(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-188611(P2021-188611A)
(43)【公開日】2021年12月13日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
F01N 13/00 20100101AFI20211115BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20211115BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20211115BHJP
【FI】
F01N13/00 B
E02F9/00 M
F01N13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-161964(P2020-161964)
(22)【出願日】2020年9月28日
(31)【優先権主張番号】特願2020-90525(P2020-90525)
(32)【優先日】2020年5月25日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一磨
(72)【発明者】
【氏名】大澤 亮
【テーマコード(参考)】
2D015
3G004
【Fターム(参考)】
2D015CA02
3G004AA03
3G004BA06
3G004DA23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】排気管内の水分を効果的に排出可能な排気構造を備えた建設機械を提供する。
【解決手段】エンジンパワーユニットを収納可能なハウス20を備えている建設機械において、ハウスの天板上20bには、エンジンからの排ガスを案内する排気管23と、該排気管の下流側に接続される箱形状のチャンバー(排気室)24とが設けられ、チャンバーは、導入した排ガスを排気流として排出する排風口28と、排気管の排気出口23aから排ガスと共に吹き出た水滴を排出する排水部29とを備えている。また、チャンバーは、底面に水滴を排水部へと導く傾斜面24cが形成され、水平向きに開口した前記排風口には、羽板30aの下端をチャンバーの底面に向けたルーバ30が取り付けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラを備えた下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前部に設けられた作業装置とを備え、前記上部旋回体は、機体フレームと、該機体フレーム上の車幅方向一側部に設けられ、前記作業装置の駆動力を発生させるエンジンパワーユニットと、該エンジンパワーユニットを収納可能なハウスとを備えている建設機械において、
前記ハウスの天板上には、エンジンからの排ガスを案内する排気管と、該排気管の下流側に接続される箱形状のチャンバーとが設けられ、
前記チャンバーは、導入した排ガスを排気流として排出する排風口と、前記排気管の排気出口から排ガスと共に吹き出た水滴を排出する排水部とを備えていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記チャンバーの底面には、前記水滴を前記排水部へと導く傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1記載の建設機械。
【請求項3】
前記チャンバーは、前記排風口を水平向きに開口させ、該排風口には、羽板の下端を前記チャンバーの底面に向けたルーバが取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の建設機械。
【請求項4】
前記排気管と前記チャンバーとは、箱形状のダクトを介して接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の建設機械。
【請求項5】
前記チャンバー内には、前記ダクトと前記排風口との間を隔てる立板が設けられていることを特徴とする請求項4記載の建設機械。
【請求項6】
前記チャンバー内には、該チャンバーの底面に溜まった水滴を捕集する抑え板が設けられていることを特徴とする請求項5記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関し、詳しくは、エンジンパワーユニットを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、杭打機、油圧ショベル、トラクターなどの建設機械や農業機械では、動力源であるディーゼルエンジンを駆動させると排ガスが発生するため、排気系に排ガス浄化装置を設置して排気中に含まれるNOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)などを低減している(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−7556号公報
