【解決手段】横切れ刃220がすくい面の横幅を広げるよう斜め後方に延び、すくい面には、前後に延びるブレーカ溝170が形成され、その溝面は、横切れ刃220の刃先に垂直断面で、その刃先220aから離れ、反対側のすくい面の端縁250に向い、下り傾斜面173、最低溝面175、そして、上り傾斜面177を有する。この上り傾斜面177を、横切れ刃220の刃先の先端から後端に向うほど、傾斜角度が小さい緩勾配とした。後挽き加工で、横切れ刃220で切削される切り屑は、相対的に急勾配の、横切れ刃220の先端側の上り傾斜面177で大きな変形を受け、相対的に緩勾配の、後端側の上り傾斜面では、あまり変形を受けないので、切削抵抗が低減される。結果、切り屑処理性が高められる。
前記横切れ刃と反対側に位置する該すくい面の端縁であり、該端縁側における横逃げ面と該すくい面との交差稜線である端縁側交差稜線に沿う部位に平坦な頂面が存しないように、前記ブレーカ溝における前記上り傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の切削インサート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、この文献1に記載の切削インサートでは、横送り時の外径加工において横切れ刃側から発生する切り屑は、開き角θ2が小さい横壁面によって切り屑を変形させて排出させるとしても、切り屑の変形制御を十分に行うことはできず、切り屑処理性が十分とはいえない。このため、横送りの初期では、切り屑が溝加工後の加工済み端面へ接触してその端面を傷付け、加工面粗度の低下を招きやすい。特に、すくい面の横幅が小さく、しかも、相対的に大きい切り込み量で、後挽き加工を行うような切削インサートでは、切削抵抗も大きく、しかも、横切れ刃からそれに直角に流出する切り屑の詰りが生じがちであり、切れ刃の折損を生じ易いといった指摘があるなど、切り屑処理性に問題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、後挽き加工において、切り込み量が比較的大きい加工条件であるとしても、その切り屑処理性を高めることのできる切削インサートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明は、旋削で、切削工具の縦送りによる溝入れ加工に続き、横送りによる外径加工を行う後挽き加工に使用される切削インサートであって、
すくい面と、前逃げ面と、該前逃げ面に連なる横逃げ面とを有し、前記すくい面と前記前逃げ面との交差稜線を刃先とする前切れ刃と、前記すくい面と外径加工を担う側の横逃げ面との交差稜線を刃先とする横切れ刃を備えると共に、該横切れ刃は、その刃先が、前記前切れ刃の刃先の一方の端から、前記すくい面の横幅を広げるよう斜め後方に向けて延びるように形成され、
前記すくい面には、前記前切れ刃から後方に向けて延びるブレーカ溝が形成されており、該ブレーカ溝の溝面は、前記横切れ刃の前記交差稜線に対する垂直断面において、該横切れ刃の刃先から離れるほど低位をなす下り傾斜面を有して最低溝面となり、該最低溝面を介して、該横切れ刃と反対側に位置する該すくい面の端縁に向って高位をなす上り傾斜面を有するよう形成されてなる切削インサートにおいて、
前記上り傾斜面は、前記垂直断面が前記横切れ刃の刃先の先端から後端に向うほど、傾斜角度が小さい緩勾配となるよう形成されていることを特徴とする切削インサートである。
【0009】
上記課題を解決するための第2の発明は、前記すくい面を上から見たときにおける前記該横切れ刃の刃先と前記縦送り方向に引いた仮想直線とのなす角度を横切れ刃角としたとき、
前記横切れ刃は、前記前切れ刃の刃先の一方の端から斜め後方に向けて延びる第1横切れ刃と、この第1横切れ刃の刃先の後端から該第1横切れ刃の横切れ刃角α1と異なる横切れ刃角α2で斜め後方に向けて延びる第2横切れ刃とを有してなり、
