【課題】一の方向から供給されたボビンを他の方向に受け渡す場合に、ボビンの向きを確実に転換させることができるボビン方向転換機構、ボビン収容装置及び紡績機を提供する。
【解決手段】 ボビン方向転換機構70は、ボビンストッカ90から供給されるボビンBの向きを転換してボビンBをボビン搬送機構85に受け渡すように構成されており、ボビンBの小径端Baを支持する第1支持部75と、第1支持部75とは異なる方向からボビンBを支持する第2支持部73と、を有するボビン支持部と、ボビン支持部を受取位置RPと排出位置DPとに移動させるエアシリンダACと、を備える。
繊維束をドラフトするドラフト装置と、前記ドラフト装置でドラフトされた前記繊維束に撚りを与えて糸を生成する空気紡績装置と、前記空気紡績装置で生成された前記糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、をそれぞれが有する複数の紡績ユニットと、
前記紡績ユニットに対して走行可能に設けられ、前記紡績ユニットの前記巻取装置に前記ボビンを供給する玉揚台車と、
前記玉揚台車に前記ボビンを受け渡す、請求項10又は11に記載のボビン収容装置と、を備える、紡績機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような紡績機においては、ボビンの搬送及び/又はボビンの収容にあたり、ボビンの向きを同じ方向に揃えることが求められることがある。例えば、特許文献1に記載の玉揚台車における空ボビン収容部は、ボビンが同じ方向に向いた状態(例えば、大径部が機台正面に向かって左側を向いた状態)で収容されるので、ボビンストッカから供給されるボビンの向きによっては、ボビンの向きを確実に転換させた状態でボビンストッカから玉揚台車に受け渡す必要がある。
【0005】
本発明は、一の方向から供給されたボビンを他の方向に受け渡す場合に、ボビンの向きを確実に転換させることができるボビン方向転換機構、ボビン収容装置及び紡績機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るボビン方向転換機構は、一の方向から供給されるボビンの向きを転換して前記ボビンを他の方向に受け渡すボビン方向転換機構であって、前記ボビンの軸方向における一端を支持する第1支持部と、前記第1支持部とは異なる方向から前記ボビンを支持する第2支持部と、を有するボビン支持部と、前記ボビン支持部を受取位置と排出位置とに移動させる駆動装置と、を備える。
【0007】
これにより、ボビンが駆動装置により積極的に排出位置へ移動させられるため、ボビンを確実に排出させることができる。
【0008】
前記駆動機構は、エアシリンダであってもよい。これにより、ボビン支持部を安価な構成で移動させることができる。
【0009】
前記ボビン方向転換機構は、前記エアシリンダによる前記ボビン支持部の移動を禁止する禁止装置を更に備えていてもよい。これにより、ボビン方向転換機構のメンテナンス性が向上する。
【0010】
前記禁止装置は、前記エアシリンダに設けられたバルブであってもよい。これにより、エアシリンダの移動の禁止を確実に行なうことができる。
【0011】
前記ボビン方向転換機は、前記第1支持部に設けられた滑り防止部を更に備えていてもよい。これにより、ボビンが第1支持部上を滑ってボビンの方向が転換されないことを防止することができる。
【0012】
前記滑り防止部は、前記第1支持部から突出する突出部であってもよい。これにより、ボビン支持部が受取位置に位置している状態において、ボビンを確実に支持することができる。その結果、意図しないタイミングでボビンがボビン方向転換機構から排出されることを、簡単な構成で確実に防止することができる。
【0013】
前記ボビン方向転換機は、前記第1支持部が前記ボビンを支持する部分に設けられた緩衝部材を更に備えていてもよい。これにより、ボビン方向転換機構に供給されたボビンがボビン方向転換機構と接触することによりダメージを受けることを回避することができる。
【0014】
前記緩衝部材は、シート状のゴムであってもよい。これにより、簡単な構成によりボビンがダメージを受けることを回避できる。また、緩衝部材をシート状のゴムで構成することにより、シートの両面を使用することができるため、1つの緩衝部材の寿命を延ばすことができる。
【0015】
