【解決手段】実施形態に係るブレーキ制御装置は、取得部と、切替部とを備える。取得部は、車両が駐車した駐車位置の傾斜角に関する傾斜情報を取得する。切替部は、車両の駐車中において電動パーキングブレーキへ電力供給するバッテリの電池残量が閾値以下である場合、電動パーキングブレーキへの電力供給を制限し、取得部によって取得された傾斜情報に基づいて、電動パーキングブレーキの作動状態を切り替える。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係るブレーキ制御装置およびブレーキ制御方法について説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
まず、
図1を用いて、実施形態に係るブレーキシステムの概要について説明する。
図1は、ブレーキシステム1の構成例を示す図である。
図1に示すように、ブレーキシステム1は、車両Cに搭載される。
【0012】
ブレーキシステム1は、ブレーキ制御装置10と、バッテリECU(Electronic Control Unit)20と、電動パーキングブレーキ50(以下、EPB50)と、バッテリBとを備える。
【0013】
バッテリBは、例えば、リチウムイオン電池やキャパシタ等の2次電池であり、ブレーキシステム1全体に電力を供給するバッテリである。
図1に示すように、バッテリBは、ラッチリレーLを介してブレーキ制御装置10およびEPB50へ電力を供給する。
【0014】
ブレーキ制御装置10は、EPB50を制御する制御ユニットである。たとえば、ブレーキ制御装置10は、EPB50に搭載された電動モータを制御し、EPB50による制動力を制御する。
【0015】
バッテリECU20は、バッテリBを制御する制御ユニットである。例えば、バッテリECU20は、バッテリBに内蔵された各種センサのセンシング結果に基づいて、電池残量(SOC;State of Charge)の推定等を行う。
【0016】
EPB50は、例えば、ドラム式のディスクブレーキに取り付けられたワイヤーを電動モータで巻き込むことで、ブレーキを作動させるブレーキである。
図1に示す例では、車両の後輪それぞれに計2つのEPB50が設置される場合を示す。
【0017】
ところ、EPB50は、バッテリBから供給される電力によって作動するため、EPB50を作動させた状態(ブレーキをかけた状態)で、車両が長期間放置された場合、バッテリ上がりが発生し、EPB50を解除できなくなる。
【0018】
このため、実施形態に係るブレーキ制御装置10は、バッテリBの電池残量が少ない場合には、EPB50への電力供給を停止するとともに、車両Cの駐車位置の傾斜情報に基づいて、EPB50の作動状態を切り替えることとした。なお、傾斜情報は、駐車位置の傾斜角に関する情報である。
【0019】
例えば、
図2に示すように、ブレーキ制御装置10は、車両Cの駐車位置が平坦路である場合と、傾斜路である場合とでEPB50の作動状態を切り替える。ここで、平坦路とは、EPB50を解除したとしても、車両Cの静止状態を保つことができる路面を指す。
【0020】
すなわち、本実施形態では、車両Cの静止状態を維持が可能な程度の傾斜角であれば、平坦路と定義する。また、傾斜路とは、EPB50を解除した場合に、車両Cが傾斜に応じて移動してしまう路面を示す。
【0021】
なお、平坦路か傾斜路については、車両Cの前後方向の傾斜角に基づいて判定されることが好ましく、言い換えれば、車両Cの左右方向の傾斜角を考慮しないことにしてもよい。
【0022】
例えば、
図2の上段に示すように、車両Cの駐車位置が平坦路である場合、すなわち、EPB50を解除したとしても、車両Cの静止状態が維持される場合、EPB50を解除するとともに、EPB50に対する電力供給を停止する。
【0023】
また、
図2の下段に示すように、車両Cの駐車位置が傾斜路である場合、すなわち、EPB50を解除した場合には、車両Cが動き出す場合、EPB50を継続して作動させつつ、EPB50に対する電力供給を停止する。
【0024】
つまり、駐車位置が平坦路である場合には、EPB50を予め解除しておくことで、バッテリ上がりによってEPB50が解除できなくなるのを未然に防止する。また、駐車位置が傾斜路である場合には、EPB50に対する電力供給を停止し、消費電力を抑えることで、車両Cの静止状態を維持しつつ、バッテリ上がりをできるだけ遅延させる。
【0025】
このように、実施形態に係るブレーキ制御装置10は、バッテリBの電池残量が低下した場合には、EPB50への電力供給を停止するとともに、駐車位置の傾斜情報に基づいて、EPB50の作動状態を切り替える。
【0026】
したがって、実施形態に係るブレーキ制御装置10によれば、バッテリBの電池残量に応じて電動パーキングブレーキを適切に作動させることができる。
