【課題】 ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数9〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂を含むレーザー溶着用光透過性樹脂組成物であって、波長700〜800nmにおける光線透過率が低く、かつ、波長1070nm付近における光線透過率が高いレーザー溶着用光透過性樹脂組成物、ならびに、成形品、キット、成形品の製造方法、車載カメラ部品、および、車載カメラの提供。
【解決手段】 上記特定のポリアミド樹脂100質量部に対し、強化フィラー10〜120質量部と、ペリレン骨格を有する光透過性色素を0.1〜1.0質量部と、ヨウ化銅、ヨウ化カリウムおよび酸化セリウムの少なくとも1種とを含む、レーザー溶着用光透過性樹脂組成物。
ポリアミド樹脂100質量部に対し、強化フィラー10〜120質量部と、ペリレン骨格を有する光透過性色素を0.1〜1.0質量部と、ヨウ化銅、ヨウ化カリウムおよび酸化セリウムの少なくとも1種とを含み、
前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数9〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、レーザー溶着用光透過性樹脂組成物。
前記キシリレンジアミンが、50〜90モル%のメタキシリレンジアミンと10〜50モル%のパラキシリレンジアミンとを含み、かつ、前記炭素数9〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸が、セバシン酸を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
前記樹脂組成物を1.0mmの厚さの試験片に成形したときの、波長750nmにおける光線透過率が5%以下であり、波長1070nmにおける光線透過率が20%以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
前記ペリレン骨格を有する光透過性色素の含有量が、前記ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.1〜0.5質量部である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
前記ペリレン骨格を有する光透過性色素の含有量が、前記ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.15〜0.8質量部である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形品と、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含む光吸収性樹脂組成物から形成された成形品を、レーザー溶着させることを含む、成形品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
なお、本明細書における「質量部」とは成分の相対量を示し、「質量%」とは成分の絶対量を示す。
本明細書で示す規格が年度によって、測定方法等が異なる場合、特に述べない限り、2020年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0011】
本実施形態のレーザー溶着用光透過性樹脂組成物(以下、単に、「本実施形態の樹脂組成物」と言うことがある)は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、強化フィラー10〜120質量部と、ペリレン骨格を有する光透過性色素を0.1〜1.0質量部と、ヨウ化銅、ヨウ化カリウムおよび酸化セリウムの少なくとも1種とを含み、前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数9〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来することを特徴とする。
このような構成とすることにより、波長700〜800nmにおける光線透過率が低く、かつ、波長1070nm付近における光線透過率が高い樹脂組成物を提供可能になる。
【0012】
<ポリアミド樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂として、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数9〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するものを含む。このようなポリアミド樹脂を本明細書では、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂と呼ぶことがある。
本実施形態では、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を用いることにより、レーザー溶着に求められる性能を十分に発揮させることができる樹脂組成物が得られる。具体的には、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が有する低吸水率や、金型温度等によって熱収縮率にばらつきが生じにくいこと、高い機械的強度などが例示される。
【0013】
本実施形態で用いるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位の、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、一層好ましくは99モル%以上が、キシリレンジアミンに由来する。
