【解決手段】 外側間座冷却構造により外側間座33のみを冷却する。これにより、内側間座32と外側間座33との間に温度差を生じさせる。この温度差に応じて、軸受31内部の予圧を低下させる方向へ、軸受31の内輪37を外輪38に対して相対変位させる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る軸受装置の内部構造を示す正面断面図、
図2は同じく一部切り欠き斜視図、
図3は同じく一部切り欠き分解斜視図、
図4は同装置の外観斜視図である。
本実施形態に係る軸受装置は、回転軸10の外周に設けられ、回転軸10を回転自在に支持するとともに、回転に伴う回転軸10の温度上昇を抑制する機能を備えている。
【0018】
図4に示すように、軸受装置は筒状の装置本体20を備え、この装置本体20が回転軸10の外周に配置される。
図1〜
図3に示すように、装置本体20の内部は、軸受部30、磁性流体シール部50、排熱部60の各機能部を構成している。
【0019】
図5(a)は、軸受部の構成を示す正面断面図である。
軸受部30は、軸受31によって回転軸10を回転自在に支持するための機能部である。
図5(a)に示すように、軸受部30には、複数(図では2個)の軸受31と、これら軸受31の間に配置される内側間座32および外側間座33と、外輪突当て部材34と、外輪押え部材35と、内輪押え部材36とが組み込まれている。
【0020】
具体的な組み込み手順を説明すると、外輪突当て部材34、一方の軸受31(図の下側)、内側間座32および外側間座33、そして他方の軸受31(図の上側)の順に、装置本体20の内部に形成した軸受部30に組み込んでいく。
ここで、回転軸10の外周面には、径方向に突き出た鍔状の内輪突当て部11が形成してあり、軸受部30に組み込まれた一方の軸受31の内輪が、この内輪突当て部11に当接する。また、一方の軸受31の外輪は、外輪突当て部材34に当接している。
【0021】
回転軸10の外周面には、内輪押え部材36の装着部(内輪押え装着部12)が設けられており、この内輪押え装着部12に内輪押え部材36が装着される。次いで、装置本体20における軸受31の組込み部の入り口に外輪押え部材35が装着される。
内輪押え部材36は、内周面に雌ねじが形成されたナット構造となっており、雄ねじで構成した内輪押え装着部12にねじ込むことで、当該内輪押え装着部12に装着される。また、外輪押え部材35は、複数本のねじを用いて装置本体20に装着される。
このように各構成要素が装置本体20の内部に組み込まれて、軸受部30を構成している。
【0022】
軸受31は、環状の金属部材で形成された内輪37と、同じく環状の金属部材で形成された外輪38を同軸上に配置するとともに、これら内輪37と外輪38との間に転動体39を組み込んだ構成となっている。
内輪37は回転軸10に固定され、外輪38は装置本体20に固定される。内輪37は回転軸10と一体に回転するが、その際に転動体39が外輪38と内輪37との間で転動する。
【0023】
なお、軸受31としては、転動体39が金属やセラミック等の球体で構成された玉軸受(例えば、深溝玉軸受)や、転動体39が金属製のころで構成されたころ軸受(例えば、円すいころ軸受)など、各種公知の軸受を用いることができる。本実施形態では、径方向に作用するラジアル荷重と軸方向に作用するアキシアル荷重とを支えるアンギュラ玉軸受を軸受31として用いている。
【0024】
内側間座32は、各軸受31の間にそれぞれの内輪37と当接する状態で配置され、各軸受31の内輪37の配置間隔を調整するスペーサとして機能している。また、外側間座33は、各軸受31の間にそれぞれの外輪38と当接する状態で配置され、各軸受31の外輪38の配置間隔を調整するスペーサとして機能している。
【0025】
各軸受31の内輪37は、内輪突当て部11と、内側間座32と、内輪押え部材36とにより軸方向における固定位置が規定される。また、各軸受31の外輪38は、外輪突当て部材34と、外側間座33と、外輪押え部材35とにより軸方向における固定位置が規定される。