前記ボビン方向転換機は、前記駆動装置を駆動するタイミングを決定するタイマーを更に備えていてもよい。これにより、駆動装置を適切なタイミングで駆動することができる。
【0016】
本発明に係るボビン収容装置は、前記ボビンを収容するボビン収容部と、前記ボビン収容部から前記ボビンを取り外すボビン取外部と、前記ボビン取外部によって取り外された前記ボビンを受け取る上記何れかのボビン方向転換機構と、を備える。
【0017】
これにより、ボビン収容部に収容されていたボビンを所望の方向に転換することができる。
【0018】
前記ボビン収容装置は、前記ボビンの移動方向において前記ボビン方向転換機構の下流側に設けられ、前記ボビンを搬送する搬送装置と、前記ボビンが前記搬送装置によって所定位置に搬送されたことを検出する検出装置と、前記検出装置が前記ボビンを検出した場合、前記ボビン支持部を前記排出位置から前記受取位置へ移動させるように前記駆動装置を制御する制御装置と、を備えていてもよい。
【0019】
これにより、ボビン方向転換機構により先に排出されたボビンが後から排出されるボビンと衝突する事態を確実に回避することができる。
【0020】
本発明に係る紡績機は、繊維束をドラフトするドラフト装置と、前記ドラフト装置でドラフトされた前記繊維束に撚りを与えて糸を生成する空気紡績装置と、前記空気紡績装置で生成された前記糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、をそれぞれが有する複数の紡績ユニットと、前記紡績ユニットに対して走行可能に設けられ、前記紡績ユニットの前記巻取装置に前記ボビンを供給する玉揚台車と、前記玉揚台車に前記ボビンを受け渡すボビン収容装置と、を備える。
【0021】
これにより、ボビン収容部に収容されていたボビンを玉揚台車に受け渡す場合に、ボビンの向きを確実に転換させた状態で受け渡すことができる。このため、玉揚台車はボビンの向きが揃えられた状態でボビンを収容することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。説明中「上」、「下」、「左」、「右」、「前」及び「後」等の方向を示す語は、図面に示された状態に基づいた便宜的な語である。
【0024】
図1に示されるように、紡績機1は、エンドフレーム5と、複数の紡績ユニット2と、糸継台車3と、玉揚台車4と、ボビンストッカ(ボビン収容装置)90と、を備えている。複数の紡績ユニット2は、一列に配列されている。以下の説明では、糸Yが走行する経路(すなわち、糸道)において、糸Yが生成される側を上流側といい、糸Yが巻き取られる側を下流側という。
【0025】
各紡績ユニット2は、糸Yを生成してパッケージPに巻き取る。
【0026】
エンドフレーム5は、複数の紡績ユニット2の一方の端部に配置されている。エンドフレーム5には、紡績ユニット2の各部に動力を供給するための駆動モータなどが収容されている。エンドフレーム5には、機台制御装置11と、入力部を有する表示部Dと、が設けられている。
【0027】
機台制御装置11は、紡績機1の各部を集中的に管理及び制御する。表示部Dは、紡績ユニット2の設定内容及び/又は状態に関する情報などを表示することができる。オペレータが入力部を用いて適宜の操作を行うことにより、紡績ユニット2の設定作業を行うことができる。
【0028】
紡績機1の外部(紡績機1から離れた場所。例えば、紡績機1が設置された工場内の適宜の場所。)には、紡績ユニット2の各部において旋回空気流を発生させるための空気供給源94が設置されている。空気供給源94は、空気供給源94に接続されたダクトを介して紡績機1の各部に圧縮空気を供給する。空気供給源94は、エンドフレーム5に収容されていてもよい。空気供給源94は、紡績機1から離れて設置されている場合、紡績機1とは別の構成物とみなすことができるが、紡績機1の構成要素の1つとみなしてもよい。
【0029】
エンドフレーム5とは反対側に設けられた、後述するボビンストカ90の後側には、紡績ユニット2の各部において吸引空気流を発生させるための吸引源などが収容されている。
【0030】
図1及び
図2に示されるように、各紡績ユニット2は、糸Yの走行方向において上流側から順に、ドラフト装置6と、空気紡績装置7と、糸監視装置8と、テンションセンサ9と、糸貯留装置50と、ワキシング装置12と、巻取装置13と、を備えている。ユニットコントローラは、所定数(1又は複数)の紡績ユニット2ごとに設けられており、紡績ユニット2の動作を制御する。
