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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-188495(P2021-188495A)
(43)【公開日】2021年12月13日
(54)【発明の名称】裏込め用袋材および立坑の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 5/10 20060101AFI20211115BHJP
   E21D 11/00 20060101ALI20211115BHJP
【FI】
   E21D5/10
   E21D11/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-173008(P2020-173008)
(22)【出願日】2020年10月14日
(11)【特許番号】特許第6842052号(P6842052)
(45)【特許公報発行日】2021年3月17日
(31)【優先権主張番号】特願2020-93433(P2020-93433)
(32)【優先日】2020年5月28日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391047190
【氏名又は名称】岡三リビック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591075641
【氏名又は名称】東鉄工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000204620
【氏名又は名称】大嘉産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】山田 佳司
(72)【発明者】
【氏名】小浪 岳治
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 浩行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕明
(72)【発明者】
【氏名】山口 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】三浦 真也
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155EB06
2D155JA00
2D155KA00
(57)【要約】
【課題】土留材と地山との間の隙間を、裏込め材でより密に充填可能とする裏込め用袋材を提供すること。
【解決手段】軸方向Xおよび周方向Yに複数連結するライナープレートBなどの土留材の背面に取り付ける裏込め用袋材Aであって、内部に裏込め材を充填可能な注入口20を設けた袋本体10を少なくとも有し、袋本体10の縦方向を前記軸方向Xとし、かつ袋本体10の横方向を前記周方向Yとしたときに、袋本体10の縦方向側の伸度を袋本体10の横方向側の伸度よりも大きくし、かつ袋本体10の内部に袋本体10の縦方向に離隔した箇所間の距離を保持するように形状保持材40を配置することで、裏込め材の充填時における袋本体10の膨張方向を制御する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土留材を軸方向および周方向に複数連結して構造物を構成する際に、前記土留材の背面に取り付ける、裏込め用袋材であって、
裏込め材を充填可能な注入口を設けた、袋本体と、
前記袋本体の内部に配置する、形状保持材と、を少なくとも有し、
前記袋本体の縦方向を前記構造物の軸方向とし、かつ前記袋本体の横方向を前記構造物の周方向としたときに、
前記袋本体の縦方向側の伸度を、前記袋本体の横方向側の伸度よりも大きく構成し、
前記形状保持材が、前記袋本体の縦方向に離隔した箇所間の距離を保持するように前記袋本体に取り付けてあることを特徴とする、
裏込め用袋材。
【請求項2】
前記形状保持材が、シート状物からなり、
前記シート状物の上縁と下縁を袋本体に固定してあり、
前記シート状物の両側縁と、前記袋本体との間を開放してあることを特徴とする、
請求項1に記載の裏込め用袋材。
【請求項3】
前記シート状物に、当該シート状物の前背面を連通させる連通部を形成してあることを特徴とする、
請求項2に記載の裏込め用袋材。
【請求項4】
前記袋本体を構成する生地の縦方向側の伸度が50%以上であり、横方向側の伸度が30%以下であることを特徴とする、
請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の裏込め用袋材。
【請求項5】
前記袋本体に、前記袋本体の前後方向に分岐した二叉部を呈していることを特徴とする、
請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の裏込め用袋材。
【請求項6】
立坑の内側に土留材を軸方向および周方向に複数連結して構造物を構築してなる、立坑の構築方法であって、