そして、装置本体20に固定された各軸受31の外輪38、外輪突当て部材34、外側間座33および外輪押え部材35に対して、各軸受31の内輪37、内輪突当て部11、内側間座32および内輪押え部材36が、回転軸10と一体となって回転する。
【0026】
軸受31は、装置本体20の軸受部30に組み込む際に、内部の予圧(すなわち、転動体39が内輪37および外輪38から受ける圧力)が調整される。
この予圧調整を行うために、軸受31の内輪37と外輪38は、軸方向へ相対変位できるように組み合わされ、それらの相対位置を調整することで、軸受31の内部の予圧(以下、「軸受31の予圧」と省略することもある)を増減できる構造となっている。
【0027】
例えば、
図5(a)に示す軸受31では、同図(b)(c)に拡大して示すように、外輪38の内周面に勾配38aが形成してある。なお、同図(b)(c)は、同図(a)の右下に配置された軸受31の断面を拡大した図である。そして、同図(b)に示すように、外輪38に対して矢印Aの方向へ内輪37を相対変位させると、外輪38の内周面に形成した勾配38aが広がる方向へ内輪37が相対変位するので、それら内輪37と外輪38との間に挟まれた転動体39に作用する圧力が減少する。
逆に、
図5(c)に示すように、外輪38に対して矢印Bの方向へ内輪37を相対変位させると、外輪38の内周面に形成した勾配38aが狭まる方向へ内輪37が相対変位するので、それら内輪37と外輪38との間に挟まれた転動体39に作用する圧力が増加する。
一般に、軸受31の予圧は、内側間座32の長さと外側間座33の長さとの寸法差により、外輪38と内輪37の相対位置を規定することで、所望の圧力となるように調整される。
【0028】
しかしながら、回転軸10の回転に伴い、軸受31や回転軸10の温度が上昇し、軸受31および回転軸10が径方向(ラジアル方向)に膨張して、軸受31の予圧が上昇することがある。そして、この予圧上昇が原因で軸受31がロックし、回転軸10の円滑な回転を阻害するおそれがあった。
そこで、本実施形態に係る軸受装置は、軸受31や回転軸10の温度上昇に伴う軸受31の予圧変化を抑制する機能を備えている。
【0029】
本実施形態に係る軸受装置は、軸受31の予圧変化を抑制するために、外側間座冷却構造(外側間座冷却手段)と予圧調整機構とを備えている。
外側間座冷却構造は、外側間座33を冷却して、内側間座32との相互間に温度差を積極的に設けるとともに、軸受31から伝わってくる熱を吸収して軸受31および回転軸10を冷却する機能を有している。
【0030】
すなわち、回転軸10の回転に伴い、軸受31には転動体39と内輪37および外輪38との間の摩擦により熱が発生し、その熱が内側間座32と外側間座33に伝わっていく。また、回転軸10も外的な要因等によって熱を持ち、その熱が内側間座32に伝わるとともに、軸受31を経由して外側間座33にも伝わる。このようにして内側間座32と外側間座33の温度が上昇する。
このような状況の下で、外側間座33のみ冷却すれば、内側間座32との相互間に大きな温度差が生じる。加えて、軸受31および回転軸10からの熱を外側間座33を通して吸収することで、軸受31および回転軸10が冷却される。
【0031】
本実施形態の軸受装置では、次のように外側間座冷却構造を構成してある。
図6に示すように、外側間座33の外周面には円周方向に延びる凹溝33aが形成してあり、装置本体20の内部に外側間座33を組み込んだ状態では、装置本体20の内周面に外側間座33の外周面が密接して、凹溝33aによる中空部が形成される(
図1、
図2および
図5(a)を参照)。この凹溝33aによる中空部は、冷媒を循環させるための冷媒流動路を構成する。
【0032】
図1および
図6に示すように、装置本体20の2箇所には、外周面から内周面に抜ける貫通孔21a,21bが形成してあり、これらの貫通孔21a,21bはともに凹溝33aによる中空部に開口している。そして、一方の貫通孔21aから凹溝33aによる中空部内に冷媒が供給され、その冷媒は凹溝33aによる中空部内を流動して、他方の貫通孔21bから排出される。
