【実施例1】
【0019】
実施例1に係るメタルシールにつき、
図1から
図5を参照して説明する。以下、
図2の紙面左右方向を軸方向、
図2の紙面略中央を内径側、紙面上方及び紙面下方を外径側として紙面上下方向を径方向として説明する。
【0020】
本発明のメタルシール1は、
図1に示されるように、メタル体2と基材6と接着材7とによって構成されており、メタル体2は、高温、極低温、高圧、高真空等の条件下で使用されるものである。例えば、
図2に示されるように、容器、機械、機器等の連結部分を構成する第1の被取付部材である第1ハウジング10と、第2の被取付部材である第2ハウジング11間に形成される環状のシール溝12内に配置され、第1及び第2ハウジング10,11それぞれの径壁部10a,11aにより挟み込まれることにより軸方向に圧縮された状態で、これら第1及び第2ハウジング10,11間をシールするものである。尚、メタル体2よりも内径側の空間S1が被密封流体で満たされており、メタル体2よりも外径側の空間S2は大気であるものとする。
【0021】
また、
図3を参照して、メタル体2は、略0.3mmの板厚を有するインコネルの板材をプレス加工することで断面視略M字状の環状に形成されており、第1板部3と、第1板部3に対向して配置される第2板部4と、第1板部3及び第2板部4に連続する湾曲部5とを備えている。
【0022】
尚、板厚の好ましい範囲は0.15mmから0.7mmであり、使用環境に応じて板厚は適宜変更されてもよい。さらに尚、メタル体2を形成する板材として、ハステロイX、ヘインズアロイ25、チタン合金等を用いてもよく、インコネルに限定されるものではない。
【0023】
第1板部3は、断面視内径側端部から軸方向左側に向かって湾曲するように突出する凸部30と、凸部30の断面視外径側端部に連続して外径側かつ軸方向右側に向かって直線状に延設された直線部とから構成されており、断面視外径側端部は、湾曲部5の軸方向左側の端部と連続している。
【0024】
また、第1板部3の凸部30の外面を径壁部10a(
図1参照)に接触する第1接触部分31として説明する。
【0025】
また、第1板部3の凸部30の内面には、第1接触部分31に向けて凹む断面曲面形状の凹部32が形成されている。
【0026】
第2板部4は、第1板部3と断面視線対称であるのでその説明を省略する。
【0027】
湾曲部5は、第1板部3の断面視外径側端部と連続して外径側に向かって半円弧状に突出する山折り部51と、第2板部4の断面視外径側端部と連続して外径側に向かって半円弧状に突出し、山折り部51に対向して配置される山折り部52と、内径側に向かって突出する涙形状に形成され、山折り部51及び山折り部52のそれぞれの軸方向中央側端部に連続する谷折り部53とを備えている。
【0028】
谷折り部53は、山折り部51の断面視内径側端部と連続して内径側かつ軸方向左側に向かって直線状に延設された第1延設部と、第1壁部の下端部に連続して内径側に向かって四分の三円弧状に突出している湾曲凸状部53aと、内径側凸状部の軸方向右側の端部と連続して外径側かつ軸方向右側に向かって直線状に延設され、山折り部52の断面視内径側端部と連続する第2延設部と有している。
【0029】
また、メタル体2は、自然状態では第1接触部分31と第2接触部分41との間の軸方向の寸法がL1となっており、シール溝12の軸方向の寸法である設計寸法W1(
図5(a)参照)よりも大きく形成されている。
【0030】
また、メタル体2は、第1板部3、第2板部4に対して互いの近接方向である軸方向中央側に向かって外力が加えられることにより、湾曲部5の山折り部51,52それぞれの頂点を基点に弾性変形し、第1板部3、第2板部4それぞれが湾曲部5に向かって近接された圧縮状態(
図4参照)となる。
【0031】
このとき、自然状態で互いに接触状態であった山折り部51及び山折り部52は離間する。尚、メタル体2は、自然状態で山折り部51及び山折り部52同士が僅かに離間している形態であってもよい。
【0032】
また、メタル体2は、当該外力を小さくすることにより、自然状態に向かって軸方向に伸長するようになっている。すなわち、本実施例のメタル体2の伸縮方向は軸方向のことである。
【0033】
尚、本実施例における圧縮状態とは、自然状態に対して第1板部3、第2板部4同士が近接している状態のことである。
【0034】
また、メタル体2は、自然状態(
図3参照)及び圧縮状態(
図4参照)において、谷折り部53の湾曲凸状部53aの内径側端面が凹部32よりも外径側に位置している。
【0035】
