【解決手段】駐車支援装置100は、車両1が駐車可能な領域である駐車領域Qを周辺情報に基づいて検出し、駐車枠Dを駐車領域Qに設定する。駐車支援装置100は、駐車枠Dよりも手前の位置からみて当該駐車枠よりも遠方の設定位置Tを車両1が超えているか否かを判定する。駐車支援装置100は、車両1が設定位置Tを超えていない場合、設定位置Tまで車両1を移動させる前進経路150を設定する。駐車支援装置100は、前進経路150に基づいて車両1を前記設定位置Tまで移動させる。駐車支援装置100は、設定位置Tへ車両1が移動した場合に、周辺情報に基づいて、設定位置Tから駐車枠Dへ車両1を移動させる駐車経路を計算する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る駐車支援装置100が搭載された車両1の構成を示す図である。
車両1は、周辺検出センサ部10と、車両センサ部20と、車両制御装置30と、駐車支援装置100と、を備え、これらがCAN(Controller Area Network)バスなどの車載ネットワーク5を通じてデータ通信可能に接続されている。
【0010】
周辺検出センサ部10は、車両1の周辺の情報を検出するための各種のセンサを備え、検出結果(出力)を駐車支援装置100に出力する。以下、周辺の情報を「周辺情報」と言う。
周辺情報は、車両1の周辺に存在する物体の情報を含み、当該物体は、例えば障害物や、車両1の駐車区画を区画する区画線などである。障害物は、車両1の走行の妨げになる各種の物体である。障害物の典型的な例として、柱や壁、消火栓などの建造物、駐車中や走行中の他車両、及び通行人が挙げられる。
【0011】
本実施形態の周辺検出センサ部10は、ソナー10A、及びカメラ10Bを備えている。
ソナー10Aは、周辺の障害物を音波によって検出し、当該障害物と車両1との間の距離を測定する測距センサである。
本実施形態において、ソナー10Aは、
図2に示すように、車両1の左側、及び右側のそれぞれに配置されており、サイドソナーとも称されている。かかるソナー10Aは、検出範囲Rがビーム状に形成されることで車両1の側方への指向性が高められている。これにより、車両1の走行(
図2の例では前進)に伴って、当該車両1のソナー10Aの検出範囲Rが通過した領域Wについて障害物が高精度に検出される。
【0012】
カメラ10Bは、駐車領域Qを撮影する撮影手段である。
本実施形態の車両1は、
図2に示すように、前方、左側方、右側方、及び後方のそれぞれにカメラ10Bが設けられている。これらのカメラ10Bによって車両1を中心とした全方位が撮影される。
なお、カメラ10Bは全方位を1台のカメラで撮影するものであってもよい。またカメラ10Bによる撮影範囲、及びカメラ10Bの台数は適宜に変更可能である。
【0013】
車両センサ部20は、車両1に搭載され、当該車両1の走行状態の検出と、自律航法(デッドレコニング)に要する各種の情報と、の検出のための各種のセンサを備えている。かかるセンサは、例えば、ジャイロセンサや加速度センサ、車速センサ、車両1の操舵角を検出する舵角センサなどである。
【0014】
車両制御装置30は、車両1の操舵装置、駆動装置、及び制動制御装置を制御することで、駐車支援装置100によって算出された後述する駐車経路に基づいて車両1を自律的に移動(自動走行)させる装置である。車両制御装置30は、かかる制御を実行するコンピュータ(例えばECU(Electronic Conrtol Unit))を備えている。
なお、操舵装置は、車両1の操舵輪を操舵させるアクチュエータを含む装置である。
また駆動装置は、車両1の駆動輪の駆動力を調整するアクチュエータを含む装置である。車両1の動力源がエンジンである場合、駆動装置のアクチュエータは、スロットルアクチュエータである。動力源がモータである場合、駆動装置のアクチュエータは、動力源のモータである。
制動制御装置は、車両1に設けられたブレーキシステムを制御することで、車両1の車輪へ付与する制動力を制御するアクチュエータを備えている。
【0015】
駐車支援装置100は、車両1を駐車領域Qへ自動走行させて車両1の駐車を支援する装置である。