α1、α2が、α1>α2の関係にあるものとして形成されていることを特徴とする請求項1に記載の切削インサートである。
【0010】
上記課題を解決するための第3の発明は、前記横切れ刃と反対側に位置する該すくい面の端縁であり、該端縁側における横逃げ面と該すくい面との交差稜線である端縁側交差稜線に沿う部位に平坦な頂面が存しないように、前記ブレーカ溝における前記上り傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の切削インサートである。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、上記したような構成を有するため、切り込み量が大きい溝入れ後の後挽き加工において、横切れ刃で切削され、ブレーカ溝の溝面の下り傾斜面に沿って流れ、その後、上り傾斜面に押し付けられて排出される切り屑は、次のような変形をうけて排出される。すなわち、その切り屑の横断面の幅方向のうち、横切れ刃の先端側(溝の奥側)から排出される部分は、相対的に、すくい面の横幅も狭く、急勾配の上り傾斜面に押し付けられるために相対的に強く、大きく曲げ変形される。これに対し、切り屑の横断面の幅方向のうち、横切れ刃の後端側から排出される部分は、相対的に、すくい面の横幅も広く、緩勾配の上り傾斜面に押し付けられるために相対的に弱く、小さく曲げ変形される。
【0012】
このように本発明の切削インサートによる後挽き加工において横切れ刃で切削されて排出される切り屑は、その横断面の幅方向(横切れ刃の先後方向)において、変形作用を受ける。このため、切り屑が延び、かつ螺旋状となって排出されるようなワークの加工においては、切り屑のうち、横切れ刃の先端側(溝の奥側)で切削された部位が、相対的に小さい径のカールとなるから、横切れ刃から加工済み端面(溝入れにおける加工済みの壁面)までの距離が小さくても、その加工済み端面へは接触しない動きとなるため、加工済み端面への切り屑の接触、及びそれに起因する傷の発生の防止が図られる。他方、切り屑のうち、溝の奥でない横切れ刃の後端側で切削された部位は、相対的に弱く、小さい曲げ変形となるため、切削抵抗の低減に寄与する。このように本発明の切削インサートによれば、後挽き加工において生じる切り屑の幅方向における部位の変形の制御がなされるとともに、排出方向及び切削抵抗の制御ができる。このため、切り込み量が比較的大きい後挽き加工においても、切り屑の排出処理性が高められる。結果、切り屑詰りや切れ刃の欠損防止も図られる。
【0013】
本発明の切削インサートにおいて、上記垂直断面における上り傾斜面(横切れ刃向き傾斜面)の傾斜角度は、横切れ刃の先端付近で、例えば、30度程度であり、横切れ刃の後端付近で20度程度に漸減するよう、ワークの材質、切り込み量(溝入れ深さ)等の加工条件に応じて、好ましい切り屑の排出処理性が得られるよう設定すればよい。この傾斜角度は、すくい角の設定における基準面(すくい角がゼロの平面)に対する角度である。なお、該横切れ刃と反対側に位置する該すくい面の端縁は、すくい面を上から見たとき、溝入れ加工に応じ、前切れ刃の他方の端から後方に延びるよう形成すればよい。ただし、溝入れ加工時において加工済みの壁面に干渉(接触)しないよう、後方に向かうに従い、該壁面から離れるような微小なレーキ角を付けるとよい。一方、下り傾斜面(該横切れ刃と反対側向き傾斜面)の傾斜角度は、横すくい角(正のすくい角)である。この下り傾斜面の傾斜角度は、横切れ刃の全長にわたり、一定でもよいし、変化させてもよい。ワーク(被削材)の強度、被削性、切れ味等を考慮して適宜に設定すればよい。また、ブレーカ溝は、横切れ刃の交差稜線に対する垂直断面において、ブレーカ溝全体が凹となす円弧でも、V字溝形状であってもよい。
【0014】
