特開2021-188244(P2021-188244A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2021188244-漁網用モノフィラメント 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-188244(P2021-188244A)
(43)【公開日】2021年12月13日
(54)【発明の名称】漁網用モノフィラメント
(51)【国際特許分類】
   D01F 8/14 20060101AFI20211115BHJP
   A01K 75/00 20060101ALI20211115BHJP
【FI】
   D01F8/14 C
   A01K75/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2021-85049(P2021-85049)
(22)【出願日】2021年5月20日
(31)【優先権主張番号】特願2020-93839(P2020-93839)
(32)【優先日】2020年5月29日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金築 亮
(72)【発明者】
【氏名】中谷 雄俊
(72)【発明者】
【氏名】西井 義尚
【テーマコード(参考)】
2B106
4L041
【Fターム(参考)】
2B106AA21
2B106EA02
2B106EA10
2B106HA02
2B106HA03
2B106HA12
4L041BA21
4L041BA46
4L041BC20
4L041BD02
4L041BD20
4L041CA06
4L041CA21
4L041CA25
(57)【要約】
【課題】 ポリアミド系樹脂によって構成される漁網において、ポリアミド系樹脂の利点であるしなやかさ等は維持しながら、漁網が必要とする強度を維持し、かつ外的な力が付加された際や吸水した際に伸びにくく寸法安定性を具備してなる漁網用モノフィラメントを提供する
【解決手段】 芯鞘型複合モノフィラメントであり、該フィラメントは、芯部がポリエステル系樹脂、鞘部がポリアミド系樹脂により構成され、該フィラメントにおいて、ポリアミド系樹脂が占める割合が70〜90体積%であり、該複合フィラメントの横断面の断面積が7.8×10−3mm〜5.0×10−1mmであることを特徴とする漁網用モノフィラメント。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯鞘型複合モノフィラメントであり、該フィラメントは、芯部がポリエステル系樹脂、鞘部がポリアミド系樹脂により構成され、該フィラメントにおいて、ポリアミド系樹脂が占める割合が70〜90体積%であり、該複合フィラメントの横断面の断面積が7.8×10−3mm〜5.0×10−1mmであることを特徴とする漁網用モノフィラメント。
【請求項2】
芯鞘型複合モノフィラメントにおいて、ポリアミド系樹脂が占める割合が、80〜90体積%であることを特徴とする請求項1記載の漁網用モノフィラメント。
【請求項3】
漁網が、底曳網または刺し網であることを特徴とする漁網用モノフィラメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漁網を構成するモノフィラメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
漁網に求められる性能としては、高強力であること、しなやかであること、容易に染色可能であること等が挙げられ、主としてポリアミド樹脂からなるモノフィラメントが用いられ、ポリアミド樹脂のなかでも、特にポリアミド6樹脂、ポリアミド6/66共重合樹脂が用いられている。ポリアミド樹脂からなる漁網は、しなやかさに優れることから、船上で網が嵩張らず、たくさん積むことができる。
【0003】
また、一方で、定置網等の固定式漁網は、寸法安定性が良く、少しでも波風で揺れないように比重の大きいポリエステル樹脂からなる漁網が多く用いられており、さらには、ポリエステル樹脂を改良して比重を向上させたものや、または、フッ素系モノフィラメントとポリエステルモノフィラメントとを組み合わせて比重の大きなものが用いられている。
【0004】
前記したポリアミド樹脂からなる網は、自重や水の抵抗、漁獲物に負荷される重量、さらに、海底面との摩擦による外力、引き揚げ時の張力等の外的な力によって、網を構成するフィラメントが容易に伸びやすく、網目が開き、捕獲した魚が抜けてしまうことがある。なかでも、底曳網の場合は、海底との摩擦に加え、そこから生まれる引張時の張力によって、網が必要以上に伸び、破網につながることもある。引き揚げる際に、漁網が船縁と接触するために、この接触摩擦によっても破網する恐れもある。