【0031】
ドラフト装置6は、スライバ(繊維束)Sをドラフトする。ドラフト装置6は、スライバSの走行方向において上流側から順に、バックローラ対14と、サードローラ対15と、ミドルローラ対16と、フロントローラ対17と、を有している。各ローラ対14,15,16及び17は、ボトムローラと、トップローラと、を有している。ボトムローラは、エンドフレーム5に設けられた駆動モータ又は各紡績ユニット2に設けられた駆動モータにより回転駆動される。ミドルローラ対16のトップローラに対しては、エプロンベルト16Aが設けられている。ミドルローラ対16のボトムローラに対しては、エプロンベルト16Bが設けられている。
【0032】
空気紡績装置7は、ドラフト装置6でドラフトされた繊維束Fに旋回空気流によって撚りを与えて糸Yを生成する。より詳細には(ただし、図示省略)、空気紡績装置7は、紡績室と、繊維案内部と、旋回空気流発生ノズルと、中空ガイド軸体と、を有している。繊維案内部は、上流側のドラフト装置6から供給された繊維束Fを紡績室内に案内する。旋回空気流発生ノズルは、繊維束Fが走行する経路の周囲に配置されている。旋回空気流発生ノズルから空気が噴射されることにより、紡績室内に旋回空気流が発生する。この旋回空気流によって、繊維束Fを構成する複数の繊維の各繊維端が反転されて旋回させられる。中空ガイド軸体は、糸Yを紡績室内から空気紡績装置7の外部に案内する。
【0033】
糸監視装置8は、空気紡績装置7と糸貯留装置50との間に配置されている。糸監視装置8は、走行する糸Yの状態を監視し、糸欠陥の有無を検出する。糸監視装置8は、糸切れなども検出する。
【0034】
テンションセンサ9は、空気紡績装置7と糸貯留装置50との間において、走行する糸Yのテンションを測定し、テンション測定信号をユニットコントローラに送信する。
【0035】
糸監視装置8及び/又はテンションセンサ9の検出結果に基づきユニットコントローラが異常有りと判断した場合、紡績ユニット2において、糸Yが切断される。具体的には、空気紡績装置7への空気の供給が停止されて、糸Yの生成が中断されることにより、糸Yが切断される。或いは、別途設けられたカッタにより糸Yが切断されるようにしてもよい。
【0036】
ワキシング装置12は、糸貯留装置50と巻取装置13との間において、糸Yにワックスを付与する。糸Yにワックスを付与しない場合、ワキシング装置12からワックスを取り外した状態で、糸Yを紡績してもよい。
【0037】
糸貯留装置50は、空気紡績装置7と巻取装置13との間において、糸Yの弛みを取る。糸貯留装置50は、空気紡績装置7から糸Yを安定して引き出す機能、糸継台車3による糸継動作時などに空気紡績装置7から送り出される糸Yを滞留させて糸Yが弛むのを防止する機能、及び糸貯留装置50よりも下流側の糸Yのテンションの変動が空気紡績装置7に伝わるのを防止する機能を有している。
【0038】
巻取装置13は、糸YをボビンBに巻き取ってパッケージPを形成する。巻取装置13は、クレードルアーム21と、巻取ドラム22と、トラバースガイド23と、を有している。
【0039】
クレードルアーム21は、ボビンBを回転可能に支持する。クレードルアーム21は、支軸24によって揺動可能に支持されており、ボビンBの表面又はパッケージPの表面を巻取ドラム22の表面に適切な圧力で接触させる。エンドフレーム5に設けられた駆動モータ(図示省略)が、複数の紡績ユニット2の巻取ドラム22を一斉に駆動する。これにより、各紡績ユニット2において、ボビンB又はパッケージPが巻取方向に回転させられる。各紡績ユニット2のトラバースガイド23は、複数の紡績ユニット2で共有されるシャフト25に設けられている。エンドフレーム5の駆動モータがシャフト25を巻取ドラム22の回転軸方向に往復駆動することによって、回転するボビンB又はパッケージPに対してトラバースガイド23が糸Yを所定幅でトラバースする。
【0040】
糸継台車3は、ある紡績ユニット2において糸Yが切断されたり、何らかの理由で糸Yが切れたりした場合、当該紡績ユニット2まで走行して、糸継動作を行う。糸継台車3は、サクションパイプ31と、糸継装置37と、サクションマウス38と、を備えている。
【0041】
