(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-187838(P2021-187838A)
(43)【公開日】2021年12月13日
(54)【発明の名称】内服液剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/51 20060101AFI20211115BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20211115BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20211115BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20211115BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20211115BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20211115BHJP
【FI】
A61K31/51
A61P3/02 105
A61K9/08
A61K9/06
A61K47/36
A61K47/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2021-72236(P2021-72236)
(22)【出願日】2021年4月22日
(31)【優先権主張番号】特願2020-92113(P2020-92113)
(32)【優先日】2020年5月27日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本間 芳子
(72)【発明者】
【氏名】山地 貴之
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA11
4C076BB01
4C076CC24
4C076DD55Q
4C076EE30Q
4C076FF36
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC83
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA16
4C086MA27
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZC24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩と寒天を含有する内服液剤に、デキストリンを配合した際に生じるビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩の安定性の悪化を抑えた、特に医薬品、医薬部外品の分野に有用な内服液剤を提供する。
【解決手段】a)ビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩、b)寒天、c)デキストリン、及びd)タウリンを含有する内服液剤。好ましくはカロリーが100mLあたり50Kcal以上である。本発明の内服液剤はゲル状の製剤で、パウチ容器に充填されていることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩(フルスルチアミン又はその塩を除く)、b)寒天、c)デキストリン、及びd)タウリンを含有することを特徴とする内服液剤。
【請求項2】
ビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩が、チアミン、ジセチアミン、チアミンジスルフィド、ビスベンチアミン、ビスイブチアミン、ベンフォチアミン、シコチアミン、オクトチアミン、プロスルチアミン、及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の内服液剤。
【請求項3】
カロリーが100mLあたり50Kcal以上である、請求項1又は2に記載の内服液剤。
【請求項4】
デキストリンの含有量が2〜30w/v%である、請求項1〜3のいずれかに記載の内服液剤。
【請求項5】
pHが2.8〜4.6である、請求項1〜4のいずれかにに記載の内服液剤。
【請求項6】
ゲル状である、請求項1〜5のいずれかに記載の内服液剤。
【請求項7】
25℃における粘度が0.1〜30Pa・sである、請求項1〜6のいずれかに記載の内服液剤。
【請求項8】
医薬品、又は医薬部外品である、請求項1〜7のいずれかに記載の内服液剤。
【請求項9】
パウチ容器に充填されている、請求項1〜8のいずれかに記載の内服液剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩を含有する内服液剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩は、疲労回復への効果など、生体に対して様々な薬効が知られており、医薬品、医薬部外品、食品などに広く配合されている。
近年、ビタミンB1などのビタミンの補給を目的とした製剤として、手軽に摂取できるパウチ容器入りのゼリー飲料が生活者に選ばれることが増加している。飲用する場所を選ばずに手軽にエネルギー補給が可能であることや、非常時の食事代替品として期待されていることもパウチタイプのゼリー飲料が選ばれる理由として考えられる。
今までに、ビタミンB1類とカンテンを含有する経口ゼリー剤が報告されている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1では、ビタミンB1類の安定性低下を抑制する技術については何ら言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−231051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、ビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩と寒天を配合した内服液剤に、エネルギー源であるデキストリンを配合したところ、経時的にビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩の安定性が悪化するという知見を得た。
【0005】
