【解決手段】繊維構造体は、(a)無機粒子と繊維との複合繊維であって、繊維表面の15%以上が無機粒子によって被覆されている複合繊維と、(b)複合繊維に含まれる無機粒子と同じ種類の無機粒子とを含有する。
前記無機粒子が、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アルミニウムの金属塩、チタン、銅、亜鉛を含む金属粒子、またはケイ酸塩、からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維構造体。
前記複合繊維に含まれる無機粒子の平均一次粒子径が10〜200nmであり、前記同じ種類の無機粒子の平均一次粒子径が500nm〜10μmである、請求項1〜7のいずれかに記載の繊維構造体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、無機粒子と繊維の複合繊維を含み、柔軟性を有する繊維構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題について鋭意研究したところ、無機物と繊維の複合繊維に対し無機物を内添することで上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、これに制限されるものでないが、以下の発明を包含する。
[1] ISO比曲げ抵抗が5〜40mN・m・(g/m
2)
−3であるか、テーバー比曲げ抵抗が50〜150mN・m・(g/m
2)
−3である繊維構造体であって、
(a)無機粒子と繊維との複合繊維であって、繊維表面の15%以上が無機粒子によって被覆されている複合繊維と、
(b)前記複合繊維に含まれる無機粒子と同じ種類の無機粒子と、
を含有し、(b)の無機粒子の含有量が5〜95重量%である繊維構造体。
[2] 前記繊維がセルロース繊維である、[1]に記載の繊維構造体。
[3] 前記複合繊維に含まれる無機粒子の平均一次粒子径が10〜200nmである、[1]または[2]に記載の繊維構造体。
[4] 前記無機粒子が、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アルミニウムの金属塩、チタン、銅、亜鉛を含む金属粒子、またはケイ酸塩、からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の繊維構造体。
[5] 前記無機粒子が、硫酸バリウム、または、水酸化アルミニウムを含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の繊維構造体。
[6] 前記同じ種類の無機粒子の平均一次粒子径が500nm〜10μmである、[1]〜[5]のいずれかに記載の繊維構造体。
[7] シート形状を有する、[1]〜[6]のいずれかに記載の繊維構造体。
[8] 前記複合繊維に含まれる無機粒子の平均一次粒子径が10〜200nmであり、前記同じ種類の無機粒子の平均一次粒子径が500nm〜10μmである、[1]〜[7]のいずれかに記載の繊維構造体。
[9] 前記繊維構造体が、モールド成型物である、[1]〜[8]のいずれかに記載の繊維構造体。
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載の繊維構造体の製造方法であって、
繊維を含有する液体中で無機粒子を合成することによって複合繊維を調製する工程、
複合繊維と、前記複合繊維が含有する無機粒子と同じ種類の無機粒子と、を含有するスラリーから繊維構造体を形成する工程、
を含む、上記方法。
[11] 前記繊維構造体がシート形状を有しており、前記スラリーを抄紙することによってシートを形成する、[10]に記載の方法。
[12] メッシュ状部材を用いて脱水してから乾燥することによって、前記スラリーから繊維構造体を形成する、[10]または[11]に記載の方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、無機粒子と繊維の複合繊維に、さらに無機物を添加することにより、柔軟なシートを得ることが可能になる。また、添加する無機粒子の割合や粒子径を調整することにより、柔軟性をコントロールすることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
無機粒子と繊維の複合繊維
複合繊維を構成する無機粒子は、組成物の用途に応じて適宜選択すればよく、水に不溶性または難溶性の無機粒子であることが好ましい。無機粒子の合成を水系で行う場合があり、また、複合繊維を水系で使用することもあるため、無機粒子が水に不溶性または難溶性であると好ましい。
【0010】