前記構造物の両端を構成する土留材に、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の裏込め用袋材を取り付けておき、
前記裏込め用袋材に裏込め材を充填して、前記構造物の両側端の土留材と地山との間に閉塞空間を形成し、
前記閉塞空間に裏込め材を充填することを特徴とする、
立坑の構築方法。
【請求項7】
立坑の内側に土留材を軸方向および周方向に複数連結して構造物を構築してなる、立坑の構築方法であって、
前記構造物の両端を構成する土留材に、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の裏込め用袋材を取り付けておき、
前記土留材の下方に設けてある、形鋼からなる補強リングのフランジに形状保持材の端部を当接させた状態で、前記裏込め用袋材に裏込め材を充填することを特徴とする、
立坑の構築方法。
【請求項8】
立坑の内側に土留材を軸方向および周方向に複数連結して構造物を構築してなる、立坑の構築方法であって、
前記構造物の両端を構成する土留材に、請求項5に記載の裏込め用袋材を取り付けておき、
前記土留材の下方に設けてある、形鋼からなる補強リングのフランジに対し、前記二叉部の前面側の分岐端が補強リングのウェブ側に位置し、二叉部の背面側の分岐端が前記補強リングと地山との間に位置した状態で、前記裏込め用袋材に裏込め材を充填することを特徴とする、
立坑の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の構築時に使用する土留材の背面に裏込め材を注入するための裏込め用袋材および当該裏込め用袋材を用いた立坑の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立坑等の構築時に、地山の余堀の結果、土留材と地山との間に隙間が生じる場合がある。
従来、この隙間を、モルタルなどの裏込め材を充填することで土留材と地山とを一体化することが行われている。
例えば、以下の特許文献1には、ライナープレートの背面に配置する袋状容器からなる崩落防止・止水用部材が開示されており、この容器に裏込め材を注入することで容器を膨らませてライナープレートと地山との間の隙間を塞ぐ技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−338196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の発明では、以下に記載する課題のうち少なくとも何れか1つの課題を有する。
(1)容器内の注入口より鉛直方向上部側の空間や、ライナープレートの凹凸箇所、その他凹凸の大きい箇所へと裏込め材が充填されにくい。
(2)充填された裏込め材がライナープレートの周方向の未連結側端部からはみ出す態様で膨らんでしまうと、その後のライナープレートの連結作業に支障をきたす場合があることから、予め一周分のライナープレートを全て連結させてから裏込め材の充填作業を行うなどの対策が必要だった。
そのため、終電から始発までの短い時間で作業を行う必要がある鉄道工事などでの適用に向いていなかった。
(3)ライナープレート間に補強リングを取り付けた場合、裏込め材の充填によって膨らむ容器の形状が補強リング周辺の狭小な空間に追従できず、裏込め材の充填が不十分となる場合があった。
【0005】
よって、本発明は、土留材と地山との間の隙間を、裏込め材でより密に充填可能とする裏込め用袋材を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、土留材を軸方向および周方向に複数連結して構造物を構成する際に、前記土留材の背面に取り付ける、裏込め用袋材であって、裏込め材を充填可能な注入口を設けた、袋本体と、前記袋本体の内部に配置する、形状保持材と、を少なくとも有し、前記袋本体の縦方向を前記構造物の軸方向とし、かつ前記袋本体の横方向を前記構造物の周方向としたときに、前記袋本体の縦方向側の伸度を、前記袋本体の横方向側の伸度よりも大きく構成し、前記形状保持材が、前記袋本体の縦方向に離隔した箇所間の距離を保持するように前記袋本体に取り付けてあることを特徴とする。
また、本願の第2発明は、前記第1発明において、前記形状保持材が、シート状物からなり、前記シート状物の上縁と下縁を袋本体に固定してあり、前記シート状物の両側縁と、前記袋本体との間を開放してあることを特徴とする。
また、本願の第3発明は、前記第2発明において、前記シート状物に、当該シート状物の前背面を連通させる連通部を形成してあることを特徴とする。
また、本願の第4発明は、前記第1発明乃至第3発明のうち何れか1つの発明において、前記袋本体を構成する生地の縦方向側の伸度が50%以上であり、横方向側の伸度が30%以下であることを特徴とする。
また、本願の第5発明は、前記第1発明乃至第4発明のうち何れか1つの発明において、前記袋本体に、前記袋本体の前後方向に分岐した二叉部を呈していることを特徴とする。