キシリレンジアミン由来の構成単位は、メタキシリレンジアミン由来の構成単位および/またはパラキシリレンジアミン由来の構成単位が好ましく、50〜90モル%のメタキシリレンジアミンと10〜50モル%のパラキシリレンジアミンとを含むこと(ただし合計が100モル%を超えることはない)がより好ましく、60〜80モル%のメタキシリレンジアミンと20〜40モル%のパラキシリレンジアミンとを含むことがさらに好ましい。本実施形態で用いるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂において、キシリレンジアミン由来の構成単位の95モル%以上(好ましくは99モル%以上)がメタキシリレンジアミン由来の構成単位および/またはパラキシリレンジアミン由来の構成単位であることが好ましい。
【0014】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジアミン成分として用いることができるキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0015】
本実施形態で用いるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸由来の構成単位の、70モル%以上、好ましくは75モル%以上、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、一層好ましくは99モル%以上が炭素数9〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。
【0016】
炭素数が9〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸は、炭素数9〜12のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。
炭素数9〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、セバシン酸であることがさらに好ましい。炭素数が9〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸は、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0017】
上記炭素数9〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、アジピン酸等の炭素数9未満の脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸といったナフタレンジカルボン酸の異性体等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0018】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂においては、原料であるキシリレンジアミンが、50〜90モル%のメタキシリレンジアミンと10〜50モル%のパラキシリレンジアミンとを含み、かつ、炭素数9〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸が、セバシン酸を含むことが好ましい。さらに好ましくは、原料ジアミンの90モル%以上がキシリレンジアミンであり、前記キシリレンジアミンは、60〜80モル%のメタキシリレンジアミンと40〜20モル%のパラキシリレンジアミンを合計で99モル%以上を含み、かつ、α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸の90モル%以上がセバシン酸である。
【0019】
なお、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を主成分として構成されるが、これら以外の構成単位を完全に排除するものではなく、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類由来の構成単位を含んでいてもよいことは言うまでもない。ここで主成分とは、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を構成する構成単位のうち、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計数が全構成単位のうち最も多いことをいう。本実施形態では、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂における、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計は、全構成単位の90%以上を占めることが好ましく、95%以上を占めることがより好ましい。
【0020】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂を樹脂組成物の30質量%以上の割合で含むことが好ましく、35質量%以上の割合で含むことがより好ましく、40質量%以上の割合で含むことがさらに好ましく、45質量%以上の割合で含むことが一層好ましい。また、ポリアミド樹脂の含有量の上限値としては、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下がより好ましい。
ポリアミド樹脂は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0021】
<強化フィラー>