無機粒子とは、金属単体もしくは金属化合物のことをいう。また金属化合物とは、金属の陽イオン(例えば、Na
+、Ca
2+、Mg
2+、Al
3+、Ba
2+等)と陰イオン(例えば、O
2−、OH
−、CO
32−、PO43−、SO
42−、NO
3−、Si
2O
32−、SiO
32−、Cl
−、F
−、S
2−等)がイオン結合によって結合してできた、一般に無機塩と呼ばれるものをいう。
【0011】
無機粒子の具体例としては、例えば、金、銀、チタン、銅、白金、鉄、亜鉛、及び、アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属を含む化合物が挙げられる。また、炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム)、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、リン酸カルシウム、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、二酸化チタン、ケイ酸ナトリウムと鉱酸から製造されるシリカ(ホワイトカーボン、シリカ/炭酸カルシウム複合繊維、シリカ/二酸化チタン複合繊維、ケイ酸アルミニウム、アルミノケイ酸)、硫酸カルシウム、ゼオライト、ハイドロタルサイトが挙げられる。炭酸カルシウム−シリカ複合物としては、炭酸カルシウム及び/又は軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物以外に、ホワイトカーボンのような非晶質シリカを併用してもよい。以上に例示した無機粒子については、繊維を含む溶液中で、互いに合成する反応を阻害しない限り、単独でも2種類以上の組み合わせで用いてもよい。また、例えば、複合繊維に消臭機能、あるいは、不透明性を持たせる場合には、金、銀、チタン、銅、白金、鉄、亜鉛、及び、アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属を含む化合物がより好ましい。また、複合繊維に難燃性の機能を持たせる場合には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、ケイ酸アルミニウムが好ましく、特に好ましくは、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ハイドロタルサイトである。また、複合繊維中の無機粒子がハイドロタルサイトである場合、ハイドロタルサイトと繊維との複合繊維の灰分中、マグネシウム及び亜鉛のうち少なくとも一つを10重量%以上含むことがより好ましい。なお、「金属を含む化合物」は金属単体であってもよく、金属イオンを含む化合物であってもよい。つまり、無機粒子は金属単体の粒子であってもよく、金属イオンを含む化合物の粒子であってもよい。
【0012】
無機粒子の合成法は気液法と液液法のいずれでもよい。気液法の一例としては炭酸ガス法があり、例えば水酸化マグネシウムと炭酸ガスを反応させることで、炭酸マグネシウムを合成することができる。液液法の例としては、酸(塩酸、硫酸等)と塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を中和によって反応させたり、無機塩と酸もしくは塩基を反応させたり、無機塩同士を反応させたりする方法が挙げられる。例えば、水酸化バリウムと硫酸とを反応させることで硫酸バリウムを得たり、硫酸アルミニウムと水酸化ナトリウムとを反応させることで水酸化アルミニウムを得たり、炭酸カルシウムと硫酸アルミニウムとを反応させることでカルシウムとアルミニウムが複合化した無機粒子を得ることができる。また、このようにして無機粒子を合成する際、反応液中に任意の金属又は金属化合物を共存させることもでき、この場合はそれらの金属もしくは金属化合物が無機粒子中に効率よく取り込まれ、複合化できる。例えば、炭酸カルシウムにリン酸を添加してリン酸カルシウムを合成する際に、二酸化チタンを反応液中に共存させることで、リン酸カルシウムとチタンの複合粒子を得ることができる。
【0013】
一つの好ましい態様として、無機粒子の平均一次粒子径を、例えば、1μm以下とすることができるが、平均一次粒子径が500nm未満の無機粒子、平均一次粒子径が200nm以下の無機粒子、平均一次粒子径が100nm以下の無機粒子、平均一次粒子径が50nm以下の無機粒子を用いることができる。また、無機粒子の平均一次粒子径は10nm以上とすることも可能である。このうち、平均一次粒子径が10〜200nmの無機粒子が好ましい。その理由は、内添する無機粒子との平均一次粒子径の差が大きいほど、シート内に間隙の増加率が上昇し、柔軟性向上の効果が高くなると考えられるためである。なお、平均一次粒子径は電子顕微鏡写真から算出することができる。
