(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-188145(P2021-188145A)
(43)【公開日】2021年12月13日
(54)【発明の名称】土木用合成繊維製ネット材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D06C 7/00 20060101AFI20211115BHJP
D02G 3/04 20060101ALI20211115BHJP
D04B 21/12 20060101ALI20211115BHJP
D04B 21/20 20060101ALI20211115BHJP
D04C 1/06 20060101ALI20211115BHJP
D04C 1/02 20060101ALI20211115BHJP
E01F 7/02 20060101ALI20211115BHJP
E02B 3/08 20060101ALI20211115BHJP
E02D 17/20 20060101ALI20211115BHJP
【FI】
D06C7/00 Z
D02G3/04
D04B21/12
D04B21/20 Z
D04C1/06 Z
D04C1/02
E01F7/02
E02B3/08 301
E02D17/20 103G
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-91284(P2020-91284)
(22)【出願日】2020年5月26日
(11)【特許番号】特許第6770213号(P6770213)
(45)【特許公報発行日】2020年10月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 義則
(72)【発明者】
【氏名】井坂 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】田中 紘一朗
【テーマコード(参考)】
2D001
2D044
2D118
3B154
4L002
4L036
4L046
【Fターム(参考)】
2D001PA06
2D001PB04
2D001PC03
2D001PD11
2D044DB43
2D118GA41
2D118GA55
3B154AA06
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4L002AA05
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4L046AA01
4L046AA24
4L046BA00
4L046BA05
4L046BB00
(57)【要約】
【課題】剛性を有するネット本体の一部に折り曲げ可能な折線部を一体に形成した土木用合成繊維製ネット材及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】全体を樹脂化した編地からなり、複数の縦ストランド21と複数の横ストランド22が交差した格子状のネット本体20と、ネット本体20の一部に介在した単数または複数の折線部30とを有する土木用合成繊維製ネット材であり、編地の縦方向に沿って形成するストランドの径を折線部の区間に亘って小径にすることで折線部30の剛性をネット本体20の剛性よりも低くした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体を樹脂化した編地からなり、複数の縦ストランドと複数の横ストランドが交差した格子状のネット本体と、ネット本体と一体に形成してネット本体の一部に介在した単数または複数の折線部とを有する土木用合成繊維製ネット材であって、
前記折線部がネット本体の横断方向沿って連続して形成し、
前記編地の縦ストランドの径を折線部の区間に亘って小径にすることで折線部の剛性をネット本体の剛性よりも低くし、
前記折線部が隣り合う樹脂化したネット本体を折り曲げ可能に連結していることを特徴とする、
土木用合成繊維製ネット材。
【請求項2】
前記編地を複数の編束糸と複数の挿入束糸で編成し、前記編束糸および挿入束糸が溶融温度の異なる複数種類の樹脂繊維を含む複合糸であることを特徴とする、請求項1に記載の土木用合成繊維製ネット材。
【請求項3】
前記折線部が編束糸または挿入束糸の何れか一方の束糸で編成した縦細ストランドと、前記隣り合う縦細ストランドの間に編束糸または挿入束糸の何れか他方の束糸でX字形に編成したクロスストランドを具備し、前記縦細ストランドが縦ストランドより小径であることを特徴とする、請求項1または2に記載の土木用合成繊維製ネット材。