図1を参照して、基材6は、アクリル樹脂で軸方向視半円弧状かつ軸方向の寸法が略同一の帯状に形成された硬質の板材であり、その融点は略160度、その沸点は略200度である。
【0036】
尚、基材6は、所定の温度、すなわち作動機器の使用時における高温の被密封流体により気化する素材であれば、アクリル樹脂に限らず、ABS樹脂、ポリアミド等を用いてもよく、使用環境に応じて、適宜変更してもよい。
【0037】
また、基材は、軸方向視半円弧状に形成された2つの基材を対向配置することで環状をなす構成に限らず、1つの基材で環状をなしていてもよく、3つ以上の基材で環状をなしていてもよい。
【0038】
図4を参照して、基材6の軸方向それぞれの端部61は、第1板部3の凹部32または第2板部4の凹部42に沿う曲面形状に形成されている。
【0039】
接着材7は、エチレン酢酸ビニルを主成分としたものであり、その融点は略110度、その沸点は略180度である。尚、接着材7は、説明の都合上、各図において誇張して図示されている。
【0040】
尚、接着材7は、所定の温度、すなわち作動機器の使用時における高温の被密封流体により気化する素材であれば、エチレン酢酸ビニルを主成分としたものに限らず、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリアミド等を主成分としたもの用いてもよく、使用環境に応じて、適宜変更してもよい。
【0041】
次に、メタルシール1の製造方法について、
図3,4を参照して説明する。
【0042】
まず、基材6の各端部61それぞれに液状の接着材7を塗布する。
【0043】
次いで、
図4を参照して、基材6の外径側端面を破線で示す自然状態のメタル体2の湾曲凸状部53aの内径側端面に当接させるとともに基材6をメタル体2の軸方向に略平行に配置する。これにより、メタル体2に対する基材6の径方向における位置決めを行うことができる。
【0044】
その後、基材6の一端を凹部32に入れ、第1板部3、第2板部4に対して互いが近接する方向に外力を加え所定時間保持する。このとき、メタル体2は
図4の実線で示すように軸方向の寸法が寸法L2に圧縮され、第1板部3の凹部32と第2板部4の凹部42とはそれぞれ基材6の端部61に加圧された状態となっている。
【0045】
このようにして、接着材7が硬化することで、メタル体2に基材6が接着材7により接着固定された軸方向の寸法L2のメタルシール1を製造することができる。
【0046】
これによれば、基材6の両端部61が接着材7で第1板部3と第2板部4に接着されることでメタル体2を圧縮した状態で保持されているため、使用する接着材7を少なくすることができ、メタル体2を圧縮状態で保持する作業を簡便にかつ短時間で行うことができる。
【0047】
また、基材6は、軸方向の寸法が略同一の帯状に形成されているため、基材6によりメタル体2が第1板部3及び第2板部4の長手方向に亘って均等に圧縮した状態を保持できる。
【0048】
また、基材6の両端部61は、第1板部3の凹部32または第2板部4の凹部42に沿う曲面形状に形成されているため、基材6の両端部61と第1板部3の凹部32及び第2板部4の凹部42との接着面積を広く確保できるとともに、第1板部3及び第2板部4の間から基材6が外れにくい。
【0049】
また、基材6の端部61は、第1板部3の凹部32または第2板部4の凹部42に沿う曲面形状に形成されているため、第1板部3の凹部32と第2板部4の凹部42とをそれぞれ基材6の端部61に圧着させるにあたって、各端部61が第1板部3の凹部32または第2板部4の凹部42に案内されることにより、メタル体2の山折り部51,52それぞれに対する平行度合いを高めることができる。
【0050】
また、メタルシール1を基材6に接着固定するにあたって、基材6に対して軸方向に押し付け加圧状態で接着させることができるため、メタルシール1を基材6に強固に接着固定することができる。
【0051】
また、基材6は硬質であるため、基材6の両端部61を接着材7で第1板部3と第2板部4に接着させる際、基材6の反力を受けて接着作業を行うことができ、接着作業がしやすい。
【0052】
次に、メタルシール1の装着方法及び動作態様について、
図5を参照して説明する。尚、メタルシール1を装着する前の第1ハウジング10及び第2ハウジング11は、それぞれ連結される前の状態であり、互いに独立している。
【0053】
図5(a)を参照して、まず第1ハウジング10の径壁部10aと径壁部10aに略直交する周壁部から構成される環状の窪部にメタルシール1を収納し、第1ハウジング10に対して第2ハウジング11をボルトで固定する。第1ハウジング10の径壁部10a、周壁部、第2ハウジング11の径壁部11aから主に構成される設計寸法W1のシール溝12が形成されている。