【0014】
また、無機粒子を合成する際の条件を調整することによって、種々の大きさ、形状を有する無機粒子を繊維と複合繊維化することができる。例えば、鱗片状の無機粒子が繊維に複合化している複合繊維とすることもできる。複合繊維を構成する無機粒子の形状は、電子顕微鏡による観察により確認することができる。
【0015】
また、無機粒子は、微細な一次粒子が凝集した二次粒子の形態を取ることもあり、熟成工程によって用途に応じた二次粒子を生成させてもよく、また、粉砕によって凝集塊を細かくしてもよい。粉砕の方法としては、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、石臼型ミル、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、叩解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。
【0016】
また、前記複合繊維に含まれる無機粒子と同じ種類の無機粒子は、平均一次粒子径が10nm〜20μmの無機粒子を使用でき、求められるシートのこわさによって添加する無機粒子の粒径を選択することができる。好ましくは、100nm〜15μm、より好ましくは500nm〜10μm、さらに好ましくは600nm〜8μmであり、とりわけ好ましくは2〜5μmである。添加する無機粒子の粒形が大きいほど、シートや板状に成形した際の比曲げ抵抗が低減されるが、大きすぎると成形後に無機物が脱離する「粉落ち」という現象につながるため好ましくない。また一方で、小さすぎると無機物同士が凝集しやすくなり、繊維構造物中の無機物の分散が均一になりづらいため好ましくない。無機粒子を添加することによって繊維構造物のこわさが低下するメカニズムは明らかになっていないが、一因として、繊維に直接定着していない無機粒子が繊維間に隙を作ることにより、乾燥後の繊維構造物中での繊維の絡み合いの度合いが小さくなるため、と考えられる。
【0017】
また、添加する同じ種類の無機粒子の複合繊維に対する割合は、複合繊維:添加する無機粒子=5:95〜95:5である。添加する無機粒子の割合が大きくなるほど、シート化した際の比曲げ抵抗が低減される。
【0018】
繊維
複合繊維を構成する繊維は特に制限されないが、例えば、セルロースなどの天然繊維はもちろん、石油などの原料から人工的に合成される合成繊維、さらには、レーヨンやリヨセルなどの再生繊維(半合成繊維)、さらにはセラミックをはじめとする無機繊維などを制限なく使用することができる。天然繊維としては上記の他にウールや絹糸やコラーゲン繊維等の蛋白系繊維、キチン・キトサン繊維やアルギン酸繊維等の複合糖鎖系繊維等が挙げられる。
【0019】
セルロース系の原料としては、パルプ繊維(木材パルプや非木材パルプ)、バクテリアセルロースが例示され、木材パルプは、木材原料をパルプ化して製造すればよい。木材原料としては、アカマツ、クロマツ、トドマツ、エゾマツ、ベニマツ、カラマツ、モミ、ツガ、スギ、ヒノキ、カラマツ、シラベ、トウヒ、ヒバ、ダグラスファー、ヘムロック、ホワイトファー、スプルース、バルサムファー、シーダ、パイン、メルクシマツ、ラジアータパイン等の針葉樹、及びこれらの混合材、ブナ、カバ、ハンノキ、ナラ、タブ、シイ、シラカバ、ハコヤナギ、ポプラ、タモ、ドロヤナギ、ユーカリ、マングローブ、ラワン、アカシア等の広葉樹及びこれらの混合材が例示される。
【0020】
木材原料をパルプ化する方法は、特に限定されず、製紙業界で一般に用いられるパルプ化法が例示される。木材パルプはパルプ化法により分類でき、例えば、クラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法等の方法により蒸解した化学パルプ;リファイナー、グラインダー等の機械力によってパルプ化して得られる機械パルプ;薬品による前処理の後、機械力によるパルプ化を行って得られるセミケミカルパルプ;古紙パルプ;脱墨パルプ等が挙げられる。木材パルプは、未晒(漂白前)の状態であってもよいし、晒(漂白後)の状態であってもよい。
【0021】
非木材由来の原料としては、綿、ヘンプ、サイザル麻、マニラ麻、亜麻、藁、竹、バガス、ケナフ、サトウキビ、トウモロコシ、稲わら、楮(こうぞ)、みつまた等が例示される。
【0022】
パルプ繊維は、未叩解及び叩解のいずれでもよく、複合繊維シートの物性に応じて選択すればよいが、叩解を行う方が好ましい。これにより、シート強度の向上並びに炭酸カルシウムの定着促進が期待できる。
【0023】
