【解決手段】駐車支援装置100は、駐車経路算出部115により、車両情報122と、周辺認識部111の認識結果とを用いて、車両1を駐車領域に駐車させる駐車経路として、その駐車経路に含まれる円弧の曲率半径を異ならせた複数パターンの駐車経路を算出する。また、駐車支援装置100は、駐車経路選択部116により、複数パターンの駐車経路のうち、車両1の前進から後進、又は後進から前進への進行方向を変える運転操作の回数が最も少なく、かつ円弧の曲率半径が最も大きい駐車経路を選択する。
前記駐車経路算出部は、前記複数パターンの駐車経路として、前記駐車経路に含まれる円弧の曲率半径を、前記車両の最小回転半径に基づいて設定した上限値と下限値との間で異ならせた駐車経路を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の駐車支援装置。
前記駐車経路算出部は、前記複数パターンの駐車経路として、前記駐車経路に含まれる円弧の曲率半径を、前記車両の最小回転半径から徐々に大きくした駐車経路であって、前記運転操作の回数が所定の回数よりも増えるまでの駐車経路を算出し、
前記駐車経路選択部は、算出された前記複数パターンの駐車経路の中から、前記円弧の曲率半径が最も大きい駐車経路を選択する
ことを特徴とする請求項2に記載の駐車支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る駐車支援装置100が搭載された車両1の構成を示す図である。
車両1は、周辺検出センサ部10と、車両センサ部20と、車両制御装置30と、駐車支援装置100と、を備え、これらがCAN(Controller Area Network)バスなどの車載ネットワーク5を通じてデータ通信可能に接続されている。
【0010】
周辺検出センサ部10は、車両1の周辺の情報を検出するための各種のセンサを備え、検出結果(出力)を駐車支援装置100に出力する。以下、周辺の情報を「周辺情報」と言う。
周辺情報は、車両1の周辺に存在する物体の情報を含み、当該物体は、例えば障害物や、車両1の駐車区画を区画する区画線などである。障害物は、車両1の走行の妨げになる各種の物体である。障害物の典型的な例として、柱や壁、消火栓などの建造物、駐車中や走行中の他車両、及び通行人が挙げられる。
【0011】
本実施形態の周辺検出センサ部10は、ソナー10A、及びカメラ10Bを備えている。
ソナー10Aは、周辺の障害物を音波によって検出し、当該障害物と車両1との間の距離を測定する測距センサである。ソナー10Aは、車両1の左右などに設けられ、車両1が駐車しようとする駐車領域Qの周囲の物体などを検出可能である。なお、ソナー10Aに代えてレーダーやライダー(Lidar)などの他の測距センサを用いてもよい。
カメラ10Bは、車両1の周辺の画像を撮影する撮影部として機能する。カメラ10Bは、車両1の前後左右を撮影可能に設けられ、車両1の周辺に存在する駐車領域Qを撮影可能である。なお、カメラ10Bは、車両1の前後左右などにそれぞれ配置されるカメラでもよいし、前後左右などを一台で撮影可能なカメラでもよい。
【0012】
車両センサ部20は、車両1の各部の情報を取得するセンサを有し、当該車両1の走行状態の検出と、自律航法(デッドレコニング)に要する各種の情報とを検出可能である。例えば、車両センサ部20は、ジャイロセンサや加速度センサ、車速センサ、車両1の操舵角を検出する舵角センサなどを有している。
【0013】
車両制御装置30は、車両1の操舵装置、駆動装置、及び制動制御装置を制御することで、駐車支援装置100によって算出された後述する駐車経路に基づいて車両1を自律的に移動(自動走行)させる装置である。車両制御装置30は、かかる制御を実行するコンピュータ(例えばECU(Electronic Conrtol Unit))を備えている。なお、操舵装置は、車両1の操舵輪を操舵させるアクチュエータを含む装置である。
また駆動装置は、車両1の駆動輪の駆動力を調整するアクチュエータを含む装置である。車両1の動力源がエンジンである場合、駆動装置のアクチュエータは、スロットルアクチュエータである。動力源がモータである場合、駆動装置のアクチュエータは、動力源のモータである。
制動制御装置は、車両1に設けられたブレーキシステムを制御するアクチュエータを有し、アクチュエータによって車両1の制動力を制御する。
【0014】