サクションパイプ31は、支軸31Aによって回動可能に支持されており、空気紡績装置7からの糸Yを捕捉して糸継装置37に案内する。サクションマウス38は、支軸38Aによって回動可能に支持されており、巻取装置13からの糸Yを捕捉して糸継装置37に案内する。糸継装置37は、案内された糸Y同士の糸継ぎを行う。
【0042】
糸継装置37は、糸Y同士の糸継ぎを行う構成に代えて、パッケージPからの糸Yを空気紡績装置7に逆走させ、ドラフト装置6によるドラフト動作と空気紡績装置7による紡績動作を再開させることにより、糸Yを連続状態にしてもよい。
【0043】
糸継台車3が糸継ぎ動作を行うとき、パッケージPを反巻取方向に回転(逆回転)させる。糸継台車3には逆回転用ローラが設けられている。
【0044】
玉揚台車4は、後述するボビンストッカ90から供給されたボビンBをクレードルアーム21に供給して糸Yの巻取りの準備を行うボビンセット動作と、満巻になったパッケージPをクレードルアーム21から取り外す玉揚動作と、を行う。玉揚台車4は、一の紡績ユニット2において満巻のパッケージPが完成すると、機台制御装置11からの制御信号により、本体フレームに形成された走行路1B上を一の紡績ユニット2まで走行して停止し、玉揚動作及びボビンセット動作の両方の動作を行う。玉揚台車4は、主に、収容部41と、ボビン供給機構42と、クレードル操作アーム43と、サクションパイプ44と、を備えている。
【0045】
収容部41は、ボビンストッカ90から供給されたボビンBを収容する。ボビン供給機構42は、クレードルアーム21にボビンBを供給する。サクションパイプ44は、空気紡績装置7から排出される糸Yを吸引部にて吸引することで捕捉して、この補捉した糸Yを巻取装置13まで案内する。クレードル操作アーム43は、満巻になったパッケージPを巻取装置13から取り外すためにクレードルアーム21を開く操作、又は新たなボビンBをクレードルアーム21に取り付けを行うためにクレードルアーム21を閉じる操作を行う。
【0046】
ボビンストッカ90は、
図1に示されるように、エンドフレーム5とは反対側の端部に配置されている。ボビンストッカ90は、ボビン収容部91と、ボビン取外部93と、ボビン方向転換機構70と、ボビン搬送機構85と、ボビン送出機構87と、を備えている。
【0047】
ボビン収容部91は、ボビンBを取り付け可能な棒状の部材であるペグ91Aを複数有している。糸Yを巻き取るためのボビンBは、
図3に示されるように、筒体(芯管)として構成されている。本実施形態では、ボビンBを正面視した場合、軸方向において一端Baから他端Bbに向けて広がる末広がり状に形成されている。言い換えれば、ボビンBは、他端Bbから一端Baに向けてテーパ(先細り)状に形成されている。すなわち、ボビンBは、軸方向において他端Bbの径よりも一端Baの径の方が小さい。以下、一端Baを小径端Ba、他端Bbを大径端Bbともいう。
【0048】
ボビン収容部91は、ボビンBを、その軸方向端部が作業通路側(
図1の紙面手前側)を向くように保管可能に構成されている。ボビンBは、小径端Baが前方に向けられた状態且つ軸線が水平又は略水平な状態でペグ91Aに支持されている。
【0049】
ボビン収容部91の前面側(正面側)は開放されており、各ペグ91Aの先端は、ボビン収容部91の前面側に露出するように構成されている。ペグ91Aは、前面側を向いている。
【0050】
ボビン収容部91は、ペグ91Aの長手方向と略直行する平面(垂直面)内を循環駆動される無端チェーン91Bを有している。複数のペグ91Aは、無端チェーン91Bに固定されている。したがって、無端チェーン91Bを一方向に連続的又は間欠的に循環させることにより、ペグ91Aに取り付けられたボビンBを、無端チェーン91Bの長手方向に沿って搬送することができる。
【0051】
ボビン収容部91におけるボビンBの搬送経路の途中には、ボビン取外部93が設けられている。ボビン取外部93は、空気供給源から供給される空気によって駆動される図略のエアシリンダのロットの先端部により構成される。ボビンBは、ボビン取外部93によって前方向に押し出されることにより、ペグ91Aから取り外される。具体的には、ボビン取外部93は、ボビン方向転換機構70に向けてボビンBを押し出す。ボビン取外部93は、エアシリンダに接続されるプッシャーによって構成されていてもよい。
【0052】
図3、
図4及び