本実施形態の樹脂組成物は、強化フィラーをキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対し、10〜120質量部の割合で含む。強化フィラーを前記割合で含むことにより、高い機械的強度を達成できる。尚、本実施形態における強化フィラーには後述する酸化セリウム、核剤に相当するものは含まないものとする。
本実施形態の樹脂組成物で用いる含有され得る強化フィラーは、樹脂に配合することにより得られる樹脂組成物の機械的性質を向上させる効果を有するものであり、常用のプラスチック用強化材を用いることができる。強化フィラーは、有機物であっても、無機物であってもよいが、無機物が好ましい。強化フィラーは、好ましくはガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム繊維等の繊維状の強化フィラーを用いることができる。また、炭酸カルシウム、酸化チタン、長石系鉱物、クレー、有機化クレー、ガラスビーズ等の粒状または無定形の充填剤等の充填剤;ガラスフレーク、マイカ、グラファイト等の鱗片状の強化材を用いることもできる。中でも、機械的強度、剛性および耐熱性の点から、繊維状の強化フィラー、特にはガラス繊維を用いるのが好ましい。ガラス繊維としては、丸型断面形状または異型断面形状のいずれをも用いることができる。
強化フィラーは、カップリング剤等の表面処理剤によって、表面処理されたものを用いることがより好ましい。表面処理剤が付着したガラス繊維は、耐久性、耐湿熱性、耐加水分解性、耐ヒートショック性に優れるので好ましい。
【0022】
ガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Sガラス、Rガラス、Mガラス、Dガラス、ボロンフリーガラス(ホウ素の割合が30質量ppm以下のガラス)などのガラス組成からなり、特に、Eガラス(無アルカリガラス)が好ましい。
ガラス繊維とは、長さ方向に直角に切断した断面形状が真円状、楕円状、扁平状、長円状、多角形状で繊維状外観を呈するものをいう。
【0023】
本実施形態の樹脂組成物に用いるガラス繊維は、単繊維または単繊維を複数本撚り合わせたものであってもよい。
ガラス繊維の形態は、単繊維や単繊維を複数本撚り合わせたものを連続的に巻き取った「ガラスロービング」、長さ1〜10mmに切りそろえた「チョップドストランド」、長さ10〜500μmに粉砕した「ミルドファイバー」などのいずれであってもよい。かかるガラス繊維としては、旭ファイバーグラス社より、「グラスロンチョップドストランド」や「グラスロンミルドファイバー」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。ガラス繊維は、形態が異なるものを併用することもできる。
【0024】
また、本実施形態で用いるガラス繊維は、断面が円形であっても、非円形であってもよい。断面が非円形であるガラス繊維を用いることにより、得られる成形品の反りをより効果的に抑制することができる。また、本実施形態では、断面が円形であるガラス繊維を用いても、反りを効果的に抑制することができる。
【0025】
本実施形態の樹脂組成物における強化フィラーの含有量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対し、10質量部以上であり、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがより好ましく、40質量部以上であることがさらに好ましい。上限値については、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対し、120質量部以下であり、110質量部以下がより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物における強化フィラーの含有量は、樹脂組成物の20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。上限値については、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましく、55質量%以下が一層好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、強化フィラーを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。なお、本実施形態における強化フィラーの含有量には、集束剤および表面処理剤の量を含める趣旨である。
【0026】
<ペリレン骨格を有する光透過性色素>
本実施形態の樹脂組成物は、ペリレン骨格を有する光透過性色素をキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.1〜1.0質量部の割合で含む。ペリレン骨格を有する光透過性色素を配合することにより、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を用いつつ、波長700〜800nmにおける光線透過率が低く、かつ、波長1070nm付近における光線透過率が高い樹脂組成物が得られる。
本実施形態で用いる光透過性色素は、黒色色素、黒紫色素等である。これらの光透過性色素は、人の視覚で黒色に見える色素である。また、光透過性色素とは、例えば、ポリアミド樹脂と、ガラス繊維30質量%と、色素(光透過性色素と思われる色素)0.2質量%を合計100質量%となるように配合し、後述する実施例に記載の測定方法で波長1070nmにおける光線透過率を測定したときに、透過率が20%以上となる色素をいう。
光透過性色素は、染料であっても顔料であってもよいが、顔料が好ましい。
ペリレン骨格を有する色素としては、BASFカラー&エフェクトジャパン株式会社製、Spectrasence(登録商標) Black K0087(旧:Lumogen(登録商標) Black FK4280)、Spectrasence Black K0088(旧:Lumogen Black FK4281)等が例示される。