【0005】
ポリアミド樹脂からなる網において、しなやかさと強度との両者を向上させることを課題とし、ポリアミド樹脂中に芳香族基含有のポリアミド形式単位を含ませた漁網が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−250556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ポリアミド系樹脂によって構成される漁網において、ポリアミド系樹脂の利点であるしなやかさ等は維持しながら、漁網が必要とする強度を維持し、かつ外的な力が付加された際や吸水した際に伸びにくく寸法安定性を具備してなる漁網用モノフィラメントを提供することを課題とする。
【0008】
本発明者等は、ポリアミドモノフィラメントが、外的な力が付加された際に寸法変化する現象に着目した。
【0009】
ポリアミド繊維は、一般的に摩耗性が良いとされ、鞄地などに好適に用いられている。鞄地は、織物等により構成され、この場合の摩耗性は、織物の表面が面的に他のものと擦れるときの摩耗性を評価したものであって、繊維が繊維軸方向に外力が付加された状態での摩耗性を評価したものではない。
【0010】
ポリアミドからなるフィラメントは、フィラメント軸方向に外力が付加されると、低荷重で容易に伸び、かつ、吸湿するとさらに伸びやすい傾向となる。そして、伸びが発生すると、伸びた箇所は、フィラメント径が小さくなることによって、より損傷が生じやすくなる。漁網としての使用においては、網表面の摩擦よりも、網が強く引っ張られることから、網を構成するフィラメント軸方向に外力が付加されながら他のものと擦れることが多い。よって、本発明者等は、フィラメント軸方向に外力が付加された状態で、かつ摩擦が生じた場合に、耐久性を維持しうる漁網用モノフィラメントを提供できないかを考えた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、本発明者等は、上記課題を達成すべく検討した。その結果、ポリアミド系樹脂により構成されるフィラメントの芯部にポリエステル系樹脂を特定比率で複合することにより、フィラメントに荷重がかかった際に、芯部のポリエステル系樹脂の領域が、伸びや変形を抑制する役割を担うことを見出し、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明は、芯鞘型複合モノフィラメントであり、該フィラメントは、芯部がポリエステル系樹脂、鞘部がポリアミド系樹脂により構成され、該フィラメントにおいて、ポリアミド系樹脂が占める割合が70〜90体積%であり、該複合フィラメントの横断面の断面積が7.8×10−3mm〜5.0×10−1mmであることを特徴とする漁網用モノフィラメントを要旨とする。
【0013】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0014】
本発明の漁網用モノフィラメントは、ポリアミド系樹脂とポリエステル系樹脂とが芯鞘型に複合されたものであり、芯部がポリエステル系樹脂によって構成され、鞘部がポリアミド系樹脂により構成されてなる。なお、芯鞘型において、芯部の数は、1つであっても、2〜5個程度の多芯であってもよいが、1つであることが好ましい。
【0015】
モノフィラメントの横断面形状は、円形、楕円形、多角形等、特に限定しないが、機械的物性や汎用性から円形断面がよい。また、芯部の横断面形状についても、円形に限らず、異形であってもよい。
【0016】
鞘部を構成するポリアミド系樹脂は、分子内にアミド基を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えばナイロン6,ナイロン66,ナイロン69,ナイロン46,ナイロン610,ナイロン1010,ナイロン11,ナイロン12,ナイロン6T,ナイロン9T,ポリメタキシレンアジパミドやこれら各成分を共重合したものやブレンドしたもの等が挙げられる。
【0017】