したがって、本発明は、ビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩、寒天、及びデキストリンを含有する内服液剤中のビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩の安定性の悪化を抑えた内服液剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、タウリンを配合した場合、寒天とデキストリンを共に配合した際に生じるビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩の経時的な含量の低下を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は
(1)a)ビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩(フルスルチアミン又はその塩を除く)、b)寒天、c)デキストリン、及びd)タウリンを含有することを特徴とする内服液剤、
(2)ビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩が、チアミン、ジセチアミン、チアミンジスルフィド、ビスベンチアミン、ビスイブチアミン、ベンフォチアミン、シコチアミン、オクトチアミン、プロスルチアミン、及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも一種である(1)に記載の内服液剤、
(3)カロリーが100mLあたり50Kcal以上である、(1)又は(2)に記載の内服液剤、
(4)デキストリンの含有量が2〜30w/v% である、(1)〜(3)のいずれかに記載の内服液剤、
(5)pHが2.8〜4.6である、(1)〜(4)のいずれかに記載の内服液剤、
(6)ゲル状である、(1)〜(5)のいずれかに記載の内服液剤、
(7)25℃における粘度が0.1〜30Pa・sである、(1)〜(6)のいずれかに記載の内服液剤
(8)医薬品、又は医薬部外品である、(1)〜(7)のいずれかに記載の内服液剤、
(9)パウチ容器に充填されている、(1)〜(8)のいずれかに記載の内服液剤、である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩、寒天、及びデキストリンを含有する内服液剤において、ビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩の含量低下を抑制した優れた内服液剤を提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に使用するビタミンB1とは、通常可食性のものを指し、具体的にはチアミン及びその塩を挙げることができる。本発明に使用する塩とは硝酸塩、塩酸塩などが挙げられる。本発明に使用するビタミンB1の誘導体とは、ジセチアミン、フルスルチアミン、チアミンジスルフィド、ビスベンチアミン、ビスイブチアミン、ベンフォチアミン、シコチアミン、オクトチアミン、プロスルチアミン及びその塩を挙げることができる。本発明におけるビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩は、特に限定されないが、硝酸チアミンが好ましい。本発明の内服液剤中におけるビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.001〜0.1w/v%、より好ましくは0.002〜0.01w/v%である。
【0010】
本発明における寒天は、テングサなどの紅藻類から得られる天然多糖類である。本発明における寒天は、特に限定されないが、カンテン末が好ましい。また、本発明の内服液剤中における寒天の含有量は特に限定されないが、粘稠性を付与する点から、好ましくは0.05〜1w/v%,より好ましくは0.2〜0.5w/v%である。量が少ないと十分な粘稠性が付与できず、多すぎると内服液剤全体の風味に影響するからである。
【0011】
本発明におけるデキストリンとは、コーンスターチや馬鈴薯デンプンを原料とし、デンプンを化学的あるいは酵素的な方法により低分子化したものである。なお、本発明におけるデキストリンには、難消化性デキストリンは含まれない。本発明のデキストリンとしては、市販品を用いてもよく、例えば、パインデックス#1(松谷化学工業株式会社製)、パインデックス#2(松谷化学工業株式会社製)、サンデック#70FN(三和澱粉工業株式会社製)、サンデック#150(三和澱粉工業株式会社製)等を用いることができる。また、本発明で用いるデキストリンのデキストロース当量は、特に限定されないが、嗜好性の高い風味設計を実現する観点から、好ましくは35以下、より好ましくは1以上15以下である。本発明の内服液剤中におけるデキストリン含有量は、特に限定されないが、カロリーを付与する観点から、好ましくは2〜30w/v%、より好ましくは5〜20w/v%である。量が少ないと十分なカロリーが付与できす、多すぎると内服液剤全体の風味に影響するからである。
【0012】
本発明におけるタウリンは、アミノエチルスルホン酸とも呼ばれる、分子量125.15の単純な化学構造をもつ含硫アミノ酸である。タウリンは化学構造的にはアミノ酸に属するが、タンパク質を構成するアミノ酸とは異なり、ビタミン類やホルモンのような作用、さらには脳神経系、循環系、肝胆系をはじめとして様々な薬理作用を示すことが知られている。本発明のタウリンの含有量は、特に限定されないが、本発明の内服液剤中におけるビタミンB1の含量低下を抑制する効果を付与する観点から、好ましくは0.25〜30w/v%、より好ましくは0.25〜3w/v%、さらに好ましくは0.25〜1.5w/v%である。量が少ないと十分な効果が得られず、多すぎると内服液剤全体の性状に影響するからである。また、タウリンの含有量は、本発明の効果の点からビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩1質量部に対して上限は300質量部未満が好ましく、より好ましい範囲は、ビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩1質量部に対して15〜200質量部である。
【0013】
本発明にかかる内服液剤のpHは、特に限定されず、例えば、2.0〜7.0である。風味の観点からはpH2.8〜4.6であることが好ましく、さらに好ましくはpH3.0〜3.8である。本発明の内服液剤のpH調整は、通常使用されるpH調整剤を使用することができる。具体的なpH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、酢酸、マレイン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、アジピン酸、グルタミン酸、フマル酸等の有機酸及びそれらの塩類、塩酸等の無機酸、水酸化ナトリウムなどの無機塩基等が挙げられる。