【請求項4】
前記編地がラッセル編地であることを特徴とする、請求項1に記載の土木用合成繊維製ネット材。
【請求項5】
前記ネット本体の縦断方向に間隔を隔てて複数の折線部を有することを特徴とする、請求項1に記載の土木用合成繊維製ネット材。
【請求項6】
樹脂化した合成樹脂製の編地からなり、複数の縦ストランドと複数の横ストランドが交差した格子状のネット本体と、ネット本体と一体に形成してネット本体の一部に介在した単数または複数の折線部とを有する土木用合成繊維製ネット材の製造方法であって、
樹脂化可能な複合糸からなる束糸によりネット本体を形成しつつ、
前記束糸により縦ストランドの径を折線部の区間に亘って小径にした合成樹脂製の編地を編成する工程と、
前記折線部の剛性がネット本体の剛性より低くなるように、合成樹脂製の編地に熱処理を施す工程とを有することを特徴とする、
土木用合成繊維製ネット材の製造方法。
【請求項7】
複数の編束糸と複数の挿入束糸を使用して編地を編成し、前記編束糸および挿入束糸が溶融温度の異なる複数種類の樹脂繊維を含む複合糸であることを特徴とする、請求項6に記載の土木用合成繊維製ネット材の製造方法。
【請求項8】
前記編地がラッセル編地であることを特徴とする、請求項6に記載の土木用合成繊維製ネット材の製造方法。
【請求項9】
複合糸からなる編束糸または挿入束糸の何れか一方の束糸により、縦ストランドの延長線上に縦ストランドより小径の縦細ストランドを編成しつつ、隣り合う縦細ストランドの間に編束糸または挿入束糸の何れか他方の束糸により、X字形にクロスストランドを編成し、前記複数の縦細ストランドと複数のクロスストランドとにより折線部を構成することを特徴とする、請求項7に記載の土木用合成繊維製ネット材の製造方法。
【請求項10】
前記ネット本体の縦断方向に間隔を隔てて複数の折線部を形成することを特徴とする、請求項1に記載の土木用合成繊維製ネット材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は布団篭等の土木資材に適用可能なネット材に関し、特に自立形状を保持できるだけの剛性を保持しつつ、その一部に山折りまたは谷折り可能な折線部を具備した土木用合成繊維製ネット材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、高強度ポリエチレン繊維を主体とした耐久性に優れた合成繊維製ネット材を開示している。
特許文献2は合成繊維製ネット材を箱状に製作した蛇篭を開示している。蛇篭に用いる合成繊維製ネット材は、融点の異なる二種以上の繊維糸を編成してネット状物を形成し、このネット状物に熱処理を施すことで、低融点の繊維糸を熱硬化させてネット材の形状保持性能を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−20119号公報
【特許文献2】特開2002−69969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の合成繊維製ネット材はつぎのいくつかの問題点を内包している。
<1>特許文献2に記載の合成繊維製ネット材は、ネット全体の剛性が高くなって形状保持性能が向上するが、全体の剛性が高くなるほどネット材の折り曲げ性が悪くなる。
ネット材の折り曲げがし易くなるようにネット材全体の剛性を下げると、ネット材の形状保持性能が低下する。
このように従来のネット材は剛性の確保と折り曲げの両立が技術的に困難であった。
<2>高剛性のネット材を使って箱状の組み立てるには、複数に分割した分割ネット材の突合せ辺部を別途のロープでらせん状に巻き掛けて連結する方法が知られている。
このロープを用いた連結方法はロープの巻き掛け作業に多くの時間と労力を要する。
<3>高剛性のネット材の素材の一部に切り込みを入れて折れ線を形成し、この折れ線に沿って曲げ加工をする方法が考えられる。
この曲げ方法は、折れ線箇所の素材の一部が切除されるので強度的な弱点となるだけでなく、ネット材の曲げ力として機械的な大きな力が必要となり、人力だけで簡単に折り曲げすることができない。
【0005】