図5等に示されるように、ボビン方向転換機構70は、一の方向(具体的にはボビン取外部93)から供給されるボビンの向きを転換してボビンBを他の方向に受け渡すように構成されている。具体的には、ボビン方向転換機構70は、ボビンBの軸方向における一端(本実施形態では小径端Ba)を支持する第1支持部75と第1支持部75とは異なる方向からボビンBを支持する第2支持部73と、を有するボビン支持部と、ボビン支持部を受取位置RP(
図5(A))と排出位置DP(
図5(C))とに移動させるエアシリンダAC(駆動装置)と、を備える。
【0053】
第1支持部75と第2支持部73は、エアシリンダACを駆動することにより、一体的に移動するように連結されている。例えば、第1支持部75と第2支持部73の少なくとも一部が一体的に形成されている。
【0054】
ボビン方向転換機構70は、ボビン取外部93からボビンBが受け渡されると、
図3に示されるように、大径端Bbが上方に向けられ、且つ、小径端Baが下方に向けられた起立状態(起立状態には、鉛直に起立した状態だけではなく、鉛直線に対して斜めに起立した状態を含む)にてボビンBを支持する。
【0055】
第1支持部75の先端(ボビン支持部の回動中心とは反対側の端部)には、第1支持部75の前後方向に沿って延在する突出部75S(滑り防止部)が設けられている。ボビン取外部93から供給されたボビンBの小径端Baが第1支持部75上を滑って第1支持部75から意図しないタイミングで落ちそうになったとしても、突出部75SによりボビンBの小径端Baの移動を規制することができる。
図3及び
図4に示す第1支持部75に対する突出部75Sの角度及び/又は形状は一例であり、適宜変更可能である。
【0056】
第1支持部75の表面には、シート状のゴム(緩衝部材)が貼付されている。これにより、ボビン方向転換機構70に供給されたボビンBが第1支持部75と接触することによりダメージを受けることを回避することができる。シート状のゴムは、その両面を使用することができるように構成されている。ゴムの表面が劣化してきた場合、オペレータはゴムの表面側になる側を入れ替え、両面ともが摩耗した場合にゴムを廃棄し、新しいゴムと入れ替えてもよい。
【0057】
図1及び
図3に示されるように、ボビン搬送機構85は、駆動ローラ85aと、従動ローラ85bと、駆動ローラ85a及び従動ローラ85bに巻き掛けられるベルト85cと、一対のガイド83,83を有している。駆動ローラ85aは、図示しないモータによって駆動される。ベルト85cは、駆動ローラ85aの矢印方向dへの回転に伴って回転し、ベルト85cに載置されたボビンBを矢印方向eに搬送する。一対のガイド83,83は、搬送方向に沿って配置されており、ボビンBのベルト幅方向(前後方向)への移動を規制する。
【0058】
図1に示されるように、ボビン送出機構87は、ボビン搬送機構85における搬送方向下流側に配置されている。ボビン送出機構87は、ボビン搬送機構85から受け渡されたボビンBを、受取位置P1に停止している玉揚台車4に受け渡す。ボビン送出機構87は、図示しない駆動ローラによって駆動されるベルトコンベヤを有している。
【0059】
次に、ボビンストッカ90の動作について説明する。
図1に示されるように、ボビン収容部91によってボビン取外部93まで搬送されてきたボビンBは、ボビン取外部93によって前方向に押し出される。ボビン取外部93によって押し出されたボビンBは、
図5(A)に示されるように、小径端Baを下方に向けた状態で落下することによりボビン方向転換機構70に受け渡される。すなわち、第1支持部75は、ボビンBが押し出される位置よりも所定距離(ボビンBの全長以上の距離)だけ下方に配置されているので、受け渡し前に前後方向に延びる姿勢だったボビンBが、上下方向に延びる姿勢で受け渡される。ボビン方向転換機構70に受け渡されたボビンBは、小径端Baが第1支持部75に支持され、大径端Bbが第2支持部73に支持されることで一時的に起立状態に支持される。
【0060】
その後、所定のタイミングでエアシリンダACが駆動され、ボビン支持部は、
図4及び
図5(A)に示す受取位置RPから、
図5(B)に示す位置を経て、
図4及び
図5(C)に示す排出位置DPへと移動する。所定のタイミングは、図略のタイマーによって計測されている。エアシリンダACの駆動は機台制御装置11によって制御されている。
