの人工ネットワークは、予測モデリング、適応制御及びアプリケーションに使用でき、データセットを介して訓練することができる。経験から生じる自己学習がネットワーク内で発生する可能性があり、複雑で一見無関係な一組の情報から結論を導き出すことができる。
【0087】
完全を期すために、生物学的ニューラルネットワークは、化学的に結合されたニューロン又は機能的に関連付けられたニューロンのグループから構成される。1つのニューロンが他の多くのニューロンに結合されていてもよく、ネットワーク内のニューロン及び接続の総数が広範囲にわたってもよい。シナプスと呼ばれる結合は、通常、軸索から樹状突起へと形成されるが、樹状突起間シナプス及び他の結合も可能である。電気的な信号伝達とは別に、神経伝達物質の拡散から生じる他の信号伝達形態がある。
【0088】
人工知能、認知モデリング及びニューラルネットワークは、生物学的神経システムのデータ処理方法に着想を得た情報処理パラダイムである。人工知能及び認知モデリングは、生物学的ニューラルネットワークのいくつかの特性をシミュレートしようとする。人工知能分野では、人工ニューラルネットワークが音声認識、画像分析及び適応制御にうまく適用され、(コンピュータゲームやビデオゲームにおける)ソフトウェアエージェントや自律ロボットが構築されている。
【0089】
ニューラルネットワーク(neural network:NN)は、人工ニューラルネットワーク(artificial neural network:ANN)又はシミュレートニューラルネットワーク(simulated neural network:SNN)と呼ばれる人工ニューロンの場合、情報処理に計算への接続論的アプローチに基づいて数学的モデル又は計算モデルを使用する、相互に関連する天然のニューロン又は人工ニューロンのグループである。ほとんどの場合、ANNは、ネットワークを通って流れる外部情報又は内部情報に基づいてその構造を変更する適応型システムである。より実際的には、ニューラルネットワークは非線形の統計データモデリングツール又は意思決定ツールである。これらを、入力と出力の間の複雑な関係をモデル化するため及びデータのパターンを見つけるために使用することができる。
【0090】
人工ニューラルネットワークは、処理要素と要素パラメータとの間の接続によって決定される複雑でグローバルな挙動を示すことができる単純な処理要素(人工ニューロン)のネットワークを含む。
【0091】
人工ニューラルネットワークの1つの古典的なタイプは、再帰型ホップフィールドネットワークである。人工ニューラルネットワークモデルの有用性は、観測から関数を推定し、それを使用するために使用できるという事実にある。教師なしニューラルネットワークは、入力分布の顕著な特徴をキャプチャする入力の表現の学習や、最近では、観測データの分布関数を暗黙的に学習できるディープラーニングアルゴリズムにも使用できる。ニューラルネットワークでの学習は、データやタスクの複雑さのためにそのような関数の設計を手作業では行えない用途において特に有用である。
【0092】
ニューラルネットワークは、様々な分野で使用可能である。人工ニューラルネットワークが適用されるタスクは、関数近似、又は時系列予測及びモデリングを含む回帰分析、パターン及び配列認識、新規性の検出及び逐次的な意思決定を含む分類、フィルタリング、クラスタリング、ブラインド信号分離及び圧縮を含むデータ処理を含む広いカテゴリにわたる傾向がある。
【0093】
ANNの適用領域には、非線形システムの識別及び制御(車両制御、プロセス制御)、ゲームのプレー及び意思決定(バックギャモン、チェス、レース)、パターン認識(レーダーシステム、顔識別、オブジェクト認識)、シーケンス認識(ジェスチャ、スピーチ、手書きテキスト認識)、医療診断、金融アプリケーション、データマイニング(又はデータベースでの知識発見、すなわち「KDD」)、視覚化並びに電子メールスパムフィルタリングが含まれる。例えば、オブジェクト認識のために訓練された写真から生じるユーザの興味のセマンティックプロファイルを作成することが可能である。
【0094】
図14は、例示的なニューラルネットワークを示す。ニューラルネットワークには、1410
1や1410
2などの複数の入力で表される入力層がある。入力1410
1、1410
2は、ノード1420
1、1420
2、1420
3、1420
4を含むものとして示されている隠れ層に供給される。これらのノード1420
1、1420
2、1420
3、1420
4は組み合わされて、出力層において出力1430を生成する。ニューラルネットワークは、単純な処理要素であるノード1420
1、1420
2、1420
3、1420
4の隠れ層を介して単純な処理を実行し、これらのノードは、処理要素と要素パラメータとの間の接続によって決定される複雑でグローバルな挙動を示すことができる。
【0095】
図14のニューラルネットワークがハードウェアで実装されてもよい。
図15を参照すると、ハードウェアベースのニューラルネットワークが示されている。
【0096】
心不整脈及び特に心房細動は、特に老年人口では、一般的かつ危険な病状として根強く残っている。正常な洞律動を有する患者では、心房、心室、及び興奮伝導組織からなる心臓は、電気的に興奮して、同期的な、パターン化した形で拍動する。心不整脈を有する患者では、心臓組織の異常領域は、正常な洞調律を有する患者におけるような、通常の伝導組織に関連する同期的な拍動周期には従わない。これに対して、心組織の異常領域では隣接組織への異常な伝導が行われ、これにより心臓周期が乱れて非同期的な心律動となる。こうした異常伝導は、例えば、房室(AV)結節及びヒス束の伝導経路に沿った洞房(SA)結節の領域、又は心室及び心房の壁を形成する心筋組織など、心臓の様々な領域で生じることがこれまでに知られている。
【0097】
心房性不整脈を含めた心不整脈は、心房の周りで散乱して、しばしば自己伝播する電気インパルスの複数の非同期的ループを特徴とする、マルチウェーブレットリエントラント型となる場合がある。マルチウェーブレットリエントラント型に代わって、又はそれに加えて、心不整脈はまた、心房の組織の孤立領域が、急速で反復的な様式で自律的に興奮する場合などの、局所的な起源を有する場合もある。心室性頻脈症(V−tach又はVT)は、心室のうちの1つにおいて起こる頻脈症又は高速な心律動である。これは、心室細動及び突然死につながり得るため、潜在的に致死性の不整脈である。
【0098】
不整脈の1つのタイプ、心房細動は、洞房結節によって生成される通常の電気インパルスが、心房及び肺静脈内で生じる無秩序な電気インパルスによって圧倒され、不規則なインパルスが心室に伝導する場合に発生する。結果的に不規則な心拍が生じ、これは、数分から数週間、又は更に数年間、持続する場合がある。心房細動(AF)は、多くの場合、脳卒中による場合が多い死亡のリスクの僅かな増加を招く、慢性的な症状である。リスクは年齢と共に増加する。80歳を超える人々の約8%が、ある程度のAFを有している。心房細動は、無症候性である場合が多く、それ自体は概ね致死性ではないが、動悸、脱力感、失神、胸痛及び鬱血性心不全をもたらす恐れがある。脳卒中のリスクはAFの間に増大するが、これは、収縮が不十分な心房及び左心耳内に血液が溜まって血栓を形成する可能性があるためである。AFに関する第一選択の治療法は、心拍数を減らすか、又は心律動を通常に戻す、投薬治療である。更には、AFを有する患者は、脳卒中のリスクから守るために、抗凝血剤を与えられる場合が多い。そのような抗凝血剤の使用は、それ自体のリスクである内出血を伴う。一部の患者では、投薬治療は十分ではなく、その患者のAFは、薬剤不応性である、すなわち、標準的な薬理学的介入では治療不可能であると考えられる。同期電気的除細動もまた、AFを通常の心律動に変換するために使用することができる。あるいは、AFの患者は、カテーテルアブレーションによって治療される。
【0099】
カテーテルアブレーションベースの治療は、心臓組織、特に心内膜及び心臓容積の電気的特性をマッピングすること、並びにエネルギーの印加によって心臓組織を選択的にアブレーションすることを含み得る。心臓マッピング、例えば、心臓組織に沿った波動伝播の電位マップ(電圧マップ)、又は様々な組織位置点までの到達時間のマップ(局所興奮時間(local time activation、LAT)マップ)を生成することは、心臓マッピングに基づくものなどの局所的心臓組織機能不全アブレーションを検出し得るが、心臓のある部分から別の部分への望ましくない電気信号の伝播を停止又は修正することができる。
【0100】
アブレーション法は、非伝導性の損傷部を形成することによって望ましくない電気経路を破壊するものである。様々なエネルギー送達の様式が、損傷部を形成する目的でこれまでに開示されており、心臓組織壁に沿って伝導ブロックを作成するためのマイクロ波、レーザ、及びより一般的には無線周波エネルギーの使用が挙げられる。マッピングに続いてアブレーションを行う2段階の処置においては、通常、1つ又は2つ以上の電気センサ(又は電極)を収納したカテーテルを心臓の内部に前進させ、多数の点におけるデータを取得することによって、心臓内の各点における電気活動が感知及び測定される。次いでこれらのデータを利用して、アブレーションが実施される心内膜の標的領域が選択される。
【0101】
心房細動及び心室頻拍などの困難な疾患を医師が治療する際の心臓アブレーション及びその他の心臓電気生理学的処置は、ますます複雑化している。難治性不整脈の治療は現在、対象となる心腔の解剖学的構造を再構成するために、3次元(3D)マッピングシステムの使用に依存し得る。
【0102】
例えば、心臓病専門医は、心臓内EGM信号を解析して、非通常型心房粗動及び心室頻拍を含む様々な心臓疾患を治療するためのアブレーションポイントを決定するために、Biosense Webster,Inc.(Diamond Bar,California)製のCARTO(登録商標)3 3Dマッピングシステムのコンプレックス細分化心房電位図(CFAE)モジュールなどのソフトウェアに依存する。
【0103】
3Dマップは、これらの困難な不整脈の解剖学的及び機能的基質を表す、組織の電気生理学的特性に関する複数の情報を提供することができる。
【0104】
病因の異なる心筋症(虚血性、拡張型心筋症(DCM)、肥大型心筋症(HCM)、不整脈原右室異形成症(ARVD)、左心室緻密化障害(LVNC)等)は、識別可能な基質を有し、正常に機能している心筋細胞領域で囲まれている不健康な組織領域を特徴とする。