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは、ネット本体の剛性を保持しつつ、ネット本体の一部に折り曲げ可能な折線部を一体に形成した土木用合成繊維製ネット材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、全体を樹脂化した編地からなり、複数の縦ストランドと複数の横ストランドが交差した格子状のネット本体と、ネット本体と一体に形成してネット本体の一部に介在した単数または複数の折線部とを有する土木用合成繊維製ネット材であって、前記折線部がネット本体の横断方向沿って連続して形成し、前記編地の縦ストランドの径を折線部の区間に亘って小径にすることで折線部の剛性をネット本体の剛性よりも低くし、前記折線部が隣り合う樹脂化したネット本体を折り曲げ可能に連結している。
さらに本発明は、樹脂化した合成樹脂製の編地からなり、複数の縦ストランドと複数の横ストランドが交差した格子状のネット本体と、ネット本体と一体に形成してネット本体の一部に介在した単数または複数の折線部とを有する土木用合成繊維製ネット材の製造方法であって、樹脂化可能な複合糸からなる束糸によりネット本体を形成しつつ、前記束糸により縦ストランドの径を折線部の区間に亘って小径にした合成樹脂製の編地を編成する工程と、前記折線部の剛性がネット本体の剛性より低くなるように、合成樹脂製の編地に熱処理を施す工程とを有する。
さらに本発明の他の形態において、前記編地を複数の編束糸と複数の挿入束糸で編成し、前記編束糸および挿入束糸が溶融温度の異なる複数種類の樹脂繊維を含む複合糸で構成する。
さらに本発明の他の形態において、前記折線部が編束糸または挿入束糸の何れか一方の束糸で編成した縦細ストランドと、前記隣り合う縦細ストランドの間に編束糸または挿入束糸の何れか他方の束糸でX字形に編成したクロスストランドを具備していて、前記縦細ストランドは縦ストランドより小径に形成してある。
さらに本発明の他の形態において、前記編地はラッセル編地が公的である。
さらに本発明の他の形態において、前記ネット本体の縦断方向に間隔を隔てて複数の折線部を形成してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は少なくともつぎの一つの効果を奏する。
<1>編地の縦ストランドの径を折線部の区間に亘って小径にして折線部の剛性をネット本体の剛性よりも低く構成したことで、ネット本体の横ストランドに沿って折り曲げ可能な土木用合成繊維製ネット材を提供できる。
<2>折線部の剛性をネット本体より低くしたことで、人力だけで折線部に沿って簡単に折り曲げることができる。
<3>土木資材の折り曲げ位置に合わせて土木用合成繊維製ネット材の任意の位置に折線部を形成できるので、土木資材の組み立てを容易に行える。
<4>折線部が隣り合うネット本体を一体に連結しているので、ネット本体のカット工程が減るだけでなく、ロープ材等の別途の連結部材を使用した繋ぎ工程も減らすことができる。
<5>既存の編機を用いて編地の一部に折線部を織り込むだけでよいので、土木用合成繊維製ネット材の製造コストを低減できる。
<6>クロスストランドが折線部の曲げ位置を一定位置に規制するので、折り曲げてできる角部がきれいに揃ってきれいに折り曲げできる。
<7>クロスストランドが補強機能を発揮するので、折線部の強度と耐久性が向上する。
<8>折線部をクロスストランドのような形状とすることで、目印となってカット作業を施し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係るネット材を使用した土木資材の全体図
【
図2】編束糸の編成方向をモデル化したネット材の平面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下
図1〜3を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
<1>土木用合成繊維製ネット材の概要
図1を参照して説明すると、土木用合成繊維製ネット材10(以下「ネット材10」という)は、所定の間隔を隔てて樹脂製のストランドを格子状に交差して編成した硬質合成樹脂製のネット本体20と、ネット本体20の一部にネット本体20と一体に折り曲げ可能に形成した単数または複数の折線部30とを有する。
【0011】
以降の説明に際し、製造時におけるネット本体20の長手方向を「Y」、製造時におけるネット本体20の長手方向と直交する方向を「X」と定義して説明する。
【0012】
ネット材10は合成樹脂製の編地を樹脂化したものであり、折線部30の剛性がネット本体20の剛性に対して相対的に低い関係にしてある。