【0061】
ボビン支持部が排出位置DPへ移動させられることにより、ボビンBは、小径端Baを軸として、受け渡し方向である左方向に回動する。すなわち、ボビンBは、反時計回りに回動する。ボビンBは、ボビンBがベルト85cに受け渡されるときのボビンBの大径端Bbの位置がベルト85cの位置よりも高い位置にあるため、第1支持部75から落下する際に、大径端Bbを左側に向けると共に小径端Baを右側に向けた状態で、ボビン搬送機構85に受け渡される。なお、ボビンBがベルト85cに受け渡されるときのボビンBの大径端Bbの位置とベルト85cの位置とを同じ高さとして、ボビンBが落下しないように受け渡してもよい。
【0062】
ボビン方向転換機構70からボビンBが受け渡されたボビン搬送機構85は、当該ボビンBを左方向に搬送し、ボビン送出機構87に受け渡す。ボビン送出機構87は、玉揚台車4にボビンBを受け渡す。
【0063】
ボビン方向転換機構70は、エアシリンダACによるボビン支持部の移動を禁止する図略のバルブ(禁止装置)を更に備えている。例えば、オペレータがボビン方向転換機構70のメンテナンスを行なうときはバルブを閉じ、エアシリンダACが作動しないようにすることができる。ボビン方向転換機構70によりボビンBの方向転換を行うときは、バルブを開いておく。
【0064】
以上説明した本実施形態のボビン方向転換機構70は、一の方向から供給されるボビンBの向きを転換してボビンBを他の方向(例えばベルト85)に受け渡すように構成されており、ボビン方向転換機構70、ボビンBの軸方向における一端(小径端Ba)を支持する第1支持部75と、第1支持部75とは異なる方向からボビンBを支持する第2支持部73と、を有するボビン支持部と、ボビン支持部を受取位置RPと排出位置DPとに移動させるエアシリンダACと、を備える。
【0065】
これにより、ボビンBがエアシリンダACにより積極的に排出位置DPへ移動させられるため、ボビンBを確実に排出させることができる。
【0066】
ボビン方向転換機構70は、エアシリンダACによるボビン支持部の移動を禁止するバルブを更に備えている。これにより、ボビン方向転換機構70のメンテナンス性が向上する。
【0067】
ボビン方向転換機70は、第1支持部75に設けられた突出部75Sを更に備えている。これにより、ボビンBが第1支持部75上を滑ってボビンBの方向が転換されないことを防止することができる。
【0068】
ボビン方向転換機70は、第1支持部75がボビンBを支持する部分に設けられたシート状のゴムを更に備えている。これにより、ボビン方向転換機構70に供給されたボビンBがボビン方向転換機構70と接触することによりダメージを受けることを回避することができる。
【0069】
ボビン方向転換機70は、エアシリンダACを駆動するタイミングを決定するタイマーを更に備えている。これにより、エアシリンダACを適切なタイミングで駆動することができる。
【0070】
ボビンストッカ90は、ボビンBを収容するボビン収容部91と、ボビン収容部91からボビンBを取り外すボビン取外部93と、ボビン取外部93によって取り外されたボビンBを受け取るボビン方向転換機構70と、を備える。
【0071】
これにより、ボビン収容部91に収容されていたボビンBを所望の方向に転換することができる。
【0072】
ボビンストッカ90は、ボビンBの移動方向においてボビン方向転換機構70の下流側に設けられ、ボビンBを搬送する搬送装置85と、ボビンBが搬送装置85によって所定位置に搬送されたことを検出する図略の検出装置と、検出装置がボビンBを検出した場合、ボビン支持部を排出位置DPから受取位置RPへ移動させるようにエアシリンダACを制御する機台制御装置11と、を備える。
【0073】
これにより、ボビン方向転換機構70により先に排出されたボビンBが後から排出されるボビンBと衝突する事態を確実に回避することができる。
【0074】
紡績機は1、繊維束Sをドラフトするドラフト装置6と、ドラフト装置6でドラフトされた繊維束Fに撚りを与えて糸Yを生成する空気紡績装置7と、空気紡績装置7で生成された糸Yを巻き取ってパッケージPを形成する巻取装置13と、をそれぞれが有する複数の紡績ユニット2と、紡績ユニット2に対して走行可能に設けられ、紡績ユニット2の巻取装置13にボビンBを供給する玉揚台車4と、玉揚台車4にボビンBを受け渡すボビンストッカ90と、を備える。