駐車支援装置100は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Microprocessor Unit)などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリデバイス(主記憶装置とも呼ばれる)と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのストレージ装置(補助記憶装置とも呼ばれる)と、センサ類や周辺機器などを接続するためのインターフェース回路と、車載ネットワーク5を介して他の車載装置と通信する車載ネットワーク通信回路と、を備えたコンピュータを備えている。かかるコンピュータとして、ECU(Electronic Conrtol Unit))が用いられている。
駐車支援装置100において、プロセッサがメモリデバイス又はストレージ装置に記憶されているコンピュータプログラムを実行することで、
図1に示す各種の機能的構成が実現されている。
【0016】
すなわち、駐車支援装置100は、機能的構成として、位置検出部110と、周辺情報取得部111と、障害物検出部112、マップ生成部113と、駐車領域検出部114と、駐車枠設定部115と、駐車経路計算部116と、相対位置判定部117と、前進経路設定部118と、自動走行制御部119と、を備えている。
【0017】
位置検出部110は、車両センサ部20の検出結果(出力)に基づいて、車両1の現在位置(自己位置)を、公知、又は周知のデッドレコニング手法を用いて検出する。
【0018】
周辺情報取得部111は、周辺検出センサ部10の検出結果(出力)に基づいて周辺情報を取得する。
障害物検出部112は、周辺情報に基づいて、車両1の周辺の障害物を検出する。
より具体的には、障害物検出部112は、ソナー10Aの検出結果に基づいて周辺の障害物を検出し、車両1を基準にした障害物の位置を検出する。
マップ生成部113は、障害物検出部112の検出結果に基づいてマップデータを生成する。マップデータは、適宜のタイミングにおける車両1の現在位置を原点としたローカル空間座標系に各障害物の位置を記録したデータである。
【0019】
駐車領域検出部114は、周辺情報に基づいて、車両1を駐車させる駐車領域Qを検出する。周辺情報に基づく駐車領域Qの検出手法には、公知または周知の技術を用いることができる。
例えば、駐車領域検出部114は、マップデータによって示される障害物の分布に基づいて、車両1が駐車可能な大きさの矩形の領域を認識し、当該領域を駐車領域Qとして検出する。
また例えば、駐車領域検出部114は、カメラ10Bの撮影画像に対する画像認識により駐車区画の区画線を認識することで駐車領域Qを検出する。この場合、駐車領域検出部114は、撮影画像の2次元座標系からマップデータのローカル空間座標系への投影変換により、撮影画像における駐車領域Qの位置を、マップデータのローカル空間座標系の位置に変換する。この投影変換は、公知、又は周知の適宜の技術を用いて行うことができる。ローカル座標系への投影変換によって駐車領域Qの位置が特定される。
【0020】
駐車枠設定部115は、駐車領域検出部114によって検出された駐車領域Qに基づいて、駐車時に車両1を収める範囲を規定する矩形状の駐車枠Dを駐車領域Qの中に設定する。なお、駐車領域Qが区画線で区画された駐車区画である場合、駐車枠設定部115は、当該区画線を駐車枠Dに設定する。
【0021】
駐車経路計算部116は、マップデータに基づいて駐車経路を計算し算出する。
本実施形態の駐車経路は、車両1が周囲の障害物に衝突することなく駐車領域Qの駐車枠Dへ後ろ向き駐車するように、車両1の現在位置から駐車領域Qへ車両1を移動させる経路である。
後ろ向き駐車は、車両1を駐車領域Qへ後進によって入庫させることを言う。
【0022】
相対位置判定部117は、自動駐車開始時における車両1の現在位置と駐車枠Dとの相対位置関係を判定する。
より具体的には、相対位置判定部117は、車両1(より正確にはソナー10Aの検出範囲R)が所定の設定位置Tを超えているか否かを判定する。
また設定位置Tは、車両1の進行経路上において、
図3に示すように、駐車枠Dよりも手前の位置からみて当該駐車枠Dよりも遠方に設定された位置である。また対象物に対する手前の位置は、対象物に向かって進行している車両1の位置、すなわち対象物に到達する前の車両1の位置である。