芯部を構成するポリエステル系樹脂は、分子内にエステル結合を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等が挙げられ、また、脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等が挙げられる。また、本発明における目的を阻害しない範囲であれば、上記したポリエステル同士のブレンドや、上記したポリエステルと、他の成分が共重合されてなるポリエステルとをブレンドしたものであってもよい。共重合できる他の成分としては、ジカルボン酸では、例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、無水フタル酸、セバシン酸、アジピン酸、コハク酸等が挙げられ、ジオール成分では、エタンジオール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。また、上記したポリエステルに、ポリエステル系熱可塑性エラストマーまたはポリエステル系熱可塑性エラストマー組成物を添加してもよい。添加量は、芯部中に多くとも10質量%とし、2〜8質量%がよい。芯部のポリエステルが、ポリエステル系熱可塑性エラストマーまたはポリエステル系熱可塑性エラストマー組成物を含むことにより、ポリアミド系樹脂からなる鞘部とポリエステル系樹脂からなる芯部との界面の接合性が良好となり、繊維軸方向に外力が付加された際に伸びにくくなり好ましい。
【0018】
ポリエステル系樹脂の相対粘度としては、目的とする機械的特性を有するために、相対粘度が1.4以上であることがよく、1.5以上がより好ましい。なお、相対粘度が高いと、機械的特性も高くなる傾向となるが、取り扱い性等を考慮して、相対粘度の上限は、1.65程度がよい。ポリエステルの相対粘度は、濃度0.5%のフェノール/四塩化エタンの等質量混合溶液を溶媒とし、ウベローデ粘度計を使用して、温度20℃で測定した。
【0019】
また、本発明の目的を達成しうる範囲であれば、モノフィラメントを構成するポリアミド系樹脂またはポリエステル系樹脂に、必要に応じて、各種の添加剤を含有させてもよく、例えば、結晶核剤、艶消し剤、顔料、耐光剤、耐候剤、酸化防止剤、抗菌剤、香料、熱安定剤、可塑剤、染料、界面活性剤、表面改質剤、各種無機電解質及び有機電解質、微粉体、難燃剤、相溶化剤等の添加剤が挙げられる。
【0020】
本発明の漁網用モノフィラメントは、ポリアミド系樹脂によって主として構成され、そのポリアミド系樹脂によって構成されるモノフィラメントの芯部にポリエステル系樹脂を配したことに大きな特徴がある。モノフィラメントが、主としてポリアミド系樹脂により構成されることにより、例えば、ポリエステル系樹脂のみから構成されるモノフィラメントと比較して、しなやかさに優れ、染色性も良好である。そして、このようなポリアミド系樹脂を主として構成されるモノフィラメントの芯の部分にポリエステル系樹脂をフィラメント軸方向に連続して配することにより、モノフィラメントに、外的な力が加わった際や、ポリアミド系樹脂がその樹脂の特性により吸湿や吸水による自重が加わった際、ポリエステル系樹脂は寸法安定性に優れることから、モノフィラメントの軸方向において形態を維持し、モノフィラメント自体の伸びによる変形を抑制する。そして、伸びによる変形が生じにくいために、フィラメント軸方向への細化(変形)が抑制され、摩耗による損傷が生じにくくなる。これに対し、ポリアミド系樹脂のみからなるモノフィラメントであれば、外的な力が加わった際に軸方向に変形しやすく、変形箇所は細化して、その細化した箇所に摩耗等による応力が集中し、より損傷が加速的に進行してしまい容易に破断することになるのである。
【0021】
本発明においては、前述の作用効果を発揮するために、モノフィラメントにおいてポリアミド系樹脂が占める割合は70〜90体積%である。モノフィラメントにおいて、ポリアミド系樹脂が占める割合が70体積%以上とすることにより、しなやかさに優れ、染色性が良好で、かつ漁網用として実用強度を十分に発揮する。一方、ポリアミド系樹脂が占める割合を90体積%以下とすることにより、ポリエステル系樹脂による寸法安定性と耐摩耗性が飛躍的に向上する。より好ましくは、モノフィラメントにおけるポリアミド系樹脂が占める割合が80〜90体積%である。
【0022】
本発明の漁網用モノフィラメントのフィラメント軸方向に直角に切断した時の横断面の断面積が、7.8×10−3mm〜5.0×10−1mmである。断面積が7.8×10−3mm以上とすることにより、海底や船縁等に接触することによる摩擦によって毛羽が発生しにくい。一方、断面積が5.0×10−1mm以下とすることによって、単糸当りの強力を効果的に発現できるとともに、糸条のしなやかさを保持できるため、編網時の加工性が良好である。なお、ここで、断面積は、マイクロスクープを用い写真を撮影し、その写真から面積を算出する。
【0023】