ネット材10はネット本体20のX方向に沿って形成した単数または複数の折線部30に沿って山折りまたは谷折りが可能である。
ネット材10に対する折線部30の形成間隔と形成数等は土木資材の展形状に応じて適宜選択する。
以下にネット材10について詳述する。
【0013】
<2>編地
ネット材10は編束糸23と挿入束糸31の二種類の熱可塑性樹脂繊維製束糸を使用して編成した編地からなり、これらの編地全体を加熱して樹脂化したものである。
編地としては、例えばラッセル編地、ダブルラッセル編地等を適用できる。
【0014】
図2に編地のモデル図を示していて、(a)は編地のY方向に沿って鎖編みをする2本の編束糸23,23を示し、(b)は編地のY方向とX方向に沿って編成する2本の挿入束糸31,31を示し、(c)は(a)と(b)を合体させたネット材10を示している。
【0015】
図3は編地の一部の組織図を示していて、各レーンにおいて、2本の編束糸23,23と2本の挿入束糸31,31の合計4本の束糸を使用して編地を編成する。
編地は各レーン単位で2本の編束糸23,23と、2本の挿入束糸31,31の合計4本の束糸を供給して編成する。
編束糸23と挿入束糸31を2本単位としたのは、編地が裏表一体のダブル構造とするためである。
編地の編成方法は公知の方法による。
【0016】
<2.1>編地の素材
編地を構成する編束糸23および挿入束糸31は、相対的に溶融温度(融点)の異なる複数種の繊維を束状にした複合糸である。
融点の異なる複合糸を用いたのは、融点差を利用してネット材10を熱硬化させて樹脂化するためである。
すなわち、合成樹脂製の編地全体に所定温度の熱処理を施すことで、低融点の樹脂繊維を溶融させて硬化させるためである。
本例では発明を理解し易くするため、低融点繊維と高融点繊維の二種類の繊維を混合した複合糸で構成する場合について説明するが、複合糸は三種類以上の繊維の組み合わせでもよい。
【0017】
<2.2>高融点繊維
高融点繊維は低融点繊維と比べて溶融温度の高い熱可塑性樹脂繊維であり、編束糸23の主繊維を構成する。
高融点繊維としては、例えば、PET(Polyethylene Terephthalate)等のポリエステル系繊維やアラミド繊維等を適用できる。
【0018】
<2.3>低融点繊維
低融点繊維は高融点繊維と比べて溶融温度の低い熱可塑性樹脂繊維であり、編束糸23の副繊維を構成するとともに、融着糸を兼用する。
低融点繊維としては、例えばポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)を含むオレフィン系の樹脂繊維等を適用できる。
【0019】
<2.4>素材の組合せ例
高融点繊維がポリエステル系の樹脂繊維である場合には、低融点繊維としてオレフィン系の樹脂繊維を組み合わせる。
高融点繊維がアラミド繊維である場合には、低融点繊維としてポリエステル系の樹脂繊維を組み合わせるとよい。
【0020】
<3>ネット本体
ネット本体20は、Y方向に沿って配列した線状または棒状を呈する複数の縦ストランド21と、X方向に沿って配列した線状または棒状を呈する複数の横ストランド22とを有し、複数のストランド21,22の間に矩形の網目24を有する。
ネット本体20は単独で自立形状を維持できるだけの剛性(硬度)を有している。
【0021】
<3.1>ネット本体の縦ストランド
図2を参照して説明すると、ネット本体20のY方向に位置する縦ストランド21は、編束糸23と挿入束糸31の二種類の熱可塑性樹脂繊維製束糸を鎖状に編み込んで構成する。
【0022】
<3.2>ネット本体の横ストランド
図2を参照して説明すると、ネット本体20のX方向に位置する横ストランド22は、挿入束糸31で構成し、隣り合う縦ストランド21,21の間に挿入束糸31の一部を掛け渡す。
なお、編地は編束糸23と挿入束糸31を入れ替えて構成してもよい。
【0023】
<3.3>ネット本体の剛性の調整方法
編束糸23および挿入束糸31を構成する高融点繊維と低融点繊維の混合比率を選択することで、ネット本体20の剛性(硬度)を調整できる。
編束糸23を構成する低融点繊維の混合比率を上げるとネット本体20(ストランド21,22)の剛性が高くなり、低融点繊維の混合比率を下げるとネット本体20(ストランド21,22)の剛性が低くなる。
【0024】
<4>折線部
折線部30はネット本体20をX方向に沿って折り曲げ自在に連結する部位であり、ネット本体20と連続組織として編成してある。