第2の発明では、切削インサートの横切れ刃を2段として、第1横切れ刃の横切れ刃角(以下、第1横切れ刃角)α1と、第2横切れ刃の横切れ刃角(以下、第2横切れ刃角)α2とを、α1>α2の関係にあるものとしている。このため、横切れ刃が1段(横切れ刃角が一定)のものと比べると、すくい面(面積)を広く確保できる。その上、横切れ刃全体(第1、2の横切れ刃)にて切削する際の切り屑の幅方向の変形、及び排出方向の調整範囲の自由度を高めることもできる。そして、すくい面の横幅が狭く、小さい切削インサートにおいては、最大切り込み量が同じでも、横切れ刃が1段のものに比べ、横切れ刃の全長を長く確保でき、第1横切れ刃による切削で生じる切り屑の厚みを、第2横切れ刃による切削で生じる切り屑の厚みよりも、相対的に薄くできるから、切り込み量が大きい切削(深切り込み)においても切削抵抗の低減が図られる。
【0015】
また、被削材を自動送り(横送り)して旋削する自動旋盤で旋削する場合、チャックの直近に配置される刃物台に対して切削工具を固定し、切削インサートの切れ刃にて切削をすることになるところ、直径が例えば6mm以下であるような小径軸部材の外径加工においては、切削抵抗(背分力)によるワークの曲り変形の発生による加工精度の低下の問題がある。この防止のためには、切削インサートのすくい面の横幅を小さくするべきであるが、横切れ刃(横切れ刃角)が1段の切削インサートでは、横切れ刃で切削される切り屑の排出方向が、基本的に一定であり、深切り込みにおいては切り屑の詰りも生じやすい。これに対し、第2の発明では、切削インサートの幅(すくい面の横幅)が同じでも、横切れ刃で切削される切り屑の排出方向、厚みを、第1横切れ刃と、第2横切れ刃で変化させ得るため、詰りの発生防止を図ることができる上に、加工精度の低下防止も図られる。なお、横切れ刃の刃先は、すくい面を上から見たときも、横逃げ面側から見たときも、厳密には直線ではなく、アールであってもよい。
【0016】
本発明において、すくい面には、該端縁側交差稜線に沿う部位に、平坦な頂面が存していてもよいが、第3の発明のように、このような頂面が存しないように、前記ブレーカ溝における前記上り傾斜面が形成されているものとすることで、上り傾斜面(横切れ刃向き傾斜面)の傾斜長を長く確保できる。すなわち、上り傾斜面の頂部を、前記横切れ刃と反対側に位置する該すくい面の端縁とすることで、上り傾斜面(横切れ刃向き傾斜面)の傾斜長を最長とすることができるので、その傾斜角度の自由度も高められるため、切り屑の変形、流出方向の制御の自由度も高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の切削インサートを具体化した実施の形態例−1について、
図1〜
図9に基づいて詳細に説明する。本例の切削インサート100は、一定厚さの正三角形の板をベースとして、三角チップとして形成されている。その三角チップの外周面110のコーナ寄り部位にすくい面120が存するよう切れ刃200が形成されている。切れ刃200は、3つのコーナ100cに、それぞれ同一の大きさ、形状、構造で三角形(多角形)の中心軸回りに3回(120度)の回転対称性を有して設けられている(
図1−A等参照)。このため、以下、1つのコーナ100cにおける一の切れ刃200(
図1−Aの左上の切れ刃200)を含む部位の形状、構造に基づいて説明する。ただし、切れ刃200は、三角形の板の各コーナにおけるその板の一方の面(
図1−Bの上の面)において、溝入れ幅及び切り込み量に対応するよう、板厚の半分程度を切り欠き、凹状にカットして、周面側のカット平面107から、薄肉の切れ刃形成部105として相対的に突出するよう、以下に詳述するよう形成されている。なお、三角の板の中心には、切削インサート100をクランプすることで切削工具となるホルダ(シャンク)のクランプ部位への取付用孔(円形穴)109が貫通形成されている。
【0019】
切れ刃200は、
図1−Aの左上の切れ刃形成部105において、三角形の外周面110のコーナ100c寄りの上面部位が、三角の辺(外周面110)と略平行に、若干切欠かかれて、すくい面120をなしている。本例の切れ刃200は、すくい面120を上から見たとき、先端が約30度の直角三角形を呈している(
