【解決手段】基材、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する接着剤層、およびゴム層がこの順に積層してなる積層体である。この積層体は、ポリオレフィン系材料を基材として用いた際に、20mm巾に切り取った試験片を用いて測定された剥離強度が、15N/20mm以上である。ゴム層がオレフィン系ゴムからなることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の積層体は、基材、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する接着剤層、およびゴム層がこの順に積層してなるものである、
【0011】
ゴム層は、例えば、天然ゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、オレフィン系ゴム等の合成ゴム材料からなる。
【0012】
中でもオレフィン系ゴムは、一般に、各種基材との接着性に劣る場合があるが、本発明の積層体においては、ゴム層としてオレフィン系ゴムからなるものを採用しても、接着性に優れる。
【0013】
オレフィン系ゴムは、例えば、非結晶性のオレフィンの重合体または共重合体であり、エチレン−α−オレフィン系共重合体ゴム等が挙げられる。エチレン−α−オレフィン系共重合体ゴムにおけるα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン等が挙げられる。また、オレフィン系ゴムには非共役ジエンが共重合されていてもよく、非共役ジエンとしては、例えばジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン等が挙げられる。
【0014】
このようなエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムとしては、例えばエチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体ゴム(以下、EPDMと称する。)、これらの混合物等が挙げられる。
【0015】
(基材)
基材としては特に限定されず、例えば、原料としてポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、天然皮革、人工皮革、合成皮革、金属、ガラス、紙、合成紙、木材、コンクリート等からなるものが挙げられる。
【0016】
中でも、一般に、ポリオレフィン樹脂は、ゴム材料との接着性に劣る場合があるが、本発明の積層体においては、基材としてポリオレフィン樹脂からなるものを採用しても、基材とゴム層との間の接着性に優れる。
【0017】
基材を構成するポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリプロピレン系共重合体、ポリエチレン、ポリエチレン系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーおよびこれらの混合物等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂は、主鎖または末端に置換基が導入された変性体であってもよい。
【0018】
基材の形態としては、例えば、シート、フィルム、成形品、繊維、織物、編物、不職布等が挙げられる。
【0019】
基材は、必要に応じて、予め表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、フレームプラズマ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理、オゾン処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、熱処理、バフ掛け、プライマー処理、アンカーコート処理、酸処理、アルカリ処理、薬品処理、溶剤処理、脱脂処理等が採用できる。
【0020】
(接着剤層)
接着剤層が酸変性ポリオレフィン樹脂を含有することで、基材とゴム層との界面の接着性が向上する。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、主成分としてオレフィン成分を含有するものである。オレフィン成分としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2−ブテン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のアルケンが好ましく、これらの混合物が挙げられる。中でも、接着性をいっそう向上させる観点から、オレフィン成分としてはエチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン等の炭素数2〜4のアルケンがより好ましく、エチレン、プロピレンがより好ましく、エチレンがさらに好ましい。
【0021】
酸変性ポリオレフィン樹脂におけるオレフィン成分の含有量は、45〜99.9質量%が好ましく、55〜97.0質量%がより好ましく、60〜95.0質量%がさらに好ましく、65〜90.0質量%が特に好ましく、70〜85.0質量%が最も好ましい。オレフィン成分の含有量が上記範囲を外れると、接着性が低下する場合がある。
