【解決手段】第1位置と第2位置とに切り替わる切替バルブ18と、切替バルブ18を第1位置に向けて付勢する付勢部材20と、パイロット流体の供給圧力の作用下に、切替バルブ18を第1位置と反対側の第2位置に向けて付勢する駆動機構22と、駆動機構22にパイロット流体を導くパイロット流路36と、切替バルブ18の切替タイミングを遅延させる遅延機構24と、を備えたタイムディレイバルブ10において、遅延機構24は、パイロット流路36上に設けられた第1絞弁34と、パイロット流体の供給圧力の作用下に、切替バルブ18を第1位置に向けて付勢する補償機構26と、パイロット流路から分岐してパイロット流体の一部を補償機構26に導く補償流路44と、を有する。
請求項1記載のタイムディレイバルブであって、前記補償機構は、前記パイロット流体の供給圧力の作用下に、前記駆動機構と反対の付勢力を発生させるピストン機構を有している、タイムディレイバルブ。
請求項2記載のタイムディレイバルブであって、前記補償機構には、前記遅延用絞弁の上流側で前記パイロット流路から分岐した補償流路を通じてパイロット流体が供給される、タイムディレイバルブ。
請求項8記載のタイムディレイバルブであって、前記復帰機構は、前記スプールの他端に形成された復帰ピストンと、前記復帰ピストンを収容する復帰ピストン室と、を有する、タイムディレイバルブ。
請求項11記載の流量コントローラであって、前記第1給排路の前記タイムディレイバルブの前記パイロット流路は、前記第2給排路に接続され、前記第2給排路の前記タイムディレイバルブの前記パイロット流路は前記第1給排路に接続されている、流量コントローラ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のタイムディレイバルブ及び流量コントローラについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1及び
図2に示す本実施形態のタイムディレイバルブ10は、シリンダや、各種流体圧機器の駆動回路に取り付けられて、工場の生産ラインの空気圧機器等に用いられる。タイムディレイバルブ10は、例えば、空気(エア)等の制御対象流体の流量の制御に用いられる。なお、制御対象流体及びパイロット流体は空気(エア)に限定されるものではない。
【0014】
本実施形態のタイムディレイバルブ10は、
図1に示すように、本体12の内部に、第1流路14と、第2流路16と、切替バルブ18と、付勢部材20と、駆動機構22と、遅延機構24と、補償機構26と、復帰機構28と、を有する。このうち、第1流路14及び第2流路16は、制御対象流体を流通させる流路であり、本体12の第1接続ポート30と第2接続ポート32とを繋ぐ流路である。
【0015】
第1流路14及び第2流路16は、並列に設けられた流路であり、切替バルブ18の切り替え動作により、制御対象流体を流通させる経路がこれらの流路の間で選択的に切り替わる。第2流路16には、第1流路14と異なる条件で制御対象流体を通過させるべく、流量を絞る第1絞弁34が設けられている。なお、第1絞弁34は、第2流路16に代えて第1流路14に設けられてもよい。また、第1絞弁34は、第1流路14及び第2流路16の両方に設けられてもよい。さらに、第1絞弁34は、流量可変の可変式絞弁に限定されず、一定の流量を通過させる固定式絞弁であってもよい。
【0016】
切替バルブ18は、第1位置と第2位置とに切り替え可能な3ポート弁として構成されている。切替バルブ18は、第1位置において、第1接続ポート30と第2接続ポート32とを第1流路14を介して連通させる。また、切替バルブ18は、第2位置において第1接続ポート30と第2接続ポート32とを第2流路16を介して連通させる。切替バルブ18は、付勢部材20、駆動機構22、補償機構26、及び復帰機構28の付勢力によって、第1位置と第2位置とが切り替わるように構成されている。
【0017】
付勢部材20は、切替バルブ18を第1位置に向けて付勢する部材であり、例えば、バネやゴム等の弾性部材で構成されている。切替バルブ18は、パイロット流体を供給していない状態において、付勢部材20の付勢力によって第1位置に保たれる。付勢部材20は、切替バルブ18の自重で第2位置に切り替わらない程度の弾発力を有している。
【0018】
駆動機構22は、パイロット流体の作用下に、切替バルブ18を第2位置に向けて付勢する付勢力を発生させる部材である。駆動機構22は、後述するように付勢部材20と対向して配置されたピストン機構を含んでおり、パイロット流体の供給圧力に応じた付勢力を発生させる。駆動機構22は、その付勢力が付勢部材20及び補償機構26の付勢力を上回ったタイミングで、切替バルブ18を第2位置へ切り替える。
【0019】