ネット本体20と折線部30で構成が異なる点は、ネット本体20では編束糸23と挿入束糸31の二種類の束糸を使用して縦ストランド21を編成するのに対し、折線部30では挿入束糸31のみで縦法のストランドを編成するようにしたことである。
【0025】
図2,3を参照して説明すると、ネット本体20の横断方向(X方向)に位置する折線部30は、一対の横ストランド21,21間のY方向に位置する複数の縦細ストランド21aと、隣り合う縦細ストランド21a,21aの間にX字状に掛け渡したクロスストランド31aとからなる。
【0026】
<4.1>折線部の素材
折線部30を構成する素材は、既述した編束糸23と挿入束糸31の二種類の熱可塑性樹脂繊維製束糸で構成する。
【0027】
<4.2>縦細ストランド
縦細ストランド21aは縦ストランド21の間に位置するストランドであり、編束糸23のみで編成する。
折線部30の区間において、編束糸23のみで縦細ストランド21aを編成したのは、縦細ストランド21aの径を縦ストランド21より小さくするためである。
縦方向のストランドに径差を設けた編地を加熱して樹脂化することで、縦細ストランド21aの剛性を縦ストランド21より低くできる。
【0028】
<4.3>クロスストランド
クロスストランド31aは挿入束糸31のみで編成する。
各レーンにおいて、隣り合う縦細ストランド21a,21aの間に挿入束糸31を掛け渡すことでX字状のクロスストランド31aを編成する。
クロスストランド31aは縦細ストランド21aから分離しているので、縦細ストランド21aの剛性向上に貢献しない。
【0029】
<4.4>折線部の可撓性
熱処理後のネット材10は、ネット本体20の縦ストランド21と縦細ストランド21aの剛性差により、折線部30を中心に折り曲げが可能である。
換言すれば、編束糸23と挿入束糸31の各束糸で縦細ストランド21aとクロスストランド31aを分離して編成することで、縦細ストランド21aとクロスストランド31aにそれぞれ可撓性を付与できる。
縦細ストランド21aとクロスストランド31aに可撓性を持たせたことで折線部30が折り曲げ可能となる。
編束糸23と挿入束糸31の径や、各束糸23,31を構成する複合糸の低融点繊維の混合比率を変更することで、折線部30を構成する縦細ストランド21aとクロスストランド31aの可撓性を適宜調整することができる。
折線部30の可撓性は土木資材の使途に応じて適宜選択する。
【0030】
[ネット材の製造方法]
つぎに
図2,3を参照しながらネット材10の製造方法について説明する。
【0031】
<1>編地の編成工程
図2,3に示すように、編束糸(例えばPP,PET)23と挿入束糸(例えばPP)31の二種類の束糸を使用し、公知の編み機で以て帯状を呈する均一幅の編地を連続して編成する。
ネット本体20は、複数本の編束糸23と挿入束糸31とを用い、縦ストランド21と横ストランド22とを交差させてメッシュ状に編成する。
【0032】
土木資材の折り曲げ位置に合わせてネット本体20の一部にX方向に沿って単数または複数の折線部30を編成する。
折線部30は、
図3に示すように、編束糸23のみで縦細ストランド21aを編成すると共に、隣り合う縦細ストランド21a,21aの間に挿入束糸31を掛け渡してX字状のクロスストランド31aを編成する。
【0033】
<2>編地の切断工程
熱処理前の編地は全体が適度の可撓性を有している。未硬化の編地を土木資材の展開形状に合わせてネット材10をX方向に沿って切断する。
編地幅を土木資材の横幅(X方向の幅)に合わせて形成すれば、編地のロスが少なくなる。
ネット材10により製作できる土木資材は、箱形に限定されず、ネット本体20を腹状に折り曲げて法面保護材として使用することも可能である。
ネット材10を用いて各種の土木資材を製作することができる。
【0034】
<3>編地の熱処理工程
つぎに編地全体を所定の温度(200℃程度)で熱処理する。所定の温度とは、低融点繊維の溶融温度である。
【0035】
編地全体を加熱して編束糸23および挿入束糸31中の低融点繊維を溶融させて冷却すると、樹脂化したネット材10が完成する。
すなわち、ネット本体20を構成する縦ストランド21と横ストランド22が樹脂化して自立可能な剛性を発揮する。
折線部30を構成する縦細ストランド21aとクロスストランド31aも同様に樹脂化する。
【0036】
<4>ネット材の曲げ加工
ネット材10を折線部30に沿って山折りまたは谷折りに折り曲げて、所望の土木資材を製作する。