【0022】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸成分を含有する。不飽和カルボン酸成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でも、接着性にいっそう優れる観点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。
【0023】
不飽和カルボン酸成分は、酸変性ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されない。共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)等が挙げられる。
【0024】
酸変性ポリオレフィン樹脂における不飽和カルボン酸成分の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜8質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましく、2〜4質量%が最も好ましい。含有量が0.1質量未満であると接着性が低下する場合、または後述の製造方法における水性分散体とすることが困難な場合がある。一方、含有量が10質量%を超えると、却って接着性が低下する場合がある。
【0025】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、より接着性を向上させる目的で、上記オレフィン成分または不飽和カルボン酸成分以外の他の成分が、さらに共重合されていてもよい。他の成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル成分、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸ジエステル成分、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル成分、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル成分、ビニルエステル成分を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、(メタ)アクリル酸アミド成分等が挙げられ、これらの混和物であってもよい。中でも、(メタ)アクリル酸エステル成分、ビニルエステル成分が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル成分がより好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜またはメタクリル酸〜」を意味する。
【0026】
これらの他の成分は、酸変性ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されない。共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)等が挙げられる。
【0027】
これら他の成分の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂中において1〜45質量%が好ましく、2〜35質量%がより好ましく、3〜25質量%がさらに好ましく、4〜18質量%が特に好ましい。他の成分の含有量が1質量%未満であると接着性向上の効果が十分に発現しない場合があり、含有量が45質量%を超えると却って接着性が低下する傾向にある。
【0028】
酸変性ポリオレフィン樹脂の具体例としては、例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−ブテン−(無水)マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(無水)マレイン共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル−(無水)マレイン共重合体等が挙げられる。中でも、より接着性に優れる観点から、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体が好ましい。
【0029】
酸変性ポリオレフィン樹脂の融点は、50℃以上が好ましく、60〜250℃がより好ましく、80〜200℃が特に好ましい。融点が50℃未満であると接着性が低下する場合があり、250℃を超えると後述の水性分散体が得難くなる場合がある。
【0030】
酸変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、20000〜100000が好ましく、25000〜70000がより好ましく、30000〜50000がさらに好ましく、35000〜50000が特に好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が20000未満であると接着性が低下する場合がある。一方、重量平均分子量が100000を超えると、後述の水性分散体が得難くなる場合がある。ただし、一般にポリオレフィン樹脂は、溶剤に対して難溶であり、分子量測定が困難となる場合がある。この場合、溶融樹脂の流動性を示すメルトフローレート値を分子量の目安とすることができる。