図1−B、
図3−B等参照)。本例では、すくい面120を上から見たときの切れ刃200の幅(すくい面の横幅)Wが、1.5mm程度のものであり、その先端(
図3の左端)には、微小幅(例えば、長さ0.4〜0.5mm)の前切れ刃210が、すくい面120と前逃げ面130との交差稜線を刃先210aとして形成されている。この前切れ刃210は、すくい面120を上から見たとき、前切れ刃210の一方の端(
図3−Bの下端)P1から斜め後方(
図3−Bの下右方)に、すくい面120の横幅(
図3−Bの上下幅)を広げるよう、縦送り方向に引いた仮想直線L1に対し、所定の横切れ刃角α(図示30度程度)で延びる横切れ刃220を備えている。これにより、横切れ刃220は、すくい面120と、横逃げ面140との交差稜線220aをその刃先(刃先220a)としている。本例では前切れ刃210、及び横切れ刃220の刃先の高さは、厳密には同一ではないが、概略1仮想平面上に位置するよう設定されている。なお、前切れ刃210は、その他端(
図3−Bの上端)P2が、縦送り時において最先端(
図3−Bの最左端)に位置するよう、すくい面120を上から見たとき、ワークの回転軸線に対し微小な傾斜角(1〜2度)が付くものとされている。
【0020】
一方、すくい面120のうち、横切れ刃220と反対側(
図3−Bの上側)の端縁250は、前切れ刃210の他方の端P2から後方に向け、略直線状に延びている。この端縁250は、すくい面120と該端縁250側における横逃げ面150との交差稜線である端縁側交差稜線250aを形成している。そして、すくい面120を上から見たとき、この反対側の端縁(及びその横逃げ面)250は、縦送り時(溝入れ加工時)における溝の壁面に接触、干渉しないようにバックレーキ角(1〜2度)が付けられている。なお、すくい面120を上から見たとき、前切れ刃210と端縁側交差稜線250aとがなす角(コーナP2)には、微小アール(例えば、R0.1)が付けられている。すなわち、前切れ刃210の他端(
図3−Bの上端)P2には微小アールが付けられている。また、すくい面120と、各切れ刃(前切れ刃210、及び横切れ刃220)を形成する各逃げ面(前逃げ面130、横逃げ面140、150)には、適度の逃げ角が付与されるように、例えば平面でカット形成されている。
【0021】
さて次に、すくい面120の構造について詳細に説明する(
図2の拡大図、
図3−B、
図4、
図5参照)。すくい面120には、前切れ刃210から後方に向けて延びるブレーカ溝170が形成されている。このブレーカ溝170は、横切れ刃220の刃先(交差稜線220a)と、横切れ刃220と反対側の端縁(端縁側交差稜線250a)との中間部位の、やや、横切れ刃220の刃先(交差稜線220a)寄りにおいて最低溝面175を有する凹溝となって後方に延びている。その溝面は、横切れ刃220の交差稜線220aに対する垂直断面において(
図4、
図5参照)、横切れ刃220の刃先(交差稜線220a)から離れるほど低位をなして、正のすくい角が付与される形で下り傾斜面173を有して最低溝面175となり、この最低溝面175を介して、横切れ刃220と反対側に位置するすくい面120の端縁(端縁側交差稜線250a)に向って高位をなす上り傾斜面177を有するとともに、下り傾斜面173、及び上り傾斜面177の前記垂直断面における長さが、溝の後方に向うほど長くなるよう形成されている。なお、横切れ刃220のすくい角(横すくい角)は、その先後において、変化していてもよいが、本例では例えば15度で一定(又は14〜20度の範囲)とされている。また、前切れ刃210にも同様のすくい角が付与されるよう形成されるが、これらは、切れ味、刃先強度等を考慮して適宜のものに設定される。
【0022】