合成繊維としてはポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル、ナイロン、アクリル、ビニロン、セラミックス繊維など、半合繊維としてはレーヨン、アセテートなどが挙げられ、無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維などが挙げられる。
【0024】
また、これらセルロース原料はさらに処理を施すことで粉末セルロース、酸化セルロースなどの化学変性セルロース、およびセルロースナノファイバー:CNF(ミクロフィブリル化セルロース:MFC、TEMPO酸化CNF、リン酸エステル化CNF、カルボキシメチル化CNF、機械粉砕CNFなど)として使用することもできる。本発明で用いる粉末セルロースとしては、例えば、精選パルプを酸加水分解した後に得られる未分解残渣を精製・乾燥し、粉砕・篩い分けするといった方法により製造される棒軸状である一定の粒径分布を有する結晶性セルロース粉末を用いてもよいし、KCフロック(日本製紙製)、セオラス(旭化成ケミカルズ製)、アビセル(FMC社製)などの市販品を用いてもよい。粉末セルロースにおけるセルロースの重合度は好ましくは100〜1500程度であり、X線回折法による粉末セルロースの結晶化度は好ましくは70〜90%であり、レーザー回折式粒度分布測定装置による体積平均粒子径は好ましくは1μm以上100μm以下である。本発明で用いる酸化セルロースは、例えばN−オキシル化合物、及び、臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で酸化剤を用いて水中で酸化することで得ることができる。セルロースナノファイバーとしては、上記セルロース原料を解繊する方法が用いられる。解繊方法としては、例えばセルロースや酸化セルロース等の化学変性セルロースの水懸濁液等を、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、一軸または多軸混練機、ビーズミル等による機械的な磨砕、ないし叩解することにより解繊する方法を使用することができる。上記方法を1種または複数種類組み合わせてセルロースナノファイバーを製造してもよい。製造したセルロースナノファイバーの繊維径は電子顕微鏡観察などで確認することができ、例えば5nm〜1000nm、好ましくは5nm〜500nm、より好ましくは5nm〜300nmの範囲にある。このセルロースナノファイバーを製造する際、セルロースを解繊及び/又は微細化する前及び/又は後に、任意の化合物をさらに添加してセルロースナノファイバーと反応させ、水酸基が修飾されたものにすることもできる。修飾する官能基としては、アセチル基、エステル基、エーテル基、ケトン基、ホルミル基、ベンゾイル基、アセタール、ヘミアセタール、オキシム、イソニトリル、アレン、チオール基、ウレア基、シアノ基、ニトロ基、アゾ基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、アミド基、イミド基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、オキシル基、チイラン基、チエタン基等が挙げられる。これらの置換基の中の水素が水酸基、カルボキシル基等の官能基で置換されても構わない。また、アルキル基の一部が不飽和結合になっていても構わない。これらの官能基を導入するために使用する化合物としては特に限定されず、例えば、リン酸由来の基を有する化合物、カルボン酸由来の基を有する化合物、硫酸由来の基を有する化合物、スルホン酸由来の基を有する化合物、アルキル基を有する化合物、アミン由来の基を有する化合物等が挙げられる。リン酸基を有する化合物としては特に限定されないが、リン酸、リン酸のリチウム塩であるリン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、ポリリン酸リチウムが挙げられる。更にリン酸のナトリウム塩であるリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムが挙げられる。更にリン酸のカリウム塩であるリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸カリウムが挙げられる。更にリン酸のアンモニウム塩であるリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。これらのうち、リン酸基導入の効率が高く、工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムがより好ましいが、特に限定されない。