【0031】
酸変性ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート値(ISO1133に従って、190℃、21.2N荷重で測定)は、1〜300g/10分が好ましく、2〜200g/10分がより好ましく、3〜100g/10分がさらに好ましく、3〜80g/10分が特に好ましい。メルトフローレート値が300g/10分を超えると、接着性が低下する場合がある。一方、メルトフローレート値が1g/10分未満であると、後述の水性分散体が得難くなる場合がある。
【0032】
接着剤層は、接着性をさらに向上させるために、例えば、ゴム成分、または粘着付与剤等の酸変性ポリオレフィン樹脂以外の樹脂(以下、「他の樹脂」と称することがある)を含有することが好ましい。これらは単独で、または2種以上を併用することができる。
【0033】
ゴム成分としては特に限定されず、例えば、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレンブタジエンエチルへキシルアクリレートゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレンプロプレンゴム等が挙げられる。これらを単独で、または2種以上を併用できる。中でもクロロプレンゴムは、接着性向上の効果が高く、好ましい。
【0034】
クロロプレンゴムは公知のものを用いることができるが、例えば、2−クロロ−1,3−ブタジエン(以下、クロロプレンと称す)の単独重合体、またはクロロプレンと共重合可能な単量体とクロロプレンとの共重合体であるポリクロロプレン等が挙げられる。
【0035】
クロロプレンと共重合可能な単量体としては、例えば、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート、アクリル酸、またはそのエステル類、メタクリル酸、またはそのエステル類、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。これらを2種類以上併用してもよい。中でも、より接着性に優れる観点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸成分が好ましく、より共重合性に優れる観点からメタクリル酸がより好ましい。
【0036】
クロロプレンと共重合可能な単量体の含有量は、特に限定されるものではないが、ポリクロロプレン本来の特性を維持し易い観点から、ポリクロロプレン中40質量%以下であることが好ましい。なお、不飽和カルボン酸を共重合させる場合は、ポリクロロプレン中10質量%以下であることが好ましく、0.2〜5質量%であることがより好ましく、0.5〜4質量%であることがさらに好ましく、0.7〜3.5質量%であることが特に好ましい。不飽和カルボン酸が少な過ぎると接着性の向上効果が不十分な場合があり、10質量%を超えると、乳化させた場合の状態が不安定になる場合がある。なお共重合体には、ポリクロロプレン存在下にその他の単量体をグラフト重合させた、グラフト共重合体も含まれる。
【0037】
ゴム成分の分子量、分子量分布、ゲル含有量、分子末端構造、結晶化速度等は、目的とする接着剤層の特性に合わせて調整すればよく、単量体を重合させる際の重合温度、重合時に添加する重合開始剤、連鎖移動剤、重合停止剤、最終重合率等を制御することで調整できる。
【0038】
ゴム成分の含有量は、より接着性に優れる観点から、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、5〜1900質量部が好ましく、10〜900質量部がより好ましく、25〜400質量部がさらに好ましい。
【0039】
粘着付与剤としては、各種公知の粘着付与成分からなるものが挙げられる。
粘着付与成分としては、例えば、ロジン類、ロジン誘導体、石油系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂等が挙げられ、これらは単独で、または2種以上を併用することができる。
【0040】
ロジン類またはロジン誘導体としては、例えば、重合ロジン、不均化ロジン、水素添加ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン、これらのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、エチレングリコールエステル、ジエチレングリコールエステル、トリエチレングリコールエステル等が挙げられる。
【0041】
石油系樹脂としては、例えば、炭素数5個の石油留分を重合した石油樹脂、炭素数9個の石油留分を重合した石油樹脂、これらを水素添加した石油樹脂、マレイン酸変性、フタル酸変性した石油樹脂等が挙げられる。
【0042】
