【課題】 粉末の発生量が多い錠剤であっても連続生産性が良好であり、定着性も良好な錠剤用インクジェットインクを提供する。なかでも、乾燥性の高い溶剤系のインクジェットインク、特に、水分量の少ない又は実質的に水分を含まないインク組成であっても、粉立ちの多い錠剤に対し、ドロップオンデマンド(DOD)方式インクジェットプリンタにより連続的に印字を行うのに適した錠剤用インクジェットインクを提供する。
前記セラックとポリビニルピロリドンの配合比が、重量基準で、セラック/ポリビニルピロリドン=0.2/1〜20/1である、請求項1に記載の錠剤用インクジェットインク。
前記顔料が、酸化チタン、酸化鉄、炭末色素、カーボンブラック及び食用色素のアルミニウムレーキから選択される少なくとも1種である、請求項1から5までのいずれかに記載の錠剤用インクジェットインク。
【背景技術】
【0002】
食品の表面、食品を包む包装材料、食品と接触する機会のある材料などに生産地・生産者・生産履歴等の表示を行ったり、賞味期限・製造日等の表示を行ったりすることで、安全性の確認が行え、商品への安心感や信頼性を得ることができる。
また、医薬品の錠剤にも製品名や有効成分の含有量を直接印字することで、一目で医薬品を識別することができるため、医療機関における調剤ミスや取り違えを防止することができ、医療事故を防ぐことも可能となる。
上記のような表示を行うための手段として、インクジェットインクによる印字が検討・提案されている。
インクジェットプリンタを用いて上記のような表示を行うためには、前提として、可食性のインク材料を用いることが求められるという制約もあって、種々の困難を生じる。特に、粉立ちの多い錠剤に対し、DOD方式により連続的に印字する場合は、可食性材料という制約に加え、対象錠剤へのインクの定着性を確保しつつ、錠剤から発生した粉末による連続印字安定性の低下を回避する必要がある。
【0003】
しかし、上記のような課題、すなわち、粉立ちの多い錠剤へのDOD方式による連続印字に特有の課題に焦点を当てた検討・提案は従来行われていなかった。
例えば、特許文献1に記載のインクジェットインクは、可食材料としてセラックをインク材料に含み、インクジェットプリンタにおける吐出安定性を向上させるため、セラックの再溶解性を向上させている。このインクを用いて、粉立ちの多い錠剤へのDOD方式による連続印字を行う場合、錠剤への定着性は良好なものの、錠剤から発生した粉末を巻き込んだ形でインクがノズル面に付着・乾燥すると、ノズル孔が閉塞し、印字品質を悪化させてしまう恐れがある。すなわち、再溶解性に優れるインク組成ではあるものの、速乾性に優れるがゆえに、錠剤粉末とともにノズル面に付着したインクが乾燥しやすくなり、特に連続印字を行う場合、徐々に付着物が蓄積し、インク塊の再溶解が追い付かなくなる。また、特許文献1では、分散剤としてヒドロキシプロピルセルロースを使用した実施例が記載されているが、ヒドロキシプロピルセルロースは比較的再溶解性が良好ではないため、連続印字安定性の低下の一因となっていると考えられる。
【0004】
可食樹脂としてポリビニルピロリドンを使用した可食インクも知られている(例えば、特許文献2,3参照)。これらのインクは、再溶解性に優れており、吐出安定性に優れるが、水性インクであり、錠剤印字時の定着性に劣るものであった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明にかかる錠剤用インクジェットインクについて詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
【0010】
〔錠剤用インクジェットインク〕
本発明のインクジェットインクは、錠剤への印字に使用される錠剤用インクジェットインクである。特に粉立ちの多い錠剤への使用に適しており、粉立ちの多い錠剤に対しても、優れた定着性を発揮しつつ、安定的な連続印字を行うことができる。
粉立ちの多い錠剤としては、例えば、口腔内崩壊錠(OD錠)や素錠などが挙げられる。また、乳糖、D−マンニトールなどの糖アルコール、アスパルテームなどの甘味料、軽質無水ケイ酸、微粒二酸化ケイ素、酸化マグネシウムなどの無機賦形剤などの低分子量の賦形剤を主要な賦形剤として用いた錠剤では、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの高分子量の賦形剤を用いた錠剤に比べて、粉立ちが多い。
