(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-188715(P2021-188715A)
(43)【公開日】2021年12月13日
(54)【発明の名称】管体の接続構造
(51)【国際特許分類】
F16L 21/035 20060101AFI20211115BHJP
E03C 1/12 20060101ALI20211115BHJP
【FI】
F16L21/035
E03C1/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-96699(P2020-96699)
(22)【出願日】2020年6月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】仁科 貴志
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061AB07
2D061AD01
(57)【要約】
【課題】
容易に接続可能であり、且つ施工品質を安定させる管体の接続構造の提供を課題とする。
【解決手段】
受入部11を有する第一管体1と、受入部11に挿入される第二管体2と、第一管体1と第二管体2の間に水密に配置される止水部材3と、第一管体1と連結し、第一管体1と第二管体2を接続する接続部材4から成る管体の接続構造であって、止水部材3は、第一管体1又は接続部材4に係止される係止部31を備え、第一管体1又は接続部材3は、係止部31に向けて突設された被係止部43を備え、止水部材3は、第一管体1と接続部材4の連結時に第一管体1又は接続部材4によって押圧されることによって変形し、第二管体2の外面に圧接する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受入部を有する第一管体と、
受入部に挿入される第二管体と、
第一管体と第二管体の間に水密に配置される止水部材と、
第一管体と連結し、第一管体と第二管体を接続する接続部材から成る管体の接続構造であって、
止水部材は、第一管体又は接続部材に係止される係止部を備え、
第一管体又は接続部材は、係止部に向けて突設された被係止部を備え、
止水部材は、第一管体と接続部材の連結時に第一管体又は接続部材によって押圧されることによって変形し、第二管体の外面に圧接することを特徴とする管体の接続構造。
【請求項2】
前記係止部は、
第一管体又は接続部材に向けて形成された溝状であることを特徴とする請求項1に記載の管体の接続構造。
【請求項3】
前記被係止部は、
係止部よりも幅広に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の管体の接続構造。
【請求項4】
前記接続部材は環状であって、
前記係止部は、
接続部材の全周に亘り形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の管体の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水配管等の管体の接続構造に関するものである。
【0002】
従来の管体の接続構造として、止水部材を用いて管体同士を水密に接続する構造が知られている。特許文献1に記載の管体の接続構造は、一方の管体の端部が拡径されており、他方の管体を挿入可能な受入部を形成しているとともに、ナットと螺合するための雄螺子が外周に形成されている。又、他方の管体の端部は上記受入部に挿入されるとともに、外周において溝部が全周に亘り形成されており、当該溝部に止水部材が嵌着されている。止水部材は断面視略三角形状の弾性部材からなるパッキンであって、一方の管体とナットが螺合した際に、当該ナットによって第一管体へ向けて押圧される。
ここで、上記第一管体の端部は内側に向けて傾斜するテーパ面が形成されており、ナットとの螺合によって第一管体に押し付けられた止水部材は上記テーパ面によって内側に収縮するように圧力が加えられる。この時、止水部材が他方の管体の外面に対して全周に亘り圧接することによって、管体同士が水密に接続される。
【0003】
他の止水部材を用いた管体の接続構造として、特許文献2に記載の構造が知られている。特許文献2に記載の止水部材は、一方の管体とナットが連結された際に内側に向けて突出するように変形し、当該変形部分が他方の管体の側面に圧接することによって管体同士を水密に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−058082号公報
【特許文献2】特開2015−124510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のような、螺合による管体の接続構造は、適正なトルクでナットを締め付けなければならない。即ち、締め付けに係る力が適正トルク以下であった場合、止水部材が水密に圧接せず、漏水の恐れが生じ、一方で締め付けに係る力が適正トルク以上であった場合、ナット等の部材が破損する恐れがある。しかし、作業者によって締め付けに係るトルクが異なることにより、常に適正トルクで締め付けを行い、一定の施工品質を担保することは困難であった。又、特許文献1に記載の接続構造は、螺合によって止水部材を螺合方向へ移動させつつ、止水部材を内側へ向けて収縮させる必要があることから、管体同士を水密に接続するためには非常に高いトルクが必要であり、作業者による差を生じさせることなく施工品質を向上させることは困難であった。
対して、特許文献2に記載の管体の接続構造における止水部材は、締め付けの際に内側に向けて変形するのみであり、且つ少ない力で大きく変形することから、締め付けに必要なトルクを低減させることが可能になる。しかし、特許文献2に記載の止水部材は位置決めが困難であり、施工時に適正位置から止水部材が移動してしまったり、接続時に止水部材が予期せぬ形状に変形してしまったりすることによって管体同士を水密に接続できないことがあった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑み、管体の接続構造について、容易に接続可能であり、且つ施工品質を安定させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の本発明は、受入部を有する第一管体と、