【特許文献2】特開2015−113769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の産業車両は、その構造上、使用環境や運転状態によって排気管内に雨水が流入したり、排ガスの浄化過程で生成された水分が排気管内に残留したりする。この状態に気が付かないまま長期間放置してしまうと、排気管の腐食が進んで排ガス浄化装置の機能が損なわれてしまう。また、排気管に水滴が付着している状態でエンジンを始動すると、微量のすすが混ざった黒い液状の水滴が排気口から飛散して、エンジンカバーなどを汚してしまうという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、排気管内の水分を効果的に排出可能な排気構造を備えた建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の建設機械は、クローラを備えた下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前部に設けられた作業装置とを備え、前記上部旋回体は、機体フレームと、該機体フレーム上の車幅方向一側部に設けられ、前記作業装置の駆動力を発生させるエンジンパワーユニットと、該エンジンパワーユニットを収納可能なハウスとを備えている建設機械において、前記ハウスの天板上には、エンジンからの排ガスを案内する排気管と、該排気管の下流側に接続される箱形状のチャンバーとが設けられ、前記チャンバーは、導入した排ガスを排気流として排出する排風口と、前記排気管の排気出口から排ガスと共に吹き出た水滴を排出する排水部とを備えていることを特徴としている。
【0007】
また、前記チャンバーの底面には、前記水滴を前記排水部へと導く傾斜面が形成されていることを特徴としている。さらに、前記チャンバーは、前記排風口を水平向きに開口させ、該排風口には、羽板の下端を前記チャンバーの底面に向けたルーバが取り付けられていることを特徴としている。加えて、前記排気管と前記チャンバーとは、箱形状のダクトを介して接続されていることを特徴としている。また、前記チャンバー内には、前記ダクトと前記排風口との間を隔てる立板が設けられていることを特徴とし、さらに、前記チャンバー内には、該チャンバーの底面に溜まった水滴を捕集する抑え板が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の建設機械によれば、排ガスが導入される箱形状のチャンバーに排風口と排水部とを備えているので、チャンバー内で排ガスを拡散してその勢いを弱めながら、排ガスと共に吹き出た水滴を飛散させずに排水することができる。また、チャンバーの底面に水滴を排水部へと導く傾斜面を形成しているので、チャンバー内からの排水を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1形態例を示す杭打機の側面図である。
【
図5】本発明の第2形態例を示す排気構造の要部断面図である。
【
図7】本発明の第3形態例を示す排気構造の要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至
図6は、本発明を建設機械の一例である杭打機に適用した第1形態例を示している。杭打機11は、
図1に示すように、クローラ12aを備えた下部走行体12の上部に、旋回ベアリング13を介して上部旋回体14が旋回可能に設けられており、上部旋回体14の前部には、リーダなどの杭打用の起伏部材(図示せず)が設けられている。また、上部旋回体14の前後左右の4箇所に安定用のジャッキ15(前部側は図示せず)が設けられている。さらに、上部旋回体14の後端部に杭打機11のバランスをとるためのカウンタウエイト16が搭載されるとともに、上部旋回体14の後部上方には起伏可能なガントリ17が設けられている。
【0011】