【0011】
上記の如き用途に適した本発明のインクジェットインク(以下、単に「インク」という場合がある。)は、エタノール及び湿潤剤を含む溶剤、顔料、セラック並びにポリビニルピロリドンを含む。以下、各成分について説明する。
【0012】
<セラック>
セラックは、ラックカイガラ虫由来の樹脂状物質を精製して得た可食性樹脂であり、多種類の樹脂酸およびそのエステル化物、ワックス、色素等の混合物とされていて、エタノール可溶性タイプのものが特に好ましく用いられる。
インクジェットインクにおいては、セラックのなかでも、ワックスや色素分が予め除去された精製セラックや、更に、漂白処理された白色セラックが用いられている。
本発明においても、白色セラック又は精製セラックを用いることが好ましく、特に、後述のように、アルカリ処理された精製セラックを用いることが好ましい。
【0013】
白色セラック、精製セラックは、一般に、次のようにして作製されたものをいう。
すなわち、白色セラックは、ラックカイガラ虫由来の樹脂状物質を炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液に溶解させたあと、夾雑物を取り除き、次亜塩素酸ナトリウム等の漂白剤で漂白した後、酸の希薄溶液を添加して樹脂を析出させて作製される。さらに夾雑物を取り除いた後、脱ロウ工程によりワックス分を除去されることもある。
精製セラックは、上記白色セラックの作製工程において、次亜塩素酸ナトリウム等の漂白剤による処理を経ずに作製される。また、ラックカイガラ虫由来の樹脂状物質をアルコールに溶解させ、不溶解物を除去した後、溶媒を揮発させることで析出させることでも作製される。このとき、セラックのアルコール溶液を活性炭等を通過させて脱色処理されることもある。
白色セラック及び精製セラックはいずれも日本薬局方及び食品添加物公定書に収載されている。
【0014】
本発明において、白色セラックを用いる場合、脱塩素処理されたものを用いることが好ましい。これにより、塩素濃度を低減させることで、インクの金属腐食耐性を向上させることができる。
脱塩素処理としては、例えば、イオン交換樹脂や限外濾過による処理などが挙げられる。
具体的には、例えば、白色セラック溶液を、OH−型強塩基性陰イオン交換樹脂または活性炭を充填したカラムに通過させる方法が好ましく挙げられる。
上記において、白色セラック溶液の溶媒として、エタノールを用いることで、処理後のエタノール溶液をそのままインクの作製に用いることができる。
【0015】
本発明において、精製セラックを用いる場合、アルカリ処理されたものを用いることが好ましい。
ここで、本発明において、アルカリ処理は、精製セラックにアルカリを作用させることを意味する。
具体的な方法としては、例えば、精製セラック溶液にアルカリを添加する方法や、精製セラック溶液を、OH−型強塩基性陰イオン交換樹脂を充填したカラムに通過させる方法などが挙げられる。
上記において、精製セラック溶液の溶媒として、エタノールを用いることで、処理後のエタノール溶液をそのままインクの作製に用いることができる。
【0016】
特に、精製セラックのエタノール溶液にアルカリを添加して、加温する方法が好ましい。
この場合、アルカリ処理を行う際の精製セラック−エタノール溶液の濃度としては、特に限定するわけではないが、例えば、10〜90重量%が好ましい。
アルカリの種類としては、特に限定するわけではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、L−アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、コハク酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、L−アルギニン、L−リシン、L−ヒスチジン、アンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、ピロリン酸ナトリウムなどが挙げられる。
アルカリの添加量としては、特に限定するわけではないが、例えば、精製セラック100重量部に対し、1〜50重量部が好ましい。
また、加温の温度条件としては、特に限定するわけではないが、例えば、30〜60℃が好ましい。
加温の時間としては、特に限定するわけではないが、例えば、1週間〜6ヶ月が好ましい。
【0017】