また、本願の第6発明は、立坑の内側に土留材を軸方向および周方向に複数連結して構造物を構築してなる、立坑の構築方法であって、前記構造物の両端を構成する土留材に、前記第1発明乃至第5発明のうち何れか1つに記載の裏込め用袋材を取り付けておき、前記裏込め用袋材に裏込め材を充填して、前記構造物の両側端の土留材と地山との間に閉塞空間を形成し、
前記閉塞空間に裏込め材を充填する。
また、本願の第7発明は、立坑の内側に土留材を軸方向および周方向に複数連結して構造物を構築してなる、立坑の構築方法であって、前記構造物の両端を構成する土留材に、前記第1発明乃至第5発明のうち何れか1つに記載の裏込め用袋材を取り付けておき、前記土留材の下方に設けてある、形鋼からなる補強リングのフランジに形状保持材の端部を当接させた状態で、前記裏込め用袋材に裏込め材を充填することを特徴とする。
また、本願の第8発明は、立坑の内側に土留材を軸方向および周方向に複数連結して構造物を構築してなる、立坑の構築方法であって、前記構造物の両端を構成する土留材に、前記第5発明に記載の裏込め用袋材を取り付けておき、前記土留材の下方に設けてある、形鋼からなる補強リングのフランジに対し、前記二叉部の前面側の分岐端が補強リングのウェブ側に位置し、二叉部の背面側の分岐端が前記補強リングと地山との間に位置した状態で、前記裏込め用袋材に裏込め材を充填することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下に記載する効果のうち、少なくとも何れか1つの効果を奏する。
(1)袋本体の縦方向側の伸度を、前記袋本体の横方向側の伸度よりも大きくすることで、裏込め材の充填に伴う、袋本体の縦方向や前後方向への膨張を促し、土留材を構成する波形鋼板の隙間や、注入口に対し鉛直方向上部側の空間等に、裏込め材を密に充填することができる。
(2)袋本体の横方向側の伸度を小さくすることで、袋本体の横方向側の膨張を一定の範囲に制限し、土留材の横方向の未連結側端部から、袋本体がはみ出すことを防止できる。
(3)袋本体の内部に形状保持材を配置することで、袋本体の縦方向側の膨張を制限することで、裏込め材の充填に伴う袋本体の膨張を、特に前後方向側への膨張に絞って促すことができる。
(4)形状保持材をシート状物で構成し、シート状物の両側縁と袋本体との間を開放しておくことで、シート状物の裏側へ裏込め材を回り込ませることができ、形状保持材の裏側の空間に対する裏込め材の充填性が向上する。
(5)形状保持材を構成するシート状物の前背面を連通させる連通部を設けることで、当該連通部を経由した、形状保持材背面側への裏込め材の流入を促し、形状保持材の裏側への裏込め材の充填性が向上する。
(6)袋本体に二叉部を設けることで、当該二叉部を構成するそれぞれの分岐端が、土留材間に配置した補強リング周辺の狭小空間に入り込みやすくなり、裏込め材の充填性が向上する。
(7)周方向に連結する複数の土留材からなる構造物の両側端の土留材に、裏込め用袋材を設置して閉塞空間を形成することで、その他の土留材間に裏込め用袋材を配置することなく、密に裏込め材を充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に係る裏込め用袋材の構成と土留材への取り付け状態を示す概略斜視図。
図2】使用例1に係る裏込め用袋材の形状遷移を示す概略側面図。
図3】使用例1に係る裏込め用袋材の充填後の状態を示す概略平面図。
図4】使用例2に係る裏込め用袋材の充填後の状態を示す概略平面図。
図5】実施例2に係る裏込め用袋材の構成を示す概略図。
図6】実施例3に係る裏込め用袋材の構成を示す概略図。
図7】実施例4に係る裏込め用袋材の構成を示す概略図。
図8】実施例4に係る裏込め用袋材の形状遷移を示す概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
<1>全体構成
図1に、本発明に係る裏込め用袋材A(以下、単に「袋材A」ともいう。)の全体構成を示す。
本発明に係る袋材Aは、土留材を、軸方向Xおよび周方向Yに複数連結して構造物を構成する際に、土留材の背面に取り付ける袋本体10を少なくとも有する部材である。
この袋本体10の内部に裏込め材を充填することで、袋本体10を膨張させ、土留材と地山との間の隙間を、膨張させた袋本体10の内部に充填された裏込め材で満たすことによって、土留材と地山との一体化を図る。
【0011】
<1.1>土留材
土留材は、地山の表面近傍に複数連結して、地山の土留機能を発揮する構造物を構成するための部材である。
土留材には、種々の形状の製品を用いることができ、具体的には、波形鋼板の周囲に連結用のフランジとなるフレームを接合してなるライナープレートやJプランクプレート、その他立坑やトンネルの土留材として使用可能な公知の部材を用いることができる。
なお、前記した波形鋼板の波形状は、正弦波形状、矩形波形状、三角波形状、台形波形状、またはこれらの組合せに係る形状など、種々の形状が含まれる。
