(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-188151(P2021-188151A)
(43)【公開日】2021年12月13日
(54)【発明の名称】スペーサー用部材
(51)【国際特許分類】
D04C 1/12 20060101AFI20211115BHJP
D01F 8/14 20060101ALI20211115BHJP
D03D 15/40 20210101ALI20211115BHJP
D03D 15/37 20210101ALI20211115BHJP
D03D 11/00 20060101ALI20211115BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20211115BHJP
【FI】
D04C1/12
D01F8/14 B
D03D15/00 C
D03D15/00 B
D03D11/00 Z
C08J5/04CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-91815(P2020-91815)
(22)【出願日】2020年5月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 雄俊
(72)【発明者】
【氏名】上野山 卓也
【テーマコード(参考)】
4F072
4L041
4L046
4L048
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA08
4F072AB05
4F072AB28
4F072AD37
4F072AG03
4F072AH04
4F072AH12
4F072AH13
4F072AH49
4F072AK05
4F072AK14
4F072AL01
4F072AL16
4L041BA02
4L041BA05
4L041BA21
4L041BC04
4L041BD03
4L041BD20
4L041CA06
4L041CA10
4L046AA01
4L046AA24
4L046BA00
4L046BA02
4L046BB00
4L048AA20
4L048AA28
4L048AA44
4L048AA46
4L048AB07
4L048AC18
4L048BA09
4L048CA15
4L048DA24
4L048EB05
(57)【要約】
【課題】耐熱性が高く、しかも所望の形状や厚みに固定可能であるスペーサー用部材を提供する。
【解決手段】第1の部材と第2の部材とを所定間隔をあけて設置するためのスペーサー用の部材である。この部材は、第1の繊維を含む内層と、第2の繊維を含む表層とを有した複層構造の布帛状の繊維構造体または線状の繊維構造体にて構成される。第1の繊維は、低融点樹脂と、この低融点樹脂よりも融点の高い高融点樹脂とを含んだ複合繊維である。第2の繊維は、低融点樹脂の融点では溶融しない材料にて構成されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と第2の部材とを所定間隔をあけて設置するためのスペーサー用の部材であって、
第1の繊維を含む内層と、第2の繊維を含む表層とを有した複層構造の布帛状の繊維構造体または線状の繊維構造体にて構成され、
第1の繊維は、低融点樹脂と、この低融点樹脂よりも融点が高い高融点樹脂とを含んだ複合繊維であり、
第2の繊維は、前記低融点樹脂の融点では溶融しない材料にて構成されていることを特徴とするスペーサー用部材。
【請求項2】
低融点樹脂の融点が90〜220℃であることを特徴とする請求項1記載のスペーサー用部材。
【請求項3】
高融点樹脂の融点が低融点樹脂の融点よりも30〜200℃高いことを特徴とする請求項2記載のスペーサー用部材。
【請求項4】
第2の繊維は、低融点樹脂の融点よりも50℃高い温度では溶融しない材料にて構成されているか、あるいは低融点樹脂の融点よりも50℃高い温度では分解しない材料にて構成されていることを特徴とする請求項2または3記載のスペーサー用部材。
【請求項5】
第1の繊維としての複合繊維は、芯部に高融点樹脂を配するとともに鞘部に低融点樹脂を配した芯鞘複合繊維であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載のスペーサー用部材。
【請求項6】
第1の繊維と第2の繊維とがともにポリエステル系繊維であることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載のスペーサー用部材。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載のスペーサー用部材にて構成された熱成形品であることを特徴とするスペーサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材などの第1の部材と第2の部材とを所定間隔をあけて設置するためのスペーサー用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