【0027】
本実施形態の樹脂組成物は、ペリレン骨格を有する光透過性色素をキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上含み、0.15質量部以上であることが好ましく、0.18質量部以上であることがより好ましく、0.20質量部以上であることがさらに好ましく、さらには、0.25質量部以上、0.4質量部以上であってもよい。また、本実施形態の樹脂組成物は、ペリレン骨格を有する光透過性色素をキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対し、1.0質量部以下含み、0.8質量部以下であることが好ましく、0.7質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以下であってもよい。このようにペリレン骨格を有する光透過性色素の配合量を精密に調整することにより、所望の波長の光線を選択的に透過させることができる。
本実施形態の樹脂組成物は、ペリレン骨格を有する光透過性色素を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、ペリレン骨格を有する光透過性色素以外の他の色素を含んでいてもよいが、実質的に含まない方が好ましい。実質的に含まないとは、例えば、他の色素の含有量が、ペリレン骨格を有する光透過性色素の含有量の1質量%未満であることをいう。
【0028】
<ヨウ化銅、ヨウ化カリウムおよび酸化セリウム>
本実施形態の樹脂組成物は、ヨウ化銅、ヨウ化カリウムおよび酸化セリウムの少なくとも1種を含む。ヨウ化銅を含むことにより、得られる成形品の耐熱性がより向上する傾向にある。また、ヨウ化カリウムを含むことにより、ポリアミド樹脂中で錯体を形成しやすくなり、樹脂の分解をより効果的に抑制できる傾向にある。さらに、酸化セリウムを含むことにより、元々の色がベージュ色により、ナチュラル色や淡色系材料に添加しても色の変化が少なく、酸化による色の変化を少なくできる。すなわち、これらの成分を配合することにより、用途に応じた性能を付与することが可能になる。
【0029】
本実施形態の樹脂組成物におけるヨウ化銅の割合は、樹脂組成物中、0.01〜1質量%であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましく、また、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、ヨウ化銅を、1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物におけるヨウ化カリウムの割合は、樹脂組成物中、0.01〜2質量%であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましく、また、1質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物における酸化セリウムの割合は、樹脂組成物中、0.01〜2質量%であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましく、また、1質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、酸化セリウムを、1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0030】
<離型剤>
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル、ケトンワックス、ライトアマイドなどが挙げられ、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルが好ましく、脂肪族カルボン酸の塩がより好ましい。
離型剤の詳細は、特開2018−095706号公報の段落0055〜0061の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物が離型剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中、0.05〜3質量%であることが好ましく、0.1〜0.8質量%であることがより好ましく、0.2〜0.6質量%であることがさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0031】
<核剤>
本実施形態の樹脂組成物は、核剤を含んでいてもよい。
核剤は、溶融加工時に未溶融であり、冷却過程において結晶の核となり得るものであれば、特に限定されないが、中でもタルクおよび炭酸カルシウムが好ましく、タルクがより好ましい。
核剤の数平均粒子径は、下限値が、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることがより好ましい。核剤の数平均粒子径は、上限値が、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、28μm以下であることが一層好ましく、15μm以下であることがより一層好ましく、10μm以下であることがさらに一層好ましい。
【0032】
本実施形態の樹脂組成物における核剤の割合は、0.01〜1質量%であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、また、0.5質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、核剤を、1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0033】