一方、最低溝面175から、横切れ刃220と反対側に位置するすくい面120の端縁250aに向って高位をなす上り傾斜面177の傾斜角度は、横切れ刃220の交差稜線220aに対する垂直断面(
図4のA−A断面〜E−E断面)において、横切れ刃220の先端P1より後端に向うほど、漸減するよう設定されている(
図5参照)。すなわち、その各断面(A−A断面、B−B断面、C−C断面、D−D断面、E−E断面)における上り傾斜面177の傾斜角度は、
図5に、それぞれ、角度θa、θb、θc、θd、θeで示したが、その順で漸減するよう設定されており、緩勾配となるよう形成されている。具体的な一例としては、前切れ刃210の近傍位置のA−A断面で28度で、横切れ刃220の後端に向けて、漸減して、E−E断面で23度程度の緩勾配となるよう設定されている。このように、横切れ刃220の交差稜線220aに対する垂直断面(
図4のA−A断面〜E−E断面)において、横切れ刃220の先端P1より後端に向うほど、上り傾斜面177を含むすくい面の幅の幅が広くなり、しかも、上り傾斜面177はその長さが長く、緩勾配となるよう形成されている。
【0023】
なお、横切れ刃220と反対側の端縁250側には、その端縁側交差稜線250aに沿って、例えば、
図4中の破線Hより上の、その端縁250に寄り部位を平坦にして、上り傾斜面177の上端(頂部)と、端縁250との間に平坦面(平坦な頂面)を設けてもよいが、本例では、このような平坦面を設けることなく、端縁250が、
図5の各断面に示されるように、角(鋭角)をなし、すくい面120の略全体が凹むブレーカ溝170をなしている。すなわち、本例では、ブレーカ溝170は、すくい面120のうち、前切れ刃210の刃先210a、横切れ刃220の刃先220a、及び横切れ刃220と反対側に位置する端縁である端縁側交差稜線250aを残し、すくい面120の略全体が溝面となるように凹状に形成されている。
【0024】
横切れ刃220は、上記したように、その刃先220aが先後において略同一高さとされており、すくい角(横すくい角)も同じであるが、厳密には中間部位が微量、低くなる設定とされている(
図3−A参照)。一方、横切れ刃220と反対側の端縁側交差稜線250a(すくい面120の端縁)は、先端において、前切れ刃210、及び横切れ刃220の先端と略同一高さとされ、所定範囲において緩勾配の傾斜部を有し、横切れ刃220より微量(0.2〜0.3mm)高くなり、この傾斜部を介して後方に向け一定高さで延びている(
図3−A、D参照)。
【0025】
しかして、このような本例の切削インサート100は、
図6に示したように、これをクランプ(固定)するクランプ部位(ポケット)を先端に備えるホルダ10に縦置きで配置、固定することで切削工具20となり、従来と同様にしてワーク30の切削(後挽き加工)に供される。ここで、その加工について
図7に基づき簡単に説明する。切削工具20は、自動旋盤のチャック40の前方に配置された刃物台(図示せず)に
図7−Aに示したように固定される。切削においては、
図7−Bに示したように、回転するチャック40に固定されたワーク(丸棒)30に向け(その回転軸線に直交する方向に)、所定量、切削工具20を縦送りして切り込んで溝入れ加工をする。この溝入れ加工では、前切れ刃210の他端P2から後方に延びる横切れ刃220と反対側の端縁(端縁側交差稜線250a)にバックレーキ角(1〜2度)が付けられているから、その反対側の端縁は溝の壁面(加工済みの壁面)に接触しない。所定の縦送り後、
図7−Cに示したように、所定の速度で、切削工具20を横送りして(自動横送り装置付きの旋盤ではワーク30を横送りして)、その溝の加工済みの壁面(フランジ)から離間する方向に所定範囲にわたり後挽き加工(外径加工)をする。
【0026】