テルペン系樹脂としては、例えば、低重合テルペン系樹脂、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、テルペンフェノール系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン樹脂等が挙げられる。
【0043】
中でも、粘着付与剤としては、より接着性に優れる観点から、テルペン系樹脂が好ましく、テルペンフェノール系樹脂がより好ましい。
【0044】
粘着付与剤の軟化点は、より接着性に優れる観点から、80〜180℃が好ましく、100〜170℃がより好ましく、120〜160℃が特に好ましい。軟化点は、JIS K5903に記載の方法に従って測定される。
【0045】
粘着付与剤の含有量は、より接着性に優れる観点から、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、5〜300質量部が好ましく、10〜150質量部がより好ましく、25〜100質量部がさらに好ましく、40〜100質量部が特に好ましい。
【0046】
他の樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、エチレン−アミノアクリルアミド共重合体、エチレン−アミノアクリレート共重合体、ポリ塩化ビニリデン、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−アミノアルキルマレイミド共重合体、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン系エラストマー、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、変性ナイロン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素含有樹脂、ポリエチレンイミン、UV硬化型樹脂等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を併用できる。中でも、より接着性に優れる観点から、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0047】
他の樹脂の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、より接着性に優れる観点から、0.1〜100質量部が好ましく、3〜50質量部がより好ましく、10〜30質量部がさらに好ましい。
【0048】
(物性)
ゴム層と基材とを剥離するのに必要な強度(剥離強度)について以下に述べる。
基材としてポリオレフィン系材料からなる基材を含む積層体であれば、20mm巾に切り取った試験片を用いて測定した剥離強度が15N/20mm以上であり、20N/20mm以上であることが好ましく、30N/20mm以上であることがより好ましく、40N/20mm以上であることがさらに好ましい。特に、測定時に基材の材料破壊が発生することが最も好ましい。
【0049】
また、基材として金属からなる基材を含む積層体であれば、20mm巾に切り取った試験片を用いて測定した剥離強度が25N/20mm以上であることが好ましく、30N/20mm以上であることがより好ましく、50N/20mm以上であることがさらに好ましい。
【0050】
(用途)
本発明の積層体は、コンベヤベルト、ホース、ゴムライニング、鞄、手袋、繊維製品、日用品用途、自動車用途等の幅広い用途で用いることができる。
【0051】
(積層体の製造方法)
本発明の積層体の製造方法について、以下に述べる。
まず基材表面の少なくとも一部に、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する接着剤層を形成し、次いで、接着剤層表面に溶融したゴムを積層してゴム層を形成する。
【0052】
接着剤層を形成する手法としては、例えば、酸変性ポリオレフィン樹脂および水性媒体を含有する水性分散体を基材の一部に塗布し、次いで水性分散体中の揮発成分の一部または全てを乾燥させる手法が挙げられる。
【0053】
水性分散体に含有される酸変性ポリオレフィン樹脂としては、上述の接着剤層にて記載されたものを用いることができる。
【0054】
水性分散体は、例えば、酸変性ポリオレフィン樹脂を水性媒体中に分散させて得られる。水性媒体への分散においては、自己乳化法、強制乳化法等の公知の分散方法を採用すればよい。なお、水性分散体には、酸変性ポリオレフィン樹脂の分散化を促進する目的で界面活性剤、高酸価ワックス等の乳化剤または分散剤を添加することがあるが、より接着性を高める観点から、乳化剤または分散剤を用いないことが好ましい。
【0055】
水性分散体は、より接着性に優れる点から、アニオン性の水性分散体であることが好ましい。アニオン性の水性分散体は、例えば、水性媒体中で酸変性ポリオレフィン樹脂の不飽和カルボン酸成分を塩基性化合物によって中和することで得られる。なお、酸変性ポリオレフィン樹脂のアニオン性水性分散体は、通常アルカリ性を示す。
【0056】
水性媒体は、水または、水を含む液体からなる媒体であり、分散安定化に寄与する中和剤、水溶性の有機溶媒等が含まれていてもよい。
