【実施例】
【0028】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において%は特に断らない限り質量%を示す。
〔実施例1〕
<ソーダ蒸解>
2.4L容の回転型オートクレーブに絶乾重量300gのユーカリグロブラスのチップを入れ、水酸化ナトリウム25%(対チップ重量)、液比3L/kgとなるように水酸化ナトリウムを水に混合した蒸解薬液に、テトラヒドロアントラキノン(1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンジナトリウム、川崎化成工業株式会社製、商品名:SAQ)を0.02%(対チップ重量)となるよう添加して、160℃、Hファクター=500でソーダ蒸解を行い、黒液を得た。黒液に含まれるキシランを定量したところ2.2%であった。
<工程a)>
黒液をビーカーに入れ、80℃に予熱した後、二酸化炭素0.3MPaで加圧した耐圧容器内で撹拌しながら、30分処理し、pH7.5に調整した。ガラスフィルター(GS−25、ADVANTEC社製)を用いて吸引脱水し、リグニン沈殿物Aを分離した。
<工程b)>
リグニン沈殿物Aに黒液の半量の水を加えて、再度スラリー化し、スラリーに硫酸を加えpHを2に調整した。スラリー(固形分濃度:約10%)を80℃に予熱した。
<工程c)>
ガラスフィルター(GS−25、ADVANTEC社製)を用いて吸引脱水し、固液分離した後、ガラスフィルター上に残った固形分を黒液の半量の熱水(80℃)で洗浄し、リグニン沈殿物Cを得た。
〔実施例2〕
<ソーダ蒸解>
2.4L容の回転型オートクレーブに絶乾重量300gのユーカリグロブラスのチップを入れ、水酸化ナトリウム30%(対チップ重量)、液比3L/kgとなるように水酸化ナトリウムを水に混合した蒸解薬液に、テトラヒドロアントラキノン(1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンジナトリウム、川崎化成工業株式会社製、商品名:SAQ)を0.02%(対チップ重量)となるよう添加して、160℃、Hファクター=500でソーダ蒸解を行い、黒液を得た。黒液に含まれるキシランを定量したところ2.7%であった。
<工程a)>
黒液をビーカーに入れ、80℃に予熱した後、二酸化炭素0.3MPaで加圧した耐圧容器内で撹拌しながら、30分処理し、pH7.5に調整した。ガラスフィルター(GS−25、ADVANTEC社製)を用いて吸引脱水し、リグニン沈殿物Aを分離した。
<工程b)>
リグニン沈殿物Aに黒液の半量の水を加えて、再度スラリー化し、スラリーに硫酸を加えpHを2に調整した。スラリー(固形分濃度:約10%)を80℃に予熱した。
<工程c)>
ガラスフィルター(GS−25、ADVANTEC社製)を用いて吸引脱水し、固液分離した後、ガラスフィルター上に残った固形分を黒液の半量の熱水(80℃)で洗浄し、リグニン沈殿物Cを得た。
〔実施例3〕
<ソーダ蒸解>
2.4L容の回転型オートクレーブに絶乾重量300gのユーカリグロブラスのチップを入れ、水酸化ナトリウム20%(対チップ重量)、液比3L/kgとなるように水酸化ナトリウムを水に混合した蒸解薬液に、テトラヒドロアントラキノン(1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンジナトリウム、川崎化成工業株式会社製、商品名:SAQ)を0.02%(対チップ重量)となるよう添加して、160℃、Hファクター=900でソーダ蒸解を行い、黒液を得た。黒液に含まれるキシランを定量したところ0.67%であった。
<工程a)>
黒液をビーカーに入れ、60℃に予熱した後、二酸化炭素0.3MPaで加圧した耐圧容器内で撹拌しながら、30分処理し、pH7.5に調整した。ガラスフィルター(GS−25、ADVANTEC社製)を用いて吸引脱水し、リグニン沈殿物Aを分離した。
<工程b)>
リグニン沈殿物Aに黒液の半量の水を加えて、再度スラリー化し、スラリーに硫酸を加えpHを2に調整した。スラリー(固形分濃度:約10%)を60℃に予熱した。
<工程c)>
ガラスフィルター(GS−25、ADVANTEC社製)を用いて吸引脱水し、固液分離した後、ガラスフィルター上に残った固形分を黒液の半量の熱水(60℃)で洗浄し、リグニン沈殿物Cを得た。
〔実施例4〕
<ソーダ蒸解>
2.4L容の回転型オートクレーブに絶乾重量300gのユーカリグロブラスのチップを入れ、水酸化ナトリウム20%(対チップ重量)、液比3L/kgとなるように水酸化ナトリウムを水に混合した蒸解薬液に、テトラヒドロアントラキノン(1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンジナトリウム、川崎化成工業株式会社製、商品名:SAQ)を0.02%(対チップ重量)となるよう添加して、160℃、Hファクター=700でソーダ蒸解を行い、黒液を得た。黒液に含まれるキシランを定量したところ1.0%であった。