セラックは本発明のインクにおいて錠剤へのインクの密着性や、印字後のインクの強度を付与するための接着用の樹脂(バインダー)として機能する。これにより、印字後の錠剤を擦ったり、それが水に浸漬したりしても、記録したインクの剥がれや溶出を極力抑え、耐摩擦性や耐水性を持たせることができる。
【0018】
上記のようなセラックの添加効果の観点から、前記セラックの配合量は、インク全量に対して、1〜25重量%の割合であることが好ましく、5〜17重量%の割合であることがより好ましい。
【0019】
<ポリビニルピロリドン>
ポリビニルピロリドン(以下、「PVP」と略記することがある。)は、顔料の分散性、定着性に優れており、また、エタノールに良好な溶解性を示すため、乾燥性の良好なインクとすることができ、錠剤表面での迅速な乾燥を行うことができるとともに、再溶解性の高いインクを得ることができる。
PVPの重量平均分子量としては、例えば、5000〜100000が好ましく、10000〜50000であることがより好ましい。
PVPの重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミッションクロマトグラフィー)に光散乱検出器を組み合わせたGPC−光分散法による測定値とする。溶離液として、DMF(ジメチルホルムアミド)を用い、標準物質として、ポリエチレングリコールを用いる。
【0020】
上記のようなPVPの添加効果の観点から、前記PVPの配合量は、インク全量に対して、0.01〜10重量%の割合であることが好ましく、0.05〜5重量%の割合であることがより好ましい。
PVPの使用量を少量に抑えることで、ノズルでのインク閉塞や、印字停止後の再吐出における初期のドット不吐出といった問題を生じ難くすることができる。
【0021】
<溶剤>
本発明では、溶剤成分としてエタノールを用いる。
エタノールは、インク塗膜の定着性を向上させるセラックを溶解させ、さらに錠剤上のインク塗膜の乾燥速度を向上させる。錠剤という用途上、食品用の発酵エタノール又は変性エタノールを用いることが好ましい。
【0022】
溶剤には、また、湿潤剤が含まれる。この湿潤剤は、インクの乾燥性の調整、インク粘度の調整等の役目をなす。また、浸透性を調整する効果も有する。
このような湿潤剤は、インク全体の1〜10重量%の範囲で用いると、錠剤への適度な浸透、乾燥の調整が可能となる。
湿潤剤としてはプロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等、水よりも沸点が高く、かつ人体へ経口摂取されても問題ない水溶性の有機溶剤を用いることができ、特に、プロピレングリコールは、乾燥性の適度な調整が可能であり、好ましい。
【0023】
溶剤成分としては、水を含有しても良い。
ただし、一般に、水を多く含む液体に顔料となる粉体を分散させると、顔料を微細に粉砕する効率が高くなり、さらに顔料の分散安定性が得られる一方で、インクの乾燥性は低下する。また、水は、金属腐食の原因となり得る。
本発明は、乾燥性の高い溶剤系のインクジェットインク、特に、水分量の少ない又は実質的に水分を含まないインク組成であっても、顔料の分散安定性に優れ、粉立ちの多い錠剤に対し、ドロップオンデマンド(DOD)方式インクジェットプリンタにより連続的に印字を行うことができるので、水分量の少ない溶剤系のインク処方において、特に好適である。
具体的には、例えば、水の含有割合をインク全量に対して20重量%以下とすることができ、より少なく、例えば、10重量%以下としてもよく、5重量%以下としてもよい。さらに、インク調製の際に水を配合せず、実質的に水分を含まないインク組成としても良い。
【0024】
前記溶剤の配合量は、特に限定するわけではないが、インク全量に対して、60〜95重量%の割合であることが好ましく、70〜90重量%の割合であることがより好ましい。
【0025】
<顔料>
本発明のインクは、基本的に、可食性インクとしての適用を想定したものであるから、当該インクに用いる顔料としても、可食性の顔料を用いることを想定している。例えば、食品添加物として認められているもの、又は、薬事法に準拠した顔料を用いる。このような顔料としては、酸化チタン、食用色素のアルミニウムレーキ、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、カーボンブラック、炭末色素、イカスミ等が挙げられる。とりわけ、炭末色素としては、備長炭、竹炭、活性炭等を粉砕したものを用いることができる。