本発明の漁網用モノフィラメントは、以下の方法により得ることができる。まず、芯鞘型複合ノズルを用い、鞘部にポリアミド系樹脂を配し、芯部にポリエステル系樹脂を配し、ポリアミド系樹脂の比率が70〜90体積%となるように計量して溶融紡糸する。次いで、溶融紡糸により得られた糸条を水浴中で冷却し、一旦未延伸糸として捲き取った後あるいは一旦捲き取ることなく引き続いて延伸を施す。延伸にあたっての延伸倍率は4〜8倍とし、熱延伸を施す。熱延伸の加熱手段としては、温水バス中で熱延伸するか、加熱ローラーを用いて熱延伸する。熱延伸後は、巻取り操作を連続して行い、目的とするモノフィラメントを得る。
【0024】
得られたモノフィラメントを用いて、編網機により、所望の組織を採用して、漁網を得るとよい。編網機に適用する際には、1本から構成されるモノフィラメント糸の形態で用いてもよく、また、複数本のモノフィラメントを束ねた形態で用いてもよい。
【0025】
本発明の漁網用モノフィラメントは、寸法安定性と耐摩耗性に優れることから、底曳き網や刺し網等の非固定式漁網として、特に効果的に適用できるものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の漁網用モノフィラメントは、しなやかさに優れ、染色性が良好で、漁網としての実用強度を十分に発揮するとともに、寸法安定性と耐摩耗性が飛躍的に向上したものであり、寸法安定性と耐摩耗性に優れた漁網を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】耐摩耗性を評価するための屈曲型摩耗試験の概略斜視図を示す。
【実施例】
【0028】
次に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、下の実施例に限定されるものではない。また、実施例における特性値等の測定方法は次のとおりである。
(1)引張強さ(N)と伸度(%)
モノフィラメントは通常巻き取ってなるものであることから、必要量解舒したものを室温下で24時間以上静置し、定速伸長型引張試験機で最大強力と破断伸度を測定した。引張試験の条件は、引張速度は300mm/min、つかみ間隔は250mmとし、n=5で測定した平均値を引張強さ(N)、伸度(%)とした。
【0029】
(2)結節強さ
JIS L 1013に準じて、定速伸長型引張試験機を用いて、切断時の強さを測定した。また、結節は、JIS L 1013に記載のa)b)両方の結び方について行い、引張速度は300mm/min、つかみ間隔は250mmとし、a)b)の結び方のものをそれぞれn=5で測定し、平均した値を結節強さ(N)とした。
【0030】
(3)耐摩耗性(屈曲型摩耗試験)
摩耗体として直径20mmの金属丸棒の側面にサンドペーパー#1500を貼り付けたものを用い、この摩耗体に対して、試料(モノフィラメント)を90度の角度で接触させ、試料の一端に所定荷重をかけて、ストローク幅120mm、ストローク速度35回/分で往復摩擦させ、試料が破断に至るまでの往復回数を計測した。試料はn=3で計測し、得られた回数の平均値を耐摩耗性の摩耗回数とした。なお、所定荷重は、試料の断面積(mm)当たり3.0kgとした。たとえば、横断面が円形で、線径0.2mmの場合、94gの荷重をかけた。
湿摩耗の評価については、試料として、24時間以上常温の水に浸漬させた試料を用いて摩耗試験を行った。なお、摩耗試験開始した後は、試料に水の付与は行わなかった。
【0031】
なお、図1に、耐摩耗性を測定する屈曲型摩耗試験の概略斜視図を示す。
【0032】
実施例1
鞘部に配するポリアミド系樹脂として、ポリアミド6樹脂(ユニチカ株式会社製、商品名 A1030BRF))90質量%とナイロン6・66共重合樹脂(DSM社製、商品名「ノバミッド2030J」)10質量%とをブレンドしたものを準備した。
芯部に配するポリエステル系樹脂として、ポリエチレンテレフタレート樹脂(ユニチカ製、商品名「NEH2070」)相対粘度ηrel=1.55を準備した。
【0033】
ポリアミド系樹脂(鞘部)/ポリエステル系樹脂(芯部)=80/20(体積比)となるように計量し、ポリマー温度を280℃で2.0mmφ×9Hの紡糸口金から、紡糸速度16m/分の条件で溶融紡糸した(芯部の数は1つ)。溶融紡糸した糸条は、速度16m/分で30℃の水浴中で冷却した後、巻き取ることなく、95℃の温浴中にて3.5倍で延伸し(第一段延伸)、次いで巻き取ることなく、175℃の乾熱雰囲気中で1.4倍で延伸し(第二段延伸)、その後、リラックスさせた後、巻き取った(総延伸倍率4.9倍)。得られた芯鞘型複合モノフィラメントは、糸径0.462mm、断面積1.68×10−1mm(繊度1997dtex)、引張強さ5.3cN/dtex、伸度22.0%、結節強さ3.1cN/dtexであった。摩耗性の評価結果を表1に示す。
【0034】
比較例1