駐車支援装置100は、車両1を駐車領域Qへ自動走行させて車両1の駐車を支援する装置である。
駐車支援装置100は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Microprocessor Unit)などの図示しないプロセッサ(本発明のコンピュータに相当する)と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのストレージ装置(
図1中の記憶部120に相当)と、センサ類や周辺機器などを接続するためのインターフェース回路と、車載ネットワーク5を介して他の車載装置と通信する車載ネットワーク通信回路と、を備えている。駐車支援装置100は、プロセッサが記憶部120に記憶された制御プログラム121を実行することによって、
図1に示す各種の機能的構成が実現される。
【0015】
すなわち、駐車支援装置100は、機能的構成として、位置検出部110と、周辺認識部111と、駐車領域検出部113と、駐車枠設定部114と、駐車経路算出部115と、駐車経路選択部116と、自動走行制御部117と、記憶部120とを備えている。
【0016】
位置検出部110は、車両センサ部20の検出結果(出力)に基づいて、車両1の現在位置(自己位置)を、公知、又は周知のデッドレコニング手法を用いて検出する。
【0017】
周辺認識部111は、周辺情報取得部111Aと、障害物検出部111Bと、マップ生成部111Cと、を備えている。周辺情報取得部111Aは、周辺検出センサ部10の検出結果に基づいて車両1の周辺の検出対象物の情報を取得する。例えば、カメラ10Bの画像を画像認識することによって車両1の駐車区画を区画する区画線などを検出し、車両1を基準にした区画線などの位置を検出する。障害物検出部111Bは、周辺検出センサ部10の検出結果に基づいて車両1の周辺の障害物を検出する。例えばソナー10Aの検出結果に基づいて周辺の障害物を検出し、車両1を基準にした障害物の位置を検出する。
【0018】
マップ生成部111Cは、周辺情報取得部111Aと障害物検出部111Bとの検出結果に基づいてマップデータを生成する。マップデータは、適宜のタイミングにおける車両1の現在位置を原点としたローカル空間座標系に障害物などの位置を記録したデータである。周辺認識部111は、周辺情報取得部111A、障害物検出部111B、及びマップ生成部111Cによって、周辺検出センサ部10の検出結果(出力)に基づいて、車両1の走行(駐車を含む)に関わる周辺情報を認識することができる。なお、車両1の走行に関わる周辺情報を認識する技術には、公知の技術を広く適用可能である。
【0019】
駐車領域検出部113は、周辺認識部111によって認識された周辺情報に基づいて、車両1を駐車させる駐車領域Qを検出する。ここで、
図2には、他車両2、3の間の駐車枠を駐車領域Qと認識した場合を例示している。周辺情報に基づく駐車領域Qの検出手法には、公知または周知の技術を用いることができる。例えば、駐車領域検出部113は、マップデータによって示される障害物の分布に基づいて、車両1が駐車可能な大きさの矩形の領域を認識し、当該領域を駐車領域Qとして検出する。また例えば、駐車領域検出部113は、カメラ10Bの撮影画像に対する画像認識により駐車区画の区画線を認識することで駐車領域Qを検出する。
【0020】
駐車領域Qを検出した場合、駐車領域検出部113は、撮影画像の2次元座標系からマップデータのローカル空間座標系への投影変換により、撮影画像における駐車領域Qの位置を、マップデータのローカル空間座標系の位置に変換する。この投影変換は、公知、又は周知の適宜の技術を用いて行うことができる。ローカル座標系への投影変換によって駐車領域Qの位置が特定される。
【0021】
駐車枠設定部114は、駐車領域検出部113によって検出された駐車領域Qに基づいて、駐車時に車両1を収める範囲を規定する矩形状の駐車枠を駐車領域Qの中に設定する。なお、駐車領域Qが区画線で区画された駐車区画である場合、駐車枠設定部114は、当該区画線を駐車枠に設定する。
【0022】
駐車経路算出部115は、車両1の現在位置から駐車領域Qへの駐車経路を算出する駐車経路算出機能を実現する部分である。本実施形態の駐車経路算出部115は、マップデータに基づいて、車両1が現在位置から駐車領域Qへ後ろ向きで駐車する駐車経路を算出する。この駐車経路の算出に際し、駐車経路算出部115は、駐車経路に含まれる円弧の曲率半径(旋回半径と言うこともできる)Rを異ならせることによって複数パターンの駐車経路を算出可能である。換言すると、駐車経路算出部115は、指定された曲率半径Rの円弧を含む駐車経路を算出する駐車経路算出機能を有している。