本例の切削インサート100を用い、このようにして直径10mmのワーク(SUS404の丸棒)をφ6に後挽き加工をした場合(切削速度:30m/min)においては、比較例1,比較例2の切削インサートにより、同条件で後挽き加工をした場合よりも、加工面(仕上げ面)精度の向上が見られた。このことより、本例の切削インサート100による後挽き加工では切り屑処理性が向上していることが実証された。なお、比較例1の切削インサートは、本例の「上り傾斜面177」を、前切れ刃210の近傍位置から、横切れ刃220の後端に向けて28度、又は23度で一定にしたものの2つを用いた。また、比較例2の切削インサートは、比較例1の切削インサートにおいて、文献1に記載の切削インサートを模してブレーカ溝を形成したものである。本例の切削インサート100を用いた後挽き加工で、好ましい切り屑処理性が得られるのは次のように考えられる(
図8、
図9参照)。
【0027】
図8に示したように、後挽き加工において発生する切り屑Kは、基本的に、横切れ刃220の切削を受け持つ刃先の長さLhに対応する幅で、横送り量に対応した厚みTaとなって(
図8中のハッチング部参照)、すくい面120を上から見たとき、破線矢印で示したように、横切れ刃220の刃先(交差稜線)に垂直な方向に流出する。このようにすくい面120を流れる切り屑Kは、ブレーカ溝170の下り傾斜面173から、上り傾斜面177に押し付けられて変形して排出される。一方、横切れ刃220の先端側は、
図9の上図(A−A断面)に示したように、
図9の下図(E−E断面)に比較し、相対的にすくい面120の横幅も狭く、上り傾斜面177が急勾配となっている。このため、切り屑の横断面の幅方向の長さLhのうち、横切れ刃220の先端側(溝の奥側)から排出される部分は、このようにすくい面120の横幅も狭く、急勾配の上り傾斜面177に押し付けられるために相対的に強く、大きく曲げ変形されるように排出が制御される(
図9の上図(A−A断面))。これに対し、切り屑の横断面の幅方向の長さLhのうち、横切れ刃220の後端側から排出される部分は、すくい面120の横幅も広く、緩勾配の上り傾斜面177に押し付けられるために相対的に弱く、小さく曲げ変形されるように排出が制御される(
図9の下図(E−E断面))。
【0028】
すなわち、後挽き加工において発生する切り屑のうち、横断面の幅方向(長さLh方向)のうち、横切れ刃220の先端側で切削されて発生する切り屑部分は、相対的にすくい面120の横幅が狭く、急勾配の上り傾斜面177により、小径のカールに変形されるから、加工済み端面(溝入れにおける加工済みの壁面)までの距離が小さくても、その加工済み端面への接触の発生防止が図られるよう流れる。一方、横切れ刃220の後端側で切削されて発生する切り屑部分は、相対的にすくい面120の横幅が広く、緩勾配の上り傾斜面177により、カール変形するとして比較的大径となるから切削抵抗の増大を招かない。このように切り屑Kは、その幅方向の長さLh部分における一端側(溝底側)と他端側において異なる変形作用を受ける。この結果、その加工済み端面へ切り屑Kが接触することによる傷の発生防止が図られると共に、切り屑の詰りや絡み付き等の防止も図られる。このように本例の切削インサート100によれば、後挽き加工において生じる切り屑の幅方向部位における、排出方向及び切削抵抗の制御ができるため、切り屑の排出処理性が高められ、仕上げ面精度が高められる。
【0029】
また、上記もしたように、すくい面120には、該端縁側交差稜線250に沿う部位に、平坦な頂面が存していてもよいが、本例では、このような頂面が存しないように、ブレーカ溝170における上り傾斜面177が形成されている。すなわち、本例では、横切れ刃220と反対側に位置する端縁250が、
図5の各断面に示されるように、角(鋭角)をなし、この端縁である端縁側交差稜線250aのみを残し、すくい面120の略全体が溝面となるように凹状に形成されている。このため、上り傾斜面177の傾斜長を長く確保できる上に、その傾斜角度の自由度も高められるため、切り屑の変形、流出方向の制御の自由度を高めることができる。
【0030】