【0027】
次に、
図3を用いて、実施形態に係るブレーキ制御装置10の構成例について説明する。
図3は、実施形態に係るブレーキ制御装置10のブロック図である。
図3に示すように、ブレーキ制御装置10は、記憶部11と、制御部12とを備える。
【0028】
記憶部11は、例えば、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)に対応する。RAMやHDDは、膨張率情報11aを記憶する。膨張率情報11aは、EPB50の内部温度と、EPB50のブレーキの膨張率とを互いに対応付けた情報である。
【0029】
図4は、膨張率情報11aの一例を示す図である。
図4に示す例において、膨張率情報11aは、「内部温度」および「膨張率」をそれぞれ対応付けた情報である。「内部温度」は、EPB50の内部温度を示す。
【0030】
また、「膨張率」は、EPB50の部品(例えば、ブレーキディスク)の膨張率を示す。具体的には、内部温度が高いほど、膨張率が高く、内部温度が低いほど、膨張率が小さくなる。
【0031】
内部温度が高い状態から低い状態に変化した場合には、EPB50の部品の体積が収縮する。そのため、体積の収縮にあわせて、EPB50のブレーキ強度を更新することで、EPB50による制動力を維持することができる。なお、ここでは、内部温度と膨張率との関係について示したが、内部温度と体積とに関する情報を記憶部11に記憶しておくことにしてもよい。
【0032】
図3の説明に戻り、制御部12について説明する。制御部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0033】
コンピュータのCPUは、例えば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部12の取得部12a、作動部12bおよび切替部12cとして機能する。また、制御部12の取得部12a、作動部12bおよび切替部12cの少なくともいずれか一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0034】
取得部12aは、車両Cが駐車した駐車位置の傾斜に関する傾斜情報を取得する。例えば、取得部12aは、車両CのシフトレバーがP(パーキング)になった場合に、図示しない傾斜センサから駐車位置の傾斜角に関する情報を取得する。
【0035】
取得部12aによって取得された傾斜情報は、記憶部11に記憶されるとともに、切替部12cへ通知される。なお、取得部12aが取得する傾斜情報は、車両Cの前後方向に関する傾斜角に関する情報を含むものであればよく、車両Cの左右方向の傾斜角に関する情報を含んでいてもよい。
【0036】
作動部12bは、車両Cが停車(あるいは駐車)した場合に、EPB50を作動させる。例えば、作動部12bは、車両CのシフトレバーがP(パーキング)になった場合、あるいは、その後のユーザ操作に応じて、EPB50を作動させる。この際、作動部12bは、EPB50の制動力が現在の状態において最大となるように、EPB50の電動モータを制御し、EPB50を作動させる。
【0037】
切替部12cは、車両Cの駐車中においてEPB50へ電力供給するバッテリBの電池残量が閾値以下となった場合、EPB50の電力供給を制限するとともに、取得部12aによって取得された傾斜情報に基づいて、EPB50の作動状態を切り替える。
【0038】
例えば、切替部12cは、バッテリBの電池残量をバッテリECU20から所定周期で取得し、バッテリBの電池残量が閾値(例えば、20%)以下か否かを判定する。バッテリBの電池残量が閾値より多ければ、後述する切替制御を省略する。
【0039】
すなわち、ブレーキ制御装置10は、バッテリBの電池残量が閾値よりも多ければ、EPB50の通常制御を継続して行う。なお、通常制御とは、例えば、EPB50に常時電力供給し、電動モータに電力を印加し続けることで、制動力を随時更新する処理である。
【0040】
また、切替部12cは、バッテリBの電池残量が閾値以下であった場合、取得部12aによって取得された傾斜情報に基づいて、EPB50の作動状態を切り替える。具体的には、切替部12cは、車両Cの駐車位置が平坦路、すなわち、EPB50を解除しても、車両Cの静止状態が維持される場合、EPB50を解除するとともに、EPB50への電力供給を停止する。
【0041】
また、切替部12cは、車両Cの駐車位置が傾斜路、すなわち、EPB50を解除した場合に車両Cが路面に沿って移動する場合、EPB50の作動状態を継続しつつ、EPB50への電力供給を停止する。
【0042】
また、切替部12cは、車両Cの駐車位置が傾斜路である場合においては、さらに、EPB50の現在の作動状態で車両Cの静止状態を維持できない場合には、EPB50への電力供給を一時的に許可し、EPB50のブレーキ強度を上げる。