【0023】
なお、曲率半径Rの値によっては例えば一回の切り返し回数では、その曲率半径Rの円弧を含む駐車経路を算出できない可能性がある。このため、駐車経路算出部115は、切り返し回数を適宜に変更することによって、指定された曲率半径Rの円弧を含む駐車経路を可及的に算出できるように構成されている。
【0024】
このようにして、駐車経路算出部115は、駐車経路中の円弧の曲率半径Rが異なると共に、駐車経路中の切り返し回数が適宜に異なる複数パターンの駐車経路を算出可能である。
なお、切り返しは、駐車領域Qへの車両1の進入角度を変更するために、車両1の前進から後進、又は、後進から前進へ進行方向を変える運転操作のことであり、スイッチバックと称されることもある。
【0025】
駐車経路選択部116は、駐車経路算出部115によって算出された駐車経路のうち切り返しの回数が最も少ない駐車経路を抽出し、抽出した駐車経路の中から、駐車経路中の円弧の曲率半径Rが最も大きい駐車経路を選択する。切り返しの回数が最も少なく、かつ、曲率半径Rが最も大きい駐車経路を選択することによって、駐車時に乗員を前後又は左右に揺らすような外力の発生を抑制した経路や、その外力の程度そのものを抑制した経路を選択でき、乗員の乗り心地や快適性の向上に有利となる。
【0026】
自動走行制御部117は、車両1を自動走行により前進させるための制御情報を生成し、当該制御情報を車両制御装置30へ出力する。自動走行制御部117は、かかる制御情報を、駐車経路算出部115によって算出された駐車経路について生成する。
【0027】
記憶部120は、制御プログラム121、及び、この駐車支援装置100が搭載される車両1の最小回転半径に関する情報を含む車両情報122などを記憶している。最小回転半径は、車両1の小回り性を特定可能な情報であり、車両情報122には、最小回転半径の値そのものが記憶され、或いは、最小回転半径を算出可能な情報(車両1のホイールベース、左右の操舵輪の距離、最大操舵時の外側操舵輪と内側操舵輪の舵角など)が記憶されていてもよい。
【0028】
次いで、本実施形態の動作を説明する。
駐車場内を乗員が車両1を運転して移動している間、駐車支援装置100において、周辺認識部111が周辺情報に基づいて周辺の障害物(例えば
図2に示す他車両2、3)を継続的に認識し、認識された障害物の位置をマップデータに逐次に記録する。また駐車領域検出部113がマップデータによって示される障害物の分布、或いは、撮影画像の画像認識結果に基づいて、車両1の側方に存在する駐車領域Qの検出を継続的に行う。
【0029】
図2に示すように、乗員が車両1の前方に駐車領域Qを見つけると、乗員は車両1を停車し、図示せぬHMI(Human Machine Interface)を操作することで、自動駐車を駐車支援装置100に指示する。
駐車支援装置100は、自動駐車の指示が入力されると、駐車領域Qへ車両1を自動走行により入庫させるための駐車支援処理を開始する。
【0030】
図3は、駐車支援処理のフローチャートである。
先ず、駐車支援装置100は、駐車領域検出部113により駐車領域Qを検出する(ステップS1:駐車領域検出ステップ)。次に、駐車支援装置100は、駐車経路算出部115により、車両情報122に基づいて車両1の最小回転半径を特定し、最小回転半径に基づいて駐車経路中の円弧の曲率半径Rについて、上限値Raと下限値Rbとを設定する(ステップS2:範囲設定ステップ)。
【0031】
本実施形態では、曲率半径Rの上限値Raとして、最小回転半径に予め定めた係数Kを乗算した値を設定する。上記係数Kには、乗員の乗り心地や快適性を向上するのに好適な範囲を含みながら過度に大きい曲率半径を含まない値が採用され、例えば、値5、若しくは値5を基準にした前後の値が採用される。この係数Kには、駐車支援装置100又は車両1のメーカー、若しくは、車両1のユーザなどが適宜な値を設定可能である。これにより、車両1の小回り性に合わせて駐車経路中の円弧の曲率半径Rの上限値Raを設定できる。
【0032】