【0105】
図16A〜16Dは、病因の異なる心筋症の例を示す。第1の例として、
図16A及び
図16Bは、信号伝導が減速される心内膜−心外膜低又は中間電圧領域1602を特徴とする虚血後心室性頻脈(VT)を有する心臓1600の例示的なレンダリングを示す。これは、高密度の瘢痕領域の内部又はその周囲のあらゆる遅延電位の測定が、VTを持続させる可能性がある峡部を同定するのに役立ち得ることを示している。
図16Aに示される虚血後VTは、信号伝導が減速される心内膜−心外膜低又は中間電圧領域によって特徴付けられる。これは、高密度の瘢痕領域の内部又はその周囲のあらゆる遅延電位の測定が、VTを持続させる可能性がある峡部を同定するのに役立ち得ることを示している。
図16Aは、心臓1600の様々なセクタにおける双極信号振幅(Bi)の分散を示す。
図16Aは、0.5mV〜1.5mVのBi範囲を示す。
図16Bは、心臓の様々なセクタにおけるショーテックスコンプレックスインターバル(Shortex Complex Interval、SCI)の分散を示す。実施例として、SCIは15.0ミリ秒〜171.00ミリ秒の範囲であり、対象となるSCI範囲は80ミリ秒〜170ミリ秒である。
【0106】
図16C及び
図16Dは、左心室非圧縮性心筋症を発症している心臓1610の例示的なレンダリングを示す。より具体的には、
図16Cは心外膜電圧マップを示し、
図16Dは電位持続時間マップ(potential duration map、PDM)を示す。
図16C及び
図16Dの1612内の3つの黒丸は、異常な遅延電位(例えば、200ミリ秒を超える電位)としてマークされている。
【0107】
異常組織は、一般に、低電圧のEGMを特徴とする。しかしながら、低電圧の領域は、そのような患者における唯一の不整脈発生機序として常に存在するとは限らないことが、心内膜−心外膜マッピングにおけるはじめの臨床経験によって示されている。実際に、低電圧又は中間電圧の領域は、洞律動の間にEGM細分化及び遅延活動を示す場合があり、これは、持続性心室性不整脈及び器質性心室性不整脈の際に識別される重篤な峡部に対応し、例えば、非耐性心室頻拍に当てはまる。更に、多くの場合、EGM細分化及び遅延活動は、正常な又はほぼ正常な電圧振幅(>1〜1.5mV)を示す領域で観察される。後者の領域は、電圧振幅に従って評価され得るが、それらは心内信号に従って正常であるとは考えられず、したがって真の不整脈原性基質を表す。3Dマッピングは、右/左心室の心内膜及び/又は心外膜層上に不整脈原性基質の位置を特定することが可能であり得、主要疾患の拡大に従って分布が変動し得る。
【0108】
これらの心臓疾患に関係している基質を、心室腔(右及び左)の心内膜及び/又は心外膜層の細分化及び遅延EGMの存在と関連付ける。CARTO(登録商標)3などの3Dマッピングシステムは、異常EGMを検出するという点で、心筋症の潜在的不整脈原性基質の位置を特定することができる。
【0109】
電極カテーテルは、長年にわたり医療現場で一般的に使用されている。電極カテーテルは、心臓内の電気活動を刺激及びマッピングし、異常な電気活動が見られる部位をアブレーションするために使用される。使用時には、電極カテーテルは、主要な静脈又は動脈、例えば大腿動脈に挿入された後、対象の心腔内へと導かれる。典型的なアブレーション処置は、その遠位端に少なくとも1つの電極を有するカテーテルを心腔内に挿入することを伴う。参照電極が、一般的には患者の皮膚にテープで貼り付けられるか、あるいは心臓内又は心臓付近に配置されている第2のカテーテルによって、提供される。RF(高周波)電流をアブレーションカテーテルの先端電極に通電すると、参照電極に向かって先端電極の周囲の媒質(すなわち、血液及び組織)に電流が流れる。電流の分布は、組織より高い導電性を有する血液と比較した場合、組織と接触している電極表面の量に依存する。組織の加熱は、組織の電気抵抗に起因して生じる。組織が十分に加熱されると、心臓組織において細胞破壊が引き起こされ、結果として、非電導性である心臓組織内に損傷部が形成される。このプロセスの間に、加熱された組織から電極自体への伝導によって電極も加熱される。電極の温度が十分に高くなり、場合により60℃を超えると、脱水された血液タンパク質の薄く透明な皮膜が、電極の表面上に形成され得る。温度が上昇し続けると、この脱水層が徐々に厚くなり、電極表面上に血液が凝固する。脱水された生物学的材料は、心内膜組織よりも高い電気抵抗を有するため、電気エネルギーの組織内部への流れに対するインピーダンスもまた増大する。インピーダンスが十分に増加すると、インピーダンス上昇が生じ、カテーテルは身体から抜きとり、先端部電極を洗浄し得る。
【0110】
図17は、本開示の主題の1つ又は2つ以上の機能が実装され得る例示的なシステム1720の図である。システム1720の全て又は一部分を使用して、訓練データセットの情報を収集し得、及び/又はシステム1720の全て又は一部分を使用して、訓練済みモデルを実装し得る。システム1720は、カテーテル1740など、体内臓器の組織領域を損傷するように構成された構成要素を含み得る。カテーテル1740はまた、生体データを取得するように更に構成され得る。カテーテル1740は、ポイントカテーテルであるように示されているが、1つ又は2つ以上の要素(例えば、電極)を含む任意の形状のカテーテルが、本明細書に開示される実施形態を実装するために使用され得ることが理解されよう。システム1720は、テーブル1729上に横になっている患者1728の心臓1726などの身体部分内へと医師1730によって操縦され得るシャフトを有するプローブ1721を含む。複数の実施形態によれば、複数のプローブが提供され得るが、簡潔さのために、本明細書では単一のプローブ1721が説明されているが、プローブ1721が複数のプローブを表し得ることが理解されるであろう。
図17で示されるように、医師1730は、カテーテル1740の近位端の近くの遠隔操作機1732を使用してシャフト1722の遠位端部を、及び/又はシース1723から偏向部を操作しながら、シース1723を通してシャフト1722を挿入し得る。挿入
図1725に示されるように、カテーテル1740は、シャフト1722の遠位端に嵌合され得る。カテーテル1740は、折り畳まれた状態でシース1723を通して挿入され得、次いで、心臓1726内で拡張され得る。本明細書で更に開示されるように、カテーテル1740は、少なくとも1つのアブレーション電極1747及びカテーテル針1748を含み得る。
【0111】
例示的な複数の実施形態によれば、カテーテル1740は、心臓1726の心腔の組織領域をアブレーションするように構成され得る。挿入
図1745は、心臓1726の心腔内部のカテーテル1740を拡大図で示す。図示するように、カテーテル1740は、カテーテルの本体に結合された少なくとも1つのアブレーション電極1747を含み得る。他の例示的な実施形態によれば、カテーテル1740の形状を形成するスプラインを介して複数の要素が接続され得る。1つ又は2つ以上の他の要素(図示せず)を設けることができ、それらは、アブレーションを行うか又は生体データを取得するように構成された任意の要素であってよく、電極、トランスデューサ又は1つ又は2つ以上の他の要素であり得る。
【0112】
本明細書に開示される実施形態によれば、電極1747などのアブレーション電極は、心臓1726などの体内器官の組織領域にエネルギーを供給するように構成され得る。エネルギーは、熱エネルギーであり得、組織領域の表面から始まって組織領域の厚さに延在する組織領域への損傷を引き起こす可能性がある。
【0113】
本明細書に開示される例示的な実施形態によれば、生体データは、局所興奮到達時間(local activation time、LAT)、電気活動、トポロジー、双極マッピング、主要周波数、インピーダンスなどのうちの1つ又は2つ以上を含み得る。LATは、正規化された初期開始点に基づいて計算された、局所興奮到達に対応する閾値活動の時点であり得る。電気活動は、1つ又は2つ以上の閾値に基づいて測定され得る任意の適用可能な電気信号であってよく、信号対ノイズ比及び/又はその他のフィルタに基づいて、検知及び/又は拡張され得る。トポロジーは、身体部分又は身体部分の一部の物理的構造に対応し得、身体部分の異なる部分に関する、又は異なる身体部分に関する物理的構造における変化に対応し得る。主要周波数は、身体部分の一部に行き渡る周波数又は周波数の範囲であり得、同じ身体部分の異なる部分において異なり得る。例えば、心臓の肺静脈の主要周波数は、同じ心臓の右心房の主要周波数と異なり得る。インピーダンスは、身体部分の所与の領域における抵抗測定値であり得る。
【0114】
図17に示されるように、プローブ1721及びカテーテル1740は、コンソール1724に接続され得る。コンソール1724は、カテーテルとの間で信号を送受信するための、並びにシステム1720の他の構成要素を制御するための、好適なフロントエンド及びインターフェース回路1738を備える汎用コンピュータなどのプロセッサ1741を含み得る。いくつかの実施形態では、プロセッサ1741は、電気活動などの生体データを受信し、所与の組織領域が電気を伝導するかどうかを判定するように更に構成され得る。実施形態によれば、プロセッサは、コンソール1724の外部に所在することがあり、例えばカテーテル内、外部デバイス内、モバイルデバイス内、クラウドベースのデバイス内に位置し得るか、又はスタンドアロン型プロセッサであり得る。
【0115】
上記のとおり、プロセッサ1741は、汎用コンピュータを含み得るが、このコンピュータは、本明細書において説明する機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされ得る。ソフトウェアは、例えば、ネットワーク上で、汎用コンピュータに電子形態でダウンロードされてよく、又は代替的に若しくは追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの、非一時的有形媒体上で提供及び/若しくは記憶されてもよい。
図17に示す例示的な構成は、本明細書に開示される実施形態を実装するように修正され得る。本開示の実施形態は、他のシステム構成要素及び設定を使用して、同様に適用することができる。更に、システム1620は、電気活動を感知するための素子、有線又はワイヤレスコネクタ、処理デバイス及びディスプレイデバイスなどの、付加的な構成要素を含み得る。