凹溝33aによる中空部内を流動する冷媒は、外側間座33から熱を吸収していく。これにより外側間座33は冷却され、温度上昇が抑制される。
【0033】
また、本実施形態の軸受装置では、予圧調整機構を、
図5(a)に示した外側間座33、内側間座32、軸受31の内輪37、転動体39および外輪38を用いて、次のように構成してある。
すなわち、外側間座冷却構造により外側間座33が冷却され、内側間座32との相互間に大きな温度差が生じると、外側間座33は膨張が抑制されるが、内側間座32は軸方向に熱膨張する。このため、内側間座32に当接する軸受31の内輪37が、内側間座32に押圧される。すなわち、内側間座32は、軸受31の内輪37を軸方向に押圧する押圧機構を構成する。
このように軸受31の内輪37が内側間座32に押圧されることで、軸受31の内輪37と外輪38との間に相対変位が生じる。
【0034】
ここで、装置本体20に組み込まれた複数の軸受31は、背面31aどうしを対向させて配置する、いわゆる「背面組合せ」としてあり、それらの軸受31の間に内側間座32と外側間座33を配置した構成となっている。このように、複数の軸受31を背面組合せに配置したときは、正面31b側から内輪37を締め付けたときに軸受31の予圧が高くなり、一方、背面31a側から内輪37が押圧されると、軸受31の予圧が解放される。
すなわち、複数の軸受31の中間部に配置した内側間座32からの押圧作用を受けると、
図5(b)に示したように、矢印Aの方向へ内輪37が押圧され、外輪38に対して内輪37が相対変位する。そして、外輪38の内周面は、この矢印A方向に向かって広がるように勾配38aが形成してあるので、それら内輪37と外輪38との間に挟まれた転動体39に作用する圧力が減少(すなわち、軸受31の予圧が低下)する。
【0035】
一方、既述したように軸受31や回転軸10の温度上昇に伴い、軸受31および回転軸10が径方向(ラジアル方向)に膨張して、軸受31の予圧が上昇する。
予圧調整機構は、このような軸受31や回転軸10の温度上昇に伴う軸受31の予圧上昇に対して、上述したとおり外側間座33と内側間座32の相互間に大きな温度差を生じさせることで、軸受31の予圧を低下させる。このように、軸受31や回転軸10の温度上昇に伴う軸受31の予圧上昇に対して、軸受31の予圧を低下させることで相殺し、その結果、軸受31の予圧変化が抑制される。そして、軸受31の予圧変化が抑制されることで、軸受31のロックを回避でき、回転軸10の円滑な回転を維持した回転支持を実現することができる。
【0036】
次に、装置本体20の内部に設けた磁性流体シール部50について説明する。
図1〜
図3に戻り、装置本体20の内部には、軸受部30と並んで磁性流体シール部50が設けてある。磁性流体シール部50は、回転軸10の外周にある隙間に磁性流体を充填し、この磁性流体を磁束線によって保持することで、当該隙間を密閉するための機能部である。
【0037】
磁性流体シール部50には、ポールピース51と称する磁極片と、磁石52と、磁性流体53とが組み込まれている。ポールピース51は、
図7(a)に示すように、透磁率の高い磁性材料によって円環状に形成され、同図(b)に示すように、複数(図では3個)のポールピース51を軸方向に並べて配置した状態で、装置本体20の内部に形成した磁性流体シール部50に組み込まれている(
図1〜
図3を参照)。磁石52は、ポールピース51の横に並べて組み込まれ、磁性流体53はポールピース51の内周面と回転軸10の外周面との間の隙間に充填される。そして、磁石52によって形成される磁束線により、磁性流体53が当該隙間に保持される。
【0038】
この磁性流体シール部50も、回転軸10の回転に伴い磁性流体53と回転軸10との間に摩擦熱が生じて温度が上昇する。そして、磁性流体53の摩擦熱は回転軸10に伝わり、回転軸10が径方向に膨張するので、回転軸10とポールピース51との間の隙間が狭められ、回転軸10の円滑な回転を阻害するおそれがある。
そこで、本実施形態に係る軸受装置には、磁性流体シール部50を冷却するための冷却構造(磁性流体シール部冷却構造)が構成してある。磁性流体53に生じた熱はポールピース51に伝わるが、磁性流体シール部冷却構造は、このポールピース51に伝わってきた熱を冷媒が吸収して、磁性流体53の冷却するように構成してある。