なお、上限値Raを、車両1の最大操舵量(最大転舵量とも言う)の50%に設定してもよい。この場合、最小回転半径が5mであれば倍の10mを上限値Raに設定すればよい。上限値Raには、車両1の小回り性に応じた上限値Raを設定可能な範囲で適宜な値を採用可能である。
【0033】
また、本実施形態では、駐車経路中の円弧の曲率半径Rの下限値Rbとして、車両1の最小回転半径を設定する。これにより、車両1の最小回転半径では曲がりきれない駐車経路を算出する事態を回避でき、車両1に合わせた曲率半径Rの下限値Rbを設定できる。なお、下限値Rbを、車両1の最小回転半径よりも大きい値に設定してもよい。下限値Rbの算出には、車両1の小回り性に応じた下限値Rbを設定可能な範囲で、少なくとも最小回転半径を要素にした他の算出式を採用してもよい。
【0034】
次いで、駐車支援装置100は、駐車経路算出部115により、駐車経路中の円弧の曲率半径Rを上限値Raに設定し(ステップS3)、その曲率半径Rを満足するように、現在位置から駐車領域Qへ車両1を移動させる駐車経路を算出する(ステップS4)。この駐車経路の算出処理には、公知の算出処理を適宜に適用可能である。
続いて、駐車経路算出部115は、設定された曲率半径Rが下限値Rb未満か否かを判定し(ステップS5)、下限値Rb未満ではない場合(ステップS5;NO)、曲率半径Rを、現在の曲率半径Rから所定の値Nを減算した値に変更し(ステップS6)、ステップS4の処理に移行する。所定の値Nは、例えば10cmに設定される。なお、値Nは様々な値に変更可能である。
【0035】
これにより、
図4に例示するように、曲率半径Rが異なる複数パターンの駐車経路が算出される。なお、
図4中、符号D1は、現在位置から車両1の前進及び後進を切り替える位置(
図4中、破線で示す「切り返し位置」に相当)までの駐車経路を示し、符号D2は、切り返し位置から駐車領域Qまでの駐車経路を示している。そして、各駐車経路D1、D2に含まれる円弧の曲率半径Rが、設定された曲率半径に設定されている。
【0036】
また、符号C1は、駐車経路D1中の円弧に沿う円を示し、符号P1は円C1の中心を示している。また、符号C2は、駐車経路D2中の円弧に沿う円を示し、符号P2は円C2の中心を示している。
図4は、現在位置から一回の切り返しで駐車領域Qへ駐車する場合の駐車経路を簡易的に示したものである。上述したように、設定された曲率半径Rの円弧を含む駐車経路を算出できない場合、切り返し回数が変更されて、設定された曲率半径Rの円弧を含む駐車経路が算出されるので、切り返し回数が二回以上の駐車経路も適宜に算出される。
なお、切り返し回数が過度に多い駐車経路は好ましくないので、切り返し回数の上限値を設定し、各駐車経路の算出処理において、切り返し回数が上限値以下の範囲で駐車経路を算出できない場合にはその算出処理をスキップするようにしてもよい。
【0037】
上記の曲率半径Rを異ならせた複数パターンの駐車経路を算出するステップ(S3→S4→S5→S6→S4・・・)は、本発明の駐車経路算出ステップに相当する。本実施形態では、設定された曲率半径Rが車両1の最小回転半径未満になるまで駐車経路が算出されるので、車両1の最小回転半径と一致する曲率半径Rの円弧を含む駐車経路も算出される。
【0038】
曲率半径Rが下限値Rb未満になるまで駐車経路が算出されると(ステップS5;YES)、つまり、曲率半径Rが、上限値Ra(車両1の最小回転半径の値K倍)から下限値Rb(車両1の最小回転半径)の範囲の駐車経路が算出されると、駐車支援装置100は、ステップS7の処理に移行する。
ステップS7の処理では、駐車支援装置100は、駐車経路選択部116によって、算出された複数パターンの駐車経路のうち、切り返しの回数が最も少ない駐車経路の中から、円弧の曲率半径Rが最も大きい駐車経路を選択する。
そして、駐車支援装置100は、自動走行制御部117により、選択した駐車経路に基づいて制御情報を生成し、当該制御情報を車両制御装置30へ出力する(ステップS8)。これにより、車両制御装置30の制御によって車両1が現在位置から自動走行を開始し、駐車領域Qへ入庫する。上記のステップS7は、本発明の駐車経路選択ステップに相当し、ステップS8は、本発明の自動走行ステップに相当する。
【0039】
次に、比較例と本発明の実施例について説明する。
図5に示すように、比較例は、駐車領域Qへの駐車経路の基準となるベース経路を相似拡大することによって、現在位置と駐車領域Qとをつなぐ駐車経路を生成する方法を採用している。