【0054】
次に、作動機器の運転が開始され、被密封流体の温度が接着材7の融点である110度を超え始めると、接着材7が融解し始める。接着材7の接着力にメタル体2の復元力が勝ると、基材6の両端部61は、第1板部3の凹部32及び第2板部4の凹部42から離れ、メタル体2は軸方向に伸長し、
図5(b)に示される状態となる。その後、被密封流体が180度以上に昇温することで、接着材7は気化する。
【0055】
上述したように、自然状態のメタル体2の軸方向の寸法L1は、シール溝12の設計寸法W1よりも大きいことから、メタル体2が軸方向に伸長することで、メタル体2の第1板部3の第1接触部分31が第1ハウジング10の径壁部10aに圧接し、メタル体2の第2板部4の第2接触部分41が第2ハウジング11の径壁部11aに圧接する。これにより、メタル体2により第1ハウジング10及び第2ハウジング11の間が密封された状態となる。
【0056】
その後、被密封流体の温度が基材6の融点である160度を超え始めると、基材6が融解し始めて、
図5(c)に示されるように、メタル体2の内側から離脱する。その後、被密封流体が200度以上に昇温することで、基材6は気化する。
【0057】
以上説明したように、メタルシール1は、基材6の両端部61が接着材7で第1板部3と第2板部4に接着されることでメタル体2が圧縮された状態で保持されているため、使用する接着材7を少なくすることができ、被密封流体の温度が110度以上となることで、接着材7の量が少ないことから接着材7の接着特性が短時間で失われ、メタル体2の圧縮状態が短時間で解除されてメタル体2が軸方向に伸長し、メタル体2の第1板部3の第1接触部分31が第1ハウジング10の径壁部10aに圧接され、メタル体2の第2板部4の第2接触部分41が第2ハウジング11の径壁部11aに圧接されて、第1ハウジング10及び第2ハウジング11間を早期に密封できる。
【0058】
また、基材6が200度以上の温度で気化するため、第1ハウジング10及び第2ハウジング11を有する作動機器の使用時に基材6が作動機器またはメタル体2に悪影響を与えることを防止できる。
【0059】
また、基材6が湾曲部5よりも内径側に配置されているため、第1ハウジング10及び第2ハウジング11により密封される高温の被密封流体に基材6及び接着材7を近付けて配置できるので、接着材7の接着特性を早く失わせることができる。
【実施例3】
【0066】
次に、実施例3に係るメタルシール201につき、
図7を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0067】
図7に示されるように、メタルシール201は、棒状直線状に形成されたメタル体202と、略直線状の板状に形成された基材206と、接着材7から棒状に構成されている。
【0068】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0069】
例えば、前記各実施例では、メタル体は、断面視略M字状に形成されている構成として説明したが、これに限らず、断面視略C字状に形成されていてもよく、断面視略W字状に形成されていてもよく、その形状は適宜変更されてもよい。
【0070】
また、基材は帯状に形成されていると説明したが、これに限らず、
図8の変形例のメタルシール301に示されるように、複数の基材例えば複数の片状の基材306が周方向に間隔を開けてメタル体2に配置されていてもよい。
【0071】
また、メタル体は、断面視第1板部3及び第2板部4が屈曲形状であるものを例に説明したが、これに限らず、弧状や直線状に形成されていてもよい。
【0072】
また、メタル体は、凸部30,40が第1ハウジング10の径壁部10aまたは径壁部11aに向かって半円弧状に突出している構成として説明したが、これに限らず、W状であってもよく、クランク状であってもよく、その形状が限定されるものではない。
【0073】
また、メタル体は、プレス加工により形成され、その凸部30,40の内面が、断面曲面形状の凹部32,42である構成として説明したが、これに限らず、メタル体の内側を断面曲面形状に削ることで各凹部を構成してもよく、メタル体の内側に断面曲面形状のリブを形成することで凹部を構成してもよく、その形成方法は適宜変更されてもよい。
【0074】
また、基材は、硬質の板状である構成として説明したが、これに限らず、メタル体の軸方向への伸長を規制できる構成であればよく、例えばシート等であってもよい。