スペーサーは、建築物や機械設備などの通気装置・通風装置、組立工程や施工現場での位置決め装置、熱源や光源との仕切り装置など、多様な場面で用いられる。スペーサーには、金属、プラスチックなど様々な材質のものがあるが、合成繊維製のものもある。例えば特許文献1や特許文献2では、複層構造の立体布帛が提案されている。これらは厚み方向の弾性変形を活用したものだが、所定の厚みで固定したい場合には不適である。特許文献3では、立体布帛の表面に形状記憶高分子層を積層したスペーサーファブリック複合材が提案されている。この形状記憶高分子は相変化温度が40〜80℃であり、この温度範囲で加熱してソフト化したものを変形させ、そのまま冷却固化させることで、所望の形状や厚みのスペーサーとなる。しかし、再び相変化温度以上に加熱されると初期形状に戻ってしまうため、耐熱温度が足りず、使用できる場面が限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−42855号公報
【特許文献2】特表2016−504094号公報
【特許文献3】実用新案登録第3219064号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、耐熱性が高く、しかも所望の形状や厚みに固定可能であるスペーサー用部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、特定の合成繊維を複層構造に配置したものを採用することにより、上記課題を解決したものである。
【0006】
すなわち本発明は、第1の部材と第2の部材とを所定間隔をあけて設置するためのスペーサー用の部材であって、第1の繊維を含む内層と、第2の繊維を含む表層とを有した複層構造の布帛状の繊維構造体または線状の繊維構造体にて構成され、第1の繊維は、低融点樹脂と、この低融点樹脂よりも融点の高い高融点樹脂とを含んだ複合繊維であり、第2の繊維は、前記低融点樹脂の融点では溶融しない材料にて構成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、合成繊維からなるスペーサー用部材であって、内層の第1の繊維の低融点樹脂の融点から高融点樹脂の融点までの間の温度で熱処理することで、低融点樹脂のみを溶融でき、この状態でプレスなどの方法で変形させ、そして冷却すると、そのときに高融点樹脂は溶融しないために内層の複合繊維同士が融着一体化されて剛性が増すとともに所望の形状や厚みに固定でき、しかも表層が高耐熱性を有するスペーサー用部材を容易に得ることができる。また表層の第2の繊維はプレス工程などの成型工程で溶融せずに繊維形態を維持しているため、繊維同士の間に空隙を有し、このためスペーサーとして各所に設置する際に接着剤などがしみ込みやすく、したがって接着しやすい。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のスペーサー用部材は、布帛状の繊維構造体または線状の繊維構造体にて構成され、少なくとも内層と表層との2層を含む複層構造となっている。内層は後述する第1の繊維である複合繊維を50質量%以上含み、表層は後述する第2の繊維を50質量%以上含んでいる。各層において各繊維の性能を効果的に発揮させるためである。第1の繊維である複合繊維は、低融点樹脂と、この低融点樹脂よりも融点の高い高融点樹脂とを含み、低融点樹脂の融点から高融点樹脂の融点までの間の温度で熱処理することで低融点樹脂のみが溶融でき、この状態でプレスなどの方法で変形させ、そのうえで冷却すると、内層の複合繊維同士が融着一体化される。これにより、剛性が増すとともに所望の形状や厚みに固定できる。また表層の第2の繊維は、成型工程では溶融せずに繊維形態を維持しており、繊維同士の間に形成される空隙の作用によってアンカー効果が高いため、スペーサーとして各所に設置する際に接着剤などで接着しやすい。
【0009】
繊維構造体は、第1の繊維と第2の繊維とが上述の質量分率の範囲に収まる中であれば、これらの繊維が存在することによる特性を発揮することができるため、他の繊維を混用したり、樹脂や無機系コート剤を含浸させたりしてもよい。また、内層と表層以外の層を設けてもよく、例えば内層のさらに内側に、熱成形時に溶融しない補強用の芯部を設けてもよく、あるいは内層と表層の間に接着層を設けてもよい。複層構造の繊維構造体の具体例としては、布帛状であれば織物、編物、不織布、フエルト、紙などがあり、単体で多重織物や立体編物としてもよく、複数の平面形状の布帛状体を積層してもよい。線状の繊維構造体の具体例としては、複層に形成した組紐、撚糸、ロープなどがある。布帛状の繊維構造体と線状の繊維構造体とを混用してもよい。