【0116】
実施形態によれば、プロセッサ(例えばプロセッサ1741)に接続されたディスプレイは、別個の病院又は別個の医療プロバイダネットワークなどの遠隔場所に位置してもよい。更に、システム1720は、心臓などの患者の臓器の解剖学的測定値及び電気的測定値を取得し、心臓アブレーション処置を実行するように構成された、外科用システムの一部であってもよい。かかる外科用システムの一例は、Biosense Websterにより販売されているCarto(登録商標)システムである。
【0117】
システム1720はまた、及び任意選択的に、超音波、コンピュータ断層撮影(computed tomography、CT)、磁気共鳴撮像(magnetic resonance imaging、MRI)、又は当技術分野において既知のその他の医療撮像技術を使用して、患者の心臓の解剖学的測定値などの生体データを取得し得る。システム1720は、カテーテル、心電図(electrocardiogram、EKG)、又は心臓の電気的特性を測定するその他のセンサを使用して電気的測定値を取得し得る。次いで、解剖学的測定値及び電気的測定値を含む生体データは、
図17に示されるように、マッピングシステム1720のメモリ1742内に格納され得る。生体データは、メモリ1742からプロセッサ1741に送信され得る。代替的に又は付加的に、生体データは、ネットワーク1662を使用して、ローカル又はリモートに所在し得るサーバ1760に送信され得る。
【0118】
ネットワーク1762は、イントラネット、ローカルエリアネットワーク(local area network、LAN)、広域ネットワーク((wide area network、WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(metropolitan area network、MAN)、直接接続若しくは一連の接続、セルラー電話ネットワーク、又はマッピングシステム1720とサーバ1760との間の通信を容易にすることが可能な任意のその他のネットワーク若しくは媒体などの、当技術分野で一般的に知られている任意のネットワーク又はシステムであり得る。ネットワーク1662は、有線、ワイヤレス、又はこれらの組み合わせであってよい。有線接続は、イーサネット、ユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus、USB)、RJ−11、又は当該技術分野において一般的に知られている任意のその他の有線接続を使用して実装することができる。無線接続は、Wi−Fi、WiMAX、及びBluetooth、赤外線、セルラーネットワーク、衛星、又は当該技術分野において一般的に知られている任意のその他の無線接続方法を使用して実装することができる。更に、いくつかのネットワークは、ネットワーク1762における通信を容易にするために、単独で又は互いに通信して動作し得る。
【0119】
いくつかの事例では、サーバ1762は、物理的サーバとして実装され得る。他の事例では、サーバ1762は、仮想サーバ、パブリッククラウドコンピューティングプロバイダ(例えば、Amazon Web Services(AWS)(登録商標))として実装され得る。
【0120】
制御コンソール1724は、ケーブル1739によって体表面電極1743に接続され得、体表面電極1743は患者1730に貼付される接着性皮膚パッチを含み得る。プロセッサは、電流追跡モジュールと連携して、患者の身体部分(例えば、心臓1726)内部のカテーテル1740の位置座標を特定し得る。位置座標は、体表面電極1743とカテーテル1740の電極1748又は他の電磁構成要素との間で測定されるインピーダンス又は電磁場に基づき得る。追加的に、又は代替的に、位置特定パッドは、ベッド1729の表面上に位置されてもよく、ベッド1729とから分離されてもよい。
【0121】
プロセッサ1741は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array:FPGA)として一般に構成されているリアルタイムノイズ低減回路、更に、アナログ−デジタル(analog-to-digital:A/D)ECG(electrocardiograph:心電計)又はEMG(electromyogram:筋電図)信号変換集積回路、を含み得る。プロセッサ1741は、A/D ECG又はEMG回路から別のプロセッサへ信号を渡し得、かつ/又は本明細書に開示される1つ又は2つ以上の機能を実行するようにプログラムされ得る。
【0122】
制御コンソール1724はまた、入力/出力(input/output、I/O)通信インターフェースを含み得、これは、制御コンソールが、電極1747から信号を伝送し、かつ/又は電極1747に信号を伝送することを可能にし得る。
【0123】
処置中、プロセッサ1741は、ディスプレイ1727上での医師1730への身体部分レンダリング1735の提示を容易にし、身体部分レンダリング1735を表すデータをメモリ1742内に格納し得る。メモリ1742は、ランダムアクセスメモリ又はハードディスクドライブなどの任意の好適な揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリを備え得る。いくつかの実施形態では、医療専門家1730は、タッチパッド、マウス、キーボード、ジェスチャ認識装置などの1つ又は2つ以上の入力デバイスを使用して、身体部分レンダリング1735を操作することが可能であり得る。例えば、入力デバイスを使用して、レンダリング1735が更新されるように、カテーテル1740の位置を変更し得る。代替的な実施形態では、ディスプレイ1727は、身体部分レンダリング1735を提示することに加えて、医師1730からの入力を受容するように構成され得るタッチスクリーンを含み得る。
【0124】
心不整脈などの心疾患の治療は、多くの場合、心臓組織、心腔、静脈、動脈、及び/又は電気経路の詳細なマッピングを得ることを必要とする。例えば、カテーテルアブレーションを成功させるための前提条件は、心不整脈の原因が心腔内に正確に位置特定されることである。このような位置特定は、電気生理学的調査によって行われ得るが、その間、電位は心室に導入されたマッピングカテーテルによって空間的に分解されて検出される。このように、この電気生理学的調査、いわゆる電気解剖学的マッピングは、モニタ上に表示され得る3Dマッピングデータを提供する。多くの場合、マッピング機能及び治療機能(例えば、アブレーション)は、単一のカテーテル又はカテーテル群によって提供され、マッピングカテーテルはまた、同時に治療(例えば、アブレーション)カテーテルとして動作する。
【0125】
心臓の部位、組織、静脈、動脈、及び/又は心臓の電気経路などの心臓領域のマッピングは、瘢痕組織、不整脈源(例えば、電気ロータ)、健康な領域などの問題領域を識別することにつながり得る。心臓領域は、本明細書で更に開示されるように、マッピングされた心臓領域の視覚的レンダリングがディスプレイを使用して提供されるようにマッピングされ得る。更に、心臓マッピングは、これらに限定されないが、LAT、電気活動、トポロジー、双極マッピング、優位周波数、又はインピーダンスなどの、1つ以上のモダリティに基づくマッピングを含み得る。複数のモダリティに対応するデータは、患者の身体に挿入されたカテーテルを使用して捕捉され得、医療専門家の対応する設定及び/又は選好に基づいて、同時に又は異なる時間にレンダリングを提供し得る。
【0126】
心臓マッピングは、1つ以上の技術を使用して実装され得る。第1の技術の実施例として、心臓マッピングは、心臓内の正確な位置の関数として、心臓組織、例えばLATの電気的特性を感知することによって実装され得る。対応するデータは、遠位先端に電気センサ及び位置センサを有するカテーテルを使用して、心臓内に前進させられる1つ又は2つ以上のカテーテルを用いて取得され得る。具体的な実施例として、位置及び電気活動は、心臓の内側表面上の約10〜約20箇所の点で最初に測定され得る。次いで、これらのデータ点は一般に、心臓表面の初期的な復元又はマップを満足な品質で生成するのに十分であり得る。この初期マップは、心臓の電気活動の更に包括的なマップを生成するために、追加の点で取得されたデータと統合され得る。臨床的な状況において、100以上の部位におけるデータを集積して、心腔の電気活動の詳細な包括的マップを生成することも珍しいことではない。その後、生成された詳細なマップは、心臓の電気活動の伝播を改変させ正常な心調律を回復させるための治療上の行動指針、例えば、組織のアブレーションに関する決定を下すための基準となり得る。
【0127】
位置センサを収容するカテーテルを使用して、心臓表面の各点の軌跡を判定し得る。これらの軌跡を使用して、組織の収縮力などの運動特性を推測することができる。このような運動特性を示すマップは、軌跡情報が心臓内の十分な数の点においてサンプリングされるときに構築され得る。
【0128】
心臓内のある点における電気活動は、通常、遠位先端に又はその近傍に電気センサを含むカテーテルを、心臓内のその点へと前進させ、組織をセンサと接触させ、その点におけるデータを収集することによって測定され得る。単一の遠位先端電極を含むカテーテルを使用して心腔をマッピングすることの1つの欠点は、全体としての心腔の詳細なマップに必要とされる不可欠な数の点の全部を点ごとにデータを蓄積するのに長い時間を必要とすることである。したがって、心腔内の複数の点における電気活動を同時に測定するために、多電極カテーテルが開発されてきた。
【0129】
多電極カテーテルは、複数の電極を有する線形カテーテル、バルーンを形成する複数のスパイン上に分散された電極を含むバルーンカテーテル、複数の電極を有するラッソーカテーテル若しくはループカテーテル、又は任意の他の適用可能な形状などの任意の適用可能な形状を使用して実装され得る。
図18Aは、心臓領域をマッピングするために使用され得る複数の電極1804、1805及び1806を含む線形カテーテル1802の実施例を示す。線形カテーテル1802は、受信信号に基づいて、及び/又は線形カテーテル1802上の外力(例えば、心臓組織)の印加に基づいて、ねじれ、屈曲、及び/又は他の方法でその形状を変化させることができるように、完全に又は部分的に弾性であり得る。
