【解決手段】前後に耳部6a、6bを有する軒樋6を支持する本体部4を備える軒樋支持具1において、本体部4の前端部4aと後端部4bの少なくとも一方には、基部50と、基部50に軸支されている操作部51と、操作部の動作に連動して耳部6bの支持/不支持が切り替わる支持部52とを備え、支持部は、耳部6bを支持する状態において、基部50の下方に配される支持片52bを備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のような軒樋支持具を介して軒樋を取り付けるには、建物の見付方向に沿って設置した複数の軒樋支持具のすべての耳保持部に軒樋が支持される必要がある。そのため、軒樋の取り付け作業は、慣れた人でなければスムーズに作業を進めづらい。
【0005】
また、軒先に取り付けられた軒樋は、軒樋の流路内の清掃等のために軒樋支持具から取り外すことがある。しかしながら、特許文献1のような軒樋支持具によって軒先に取り付けられた状態では、軒樋の耳部の保持を解除することは容易ではなく、無理に取り外そうとすると軒樋支持具や軒樋を破損するおそれがある。そのため、軒樋を軒樋支持具から取り外すには、一度軒樋支持具と一緒に建物から取り外す必要があり、煩雑であった。
【0006】
本発明は、このような事情を鑑みて提案されたもので、その目的は、軒樋の取り付け、取り外しが容易な軒樋支持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の軒樋支持具は、前後に耳部を有する軒樋を支持する本体部を備える軒樋支持具において、前記本体部の前端部と後端部の少なくとも一方には、基部と、該基部に軸支されている操作部と、該操作部の動作に連動して前記耳部の支持/不支持が切り替わる支持部とを備え、該支持部は、前記耳部を支持する状態において、前記基部の下方に配される支持片を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の軒樋支持具は、上述した構成とされているため、軒樋の取り付け、取り外しが容易となっている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。まず、軒樋支持具の基本構成について説明する。なお、軒樋支持具が建物の軒先に固定されている状態を基準にして、前後方向(建物側を後ろ方向、それとは反対側を前方向)、幅方向(建物に対する見付の方向と一致する方向)、上下方向等を規定する。また、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
【0011】
本実施形態の軒樋支持具1について説明する。
図1、2の軒樋支持具1は、前後に耳部を有する軒樋6を支持する本体部4を備える。本体部4の前端部4aと後端部4bの少なくとも一方には、基部50と、基部50に軸支されている操作部51と、操作部51の動作に連動して耳部の支持/不支持が切り替わる支持部52とを備えている。支持部52は、耳部を支持する状態において、基部50の下方に配される支持片52bを備えている。
以下、詳しく説明する。なお、以下において軒樋6の耳部は、前側を前耳6a、後側を後耳6bとして説明する。
【0012】
軒樋支持具1は、建物の軒先7に取り付けられる固定部2と、固定部2に連結している取付杆3と、取付杆3に連結している本体部4と、本体部4の後端部4bに連結している耳保持部5とを備えている。本実施形態では、上述の各部材は別体で構成されており、各部材がリベット等により連結されることで、軒樋支持具1が構成されている。次に各部材について説明する。
【0013】
固定部2は、板体を加工して形成されており、軒先7に固着具8を打ち込むための挿通孔(不図示)が複数形成されている。そして、この固定部2の前方に取付杆3が設けられている。
【0014】
取付杆3は、帯板材を加工して形成されており、固定部2の上端中央部から前方に向けて延びた後部32と、後部32から前方に下り傾斜して段落ちして形成された前部31とを有している。そして、この取付杆3の下方には、前部31に連結された本体部4が設けられている。本実施形態の取付杆3は、後述する耳保持部5の操作部51が回動して後部32に接触しないような位置関係で、前部31と後部32とが構成されている。
【0015】
本体部4は、帯板材を加工して形成されており、本体部4の前端部4aは、上方に折曲されて軒樋6の前耳6aが係止されるようになっている。そして、本体部4の後端部4bには、基部50と操作部51と支持部52とを備える耳保持部5が設けられている。本体部4は、後述する耳保持部5の基部50と上下方向に重なる位置に、下方に突出した突出部41が形成されている。この突出部41は、本体部4の一部を下方に折り返して構成されており、軒樋6の一部(図面上においては後耳6bの前側)に接触することで後耳6bが脱落することを防止することができる。