水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体;さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等が挙げられる。これら水溶性有機溶媒は2種以上を混合して使用してもよい。
【0057】
また、塩基性化合物としては、例えば、アンモニア;トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等の有機アミン化合物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等が挙げられる。なお、これら塩基性化合物は2種以上を混合して使用してもよい。
【0058】
酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体中に含有される、酸変性ポリオレフィン樹脂の数平均粒子径は、1.5μm以下が好ましく、1μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下がさらに好ましく、0.3μm以下が特に好ましく、0.2μm以下が最も好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂の数平均粒子径が1.5μmを超えると、水性分散体の保存安定性が低下する場合、または造膜性に劣る場合がある。
【0059】
水性分散体には、上述した、接着剤層に含有されていてもよいゴム成分、粘着付与剤、他の樹脂を添加してもよい。
【0060】
ゴム成分、粘着付与剤、他の樹脂の添加に際しては、これらが水性媒体中に分散した水性分散体または水溶液を使用することが好ましい。
水性媒体としては、例えば、水、または水を含む液体からなる媒体が使用される。水性媒体には、分散安定化に寄与する中和剤または乳化剤、水溶性の有機溶媒等が含まれていてもよい。
【0061】
ゴム成分としてクロロプレンゴムを添加する場合は、例えば、クロロプレンを単独で、または、クロロプレンと共重合可能な単量体とクロロプレンとを、乳化剤または分散剤の存在下で乳化重合して得られるポリクロロプレンラテックス(水性媒体中にポリクロロプレンが分散した水性分散体)を用いることが好ましい。
【0062】
ポリクロロプレンラテックスの乳化重合の場合に用いられる乳化剤または分散剤としては、特に限定されず、アニオン型、ノニオン型、カチオン型等の公知のものが挙げられる。
【0063】
アニオン型乳化剤または分散剤の具体例としては、カルボン酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型等が挙げられ、例えば、ロジン酸のアルカリ金属塩、炭素数が8〜20個のアルキルスルホネート、アルキルアリールサルフェート、ナフタリンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドとの縮合物等が挙げられる。
【0064】
ノニオン型乳化剤または分散剤の具体例としては、ポリビニルアルコールまたはその共重合体(例えば、アクリルアミドとの共重合体)、ポリビニルエーテルまたはその共重合体(例えば、マレイン酸との共重合体)、ポリビニルピロリドンまたはその共重合体(例えば、酢酸ビニルとの共重合体)、これら(共)重合体を化学修飾したもの、セルロース系誘導体(ヒドロキシエチルセルロース)等が挙げられる。
【0065】
カチオン型乳化剤または分散剤の具体例としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩等が挙げられ、例えば、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0066】
中でも、接着性、酸変性ポリオレフィン樹脂等との混合安定性により優れることから、アニオン型が好ましい。乳化剤または分散剤の含有量は、初期仕込みの単量体の合計質量中の0.5〜20質量%が好ましい。0.5質量%未満であると乳化力が十分でない場合があり、20質量%を超えると接着性が低下する場合がある。
【0067】
粘着付与成分の水性分散体は、アルカリ性であることが好ましい。
【0068】
水性分散体における、ゴム成分、粘着付与剤、他の樹脂の数平均粒子径は、0.5μm以下であることが好ましく、0.05〜0.3μmであることがより好ましい。数平均粒子径が0.5μmを超えると、得られる本発明の水性分散体の保存安定性が低下する場合がある。
【0069】
酸変性ポリオレフィン樹脂を含む水性分散体を、基材に塗布する方法としては、公知の方法を採用することができる。例えば、キャスティングヘッドからの吐出、ロールコート、ナイフコート、エアナイフコート、グラビアロールコート、ドクターロールコート、ドクターナイフコート、カーテンフローコート、スプレーコート、シャワーコート、ワイヤーバー、ロッドコート、浸漬コート、筆塗り、刷毛塗り等の方法を採用することができる。
【0070】
水性分散体の塗布量としては、水性分散体に含有される固形分量に換算して0.2g/m
2以上であることが好ましく、1〜500g/m
2であることがより好ましく、5〜100g/m