カルボキシル基を有する化合物としては特に限定されないが、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸などトリカルボン酸化合物が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物としては特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の誘導体としては特に限定されないが、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては特に限定されないが、マレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては特に限定されない。例えば、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。上記カルボン酸由来の基を有する化合物のうち、工業的に適用しやすく、ガス化しやすいことから、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸が好ましいが、特に限定されない。また、化学的に結合させなくても、修飾する化合物がセルロースナノファイバーに物理的に吸着する形でセルロースナノファイバーを修飾してもよい。物理的に吸着する化合物としては界面活性剤等が挙げられ、アニオン性、カチオン性、ノニオン性いずれを用いてもよい。セルロースを解繊及び/又は粉砕する前に上記の修飾を行った場合、解繊及び/又は粉砕後にこれらの官能基を脱離させ、元の水酸基に戻すこともできる。以上のような修飾を施すことで、セルロースナノファイバーの解繊を促進したり、セルロースナノファイバーを使用する際に種々の物質と混合しやすくしたりすることができる。
【0025】
以上に示した繊維は単独で用いても良いし、複数を混合しても良い。中でも、木材パルプを含むか、若しくは、木材パルプと非木材パルプ及び/又は合成繊維との組み合わせを含むことが好ましく、木材パルプのみであることがより好ましい。
【0026】
好ましい態様において、本発明の複合繊維を構成する繊維はパルプ繊維である。また、例えば、製紙工場の排水から回収された繊維状物質を本発明で用いてもよい。このような物質を反応槽に供給することにより、種々の複合粒子を合成することができ、また、形状的にも繊維状粒子などを合成することができる。
【0027】
複合化する繊維の繊維長は特に制限されないが、例えば、平均繊維長が0.1μm〜15mm程度とすることができ、10μm〜12mm、50μm〜10mm、200μm〜8mmなどとしてもよい。このうち、本発明においては、平均繊維長が50μmより長いことが脱水やシート化が容易なため好ましい。平均繊維長が1mmより長いことが通常の抄紙工程で使用する脱水およびもしくは抄紙用のワイヤー(フィルター)のメッシュを使用して脱水やシート化が可能なためさらに好ましい。
【0028】
複合化する繊維の繊維径は特に制限されないが、例えば、平均繊維径が1nm〜100μm程度とすることができ、10nm〜100μm、0.15μm〜100μm、1μm〜90μm、3〜50μm、5〜30μmなどとしてもよい。このうち、本発明においては、平均繊維径が500nmより高いことが水やシート化が容易なため好ましい。平均繊維径が20μmより大きいことが通常の抄紙工程で使用する脱水およびもしくは抄紙用のワイヤー(フィルター)のメッシュを使用して脱水やシート化が可能なためさらに好ましい。
【0029】
繊維構造体
本発明においては、上述の複合繊維を様々な形状の構造体に成形することが可能である。例えば、本発明の複合繊維をシート化すると、高灰分であり、柔軟なシートを容易に得ることができる。また、得られたシートを貼り合せて多層シートとすることもできる。
【0030】
本発明の一つの態様において、複合繊維をシート化した場合などにおける比曲げ抵抗は、ISO比曲げ抵抗の場合は5〜40mN・m・(g/m
2)
−3であり、6〜40mN・m・(g/m
2)
−3が好ましく、7〜30mN・m・(g/m
2)
−3がより好ましく、8〜20mN・m・(g/m
2)
−3がさらに好ましい。また、テーバー比曲げ抵抗の場合は50〜150mN・m・(g/m
2)
−3が好ましく、60〜140mN・m・(g/m
2)
−3がより好ましく、70〜130mN・m・(g/m
2)
−3がさらに好ましい。
【0031】
シート製造に用いる抄紙機(抄造機)としては、例えば長網抄紙機、円網抄紙機、ギャップフォーマ、ハイブリッドフォーマ、ロトフォーマー、多層抄紙機、これらの機器の抄紙方式を組合せた公知の抄造機などが挙げられる。抄紙機におけるプレス線圧、後段でカレンダー処理を行う場合のカレンダー線圧は、いずれも操業性や複合繊維シートの性能に支障を来さない範囲内で定めることができる。また、形成されたシートに対して含浸や塗布により澱粉や各種ポリマー、顔料およびそれらの混合物を付与しても良い。