【0010】
上述の複合繊維は、低融点樹脂と、この低融点樹脂より融点が高い高融点樹脂との、2種の熱可塑性樹脂にて形成された繊維である。繊維の形態としては、短繊維でも長繊維でもよく、紡績糸、撚糸、引き揃え糸、組紐、交絡糸などの形に加工したものであってもよい。スペーサーを構成する繊維であることから、繊維径は1〜10000μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜1000μmである。複合の形態は芯鞘、サイドバイサイド、海島などが挙げられるが、繊維物性や成形性の観点から、芯部に高融点樹脂を配するとともに鞘部に低融点樹脂を配した芯鞘複合繊維であることが好ましい。複合比率は、特に限定されず、繊維径や必要となる機械的物性などで適宜選択できるが、高融点樹脂が100体積分率であるときに、低融点樹脂は20〜200体積分率の範囲内であることが好ましい。
【0011】
低融点樹脂は、融点が90〜220℃であることが好ましく、より好ましくは120〜190℃である。融点が90℃より低いとスペーサーとして耐熱性が不十分であり、使用できる場面が制限されるため好ましくない。融点が220℃より高い場合は、簡易な加熱装置では溶融させることが難しくなるため、溶融紡糸および成形のどちらの工程においても好ましくない。耐熱性の観点から、低融点樹脂は結晶性樹脂であることが好ましい。
【0012】
高融点樹脂は、低融点樹脂の融点よりも30〜200℃高い融点をもつ熱可塑性樹脂であることが好ましく、融点差が50〜150℃の範囲内であることがより好ましい。高融点樹脂は、スペーサーとして取り扱うための最低限の機械的物性を得るために、結晶性の熱可塑性樹脂であることが好ましい。低融点樹脂との融点差が30℃未満の場合は、成形時の加熱で高融点樹脂まで溶融しやすく、その場合は、表層からブリードアウトして成形設備を汚染したり、所望の形状や厚みを得ることが難しくなったりするため好ましくない。融点差が200℃を超える場合は、溶融紡糸時に低融点樹脂が過度に溶融流動してフィラメント間の密着や解舒不良などを起こす恐れがあるため好ましくない。
【0013】
低融点樹脂や高融点樹脂に使用する樹脂種としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系などが挙げられる。なかでも、機械的物性、耐薬品性、耐候性等の観点からポリエステル系が好ましい。また、複合界面の接着力を高めるために、低融点樹脂と高融点樹脂とは同系統の樹脂であることが好ましく、例えば低融点樹脂にポリエステル共重合体を用いる場合は、高融点樹脂に同じポリエステル系樹脂であるポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。この場合に、融点が90〜220℃の低融点樹脂としては、テレフタル酸とエチレングリコールに別種のモノマーを加えて共重合したポリエステル共重合体を好ましく用いることができる。このようなポリエステル共重合体は、公知の重縮合法で製造することができ、一般的に酸成分50モル%とジオール成分50モル%とを仕込んで脱水縮合することにより製造することができる。別種のモノマーとしては、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノ?ル、シクロヘキサングリコール、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸、ナフタレン2,6−ジカルボン酸、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。ポリエステル共重合体として、より具体的には、酸成分としてテレフタル酸を含み、ジオール成分としてエチレングリコールを30〜70モル%及び1,4−ブタンジオールを30〜70モル%含むポリエステル共重合体が挙げられる。また、酸成分としてテレフタル酸を80モル%以上及びε−カプロラクトンを5〜20モル%含み、ジオール成分としてエチレングリコールを30〜70モル%及び1,4−ブタンジオールを30〜70モル%含むポリエステル共重合体が挙げられる。低融点樹脂がこのようなものである場合において、高融点樹脂としてはポリエチレンフタレート(PET)が好ましい、高融点樹脂は、融点や機械的物性などが本発明の目的を損なわない範囲であれば、共重合成分を含んでいてもよい。
【0014】
上記した低融点樹脂や高融点樹脂の中には、強度や加工性等を調整するために、他の重合体が添加されていてもよい。たとえば、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、シリコーン系樹脂又はポリウレタン系樹脂を単独で又は混合して添加してもよい。
【0015】