【0016】
耳保持部5を構成する各部材について
図1(b)を参照して説明する。基部50は、平板材を加工して形成されている。基部50は、板面が上下方向を向くように本体部4の上面4cに取り付けられる。基部50の前側の幅方向中央部には、上方に突出したロック部54が設けられている。ロック部54は、平板状の部材であり、板面が幅方向を向くように設けられている。ロック部54の上側には幅方向に突出している半球状の凸部54aが設けられている。基部50の後側の両側端部には上方に突出した側壁50a,50aが形成されている。側壁50a,50aは、板面が幅方向を向くように構成されている。なお、支持部52が後耳6bを支持していない状態(操作部51が基部50に対して起立している状態)において、軸孔51aaは、軸部53よりも後方に位置し、且つ、軸部53と上下位置が略同じか軸部53よりも下方に位置している構成が望ましい。
【0017】
操作部51は、板面が幅方向を向く側板部51a,51aと、側板部51a,51aに接続された把持部51bとを有する。側板部51aには、後述する支持部52の接続部52cが挿通されることで支持部52と連結される軸孔51aaが設けられている。軸孔51aaは、接続部52cの直径よりも大きい径で形成されている。把持部51bには、ロック部54が挿通される挿通孔51baが設けられている。操作部51は、側板部51a,51aの挿通孔(不図示)と、基部50の側壁50a,50aの挿通孔(不図示)とが重なり合った状態で軸部53が挿通されて連結されている。これにより、操作部51は基部50に軸支されている。
【0018】
支持部52は、針金等の線状材からループ状に形成されている。支持部52は、操作部51に吊り下げられた状態で設けられており、下方に延伸している長辺部52aと、長辺部52aの下端部から略直角に前方に折曲された支持片52bとを有している。長辺部52aの上端部には、幅方向に延伸している接続部52cが設けられている。接続部52cの径は、操作部51の側板部51aの軸孔51aaの径よりも小さく形成されている。接続部52cは、操作部51の側板部51aの軸孔51aaに対して空隙を持った状態で吊り下げられているため、操作部51が軸部53に対して回動しても支持部52は回動せず、軸孔51aaの移動に伴って斜め上前方に引っ張り上げられるように移動する構成となっている。
【0019】
本実施形態の耳保持部5は、操作部51が基部50に対して起立している状態では、耳保持部5の支持部52は軒樋6の後耳6bを支持しない不支持状態となっており、操作部51が前方に倒された状態では、支持片52bが基部50の下方に位置し、支持部52が後耳6bを支持する支持状態となっている。
【0020】
次に、上述した軒樋支持具1に軒樋6を取り付ける方法について説明する。
固定部2が軒先7に接している状態で、固定部2の挿通孔にボルト等の固着具8を挿通させて、軒樋支持具1を軒先7に固定する。そして、耳保持部5を不支持状態にさせて、軒樋6の前耳6aを軒樋支持具1の本体部4の前端部4aに係止させつつ、後耳6bを軒樋支持具1の突出部41の後方に位置させるように移動させる。
【0021】
後耳6bが所定の位置に達したら、操作部51を
図2(b)の二点鎖線矢印に示すように前方に倒すように回動させる。このとき、軸孔51aaは、軸部53の軸周りに回動するので、
図2(b)に示す位置から
図2(c)に示す位置、すなわち斜め上前方に移動する。支持部52は、接続部52cが軸孔51aaに対して空隙を持った状態で吊り下げられているため、斜め上前方に引っ張り上げられるように移動する。そして、支持部52の支持片52bが後耳6bの下面6baに接触する。操作部51がそのまま前方に回動を続けると、把持部51bの挿通孔51baにロック部54が挿通され、凸部54aが挿通孔51ba内に圧入される。これにより、軒樋6の重さや外部からの力等により、不意に支持状態から不支持状態にならないように操作部51の回動がロックされる。このようにして、支持部52は、後耳6bを支持する支持状態となる。
【0022】
図2(a)及び
図2(c)の後耳6bは、本体部4と支持部52の支持片52bとにより上下に挟持されている。さらに後耳6bの前方には突出部41、後方には支持部52の長辺部52aが存在するので前後方向の移動も抑制される。そのため、軒樋6は軒樋支持具1から脱落しにくい状態で、軒樋支持具1を介して軒先7に固定される。
【0023】
軒樋6の清掃等のために軒樋支持具1から軒樋6を外す場合には、耳保持部5の操作部51を後方に回動させることで、支持部52が斜め下後方に移動して不支持状態となるので、容易に軒樋6を取り外すことができる。
【0024】
次に、軒樋支持具1の変形例について、
図3を参照して説明する。なお、
図1,2の軒樋支持具1と共通する部分は、なるべく同一の符号を付し、その構成と効果の説明は省略する。