したがって、設定位置Tは、ソナー10Aの検出範囲Rが駐車枠Dを通過した後、ある程度進んだ後に到達する位置とも言える。車両1が設定位置Tよりも手前に位置する場合、駐車枠Dよりも手前の位置からみて当該駐車枠Dよりも遠方側の領域については、ソナー10Aによる障害物検出が行われていないことを示す。なお、かかる遠方側の領域であって駐車枠Dに隣接した領域を、以下、「遠方隣接領域K」という。
【0023】
本実施形態において、設定位置Tは、
図3に示すように、切り返しを含まずに設定位置Tから駐車枠Dへ後進によって入庫可能な位置に設定されている。かかる設定位置Tは、駐車枠Dの中心Oから車両1の前進方向に車両1の最小回転半径L以上離間した位置Pに基づいて設定される。
なお、切り返しは、駐車枠Dへの車両1の進入角度を変更するために、前進と後進とを繰り返す運転のことであり、スイッチバックと呼ばれることもある。
【0024】
遠方隣接領域Kは、車両1が設定位置Tから駐車領域Qへ後ろ向き駐車のために移動するときに通過し得る領域でもあり、
図3に示すように、上記位置Pを終端KEとした略矩形状の領域として設定されている。
【0025】
前進経路設定部118は、自動駐車開始時に、設定位置Tに対し車両1が手前に位置する場合、当該車両1を設定位置Tまで前進させる前進経路150を設定する。
【0026】
自動走行制御部119は、車両1を自動走行により前進させるための制御情報を生成し、当該制御情報を車両制御装置30へ出力する。自動走行制御部119は、かかる制御情報を、駐車経路計算部116によって計算された駐車経路、及び、前進経路設定部118によって設定された前進経路150のそれぞれについて生成する。
【0027】
次いで、本実施形態の動作を説明する。
駐車場内を乗員が車両1を運転して移動している間、駐車支援装置100において、障害物検出部112が周辺情報に基づいて周辺の障害物(例えば他車両3(
図4))を継続的に検出し、また障害物検出部112によって検出された障害物の位置をマップ生成部113がマップデータを逐次に記録する。また駐車領域検出部114がマップデータによって示される障害物の分布、或いは、撮影画像の画像認識結果に基づいて、車両1の側方に存在する駐車領域Qの検出を継続的に行う。
【0028】
図4に示すように、乗員が車両1の前方に駐車領域Qを見つけると、乗員は車両1を停車し、図示せぬHMI(Human Machine Interface)を操作することで、自動駐車を駐車支援装置100に指示する。
駐車支援装置100は、自動駐車の指示が入力されると、駐車領域Qへ車両1を自動走行により入庫させるための自動駐車処理を開始する。なお、当該駐車領域Qは、駐車領域検出部114によって検出されているものとする。
【0029】
図5は、自動駐車処理のフローチャートである。
先ず、駐車枠設定部115が、駐車領域Qに対して駐車枠Dを設定する(ステップSa1)。
次いで、相対位置判定部117は、車両1が設定位置Tを超えているか否かを判定する(ステップSa2)。
車両1が設定位置Tを超えている場合(ステップSa2:Yes)、ソナー10Aの検出範囲Rが遠方隣接領域Kを既に通過していることを示す。したがって、この場合、この遠方隣接領域Kに対して障害物検出が既に行われ、検出結果がマップデータに既に記録されている。
この場合、駐車経路計算部116は、かかるマップデータに基づいて、現在位置から駐車領域Qへ車両1を移動させる駐車経路を計算して算出する(ステップSa3)。
そして、自動走行制御部119は、駐車領域Qへ車両1を駐車経路に沿って自動走行させるために、当該駐車経路に基づいて制御情報を生成し、当該制御情報を車両制御装置30へ出力する(ステップSa4)。車両制御装置30によって制御によって車両1が現在位置(停車位置)から自動走行を開始し、駐車領域Qへ入庫する。
【0030】
一方、設定位置Tに対し車両1が手前に位置することで設定位置Tを超えていない場合(ステップSa2:No)、先ず、駐車経路計算部116は、遠方隣接領域Kに対して障害物検出が未だ実行されていないか否かを判定する(ステップSa5)。例えば、車両1が駐車場内を周回移動していた場合などには、遠方隣接領域Kに対して障害物検出が既に行われており、検出結果がマップデータに既に記録されていることがある。