これらの顔料は、平均粒子径が0.01〜10μmのものが好ましい。例えば、顔料の平均粒子径が10μmよりも大きいと、分散処理に時間がかかる、又は、安定に分散しにくくなるなどの問題が生じる恐れがある。とりわけ、分散処理では熱を発生し、分散処理を長時間行うと過剰に熱の影響を受けて、顔料を分散させるための高分子分散剤の特性を変えてしまう恐れがある。
【0026】
本発明のインクに含まれる顔料の量は、他の成分の含有重量部と関連するが、インク全量を100重量部とするとき、0.1〜20重量部の範囲で含まれることが好ましい。さらに好ましくは、1〜10重量部、最も好ましくは、0.5〜5重量部である。顔料の含有量が0.1重量部より少ないと、印字した時のインクの濃度が不十分となる恐れがある。逆に、顔料の含有量が20重量部を越えると、顔料の分散性が低下し、流動性も低下するため、インクジェット装置で長時間連続して印字することができなくなる恐れがある。
【0027】
<セラックとポリビニルピロリドンの配合比>
本発明では、セラックとポリビニルピロリドンを併用することを特徴の一つとしている。
その好ましい配合比は、重量基準で、セラック/ポリビニルピロリドン=0.2/1〜20/1であり、より好ましくはセラック/ポリビニルピロリドン=1/1〜10/1であり、さらに好ましくはセラック/ポリビニルピロリドン=2/1〜10/1である。ポリビニルピロリドンの割合が多くなると、連続印字性能には影響はないものの、錠剤への定着性が低下するおそれがある。
【0028】
<インクの作製方法>
本発明のインクは、特に限定するわけではないが、例えば、以下のようにして作製することが好ましい。
すなわち、まず、ポリビニルピロリドンをエタノールに溶解させたポリビニルピロリドン溶液に顔料を分散させて顔料分散体を作製する。
【0029】
ポリビニルピロリドン溶液に顔料を混合して顔料分散体を作製するための分散機としては、メディアレスの分散機を用いることもできるし、分散メディアを用いるビーズミルを用いることもできる。
メディアレス分散機としては、マイクロフルイダイザー(商品名)、ナノマイザー(商品名)、スターバースト(登録商標)などが挙げられる。
【0030】
上記顔料分散体とは別に、白色セラック溶液又は精製セラック溶液を調製する。
そして、白色セラック溶液又は精製セラック溶液に脱塩素処理又はアルカリ処理を施す。
【0031】
白色セラック溶液の脱塩素処理や、精製セラック溶液のアルカリ処理については、既に上述したことと共通するので、ここでは説明を割愛する。
【0032】
次いで、上記顔料分散体と、上記セラック溶液と、プロピレングリコールなどの湿潤剤とを、適宜、水、エタノールやその他のインキ材料も加えて、撹拌混合することで、本発明のインクが作製できる。
【0033】
なお、インクに含まれる樹脂の溶解性や安定性を調整するなどのために、上記いずれかの工程において、pH調整剤を加えることもできる。酸性への調整には、酢酸、クエン酸等、アルカリ性への調整には、炭酸アンモニウム等が例示できる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を用いて、本発明にかかるインクについて、さらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0035】
〔実施例1〕
エタノール17重量部に、PVP(重量平均分子量25800)2重量部を溶解させ、そこに、植物炭末色素1重量部を混合し、横型サンドミル(ウィリー・エ・バッコーフェン社製のダイノーミルマルチラボ)にて周速12m/secで2時間分散処理して分散体1を作製した。
次に、精製セラック25重量部をエタノール75重量部に溶解させ、この溶液に水酸化ナトリウムを1重量部添加後、40℃で1ヶ月間インキュベートし、25重量%精製セラック−エタノール溶液を得た。
続いて、分散体1を20重量部、別途調製した20重量%PVP−エタノール溶液を5重量部、上記25重量%精製セラック−エタノール溶液を60重量部、エタノールを5重量部、プロピレングリコールを10重量部の割合でガラス製のビーカーに入れ、ステンレス製のプロペラで撹拌混合した後、ろ過精度1μmのフィルタでろ過し、ドロップオンデマンド用のインクを作製した。
【0036】
〔実施例2〜10〕