【0025】
軒樋支持具1の後端部4bには、上方に折曲されて壁部42が設けられている。そして、壁部42の後面に耳保持部5が固定されている。そのため、耳保持部5の基部50は板面が前後方向を向くように固定されている。耳保持部5は
図1,2と略同じ構成とされているが、側板部51aの軸孔51aaの位置が異なっている。
図3(a)に示すように操作部51が軸部53によって吊り下げられて把持部51bの先端が下方を向いている状態(支持部52が不支持状態)では、軸部53よりも斜め下後方に位置するように側板部51aの軸孔51aaが設けられている。そのため、操作部51が上方に回動されて
図3(b)に示すように操作部51がロック部54によって回動がロックされている状態(支持部52が支持状態)に移行すると、軸部53よりも斜め上前方に側板部51aの軸孔51aaが位置するようになる。支持部52は、操作部51の側板部51a,51aの軸孔51aaに対して空隙を持った状態で吊り下げられている構成となっているため、操作部51が軸部53に対して回動しても、支持部52は回動せずに斜め上前方に引っ張り上げられるように移動する。なお、固定部2や取付杆3の後部32は、回動する操作部51と接触しないような位置関係で構成されている。
【0026】
次に
図3の軒樋支持具1に軒樋6を取り付ける方法について説明する。
固定部2が軒先7に接している状態で、固定部2の挿通孔にボルト等の固着具8を挿通させて、軒樋支持具1を軒先7に固定する。次に軒樋6の前耳6aを軒樋支持具1の本体部4の前端部4aに係止させる。そして、後耳6bが軒樋支持具1の突出部41の後方に位置するように移動させる。このとき、耳保持部5の支持部52は、軒樋6の後耳6bを支持しない不支持状態となっている(
図3(a)参照)。
図3(a)の状態では、把持部51bの先端は下方を向いている。この状態で操作部51を下方から上方(
図3(a)に示す二点鎖線矢印)に回動させると、支持部52は、回動せずに、斜め上前方に引っ張り上げられるように移動する。そして、支持片52bが後耳6bの下面6baに引っ掛かった状態となる。そのまま操作部51が回動を続けると、把持部51bの挿通孔51baにロック部54が挿通され、凸部54aが挿通孔51ba内に圧入されることで、操作部51の回動がロックされる(
図3(b)参照)。後耳6bは、本体部4の下面と支持部52の支持片52bとによって上下方向の移動が抑制され、さらに突出部41と支持部52の長辺部52aとによって前後方向の移動が抑制されるので、軒樋支持具1から脱落しにくくなる。このようにして、支持部52は後耳6bを支持する支持状態となる。
【0027】
軒樋6の清掃等のために軒樋支持具1から軒樋6を外す場合には、操作部51を下方に回動させることで、支持部52が斜め下後方に移動して不支持状態となるので、容易に軒樋6を取り外すことができる。
【0028】
図1,2の軒樋支持具1は、操作部51が上位置にあり、かつ、90度ほどの回動で支持部52による後耳6bの支持/不支持を切り替えることができるので操作しやすい。
図3の軒樋支持具1は、不支持状態における本体部4の後端部4bと支持部52の支持片52bとの間の上下空間が大きくなるので、後耳6bを本体部4の後端部4bと支持片52bとの間の上下空間に配置しやすくなる。
【0029】
図1,2の軒樋支持具1は、操作部51が約90度の回動構造、
図3の軒樋支持具1は、操作部51が約180度の回動構造であり、いずれも軸孔51aaの位置を考慮して設計されているため、支持片52bは下位置から斜め上前方に移動する。つまり、支持片52bが下位置(不支持状態)では、支持片52bが後方に位置し支持部52の入口と内部空間とを大きくとれるようになっており、軒樋6の前耳6aを軸にした回動による後耳6bの適正位置への配置がしやすくなっている。なお、支持片52bは、支持状態に移行することで斜め上前方に移動する構成に限定されることはない。軸孔51aaが上下対称の位置に移動することで、支持片52bが上下対称の位置に移動する構成でもよい。このような構成は、軸孔51aaが軸部53と上下方向に重なる位置に設ければよい。
【0030】
軒樋支持具1は、上述したものに限定されることはない。例えば、本体部4は取付杆3に対して前後方向にスライド移動可能に連結されてもよい。また、突出部41は本体部4の一部を折り返して形成されているが、別体の板材等を溶接等で固着して設けられた突出部41であってもよい。また、操作部51の回動をロックする構成は上述したロック部54の構成に限定されることはない。また、操作部51の回動をロックする機構がない構成であってもよい。また、基部50は、本体部4や壁部42と一体に構成されてもよい。そして、倉庫や工場等に用いられる折板屋根用の軒樋支持具等では、耳保持具が本体部の前端部と後端部の両方に設けられてもよい。