低融点樹脂や高融点樹脂の中には、所望に応じて種々の添加剤が含有されていてもよい。たとえば、染料、顔料、分散剤、相溶化剤、展着剤、可塑剤、粘度調整剤、難燃剤、滑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収材料、マイクロ波吸収材料、光安定剤、酸化防止剤、pH調整剤、抗菌剤、防腐剤、充填剤、耐熱剤、帯電防止剤、導電材、良熱伝導性材料、結晶核剤等が添加されていてもよい。
【0016】
本発明における第2の繊維は、上記の低融点樹脂の融点では溶融しない材料にて構成されている。より正確には、後述する加熱成形時の温度では溶融しない材料にて構成されている。このような材料として、例えば、低融点樹脂よりも融点が高い熱可塑性樹脂を挙げることができ、このような第2の繊維としては、例えばポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリフッ化ビニリデン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維が挙げられる。上記した第2の繊維は、例えば低融点樹脂の融点が90〜220℃である場合には、その融点よりも50℃高い温度では溶融しない材質からなる繊維であることが好ましい。また、低融点樹脂の融点では溶融せず、かつ低融点樹脂の融点では分解しない材料も好ましく用いることができ、このような第2の繊維は、後述する加熱成形時の温度では分解しない材料にて構成されるものであって、例えば、コットン繊維、シルク繊維、麻繊維、ウール繊維、レーヨン繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維などを挙げることができる。このような第2の繊維は、例えば低融点樹脂の融点が90〜220℃である場合には、その融点よりも50℃高い温度では分解しない材質からなる繊維であることが好ましい。これらの第2の繊維は、単独で又は混合して使用してもよい。スペーサー部材として設置する箇所の相手材や使用する接着剤などとの相性、コスト、廃棄やリサイクル性などに配慮して材料選定することが望ましい。繊維の形態としては、短繊維でも長繊維でもよく、紡績糸、撚糸、引き揃え糸、組紐、交絡糸などの形に加工してもよい。スペーサーを構成する繊維であることから、繊維径は1〜10000μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜1000μmである。
【0017】
本発明のスペーサー用部材は、前記の繊維構造体を低融点樹脂の融点以上かつ高融点樹脂の融点以下の温度で加熱した状態で変形させ、その形状を維持したまま冷却固化することで、所望の形状や厚さに成形することができる。加熱方法・加工装置は、特に限定されず、使用素材やスペーサー用部材の大きさなどに応じて選択できるが、たとえば工業用ドライヤー、アイロン、熱風乾燥機、スチーム、マイクロ波加熱装置、赤外線加熱装置、熱ロールプレス、熱プレスなどが挙げられる。所望の形や厚みに成形する方法の具体例としては、所定の形状や厚みを有する型を用意して熱プレスする方法や、所定の厚みを有するスペーサーを挟んだ状態で熱ロールプレスする方法が挙げられる。冷却方法も特に限定されない。たとえば空冷、水冷、冷却プレスなどが挙げられる。
【0018】
本発明のスペーサー用部材は、成形前の繊維構造体の状態では柔軟な布帛や線条体であるため、紙管に巻いたり折り畳んだりすることでコンパクトに収納でき、輸送や保管に有利である。成形前の繊維構造体は大判で準備し、加熱や冷却による成形の前後で必要なサイズに裁断し、また必要に応じて複数のパーツを複合化してスペーサー用部材としてもよい。内層と表層とを事前に複合化した繊維構造体を成形してもよく、あるいは内層と表層とに用いる繊維構造体を各々用意して、成形時に貼り合せてもよい。後者の場合、内層に含まれる低融点樹脂を成形時に表層と融着させて貼り合せることも可能である。
【0019】
スペーサーとして各所に設置する際に接着剤や糊剤などを使用する場合は、これらを設置時に塗布や含浸してもよく、あるいは事前に塗布や含浸してもよい。表層への接着剤や糊剤の接着力を高めるため、プラズマ加工等の種々の加工を施してもよい。また、成形工程の加熱時に熱収縮が問題になる場合は、元の繊維もしくは繊維構造体に対してプレセットを行って熱収縮を低減させてもよい。
【0020】
特に、表層を構成する繊維がコットン繊維などの吸水性を有する繊維である場合には、本発明のスペーサー用部材を、自動車用のラジエータや、空調用の熱交換器に有利に利用することができる。なぜなら、これらの熱交換用の機器においては結露水が発生しやすいが、本発明のスペーサー用部材の表層に吸水性を有する繊維を配することで、発生した結露水を効果的に吸収して、結露水が機器やその周囲に悪影響を及ぼすことを防止できるためである。