【0130】
図18Bは、複数のスプラインを含むバルーンカテーテル1812の実施例を示す。
図18Bに示される実施例では、スプライン1814、1815、1816を含む12個のスプラインと、図示されるように、電極1821、1822、1823、1824、1825及び1826を含む各スプライン上の複数の電極が存在する。バルーンカテーテル1812は、患者の身体内に展開されると、バルーンカテーテル1812の電極が心内膜表面に対して密接に接触して保持され得るように設計され得る。実施例として、バルーンカテーテル1812は、肺静脈(pulmonary vein、PV)などのルーメンに挿入され得る。バルーンカテーテル1812は、バルーンカテーテルがPVに挿入されている間にその最大容積を占有しないように、収縮状態でPVに挿入され得る。バルーンカテーテル1812は、バルーンカテーテル上の電極がPVの円形部分全体と接触するように、PVの内側にある間に膨張し得る。PV又は任意の他のルーメンの円形部分全体とのこのような接触は、効率的なマッピング及び/又はアブレーションを可能にし得る。
【0131】
図18Cは、心臓領域をマッピングするために使用され得る複数の電極1832、1834及び1836を含むループカテーテル1830(ラッソーカテーテルとも呼ばれる)の実施例を示す。ループカテーテル1830は、受信信号に基づいて、及び/又はループカテーテル1830上の外力(例えば、心臓組織)の印加に基づいて、その形状をねじれ、屈曲、及び若しくは他の方法で変化させることができるように、完全に又は部分的に弾性であり得る。
【0132】
実施例によれば、線形カテーテル1802、バルーンカテーテル1812及びループカテーテル1830などの多電極カテーテルは、心臓の心腔内に前進させられ得る。前後方向(anteroposterior、AP)及び横方向の蛍光図が取得されて、電極のそれぞれの位置及び向きを確定し得る。電位図は、体表面ECGからの洞調律におけるP波の開始などの時間基準に対して、心臓表面と接触する電極のそれぞれから記録され得る。このシステムは、本明細書に更に開示されるように、電気活動を登録するこれらの電極と、電気活動を登録しない電極とを区別し得る。電気的活動を登録することが欠落することは、心内膜壁に近接していないことに起因し得る。初期電位図が記録された後、多電極カテーテルが再配置され得、蛍光図及び電位図が再度記録され得る。電気マップは、上記のプロセスの繰り返しから構築され得る。
【0133】
実施例によれば、心臓マッピングは、心内電位場の検出に基づいて生成され得る。大量の心臓電気情報を同時に取得するための非接触技術が実装され得る。例えば、遠位端部分を有するカテーテルは、その表面全体にわたって分布し、信号感知及び処理手段に接続するために絶縁導電体に接続された一連のセンサ電極を備え得る。端部のサイズ及び形状は、電極が心腔の壁から実質的に離間されるようなものであり得る。心内電位場は、単一の心拍中に検出され得る。実施例によれば、センサ電極は、互いに離間した平面内に位置する一連の円周上に分散され得る。これらの平面は、カテーテルの端部の長軸に対して垂直であり得る。少なくとも2つの追加の電極が、端部の長軸の端部に隣接して設けられ得る。より具体的な実施例として、カテーテルは、各円周上に等角度間隔で配置された8個の電極を有する4つの円周を含み得る。したがって、この具体的な実施形態では、カテーテルは、少なくとも34個の電極(32個の円周方向電極及び2個の端部電極)を含み得る。
【0134】
別の実施例によれば、非接触及び非拡張多電極カテーテルに基づく電気生理学的心臓マッピングシステム及び技術が実装され得る。電位図は、複数の電極(例えば、42〜122個の電極)を有するカテーテルを用いて取得され得る。この実装形態によれば、プローブ及び心内膜の相対的な幾何学的形状の知見は、経食道エコー検査などの単独の撮像モダリティによって取得され得る。単独の撮像の後、非接触電極を使用して、心臓表面電位を測定し、それからのマップを構築し得る。この技術は、以下のステップ(単独の撮像ステップ後)を含み得る。(a)心臓内に位置するプローブ上に配置された複数の電極を用いて電位を測定すること。(b)プローブ表面及び心内膜表面の幾何学的関係を決定すること。(c)プローブ表面と心内膜表面との幾何学的関係を表す係数の行列を生成すること。及び、(d)電極電位及び係数の行列に基づいて心内膜電位を決定すること。
【0135】
別の実施例によれば、心腔の電位分布をマッピングするための技術及び装置が実装され得る。心臓内多重電極マッピングカテーテル組立体は、患者の心臓に挿入され得る。このマッピングカテーテル組立体は、一体的な基準電極、又は、代替的に、比較基準カテーテルを備えた多電極アレイを含み得る。電極は、実質的に球状のアレイの形態で展開され得る。電極アレイは、基準電極によって、又は心内膜表面と接触させられる基準カテーテルによって、心内膜表面上の点に対して空間的に参照され得る。電極アレイカテーテルは、いくつかの個々の電極部位(例えば、少なくとも24個)を担持し得る。更に、この例示的技術は、アレイ上の電極部位のそれぞれの位置の情報、並びに心臓の幾何学的形状の情報を用いて実装され得る。これらの位置は、インピーダンスプレチスモグラフィ技術によって測定され得る。
【0136】
別の実施例によれば、心臓マッピングカテーテル組立体は、いくつかの電極部位を画定する電極アレイを含み得る。このマッピングカテーテル組立体はまた、心臓壁を探るために使用され得る遠位先端部電極組立体を有する基準カテーテルを受容するために、ルーメンを備え得る。マッピングカテーテルは、絶縁ワイヤの編組(例えば、編組内に24〜64本のワイヤを有する)を含み得るが、各ワイヤを使用して電極部位を形成し得る。このカテーテルは、非接触電極部位の第1の組及び/又は接触電極部位の第2の組から電気活動情報を収集するために使用されるように、心臓内で容易に位置決め可能であり得る。
【0137】
別の実施例によれば、心臓内の電気生理学的活動をマッピングするための別のカテーテルが実装され得る。このカテーテル本体は、心臓をペーシングするための刺激パルスを送達するように適合された遠位先端部、又は先端部と接触する組織をアブレーションするための切除電極を含み得る。このカテーテルは、直交電極の近傍の局所心臓電気活動を示す差信号を生成するために、少なくとも1対の直交電極を更に含み得る。
【0138】
別の実施例によれば、心腔内の電気生理学的データを測定するためのプロセスが実装され得る。この方法は、部分的に、一組のアクティブ電極とパッシブ電極を心臓内に配置することと、アクティブ電極に電流を供給することと、それによって心腔内に電場を生成することと、パッシブ電極部位において電場を測定することとを含み得る。パッシブ電極は、バルーンカテーテルの膨張可能なバルーン上に配置されたアレイ内に収容され得る。実施形態において、アレイは60〜64個の電極を有し得る。
【0139】
別の実施例によれば、心臓マッピングは、1つ以上の超音波トランスデューサを使用して実装され得る。超音波トランスデューサは、患者の心臓に挿入され得、心臓内の様々な位置及び向きで複数の超音波スライス(例えば、2D又は3Dスライス)を収集し得る。所与の超音波トランスデューサの位置及び向きが記録され得、収集された超音波スライスは、後に表示され得るように格納され得る。後の時点におけるプローブ(例えば、治療カテーテル)の位置に対応する1つ以上の超音波スライスが表示され得、プローブは1つ以上の超音波スライス上に重ね合わせられ得る。
【0140】
他の実施例によれば、身体パッチ及び/又は体表面電極は、患者の身体上又は患者の身体に近接して配置され得る。1つ以上の電極を有するカテーテルが、患者の身体内(例えば、患者の心臓内)に配置され得、カテーテルの位置は、カテーテルの1つ以上の電極と身体パッチ及び/又は体表面電極の間で送信及び受信される信号に基づいて、システムによって判定され得る。更に、カテーテル電極は、患者の身体内(例えば、心臓内)から生体データ(例えば、LAT値)を感知し得る。生体データは、判定されたカテーテルの位置に関連付けられ得、その結果、患者の身体部分(例えば、心臓)のレンダリングが表示され得、カテーテルの位置ごとに測定されたように、身体部分の形状に重ね合わされた生体データを示し得る。
【0141】
例示的な実施形態によれば、医療処置は、不整脈が効果的に治療され得るように、不整脈位置をマッピングするために使用される履歴ECGデータを適用して不整脈位置を推定することによって、最適化され得る。明確にするために、不整脈を成功裏に治療したアブレーションを識別するために使用される履歴ECGデータの多くの事例が訓練データとして使用され、本明細書で提供されるような図に従ってモデルを生成し得る。モデルは、新しいECGがモデルに供給され得るように訓練され得、モデルの訓練された構成要素に基づいて、不整脈部位が特定され得る。このような実装は、不整脈部位の手動特定の必要性を軽減又は除去して、人為的エラーを低減し得、信頼性の高いアブレーションを可能にし得る。
【0142】
図19は、ECGデータ及びモデルに基づいて心臓位置を特定するためのフローチャート1900である。
図19のフローチャート1900に示すように、ステップ1902では、履歴ECGデータ及び対応する心臓位置が収集され得る。対応する心臓位置は、ECGデータに基づいて不整脈を引き起こすと特定される心臓位置であり得る。本明細書で更に開示されるように、ステップ1902で収集されたECGデータ及び対応する位置は、不整脈が成功裏に治療される(例えば、アブレーションを介して)処置に対応し得る。成功しなかった処置に関するデータは、ステップ1902で廃棄されてもよく、又は収集されなくてもよい。代替的に、失敗した処置に関するデータは、ネガティブデータとして提供され、それに応じて説明され得る。
【0143】
図19のプロセス1900のステップ1904では、ステップ1902で収集されたECGデータ及び対応する位置は、学習システムのための訓練データとして使用され得る。ステップ1904では、訓練データを使用して、所与のアルゴリズムに基づいて学習システムを訓練し得る。
図19の1900のプロセスのステップ1906では、訓練された学習システムを使用してモデルを生成し得る。モデルは、新しいECG入力が与えられると、モデルが新たな心臓位置を出力として提供するように構成されように生成され得、心臓位置は、モデルによって推測されたように、推測不整脈位置に対応する。
