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  • 特開2021186806-フィルタキャンドル 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-186806(P2021-186806A)
(43)【公開日】2021年12月13日
(54)【発明の名称】フィルタキャンドル
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20211115BHJP
   B01D 46/24 20060101ALI20211115BHJP
【FI】
   B01D39/20 D
   B01D46/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2021-83274(P2021-83274)
(22)【出願日】2021年5月17日
(31)【優先権主張番号】20178005
(32)【優先日】2020年6月3日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】596064112
【氏名又は名称】ポール・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Pall Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ハイデンリッヒ, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ハーグ, ウォルター
【テーマコード(参考)】
4D019
4D058
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA05
4D019BB06
4D019CA03
4D019CB01
4D019CB02
4D058JA02
4D058JB06
4D058KA01
4D058KA16
4D058KA21
4D058KA23
4D058KA25
4D058KA27
4D058KB11
4D058KC04
4D058SA20
(57)【要約】
【課題】中空円筒形の1つ以上のフィルタ要素12;52と、支持要素16と、2つ以上の環状の封止ディスク34、36;54とを備える、新規なガス状流体用、特に高温ガス濾過用のフィルタキャンドル10;50を提供すること。
【解決手段】本発明のフィルタキャンドルにおいて、フィルタ要素は多孔質材料で作られ、フィルタ要素は同一の内径及び外径を有し、互いに一列に同軸に配置される。支持要素は、フィルタ要素内に配置された金属管16を備え、金属管の外径はフィルタ要素の内径よりも小さく、金属管は複数の貫通孔26を有する壁24を備える。封止ディスクは、フィルタ要素の外径以上の外径と、フィルタ要素の内径よりも小さい内径とを有し、第1及び第2の末端封止ディスクは、一列に配置されたフィルタ要素の両側の軸線方向端面に配置される。フィルタ要素は末端封止ディスク間で圧縮される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空円筒の形状の1つ又は複数のフィルタ要素(12;52)と、
支持要素(16)と、
少なくとも2つの環状の封止ディスク(34、36;54)と
を備える、ガス状流体用、特に高温ガス濾過用のフィルタキャンドル(10;50)であって、
前記1つ又は複数のフィルタ要素(12;52)が、多孔質材料で作られており、複数の前記フィルタ要素(12;52)が、実質的に同一の内径及び外径を有し、互いに一列に同軸に配置されており、
前記支持要素(16)が、前記1つ又は複数のフィルタ要素(12;52)内に配置された金属管(16)を備え、前記金属管(16)が、前記フィルタ要素(12;52)の内径よりも小さい外径を有し、前記金属管(16)が、複数の貫通孔(26)を有する壁(24)を有し、
前記少なくとも2つの環状の封止ディスク(34、36;54)が、前記フィルタ要素(12;52)の外径以上の外径と、前記フィルタ要素(12;52)の内径よりも小さい内径とを有し、第1及び第2の末端封止ディスク(34、36)が、単一の前記フィルタ要素(12)の両側の軸線方向端面に、又は一列に配置された複数の前記フィルタ要素(52)の両側の軸線方向端面に配置されており、任意選択により、さらなる内部封止ディスク(54)が、複数の前記フィルタ要素(52)のうちの2つの隣合うフィルタ要素(52)間に配置され、
前記1つ又は複数のフィルタ要素(12、52)、及び任意選択により前記内部封止ディスク(54)が、前記第1の末端封止ディスク(34)と前記第2の末端封止ディスク(36)との間で圧縮される、フィルタキャンドル。
【請求項2】