【0043】
ここで、
図5を用いて、切替部12cによる処理の具体例について説明する。
図5は、傾斜路における切替部の処理の一例を示す図である。
図5に示すように、例えば、駐車直後から時間経過に沿って、EPB50による制動力が徐々に減少する。
【0044】
これは、車両Cが停車した直後においては、EPB50の内部温度は比較的高い状態であり、時間経過に伴って、内部温度は次第に減少するためである。すなわち、時間経過に沿ってEPB50の内部温度が徐々に減少し、内部温度の減少に沿ってEPB50が徐々に収縮するためである。
【0045】
そのため、車両Cの静止状態を維持するためには、制動力を適宜補填する必要が生じる。例えば、切替部12cは、内部温度に関する情報を所定の周期で取得し、取得した内部温度に基づいてEPB50の作動状態の更新についての要否を判定を行う。
【0046】
切替部12cは、膨張率情報11aを参照し、EPB50の現在の体積を算出し、算出した体積と、過去に算出した体積との差分が所定値以上であれば、ブレーキ強度が高くなるように、EPB50の作動状態を切り替える。
【0047】
この際、作動状態の更新には、EPB50への電力供給が必要となるため、EPB50への電力供給を作動状態の更新するタイミングにあわせて一時的に許可する。これにより、EPB50の初期の制動力を維持することができるので、制動力の低下に伴い車両Cが傾斜路に沿って移動するのを抑制することができる。
【0048】
なお、ここでは、内部温度に基づいてEPB50の制動力を切り替える場合について説明したが、EPB50の制動力の減少に伴う車両Cの移動を検出した場合に、EPB50の制動力を切り替えることにしてもよい。
【0049】
次に、
図6を用いて、実施形態に係るブレーキ制御装置10が実行する処理手順について説明する。
図6は、ブレーキ制御装置10が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、以下に示す処理手順は、制御部12によって所定の周期で繰り返し実行される。
【0050】
図6に示すように、ブレーキ制御装置10は、傾斜情報を取得し(ステップS101)、EPB50がオンなったか否かを判定する(ステップS102)。ブレーキ制御装置10は、EPB50がオンであった場合(ステップS102,Yes)、バッテリBの電池残量が閾値(例えば、20%)以下か否かを判定する(ステップS103)。
【0051】
ブレーキ制御装置10は、ステップS103の判定において、電池残量が閾値以下である場合(ステップS103,Yes)、EPB50への電力供給を停止させ(ステップS104)、車両Cの駐車位置が平坦路か否かを判定する(ステップS105)。
【0052】
ブレーキ制御装置10は、ステップS105の判定において、駐車位置が平坦路であった場合(ステップS105,Yes)、EPB50を解除して(ステップS106)、処理を終了する。
【0053】
また、ブレーキ制御装置10は、ステップS105の判定において、駐車位置が平坦路でなかった場合、すなわち、傾斜路であった場合(ステップS105,No)、EPB50による制動力の補填が必要か否かを判定する(ステップS107)。
【0054】
ブレーキ制御装置10は、ステップS107の判定において、制動力の補填が必要と判定した場合(ステップS107,Yes)、EPB50へ一時的に電力供給し、ブレーキ強度(すなわち、制動力)を更新し(ステップS108)、処理を終了する。
【0055】
また、ブレーキ制御装置10は、ステップS102の判定において、EPB50がオフであった場合(ステップS102,No)、および、ステップS107の判定において、制動力の補填を不要と判定した場合には(ステップS107,No)、処理を終了する。
【0056】
さらに、ブレーキ制御装置10は、ステップS103の判定において、電池残量が閾値よりも大きい場合(ステップS103,No)、通常制御を行って(ステップS109)、処理を終了する。
【0057】
上述したように、実施形態に係るブレーキ制御装置10は、取得部12aと、切替部12cとを備える。取得部12aは、車両Cが駐車した駐車位置の傾斜に関する傾斜情報を取得する。切替部12cは、車両の駐車中においてEPB50(電動パーキングブレーキ)へ電力供給するバッテリBの電池残量が閾値以下となった場合、EPB50への電力供給を停止するとともに、取得部12aによって取得された傾斜情報に基づいて、EPB50の作動状態を切り替える。したがって、実施形態に係るブレーキ制御装置10によれば、バッテリ残量に応じてEPB50を適切に作動させることができる。
【0058】
次に、
図7を用いて、第2の実施形態に係るブレーキ制御装置10aについて説明する。