実施例1と同様にして、下表1に示す処方で分散体1〜5を作製し、これらの分散体を用いて下表2に示す処方で実施例2〜10に係るインクを作製した。
なお、実施例3で用いた25重量%白色セラック−エタノール溶液については、以下のようにして調製したものを用いた。
すなわち、白色セラック25重量部をエタノール75重量部に溶解させ、この溶液をOH−型強塩基性陰イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製のアンバーライトIRA400Jに1N NaOHを通薬してOH−型に再生したもの)が充填されたカラムに通過させることにより塩素を除去することにより、調製した。
【0037】
〔比較例1〜4〕
実施例1と同様にして、下表1に示す処方で分散体1,6,7を作製し、これらの分散体を用いて下表3に示す処方で比較例1〜4に係るインクを作製した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
表1〜3中で、処方を示す数値は重量部を表している。
【0042】
〔インクの評価〕
上記実施例・比較例の各インクについて、次の通り、物性を測定、評価した。評価結果は、上記表2,3に併記した。
【0043】
<インクの物性>
平均粒子径は、日機装株式会社製の粒度分布計(UPA型)を用いてインクジェットインク中の顔料のメジアン径(d50)を測定した。
粘度(20℃、mPa・s)は、TOKI産業社製の粘度計(EHコーン型)を用いて測定した。
【0044】
<再溶解性(再分散性)>
インク1gをガラスプレートに塗布し、1分間常温にて乾燥させた後、エタノール1mLを滴下したときのインク乾燥塗膜の溶解に要する時間で再溶解性を評価した。
◎:1秒未満
○:1秒以上5秒未満
△:5秒以上10秒未満
×:10秒以上
【0045】
<定着性>
酸化マグネシウムを主要な賦形剤とするOD錠にドロップオンデマンド式インクジェットプリンタ(紀州技研工業社製の試作品)にて印字後、10秒経過したものに対して、指の腹で擦り、指へのインクの付着の程度、印字塗膜の剥離の有無を以下の基準で評価した。
◎:全く剥離無し。指にもインクが付着しない。
○:印字の剥離はないが、指に若干のインクが付着する。
△:若干剥離するが、印字の判読が可能である。
×:印字が完全に剥離し、判読不可能である。
【0046】
<連続吐出安定性>
ドロップオンデマンド式インクジェットプリンタ(紀州技研工業社製の試作品)にて酸化マグネシウムを主要な賦形剤とするOD錠に対して、間隔を空けずに連続で印字し続ける際、印字かすれが発生するまでの時間により評価した。
◎:60分以上、印字かすれが発生しない。
○:30分以上60分未満で印字かすれが発生する。
△:15分以上30分未満で印字かすれが発生する。
×:15分未満で印字かすれが発生する。
【0047】
<間欠吐出安定性>
ドロップオンデマンド式インクジェットプリンタ(紀州技研工業社製の試作品)にて酸化マグネシウムを主要な賦形剤とするOD錠に対して、5分間隔で印字する際、間隔を空けた直後の印字の状態を目視により評価した。
◎:印字かすれがなく、視認性が良好。
○:若干印字かすれが生じるが、判読可能。
×:印字かすれが生じ、判読不可能。
【0048】
<耐湿性>
酸化マグネシウムを主要な賦形剤とするOD錠にドロップオンデマンド式インクジェットプリンタ(紀州技研工業社製の試作品)にて印字したものを40℃、湿度75%の環境に1ヶ月間放置したときの印字のにじみの有無を目視により評価した。
◎:にじみは全くなし。
○:若干にじみはあるが、判読可能。
×:にじみが顕著に発生し、判読不可能な状態。
【0049】
<耐水性>
ドロップオンデマンド式インクジェットプリンタ(紀州技研工業社製の試作品)にて天ぷら油の濾過用の紙に印字した記録対象物の印字面を水で湿らせたときのインクの溶け出しの有無、水の着色及び印字面を拭ったティッシュペーパーへの着色により確認し、以下の基準で評価した。
◎:水及びティッシュペーパーが全く着色しない。
○:若干、水及びティッシュペーパーが着色するが、印字の判読が可能である。
×:印字が完全に消失し、判読不可能である。
【0050】
<金属腐食耐性>
インクをプリントヘッドに充填し、40℃環境で1か月間放置した後、金属部品に腐食があるかどうかを目視により評価した。
◎:腐食なし。
○:一部腐食は見られるが、使用可能。
△:50%以上の腐食が見られ、部分的に使用可能。
×:全体的に腐食が見られ、使用不可能。