2であることがさらに好ましく、10〜50g/m
2であることが特に好ましい。塗布量が0.2g/m
2未満であると、接着性が低下する場合がある。
【0071】
水性分散体を基材に塗布して接着剤層を形成した後、水性媒体等の揮発成分の一部または全てを乾燥させてもよい。塗布、乾燥は、必要に応じて2回以上行ってもよい。
揮発成分の乾燥方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、熱風、赤外線ヒーター、遠赤外線ヒーター、マイクロ波、キセノン・フラッシュランプ等を光源とするパルス光等を使用する加熱乾燥、自然乾燥、真空乾燥等の方法が挙げられる。中でも、乾燥温度が高く、乾燥時間をより短くすることができる観点から、加熱乾燥を採用することが好ましい。
【0072】
乾燥温度は、特に限定されず、基材の耐熱温度等によって適宜決定すればよい。例えば、50〜150℃が好ましく、60〜100℃がより好ましく、70〜90℃がさらに好ましい。乾燥温度が50℃未満であると、水性媒体を十分に揮発させることが困難となる場合、または揮発に時間を要するため、接着性が低下する場合がある。一方、乾燥温度が150℃を超えると、却って接着性が低下する場合がある。
【0073】
次いで、接着剤層の表面に溶融したゴムを積層させてゴム層を形成する。
溶融したゴムとは、ゴムが加熱されて流動性を示す状態のゴムをいう。本発明においては、単に溶融したゴムを積層させてゴム層を形成するのみで、基材に十分に熱が伝わり、基材とゴム層との界面の濡れ性が向上するので、煩雑な手法を用いることなく、基材とゴム層との接着性に優れる積層体を得ることができる。
【0074】
溶融ゴムを得るための、ゴムの加熱温度は、60〜300℃であることが好ましく、100〜200℃であることがより好ましく、120〜180℃であることがさらに好ましい。
【0075】
溶融したゴムを積層するには、射出成形、押出成形等の方法を採用することができる。
射出成形とは、加熱溶融させた材料を金型内に射出注入し、冷却・固化させることにより、成形品を取り出す方法である。例えば、接着剤層を形成した基材を金型内に配置し、溶融したゴムを接着剤層表面に供給し加熱した後、次いで冷却する方法である。
押出成形とは、加熱されたシリンダーの中でスクリューの回転に伴うせん断応力と発熱とにより、ゴムを溶融・混合し、このゴムをダイスの押出口から一定速度でシート状に押し出しながら冷却固化させる方法であり、接着剤層表面に、溶融したゴムを押し出して供給する方法である。
【0076】
また、接着剤層と、未加硫の溶融したゴムとを重ねあわせ、加熱、加圧することで、容易に加硫接着させることができる。
加硫接着とは、ゴムの加硫処理時に同時に接着処理を行うことであり、加熱温度は、80〜250℃が好ましく、120〜180℃がより好ましい。加圧圧力は1〜50kg/cm
2が好ましく、10〜30kg/cm
2がより好ましい。
【0077】
未加硫の溶融ゴムは、加硫剤を含有してもよい。加硫剤としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、テトラメチルチウラムジスルフィド等の有機含硫黄化合物、ジクミルパーオキシド等の有機過酸化物、p−キノンジオキシム等のキノンジオキシム等が挙げられる。加硫剤の含有量は、ゴム100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.3〜10質量部がより好ましい。
【0078】
本発明の積層体の製造方法によれば、基材とゴム層との接着性に優れた本発明の積層体を得ることができる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
各種の特性について、以下の方法で測定または評価した。
【0080】
<物性の評価>
1.酸変性ポリオレフィン樹脂の特性
(I)構成
1H−NMR分析(日本電子社製、ECA500、500MHz)より求めた。テトラクロロエタン(d2)を溶媒とし、120℃で測定した。
(II)融点
酸変性ポリオレフィン樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製、DSC7)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定を行って融点を求めた。
(III)メルトフローレート値(MFR)
ISO 1133に記載の方法(190℃、21.2N荷重)で測定した。
【0081】
2.積層体の接着性評価
得られた積層体を20mm巾に切り、基材とゴム層と間の剥離強度を、引張試験機(インテスコ社製、インテスコ精密万能材料試験機2020型)を用いて、温度25℃、湿度65%RH、剥離速度200mm/分、かつ引張り角度180度で、測定を行った。測定はn=5で行い、測定値はその平均値とした。
【0082】
酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体を、下記の方法で製造した。
<水性分散体(A−1)>