受入部に挿入される第二管体と、
第一管体と第二管体の間に水密に配置される止水部材と、
第一管体と連結し、第一管体と第二管体を接続する接続部材から成る管体の接続構造であって、
止水部材は、第一管体又は接続部材に係止される係止部を備え、
第一管体又は接続部材は、係止部に向けて突設された被係止部を備え、
止水部材は、第一管体と接続部材の連結時に第一管体又は接続部材によって押圧されることによって変形し、第二管体の外面に圧接することを特徴とする管体の接続構造である。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、前記係止部は、
第一管体又は接続部材に向けて形成された溝状であることを特徴とする請求項1に記載の管体の接続構造である。
【0009】
請求項3に記載の本発明は、前記被係止部は、
係止部よりも幅広に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の管体の接続構造である。
【0010】
請求項4に記載の本発明は、前記止水部材は環状であって、
前記係止部は、
止水部材の全周に亘り形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の管体の接続構造である。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明によれば、止水部材は、第一管体と接続部材の連結時に第一管体又は接続部材によって押圧されることによって変形し、第二管体の外面に圧接することにより、少ないトルクで管体同士を接続させることができる。又、止水部材は接続部材に対して係止されていることにより、第二管体の挿入時や接続部材の回転時において、止水部材の位置ずれや予期せぬ形状に変形してしまうことを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第一実施形態に係る管体の接続構造を示す分解図である。
【
図3】(a)第一管体に第二管体が挿入された状態を示す断面図、(b)
図3(a)のA部拡大図である。
【
図4】(a)第一管体と第二管体が水密に接続された状態を示す断面図、(b)
図4(a)のA部拡大図である。
【
図5】第二実施形態において、(a)第一管体に第二管体が挿入された状態を示す断面図、(b)
図5(a)のA部拡大図である。
【
図6】(a)第一管体と第二管体が水密に接続された状態を示す断面図、(b)
図6(a)のA部拡大図である。
【
図7】第三実施形態において、(a)第一管体に第二管体が挿入された状態を示す断面図、(b)
図7(a)のA部拡大図である。
【
図8】(a)第一管体と第二管体が水密に接続された状態を示す断面図、(b)
図8(a)のA部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の管体の接続構造を説明する。尚、以下に記載する説明は実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって発明が制限して理解されるものではない。
【0014】
図1乃至
図4に示すように、本実施形態における管体の接続構造は、第一管体1、第二管体2、止水部材3、接続部材4から構成されている。
【0015】
第一管体1は硬質の樹脂材から成る円筒状の排水配管であり、端部に受入部11を備えている。受入部11は第二管体2の外径とほぼ同径となる内径を有するよう拡径された円筒状であり、当該受入部11端部の内側面には止水部材3が配置される段部12が形成されているとともに、外側面には後述する接続部材4の係合部42と係合する溝部13が形成されている。
図2に示すように、溝部13は内部に係合部42が配置された状態において、接続部材4を時計回りに回転させることによって、接続部材4を第一管体1へと近接させる傾斜面である第一溝部14と、第一溝部14端部より第一管体1の周方向に形成された第二溝部15が刻設されているとともに、第二溝部15には緩み止め16が外側に向けて突設されている。
【0016】
第二管体2は円筒状の排水配管であり、施工時には配管レイアウトに応じて長さ調整等の理由で端部が適宜切断されて取り付けられる。尚、第二管体2はどの位置で切断しても断面やその近傍部分は同一の外径形状を形成する。また、第二管体2の外径は上記受入部11の内径と略同一であり、その端部は受入部11に挿入される。
【0017】
止水部材3はゴムやシリコン等の弾性部材から成る、断面視略C字状且つ環状のパッキンであり、第一管体1の内周面及び第二管体2の外周面に対して水密に配置される。又、止水部材3は第一管体1と対向する面、即ち接続部材4に向けて係止部31が形成されている。尚、止水部材3は応力が加わっておらず、変形していない状態において、その内径は受入部11の内径及び第二管体2の外径と略同一である。
係止部31は、止水部材3の全周に亘り凹設された溝状であり、接続部材4の被係止部43が挿通されることによって当該接続部材4に係止されている。
【0018】
接続部材4は内側に第二管体2が挿通される開口が形成されたナット部材であり、鍔部41、係合部42、被係止部43を有している。
鍔部41は接続部材4の第一管体1側端部から外側に向けて延設されており、当該鍔部41の外端部からは、内側に向けて突出する係合部42が形成されているとともに、鍔部41の内端部からは第一管体1へ向けて被係止部43が形成されている。