ポリアミド系樹脂として、ポリアミド6樹脂(ユニチカ株式会社製、商品名 A1030BRF))90質量%とナイロン6・66共重合樹脂(DSM社製、商品名「ノバミッド2030J」)10質量%とをブレンドしたものを準備した。
【0035】
そして、ポリマー温度を245℃で2.5mmφ×24Hの紡糸口金から、上記したブレンドしたポリアミド系樹脂を、紡糸速度26m/分の条件で溶融紡糸した。溶融紡糸した糸条は、速度26m/分で10℃の水浴中で冷却した後、巻き取ることなく、90℃の温浴中にて3.4倍で延伸し(第一段延伸)、次いで巻き取ることなく、165℃の乾熱雰囲気中で1.4倍で延伸し(第二段延伸)、その後、リラックスさせた後、巻き取った(総延伸倍率4.6倍)。得られたポリアミドのみからなるモノフィラメントは、糸径0.459mm、断面積1.65×10−1mm(繊度1717dtex)、引張強さ6.1cN/dtex、伸度19.2%、結節強さ3.9cN/dtexであった。摩耗性の評価結果を表1に示す。
【0036】
実施例2
鞘部に配するポリアミド系樹脂として、ナイロン6・66共重合樹脂(DSM社製、商品名「ノバミッド2330J」)75質量%とナイロン6・66共重合樹脂(DSM社製、商品名「ノバミッド2030J」)25質量%とをブレンドしたものを準備した。
芯部に配するポリエステル系樹脂として、ポリエチレンテレフタレート樹脂(ユニチカ製、商品名「NEH2070」)相対粘度ηrel=1.55を準備した。
【0037】
ポリアミド系樹脂(鞘部)/ポリエステル系樹脂(芯部)=70/30(体積比)となるように計量し、ポリマー温度を270℃で1.8mmφ×6Hの紡糸口金から、紡糸速度17.4m/分の条件で溶融紡糸した(芯部の数は1つ)。溶融紡糸した糸条は、速度17.4m/分で10℃の水浴中で冷却した後、巻き取ることなく、85℃の温浴中にて3.8倍で延伸し(第一段延伸)、次いで巻き取ることなく、180℃の乾熱雰囲気中で1.53倍で延伸し(第二段延伸)、その後、リラックスさせた後、巻き取った(総延伸倍率5.8倍)。得られた芯鞘型複合モノフィラメントは、糸径0.203mm、断面積3.23×10−2mm、引張強さ6.8cN/dtex、伸度13.8%、結節強度4.2cN/dtexであった。なお、実施例2において、引張強さ、伸度、結節強さは、モノフィラメントを6本引き揃えた状態(繊度2600dtex/6f)を測定したものである。摩耗性の評価結果を表1に示す。
【0038】
実施例3
芯部に配する樹脂として、ポリエチレンテレフタレート樹脂(ユニチカ製、商品名「NEH2070」)相対粘度ηrel=1.55を95質量%と、ポリエステル系熱可塑性エラストマー組成物(三菱ケミカル社製 商品名「モディックGQ331」)を5質量%とをブレンドしたものを用いたこと以外は、実施例2と同様にして芯鞘複合モノフィラメントを得た。得られた芯鞘型複合モノフィラメントは、糸径0.198mm、断面積3.07×10−2mm、引張強さ7.4cN/dtex、伸度14.0%、結節強度4.4cN/dtexであった。なお、実施例3において、引張強さ、伸度、結節強さは、モノフィラメントを6本引き揃えた状態(繊度2339dtex/6f)を測定したものである。摩耗性の評価結果を表1に示す。
【0039】
比較例2
ポリアミド系樹脂として、ナイロン6・66共重合樹脂(DSM社製、商品名「ノバミッド2330J」)75質量%とナイロン6・66共重合樹脂(DSM社製、商品名「ノバミッド2030J」)25質量%をブレンドしたものを準備した。
【0040】
そして、ポリマー温度を255℃で0.8mmφ×54Hの紡糸口金から、紡糸速度25m/分の条件で溶融紡糸した。溶融紡糸した糸条は、速度25m/分で12℃の水浴中で冷却した後、巻き取ることなく、95℃の温浴中にて3.5倍で延伸し(第一段延伸)、次いで巻き取ることなく、215℃の乾熱雰囲気中で1.7倍で延伸し(第二段延伸)、その後、リラックスさせた後、巻き取った(総延伸倍率6.0倍)。得られた繊維は、糸径0.200mm、断面積3.14×10−2mm、引張強さ8.6cN/dtex、伸度20.9%、結節強さ4.7cN/dtexであった。なお、比較例2において、引張強さ、伸度、結節強さは、モノフィラメントを6本引き揃えた状態(繊度2355dtex/6f)を測定したものである。摩耗性の評価結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
実施例1〜3のモノフィラメントは、漁網用モノフィラメントとして実用十分な機械的特性を有するものであった。さらに、表1から明らかなように、寸法安定性が向上したものであることから、比較例1、2と比較して、飛躍的に優れる耐摩耗性を発現するものであった。

図1