【0014】
本発明の内服液剤のカロリーは、100mLあたり50Kcal以上が好ましく、より好ましくは60Kcal以上であり、80Kcal〜130Kcalがさらに好ましい。
【0015】
本発明の内服液剤は液状又はゲル状の内服液剤が好ましく、より好ましくは、流動性のある粘稠なゲル状の製剤である。本発明の内服液剤には、本発明の寒天以外に粘稠剤(又は増粘剤)として、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナンなどが含まれてもよい。
【0016】
本発明の内服液剤の粘度は、服用性の観点から測定時の試料温度25℃で0.1〜30Pa・sの範囲が好ましい。本発明の内服液剤の粘度は、東機産業株式会社の回転粘度計(TVB-10M)で、測定時の試料温度25℃、ローター名称M3、回転数6rpm(20Pa・s以下のとき)または3rpm(20Pa・sを超えるとき)、測定時間60秒の条件で測定される。
【0017】
本発明の内服液剤にはその他の成分として、他のビタミン類、ミネラル類、アミノ酸及びその塩類、他の生薬や生薬抽出物などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0018】
さらに必要に応じて、酸味料、酸化防止剤、着色剤、香料、矯味剤、甘味料、保存料、調味料、苦味料、強化剤、可溶化剤、乳化剤、増粘剤などの添加物を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0019】
本発明の内服液剤は、ドリンク剤などの医薬品や医薬部外品などの各種製剤、健康飲料、清涼飲料などの各種飲料に適用することができ、特に医薬品、医薬部外品に有用である。
【0020】
本発明の内服液剤は、容器に充填されていることが好ましい。容器としては、パウチ容器、ビン、缶、PETボトルなどが挙げられ、好ましくはパウチ容器である。パウチ容器としては、ガゼットパウチ、スタンディングパウチ、レトルトパウチなどを使用することができ、好ましくはガゼットパウチ、スタンディングパウチ、さらに好ましくはスパウト付きガゼットパウチ、スパウト付きスタンドパウチが挙げられる。
【0021】
本発明の内服液剤は、常法により調製することができ、その方法は特に限定されるものではない。通常、各成分をとり適量の精製水で溶解した後、pHを調整し、残りの精製水を加えて容量調製し、必要に応じてろ過、殺菌処理し、容器に充填する工程により製造することができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるも
のではない。なお、デキストリンはパインデックス#1(松谷化学工業株式会社製)を使用した。
【0023】
(実施例1、比較例1〜2)
表1に示す組成に従い、成分を精製水に溶解させ、殺菌を行い、スパウト付きガゼットパウチに充填し、内服液剤を得た。なお、表1中のカロリーは計算値である。また、表1中の粘度は以下の通り測定した値である。内服液剤を容器から全量出して温度を25℃に調整し、東機産業株式会社の回転粘度計(TVB-10M)で、ローター名称M3、回転数6rpm、測定時間60秒の条件で測定した。
【0024】
【表1】
【0025】
試験例1:ビタミンB1の安定性試験
表1の比較例1〜2、及び実施例1の内服液剤を85℃で40時間保存した時のビタミンB1の安定性を調べた。ビタミンB1残存率は、HPLC(液体クロマトグラフィー)法でビタミンB1の残存量を測定することで求めた。結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
表2から明らかなように、カンテン末を配合した比較例1の処方にデキストリンを配合すると、ビタミンB1の安定性は低下した(比較例1及び2)。タウリンを配合するとビタミンB1の安定性低下を抑制できることが明らかとなった(実施例1)。
(実施例2〜4、比較例3〜8)
表3及び表4に示す組成に従い、成分を精製水に溶解させ、殺菌を行い、スパウト付きガゼットパウチに充填し、内服液剤を得た。なお、表3及び表4中のカロリーは計算値である。また、表3及び表4中の粘度は以下の通り測定した値である。内服液剤を容器から全量出して温度を25℃に調整し、東機産業株式会社の回転粘度計(TVB-10M)で、ローター名称M3、回転数6rpm(20Pa・s以下のとき)または3rpm(20Pa・sを超えるとき)、測定時間60秒の条件で測定した。
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
試験例1に従い、表3の比較例3〜4、実施例2、表4の比較例5〜6及び実施例3の内服液剤について、85℃で40時間保存した時のビタミンB1の安定性を調べた。また、表4の比較例7〜8及び実施例4の内服液剤を85℃で24時間保存した時のビタミンB1の安定性を調べた。ビタミンB1残存率は、HPLC(液体クロマトグラフィー)法でビタミンB1の残存量を測定することで求めた。結果を表5、表6及び表7に示す。
【0031】
【表5】
【0032】
【表6】
【0033】
【表7】
【0034】
表5、表6及び表7から明らかなように、カンテン末を配合した比較例3、比較例5及び比較例7の処方にそれぞれデキストリンを配合すると、ビタミンB1の残存率は低下した(比較例3及び4、比較例5及び6、比較例7及び8)。ビタミンB1の残存率が低下した比較例4、比較例6及び比較例8にそれぞれタウリンを配合するとビタミンB1の残存率低下を抑制できることが明らかとなった(実施例2〜4)。
以上より、寒天とデキストリン含有する内服液剤中ではビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩の安定性が低下し、タウリンを配合するとビタミンB1又はそれらの塩の安定性を改善できることが明らかとなった。
【0035】
(製剤例1)
【0036】
【表8】
【0037】
製剤例1の内服液剤を、容量100mLのスパウト付きガゼットパウチに充填する。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によりビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩の安定性が改善された内服液剤を得ることができ、保管性、携帯性に優れた医薬品、医薬部外品、食品、健康飲料、特定保健用食品などに使用可能である。