【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明によるトンネル支保工の連結構造の一態様は、
鋼製で円弧状の第一分割支保工と第二分割支保工のそれぞれの一端にある第一継手板と第二継手板が連結されることにより形成される、トンネル支保工の連結構造であって、
前記第二継手板には貫通孔が開設されており、
前記第一継手板には、前記貫通孔に挿通されて前記第二継手板に係合される雄部材の基部が取り付けられ、該雄部材の先端が該第二継手板から突設しており、
前記雄部材は、その内部に収容溝を備え、該収容溝は該雄部材の側面の対向する位置にある側面開口に連通しており、
前記収容溝は、前記雄部材の先端側から基部側に向かって末広がりの楔状を呈しており、
前記収容溝には、一対の爪が前記側面開口を介して該収容溝の内外に出入り自在に配設され、該一対の爪の前記基部側の端部が弾性材によって付勢されて該一対の爪は前記側面開口を介して外側に張り出しており、
前記雄部材が前記貫通孔に挿通され、前記第一継手板と前記第二継手板の広幅面同士が当接し、前記一対の爪の前記端部が前記第二継手板の広幅面に係合もしくは対向していることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、第二分割支保工の有する第二継手板の貫通孔に対して、第一分割支保工の有する第一継手板から突設する雄部材を挿通して双方を接続するに当たり、弾性材により付勢されている一対の爪が雄部材の側面開口から出入り自在に配設され、貫通孔に雄部材を挿通させた際に、側面開口から張り出している一対の爪が雄部材の収容溝に入り込み、一対の爪が貫通孔を通過した際に一対の爪が側面開口から張り出して、該爪の端部が第二継手板の広幅面に係合もしくは対向して、第一分割支保工と第二分割支保工を連結する。すなわち、第二分割支保工の有する第二継手板の貫通孔に対して、第一分割支保工の有する第一継手板から突設する雄部材を挿通させるだけの操作により、第一分割支保工と第二分割支保工が連結されたトンネル支保工の連結構造が形成できる。
ここで、「一対の爪の端部が第二継手板の広幅面に係合もしくは対向している」とは、爪の端部が第二継手板の広幅面に接触して係合していることと、爪の端部と第二継手板の広幅面の間にクリアランスがあり、双方が対向していることを意味している。後者の形態であっても、爪が第二継手板の広幅面に張り出していることから、第一継手板と第二継手板はクリアランスの範囲内で相対移動できるに過ぎず、連結構造は形成される。
例えば、弧長が同一もしくは略同一の第一分割支保工と第二分割支保工を適用し、双方の第一継手板と第二継手板の広幅面同士をトンネルの天端位置において当設させ、貫通孔に雄部材を挿通させて第二継手板に係合させることにより、トンネル支保工の連結構造が形成される。
【0009】
また、本発明によるトンネル支保工の連結構造の他の態様において、前記弾性材は、第一片と、該第一片の両端から屈曲して延びる二つの第二片とを有する、側面視形状が略コの字状を呈しており、
前記雄部材の前記基部には、該基部の後端から前記収容溝に連通する連通孔が設けられており、
前記連通孔から前記収容溝に跨がるように押し込み部材が配設されており、
前記第一片の中央位置が前記押し込み部材にて押し込まれることにより、該第一片の中央位置が前記収容溝の先端側に変位し、二つの前記第二片の先端が側方に変位して、前記一対の爪が前記側面開口から張り出すように付勢されることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、側面視形状が略コの字状の弾性材を構成する第一片の中央位置を、その後方から押し込み部材が押し込むことにより、第一片の中央位置を収容溝の先端側に変位させ、この変位に応じて二つの第二片の先端が側方に変位することにより、一対の爪を側面開口から張り出すように付勢することができる。
ここで、弾性材は、例えば板バネにより形成することができる。また、「側面視形状が略コの字状」とは、第一片と二つの第二片がいずれも扁平な板バネにて形成され、弾性材の側面視形状がコの字状である形態の他、第一片が収容溝の前方側に向かって湾曲して側面視形状が略M字状の形態、第一片が収容溝の前方側に向かって凸に屈曲して側面視形状がM字状の形態等も含まれる。
このように、第一片が収容溝の先端側に湾曲したり、先端側に凸に屈曲する形態では、第一片の中央位置をその後方から押し込み部材が押し込む際に、第一片における押し込み位置が規定され、第一片の左右端(もしくは上下端)を均等に変位させることができる。このことにより、第一片の両端にある二つの第二片の先端を均等に外側へ変位させることができ、一対の爪を左右(もしくは上下)の側面開口から均等に張り出させることが可能になる。
尚、例えば、押し込み部材の後端に六角穴等を設けておき、連通孔の後方からトルクやレンチ等の回転工具の先端を六角穴等に嵌め込んで回転させることにより、連通孔から収容溝に跨がるように配設される押し込み部材の移動(押し込み)を容易に行うことができる。
【0011】
また、本発明によるトンネル支保工の連結構造の他の態様において、前記爪の前記端部には、前記第二片の先端が嵌まり込む嵌合溝が設けられており、