上部旋回体14は、下面に旋回ベアリング13が取り付けられる矩形箱状のメインフレームと、該メインフレームの車幅方向両側部に枠組みされたフロアフレーム18(反対側は図示せず)とが一体的に結合されている機体フレームを有しており、各種大型部品は主にメインフレームに装着されている。右側のフロアフレーム上の前部には、作業装置であるオーガや上部旋回体14、下部走行体12などを駆動させる操作がなされる運転室19が設置されている。また、右側のフロアフレーム上の後部には、作動油タンクなどの油圧機器を収納する機器収納ハウス(図示せず)が設けられている。一方、左側のフロアフレーム18上には、エンジンの駆動を受けて圧油を供給するための油圧源装置として、エンジンパワーユニットや、これに付属する燃料タンク、排ガス浄化装置などの複数の関連機器を収納するエンジン収納ハウス20が設けられている。
【0012】
各ハウス20は、略矩形箱型に形成され、複数の点検扉20a(反対側は図示せず)がそれぞれ設けられている。また、エンジン収納ハウス20の前部には、天板20b上に移動するための階段20cや梯子20dが設けられている。これにより、保守や組立作業に従事する者は、フロアフレーム18に取り付けたステップ18aを足場として上部旋回体14の後部へ移動したり、ハウスに上がって、手摺21の内側で作業が行えるようになっている。
【0013】
エンジンパワーユニットは、図示は省略するが、フロアフレーム18上に防振状態で搭載されたディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)と、該エンジンにおける冷却ファンの存在側とは反対側となる後部側に、片持ち状に取り付けられた油圧ポンプ装置とを有して構成されている。また、フロアフレーム18上のエンジンの前部側、つまり冷却ファンによる冷却風の流れ方向の上流側には、冷却ファンと対面して配置されたラジエータが設けられている。さらに、エンジン収納ハウス20内における階段20cの真下付近には燃料タンク及び還元剤タンクがそれぞれ配置されている。
【0014】
エンジンの吸気管には、エンジン収納ハウス20の天板20b上に設置されたエアクリーナ22が接続されており、該エアクリーナ22で吸い込んだ新気(外部空気)をエンジンの各気筒に対して供給可能になっている。一方、エンジンの排気管には、高次の排ガス規制に対応する排ガス浄化装置が設けられている。排ガス浄化装置は、尿素水を還元剤とするSCR(Selective Catalytic Reduction:選択還元型触媒)や、排気管のSCRに対して上流側に配置されるとともに、排気管内の排ガスに向けて尿素水を噴射する噴射ノズルなどを有している。これにより、燃焼後の排ガスは、排ガス浄化装置で浄化処理がなされた後、ハウス20の天板20b上に設置された排気管に案内されて排気出口から外部に排出される。具体的には、尿素水が噴射されると、高温雰囲気下の尿素水の分解反応でアンモニアが生成され、該アンモニアによって排ガス中のNOxが還元されて水と窒素に分解されるようになっている。
【0015】
エンジンを駆動すると、エンジンパワーユニットから必要となる動力が、例えば、オーガ昇降用油圧モータやオーガ駆動用油圧モータなどを作動させる圧油が得られ、リーダの前面に装着したオーガの昇降及び回転駆動を含む各種動作が行える。これにより、杭打機11は、工事現場の施工位置にジャッキ15を接地した静止状態で、オーガから駆動力を得て地中に杭を造成することが可能になる。
【0016】
ところで、尿素SCRシステムを装備したエンジンパワーユニットでは、NOxの還元によって生成された水は、通常、高温の排気管内で蒸発して排ガスと共に外部へ排出されるが、例えば、エンジン始動時やアイドリング状態、軽負荷運転時のような、排気管の温度が低い状態では液状のまま排出される。この場合、排気管内にすすが付着していると水分がすすを巻き込んで飛び散り、エンジン収納ハウス20の表面やステップ(足場)18aを汚してしまうおそれがある。そこで、このような事情から、杭打機11には、排気出口から排ガスと共に吹き出た水滴を飛散させずに排出可能な排気構造が備わっている。
【0017】
前記排気構造は、
図2乃至
図4に示すように、エンジンからの排ガスを案内する排気管(テールパイプ)23と、該排気管23の下流側に接続されるチャンバー(排気室)24とからなり、基本的には、エンジン収納ハウス20の天板20b上において、SCR(筐体)25と一体的に集約配置され、これらを収納するハウスカバー26を含めて組付性を考慮しつつ、排気出口23aから吹き出た排ガスや水分の排出を円滑に達成させる構造である。
【0018】
排気管23は、SCR25の下流側に接続されるU字配管部23bと、パイプ材を斜め切断して得た排気出口23aを有するL字配管部23cとを互いに接続し、排気流路全体を3次元的に延ばして形成されている。L字配管部23cは、排気出口23aがチャンバー24内に位置するように、該チャンバー24の上面24a前部に貫通固定されている。これにより、U字配管部23bとL字配管部23cとは、チャンバー24を設置するときに互いに接続され、グラスマット27を使用して接続部の段差(隙間)が吸収される。