<工程a)>
黒液をビーカーに入れ、60℃に予熱した後、二酸化炭素0.3MPaで加圧した耐圧容器内で撹拌しながら、30分処理し、pH7.5に調整した。ガラスフィルター(GS−25、ADVANTEC社製)を用いて吸引脱水し、リグニン沈殿物Aを分離した。
<工程b)>
リグニン沈殿物Aに黒液の半量の水を加えて、再度スラリー化し、スラリーに硫酸を加えpHを2に調整した。スラリー(固形分濃度:約10%)を60℃に予熱した。
<工程c)>
ガラスフィルター(GS−25、ADVANTEC社製)を用いて吸引脱水し、固液分離した後、ガラスフィルター上に残った固形分を黒液の半量の熱水(60℃)で洗浄し、リグニン沈殿物Cを得た。
〔実施例5〕
<ソーダ蒸解>
ユーカリグロブラスチップ100kg(絶乾)を入れた回転式反応釜に、水酸化ナトリウム21kgおよびテトラヒドロアントラキノン(1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンジナトリウム、川崎化成工業株式会社製、商品名:SAQ)20gを添加した。次に回転させながら蒸気を吹き込んで160℃に昇温して2時間反応させた。反応後にろ別して黒液を得た。黒液に含まれるキシランを定量した結果、0.50%であった。
<工程a)>
ソーダ蒸解から得られた黒液112L(固形分濃度22.8%)を、容量300Lの反応槽に仕込んで55℃に加温した。次に炭酸ガスを1分間当たり0.03kgの速度でpHが8.0になるまで反応槽へ導入した。沈殿したリグニンは、フィルタープレス(Lab Pressure Filter VPA 04, Metso社製)に供して脱水した。フィルタークロスはポリプロピレン製平織のP28(薮田産業製、透気度1.0cm
3/cm
2/秒)を使用した。得られたリグニンは11.8kg(ドライ換算で5.6kg)であった。
<工程b)>
工程a)で得られたケーキ状のリグニン沈殿物11.8kg(ドライ換算5.6kg))に水25.5kgを添加し、反応槽内で攪拌して50℃に調整しながら懸濁し、続いて送液ポンプを用いて0.1kg/分の添加速度で8N硫酸(高杉製薬(株))を反応槽内に添加した。この時、懸濁液のpHをモニターしつつpHが2.0になったところで硫酸の添加を停止した。硫酸の添加量は3.7kgであった。その後、攪拌を1時間継続し、リグニンを沈殿させた。
<工程c)>
工程b)で沈殿させたケーキ状のリグニンを工程a)と同様にしてフィルタープレスに供して脱水した。フィルタークロスはポリプロピレン製平織のP28(薮田産業製、透気度1.0cm
3/cm
2/秒)を使用した。次にフィルタープレス内に脱水されたケーキ状のリグニンを保持させたままで工業用水(pH7.2)を通水することで洗浄を実施した。洗浄の終点は洗浄ろ液の電気伝導度が0.2S/m以下になる点とした。電気伝導度およびpHは、ポータブル型pH・ORP・電気伝導率メータD−74(HORIBA製)で測定した。
【0029】
次にフィルタープレスのろ室を7.5barに加圧、引き続いてろ室に空気を導入してリグニンから水分を可能な限り脱水し、リグニンを6.2kg(ドライ換算2.9kg)を得た。得られたリグニンを蛍光X線分析装置EDX−8000(島津製作所製)に供してNa濃度を定量した。その結果、Na含量は検出限界以下であった。
〔比較例1〕
<工程a)>
【0030】
実施例3のソーダ蒸解黒液蒸解で得た黒液をビーカーに入れ、80℃に予熱した後、二酸化炭素0.3MPaで加圧した耐圧容器内で撹拌しながら、30分処理し、pH7.5に調整した。処理後の黒液をガラスフィルター(GS−25、ADVANTEC社製)に移し替えたところ、内容物は粘凋な性状を示し、リグニン沈殿物Aを得ることはできなかった。
〔比較例2〕
<工程a)>
【0031】
実施例4のソーダ蒸解黒液蒸解で得た黒液をビーカーに入れ、80℃に予熱した後、二酸化炭素0.3MPaで加圧した耐圧容器内で撹拌しながら、30分処理し、pH7.5に調整した。処理後の黒液をガラスフィルター(GS−25、ADVANTEC社製)に移し替えたところ、内容物は粘凋な性状を示し、リグニン沈殿物Aを得ることはできなかった。
【0032】
<黒液に含まれるキシランの定量>
黒液を乾燥器内で105℃、24時間処理して水分を除去した。得られた水分除去後の黒液由来固形分を粉砕して300mgを秤量し、72%硫酸3mlとともに30℃で1時間反応させた。次に硫酸濃度が4%になるよう希釈し、さらに121℃で1時間加熱し、加水分解反応によって単糖溶液を得た。得られた溶液を適宜希釈し、イオンクロマトグラフィー(Dionex社製DX−500、カラム:AS−7、溶離液:水、流速1.1ml/min)にて単糖を定量した。酸加水分解溶液に含まれるキシロース量から、下式によって黒液のキシラン含量を求めた。
キシラン含量(%)=キシロース量(mg)×0.88×[黒液固形分(%)/300]