【0021】
また、本発明のスペーサー用部材を構成する繊維が抗菌性を有する繊維であれば、それによる利点を享受することもできる。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
第1の繊維である複合繊維として、ユニチカ社製「メルセット」1100T96(芯部:PET(融点255℃)、鞘部:共重合ポリエステル(融点160℃))を用意し、これを8本打ちで組紐とした上に、第2の繊維として10番手のポリエステル紡績糸(融点255℃)を8本打ちで被覆させて、二層構造で外観の線径が1.8mmの組紐を得た。この組紐を厚さ1.2mmの金属板2枚の間に設置した状態で両金属板により押圧しながら180℃で加熱し、次いで空冷して、厚さ1.2mm、幅2.5mmの線状のスペーサー用部材を得た。
【0023】
(実施例2)
第1の繊維である複合繊維として、ユニチカ社製「メルセット」1100T96−CM27(芯部:PET(融点255℃)、鞘部:共重合ポリエステル(融点160℃))を用意し、これを8本合撚(S撚り、撚り数60T/m)で撚糸とした。この撚糸上に、すなわちこの撚糸の周囲に、第2の繊維として10番手の綿・ビニロン混紡績糸(混率50:50(質量比)、融点なし)を2本引き揃えたものを8本打ちで被覆させ、二層構造で外観の線径が2.1mmの組紐を得た。この組紐を厚さ1.5mmの金属板2枚の間に設置した状態で両金属板により押圧しながら180℃で加熱し、次いで空冷して、厚さ1.5mm、幅3.0mmの線状のスペーサー用部材を得た。
【0024】
(実施例3)
第1の繊維である複合繊維として、ユニチカ社製「メルセット」1100T96−CM27(芯部:PET(融点255℃)、鞘部:共重合ポリエステル(融点160℃))の撚糸(Z撚り、撚り数80T/m)を用意し、これを経、緯ともに用いた平織物(目付300g/m
2)を作製した。この平織物の両面に、第2の繊維としてPET短繊維(2.2T51mm)を用いた不織布(目付100g/m
2)を合わせ、その状態で熱ロールプレス(180℃)に導通させ、次いで空冷することで、サンドイッチ構造で厚さ1mmの積層シートを得た。この積層シートから幅5mm、長さ100mmのサイズで切り出すことで、テープ状のスペーサー用部材を得た。
【0025】
(実施例4)
第1の繊維である複合繊維として、ユニチカ社製「メルセット」1100T96−CM27(芯部:PET(融点255℃)、鞘部:共重合ポリエステル(融点160℃))の2本合撚糸(Z撚り、撚り数80T/m)を用意した。また、第2の繊維として、ポリエチレンテレフタレート繊維からなるマルチフィラメント糸 1670デシテックス/192フィラメント(ユニチカ社製 品番1100T192−E223)のタスラン加工糸(エア圧0.8MPa、加工速度200m/分、オーバーフィード1.15倍)を用意した。そして、経糸に第2の繊維、緯糸に第1の繊維である複合繊維を用いて、経糸密度208本/2.54cm、緯糸密度18本/2.54cm、二重平組織、経糸結節、幅40mmの、細幅織物を製織した。
【0026】
得られた細幅織物(生機)を、熱ロールプレス(180℃)に導通させ、次いで空冷して、シート状物を得た。得られたシート状物は、織物の表裏両面には緯糸がほぼ露出せず目視されない状態となったサンドイッチ構造で、厚さは1mmであった。このシート状物から幅5mm、長さ100mmのサイズで切り出し、テープ状のスペーサー用部材を得た。
【0027】
(比較例1)
内層の繊維として、ユニチカ社製「メルセット」1100T96−CM27(芯部:PET(融点255℃)、鞘部:共重合ポリエステル(融点160℃))を用意し、これを8本打ちで組紐とした。この組紐の周囲に、ユニチカ社製「コルネッタ」CL10(芯部:PET(融点255℃)、鞘部:共重合ポリエステル(融点160℃))の10番手を8本打ちで被覆させた。それによって、二層構造で外観の線径が1.8mmの組紐を得た。この組紐を厚さ1.2mmの金属板2枚の間に設置した状態で両金属板により押圧しながら180℃で加熱し、次いで空冷して、厚さ1.2mm、幅2.5mmの線状のスペーサー用部材を得た。
【0028】
しかしながら、成形時に金属板に付着して剥がし難さがあり、また180℃で加熱しながら成形したために表面の繊維間の空隙が失われ、そのため接着剤での貼付け時の取扱い性も低かった。
【0029】
(比較例2)
内層の繊維としてPETマルチフィラメント1100T96(融点255℃)を用意し、これを8本打ちで組紐とした。この組紐の周囲に、10番手のポリエステル紡績糸(融点255℃)を8本打ちで被覆させ、二層構造で外観の線径が1.8mmの組紐を得た。この組紐を厚さ1.2mmの金属板2枚の間に設置した状態で両金属板により押圧しながら180℃で加熱した。しかし、内層の繊維が融着しないため成形できなかった。