【0019】
チャンバー24は、導入した排ガスを一旦滞留させるための排気室であり、前後方向(
図2の左右方向)に延びる矩形箱状をなし、室内の排ガスを排気流として排出する排風口28と、排気管23の排気出口23aから排ガスと共に吹き出た水滴を排出する排水部29とを備え、排風口28のある外側面(
図3における左側)をハウス20の車幅方向外側面と略面一ないし若干内側に引き込んだ位置に設けられている。
【0020】
排風口28は、チャンバー24の外側面を矩形状に大きく開口させることによって、水平向きの開口を形成している。また、排風口28には、4枚の羽板30aを整列して設けたルーバ30が取り付けられている。各羽板30aは、取付枠30bの内側面において、それぞれの下端をチャンバー24の底面に向けた斜め下向きに、例えば、45度下向きに取り付けられている。取付枠30bは、チャンバー24の外側面に整合させた矩形状の板材であり、排風口28の周囲に設けた複数の裏ナット(溶接ナット)24bを用いてボルト31で取り付けられる。これにより、取付枠30bを着脱する動作に伴って、各羽板30aが排風口28に対して一体で着脱可能になっている。
【0021】
また、チャンバー24の底面には、排気出口23aから吹き出た水滴を排水部29へと導く傾斜面24cが形成されている。排水部29は、傾斜面24cにおいて排風口28がある外側(山側)と反対の内側(谷側)の面に設けられ、水抜き孔にホース接続部(パイプ材)29aを位置合わせして溶接したものである。ホース接続部29aには排水用のホース32が差し込まれ、ホースバンド(図示せず)を使用して抜け止めを図っている。ここで、ハウス20上のチャンバー24は、前後一対のブラケット33,33を介してボルト34で固定され、天板20bから浮かした状態で保持されている。これにより、排気管23の接続部に無理を与えることなく、チャンバー24の底面において、排水部29へと傾斜を付けた排水構造が実現される。
【0022】
ハウスカバー26は、SCR25や排気管23などが程よく収まる大きさの箱形状であり、外側面には、ハウス20の天板20bに取り付けた状態で、チャンバー24の排風口28を露出させる切欠き口26aが設けられている。切欠き口26aは、チャンバー24の外形に対応した幅と切込み深さ(高さ)とを有している。また、ハウスカバー26の上面は、貫通孔や突出部のない平坦状に形成されており、例えば、車体上で機器の保守を行う際に、上部旋回体14の前部及び後部間の行き来を可能にする足場となる。
【0023】
このように形成された杭打機11は、製造工程の終盤において、ハウス20の天板20b上にエアクリーナ22やSCR25、排気管23、チャンバー24などの吸排気系部品を設置した後、ハウスカバー26が組み付けられる。ここで、前記ホース32の接続作業は、ハウスカバー26の組付前後のいずれにおいても可能である。具体的には、所定長さのホース32を、あらかじめ、ホース接続部29aが設置される部分(上部)とフロアフレーム18の後端部(下部)との間で、ハウス20の内壁面に沿った引き回しがなされている。これにより、作業者は、点検扉20aを開けてハウス20内にあるホース32の端部を手に取り、該ホース32の接続作業が行える。
【0024】
ホース32の接続作業を終えると、杭打機11は、燃料や作動油、尿素水の供給工程を経て完成状態となり、エンジンパワーユニットを稼働することよって必要な動力が、例えば、オーガ昇降用油圧モータ及びオーガ駆動用油圧モータを作動させる圧油が得られ、オーガの昇降及び回転駆動を含む各種動作によって杭打ち機能を発揮できる状態となる。その後、動作確認を終えた杭打機11は、本塗装がなされて工場から出荷される。
【0025】
ここで、エンジンパワーユニットを稼働すると、NOxの還元によって生成された水が液状のまま排出されてしまう場合があるが、この場合であっても、排気出口23aから吹き出た排ガスは、排気管23とチャンバー24との流路断面積の差によって拡散して流速が下がり、これにより、排ガスと共に吹き出た水滴も、その吹き出す勢いが弱まる。風速が弱まった排ガスはルーバ30によって整流され、排風口28から排気流として斜め上向きに排出される。一方、水滴はチャンバー24の底面に付着した後、傾斜面24cを伝って排水部29からホース32内に流下する。また、アクセルを吹かすなどして排ガスの吹き出し量が急激に増した場合であっても、チャンバー24の内壁部に当たって捕捉された水滴は、同様にして、傾斜面24cを伝って排水部29へ導かれる。このとき、ルーバ30の内面に付着した水滴は、羽板30aの傾斜によって自重で下端に移動した後、チャンバー24の底面に流れ落ちる。こうして、排水部29に誘導された水滴は、ホース32内を通って地上に排出される。