【0039】
すなわち、
図7(a)(b)に示すように、ポールピース51の外周面には円周方向に延びる凹溝51aが形成してあり、装置本体20の内部にポールピース51を組み込んだ状態では、装置本体20の内周面にポールピース51の外周面が密接して、凹溝51aによる中空部が形成される(
図1、
図2を参照)。この凹溝51aによる中空部は、冷媒を循環させるための冷媒流動路を構成する。
【0040】
図4に示すように、装置本体20には、外周面から内周面に抜ける複数(図では6個)の貫通孔22a,22b,22c,22d,22e,22fが形成してあり、これらの貫通孔22a,22b,22c,22d,22e,22fはともに凹溝51aによる中空部に開口している(
図1を参照)。また、各ポールピース51の外周面に形成した凹溝51aは、
図7(a)(b)に示すように、仕切壁51bにより円周方向の一部で堰き止められており、この仕切壁51bを境界として、その一方側に半分の貫通孔22a,22b,22cが開口し、他方側に残り半分の貫通孔22d,22e,22fが開口している。
【0041】
さらに、図には示されていないが、
図4の貫通孔22dと22e、22bと22cはそれぞれ配管により連結され、当該配管を経由して、各ポールピース51の外周面に形成した凹溝51aによる中空部が、連続的な冷媒流動路を構成している。
具体的には、
図4に示す貫通孔22aが冷媒の入口となって、ここから冷媒が供給されると、
図7(a)に示す1個目のポールピース51の凹溝51aに冷媒が入り込み、当該凹溝51aによる中空部内を流動する。続いて、冷媒は、当該凹溝51aに開口する別の貫通孔22d(
図4を参照)から配管を経由して隣の貫通孔22eに入り、
図7(a)に示す2個目のポールピース51の凹溝51aに供給され、当該凹溝51aによる中空部内を流動する。次に、冷媒は、当該凹溝51aに開口する別の貫通孔22b(
図4を参照)から配管を経由して隣の貫通孔22cに入り、
図7(a)に示す3個目のポールピース51の凹溝51aに供給され、当該凹溝51aによる中空部内を流動する。そして、冷媒は、貫通孔22fから排出される(
図4を参照)。
このような経路をした冷媒流動路を冷媒が流動する過程で、ポールピース51の熱を冷媒が吸収して、磁性流体53を冷却する。
【0042】
次に、装置本体20に設けた軸受冷却構造について説明する。
図1〜
図3に戻り、装置本体20の外周面には凹溝20aが形成してある。この凹溝20aは、
図8に示すように、1本の螺旋状の軌道を描くように装置本体20の外周面に形成されている。凹溝20aが形成された装置本体20の外周面には、
図1〜
図3に示すように、円筒状の被覆部材23が嵌め込まれ、この被覆部材23の内周面が装置本体20の外周面に密接して、凹溝20aによる螺旋状に延びる中空部が形成される。この凹溝20aによる中空部は、冷媒を循環させるための冷媒流動路を構成する。
【0043】
図2および
図3に示すように、被覆部材23には、外周面から内周面に抜ける2個の貫通孔23a,23bが形成してあり、一方の貫通孔23aは凹溝20aによる螺旋状の中空部の始端部付近に開口しており、他方の貫通孔23bは凹溝20aによる螺旋状の中空部の終端部付近に開口している。
さらに、中空部の始端部付近に開口する一方の貫通孔23aは、図示しない配管により、既述した磁性流体シール部50の貫通孔22fと連通している(
図4参照)。これにより、シール部冷却構造の冷媒流動路を流動して、貫通孔22fから排出されてきた冷媒が、配管を経由して貫通孔23aから凹溝20aによる中空部に供給される。
そして、貫通孔23aから供給された冷媒は、凹溝20aによる螺旋状の中空部を流動して、他方の貫通孔23bから排出される(
図4参照)。
凹溝20aによる螺旋状の中空部内を流動する冷媒は、装置本体20から熱を吸収していく。これにより装置本体20に組み込まれた複数の軸受31が冷却される。
【0044】
また、
図1および