【0144】
図19のプロセス1900のステップ1908では、患者の新しいECGデータは、ステップ1906で生成されたモデルによって受信されるか、又は入力として提供され得る。ステップ1910では、モデルは、治療(例えば、アブレーションによる)のために不整脈位置を出力し得る。
【0145】
図19のフローチャート1900に示すように、ステップ1902では、履歴ECGデータ及び対応する心臓位置が収集され得る。ECGデータは、心臓の心臓信号及び電気活動が記録され、観察されて不整脈などの心臓の状態を特定し得るように、複数リードECG(例えば、12リードECG)を使用することによって取得され得る。ECGは、患者の身体の表面上の位置に配置され得る体表面(body surface、BS)電極パッチに基づき得る。本開示は一般に、BS電極に基づいてECGを対象とするが、心臓内電極を代わりに使用して心臓信号を取得し、ECGを生成するために心内電極を使用してもよいことが理解されるであろう。データは、1つ以上の磁気センサ、電極センサ、信号フィルタリングアルゴリズム、高度カテーテル位置(advanced catheter location、ACL)技術などを使用して取得され得る。
【0146】
本明細書で更に開示されるように、多数の患者について、履歴ECGデータが提供され得る。多数の患者とは、例えば、100人を超える患者、1000人を超える患者、10000人を超える患者などであり得る。履歴ECGデータが使用される患者の数は、ECGの品質、対応するアブレーションの成功の程度、履歴ECGデータセットにおけるECG読み取り値の変動性などのうちの1つ以上に依存し得る。
【0147】
実装例によれば、多数の患者に関する提供されるECGデータは、それぞれECGを使用して不整脈位置を特定することによって不整脈が成功裏に治療された処置に対応し得る。例えば、本明細書で更に開示されるように、一組の100個のECGがシステムを訓練するために利用可能であり得る。100個の利用可能なECGから70個のECGが、ECGを使用して不整脈位置を特定し、その後、成功裏に治療された(例えば、アブレーションによって)処置に対応し得る。この70個のECGは、本明細書に開示される実施形態のための訓練データとして使用され得る。対照的に、不整脈位置を特定するために使用されなかったか、又は不整脈位置を特定したものであるが、特定された位置に基づく治療は成功しなかった、30個のECGは、訓練データとして含まれなくてもよい。
【0148】
実装例によれば、ECGを使用して、不整脈などの心臓疾患の位置を特定し得る。実施例として、心室性頻脈(ventricular tachycardias、VT)中のQRS複合体は、限局性VTの発生源の所与の部位から、又はリエントラント性VT中の制限された拡張期峡部の出口部位から生成され得る。所与の患者の心室の幾何学的形状及び活性化は、VTに見られるECGパターンを調整することができる。実施例としては、左心室自由壁VTは、右束分岐ブロック(right bundle branch block、RBBB)構成を示し得るが、一方、心室中隔又は右心室から出るVTは左束分岐ブロック(left bundle branch block、LBBB)構成を表示する。別の実施例として、中隔出口は、連続的な心室活性化ではなく同期的な心室活性化と一致する、より狭いQRS複合体と関連付けられ得る。別の実施例として、基底部位は、ポジティブ前胸部一致を示し得るが、ネガティブ一致は起点の頂点部位において見られ得る。QRS軸は、主に上下軸に沿った出口のずれと共に変動し得るが、右−左のずれでも生じ得る。このような際立った属性は、重大な構造的心臓疾患が存在する場合でも適用され得るが、過去の梗塞、心筋症、及び先天性心臓疾患からの重大な瘢痕は、局所化ツールとしてECGの精度を低下させることがある。
【0149】
別の実施例として、解剖学的変動は、所与の不整脈起源についてのECGベクトルの予想されるパターンに混乱を引き起こし得る因子であり得る。これは、心臓の胸壁に対する正常な関係における並進、回転、又は姿勢のずれから、又は心内隔解剖学的構造自体内の変動から、生じ得る。抗不整脈薬は、心筋伝導特性に影響を及ぼすことによって、VTの表面ECGの外観に影響を及ぼすことが予想され得る。
【0150】
治療のための潜在的な不整脈位置を特定するために使用されるECGデータの実施例として、
図20Aは、ECGを潜在的不整脈位置と関連付ける実施例を示す。具体的には、
図20Aは、両方の心房の除去後の環状領域及び流出路領域の基底図を示す。中心線維心臓骨格周囲の様々な流出路及び環状構造体の密接な3次元解剖学的関係が示されている。肺動脈(pulmonary artery、PA)、右心室流出路(right ventricular outflow tract、RVOT)、左冠動脈弁尖(left coronary cusp、LCC)、右冠動脈弁尖(right coronary cusp、RCC)、左冠動脈(left coronary artery、LCA)、及び右冠動脈(right coronary artery、RCA)が示されている。
図20Aにおいて、2002では、RVOTの自由壁の後面から生じるVTの例示的な表面ECG外観を示す。下軸を有するLBBB構成は、V3後の後期前胸部遷移、及び下リードにおけるノッチングと共に見られる。リードIにおけるポジティブの力は、後方(又は右方向)焦点を意味する。2004では、前中隔のRVOT起源を有するVTの表面ECG外観の実施例が示される。V3前の早期前胸部遷移は、ネガティブリードI形態で見られる。2004では、リードV1における多相ノッチ対応構成は、バルサルバ大動脈洞の左冠状尖から生じる流出路VTにおいて見られ得る。2008では、左心室流出路の心外膜から生じるVTの実施例で、左心室流出路が前心室間静脈領域にマッピングされた(QRSの開始の45ms前に生じた)。ECGは、左束分岐ブロック(LBBB)、149msの広いQRS複合体及びスラリー状の体内偏向を有する下軸構成を示す。
【0151】
図20Bは、潜在的不整脈位置を特定するために使用され得るECG基準を識別する実施例を示す。具体的には、
図20Bは、左心室心外膜(epicardial、EPI)VT起源部位を特定するための報告された間隔及び形態的ECG基準が、高速2022及び低速2024VTについて2人の異なる観察者によって評価されることを示す。特に、高速VT2022では、QRS開始が異なって定義され、間隔基準の測定に影響を及ぼす。
図20Bにおいて適用されているように、CLはサイクル長を示し、IDTは、内周方向偏向時間を、MDIは、最大偏向指数を、PDWは、擬似デルタ波を、及びSRSは、最短RS複合体を示す。
【0152】
図20A及び
図20Bは実施例として提供され、潜在的不整脈部位は、1つ以上の他の技術を使用してECGデータに基づいて特定され得ることが理解されよう。このようなECGデータは、失敗した治療に対応するECGデータがフィルタリング除去されるように、不整脈のそれぞれの成功した治療に基づいてフィルタリングされ得る。
【0153】
図19のプロセス1900のステップ1904では、フィルタリングされたECGデータを使用して、学習システムを訓練し得る。この訓練は、ハードウェア、ソフトウェア、及び/又はファームウェアを使用して行われ得る。訓練は、ステップ1902で収集されたECGデータの解析及び相関を含み得る。所与のECGの属性(例えば、
図20Bに示される属性など)は、所与の態様と対応する心不整脈位置との間に相関又は連携が存在するかどうかを判定し得る。
【0154】
ステップ1902で収集されたECGデータの特徴は抽出され得、ECG属性(例えば、
図20Bに示されるものなど)、患者病歴、瘢痕情報、カテーテル位置、アブレーションタグ(例えば、視覚タグ)などを含み得る。ステップ1904では、特徴行列が抽出された特徴に基づいて生成され得、学習システムが訓練され得る。実装例によれば、学習システムは、本明細書で説明されるような機械学習アルゴリズムに基づいて訓練され得る。
【0155】
ステップ1906では、アルゴリズムを使用して学習システムを訓練し、モデルを生成し得る。このアルゴリズムは、例えば、分類アルゴリズム、回帰アルゴリズム、クラスタリングアルゴリズム、又はECGデータを使用して不整脈位置を推定するモデルを生成することができる任意の適用可能なアルゴリズムであリ得る。
【0156】
実施例として、
図21は、特定のECG特性が不整脈を有する所与の心臓位置に対応する可能性が高いかどうかを予測するロジスティック回帰図を示す。このロジスティック回帰は、ECG属性に基づく不整脈位置の推定を可能にする。例えば、複数のQRS開始点、周期長、及び最大偏向指数に基づいて、不整脈が左心房に由来するかどうかの結果が判定され得る。所与のQRS開始点、周期長、及び最大偏向指数の組み合わせの過去の履歴、及び左心房に起因する不整脈との関係により、推定を行うことを可能にする。
図21のロジスティック回帰は、所与のQRS開始点、周期長、及び最大偏向指数変数2120の組み合わせの分析を可能にして、0対1で定義された確率2110で不整脈が左心房からが生じるかどうかを推定することを可能にする。S字曲線の下端2130において、QRS開始点、周期長、及び最大偏向指数2120の所与の組み合わせは、左心房にはないという結果2110を推定する。S字曲線の上端2140にある間は、組み合わせ2120は、左心房にあるという結果2110を推定する。
【0157】
上述のように、このような特徴(例えば、ECG属性、患者病歴、瘢痕情報など)の多数の様々な組み合わせを使用して、複数のロジスティック回帰ベースの結果を生成し得、それぞれが、特徴に基づいて異なる位置における不整脈位置の可能性を推測する。このようなロジスティック回帰ベースの成果の組み合わせを使用して、ステップ1904での学習システムの訓練に基づいて生成されるロジスティック回帰モデルをステップ1906で生成し得る。
【0158】
ロジスティック回帰ベースのモデルが実施例として提供されるが、任意の適用可能なアルゴリズム(例えば、分類、回帰クラスタリングなど)を使用して、ステップ1906においてそれぞれのモデルを生成し得ることが理解されるであろう。
【0159】