【0075】
これにより、ボビンストッカ90に収容されていたボビンBを玉揚台車4に受け渡す場合に、ボビンBの向きを確実に転換させた状態で受け渡すことができる。このため、玉揚台車4はボビンBの向きが揃えられた状態でボビンBを収容することができる。
【0076】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されない。
【0077】
上記実施形態では、ボビン方向転換機構70は、エアシリンダACによりボビン支持部を駆動するように構成されていた。しかし、ボビン方向転換機構70は、エアシリンダACの代わりに、モーター(例えばステップモータ)によりボビン支持部を駆動するように構成されていてもよい。
【0078】
上記実施形態では、ボビン方向転換機構70は、シート状のゴムによりボビンBがダメージを受けることを回避していた。しかし、ボビン方向転換機構70は、例えばスポンジ等、シート状のゴム以外の手段によって、ボビンBが受けるダメージを軽減するように構成されていてもよい。
【0079】
上記実施形態では、ボビン方向転換機構70が、ボビンストッカ90におけるボビン取外部93とボビン搬送機構85との間に配置されている例を挙げて説明したが、本発明は当該実施形態に限定されない。ボビン方向転換機構70は、例えば、ボビン搬送機構85と玉揚台車4との間に設けられていてもよい。ボビン方向転換機構70は、ボビンストッカ90以外の場所に設けてもよい。言い換えると、ボビン方向転換機構70は、ボビンBが一方から受け渡され、ボビンBを他の方向に受け渡すような場所であれば、どのような位置に設けてもよい。
【0080】
上記実施形態又は変形例では、ボビンBを受け渡す方向の一例として左方向を例に挙げて説明したが、受け渡す方向は当該例に限定されない。例えば、当該方向は、右方向、前方向、又は後方向であってもよい。
【0081】
紡績機1は、ボビンセット動作のみを玉揚台車4で行い、玉揚動作は別の手段で行うように構成されていてもよい。
【0082】
空気紡績装置は、上記の構成に代えて、互いに反対方向に繊維束に撚りを掛ける一対のエアージェットノズルを備えていてもよい。
【0083】
上記実施形態又は変形例では、紡績ユニット2は、糸貯留装置50が空気紡績装置7から糸Yを引き出す機能を有していたが、デリベリローラとニップローラを設け、デリベリローラとニップローラとが空気紡績装置7から糸Yを引き出してもよい。この場合、デリベリローラとニップローラの下流に糸貯留装置50、スラックチューブ、機械式のコンペンセータの少なくとも何れかが設けられていてもよい。
【0084】
上記実施形態又は変形例では、紡績機1は、機台高さ方向において、上側で供給された糸Yが下側で巻き取られるように各装置が配置されていた。上記の構成に代えて、下側で供給された糸が上側で巻き取られるように各装置が配置されていてもよい。
【0085】
上記実施形態又は変形例では、紡績機1は、ドラフト装置6のボトムローラの少なくとも一つ及びトラバースガイド23が、エンドフレーム5からの動力によって(すなわち、複数の紡績ユニット2共通で)駆動されていた。上記の構成に代えて、紡績ユニット2の各部(例えば、ドラフト装置、紡績装置、巻取装置等)が紡績ユニット2ごとに独立して駆動されてもよい。
【0086】
上記実施形態又は変形例では、糸Yの走行方向において、テンションセンサ9が糸監視装置8の上流側に配置されてもよい。紡績ユニット2において、ワキシング装置12、テンションセンサ9及び糸監視装置8は、省略されてもよい。
【0087】
図1では、紡績機1は、コーン形状のパッケージPを巻き取るように図示されているが、チーズ形状(軸方向で径が等しい形状)のパッケージを巻き取ることも可能である。すなわち、コーン形状のボビンBが用いられる例を挙げて説明したが、チーズ形状のボビンBを用いてもよい。チーズ形状のボビンBにも方向性がある。この場合であっても、ボビン方向転換機構70は、ボビンの軸方向における一方の端部が常に所定の方向を向くような状態で、ボビンを受け渡すことができる。例えば、起立状態に支持されたボビンの上端部が常に左を向くような状態で、ボビンを受け渡すことができる。
【0088】
上記実施形態又は変形例のボビン方向転換機構70は、紡績機に限らず、自動ワインダやオープンエンド紡績機等の他の糸巻取機にも適用することができる。