ネット材10は折線部30を中心に人力だけで簡単に折り曲げできるので、土木資材の組み立てが容易である。
さらに折線部30が隣り合うネット本体20を一体に連結しているので、ネット本体20のカット工程が減るだけでなく、ロープ材等の別途の連結部材を使用した繋ぎ工程も省略することができる。
【0037】
このように、本発明に係るネット材10は、折線部30を編成する編束糸23と挿入束糸31とが分離して剛性が小さくなっているので、折線部30に沿って人力だけで簡単に折り曲げが可能となる。
【0038】
さらに折線部30の隣り合う縦細ストランド21a,21aの間にX字形にクロスストランド31a,31aが位置することで、各縦細ストランド21a,21aの中間位置で折り曲がることになって、各縦細ストランド21aの折り曲げ位置にバラツキが小さくなる。そのため、ネット材10の折り曲げ線をきれいな直線として形成できる。
【符号の説明】
【0039】
10・・・土木用合成繊維製ネット材(ネット材)
20・・・ネット本体
21・・・縦ストランド
21a・・折線部を構成する縦細ストランド
22・・・横ストランド
23・・・編束糸
24・・・網目
30・・・折線部
31・・・挿入束糸
31a・・折線部を構成するクロスストランド
【手続補正書】
【提出日】2020年7月21日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体を樹脂化した編地からなり、複数の縦ストランドと複数の横ストランドが交差した格子状のネット本体と、ネット本体と一体に形成してネット本体の一部に介在した単数または複数の折線部とを有する土木用合成繊維製ネット材であって、
前記折線部がネット本体の横断方向沿って連続して形成し、
前記編地の縦ストランドの径を折線部の区間に亘って小径にすることで折線部の剛性をネット本体の剛性よりも低くし、
前記折線部が編束糸または挿入束糸の何れか一方の束糸で編成した縦細ストランドと、前記隣り合う縦細ストランドの間に編束糸または挿入束糸の何れか他方の束糸でX字形に編成したクロスストランドを具備し、前記縦細ストランドが縦ストランドより小径であり、
前記折線部が隣り合う樹脂化したネット本体を折り曲げ可能に連結していることを特徴とする、
土木用合成繊維製ネット材。
【請求項2】
前記編地を複数の編束糸と複数の挿入束糸で編成し、前記編束糸および挿入束糸が溶融温度の異なる複数種類の樹脂繊維を含む複合糸であることを特徴とする、請求項1に記載の土木用合成繊維製ネット材。
【請求項3】
前記編地がラッセル編地であることを特徴とする、請求項1に記載の土木用合成繊維製ネット材。
【請求項4】
前記ネット本体の縦断方向に間隔を隔てて複数の折線部を有することを特徴とする、請求項1に記載の土木用合成繊維製ネット材。
【請求項5】
樹脂化した合成樹脂製の編地からなり、複数の縦ストランドと複数の横ストランドが交差した格子状のネット本体と、ネット本体と一体に形成してネット本体の一部に介在した単数または複数の折線部とを有する土木用合成繊維製ネット材の製造方法であって、
樹脂化可能な複合糸からなる束糸によりネット本体を形成しつつ、
前記束糸により縦ストランドの径を折線部の区間に亘って小径にした合成樹脂製の編地を編成する工程と、
前記折線部の剛性がネット本体の剛性より低くなるように、合成樹脂製の編地に熱処理を施す工程とを有することを特徴とする、
土木用合成繊維製ネット材の製造方法。
【請求項6】
複数の編束糸と複数の挿入束糸を使用して編地を編成し、前記編束糸および挿入束糸が溶融温度の異なる複数種類の樹脂繊維を含む複合糸であることを特徴とする、請求項5に記載の土木用合成繊維製ネット材の製造方法。
【請求項7】
前記編地がラッセル編地であることを特徴とする、請求項5に記載の土木用合成繊維製ネット材の製造方法。
【請求項8】
複合糸からなる編束糸または挿入束糸の何れか一方の束糸により、縦ストランドの延長線上に縦ストランドより小径の縦細ストランドを編成しつつ、隣り合う縦細ストランドの間に編束糸または挿入束糸の何れか他方の束糸により、X字形にクロスストランドを編成し、前記複数の縦細ストランドと複数のクロスストランドとにより折線部を構成することを特徴とする、請求項6に記載の土木用合成繊維製ネット材の製造方法。
【請求項9】
前記ネット本体の縦断方向に間隔を隔てて複数の折線部を形成することを特徴とする、請求項5に記載の土木用合成繊維製ネット材の製造方法。