【0026】
このように、本発明の建設機械の第1の排気構造によれば、排ガスが導入される箱形状のチャンバー24に排風口28と排水部29とを備えているので、チャンバー24内で排ガスを拡散してその勢いを弱めながら、排ガスと共に吹き出た水滴を飛散させずに排水することができる。また、チャンバー24の底面に水滴を排水部29へと導く傾斜面24cを形成しているので、チャンバー24内からの排水を容易に行うことができる。
【0027】
さらに、水平方向に開口させた排風口28に、羽板30aの下端をチャンバー24の底面に向けたルーバ30を取り付けているので、排ガスの通気性を確保しつつ、すす混じりの水分が排風口28から直接外部に流出することを防止できる。とりわけ、ルーバ30の機能的な排気構造によって排気流を上向きに整流することが可能となり、排風口28がある位置の近傍で作業している作業者に熱風が当たるのを防止できる。また、排風口28から雨水が流入することもあるが、下向きの羽板30aによって、ルーバ30の内面に付着したすすを雨水で効率的に洗浄できることから、実用性に優れたものである。
【0028】
図5及び
図6は、本発明の排気構造を備えた杭打機の第2形態例を示している。各図は、ハウス20上に設置した状態のチャンバー24を、
図5は車両後部側から、
図6は車両上方からそれぞれ見たもので、排風口28が設けられた面(
図5において左側,
図6において下側)が車幅方向外側面である。なお、以下の説明において、前記形態例に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0029】
本形態例では、チャンバー24の特徴的な構成をそのまま有し、排気系部分のうちのL字配管部23cをダクト35に代えて構成している。ダクト35は、前後方向に延びる矩形箱状をなし、チャンバー24の前部側上面においてハウスカバー26内に収まる位置に設けたもので、U字配管部23bに接続され、排気入口として機能する筒状の配管接続口35aと、ダクト35の前後端に亘って延びるとともに、導入した排ガスを当てて横向きから下向きの流れに変えるテーパ面35bとを有している。また、ダクト35の設置に伴って、チャンバー24の上面板には、矩形状の通風口24dと、該通風口24dの外縁部において前記テーパ面35bに対応する長さで配置された鉛直下向きのガイド板24eとが設けられている。これにより、配管接続口35aを通じて吹き出た排ガス及び水滴は、ダクト35のテーパ面35bによって、排ガスについては、その流れが横向きから下向きに変更された後、ガイド板24eの板面に沿って整流され、一方、水滴についてはチャンバー24内に直接落下し、あるいは、一旦テーパ面35bに当たって捕捉された後、ガイド板24eの板面を伝って、その下端からチャンバー24内に流れ落ちる。
【0030】
そして、このように構成された第2の排気構造においても、上述のL字配管部23cを用いた場合と同様の効果が発揮でき、さらに、本形態例の場合には、チャンバー24の上流側に設けた箱形状のダクト35によって、排ガスの流れに抵抗を与えながら、排風口28に向かう流路断面積を段階的に広げることが可能となり、排ガスや、該排ガスと共に吹き出た水滴の勢いを効率よく弱めることができる。
【0031】
図7乃至
図10は、本発明の排気構造を備えた杭打機の第3形態例を示している。各図は、ハウス20上に設置した状態のチャンバー24を、
図7は車両外側方向から、
図8は車両後部側から、
図9及び
図10は車両上方からそれぞれ見たもので、排風口28が設けられた面(
図7において手前側、
図8において左側,
図9及び
図10において下側)が車幅方向外側面である。なお、以下の説明において、前記形態例に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0032】
本形態例では、チャンバー24及びダクト35からなる第2形態例の排気構造(2段階吹込み型構造)を更に発展させたもので、チャンバー24は、前記形態例のものよりも小さく形成した排風口28をダクト35に対応する前部側位置に設けるとともに、ダクト35を通ってチャンバー24内に吹き込んだ水分の捕捉とその整流とを促す板構造として、立板36と抑え板37とを備えている。
【0033】