撹拌機とヒーターを備えた1リットル容ガラス容器に、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体(ARKEMA社製、ボンダインHX8290、以下「HX8290」)を100g、イソプロパノールを100g、2−ジメチルアミノエタノールを5g、蒸留水を295g仕込んだ。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに120分間撹拌し分散化させた。その後、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ、ヒーターの電源を切り約40℃まで冷却したところで、イソプロパノールを添加して水性分散体の固形分濃度を10質量%となるように調整し、180メッシュのステンレス製フィルターで加圧濾過して、乳白色の均一な水性分散体(A−1)を得た。
【0083】
<水性分散体(A−2)>
撹拌機とヒーターを備えた1リットル容ガラス容器に、エチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製、ニュクレルAN42115C、以下「AN42115C」)を75g、n−プロパノールを175g、2−ジメチルアミノエタノールを20g、蒸留水を230g仕込んだ。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を150℃に保ってさらに120分間撹拌し分散化させた。その後、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ、ヒーターの電源を切り約40℃まで冷却したところで、イソプロパノールを添加して水性分散体の固形分濃度を10質量%となるように調整し、180メッシュのステンレス製フィルターで加圧濾過して、乳白色の均一な水性分散体(A−2)を得た。
【0084】
<水性分散体(A−3)>
エチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製、ニュクレルN0903HC、以下「N0903HC」)を75g、n−プロパノールを175g、2−ジメチルアミノエタノールを20g、蒸留水を230g仕込んだ。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を150℃に保ってさらに120分間撹拌し分散化させた。その後、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ、ヒーターの電源を切り約40℃まで冷却したところで、イソプロパノールを添加して水性分散体の固形分濃度を10質量%となるように調整し、180メッシュのステンレス製フィルターで加圧濾過して、乳白色の均一な水性分散体(A−3)を得た。
【0085】
<水性分散体(A−4)>
撹拌機とヒーターを備えた1リットル容ガラス容器に、エチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製、ニュクレルN1560、以下「N1560」)を75g、イソプロパノールを50g、2−ジメチルアミノエタノールを7g、蒸留水を368g仕込んだ。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を130℃に保ってさらに120分間撹拌し分散化させた。その後、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ、ヒーターの電源を切り約40℃まで冷却したところで、イソプロパノールを添加して水性分散体の固形分濃度を10質量%となるように調整し、180メッシュのステンレス製フィルターで加圧濾過して、乳白色の均一な水性分散体(A−4)を得た。
【0086】
使用した酸変性ポリオレフィン樹脂の組成、特性を表1に示す。
【表1】
【0087】
水性分散体に添加する添加剤として、ポリウレタン樹脂の水性分散体を以下のように調製した。
攪拌機、温度計、窒素シール管、冷却器のついた反応器に、重量平均分子量1970のポリテトラメチレングリコールを345g、イソホロンジイソシアネートを77.8g、ジブチルチンジラウレートを0.03g仕込み、80℃で2時間反応させた。次いでこの反応液を50℃まで冷却した後、3−ジメチルアミノプロパノールを11.7g、トリエチルアミンを8.85g、アセトンを177g質量部添加し、3時間反応させた。さらに、この反応液にアセトンを175g加えて30℃まで冷却し、イソホロンジイソシアネート13.4g、モノエタノ−ルアミン1.07g、イソプロパノール87.9g、水1039gからなる混合液を加えて高速攪拌し、この液からアセトン、水およびイソプロパノールを留去して、ポリエーテル型のポリウレタン樹脂の水性分散体(固形分濃度50質量%)を得た。以下、この水性分散体を「U−1」と示す。
【0088】
実施例1
水性分散体(A−1)を用いて、下記(1)〜(3)の3種類の構成の積層体を製造した。
(1)ゴム層/ポリプロピレン樹脂からなる基材
100mm×50mm×3mmの直方体状のポリプロピレン樹脂(以下、PPと称す)成形品に、水性分散体を10g(固形分質量)/m