【0032】
シート化の際には湿潤および/または乾燥紙力剤(紙力増強剤)を添加することができる。これにより、複合繊維シートの強度を向上させることができる。紙力剤としては例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリアミン、エピクロロヒドリン樹脂、植物性ガム、ラテックス、ポリエチレンイミン、グリオキサール、ガム、マンノガラクタンポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアミン、ポリビニルアルコール等の樹脂;上記樹脂から選ばれる2種以上からなる複合ポリマー又は共重合ポリマー;澱粉及び加工澱粉;カルボキシメチルセルロース、グアーガム、尿素樹脂等が挙げられる。紙力剤の添加量は特に限定されない。
【0033】
また、填料の繊維への定着を促したり、填料や繊維の歩留を向上させたりするために、高分子ポリマーや無機物を添加することもできる。例えば凝結剤として、ポリエチレンイミンおよび第三級および/または四級アンモニウム基を含む改質ポリエチレンイミン、ポリアルキレンイミン、ジシアンジアミドポリマー、ポリアミン、ポリアミン/エピクロヒドリン重合体、並びにジアルキルジアリル第四級アンモニウムモノマー、ジアルキルアミノアルキルアクリレート、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート、ジアルキルアミノアルキルアクリルアミド及びジアルキルアミノアルキルメタクリルアミドとアクリルアミドの重合体、モノアミン類とエピハロヒドリンからなる重合体、ポリビニルアミン及びビニルアミン部を持つ重合体やこれらの混合物などのカチオン性のポリマーに加え、前記ポリマーの分子内にカルボキシル基やスルホン基などのアニオン基を共重合したカチオンリッチな両イオン性ポリマー、カチオン性ポリマーとアニオン性または両イオン性ポリマーとの混合物などを用いることができる。また歩留剤として、カチオン性またはアニオン性、両性ポリアクリルアミド系物質を用いることができる。また、これらに加えて少なくとも一種以上のカチオンやアニオン性のポリマーを併用する、いわゆるデュアルポリマーと呼ばれる歩留りシステムを適用することもでき、少なくとも一種類以上のアニオン性のベントナイトやコロイダルシリカ、ポリ珪酸、ポリ珪酸もしくはポリ珪酸塩ミクロゲルおよびこれらのアルミニウム改質物などの無機微粒子や、アクリルアミドが架橋重合したいわゆるマイクロポリマーといわれる粒径100μm以下の有機系の微粒子を一種以上併用する多成分歩留りシステムであってもよい。特に単独または組合せで使用するポリアクリルアミド系物質が、極限粘度法による重量平均分子量が200万ダルトン以上である場合、良好な歩留りを得ることができ、好ましくは、500万ダルトン以上であり、更に好ましくは1000万ダルトン以上3000万ダルトン未満の上記アクリルアミド系物質である場合に非常に高い歩留りを得ることが出来る。このポリアクリルアミド系物質の形態はエマルジョン型でも溶液型であっても構わない。この具体的な組成としては、該物質中にアクリルアミドモノマーユニットを構造単位として含むものであれば特に限定はないが、例えば、アクリル酸エステルの4級アンモニウム塩とアクリルアミドとの共重合物、あるいはアクリルアミドとアクリル酸エステルを共重合させた後、4級化したアンモニウム塩が挙げられる。該カチオン性ポリアクリルアミド系物質のカチオン電荷密度は特には限定されない。
【0034】
その他、目的に応じて、濾水性向上剤、内添サイズ剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、嵩高剤、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカなどの無機粒子(いわゆる填料)等が挙げられる。各添加剤の使用量は特に限定されない。
【0035】
シートの基本重量(坪量:1平方mあたりの重量)は、目的に応じて適宜調整できるが、例えば建材として用いる場合には、60〜1200g/m
2とすると強度が強く、また、製造時の乾燥負荷が低いため良好である。一つの態様において、シートの坪量は、90〜900g/m
2とすることができ、120〜600g/m
2としてもよい。また、シートの坪量は、1200g/m
2以上とすることもでき、例えば2000〜110000g/m
2とすることもできる。
【0036】