係合部42は鍔部41の外端部から第一管体1ヘ向けて延びる大径部において、内側に突出するように形成されており、施工完了時には第一管体1に形成された溝部13内に配置される。又、係合部42は溝部13内を摺動可能であり、接続部材4を回転させることで、接続部材4を第一管体1の軸方向に移動させる。
被係止部43は上記止水部材3の係止部31へ向けて突設された円筒状の突起であり、その被係止部43の幅は係止部31とほぼ同じである。
【0019】
上記第一管体1と第二管体2は、以下のように接続される。
【0020】
まず、止水部材3の係止部31を被係止部43に係止させるとともに、溝部13に第一管体1の係合部42を配置し、第一管体1と接続部材4を連結させる。この時、被係止部43は係止部31と略同一の幅であるため、止水部材3は変形することなく、接続部材4に対する位置決めのみがなされている。又、止水部材3の係止部31に被係止部43が係止されているが、当該被係止部43は止水部材3の端部までは到達しておらず、止水部材3は中空状態となっている。
次に、
図3に示すように、第一管体1の受入部11に第二管体2を挿入する。この時、第二管体2は接続部材4を通過し、止水部材3が第二管体2の外周に当接するが、無変形状態における止水部材3の内径は第二管体2の外径と略同一であるため、受入部11に挿入不能となる程の摩擦は生じない。又、係止部31には被係止部43が係止されているため、挿入時において止水部材3の位置ずれが生じることはない。
次に、係合部42が第二溝部15端部に当接するまで接続部材4を時計回りに回転させる。この時、第一溝部14内を係合部42が摺動することによって、接続部材4が第一管体1側へと軸方向に移動する。この時、
図4に示すように、止水部材3が段部12に当接し、接続部材4と第一管体1によって押圧されることで、止水部材3が第二管体2の外面に圧接するように変形する。
そして、止水部材3の圧接に伴う摩擦によって、第一管体1と第二管体2は水密に接続されると共に、第二管体2は第一管体1より抜脱不可能となる。又、係合部42が第二溝部15に形成された緩み止め16を乗り越えることにより、接続部材4が予期せず回転し、接続が解除されてしまうことを防ぐ。
【0021】
上記第一管体1と第二管体2の接続を解除する際には、接続部材4を反時計回りに回転させる。この時、接続部材4が第一管体1と離間する方向に向けて軸方向に移動することで、止水部材3が自身の弾性によって元の形状に復帰する。これにより、上記止水部材3と第二管体2との間に生じる摩擦が低減されて、第二管体2を第一管体1から抜脱することが可能となる。
【0022】
上記本発明において、接続部材4は、係合部42が第二溝部15端部に当接するまで回転させることで、第一管体1と第二管体2の接続が完了する。従って、作業者はどこまで接続部材4を回転させれば良いかが簡単に判断可能となり、作業者による締め付けトルクのバラつきを無くすことで施工品質を安定させることが可能となる。
又、本発明の止水部材3は、第二管体2に対して圧接する際、管体の軸方向には移動しない。従って、従来の止水部材に比べて少ない力で変形させることが可能となる。又、止水部材3は接続部材4に係止された状態において、内部に空間が形成された中空となっている。従って、止水部材3は内部に変形のための空間を有することにより、少ない力で大きく変形させることが可能である。これは、本実施形態のように、螺合よりも少ない回転や動作によって接続を行う、溝部13と係合部42を用いた接続構造において好適である。
又、止水部材3は接続部材4に対して係止されていることにより、第二管体2の挿入時や接続部材4の回転時において、止水部材3の位置ずれや予期せぬ形状に変形してしまうことを防止することが可能となる。
【0023】
上記第一実施形態において、止水部材3は接続部材4に対して係止されていたが、
図5及び
図6に示す第二実施形態のように、第一管体1に係止されていても良い。
【0024】
又、止水部材3は第一管体1又は接続部材4に係止されている状態において、内部に形成された中空の空間が押し潰されることによって変形していたが、
図7及び
図8に示す第三実施形態のように、被係止部43が止水部材3内部に挿通されることによって変形しても良い。
第三実施形態に係る被係止部43は、基端部側が係止部31よりも幅広であるとともに、止水部材3側端部に係止部31よりも幅狭の位置決め突起44が形成されている。ここで、第一管体1と第二管体2が接続されていない状態、即ち係合部42が第一溝部14内に配置されている状態において、
図7に示すように、止水部材3は被係止部43の位置決め突起44に係止されており、位置ずれのみが防止されている。ここで、第二管体2が挿通され、接続部材4を時計回りに回転させると、
図8に示すように、係止部31よりも幅広の被係止部43が止水部材3内に挿入されることによって、止水部材3は被係止部43を覆うように変形し、第二管体2の外側面に対して圧接する。この時、止水部材3の圧接に伴う摩擦によって、第一管体1と第二管体2は水密に接続されると共に、第二管体2は第一管体1より抜脱不可能となる。
【0025】
本発明の実施形態は以上であるが、本発明の管体の接続構造は各実施形態の形状に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の設計変更を加えても良い。例えば、係止部は環状の止水部材の全周に亘って形成されていたが、一部のみに形成されていても良い。又、係止部に対応する被係止部も同様に、第一管体又は接続部材の一部のみに形成されていても良い。
又、管体は洗面、風呂、シンクに使用される排水配管や給水配管、吸気管を構成する管体であっても良く、その他の配管であっても良い。
【符号の説明】
【0026】
1 第一管体
11 受入部
12 段部
13 溝部
14 第一溝部
15 第二溝部
16 緩み止め
2 第二管体
3 止水部材
31 係止部
4 接続部材
41 鍔部
42 係合部
43 被係止部
44 位置決め突起