駐車経路計算部116は、遠方隣接領域Kに対する障害物検出が実行済みの場合(ステップSa5:No)、上述のステップSa3に手順を進め、当該マップデータに基づいて駐車経路を計算し、そして、自動走行制御部119が、駐車領域Qへの自動走行のために、駐車経路に基づいて制御情報を生成する(ステップSa4)。
【0031】
遠方隣接領域Kに対する障害物検出が未実行の場合(ステップSa5:Yes)、駐車支援装置100は、当該遠方隣接領域Kにおける障害物の有無を検出するために次の処理を実行する。
先ず、前進経路設定部118が車両1を設定位置Tまで前進させる前進経路150を設定する(ステップSa6)。
次いで、自動走行制御部119が、前進経路150に基づいて制御情報を生成し、当該制御情報を車両制御装置30へ出力する(ステップSa7)。これにより、車両1が設定位置Tまで現在位置(停車位置)から自動走行を開始する。
この自動走行の間、障害物検出部112が周辺情報に基づいて障害物を継続的に検出し、また障害物検出部112によって検出された障害物の位置をマップ生成部113がマップデータを逐次に記録する。これにより、遠方隣接領域Kについて障害物の分布がマップデータに記録される(ステップSa8)。
そして、駐車支援装置100は、処理手順をステップSa3に進め、当該ステップSa3において駐車経路計算部116がマップデータに基づいて駐車経路を計算し、自動走行制御部119が、この駐車経路に基づいて制御情報を生成する(ステップSa4)。
【0032】
これにより、
図6に示すように、遠方隣接領域Kの中に障害物(
図6の例では他車両3)が存在する場合、ステップSa3において、駐車経路計算部116は、遠方隣接領域Kを通らずに駐車枠Dに車両1を移動させる必要があることから、
図6に示すように、1又は複数回の切り返しを含む駐車経路を算出する。
一方、遠方隣接領域Kの中に障害物が存在しない場合、当該遠方隣接領域Kを駐車経路が横断しても問題ないため、ステップSa3において、駐車経路計算部116は、切り返しを含まずに設定位置Tから駐車枠Dへ後進によって車両1を入庫させる駐車経路を算出することとなる。
【0033】
本実施形態によれば、次の効果を奏する。
【0034】
本実施形態の駐車支援装置100によれば、駐車枠Dよりも手前の位置からみて当該駐車枠Dよりも遠方に設定された設定位置Tを車両1が超えていない場合、当該設定位置Tへ車両1を移動させる。そして、駐車支援装置100は、この移動の間に得られた周辺情報を反映したマップデータに基づいて、設定位置Tから駐車枠Dへ車両1を移動させる駐車経路を計算する。
これにより、駐車枠Dの手前からみて当該駐車枠Dの遠方側の領域である遠方隣接領域Kにおける障害物の有無に応じて適切な駐車経路を求めることができる。
【0035】
本実施形態の駐車支援装置100において、設定位置Tは、前進、及び後進の繰り返し運転である切り返しを含まずに駐車枠Dへ車両1を移動可能にする位置に設定されている。
したがって、遠方隣接領域Kに障害物が存在しない場合、当該遠方隣接領域Kを通過しつつも切り返しを含まない駐車経路を採用することができる。
【0036】
本実施形態の駐車支援装置100において、設定位置Tは、駐車枠Dの中心Oから車両1の前進方向に当該車両1の最小回転半径L以上離間した位置に基づいて設定されている。
これにより、遠方隣接領域Kに障害物が存在しない場合、車両1を設定位置Tから最小回転半径Lで後進旋回させるだけの簡単な駐車経路を採用することができる。
【0037】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様の例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形、及び応用が可能である。
【0038】
例えば、
図1に示す機能ブロックは、本願発明を理解容易にするために、車両1や駐車支援装置100の構成要素を主な処理内容に応じて分類して示した概略図であり、これらの構成要素は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0039】
また、駐車支援装置100の各構成要素の処理は、1つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアにより実行されてもよい。また、各構成要素の処理は、1つのプログラムで実現されてもよいし、複数のプログラムで実現されてもよい。