好ましくは約0.5m〜約3.0m、より好ましくは約1.0m〜約2.5mの軸線方向長さを有する1つだけの前記フィルタ要素(12)を備える、請求項1に記載のフィルタキャンドル(10)。
【請求項3】
一列に配置された、好ましくは約0.5m〜約6.0m、好ましくは約1.5m〜約5.0mの軸線方向全長を有する複数の前記フィルタ要素(52)を備える、請求項1に記載のフィルタキャンドル(50)。
【請求項4】
2つ〜8つの前記フィルタ要素(52)、好ましくは3つ〜5つの前記フィルタ要素(52)を備える、請求項3に記載のフィルタキャンドル(50)。
【請求項5】
前記1つ又は複数のフィルタ要素(12;52)が、約30mm〜約150mm、好ましくは約60mm〜約70mmの外径と、約15mm〜約120mm、好ましくは約40mm〜約50mmの内径とを有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルタキャンドル(10;50)。
【請求項6】
前記フィルタ要素(12;52)と前記金属管との間の径方向距離が、約1mm〜約5mm、好ましくは約3mm〜約4mmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルタキャンドル(10;50)。
【請求項7】
前記封止ディスク(34、36;54)の各々が、
前記フィルタ要素(12;52)と前記封止ディスク(34、36;54)との間に実質的に気密なシールを提供し、前記封止ディスク(34、36;54)に対する前記フィルタ要素(12;52)の径方向の移動を可能にするために、環状の金属ディスク(46)、好ましくは鋼ディスクと、
前記金属ディスク(46)の片側又は両側に前記フィルタ要素(12;52)と接触状態で設けられたガスケット(48)と
を備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載のフィルタキャンドル(10;50)。
【請求項8】
前記ガスケット(48)が、グラファイト、金属繊維、金属メッシュ、ポリマー材料、又はそれらの組み合わせを含む、請求項7に記載のフィルタキャンドル(10;50)。
【請求項9】
前記封止ディスク(34、36;54)のうちの1つ又は複数、特に前記末端封止ディスク(34、36)及び/又は前記内部封止ディスク(54)のうちの1つが、弾性調整要素(56)を備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載のフィルタキャンドル(10;50)。
【請求項10】
前記1つ又は複数のフィルタ要素(12;52)が、セラミック材料、好ましくは焼結炭化ケイ素を含む材料で作られている、請求項1〜9のいずれか一項に記載のフィルタキャンドル(10;50)。
【請求項11】
前記金属管(16)が鋼管であり、好ましくは約2mm〜約10mm、特に約3mm〜約6mmの肉厚を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載のフィルタキャンドル(10;50)。
【請求項12】
前記金属管(16)が、前記フィルタ要素(12;52)の軸線方向全長よりも大きい軸線方向長さを有し、前記貫通孔(26)が、前記フィルタ要素(12;52)内に延びる前記金属管(16)の中間セクション(18)全体にわたって均一に分布している、請求項1〜11のいずれか一項に記載のフィルタキャンドル(10;50)。
【請求項13】
前記ガス状流体のための軸線方向排出開口部(30)を好ましくは備える前記金属管(16)の第1の端部セクション(20)が、前記フィルタ要素(12;52)の外側へと前記第1の末端封止ディスク(34)を通って延び、前記第1の末端封止ディスク(34)が、好ましくは溶接又はねじ止めによって前記第1の端部セクション(20)に固定されている、請求項12に記載のフィルタキャンドル(10;50)。
【請求項14】
好ましくは軸線方向端部(32)で閉じられている前記金属管(16)の第2の端部セクション(22)が、前記フィルタ要素(12;52)の外側へと前記第2の末端封止ディスク(36)を通って延び、前記第2の末端封止ディスク(36)が、前記金属管(16)に対して軸線方向に移動可能である、請求項13に記載のフィルタキャンドル(10;50)。
【請求項15】
前記1つ又は複数のフィルタ要素(12;52)が、前記第2の末端封止ディスク(36)と前記金属管の前記第2の端部セクション(22)に固定されたフランジ要素(40)に当接するばね要素(38)、好ましくは高温ばねを介して前記第2の末端封止ディスク(36)に及ぼされる軸線方向力によって、前記第1の末端封止ディスク(34)と前記第2の末端封止ディスク(36)との間で圧縮される、請求項14に記載のフィルタキャンドル(10;50)。