本実施例では、土留材として、略正弦波形状を呈する波形鋼板B1の周囲に、連結用のフランジとなるフレームB2を接合してなる、ライナープレートBを用いている。
以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0012】
<2>袋本体
袋本体10は、裏込め材を内部に充填するための部材である。
袋本体10の前面側には、袋内部と連通する筒状の注入口20を設けており、この注入口20を波形鋼板B1に設けた挿通孔B11に挿通して、ライナープレートBの前面に露出させた注入口20から裏込め材を注入し、袋本体10の内部に裏込め材を充填させて使用する。
【0013】
<3>袋本体の形状
袋本体10の形状は、特段限定せず、使用する土留材の形状に応じて適宜設計すればよい。
本実施例では、袋本体10の形状を、矩形状の土留材と略同等、若しくはやや小さく構成した形状とし、生地の周囲の一部または全部を、縫合や接着などの公知の方法を用いて袋形状としている。
【0014】
<4>生地の素材
袋本体10を構成する生地の素材は、不織布、織布など、可撓性や伸縮性を有する素材を用いることができる。
【0015】
<5>生地の伸度
袋本体10を構成する生地の伸度は、袋本体10の縦方向を構造物の軸方向Xとし、かつ袋本体10の横方向を構造物の周方向Yと定義したときに、前記袋本体10を構成する生地の縦方向側の伸度が、前記生地の横方向側の伸度よりも大きくなるよう構成する。
これは、袋本体10に裏込め材Cを充填した際に、袋本体10の膨張方向を制御するためである。
【0016】
なお、袋本体10に使用する生地は横方向側に伸びない態様とすることが好ましい。この「伸びない態様」とは、生地の伸度が0%であることのみを示すものではなく、例えば30%以下を意図するものである。
本実施例では、袋本体10に使用する生地の縦方向側の伸度を50%以上とし、横方向側の伸度を30%以下としている。
【0017】
<6>その他の構成
袋材Aには、土留材に対し、袋材Aを正しい位置で設置するための位置決め部30を設けても良い。
位置決め部30は、袋本体10の周囲から張り出すように設けた帯状部材で構成することができ、この帯状部材を土留材の周面に沿わせて固定すること等によって、ライナープレートBに対し所定の位置に袋本体10をセットすることができる。
本実施例では、袋本体10の上縁に位置決め部30を設けており、この位置決め部30を、ライナープレートBの上部のフレームB2の背面側の縁部と、前面側の縁部とで折曲して鉤状に構成することで、当該フレームB2に袋本体10を係止して位置決めした態様としている。
なお、本実施例では、ライナープレートBのフレームB2に、隣り合う別体のライナープレートBとの結合に用いる連結孔B21が設けてあるため、予め位置決め部30に、連結孔B21の位置に対応する取付孔31を設けておくか、現場設置時に、連結孔B21に重なる箇所を穿孔して取付孔31を形成してもよい。
【0018】
<7>使用例1(図2図3
図2,3を参照しながら、本発明に係る袋材の使用例について説明する。
【0019】
(1)ライナープレートへの設置〜充填作業の初期段階(図2(a))
まず、袋材Aを、ライナープレートBの背面に取り付ける。
このとき、袋材Aの上縁に設けた位置決め部30をライナープレートBのフレームB2上部に沿わせるように折曲させ、上下に隣接するライナープレートBの連結機構を流用して取り付けることができる。
注入口20は、ライナープレートBの前背面を貫通させて設けてある挿通孔B11に差し込んで、ライナープレートBの前面側に露出させておく。
この状態で注入口20から裏込め材Cの注入を開始すると、裏込め材Cは袋材Aの下部から徐々に充填されていく。
【0020】
(2)縦方向への伸展促進(図2(b))
裏込め材Cの注入が進んでいくにつれ、袋材Aは裏込め材Cの注入圧によって生地がもつ伸縮性に従って伸び、膨らみ始める。
このとき、本発明に係る袋材Aは、取り付け状態において、縦方向(ライナープレートBの軸方向、図2における紙面上下方向に相当。)の伸度は、横方向(ライナープレートBの周方向、図2における紙面奥行き方向)の伸度よりも大きく構成してあるため、袋材Aは、縦方向の伸びに応じて、図2(b)に示すように、紙面上下方向および紙面左右方向に膨らんでいく。
その結果、注入口20よりも上部の空間に対しても、袋材Aの伸展および膨張に伴って裏込め材Cが充填されることとなる。
【0021】
(3)横方向への伸展抑制(図3
一方、本発明に係る袋材Aの横方向(ライナープレートBの周方向、図2における紙面奥行き方向に相当。)の伸度は小さく構成してあるため、袋材Aは、横方向には伸びず、充填前の袋材Aの横長から大きく変化することはない。
そのため、図3に示すように、裏込め材Cの注入後に、袋材Aの側端がライナープレートBの側端からはみ出さず、袋材Aの側端位置がライナープレートBの背面内に収まるため、ライナープレートBの周方向に連結する別体のライナープレートBの連結を妨げることがない。