十分な訓練データ(例えば、特徴)を使用して、学習システムを訓練し、適用可能なモデルを生成すると、そのモデルは新しいデータと共に使用され得る。ステップ1908では、新しいECGがモデルに適用され得、そのモデルは、新しいECG及び/又は外部特徴(例えば、患者病歴、瘢痕情報など)から特徴を抽出し得る。特徴ベクトルが生成され、1906で生成されたモデルに入力され得る。このモデルは、ステップ1910では、特徴ベクトルを入力として使用することができ(例えば、
図15に示されるように)、入力に基づいて不整脈位置を推定し得る。実装例によれば、複数の潜在的不整脈位置が提供され得、これによって、不整脈が推定された位置に存在する確率を示すスコア(例えば、相関スコア)が、モデルによって決定されたように、各潜在的不整脈位置に与えられる。
【0160】
開示される主題の実装例によると、推定される不整脈位置はペーシング処置によって確認され得る。ペーシング処置は、潜在的不整脈の発生源として作用する人工誘導電子信号であり得る。
【0161】
ペーシングカテーテルは、不整脈位置の1つ以上で使用され得、推定される不整脈位置のうちの1つ以上のそれぞれにおいて人工的に生成された電子信号を誘導し得る。得られたECGパターンを観察して、所与の位置が不整脈の発生源であるかどうかを確認し得る。実装例によれば、ペーシングカテーテルは、ステップ1906で生成されたモデルによって特定される2つ以上の潜在的不整脈位置で使用され得る。本明細書に開示されるように、このモデルは、2つ以上の潜在的な不整脈位置を提供し得るが、これらの位置のそれぞれのスコア(例えば、相関スコア)を提供し得る。次いで、医療専門家又は自動化システムは、これらの2つ以上の位置でペーシングカテーテルを使用して、対応するECG信号パターンを観察して、どの位置が不整脈位置に対応するかを確認し得る。
【0162】
開示される主題の実装例によれば、ステップ1902では、患者の特性を使用して、学習システムの訓練を向上し得る。患者の特性は、ECGデータに追加し得るが、患者に固有なものである。患者の特性には、これらに限定されないが、患者の年齢、性別、身長、体重などを含み得、更に、疾患歴、心構造(例えば、MRI又はCTスキャンに基づく)などの患者についての任意の追加情報を含み得る。例えば、子供の心臓は、成長した成人よりも小さいことがあり、したがって、不整脈位置を特定することは、そのような追加情報によってサポートされ得る。
【0163】
この実装例によれば、本明細書に開示されるように、患者の特性はECGデータを補完し得、ステップ1902で訓練された学習システムは、確認された不整脈位置と相関するECGデータに加えて、確認された不整脈位置と患者の特性を相関させることによって、訓練される。したがって、ステップ1906で生成されたモデルは、入力として、ECGデータに加えて、患者の特性を可能にし得る。
【0164】
実施例として、ステップ1902で収集された訓練データのサブセットが、子供に対応し得る。したがって、学習システムを1904で訓練している間に、訓練データのサブセットについての対応するECGデータも子供に相関され得る。したがって、このモデルは、子供の新しいECGデータが提供されたとき、過去の子供のECGデータに適用可能な訓練が、成人ECGデータよりも高度に適用可能であることを認識するように訓練され得る。
【0165】
別の実装例によれば、ステップ1902には、ECGデータが収集されたときのカテーテルの位置を使用して、学習システムの訓練を向上させ得る。カテーテルの位置は、心臓内の位置、心腔、静脈に対応し得、及び/又は組織若しくは別の位置ベースの特性に対する近接性に対応し得る。
【0166】
この実装例によれば、本明細書に開示されるように、カテーテルの位置はECGデータを補完し得、ステップ1902で訓練された学習システムは、確認された不整脈位置と相関するECGデータに加えて、確認された不整脈位置とカテーテルの位置を相関させることによって、訓練される。したがって、ステップ1906で生成されたモデルは、入力として、ECGデータに加えて、カテーテルの位置を可能にし得る。更に、ECGデータ及びカテーテルの位置は、カテーテルの位置が3Dモデル内の「同一領域」に置かれるように解剖学的構造を正規化することによって、画像上でカテーテルの位置(CT/MRI/メッシュなど)と共に使用され得る。
【0167】
実施例として、ステップ1902で収集された訓練データのサブセットは、肺静脈(PV)内に位置するカテーテルに対応し得る。したがって、学習システムを1904で訓練している間に、訓練データのサブセットについての対応するECGデータもまた、PVに相関され得る。したがって、このモデルは、患者のPVで収集された新しいECGデータが提供されたときに、過去のPV ECGデータに適用可能な訓練が、非PV ECGデータよりも高度に適用可能であることを認識するように訓練され得る。
【0168】
開示されるように、ステップ1910では、1つ以上の潜在的な不整脈位置が特定され得る。1つ以上の心臓位置は、心臓のレンダリング又はマッピング(集合的に「マッピング」)を使用して特定され得る。例えば、1つ以上の特定された心臓位置は、心臓のマッピング上に表示又は強調表示され得る。心臓のマッピングは、
図19のプロセス1900の外部に生成され得、電磁信号を使用する位置追跡を使用して(例えば、1つ以上のカテーテル、位置パッド、BS電極など、又はこれらの組み合わせを使用して)生成され得る。
【0169】
開示された主題の実装例によれば、マッピングの改善は、電位図のタイミング及び複雑な活性化パターンの提示に関連する不正確性、並びに厳密な心腔再構成へのデータ投影に関連する不正確性を考慮するアルゴリズム解法に基づいてマッピングに対する履歴改善を使用して、生成され得る。このようなマッピングの改善は、本明細書ではコヒーレントマッピングと呼ばれる。本明細書に更に開示されるように、コヒーレントマッピングを実装して従来のマッピングを改善し得るが、これは、電磁信号を使用して実装され、カテーテル位置(例えば、電磁カテーテル、位置特定パッド、BSパッチなどに基づいて)、心臓境界(例えば、組織近接指示)、超音波撮像などを特定し得る。コヒーレントマッピングは、ある時間間隔(例えば、30秒)にわたって収集されたデータ(例えば、ノイズ、呼吸などの慢性信号、電位図タイミング及び複雑な活性化パターンの提示に関連する不正確性、並びに厳密な心腔再構成へのデータ投影に関連する不正確さなど)の時間ベースの収集に基づいた従来のマッピングを改善し得る。
【0170】
ステップ2202では、
図22のフローチャート2200に示されるように、履歴コヒーレントマッピングデータが収集され得る。コヒーレントマッピングデータは、患者固有データ、及び患者固有データに基づいて行われるコヒーレントマッピング調整を含み得る。明確にするために、コヒーレントマッピングデータは、本明細書に開示されるように、従来の電磁マッピングを向上させる。
【0171】
図22のプロセス2200のステップ2204では、ステップ2202で収集されたコヒーレントマッピングデータは、学習システムの訓練データとして使用され得る。ステップ2204では、訓練データは、所与のアルゴリズムに基づいて学習システムを訓練するために使用され得る。
図22の2200のプロセスのステップ2206では、訓練された学習システムを使用してモデルを生成し得る。このモデルは、所与の新しい患者固有データがマッピングが提供され得るように生成され得、モデルは、所与の新しい患者に関するこのようなコヒーレントマッピングデータを再計算する必要なく、コヒーレントマッピング(すなわち、マッピングの改善)を提供するように構成され得る。
【0172】
図22のプロセス2200のステップ2208では、新しい患者固有データは、ステップ2206で生成されたモデルによって受信されるか、又はそれへの入力として提供され得る。ステップ2210では、モデルは、新しい患者固有データに基づいてコヒーレントマッピングデータを出力し得、その結果、コヒーレントマッピングデータは、患者固有データに基づいて収集されることなく(例えば、30秒などの期間にわたって)取得され、むしろ、モデルによって出力される。
【0173】
ステップ2202に示すように、履歴コヒーレントマッピングデータが収集され得る。データは、1つ以上の磁気センサ、電極センサ、信号フィルタリングアルゴリズム、高度カテーテル位置特定(advanced catheter location、ACL)技術、コヒーレントマッピングアルゴリズムなどを使用して収集され得る。コヒーレントマッピングデータは、患者固有データ、及び患者固有データに基づいて行われるコヒーレントマッピング調整を含み得る。コヒーレントマッピング調整は、従来のマッピングの改善であり得、導入中に提示される制限が最も明白である複雑な基質における活性化波をより良好に表し得る。本明細書で述べられるように、コヒーレントマッピングアルゴリズム解法は、電位図のタイミング及び複雑な活性化パターンの提示に関連する不正確性、並びに厳密な心腔再構成へのデータ投影に関連する不正確性を考慮する。
【0174】
3D心腔再構成に関するLAT決定及びその表現が、本明細書に開示される。電位図の時間アノテーションは、従来のマッピングアルゴリズムによって決定され得る。このアルゴリズムによれば、LATは、それぞれのバイポーラ電位図をその対応するユニポーラ電位図と分析することによって決定され、その結果、局所時間アノテーションは、最大ユニポーラ−dV/dtを有する構成要素においてマークされる。ただし、比較的類似した−dV/dt値の複数の電位を有する複雑な基質では、単一の電位のアノテーションは誤解を招き、LATの不一致をもたらし得る。この問題を解決するために、各個々の電位図の可能な電位及び心腔データを識別するように、コヒーレントマッピングを設計し得る。心腔データが得られると、アルゴリズムは、各個々の電位図の可能性を利用して、生理学的伝導下で最もコヒーレントな大域伝播を測定する。
【0175】
再構成された心腔は、動的解剖学的構造の静的かつ厳密な表現である。活性化マップは、心腔内の様々な場所からLATをサンプリングすることによって作成される。これらの測定値は、呼吸器変動、心腔壁へのカテーテルの機械的影響(伸長)、又は不整脈中の心腔動態の変化のために、厳密な再構成に当てはまることはめったにない。現在のマッピングアルゴリズムは、それらの点を最も近い表面上に投影するが、再構成上の最も近い位置は、サンプリングされた位置とは異なることが多い。更に、最も近い位置を使用することは、