【請求項16】
前記1つ又は複数のフィルタ要素(12;52)の前記圧縮が、前記フィルタ要素(12;52)が前記金属管(16)と接触するまで、前記フィルタ要素(12;52)と、隣合う前記封止ディスク(34、36;54)との間の径方向の移動を可能にするようになっている、請求項15に記載のフィルタキャンドル(10;50)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス状流体用、特に高温ガスの濾過用のフィルタキャンドルに関する。かかるフィルタキャンドルの典型的な用途は、粒子の除去による工業用煙道ガス又は排気ガスの浄化である。
【背景技術】
【0002】
従来技術による高温ガス用途のフィルタキャンドルは、多くの場合、一端が閉鎖された中空円筒の形状の多孔質フィルタ要素に基づいている。浄化されるガス状流体は、通常、実質的に径方向において外側からフィルタ要素の壁を通過し、1つの軸線方向の開口部を通ってフィルタ要素から流出する。複数のそのようなフィルタキャンドルは、濾過アセンブリを形成するために互いに平行に配置される場合がある。
【0003】
このタイプのフィルタキャンドルは、ブローバックフィルタとして動作することもでき、フィルタ要素は、通常のフィルタ処理プロセスの反対方向に流れる高圧ガス流によって洗浄される。
【0004】
典型的には、セラミック材料で作られる上述のフィルタキャンドルは、剛性であり、自立する。しかし、主な欠点としては、機械的強度、特に引張強度及び曲げ強度が限られているということがある。その結果、フィルタキャンドルが機械的応力を受けると、フィルタキャンドルが故障するおそれがあり、これは、例えばフィルタキャンドル間にまたがるダストが発生する場合などである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、改善された機械的強度を有するフィルタキャンドルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1に記載のフィルタキャンドルによって解決される。
【0007】
本発明のフィルタキャンドルでは、支持要素が1つ又は複数の円筒形フィルタ要素内に設けられる。この支持要素は金属管を備え、金属管自体は、フィルタ要素の多孔質材料よりもかなり高い引張強度及び曲げ強度を有する。ガス状流体は、フィルタ要素を通過した後、複数の貫通孔を通って金属管に入り、管の一端の開口部を通ってフィルタキャンドルから流出する。
【0008】
1つ又は複数のフィルタ要素の全内面領域を通る流れを妨げないように、前記内面と金属管の外面との間に環状間隙がある。フィルタ要素に力が径方向に及ぼされると、フィルタ要素は、金属管に当接するまで移動及び/又は湾曲する。このようにして、金属管は、フィルタ要素を支持及び安定化し、フィルタキャンドル全体の機械的強度、特にその曲げ強度を改善する。
【0009】
本発明によれば、1つ又は複数のフィルタ要素は、フィルタ要素の多孔質材料の比較的高い圧縮強度を利用して、第1の末端封止ディスクと第2の末端封止ディスクとの間で圧縮される。しかし、フィルタ要素の圧縮は、フィルタ要素が上述のように金属管と接触するまで、フィルタ要素と隣接する末端封止ディスクとの間の径方向の移動を可能にするようなものである。この移動中、フィルタ要素の軸線方向端面は、封止ディスクによってしっかりと覆われなければならない。
【0010】
本発明の第1の好ましい実施形態によれば、フィルタキャンドルは、1つのフィルタ要素のみを備える。この場合、このフィルタ要素の2つの軸線方向端面には2つの封止ディスクのみが設けられる。フィルタ要素は、好ましくは約0.5m〜約3.0m、より好ましくは約1.0m〜約2.5mの軸線方向長さを有する。
【0011】
本発明の第2の好ましい実施形態によれば、フィルタキャンドルは、一列に配置された複数のフィルタ要素を備える。この場合、2つの末端封止ディスクに加えて、さらなる内部封止ディスクが隣合うフィルタ要素間に設けられる。フィルタキャンドルのそのような分割化は、機械的応力、特にフィルタキャンドルに及ぼされる径方向の力に対するさらなる可撓性及び弾性をもたらす。
【0012】
第2の実施形態の複数のフィルタ要素の軸線方向の全長は、第1の実施形態の単一のフィルタ要素の長さと同じ好ましい範囲内とすることができる。しかし、分割化は、約1.5m〜約5.0mなどのより長い長さの場合に特に好ましい。第2の実施形態では、フィルタキャンドルは、好ましくは2つ〜8つのフィルタ要素、より好ましくは3つ〜5つのフィルタ要素を備える。フィルタ要素は、同じ又は異なる長さを有することができる。
【0013】