ベース経路は、予め定めた条件(例えば、所定の車速、及び舵角)で計算した最短のクロソイド曲線、又は円弧を用いて生成された経路である。
図5には、ベース経路を所定の曲線DCと、曲線DCの前後に付加したクロソイド曲線CL1、CL2とで生成した場合を示している。
【0040】
比較例の駐車経路は、ベース経路の各部分DC、CL1及びCL2を、
図5中のX方向とY方向とに独立して拡大(相似拡大に相当)することによって生成される。ここで、曲線DCaは、曲線DCを相似拡大した部分であり、クロソイド曲線CL1a、CL2aは、クロソイド曲線CL1、CL2を相似拡大した部分である。相似拡大するので、比較例の駐車経路の各部分の曲率半径が、ベース経路の各部分の曲率半径及び相似拡大率に依存し、また、全体的に駐車経路が伸びやすい傾向となる。
【0041】
図6には、本発明の実施例の駐車経路を模式的に示している。
この
図6では、実施例の駐車経路を、円弧DCbと、円弧DCbの前後に付加したクロソイド曲線CL1b、CL2bとで生成した場合を示している。また、
図6には、比較例の駐車経路の曲線DCaも同時に示している。
本発明の実施例では、駐車経路中の円弧DCbを、曲率半径Rが異なる複数パターンの駐車経路の中から、曲率半径Rが最も大きい円弧にしている。これにより、
図6に示すように、比較例よりも曲率半径が大きい経路を得ることができる。従って、比較例と比べて、乗員の乗り心地や快適性の向上により有利で、かつ、駐車時間の短縮化に有利な駐車経路を得やすくなる。
また、円弧DCbの前後に付加したクロソイド曲線CL1b、CL2bについても、ベース経路のクロソイド曲線CL1、CL2とほぼ同じ短距離の曲線を採用でき、これによっても、駐車時間の短縮化に有利な駐車経路を得やすくなる。
【0042】
本実施形態によれば、次の効果を奏する。
【0043】
本実施形態の駐車支援装置100は、駐車経路算出部115により、車両情報122から特定される車両1の最小回転半径と、周辺認識部111の認識結果とを用いて、車両1を駐車領域Qを駐車させる駐車経路として、その駐車経路に含まれる円弧の曲率半径Rを異ならせた複数パターンの駐車経路を算出する。次に、駐車支援装置100は、駐車経路選択部116により、複数パターンの駐車経路のうち、切り返しの回数が最も少ない駐車経路の中から、曲率半径Rが最も大きい駐車経路を選択する。
これにより、複数パターンの駐車経路のうち、切り返し(つまり、車両1の前進から後進、又は後進から前進への進行方向を変える運転操作)の回数が最も少なく、かつ円弧の曲率半径が最も大きい駐車経路が選択され、乗員の乗り心地や快適性の向上に有利で、かつ、駐車時間の短縮化に有利な駐車経路を特定し易くなる。
【0044】
なお、車両情報122のうちの車両1の最小回転半径を利用する場合を説明したが、これに限定されず、車両1の駐車経路に関わる他の情報を利用してもよい。例えば、車両情報122として、車両1の小回り性をある程度推定可能なホイールベースの情報、車種の情報、又は予め設定した小回り性の評価値などを利用してもよい。
【0045】
また、駐車支援装置100は、駐車経路算出部115により、車両1の最小回転半径に基づいて、複数パターンの駐車経路に含まれる円弧の曲率半径Rの範囲を限定している。
これにより、駐車経路の算出に必要な演算量や演算時間を低減しながら、最小回転半径を考慮した適切な円弧を含む駐車経路を算出できる。
【0046】
しかも、駐車支援装置100は、駐車経路算出部115により、複数パターンの駐車経路として、駐車経路に含まれる円弧の曲率半径Rを、車両1の最小回転半径に基づいて設定した上限値Raと下限値Rbとの間で異ならせた駐車経路を算出する。
これにより、車両1の最小回転半径を踏まえて過度に曲率半径Rが大きい駐車経路を設定する事態を回避したり、車両1が走行できない急カーブを有する駐車毛色を設定する事態を回避したり易くなる。なお、車両1の最小回転半径に基づいて上限値Raと下限値Rbの両方を設定する場合を説明したが、いずれか一方の値の閾値だけを設定し、他方の値は予め設定した固定値とすることも可能である。
【0047】
ここで、
図7は、変形例に係る駐車支援処理のフローチャートを示している。なお、
図3に示すステップと同様の処理は同一の番号を付して示し、重複説明を省略する。