駆動機構22には、パイロット流路36を介してパイロット流体が供給される。パイロット流路36は、本体12のパイロットポート38と、駆動機構22とを繋ぐ流路であり、パイロットポート38から流入したパイロット流体を駆動機構22に導く。
【0020】
遅延機構24は、パイロット流路36に設けられた遅延用絞弁40と、遅延用絞弁40の下流に設けられた容積部42と、補償機構26とを有する。遅延用絞弁40には、流量可変な絞り弁40aと、逆止弁40bとが並列に設けられている。遅延用絞弁40は、パイロット流路36を通じて容積部42に流れ込むパイロット流体の流量を絞ることで、駆動機構22に作用するパイロット流体の圧力の上昇速度を調整し、切替バルブ18の切替タイミングを調整することができる。容積部42は、遅延用絞弁40の下流側のパイロット流路36及び駆動機構22のピストン機構の容積として構成されている。必要に応じて貯留タンク等の部材を追加してもよい。
【0021】
補償機構26は、切替バルブ18を第1位置に向けて付勢する付勢力を発生する部材であり、遅延用絞弁40の上流側のパイロット流路36から分岐した補償流路44を通じてパイロットポート38とつながっている。補償機構26には、補償流路44を通じてパイロット流体が供給される。補償機構26は、パイロット流体の供給圧力に応じた大きさの第1位置に向けた付勢力を発生させる。すなわち、パイロット流体の供給圧力が上昇すると、補償機構26の付勢力が増加する。また、パイロット流体の供給圧力が減少すると、補償機構26の付勢力が減少する。但し、補償機構26の付勢力は、駆動機構22の付勢力よりも素早く立ち上がり、切替バルブ18が切り替わるタイミングを規定する付勢力をパイロット流体の供給圧力に応じて増減させるように構成されている。
【0022】
復帰機構28は、切替バルブ18を第1位置に向けて付勢する付勢力を発生させる部材である。復帰機構28は、復帰流路46を介して第1流路14とつながっている。復帰機構28は、第1流路14の制御対象流体の供給圧力に応じた大きさの付勢力を発生させる。容積部42のパイロット流体の量は、パイロット流体の供給圧力が増減するが、復帰機構28は、パイロット流体(制御対象流体)の供給圧力に応じた付勢力を切替バルブ18に作用させることで、切替バルブ18が第2位置から第1位置に切り替わる復帰タイミングを安定化させる。
【0023】
次に、タイムディレイバルブ10の具体的な構造について、
図2〜
図4を参照しつつ説明する。
【0024】
図2に示すように、タイムディレイバルブ10の本体12は、正面12a、背面12b、上面12c及び底面12dを一体化した矩形の枠状に形成されており、両側部が開口部12e1、12e2となっている。本体12の両側部には、側板50を取り付けるためのボス52が本体12の正面12a、背面12b、上面12c及び底面12dの所定箇所に複数個設けられている。開口部12e1、12e2を通じて、他のタイムディレイバルブ10を連結することもできる。本実施形態では、1つのタイムディレイバルブ10で使用されるため、側部の開口部12e1、12e2を覆うように一対の側板50が取り付けられる。
【0025】
本体12の正面12aには、第1接続ポート30と、第1絞弁34の流量調整ツマミ34aと、遅延用絞弁40の調整ツマミ40cが配置されている。また、背面12bに第2接続ポート32が設けられている。本体12の上面12cと底面12dとの間に略円筒状のバルブ収容部54が設けられている。バルブ収容部54には、切替バルブ18が収容される。
【0026】
正面12aの第1接続ポート30からは、第1流路14がバルブ収容部54に向けて延びている。第1流路14の側部からは、側方に向けて連結ポート56が延び出ている。連結ポート56は、円筒状に形成されており、開口部12e1側の側部及び開口部12e2側の側部に延び出ている。連結ポート56の開口部12e1側の側部及び開口部12e2側の内部には、それぞれ封止壁56aが設けられている。必要に応じて封止壁56aに穴あけ加工が施されて複数のタイムディレイバルブ10を連結する際に、パイロット流体や制御対象流体を隣接するタイムディレイバルブ10に供給するための接続口として使用される。なお、本実施形態のように、単一のタイムディレイバルブ10のみで使用する場合には、連結ポート56の開口部12e1側の封止壁56a及び開口部12e2側の封止壁56aには穴あけ加工は施されず、連結ポート56は封止壁56aで封止される。
【0027】
第1絞弁34は、第1流路14よりも上面12c寄りの位置でバルブ収容部54に接続されている。第1絞弁34は、その流量調整ツマミ34aが正面12aに設けられており、流量調整ツマミ34aにより第2流路16の流量を調整可能となっている。
【0028】