1つ又は複数のフィルタ要素は、好ましくは、約30mm〜約150mm、より好ましくは約60mm〜約70mmの外径と、約15mm〜約120mm、より好ましくは約40mm〜約50mmの内径とを有する。中空円筒の肉厚は、典型的には、約7.5mm〜約20mmの範囲内にある。
【0014】
フィルタ要素と金属管との間の径方向距離は、好ましくは約1mm〜約5mm、より好ましくは約3mm〜約4mmである。フィルタ要素が金属管に当接してもフィルタ要素の軸線方向端面が封止ディスクと完全に接触するようにするために、環状封止ディスクの外径は、フィルタ要素の外径以上であり、封止ディスクの内径は、フィルタ要素の内径よりも小さい。
【0015】
本発明では、各封止ディスクは、環状金属ディスク、好ましくは鋼ディスクと、フィルタ要素と接触状態で金属ディスクの片側又は両側に設けられたガスケットとを備えることが好ましい。すなわち、末端封止ディスクには片側にガスケットが設けられ、内部封止ディスクには両側にガスケットが設けられる。このようにして、フィルタ要素と封止ディスクとの間に実質的に気密なシールが提供され、同時に封止ディスクに対するフィルタ要素の径方向の移動を可能にする。
【0016】
好ましくは、本発明のフィルタキャンドルの封止ディスクに使用されるガスケットは、グラファイト、金属繊維、金属メッシュ、ポリマー材料、又はそれらの組み合わせを含む。これら及びさらに適切なガスケット材料は、従来技術から既に知られている。特有のガスケット材料の選択はまた、本発明のフィルタキャンドルの意図される用途及びそれぞれの動作条件に依存する。例えば、ほとんどのポリマーガスケット材料は、それらの動作温度に関して制限される。
【0017】
封止ディスクに使用されるガスケットは、好ましくは約1mm〜約5mm、好ましくは約1.5mm〜約3mmの厚さを有する。
【0018】
封止ディスクのうちの1つ又は複数は、弾性調整要素(resilient compensating element)を備えてもよい。特に、末端封止ディスクの1つが弾性調整要素を備えることが好ましい。2つ以上のフィルタ要素を有する本発明の実施形態では、内部封止ディスクが弾性調整要素を備えることも好ましい。これにより、2つの隣合うフィルタ要素の互いに対する軸線方向の曲げが可能になる。内部封止ディスクは、環状金属ディスクに加えて、又は環状金属ディスクの代わりに、そのような調整要素を備えることができる。
【0019】
本発明のフィルタキャンドルの1つ又は複数のフィルタ要素は、通常、セラミック材料、好ましくは焼結炭化ケイ素を含む材料で作られる。高い多孔性を示すこれらのセラミック材料は、従来技術から知られている。さらに、フィルタ要素は、特に窒素酸化物の除去のための1つ又は複数の触媒材料を含むことができる。
【0020】
本発明のフィルタキャンドルの支持要素として作用する金属管は、好ましくは鋼管であり、より好ましくは約2mm〜約10mm、特に約3mm〜約6mmの肉厚を有する。しかし、例えば、濾過されるガス状流体がより高い耐食性又は耐薬品性を支持要素に要求する場合のような特定の場合には、他の金属又は合金の使用も好ましくなり得る。したがって、これは、封止ディスクの環状金属ディスクにも当てはまる。
【0021】
典型的には、金属管は、フィルタ要素の軸線方向全長よりも大きい軸線方向長さを有し、金属管の中間セクションは、フィルタ要素内に延び、金属管の2つの端部セクションは、フィルタ要素の外側に延びる。この場合、金属管の壁の貫通孔は中間セクション全体にわたって均一に分布し、2つの端部セクションの壁には貫通孔は設けられていない。
【0022】
貫通孔の数及びサイズは、好ましくは、貫通孔の総面積が金属管内へのガス状流体の径方向の流れを促進するのに十分に大きいが、金属管の十分な機械的安定性を維持するのに十分に小さいように選択される。後者の要件に関しては、金属管の肉厚も考慮に入れなければならない。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、金属管の第1の端部セクションは、フィルタ要素の外側へと第1の末端封止ディスクを通って延び、第1の末端封止ディスクは、好ましくは溶接又はねじ止めによって前記第1の端部セクションに固定される。第1の端部セクションがガス状流体のための軸線方向排出開口部を備えることがさらに好ましい。
【0024】
上述の実施形態では、金属管の第2の端部セクションもまた、フィルタ要素の外側へと第2の末端封止ディスクを通って延びることができ、第2の末端封止ディスクは、金属管に対して軸線方向に移動可能である。第2の端部セクションがその軸線方向端部で閉じられ、それによって第1の端部セクションのみを介してガス状流体の排出を可能にすることがさらに好ましい。
【0025】
金属管に固定された第1の末端封止ディスクと、金属管に対して移動可能な第2の末端封止ディスクとを設けることにより、金属管とフィルタ要素の多孔質材料の熱拡張の差が考慮される。