駐車支援装置100は、駐車領域検出部113により駐車領域Qを検出した後(ステップS1)、駐車経路算出部115により、車両情報122に基づいて車両1の最小回転半径を特定し、特定した最小回転半径を下限値Rbに設定する(ステップS2A:範囲設定ステップ)。
【0048】
次に、駐車支援装置100は、駐車経路算出部115により、駐車経路中の円弧の曲率半径Rを下限値Rbに設定し(ステップS3A)、その曲率半径Rを満足するように、現在位置から駐車領域Qへ車両1を移動させる駐車経路を算出する(ステップS4)。
次いで、駐車支援装置100は、駐車経路算出部115により、算出された駐車経路中の切り返し回数が前回算出した駐車経路よりも増えたか否かを判定する(ステップS5A)。ここで、前回の駐車経路を算出していない場合は、ステップS5Aの判定が否定結果とされ、曲率半径Rを、現在の曲率半径Rから所定の値Nを加算した値に変更し(ステップS6A)、ステップS4の処理に移行する。
これにより、上記ステップS4→S5A→S6A→S4からなる処理が繰り返し実行され、曲率半径Rが下限値Rbから値Nずつ増加した複数パターンの駐車経路が算出される。
【0049】
算出された駐車経路中の切り返し回数が前回算出した駐車経路よりも増えると(ステップS5A;NO)、駐車支援装置100は、ステップS7の処理に移行する。
ステップS7の処理では、駐車支援装置100は、駐車経路選択部116によって、算出された複数パターンの駐車経路のうち、切り返しの回数が最も少ない駐車経路の中から、円弧の曲率半径Rが最も大きい駐車経路を選択する。そして、駐車支援装置100は、自動走行制御部117により、選択した駐車経路に基づいて制御情報を生成し、当該制御情報を車両制御装置30へ出力する(ステップS8)。
【0050】
図7に示すフローチャートでは、駐車経路に含まれる円弧の曲率半径Rを、車両1の最小回転半径から徐々に大きくした駐車経路であって、切り返しの回数が、前回算出した駐車経路よりも増えると、駐車経路の算出処理が中止され、その中から、円弧の曲率半径Rが最も大きい駐車経路が選択される。これにより、切り返しの回数が最も少なく、かつ、円弧の曲率半径Rが最も大きい駐車経路を、演算量及び演算時間をより低減して特定できる。
また、算出された駐車経路中の切り返し回数が前回算出した駐車経路よりも増えると、ステップS4の駐車経路の算出処理を中止するので、曲率半径Rの上限値Raを設定する処理が不要になる。
【0051】
但し、
図7に示すフローチャートにおいても、
図3のフローチャートの場合と同様に、最小回転半径に基づいて曲率半径Rの上限値Raも設定し、曲率半径Rが上限値Raよりも増えた場合に、ステップS4の駐車経路の算出処理を中止するようにしてもよい。
つまり、算出された駐車経路中の切り返し回数が、前回算出した駐車経路の切り返し回数又は上限値Raからなる所定の回数よりも増えると、ステップS4の駐車経路の算出処理を中止するようにしてもよい。所定の回数は適宜に設定してもよい。
【0052】
なお、上記実施形態は、あくまでも本発明の一態様の例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形、及び応用が可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態では、
図1に示す駐車支援装置100及びその制御方法に本発明を適用する場合を説明したが、これに限定されない。
図1に示す機能ブロックは、本願発明を理解容易にするために、車両1や駐車支援装置100の構成要素を主な処理内容に応じて分類して示した概略図であり、これらの構成要素は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0054】
また、駐車支援装置100の各構成要素の処理は、1つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアにより実行されてもよい。また、各構成要素の処理は、1つのプログラムで実現されてもよいし、複数のプログラムで実現されてもよい。
また、
図3及び
図7に示すフローチャートの処理単位は、駐車支援装置100による処理を、主な処理内容に応じて分割したものである。各フローチャートの処理単位の分割の仕方や名称によって実施形態が制限されることはない。また、上記のフローチャートの処理順序も図示した例に限られるものではない。