図23Aに示されるように、異なる位置及び異なるLATからのサンプルを、再構成の同様の位置と関連付ける。
【0176】
開示される主題の例示的な実施形態によれば、コヒーレントマッピングデータは、
図23Bに示されるように、投影における誤差に関連する補間の大きさが低減される小さい三角形を有するメッシュに表面を分割することによって収集され得る。加えて、活性化マップ上の各個々のデータ点の効果は、
図23Cに示されるように、表面からより遠く離れて得られたデータ点が、表面により近くで得られたデータ点と比較して、より低い重みを受けるように、最も近い三角形からの距離に比例するように設計され得る。このコヒーレントマッピング解法は、異なる拍動中に収集されたデータ点の投影に関連する活性化マッピングの不正確性を低減し得る。
【0177】
図23A〜
図23Cは、心腔再構成及びデータ投影に関連する固有の制限を示す。
図23Aは、同一位置での異なるLAT測定値の関連付けの表示を含む。
図23Bは、測定値のより正確な割り当てを可能にする小さい三角形(≒0.5mm)から構成される三角メッシュに分割された再構成心腔を示す。
図23Cは、計算されたLATに基づいて彩色された線を有する再構成された心腔の矢状断面を示し、各個々の測定値は、計算されたLATからの距離に比例して計算されたLATに影響を及ぼす(ハローは、距離によるフェーディング効果を表す)。
【0178】
コヒーレントマッピングアルゴリズムは、再構成されたメッシュ上の各三角形を、例えば、3つの記述子、LAT値、伝導ベクトル、及び非導電性の確率を用いて割り当てる。伝導速度は、LAT値及び三角形間の既知の距離及び方向を使用して計算される。これらの記述子の値は、直接測定で三角形については最初は既知であるが、再構成されたメッシュ上の他の三角形については未知である。この問題を解決するために、以下の生理学的に基づく仮定が適用される。(1)速度連続性:伝導連続性の領域において、伝導速度は、隣接する三角形に可能な限り類似して維持され、緩やかな変化が許容される。三角形間のこの関係は、上記で設定された関係の最小平均二乗差を求める数学的方程式によって行われる。最適解は、ほとんどの位置で最小の差異をもたらし、連続性と矛盾する十分な測定を有する領域における大きな差異を可能にする。及び、(2)非伝導領域は、同一の位置で複数の測定によって特定され、電極が少なくとも2つの異なる波を有する領域に存在することを示す。これらの領域では、伝導が遅延又は完全に遮断される確率は、伝播ベクトル及び計算された伝導速度によって決定される。伝導のための構造的障害を有する領域では、伝播ベクトルは、低速で障害を迂回するか、又は障害を通って伝導し得る。伝導遮断は、ヒト心房における最低の生理学的伝導速度(10cm/秒)よりも低い値として定義された。上記基準は、三角形が非導電性領域に存在する確率を設定するために使用される。結果として得られるLAT、伝導速度、及び非導電性の確率が、更なる変化なしに安定化されるまで方程式を解き、最適解を表す。
【0179】
LAT、ベクトルデータ、及び非導電性又は遅導性領域の識別を使用して、統合的コヒーレント活性化マップを生成する。このコヒーレント活性化マップは、ベクトルマップとして表示される。
【0180】
上記の技術は、ステップ2202では、多数の患者(例えば、100人の患者、1000人の患者、10000人の特許など)に対応するコヒーレントマッピングデータが提供されるように実装され得る。コヒーレントマッピングデータは、患者固有データ(例えば、心臓構造、呼吸変化、心腔壁へのカテーテルの機械的影響(伸長)、不整脈中の心腔動態の変化など)、及びデータを考慮して行われる対応するコヒーレントマッピング調整を含み得る。
【0181】
ステップ2204では、学習システムは、ステップ2202で収集されたコヒーレントマッピングデータに基づいて訓練され得る。この訓練は、コヒーレントマッピングデータから特徴を抽出して、機能行列を作成することを含み得る。特徴行列は、ステップ2206でモデルを生成するために使用されるアルゴリズムに適用され得る。アルゴリズムは、例えば、分類アルゴリズム、回帰アルゴリズム、クラスタリングアルゴリズム、又はコヒーレントマッピングデータを使用して、新しい患者の患者固有データに基づいてコヒーレントマッピング調整を予測するモデルを生成することができる任意の適用可能なアルゴリズムであり得る。
【0182】
実施例として、
図13は、ステップ2206でモデルを訓練するために実装され得る例示的なニューラルネットワークを示す。ニューラルネットワークには、1410
1や1410
2などの複数の入力で表される入力層がある。この入力は、患者固有のデータ(例えば、心臓構造、呼吸変化、心腔壁へのカテーテルの機械的影響(伸長)、不整脈中の心腔動態の変化など)を含み得る。入力1410
1、1410
2は、ノード1420
1、1420
2、1420
3、1420
4を含むものとして示される隠れ層に提供される。これらのノード1420
1、1420
2、1420
3、1420
4は組み合わされて、出力層において出力1430を生成する。この出力は、例えば、
図22のステップ2202で提供される、履歴コヒーレントマッピング調整であり得、ニューラルネットワークの隠れ層が目指すターゲットであり得る。ニューラルネットワークは、単純な処理要素である隠れ層、ノード1420
1、1420
2、1420
3、1420
4を介して処理を実行し得、これらのノードは、処理要素と要素パラメータとの間の接続によって決定される複雑な大域的な挙動を示すことができる。
【0183】
結果として得られたモデルは、ステップ2206では、ステップ2208で受信された患者固有データの新しいセットがモデルに適用され得るように生成され得、コヒーレントマッピング調整が、2210において、モデルに基づいて自動的に出力され得る。特に、モデルを使用することによって、コヒーレントマッピング調整は、処置中のそのようなコヒーレントマッピング調整を測定及び計算する際に時間及びリソースを費やす必要なく提供され得る。
【0184】
モデルが作成され、コヒーレントマッピング調整が提供されると、又はコヒーレントモデルが作成されている間の代替経路として、本システムはまた、コヒーレントアルゴリズムを使用して局所ノイズ識別を提供し得る。本明細書で説明されるように、解剖学的心臓モデルを構築するために使用されるいくつかの種類の測定値が存在する。これらの測定値は、例えば、CT、MRI、及び超音波測定を含む。この測定値は、心臓内カテーテル(近接度、インピーダンス、温度など)、及び他のリソースによって提供され得る。上述のように、3Dモデルは、心臓(組織及び容積)のこれらの測定値に基づいて構築及び表示され得る。
【0185】
更に、表面ECG測定値並びに挿入されたカテーテルからの測定値は、位置及び時間にわたる平均信号流量を計算し、コヒーレントマッピング/着色における流量のベクトルを表示する既存のシステムに入力される。約20分の記録された信号が、このシステムの入力として必要とされる。入力の継続時間を所与として、出力を生成するために約30〜60秒が必要とされる。したがって、このプロセスは、ユーザにリアルタイムの表示を与えない。
【0186】
ユーザによりリアルタイムの表示を提供するために、システムは、部分的な測定値に基づいて、ユーザに何らかの初期的な近似コヒーレントマッピングを提供し得る。これらの部分的測定は、例えば、従来の20分の代わりに2分のデータを含み得る。部分的測定は、正確なマッピングが計算される前に提供され得、又は正確なマッピングに追加して提供され得る。部分測定は、現在の患者の正確なマッピングではないことがあるが、部分測定は、早期のフィードバックを与え、更に測定するためにより関連する領域にカテーテルを移動させるように、ユーザを誘導することによって、時間を節約し得る。
【0187】
このシステムは、特定の位置における特定の時点でカテーテルによって取得された測定値の精度に関するフィードバックを提供し得る。
【0188】
特定の位置における特定の時点でカテーテルによって取得された測定値は、患者からの以前の測定値と共に、上記のようにこの位置についてLATを計算するために使用される。身体内、及びLATに誤差をもたらす器具からの様々なノイズ源を所与とし、例えば、0〜1のスコアをこのLAT値の精度に与えることは、追加の利益を提供し得る。
【0189】
本明細書で説明されるように、各患者についてのデータは、例えば、患者id、及び年齢、性別、いくつかの体格などの関連する患者パラメータを含む。このデータは、時間及び位置にわたって器具(ECG及びカテーテル)からの測定値を更に含み得る。システムの出力は、本明細書で説明される既存のコヒーレントマッピングを含み得る。
【0190】
ニュートラルネットワークは、このデータに基づいて訓練され得る。NNの入力は、患者パラメータ、器具測定値、及びこの位置点について計算されたLAT値を有する対象の特定の位置点を含み得る。NNは、入力位置点に対するLAT値の精度を示す0〜1のスコアを出力し得る。この出力スコアは、ユーザにフィードバックを提供し得、コヒーレントマッピングシステムへの入力として測定値のリアルタイムノイズフィルタリングを提供し得る。
【0191】
特定の過去の患者のデータでは、特定の位置点ごとの既知のコヒーレントマッピングLAT値が、NNの教師あり訓練のための所望の出力(「タグ付け」)として使用される。最小化する誤差は、位置点全体にわたる、NNの出力と正確な既知のLAT値との間の差である。したがって、手動タグ付けは必要とされない。新しい患者の測定値、並びに対象の特定の位置点及び計算されたLAT値の測定値はNNに提供され得、その出力は、LAT値の精度を示す0〜1のスコアである。出力を生成するために30〜60秒を要するシステムの代わりに、前の事例から収集されたデータを使用してNNを訓練し得、次いで、はるかに短い時間でマッピングを生成し得る。NNへの入力は、患者から取得された測定値であり、出力は完全なコヒーレントマッピングである。
【0192】
マッピングを近似する間接的な方法は、現在の患者と類似している以前の患者から症例を検索し、それらのコヒーレントマッピングの何らかの集合(例えば、平均化)を表示することである。各不健康な心臓は、僅かに異なって挙動し、心不整脈は、心臓内部の異なる場所に位置し得る。この変動は、現在の患者からの測定値と最も類似している以前の症例からのデータを見出す際の利益を実証し得る。したがって、現在の患者からの部分測定値を所与として、同様の症例を取得することが重要であり得る。