<他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。このような添加剤としては、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、難燃剤などが挙げられる。また、本実施形態の樹脂組成物は、ヨウ化銅以外の銅化合物、ヨウ化カリウム以外のハロゲン化アルカリ金属等を含んでいてもよい。これらの成分は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本実施形態の樹脂組成物は、各成分の合計が100質量%となるように、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂、強化フィラー、ペリレン骨格を有する光透過性色素と、ヨウ化銅、ヨウ化カリウムおよび酸化セリウムの少なくとも1種、さらには、他の添加剤の含有量等が調整される。本実施形態では、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂、強化フィラー、ペリレン骨格を有する光透過性色素と、ヨウ化銅、ヨウ化カリウムおよび酸化セリウムの少なくとも1種、核剤、離型剤の合計が樹脂組成物の99質量%以上を占める態様が例示される。
【0034】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物は、波長700〜800nmにおける光線透過率が低く、かつ、波長1070nm付近における光線透過率が高いことが求められる。例えば、本実施形態の樹脂組成物を1.0mmの厚さの試験片に成形したときの、波長750nmにおける光線透過率が10%以下(好ましくは5%以下、より好ましくは0〜3%、さらに好ましくは0〜2%、一層好ましくは0〜1%)であり、波長1070nmにおける光線透過率が20%以上であることが好ましい。前記波長1070nmにおける光線透過率は、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、50%以上であることが一層好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物を1.0mmの厚さの試験片に成形したときの、波長800nmにおける光線透過率が9%以下(好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは0〜3%、一層好ましくは0〜2%、より一層好ましくは0〜1%)であり、波長1070nmにおける光線透過率が20%以上であることが好ましい。
前記波長1070nmにおける光線透過率の上限は、高ければ高い方が理想であるが、例えば、90%以下であり、70%以下であってもよい。
前記光線透過率は、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0035】
本実施形態の樹脂組成物は、曲げ特性に優れていることが好ましい。
具体的には、本実施形態の樹脂組成物を4mm厚さのISO引張り試験片に成形したときの、ISO178に準拠した曲げ強さが、200MPa以上であることが好ましく、210MPa以上であることがより好ましく、230MPa以上であることがさらに好ましい。また、本実施形態の樹脂組成物を4mm厚さのISO引張り試験片に成形したときの、ISO178に準拠した曲げ強さの上限は、特に定めるものでは無いが、例えば、50MPa以下であり、380MPa以下でも十分に要求性能を満たす。
また、本実施形態の樹脂組成物を4mm厚さのISO引張り試験片に成形したときの、ISO178に準拠した曲げ弾性率が、8000MPa以上であることが好ましく、8500MPa以上であることがより好ましく、9000MPa以上であることがさらに好ましい。また、本実施形態の樹脂組成物を4mm厚さのISO引張り試験片に成形したときの、ISO178に準拠した曲げ強さの上限は、特に定めるものでは無いが、例えば、20000MPa以下であり、19000MPa以下でも十分に要求性能を満たす。
【0036】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、特に制限されないが、ベント口から脱揮できる設備を有する単軸または2軸の押出機を混練機として使用する方法が好ましい。上記ポリアミド樹脂成分、強化フィラー、光透過性色素、ヨウ化銅、ヨウ化カリウムおよび酸化セリウムの少なくとも1種、ならびに、必要に応じて配合される他の添加剤を、混練機に一括して供給してもよいし、ポリアミド樹脂成分を供給した後、他の配合成分を順次供給してもよい。強化フィラーは、混練時に破砕するのを抑制するため、押出機の途中から供給することが好ましい。また、各成分から選ばれた2種以上の成分を予め混合、混練しておいてもよい。
本実施形態では、光透過性色素は、ポリアミド樹脂等で、マスターバッチ化したものをあらかじめ調製した後、他の成分(ポリアミド樹脂成分、強化フィラー、光透過性色素、ヨウ化銅、ヨウ化カリウムおよび酸化セリウムの少なくとも1種等)と混練して、本実施形態における樹脂組成物を得てもよい。
【0037】
本実施形態の樹脂組成物を用いた成形品の製造方法は、特に制限されず、熱可塑性樹脂について一般に使用されている成形方法、すなわち、射出成形、中空成形、押出成形、プレス成形などの成形方法を適用することができる。この場合、特に好ましい成形方法は、流動性の良さから、射出成形である。射出成形に当たっては、樹脂温度を250〜300℃にコントロールするのが好ましい。
【0038】
<キット>
本実施形態の樹脂組成物と、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含む光吸収性樹脂組成物とは、レーザー溶着による成形品(レーザー溶着品)の製造のためのキットとして好ましく用いられる。