したがって、作業時間の制約などから、一周分のライナープレートBの連結作業を一度に完成できない場合であっても作業の再開に支障が生じにくい。
したがって、本発明に係る袋材Aは、終電と始発の間に作業を行う必要がある、鉄道での立坑構築工事などに特に好適である。
【0022】
<8>使用例2(図4
本発明に係る袋材Aは、構造物を構成する土留材の全てについての設置を要するものに限らない。
例えば、図4に示すように、地山Dの内周側に設ける構造物を構成する複数のライナープレートBのうち、側端を構成するライナープレートBに袋材Aを取り付けておき、この袋材Aに裏込め材Cを充填して、構造物の両側端のライナープレートBと地山Dとの間に閉塞空間を形成し、この閉塞空間に裏込め材Cを充填して構造物と地山Dとの間を裏込め材Cで一体化することもできる。
【実施例2】
【0023】
<1>形状保持材の配置(図5(a))
図5に、実施例2に係る裏込め用袋材の概略図を示す。
本発明に係る袋材Aは、袋本体10の内部に形状保持材40を設けることもできる。
形状保持材40の形状は特段限定せず、棒状部材や板状部材などを採用することができる。また、形状保持材40の素材は、離隔距離の保持機能の観点から、弾性や伸縮性を有しない素材が望ましい。
本実施例では、形状保持材40を矩形状のシート体で構成しており、当該シート体の大きさを、充填前の袋材Aの平面形状の大きさとほぼ同じに構成している。
そして、形状保持材40の上縁および下縁を袋材Aに接合し、形状保持材40の両側縁は袋材Aと接合せずに開放した状態としている。
【0024】
<2>使用イメージ(図5(b))
本実施例に係る袋材Aによれば、裏込め材Cの注入に伴い、袋本体10は縦方向に伸展して紙面上下方向に膨らもうとするものの、形状保持材40によって紙面上下方向への膨らみが抑制され、紙面左右方向に膨らむことになる。その結果、袋本体10はライナープレートBの背面と地山D表面を押しつけるように膨らみ、両者の間の隙間を埋めるように作用する。
また、形状保持材40の両側縁が袋本体10と接合せずに開放してあることから、注入口20から充填される裏込め材Cがこの開放部分から形状保持材40の背面にも回り込むため、袋本体10の内部の充填空間に均一に裏込め材Cを充填するにあたって、形状保持材40が障害になることもない。
【実施例3】
【0025】
<1>連通部の形成(図6
図6に、実施例3に係る裏込め用袋材の概略図を示す。
本実施例に係る袋材Aは、実施例2で示した形状保持材40の表面にスリットを設けた構成である。
充填した裏込め材Cをこのスリットから流入させることで形状保持材40の背面側への裏込め材Cの充填性を高めることができる。
【実施例4】
【0026】
<1>二叉部の形成(図7
図7に、実施例4に係る裏込め用袋材の概略図を示す。
本実施例に係る袋材Aは、実施例2で示す形状保持材40を設けつつ、袋本体10の縦方向下部側において、前記した形状保持材40を挟んで、前記袋本体10を前後方向に分岐した二叉部50を形成している。
形状保持材40の上縁は、袋本体10の上部と接合し、形状保持材40の下縁は袋本体10の下部側に設けた二叉部50の根本部分と接合している。
形状保持材40の両側縁は、袋本体10と接合せずに開放した状態とする。
また、形状保持材40の表面には、実施例3に示す連通部44を形成しておいても良い。
【0027】
なお、本発明に係る袋材Aにおいて、前記二叉部50を設けるにあたって、前記形状保持材40の構成は必須ではない。例えば袋本体10の生地の縫製位置を調整するなどの方法によって、予め二叉部50を備えた袋材Aとすることができる。
【0028】
<2>使用イメージ(図8
図8に、二叉部50を設けた裏込め用袋材の使用イメージを示す。
本実施例では、土留材であるライナープレートBからなる構造物において、ライナープレートBの縦方向に隣接するライナープレートB間に断面H形状の補強リングEを介在させている。
この補強リングEを構成する地山D側のフランジE1に、形状保持材40の下縁を当接させることで、袋本体10の二叉部50の前面側の分岐端51が補強リングEのウェブ内に位置し、二叉部50の背面側の分岐端51が補強リングEと地山Dとの間に位置することとなる。
この状態で裏込め材Cの充填を行うと、ライナープレートBと補強リングEとの間の隙間と、補強リングEと地山Dとの間の隙間の両方に、裏込め材Cが確実に充填され、地山D、土留材および補強リングEとの間を強固に一体化することができる。
【符号の説明】
【0029】
A:裏込め用袋材(袋材)
10:袋本体
20:注入口
30:位置決め部
31:取付孔
40:形状保持材
41:上縁
42:下縁
43:側縁
44:連通部
50:二叉部
51:分岐端
B:ライナープレート(土留材)
B1:波形鋼板
B11:挿通孔
B2:フレーム
B21:連結孔
C:裏込め材
D:地山
E:補強リング
E1:フランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8