次に、本発明を具体化した切削インサートを具体化した別の実施の形態例−2について、
図10〜
図14を参照しながら説明する。ただし本例の切削インサート102は、上記した実施の形態例−1のものと本質的な違いはなく、切れ刃形成部105の突出長、及びすくい面120を上から見たときの、その横幅Wも同じであり、相違点は、横切れ刃220を、2段の横切れ刃とした点のみといえる。すなわち、本例において、横切れ刃220は、その刃先が、すくい面120を上から見たときにおいて、前切れ刃210の刃先210aの一方の端P1から、第1横切れ刃角α1=40度で斜め後方に向けて、横切れ刃220の全長(先後長)の略中間位置まで直線状に延びる第1横切れ刃221と、この第1横切れ刃221の刃先221aの後端P3から、第2横切れ刃角α2=20度で斜め後方に向けて直線状に延びる第2横切れ刃222とを有するものであり、このように2段の横切れ刃とし、横切れ刃角を形態例−1のものにおけるα=30度(一定)としたものと相違する点、及びその相違点に基づく、すくい面120の形状等の相違のみが異なるだけである。このため、この相違点を中心として説明し、前例と共通する部位には、同じ符号を付し、適宜、その説明を省略する。
【0031】
すなわち、本例の切削インサート102は、横切れ刃220が2段で、すくい面120を上から見たときにおいて(
図13参照)、第1横切れ刃221の横切れ刃角を第1横切れ刃角α1=40度とし、第2横切れ刃222の横切れ刃角を第2横切れ刃角α2=20度として、α1>α2の関係にあるものとしている。なお、すくい面120を上から見たときにおいて、その横幅Wは前例におけるものと同じであり、また、第1横切れ刃221と第2横切れ刃222の長さは略同じで、α1=40度、α2=20度とされているため、すくい面120の先後間における横幅は、本例の方が前例のものより全体的に幅広となっている。
【0032】
このような本例の切削インサート102のすくい面120にも、前切れ刃210から後方に向けて延びるブレーカ溝170が形成されている。そして、その溝面は、第1横切れ刃221、第2横切れ刃222(横切れ刃220ともいう)の各交差稜線(刃先)221a,222aに対する垂直断面において、その横切れ刃220の刃先から離れるほど低位をなす(正のすくい角が付与される)下り傾斜面173を有して最低溝面175となり、最低溝面175を介して、横切れ刃220と反対側に位置する該すくい面120の端縁250に向って高位をなす上り傾斜面177を有するよう形成されている(
図14参照)。ただし、すくい面120の横幅が、第1横切れ刃221の後端P3、すなわち、第1横切れ刃221と第2横切れ刃222の接続点である横切れ刃の中間点で屈曲する形で広くなっているため、最低溝面175は、横切れ刃220の交差稜線221a,222aと端縁側交差稜線250aとの中間位置により近いところに位置するものとされている。
【0033】
そして、
図13、
図14に示されるように、上り傾斜面177も、横切れ刃220の先端から後端に向うほど、第1横切れ刃221、第2横切れ刃222の交差稜線221a,222aに対する垂直断面(
図14のA−A断面〜E−E断面参照)において、その傾斜角度が漸減するよう形成されている。具体的には、第1横切れ刃221における刃先(すくい面120と逃げ面140との交差稜線221a)に垂直な断面において、28度から漸減して24度程度に、そして、第2横切れ刃222における刃先(すくい面120と逃げ面140との交差稜線222a)に垂直な断面において、24度から漸減して23度程度に、角度θa、θb、θc、θd、θeの順に漸減するよう設定されている。
【0034】
しかして、このような本例の切削インサート102も、前例と同様にホルダに固定されて切削工具となって後挽き加工に使用されるが、その際には、上記例と同様の効果が得られる。しかも、すくい面120を上から見たときのその横幅Wは同じでも、本例の切削インサート102は、横切れ刃220が、第1横切れ刃角α1=40度、第2横切れ刃角α2=20度の2段の横切れ刃220となっているため、次のような特有の効果が得られる。