【0193】
このプロセスは、症例の表現間の距離関数を定義することによって達成され得る。患者の表現は、患者の測定値を含み得る。距離関数は、例えばユークリッド距離、コサイン類似性などのベクトル空間における単純な距離尺度であり得、専門家によって定義されるようなより複雑な関数であり得る。距離関数は、上述のk個の最近傍などのアルゴリズムを使用することによって、最も類似した以前の症例を提供するために使用され得る。
【0194】
代替的に、ニューラルネットワークは、距離関数を計算するように訓練され得る。NNへの入力は、2つの表現の対であり、出力は0〜1のスコアであり、2つの表現の類似性を示す。N個の以前の表現のデータセットを所与とし、サイズN2の類似性テーブルが準備され得、ここで、エントリ(i,j)は、表現i及びjが同一である場合には0を含み、そうでない場合に1を含む(又は、代替的に、それらの類似性を示す0と1との間のスコア)。この類似性テーブルは、どの事例が類似しているかを示す専門家によって、又は表現に関連付けられたコヒーレントマッピング間で同様に計算することによって自動的に(又は半自動的に)満たされ得る。
【0195】
各心臓は、形状が僅かに異なる。したがって、メッシュ上の現在の測定位置が以前のデータと忠実に比較され得るように、3D位置の正規化が必要とされる。「標準心臓」の3Dモデルが作成され得る。投影アルゴリズムを使用して、生位置を修正し、3Dモデル内の標準位置上に生位置を投影し得る。これは、器具測定の位置、及びコヒーレントマッピングのデータの両方に対して前処理段階で行われる。
【0196】
システムの精度は、どのクラスの心臓異常(例えば、粗動、VT、マイクロ配向など)が現在の患者に関連するかを示す分類子を利用することによって向上され得る。この分類子は、システム内の前処理段階で使用され得る。具体的には、関連クラスを検出するために、以前のデータ及び現在の患者データの両方が分類され得る。全ての症例を説明するためにただ1つのモデルを作成する代わりに、クラスごとに別個のモデルが構築され得る。各モデルは、結果の精度を高めるために、ただ1つ(又は少数)の特定のクラスに特化され得る。
【0197】
代替的に、以前の患者からのデータは、医師によって割り当てられた関連分類を含み得る。教師あり学習を使用して、入力が患者のデータであり、出力が割り当てられた異常クラスであるこのデータに基づいて分類子を構築し得る。
【0198】
システムが準備され、病院に配備された後であっても、追加のデータが蓄積され得る。蓄積されたデータは訓練データセットに追加され得、システムを再訓練して、その精度を継続的に向上させ得る。
【0199】
特徴及び要素が特定の組み合わせで上に記載されるが、当業者であれば、特徴又は要素の各々を単独で又は他の特徴及び要素と組み合わせて使用することができることを理解するであろう。加えて、本明細書に記載される方法は、コンピュータ又はプロセッサで実行するために、コンピュータ可読媒体に組み込まれるコンピュータプログラム、ソフトウェア、又はファームウェアにおいて実装され得る。コンピュータ可読媒体の例には、電子信号(有線又は無線接続を介して送信される)及びコンピュータ可読記憶媒体が挙げられる。コンピュータ可読記憶媒体の実施例は、これらに限定されないが、読み取り専用メモリ(read only memory、ROM)、ランダムアクセスメモリ(random-access memory、RAM)、レジスタ、キャッシュメモリ、半導体メモリデバイス、例えば内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスクなどの磁気媒体、光磁気媒体、並びに例えば、CD−ROMディスク及びデジタル多用途ディスク(DVD)などの光媒体を含む。ソフトウェアに関連してプロセッサを使用して、WTRU、UE、端末、基地局、RNC、又は任意のホストコンピュータにおいて使用するための無線周波数送受信機を実装し得る。
【0200】
〔実施の態様〕
(1) 不整脈位置を自動的に検出するためのシステムであって、
心電図(ECG)データを感知するように構成された複数の体表面電極と、
ディスプレイと、
ニューラルネットワークを備えるプロセッサであって、
複数の履歴ECGデータ、及び前記複数の履歴ECGデータのそれぞれに基づいて決定された対応する不整脈位置を受信することと、
前記複数の履歴ECGデータ及び対応する不整脈位置に基づいて学習システムを訓練することと、
前記学習システムに基づいてモデルを生成することと、
前記複数の体表面電極から新しいECGデータを受信することと、
前記新しいECGデータ及び前記モデルに基づいて新しい不整脈位置を提供することと、
前記新しい不整脈位置を前記ディスプレイ上にレンダリングすることと、を行うように構成されているプロセッサと、
を備える、システム。
(2) 受信された前記複数の履歴ECGデータ及び対応する不整脈位置が、前記対応する不整脈位置における成功裏に治療された不整脈に対応する、実施態様1に記載のシステム。
(3) アブレーションカテーテルを更に備える、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記アブレーションカテーテルが、前記新しい不整脈位置に位置し、前記不整脈を治療するように構成されている、実施態様3に記載のシステム。
(5) 前記学習システムが、分類、回帰、及びクラスタリングアルゴリズムからなる群から選択される少なくとも1つを用いて訓練される、実施態様1に記載のシステム。
【0201】
(6) ニューラルネットワークを備える前記プロセッサが、
患者の特性を受信することと、
前記患者の特性に基づいて前記学習システムを訓練することと、
更に訓練された前記学習システムに基づいて前記モデルを生成することと、を行うように更に構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(7) ニューラルネットワークを備える前記プロセッサが、
カテーテル位置データを受信することと、
前記カテーテル位置データに基づいて前記学習システムを訓練することと、
更に訓練された前記学習システムに基づいて前記モデルを生成することと、を行うように更に構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(8) ニューラルネットワークを備える前記プロセッサが、前記対応する不整脈位置のうちの少なくとも1つにスコアを割り当てるように更に構成されており、前記スコアは、前記対応する不整脈位置のうちの前記少なくとも1つのノイズ確率に対応する、実施態様1に記載のシステム。
(9) 前記スコアが0〜1の範囲内である、実施態様8に記載のシステム。
(10) ニューラルネットワークを備える前記プロセッサが、スコアが0の位置をフィルタ除去するように更に構成されている、実施態様8に記載のシステム。
【0202】
(11) 不整脈推定モデルを生成する方法であって、前記方法が、
複数の履歴ECGデータ、及び前記複数の履歴ECGデータのそれぞれに基づいて決定された対応する不整脈位置を受信することと、
前記複数の履歴ECGデータからの履歴ECGデータの第1のセット及び対応する不整脈位置に基づいて、前記ECGからのECG属性の組み合わせが前記対応する不整脈位置の第1のセットと相関するように、学習システムを訓練することと、
前記複数の履歴ECGデータからの履歴ECGデータの第2のセット及び対応する不整脈位置に基づいて、前記ECGからの前記ECG属性の組み合わせが対応する不整脈位置の第2のセットと相関するように、前記学習システムを更新することと、
前記対応する不整脈位置の前記第1のセット及び対応する不整脈位置の前記第2のセットに基づいて、モデルを生成することと、を含む、方法。
(12) 対応する不整脈位置の前記第2のセットが、対応する不整脈位置の改善された第1のセットである、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記対応する不整脈位置のうちの少なくとも1つにスコアを割り当てることを更に含み、前記スコアが、前記対応する不整脈位置のうちの前記少なくとも1つのノイズ確率に対応している、実施態様11に記載の方法。
(14) 前記スコアが0〜1の範囲内である、実施態様13に記載の方法。
(15) スコアが0の位置をフィルタ除去することを更に含む、実施態様13に記載の方法。
【0203】
(16) コヒーレントマッピングを自動的に適用するためのシステムであって、
心臓内の位置を検出するように構成された体内カテーテルと、
ニューラルネットワークを備えるプロセッサであって、
複数の患者に関する複数の履歴コヒーレントマッピングデータを受信することであって、前記履歴コヒーレントマッピングデータが、患者固有データ及び複数のコヒーレントマッピング調整を含む、受信することと、
前記履歴コヒーレントマッピングデータに基づいて学習システムを訓練することと、
前記学習システムに基づいてモデルを生成することと、
前記体内カテーテルを使用して新しいマッピングデータを受信することと、
前記新しいマッピングデータ及び前記モデルに基づいて新しいコヒーレントマッピング調整を提供することと、を行うように構成されているプロセッサと、
を備える、システム。
(17) 前記コヒーレントマッピング調整が、呼吸変化、心腔壁へのカテーテルの機械的影響、及び不整脈中の心腔動態の変化のうちの少なくとも任意の1つ又はそれらの組み合わせを含む、実施態様16に記載のシステム。
(18) 前記新しいマッピングデータが、前記モデルへの入力を含み、前記新しいコヒーレントマッピング調整が前記モデルの出力である、実施態様16に記載のシステム。
(19) ニューラルネットワークを備える前記プロセッサが、前記新しいマッピングデータの少なくとも一部分にスコアを割り当てるように更に構成されており、前記スコアが、前記新しいマッピングデータの前記少なくとも一部分のノイズ確率に対応する、実施態様16に記載のシステム。
(20) 前記スコアが0〜1の範囲内であり、ニューラルネットワークを備える前記プロセッサが、スコアが0の結果として、前記モデルの少なくとも1つの新しいコヒーレントマッピング調整をフィルタ除去するように更に構成されている、実施態様19に記載のシステム。