2になるように刷毛で塗布した。次に、熱風乾燥機へ導入し、90℃で5分間乾燥して接着剤層を形成させた。乾燥後、金型内に供給し、130℃で溶融したEPDMを接着剤層の表面に注入し、冷却、固化させて、厚み3mmのゴム層を積層させた(積層体のサイズ:100mm×50mm×6mm)。
(2)ゴム層/ポリエチレン樹脂からなる基材
PP成形品に代えて、100mm×50mm×3mmの直方体状のポリエチレン樹脂(以下、PEと称す)成形品を用いた以外は、上記(1)と同様に行った(積層体のサイズ:100mm×50mm×6mm)。
(3)ゴム層/ステンレス板からなる基材
PPに代えて、100mm×25mm×2mmのステンレス板(以下、SUSと称す)を用いた以外は、上記(1)と同様に行った(積層体のサイズ:100mm×25mm×5mm)。
【0089】
実施例2
水性分散体として下記の手順で得られた(A−5)を用い、実施例1と同様にして積層体を製造した。
<水性分散体(A−5)>
クロロプレン−メタクリル酸共重合体ラテックス(東ソー社製、スカイプレンGFL−280、固形分濃度55質量%)(以下、「GFL−280」)を2−ジメチルアミノエタノールでpH8に調整した後に、酸化亜鉛水性分散体(山崎工業社製、AZ−SW)を、GFL−280の固形分100質量部に対して酸化亜鉛が3質量部になるように添加して、ラテックスAを得た。
得られたラテックスAを、水性分散体(A−1)の固形分100質量部に対して、GFL−280の固形分が100質量部になるようにA−1に混合した。得られた混合液の固形分濃度が20質量%になるように水を添加して、水性分散体(A−5)を得た。
【0090】
実施例3
水性分散体として下記の手順で得られた(A−6)を用い、実施例1と同様にして積層体を製造した。
<水性分散体(A−6)>
ポリウレタン樹脂の水性分散体U−1を、水性分散体(A−1)の固形分100質量部に対してU−1の固形分が25質量部になるように混合した。得られた混合液の固形分濃度が20質量%になるように水を添加して、水性分散体(A−6)を得た。
【0091】
実施例4
水性分散体(A−1)に代えて(A−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層体を製造した。
【0092】
実施例5
水性分散体(A−1)に代えて(A−3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層体を製造した。
【0093】
実施例6
水性分散体(A−1)に代えて(A−4)を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層体を製造した。
【0094】
比較例1
水性分散体(A−1)を用いて、下記(4)〜(6)の3種類の構成の積層体を製造した。すなわち、ゴム層の積層において、溶融したゴムに代えてシート状のゴムを用い、積層体を製造した。
(4)ゴム層/ポリプロピレン樹脂からなる基材
上記(1)で用いたPP成形品に、水性分散体を10g(固形分質量)/m
2になるように刷毛で塗布した。次に、熱風乾燥機へ導入し、90℃で5分間乾燥して接着剤層を形成させた。乾燥後、直ちにアセトンで脱脂した100mm×50mm×3mmのEPDMシートを接着剤層と貼り合わせ、プレス機を用いて2MPaの圧力で20秒間圧着することで、積層体を得た。(積層体のサイズ:100mm×50mm×6mm)
【0095】
(5)ゴム層/ポリエチレン樹脂からなる基材
PP成形品に代えて、上記(2)で用いたPE成形品を用いた以外は上記(4)と同様に行った(積層体のサイズ:100mm×50mm×6mm)。
【0096】
(6)ゴム層/ステンレス板からなる基材
PP成形品に代えて、上記(3)で用いたステンレス板を用いた以外は上記(4)と同様に行った(積層体のサイズ:100mm×25mm×5mm)。
【0097】
比較例2
水性分散体としてラテックスAのみを用いた以外は、実施例1と同様にして、積層体を製造した。
【0098】
比較例3
水性分散体としてU−1のみを用いた以外は、実施例1と同様にして、積層体を製造した。
【0099】
実施例1〜6、比較例1〜3で得られた積層体を用いて各種評価をした。評価結果を表2に示す。
【0100】
【表2】
【0101】
表2から明らかなように、実施例1〜6で得られた積層体は、基材とゴム層との接着性に優れるものであった。
また、実施例1と、実施例4および5との比較から理解できるように、接着剤層に含有される酸変性オレフィン樹脂がアクリル酸エステル成分を含むものであると、より接着性に優れる積層体が得られた。
【0102】
さらに実施例2、3のように、接着剤層にゴム成分、または他の樹脂を含有させた場合は、実施例1と比較すると、より接着性に優れる積層体が得られた。
さらに実施例1と実施例6との比較から理解できるように、接着剤層に含有される酸変性ポリオレフィン樹脂中の不飽和カルボン酸成分の含有量が好ましい範囲であると、より接着性に優れる積層体が得られた。
【0103】
これに対して、比較例1では、溶融したゴムを積層せずに、シート状のゴムを積層してゴム層を形成したことから、接着性に劣る積層体しか得られなかった。
また、比較例2、3では、接着剤層が酸変性ポリオレフィン樹脂を含有していないことから、接着性に劣る積層体しか得られなかった。