【0026】
好ましくは、1つ又は複数のフィルタ要素は、金属管の第2の端部セクションに固定されたフランジ要素と第2の末端封止ディスクに当接するばね要素、好ましくは高温ばねを介して第2の末端封止ディスクに及ぼされる軸線方向の力によって、第1の末端封止ディスクと第2の末端封止ディスクとの間で圧縮される。
【0027】
上記で説明したように、金属管は第2の端部セクションで閉じられていることが好ましく、ガス状流体は第1の端部セクションのみを通って排出されるため、ばね要素を含む第2の端部セクションを囲むようにばねカバーを設けることが好ましく、それによってばね要素を外部からの塵埃などから保護することができる。ばねカバーは、好ましくは、第2の末端封止ディスクに当接する。
【0028】
本発明の複数のフィルタキャンドルは、好ましくは、特に高温ガス濾過のための濾過アセンブリを形成するために互いに平行に配置することができる。
【0029】
本発明はまた、高温ガス濾過、特に工業用煙道ガス又は排気ガスの浄化のための、本発明のフィルタキャンドル、又は複数の本発明のフィルタキャンドルを備える濾過アセンブリの使用に関する。
【0030】
以下に説明する例示的な実施形態は、図面を参照して本発明のさらなる詳細を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明のフィルタキャンドルの第1の例示的な実施形態の縦断図である。
図2】本発明のフィルタキャンドルの第2の例示的な実施形態の縦断図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1には、本発明のフィルタキャンドル10の第1の例示的な実施形態が縦断面で示されている。フィルタキャンドル10の描写は概略的であり、必ずしも縮尺通りではない。
【0033】
この第1の実施形態では、フィルタキャンドル10は、中空円筒形状の1つのフィルタ要素12を備える。フィルタ要素12は、一例として、1.5mの長さ、60mmの外径、及び40mmの内径を有することができる。フィルタ要素12は、多孔質材料、典型的には多孔質セラミック材料で作られる。例えば、フィルタキャンドルとしても知られる焼結炭化ケイ素材料の多孔質フィルタ要素は、本出願人によって「ダイア−シュマリス(Dia−Schumalith)」の商標で販売されている。
【0034】
フィルタ要素12の内側には、回転軸線14に沿ってフィルタ要素と同軸に延びる金属管16(典型的には鋼管)が、支持要素として配置されている。この金属管16は、フィルタ要素12内に延びる中間セクション18と、フィルタ要素12の外側に延びる第1の端部セクション20及び第2の端部セクション22とを備える。金属管16の壁24は、金属管16の中間セクション18全体にわたって均一に分布する複数の貫通孔26を有するが、第1及び第2の端部セクション20、22の壁24には貫通孔は設けられていない。
【0035】
金属管16は、例えば、その壁24の約34mmの外径及び4mmの厚さを有するものとすることができる。いずれの場合でも、金属管16の外径はフィルタ要素12の内径よりも小さく、その結果、フィルタ要素12と金属管16との間に環状間隙28を形成する。この間隙28の幅は、例えば3mmとすることができる。
【0036】
例えば、高温ガス濾過に使用するためのフィルタキャンドル10の典型的な用途では、濾過されるガス状流体は、外側から実質的に径方向にフィルタ要素12を通過して環状間隙28に入り、貫通孔26を通って金属管16に入る。次いで、ガス状流体は、第1の端部セクション20の軸線方向排出開口部30を通って金属管16から流出し、一方、第2の端部セクション22は、その軸線方向端部32で閉じられている。
【0037】
フィルタキャンドル10は、2つの環状封止ディスク、すなわち第1の末端封止ディスク34及び第2の末端封止ディスク36をさらに備える。第1の末端封止ディスク34は、参照符号37で示すように、金属管16の第1の端部セクション20を囲み、溶接によってこれに固定され、したがって第1の端部セクション20で環状間隙28を気密に閉鎖する。対照的に、金属管16の第2の端部セクション22を囲む第2の末端封止リング36は、金属管16及びフィルタ要素12の異なる熱拡張を可能にするために、金属管16に対して軸線方向に移動可能である。
【0038】
フィルタ要素12は、第1の末端封止リング34と第2の末端封止リング36との間で圧縮され、この圧縮力は、ばね要素38、好ましくは高温ばねによって及ぼされる。このばね要素38は、金属管16の第2の端部セクション22を囲み、例えばねじナット42によって、第2の末端封止ディスク36、及び第2の端部セクション22に固定されたフランジ要素40に当接する。