図6を参照して既述した外側間座33の凹溝33aによる中空部に開口する2個の貫通孔21a,21bは、それぞれ凹溝20aによる螺旋状の中空部にも開口しており、螺旋状の中空部を流動する冷媒の一部が、一方の貫通孔21aから外側間座33の凹溝33aによる中空部内へ供給され、当該中空部を流動して他方の貫通孔21bから再び螺旋状の中空部に戻るように構成されている。
【0045】
図6に示す貫通孔21a,21bは、中心軸に関して点対称となる位置(180度回り込んだ位置)にそれぞれ設けてある。そして、一方の貫通孔21aから供給された冷媒は、凹溝33aを右回りと左回りに分岐して流動し、他方の貫通孔21bから排出されて、凹溝33aによる螺旋状の中空部に戻る。
なお、貫通孔21a,21bを仕切壁を挟んで周方向の近傍位置に並べて設け、一方の貫通孔21aから供給された冷媒が、凹溝33aを一方向に流動して、他方の貫通孔21bから排出される構成とすることもできる。このように構成すれば、貫通孔21bでの冷媒の合流による衝突をなくして円滑に冷媒を排出することが可能となる。
【0046】
次に、装置本体20の内部に設けた排熱部60について説明する。
図1〜
図3に戻り、装置本体20の内部には、軸受部30と並んで磁性流体シール部50の反対側に排熱部60が設けてある。排熱部60は、回転軸10に蓄積された熱を吸収して、回転軸10を直接冷却するための機能部である。この排熱部60には、回転軸10を冷却するための構造が形成してある。
【0047】
すなわち、
図9に示すように、装置本体20の排熱部60には、環状の軸熱吸収部材61が組み込んである。軸熱吸収部材61の内周面は、回転軸10の外周面に軽く接触させて配置してある。これにより、回転軸10からの熱が軸熱吸収部材61に伝わってくる。
【0048】
軸熱吸収部材61の外周面には、円周方向に延びる凹溝61aが形成してあり、装置本体20の内部に軸熱吸収部材61を組み込んだ状態では、装置本体20の内周面に軸熱吸収部材61の外周面が密接して、凹溝61aによる中空部が形成される(
図1、
図2および
図9を参照)。この凹溝61aによる中空部は、冷媒を循環させるための冷媒流動路を構成する。
【0049】
装置本体20の2箇所には、外周面から内周面に抜ける貫通孔24a,24bが形成してあり、これらの貫通孔24a,24bはともに凹溝61aによる中空部に開口している。このうちの一方の貫通孔24aは、軸受冷却構造の被覆部材23に形成された貫通孔23bと、図示しない配管を介して連通している。これにより、軸受冷却構造における貫通孔23bから排出された冷媒が、図示しない配管を経由し、一方の貫通孔24aに送られる(
図4参照)。
【0050】
そして、この貫通孔24aから凹溝61aによる中空部内に冷媒が供給され、その冷媒は凹溝61aによる中空部内を流動して、他方の貫通孔24bから排出される。
凹溝61aによる中空部内を流動する冷媒は、回転軸10から軸熱吸収部材61に伝わってきた熱を吸収していく。これにより回転軸10が冷却される。
【0051】
ここで、
図9に示す貫通孔24a,24bも、
図6に示した貫通孔21a,21bと同様、中心軸に関して点対称となる位置(180度回り込んだ位置)にそれぞれ設けてある。そして、一方の貫通孔24aから供給された冷媒は、凹溝61aを右回りと左回りに分岐して流動し、他方の貫通孔24bから排出される。
なお、貫通孔24a,24bを仕切壁を挟んで周方向の近傍位置に並べて設け、一方の貫通孔24aから供給された冷媒が、凹溝61aを一方向に流動して、他方の貫通孔24bから排出される構成とすることもできる。このように構成すれば、貫通孔24bでの冷媒の合流による衝突をなくして円滑に冷媒を排出することが可能となる。
【0052】
図9に示したように、装置本体20に形成された他方の貫通孔24bは、軸受装置に併設した冷媒冷却循環装置(図示せず)に、図示しない配管を経由して接続される。この他方の貫通孔24bから排出された冷媒は、図示しない冷媒冷却循環装置へ送られ、同装置で冷却されて再びシール部冷却構造の貫通孔22aに循環して供給される。
【0053】
ここで、