図7は、第2の実施形態に係るブレーキ制御装置10aのブロック図である。第2の実施形態に係るブレーキ制御装置10aは、通知部12dを備える点で、第1の実施形態に係るブレーキ制御装置10と構成が異なる。
【0059】
通知部12dは、バッテリBの電池残量に応じて、EPB50が解除できなくなる旨を通知する。例えば、通知部12dは、車両Cが停車し、シフトレバーがP(パーキング)になった際のバッテリBの電池残量が閾値以下か否かを判定する。
【0060】
通知部12dは、バッテリBの電池残量が閾値以下であったならば、EPB50が解除できなくなる懸念をユーザに対して告知する。例えば、通知部12dは、図示しない表示部や音声出力部に接続されており、表示部に警告画像を表示したり、音声出力部から音声を出力することで、EPB50が解除できなくなる懸念をユーザに対して告知することができる。
【0061】
そして、切替部12cは、通知部12dによって通知情報がユーザへ告知された後に作動状態を切り替えることになる。具体的には、切替部12cは、バッテリBの電池残量が閾値以下であり、駐車位置が平坦路であった場合、EPB50の作動を禁止するとともに、EPB50への電力供給を禁止する。
【0062】
また、切替部12cは、バッテリBの電池残量が閾値以下であり、駐車位置が傾斜路であった場合には、EPB50の作動を作動させたうえで、電力供給を停止させる。
【0063】
例えば、切替部12cが上記の処理を実行した場合には、平坦路においては、そもそもEPB50が作動しないので、バッテリ上がりが発生したとしてもEPB50が解除できなくなることはない。そのため、通知部12dは、駐車位置が平坦路である場合と、傾斜路である場合とでことなる通知情報を通知することにしてもよい。
【0064】
具体的には、通知部12dは、駐車位置が平坦路である場合には、「EPB50が解除できなくなる懸念があるため、EPB50をオンにしません」といった趣旨をユーザへ通知することにしてもよい。また、通知部12dは、駐車位置が傾斜路である場合には、「EPB50が解除できなくなる懸念があるため、長期の放置はご遠慮ください」といった通知を行うことにしてもよい。
【0065】
このように、ユーザに対して予め告知してことで、EPB50の利便性の向上を図ることができる。
【0066】
次に、
図8を用いて、第2の実施形態に係るブレーキ制御装置10aが実行する処理手順について説明する。
図8は、第2の実施形態に係るブレーキ制御装置10aが実行する処理手順を示すフローチャートである。
【0067】
図8に示すように、ブレーキ制御装置10aは、シフトレバーがP(パーキング)に変化したか否かを判定し(ステップS201)、シフトレバーがPに変化した場合(ステップS201,Yes)、すなわち、車両Cが停車する場合、駐車位置の傾斜情報を取得する(ステップS202)。
【0068】
続いて、ブレーキ制御装置10aは、バッテリBの電池残量が閾値以下か否かを判定し(ステップS203)、電池残量が閾値以下であった場合(ステップS203,Yes)、ユーザに対してEPB50が解除できなくなる懸念を通知する(ステップS204)。
【0069】
続いて、ブレーキ制御装置10aは、駐車位置が平坦路か否かを判定し(ステップS205)、平坦路であれば(ステップS205,Yes)、EPB50の作動禁止にし(ステップS206)、処理を終了する。
【0070】
また、ブレーキ制御装置10aは、ステップS205の判定において、駐車位置が傾斜路であった場合(ステップS205,No)、EPB50を作動させて(ステップS207)、処理を終了する。
【0071】
また、ブレーキ制御装置10aは、ステップS201の判定において、シフトレバーがPに変化していない場合(ステップS201,No)、処理を終了し、ステップS203の判定において、電池残量が閾値よりも大きければ(ステップS203,No)、通常制御を実行し(ステップS208)、処理を終了する。
【0072】
ところで、上述した実施形態では、バッテリBの電池残量が閾値以下である場合に、EPB50への電力供給を停止する場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、バッテリBの電池残量が閾値以下である場合に、EPB50への電力供給量を少なくすることにしてもよい。
【0073】
また、上述した実施形態では、バッテリBの電池残量が閾値以下である場合に、EPB50の作動状態を切り替える場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、バッテリBの電池残量が閾値よりも大きい場合においても、EPB50の作動状態を切り替えることにしてもよい。
【0074】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。