シート化以外の成形法を用いることも可能であり、例えば、パルプモールドと呼ばれるように鋳型に原料を流し込んで吸引脱水・乾燥させる方法や、樹脂や金属などの成形物の表面に塗り広げて乾燥後、基材から剥離する方法などによって、種々の形状を有する成形物を得ることができる。また、樹脂を混ぜてプラスチック様に成形することもできるし、セメントやゴムに混ぜて補強材として用いることもできる。また、一般にセメントや石膏などの無機質ボードを作成するのに用いられるような加圧・加熱プレス成形でボード状にしたり、ブロック状に成形したりすることもできる。一般に、シートは、折り曲げたり、巻き取れたりするものであるが、より強度が必要な場合には、ボード状にすることができる。また、厚みのある塊であるブロック状に成形することも可能であり、例えば、直方体や立方体などに成形することができる。
【0037】
以上に示した配合・乾燥・成形において、1種類の複合繊維のみを用いることもできるし、2種類以上の複合繊維を混合して用いることもできる。2種類以上の複合繊維を用いる場合は、予めそれらを混合したものを用いることもできるし、それぞれを配合・乾燥・成形したものを後から混合することもできる。
【0038】
また、複合繊維の成形物に後からポリマーなどの各種有機物や顔料などの各種無機物を付与しても良い。
本発明品で製造した成形物には印刷を施すことができる。この印刷方法は特に限定されるものではいが、例えば、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、マイクログラビア印刷、フレキソ印刷、活版印刷、シール印刷、フォーム印刷、オンデマンド印刷、ファニッシャーロール印刷、インクジェット印刷等の公知の方式で行うことができる。この中でもインクジェト印刷は、オフセット印刷のように版下を作製する必要がなく、インクジェットプリンターの大型化が比較的容易であるため、大型シートへの印刷も可能であるため好ましい。また、フレキソ印刷は表面の凹凸が比較的大きい成形物にも好適に印刷できるため、ボードやモールド、ブロックのような形状に成形した際にも好適に用いることができる。
【実施例】
【0039】
具体例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の具体例に限定されるものではない。また、本明細書において特に記載しない限り、濃度や部などは重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0040】
実験1:無機粒子と繊維の複合繊維の合成と評価
1−1.サンプル1:硫酸バリウムと繊維との複合繊維
1%のパルプスラリー(NBKP、CSF=400mL、平均繊維長:約2.0mm、平均繊維径:25μm、1300g)と水酸化バリウム八水和物(和光純薬、57g)をスリーワンモーター(800rpm)で撹拌しながら混合後、硫酸アルミニウム(硫酸バンド、77g)をペリスターポンプで滴下した。滴下終了後、そのまま30分間撹拌を継続してサンプル1を得た(無機物:88%、被覆率:60%)。
【0041】
1−2.サンプル2:水酸化アルミニウム粒子とセルロース繊維との複合繊維
まず、水酸化アルミニウムを合成するための溶液を準備した。アルカリ溶液(A溶液)として、NaOH(和光純薬)の水溶液を調製した。また、酸溶液(B溶液)として、Al
2(SO
4)
3(和光純薬)水溶液を調製した。
・アルカリ溶液(A溶液):濃度:1.6M
・酸溶液(B溶液):濃度:0.1M
次いで、アルカリ溶液(A溶液)にパルプ繊維(LBKP/NBKP=8/2、CSF:392mL、平均繊維長:約2.0mm、平均繊維径:16μm)を添加し、パルプ繊維を含む水性懸濁液を準備した(パルプ固形分30g、パルプ繊維濃度:1.56%、pH:約12.4)。この水性懸濁液を10L容の反応容器に入れ、水性懸濁液を撹拌しながら、酸溶液(B溶液)を滴下して水酸化アルミニウム粒子と繊維との複合繊維を合成した(A溶液の量:1.1L、B溶液の量:1.1L)。
図1に示すような装置を用いて、反応温度は60℃、滴下速度は5ml/minであり、反応液のpHが約7になった段階で滴下を停止した。滴下終了後、そのまま30分間撹拌を継続してサンプル2を得た(無機物:44%、被覆率:40%)。
【0042】
サンプルの評価
電子顕微鏡を用いて複合繊維を観察したところ、いずれのサンプルにおいても繊維表面を無機粒子が覆い、自己定着している様子が観察された。
【0043】
また、電子顕微鏡画像に基づいて、無機粒子によって被覆されている繊維表面の面積率(被覆率)を評価した。複合繊維サンプルの被覆率を下表に示すが、いずれも被覆率は15%以上だった。ここで、被覆率は、エタノールで洗浄した複合繊維を電子顕微鏡で撮影した画像(倍率:3000倍)について、無機物が存在する個所を(白)、繊維が存在する個所を(黒)となるように二値化処理し、画像全体に対する白色部分、すなわち無機物が存在する部分の割合(面積率、面積%)を算出して測定した。被覆率の測定には、画像処理ソフト(Image J、アメリカ国立衛生研究所)を使用した。