すなわち、キットに含まれる本実施形態の樹脂組成物は、光透過性樹脂組成物としての役割を果たし、かかる光透過性樹脂組成物から形成された成形品は、レーザー溶着の際のレーザー光に対する透過樹脂部材となる。一方、光吸収性樹脂組成物から形成された成形品は、レーザー溶着の際のレーザー光に対する吸収樹脂部材となる。
【0039】
<<光吸収性樹脂組成物>>
本実施形態で用いる光吸収性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含む。さらに、強化フィラー等の他の成分を含んでいてもよい。
熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等が例示され、光透過性樹脂組成物(本実施形態の樹脂組成物)との相溶性が良好な点から、特に、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂がさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂は1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
光吸収性樹脂組成物に用いるポリアミド樹脂としては、その種類等を定めるものではないが、上述のキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が好ましい。
強化フィラーは、ガラス繊維、炭素繊維、シリカ、アルミナ、カーボンブラックおよびレーザーを吸収する材料をコートした無機粉末等のレーザー光を吸収しうるフィラーが例示され、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維は、上記本実施形態の樹脂組成物に配合してもよいガラス繊維と同義である。強化フィラーの含有量は、好ましくは20〜70質量%であり、より好ましくは25〜60質量%であり、さらに好ましくは30〜55質量%である。
光吸収性色素としては、照射するレーザー光波長の範囲、例えば、本実施形態では、波長900nm〜1100nmの範囲に吸収波長を持つ色素が含まれる。また、光吸収性色素には、例えば、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.3質量部配合し、後述する実施例に記載の測定方法で光線透過率を測定したときに、透過率が30%未満、さらには、10%以下となる色素が含まれる。
光吸収性色素の具体例としては、無機顔料(カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなど)などの黒色顔料、酸化鉄赤などの赤色顔料、モリブデートオレンジなどの橙色顔料、酸化チタンなどの白色顔料)、有機顔料(黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料など)などが挙げられる。なかでも、無機顔料は一般に隠ぺい力が強く好ましく、黒色顔料がさらに好ましい。これらの光吸収性色素は2種以上組み合わせて使用してもよい。光吸収性色素の含有量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対し0.01〜30質量部であることが好ましい。
【0040】
上記キットは、樹脂組成物中の光透過性色素および強化フィラーを除く成分と、光吸収性樹脂組成物中の光吸収性色素および強化フィラーを除く成分について、80質量%以上が共通することが好ましく、90質量%以上が共通することがより好ましく、95〜100質量%が共通することが一層好ましい。
【0041】
<<レーザー溶着方法>>
次に、レーザー溶着方法について説明する。本実施形態では、本実施形態の樹脂組成物から形成された成形品(透過樹脂部材)と、上記光吸収性樹脂組成物を成形してなる成形品(吸収樹脂部材)を、レーザー溶着させて成形品を製造することができる。レーザー溶着することによって透過樹脂部材と吸収樹脂部材を、接着剤を用いずに、強固に溶着することができる。
部材の形状は特に制限されないが、部材同士をレーザー溶着により接合して用いるため、通常、少なくとも面接触箇所(平面、曲面)を有する形状である。レーザー溶着では、透過樹脂部材を透過したレーザー光が、吸収樹脂部材に吸収されて、溶融し、両部材が溶着される。本実施形態の樹脂組成物から形成される成形品は、レーザー光に対する透過性が高いので、透過樹脂部材として好ましく用いることができる。ここで、レーザー光が透過する部材の厚み(レーザー光が透過する部分におけるレーザー透過方向の厚み)は、用途、樹脂組成物の組成その他を勘案して、適宜定めることができるが、例えば5mm以下であり、好ましくは4mm以下である。
【0042】
レーザー溶着に用いるレーザー光源としては、光吸収性色素の光の吸収波長に応じて定めることができ、波長900〜1100nmの範囲のレーザーが好ましく、例えば、半導体レーザーまたはファイバーレーザーが利用できる。
【0043】
より具体的には、例えば、透過樹脂部材と吸収樹脂部材を溶着する場合、まず、両者の溶着する箇所同士を相互に接触させる。この時、両者の溶着箇所は面接触が望ましく、平面同士、曲面同士、または平面と曲面の組み合わせであってもよい。次いで、透過樹脂部材側からレーザー光を照射する。この時、必要によりレンズを利用して両者の界面にレーザー光を集光させてもよい。その集光ビームは、透過樹脂部材中を透過し、吸収樹脂部材の表面近傍で吸収されて発熱し溶融する。次にその熱は熱伝導によって透過樹脂部材にも伝わって溶融し、両者の界面に溶融プールを形成し、冷却後、両者が接合する。