【0035】
すなわち、横切れ刃220が、前例では1つの横切れ刃角(α=30度)のものであったのに対し、本例では、前記したような2段の横切れ刃220(221,222)とされているため、横切れ刃220における交差稜線に対する垂直断面におけるすくい角に対応する下り傾斜面173と、横切れ刃220と反対側に向けて、該横切れ刃220の刃先から離れるほど高位をなす上り傾斜面177の各長さを大きく確保できる。このため、すくい面120を横切れ刃220に垂直に流れる切り屑の流れ方向の制御の自由度が高められる。
【0036】
しかも、本例では、横切れ刃角が、第1横切れ刃221と、第2横切れ刃222との接続点P3において明確に異なる形で屈曲する2段の横切れ刃220となっているため、第2横切れ刃222までの深い切り込みで横送りをして外径加工をする場合において発生する切り屑は、この接続点P3の先後において、その横断面を屈曲させるよう積極的に変形させることができる。さらに、第1横切れ刃221の方が第2横切れ刃222よりも横切れ刃角が大きいため、切り屑の厚みを小さくできる。これにより、深切り込みにおいても切削抵抗の低減が図られるし、切り屑詰りの発生の防止も図られる。そして、第1横切れ刃角α1が前例における横切れ刃角αよりも大きいことから、切り屑をその幅方向の先端寄り部位において、より後方に向けて排出させることができる。すなわち、深切り込みの横送りとなっても、第1横切れ刃221の部位で切削される切り屑の部位が、第2横切れ刃222で切削され、加工済み壁面を向いて流れる切り屑を後方にガイドする作用が得られる。このため、切削抵抗の低減に加え、切り屑全体が加工済み壁面に接触するのを防止する作用が一層高められる。よって、深切り込みにおいて横送りをする場合において、横送りの開始時、及び開始直後の切り屑処理性を一層高めることができる。
【0037】
また、このように切り屑処理性と共に、切削抵抗の低減が図られるため、被削材を自動送り(横送り)する自動旋盤による小物(小径ワーク)の後挽き加工においても、ワークの曲り変形の発生による加工精度の低下の問題解消にも寄与する。なお、横切れ刃220を、すくい面120を上から見たときの形状としては、横切れ刃角を順に小さくした、3段の横切れ刃(第1〜第3横切れ刃)とすることもできるし、4段以上としてもよい。また、すくい面を上から見たときの横切れ刃の刃先は、段数に関係なく、直線ではなくアール形状としてもよい。
【0038】
なお、本例でも、横切れ刃220と反対側の端縁250側には、端縁側交差稜線250aに沿って、上記したような平坦面(平坦な頂面)を設けてもよいが、本例では、このような平坦面を設けることなく、すくい面120の全体をブレーカ溝170として凹ませている。このため、上り傾斜面の長さの設定の自由度を高められるため、一層、切り屑の排出制御の自由度が高められる。
【0039】
本発明は上記した各実施形態例に記載のものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜、変更して具体化できる。例えば、上り傾斜面の傾斜角(角度)が先端から後方に向けて漸減する変化の程度についても、或いは、横切れ刃角の段数等についても、適宜に変更して具体化できる。また、横すくい角は、上記もしたように、被削材の強度、切れ味等を考慮して適宜に設定すればよいし、その角度も、横切れ刃の先後において変化させてもよいし、その刃先にランドを付けてもよい。また、横切れ刃の高さや、横切れ刃と反対側の端縁の高さも先後において変化させてもよい。なお、上記例では、切れ刃を3つ有する三角チップをベースとして形成された切削インサートを例示したが、切れ刃を4つ有する四角チップ、或いは、切れ刃が1つのみのチップの切削インサートとして具体化することもできる。