【0039】
ばね要素38を含む金属管16の第2の端部セクション22は、第2の末端封止ディスク36に当接するばねカバー44によって覆われている。ばねカバー44は、ばね要素38を外部からの塵埃などから保護し、また、金属管16と第2の末端封止ディスク36との間の小さな環状間隙を通過し得るガス状流体を留める。
【0040】
末端封止ディスク34、36のそれぞれは、金属ディスク46(典型的には鋼ディスク)と、ガスケット48とを備える。このガスケットは、フィルタ要素12のそれぞれの軸線方向端面と直接接触し、気密シールを提供するが、それと同時にフィルタ要素12の径方向の移動を可能にする。第1の末端封止ディスク34は、弾性調整要素をさらに備えてもよい。
【0041】
フィルタ要素12に作用する外力の結果、フィルタ要素12は、金属管16と接触するまで、ガスケットに沿って径方向に移動する。この時点で、金属管16は、フィルタ要素12を支持し安定させ、理想的には、フィルタ要素12がさらに湾曲して破損するのを防止する。したがって、金属管16は、フィルタキャンドル10の全体的な引張強度及び曲げ強度を増加させる支持要素として機能する。
【0042】
すべての位置でフィルタ要素12の端面に気密シールを提供するために、環状封止ディスク34、36の外径は、フィルタ要素12の外径よりも大きいか又は同じ直径であり、封止ディスク34、36の内径は、フィルタ要素12の内径よりも小さい。特に、封止ディスク34、36の外径と内径との間の差は、フィルタ要素12と金属管16との間の径方向距離の少なくとも2倍であるべきである。
【0043】
図2には、本発明のフィルタキャンドル50の第2の例示的な実施形態が縦断面で示されている。第2の実施形態のフィルタキャンドル50は、以下に説明する相違点を除き、第1の実施形態のフィルタキャンドル10に相当する。第1及び第2の実施形態の同一又は対応する要素には、同じ参照番号が付されている。
【0044】
第2の実施形態のフィルタキャンドル50は、単一のフィルタ要素の代わりに、多孔質材料の複数のより短いフィルタ要素52を備える。この例では、4つのフィルタ要素52が示されているが、より少数又はより多数のフィルタ要素とすることも可能である。個々のフィルタ要素52は、同一の内径及び外径を有する中空円筒として成形され、フィルタキャンドル50の回転軸線14に沿って同軸に一列に配置される。
【0045】
個々のフィルタ要素52の長さは、同じでも異なることもでき、それらの全長は、第1の実施形態の単一のフィルタ要素(例えば、1.5m)の全長と同じであるとすることができる。しかし、複数のフィルタ要素52の使用はまた、最大6mの全長など、より長い全長に対しても特に有効である。
【0046】
隣合う2つのフィルタ要素52間それぞれには、内部環状封止ディスク54が配置されている。フィルタ要素52は、内部封止ディスク45と共に、第1の実施形態のフィルタキャンドル10と同様に、第1の末端封止ディスク36と第2の末端封止ディスク38との間で圧縮される。
【0047】
複数のフィルタ要素52への分割化は、機械的応力、特にフィルタキャンドル50に及ぼされる径方向の力に対するフィルタキャンドル50のさらなる可撓性及び弾性をもたらす。その目的のために、内部封止ディスク54は、典型的には、隣合う2つのフィルタ要素52の互いに対する軸線方向の曲げを可能にする弾性調整要素56を備える。弾性調整要素56には、両側にガスケット58が設けられる。
【0048】
曲げ強度の測定
第1の例示的な実施形態による本発明のフィルタキャンドルの曲げ強度が、4点曲げ試験で測定された。試験したフィルタキャンドルのフィルタ要素は、長さ1.5m、外径60mm及び内径40mmの焼結炭化ケイ素(Dia−Schumalith)をベースとするセラミック材料の中空円筒であった。
【0049】
4点曲げ試験では、本発明のフィルタキャンドルのフィルタ要素は、約4800Nの力で割れを生じた。
【0050】
典型的には、フィルタ式キャンドルとして従来使用されている、支持金属管のない対応するフィルタ要素だけのものは、2500〜3500Nの範囲の曲げ力で割れを生じる。
【0051】
したがって、本発明のフィルタキャンドルの曲げ強度は、対応する従来のフィルタキャンドルと比較して約60%増加している。
【符号の説明】
【0052】
10…フィルタキャンドル、12…フィルタ要素、16…金属管、18…中間セクション、20…第1の端部セクション、22…第2の端部セクション、24…壁、26…貫通孔、34…第1の末端封止ディスク、36…第2の末端封止ディスク、38…ばね要素、50…フィルタキャンドル、52…フィルタ要素、54…内部封止ディスク。
図1
図2
【外国語明細書】
2021186806000001.pdf