図4を参照して、冷媒の循環経路を改めて説明すると、図示しない冷媒冷却循環装置からシール部冷却構造の貫通孔22aに供給された冷媒は、
図1および
図2に示すシール部冷却構造に形成した凹溝51aによる中空部を流動し、回転軸10からポールピース51に伝わってきた熱を吸収する。
【0054】
次に、冷媒は、シール部冷却構造の貫通孔22fから軸受冷却構造の貫通孔23aに供給され、軸受冷却構造に形成した凹溝20aによる螺旋状の中空部を流動し、回転軸10から装置本体20に伝わってきた熱を吸収する。
【0055】
さらに、冷媒は、装置本体20に形成した貫通孔21aから、外側間座冷却構造に形成した凹溝33aによる中空部にも一部が供給され、その中空部を流動して軸受31や回転軸10から外側間座33に伝わってきた熱を吸収する。そして、冷媒は、装置本体20に形成した他方の貫通孔21bから、軸受冷却構造に形成した凹溝20aによる螺旋状の中空部に戻る。
【0056】
続いて、冷媒は、軸受冷却構造の貫通孔23bから排熱部60の貫通孔24aに供給され、排熱部60に形成した凹溝61aによる中空部を流動し、回転軸10から軸熱吸収部材61に伝わってきた熱を吸収する。そして、冷媒は、排熱部60の貫通孔24bから図示しない冷媒冷却循環装置に戻され、冷却された後、再びシール部冷却構造の貫通孔22aに供給される。
【0057】
本実施形態に係る軸受装置は、上述したとおり軸受冷却構造、磁性流体シール部冷却構造、排熱部60における回転軸10の冷却構造、および外側間座冷却構造の各冷却構造を備えているので、軸受31や回転軸10からの熱が各冷却構造を循環する冷媒に吸収され、軸受31や回転軸10を効率的に冷却することができる。
また、各冷却構造に設けた冷媒流動路を連通させて、共通の冷媒をそれらの冷媒流動路に流動させたので、冷媒の循環制御が簡素化され、いっそう効率的な冷却を実現することができる。
【0058】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変形実施や応用実施が可能であることは勿論である。
例えば、軸受内部の予圧を低下させるための予圧調整機構は、
図5(b)(c)に示したような勾配38aを利用した構成に限定されるものではなく、軸受の外輪と内輪の相対変位に伴い軸受内部の予圧を低下させる各種の構成を適用することができる。
【0059】
上述した実施形態では、軸受冷却構造の冷媒流動路を形成するために、装置本体20の外周面に凹溝20aを形成したが、被覆部材23に凹溝を形成して冷媒流動路としてもよく、また装置本体20の外周面と被覆部材23の両方に凹溝を形成して冷媒流動路を構成することもできる。
【0060】
同様に、外側間座冷却構造の冷媒流動路を形成する凹溝33aの代わりに、外側間座33と接する装置本体20の内周面に凹溝を形成して冷媒流動路としてもよく、また外側間座33と装置本体20の内周面の両方に凹溝を形成して冷媒流動路を構成することもできる。
【0061】
同様に、磁性流体シール部冷却構造の冷媒流動路を形成する凹溝51aの代わりに、ポールピース51と接する装置本体20の内周面に凹溝を形成して冷媒流動路としてもよく、またポールピース51と装置本体20の内周面の両方に凹溝を形成して冷媒流動路を構成することもできる。
【0062】
同様に、排熱部60の冷媒流動路を形成する凹溝61aの代わりに、軸熱吸収部材61と接する装置本体20の内周面に凹溝を形成して冷媒流動路としてもよく、また軸熱吸収部材61と装置本体20の内周面の両方に凹溝を形成して冷媒流動路を構成することもできる。
【0063】
また、上述した実施形態では、外側間座33を冷却する構造に加え、軸受31を冷却する構造や、磁性流体シール部50を冷却する構造、さらに排熱部60における回転軸10の冷却構造を備えていたが、それらの一部を省略することもできる。
【0064】
また、上述した実施形態では、冷媒を、磁性流体シール部50から装置本体20の周囲を経由して外側間座33に供給し、さらに装置本体20の周囲から排熱部60へと流動させていたが、冷媒の流動経路はこれに限定されず、必要に応じて適宜変更してもよい。