このようにして透過樹脂部材と吸収樹脂部材を溶着された成形品は、高い溶着強度を有する。なお、本実施形態における成形品とは、完成品や部品の他、これらの一部分を成す部材も含む趣旨である。
【0044】
本実施形態でレーザー溶着して得られた成形品は、機械的強度が良好で、高い溶着強度を有し、レーザー照射による樹脂の損傷も少ないため、種々の用途、例えば、各種保存容器、電気・電子機器部品、オフィスオートメート(OA)機器部品、家電機器部品、機械機構部品、車両機構部品などに適用できる。特に、食品用容器、薬品用容器、油脂製品容器、車両用中空部品(各種タンク、インテークマニホールド部品、カメラ筐体など)、車両用電装部品(各種コントロールユニット、イグニッションコイル部品など)、モーター部品、各種センサー部品、コネクター部品、スイッチ部品、ブレーカー部品、リレー部品、コイル部品、トランス部品、ランプ部品などに好適に用いることができる。特に、本実施形態の樹脂組成物およびキットから形成された車載カメラ部品は、車載カメラに適している。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0046】
<ポリアミド樹脂>
MP10:M/Pモル比=7:3、下記合成例に従って合成した。
<<MP10の合成例(M/Pモル比=7:3)>>
セバシン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を撹拌しながら、パラキシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)とメタキシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)のモル比が3:7の混合ジアミンを、加圧(0.35MPa)下でジアミンとセバシン酸とのモル比が約1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を235℃まで上昇させた。滴下終了後、60分間反応を継続し、分子量1,000以下の成分量を調整した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミド樹脂(MP10、M/Pモル比=7:3)を得た。
【0047】
<タルク>
#5000S:林化成社製、ミクロンホワイト
<安定剤>
ヨウカダイイチドウ:日本化学産業社製、ヨウ化第一銅
ヨウ化カリウム:富士フィルム和光純薬社製
ステアリン酸亜鉛(II):富士フィルム和光純薬社製
<酸化セリウム>
Cerium Hydrate90、TREIBACHER INDUSTRIE AG社製
【0048】
<強化フィラー(ガラス繊維)>
ECS03T−211H:日本電気硝子(株)製、単繊維直径10.5μm、長さ3.5mm、円型断面
【0049】
<離型剤>
CS8CP:日東化成工業社製、モンタン酸石鹸
【0050】
<光透過性色素>
Spectrasence Black K0088:BASFカラー&エフェクトジャパン株式会社製、ペリレン顔料、Spectrasence Black K0088(旧 Lumogen Black K 0088、旧 Lumogen Black FK 4281)
【0051】
実施例1〜8、比較例1〜4
<コンパウンド>
後述する下記表1または表2に示す組成となるように(表1または表2の各成分は質量部表記である)、ガラス繊維以外の成分をそれぞれ秤量し、ドライブレンドした後、二軸押出機(東芝機械(現:芝浦機械)社製、TEM26SS)のスクリュー根元から2軸スクリュー式カセットウェイングフィーダ(クボタ社製、CE−W−1−MP)を用いて投入した。また、ガラス繊維については振動式カセットウェイングフィーダ(クボタ社製、CE−V−1B−MP)を用いて押出機のサイドから上述の二軸押出機に投入し、樹脂成分等と溶融混練し、樹脂組成物ペレットを得た。押出機の温度設定は、280℃とした。
【0052】
<曲げ強さおよび曲げ弾性率>
上述の製造方法で得られた樹脂ペレットを120℃で4時間乾燥させた後、日精樹脂工業社製、NEX140IIIを用いて、4mm厚さのISO引張り試験片を射出成形した。成形に際し、シリンダー温度は280℃、金型温度は130℃にて実施した。
ISO178に準拠して、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度で曲げ強さ(単位:MPa)および曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。
【0053】
<光線透過率>
上記で得られた樹脂組成物ペレットを、120℃で4時間乾燥した後、射出成形機(住友重機械工業社製、SE−50D)を用いて、光線透過率測定用の試験片(1.0mm厚)を作製した。光線透過率は、可視・紫外分光光度計(島津製作所社製、UV−3100PC)を用いて測定し、表1または表2に示す各波長における光線透過率(単位:%)をそれぞれ測定した。
【0054】
【表1】
【表2】
【0055】
上記結果から明らかなとおり、実施例1〜8に記載の樹脂組成物は、波長1070nmの光線透過率が高く、かつ、波長700〜800nmの光線透過率が低かった。さらに、機械的強度も高く維持できていた。これに対し、光透過性色素の配合量が0.1質量部を下回る場合(比較例1〜4)、波長700〜800nmの光線透過率が高かった。
【0056】
実施例1の樹脂組成物について、光透過性色素を配合せず、カーボンブラックマスターバッチ(三菱ケミカル社製カーボンブラック#45)を3質量部配合した他は同様に行って、吸収樹脂部材形成用ペレットを得た。実施例1で得られたペレットと、前記吸収樹脂部材形成用ペレットを用い、特開2018−168346号公報の段落0072、段落0073、および、
図1の記載に従い、レーザー溶着させた。適切にレーザー溶着していることを確認した。