【0044】
さらに、得られた複合繊維について、それに含まれる無機物の重量比率(重量%)を測定した。ここで、重量比率は、複合体を525℃で約2時間加熱した後、残った灰の重量と元の固形分との比率から求めた複合体の灰分に基づいて算出した(JISP 8251:2003)。
【0045】
【表1】
【0046】
実験2:複合繊維シートの製造と評価
2−1.シート1
サンプル1、NBKP(CSF=400mL、平均繊維長:約2.0mm)および硫酸バリウム(堺化学工業社、平均粒子径:約0.6μm)を80:2:18(質量比)で混合し、水道水を用いて濃度約0.2%のスラリーに調製した。カチオン系歩留剤を対パルプ100ppm添加し、丸型手抄き機(タッピスタンダードシートマシン、東洋精機製作所)を用いて速やかに手抄きし、200g/m
2のシート(厚さ150μm)を作製した。
【0047】
2−2.シート2
サンプル1、NBKPおよび硫酸バリウムを50:5:45で混合した以外は、シート1と同様にしてシートを作成した。
【0048】
2−3.シート3
サンプル1、NBKPおよび硫酸バリウムを20:8:72で混合した以外は、シート1と同様にしてシートを作成した。
【0049】
2−4.シート4
平均粒子径が2.0μmの硫酸バリウムを使用した以外は、シート2と同様にしてシートを作成した。
【0050】
2−5.シート5
平均粒子径が5.0μmの硫酸バリウムを使用した以外は、シート2と同様にしてシートを作成した。
【0051】
2−6.シート6(比較例)
NBKPおよび硫酸バリウムを使用しない以外は、シート1と同様にしてシートを作成した。
【0052】
サンプルの評価(ISO比曲げ抵抗)
得られたシートについて、L&W BENDING TESTERを用いて比曲げ抵抗を測定した。ここにおける比曲げ抵抗は、試料を15°曲げた時の抵抗値を測定し、下記の計算式に代入して算出した。
ISO比曲げ抵抗(mN/m・(g/m
2)
−3)=曲げ(15°)抵抗値(mN)×3.35233÷(坪量)
3
なお、シートに含まれる無機物の重量比率(総無機分)は、実験1と同様にして測定した。
【0053】
【表2】
【0054】
表からわかるように、サンプル1のみのシート6(比較例)と比較して、硫酸マグネシウムとセルロース繊維との複合繊維に、硫酸バリウムを添加したシート1〜3は、比曲げ抵抗値が半分以下に低下した。したがって、無機物粒子と繊維の複合繊維に、さらに無機物を添加することにより、柔軟なシートを得られることがわかった。
【0055】
また、添加する硫酸バリウム粒子の割合が増加するにしたがって、比曲げ抵抗値が低下した(シート1〜3)。したがって、添加する硫酸バリウム粒子の割合により、シートの柔軟性をコントロールすることが可能になることがわかった。
【0056】
実験3:複合繊維成型体の製造と評価
3−1.成型体1
サンプル2と水酸化アルミニウム(昭和電工製、銘柄:H−32、平均粒子径6.0μm)を80:20(質量%)で混合し、カチオン性歩留剤(ND−300、ハイモ社製、200ppm)を含む水性懸濁液(約2.0%、サンプル1:水酸化アルミニウム=76:24)から下記の方法で成型体を製造した。
【0057】
底が金属メッシュ(40メッシュ)になっている四角柱の型(350mm×350mm×50mm)を吸水掃除機の先に取り付け、型を用いて水性懸濁液の吸引を開始した。6秒程度吸引したところで型を引き上げ、そのまま30秒間吸引を続けた。吸引を終了した後、型から内容物をはずし、100〜190℃の乾燥機を用いて20分間乾燥することで500g/m
2の円盤状の成型体(厚さ700μm)を作製した。
【0058】
3−2.成型体2
サンプル2と水酸化アルミニウムを71:29で混合した以外は、成型体1と同様にして成型体を作成した。
【0059】
3−3.成型体3(比較例)
サンプル2に対して水酸化アルミニウムを混合しなかった以外は、成型体1と同様にして成型体を作成した。
【0060】
サンプルの評価(比曲げ抵抗)
得られた成形体について、Taber Stiffness Testerを用いてテーバー比曲げ抵抗を測定した。ここにおけるテーバー比曲げ抵抗は、試料を15°曲げた時の曲げモーメントを測定し、下記の計算式に代入して算出した。
テーバー比曲げ抵抗(mN/m・(g/m
2)
−3)=曲げ(15°)モーメント(mN)×0.098066 ÷(坪量)
3
なお、無機物の重量比率(総無機分)、曲げこわさは、実験2と同様にして測定した。
【0061】
【表3】
【0062】
表3からわかるように、内添水酸化アルミニウムの割合が大きくなると、比曲げ抵抗値は低下した。