前記端部において、前記嵌合溝の外側には、前記爪が前記側面開口を介して外側に張り出して前記第二継手板の前記広幅面に係合もしくは対向している際に、該広幅面と平行な平坦面が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、爪の基部側の端部の嵌合溝に弾性材の有する第二片の先端が嵌まり込んでいることにより、第二片の先端の側方への変位を爪の基部側の端部に効果的に伝達して、爪の基部側の端部を側面開口から張り出すように付勢することができる。また、爪の基部側の端部の嵌合溝の外側の形状が、第二継手板の広幅面に係合する際に当該広幅面と平行な平坦面であることにより、爪の基部側の端部の平坦面が第二継手板の広幅面に当設して、当該平坦面と第二継手板の広幅面との安定的な係合状態(当接状態)を形成することができる。
【0013】
また、本発明によるトンネル支保工の連結構造の他の態様において、前記爪の前記端部には、前記第二片の先端が嵌まり込む嵌合溝が設けられており、
前記端部において、前記嵌合溝の外側には、前記爪が前記側面開口を介して外側に張り出して前記第二継手板の前記広幅面に係合している際に、該広幅面から徐々に離れる湾曲面が設けられていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、爪の基部側の端部の嵌合溝の外側の形状形態に関し、爪が側面開口から外側に張り出して第二継手板の広幅面に係合している際に当該広幅面から徐々に離れる湾曲面であることにより、仮に第二継手板の貫通孔に雄部材が貫通して爪が側面開口を介して外側に張り出した状態において、爪の基部側の端部と第二継手板の広幅面の間にクリアランスが存在する場合であっても、湾曲面のいずれかの箇所が貫通孔のエッジや広幅面の一部と係合することができる。
実際には、爪が側面開口を介して外側に張り出した状態において、爪の基部側の端部が平坦面である場合には、この平坦面と第一継手板の広幅面の間にクリアランスを存在させておかないと、施工誤差等により、爪が側面開口から外側に張り出すことができず、爪の基部側の端部の平坦面が第二継手板の広幅面に係合できない事態が生じ得る。
そのため、一般には、上記クリアランスを有するようにして、第一継手板、第二継手板及び雄部材が製作されるが、この爪の基部側の端部の平坦面と第二継手板の広幅面の間のクリアランスにより、当該平坦面が第二継手板の広幅面に当接できず、がたつきのある連結構造が形成され得る。そこで、本態様では、爪の基部側の端部の嵌合溝の外側において第二継手板の広幅面から徐々に離れる湾曲面が設けられていることにより、側面開口を介して爪の少なくとも一部が外側に張り出すことを保証でき、かつ、少なくとも爪の端部の一部と第二継手板の広幅面の係合を保証することができ、がたつきのない連結構造を形成できる。
【0015】
また、本発明によるトンネル支保工の施工方法の一態様は、
鋼製で円弧状の第一分割支保工と第二分割支保工のそれぞれの一端にある第一継手板と第二継手板を連結することにより、トンネル支保工を施工する、トンネル支保工の施工方法であって、
前記第二継手板には貫通孔が開設されており、
前記第一継手板には、前記貫通孔に挿通されて前記第二継手板に係合される雄部材の基部が取り付けられ、該雄部材の先端が該第一継手板から突設しており、
前記雄部材は、その内部に収容溝を備え、該収容溝は該雄部材の側面の対向する位置にある側面開口に連通しており、
前記収容溝は、前記雄部材の先端側から基部側に向かって末広がりの楔状を呈しており、
前記収容溝には、一対の爪が前記側面開口を介して該収容溝の内外に出入り自在に配設され、該一対の爪の前記基部側の端部が弾性材によって付勢されて該一対の爪は前記側面開口を介して外側に張り出しており、
前記雄部材を前記貫通孔に挿通する過程で、前記一対の爪を前記弾性材の付勢に抗して前記側面開口から前記収容溝の内部に入り込ませ、該一対の爪が該貫通孔を通過した際に、該一対の爪を前記弾性材の付勢により前記側面開口を介して外側に張り出させ、該一対の爪の前記端部を前記第二継手板の広幅面に係合もしくは対向させることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、第二分割支保工の有する第二継手板の貫通孔に対して、第一分割支保工の有する第一継手板から突設する雄部材を挿通させるだけの施工により、一対の爪を側面開口を介して外側に張り出させて第二継手板の広幅面に係合もしくは対向させることができ、第一分割支保工と第二分割支保工が連結されたトンネル支保工を容易に施工することができる。
【0017】
ここで、第一分割支保工と第二分割支保工の連結に際しては、自走式のベースマシンと、二本で一組のブームを計二組備えているトンネル支保工建て込み装置を適用し、各組のブームにて第一分割支保工と第二分割支保工を把持し、第二分割支保工(の第二継手板)を建て込んで固定させた状態で、第一分割支保工(の雄部材)を移動させ、第二継手板の貫通孔に第一継手板から突設する雄部材を挿通させて双方を連結する施工方法が適用できる。
この施工によれば、トンネル支保工建て込み装置の一方の組のブームを移動させ、貫通孔に雄部材を挿通させる操作のみでよいことから、第一分割支保工と第二分割支保工を連結することによるトンネル支保工の施工を、安全かつ効率的に行うことが可能になる。