立板36は、排ガスと共に吹き出た水滴を排ガスから分離させるもので、チャンバー24内の前部側空間を車幅方向の外側空間38と内側空間(奥側)39とに区画してダクト35と排風口28との間を隔て、両空間38,39の容積差、つまり排気流路の断面積の差が小さくなるように、前記通風口24dの車幅方向外縁部を間に挟んでダクト35のテーパ面35bとおよそ上下対称となる位置に設けられている。こうした立板36の配置によってチャンバー24内の風速変動を抑えて、内側空間39から外側空間38へとチャンバー24内の後部側でUターンする排気流が形成される。また、内側空間39に流入した水滴は、立板36によって捕捉された後、傾斜に沿って底面24cに流れ落ちる。
【0034】
抑え板37は、チャンバー24内の底面24cに溜まった水滴を捕集するもので、前記外側空間38において、水平状の板材が底面24cから排風口28の下端の高さ位置を超えない範囲の高さに配置され、立板36の後方で底面24cに向けて折り曲げた折り板部37aを有している。折り板部37aの前後端部の2箇所には、抑え板37の下部空間への排気流の流入口40が設けられ、水滴が優先的に流れ込む。また、流入口(上流側)40の断面積の大きさが流出口(下流側)41の断面積の大きさよりも小さく形成されており、流出口41に向かい流速が小さくなって水滴の流れが止まるようになっている。さらに、抑え板37の前部側、つまり排ガスの流出口41側は、斜め切断された切断板部37bが設けられ、開口部の断面積変化、つまり風速変動を緩やかにして、抑え板37の下部空間内に捕集された水滴がしぶきを上げることを抑制する。
【0035】
そして、このように構成された第3の排気構造においても、箱形状のダクト35によって排ガスの流れに抵抗を与えながら、排ガスや、該排ガスと共に吹き出た水滴の勢いを効率よく弱めることができ、さらに、本形態例の場合には、チャンバー24内の限られた空間を立板36で区画してダクト35と排風口28との間を隔てるとともに、上流側の通風口24dと下流側の排風口28とを連通する流路の断面積を流路全域に亘って略等しく形成しているので、チャンバー24内に導入した排ガスを遠回りさせながら排風口28に向かう緩やかな流れを作ることができる。これに加えて、抑え板37の効果的な形状・配置と相俟って、排風口28の位置やルーバ30の形状など各部の構成を最適化したので、チャンバー24からの水滴の漏れを高い精度で防止でき、総合的に最適設計を行うことができる。
【0036】
なお、本発明は、建設機械として杭打機を例示したが、これに限られず、アースドリルやクレーンなど、掘削装置や荷役装置の動力源としてエンジンパワーユニットを備えた各種建設機械に適用することができる。この場合、チャンバーを備えた排気構造を設ける際に、排気系に対して大幅な構造変更を要しないので、モデルチェンジや新型開発を円滑に進めることが可能となる。とりわけ、製造や保守などでハウスカバーの着脱が予定されるが、切欠き口の存在により、クレーンを巻き上げたり巻き下げたりするだけの簡単な操作で、真上からハウスカバーの装着と取外しが行えるため、作業効率を高める効果が得られる。
【0037】
これに加えて、チャンバーは、板金構造を採用することにより、軽量かつ安価で、その取り扱いも良好なものであるが、構造は特に限定されず、矩形断面だけでなく、円形断面の箱形状にすることができ、必要に応じて板の合わせ面に耐熱パッキンなどのシール材を介在させる手当てを行ってもよい。また、底面傾斜を設置時に角度を付けることによって達成したり、組立性が損なわれない範囲で排気管とチャンバーとを別体構造にしたりすることができる。さらに、ルーバの羽板の枚数や傾斜角度、長さなどは、排風口の向きや風量などの条件に応じて適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0038】
11…杭打機、12…下部走行体、12a…クローラ、13…旋回ベアリング、14…上部旋回体、15…ジャッキ、16…カウンタウエイト、17…ガントリ、18…フロアフレーム、18a…ステップ、19…運転室、20…エンジン収納ハウス、20a…点検扉、20b…天板、20c…階段、20d…梯子、21…手摺、22…エアクリーナ、23…排気管、23a…排気出口、23b…U字配管部、23c…L字配管部、24…チャンバー、24a…上面、24b…裏ナット、24c…傾斜面(底面)、24d…通風口、24e…ガイド板、25…SCR、26…ハウスカバー、26a…切欠き口、27…グラスマット、28…排風口、29…排水部、29a…ホース接続部、30…ルーバ、30a…羽板、30b…取付枠、31…ボルト、32…ホース、33…ブラケット、34…ボルト、35…ダクト、35a…配管接続口、35b…テーパ面、36…立板、37…抑え板、37a…折り板部、37b…切断板部、38…外側空間、39…内側空間、40…流入口、41…流出口