遅延用絞弁40は、第1絞弁34よりも上面12c寄りの位置でバルブ収容部54に接続されている。遅延用絞弁40の側部にはパイロット流路36が接続されている。パイロット流路36は遅延用絞弁40を介してバルブ収容部54に接続されている。パイロット流路36は、開口部12e1側の側方及び開口部12e2側の側方に向けて円筒状に延び出ており、開口部12e1、12e2側に、それぞれ封止壁36aが形成されている。これらの封止壁36aの内、開口部12e2側の封止壁36aには穴あけ加工が施されており、開口部12e2側のパイロット流路36には、パイロットポート38が接続される。側板50を組み付けると、パイロットポート38が側板50の外方に突出し、パイロットポート38に配管部材が接続可能となっている。パイロットポート38には、パイロット流体が所定のタイミングで供給される。
【0029】
図3に示すように、切替バルブ18はバルブ収容部54の内部にスプール60が収容されたスプール弁として構成されている。バルブ収容部54は、その内部に本体12の上面12cから底面12d側に貫通した貫通孔58を有している。その貫通孔58の両端はエンドキャップ64、66で封止されている。そして、エンドキャップ64、66の間の貫通孔58には、スプール60と、スプール60を収容するスリーブ62が収容されている。
【0030】
貫通孔58の上面12c側の端部には、エンドキャップ64が嵌め込まれている。エンドキャップ64は、内部にパイロット流体を貯留する貯留室64aが形成されている。貯留室64aは、孔部64bを通じて遅延用絞弁40と連通しており、パイロット流体を貯留する容積部42の一部を構成する。
【0031】
スリーブ62は、エンドキャップ64、66の間の貫通孔58に嵌め込まれている。スリーブ62には、上面12c側から底面12d側に貫通する摺動孔62aが形成されている。摺動孔62aにはスプール60が摺動可能に配置される。
【0032】
スリーブ62の上面12c側の端部には、駆動ピストン室68が形成されている。駆動ピストン室68は、スプール60の一端に形成された駆動ピストン70を収容する部分である。駆動ピストン室68は、駆動ピストン70により上面12c側の第1空室72aと、底面12d側の第2空室72bとに仕切られる。駆動ピストン室68の第1空室72aは、エンドキャップ64の貯留室64aと連通している。また、駆動ピストン室68の第2空室72bには、補償流路44の開口部44aが形成されており、第2空室72bは補償流路44と連通している。
【0033】
また、スリーブ62には、第1絞弁34に連通する第1切欠孔74が形成され、第2接続ポート32に連通する第2切欠孔76と、第1流路14に連通する第3切欠孔78とが形成されている。第1切欠孔74、第2切欠孔76及び第3切欠孔78は、スリーブ62を厚さ方向に貫通して形成されている。
【0034】
スリーブ62の底面12d側の端部には復帰ピストン80を摺動可能に収容する復帰ピストン室82が形成されている。復帰ピストン室82は、底面12d側から貫通孔58に嵌め込まれたエンドキャップ66によって封止されている。復帰ピストン室82は、復帰ピストン80によって、エンドキャップ66側の空室と、上面12c側の空室とに仕切られる。復帰ピストン室82のエンドキャップ66側の空室は、復帰流路46を構成する第4切欠孔86を介して第1流路14に連通している。また、復帰ピストン室82の上面12c側の空室は第1流路14と連通している。
【0035】
復帰ピストン80は、スプール60の底面12d側の端部に形成されており、端面が第4受圧面80aとなっている。第4受圧面80aは、復帰流路46を通じて復帰ピストン室82に流入した制御対象流体の供給圧力を受けて、スプール60を第1位置に向けた付勢力を発生させる。
【0036】
復帰ピストン室82の復帰ピストン80とエンドキャップ66との間の空室には、付勢部材20が収容されている。付勢部材20は、例えば、コイル状に形成されたバネよりなり、復帰ピストン80の第4受圧面80aと当接している。付勢部材20は、その弾発力によって第4受圧面80a(スプール60)を上面12c側の第1位置に向けて付勢する。付勢部材20の弾発力(付勢力)は、スプール60の重量よりも大きな値に設定されており、パイロット流体や制御対象流体が供給されない不使用時において、スプール60の底面12d側(第2位置側)への移動を阻止する。
【0037】
スプール60は、
図4に示すように、第1位置側(上面12c側)の一端に駆動ピストン70が形成されている。駆動ピストン70の端面は第1受圧面70aとなっており、パイロット流体の供給圧力を受けてスプール60を第2位置側に付勢する付勢力を発生させる。
【0038】
駆動ピストン70の第2位置側は、駆動ピストン70よりも小さな直径の摺動部88が形成されており、摺動部88と駆動ピストン70との段差部分に第2受圧面70bが形成されている。第2受圧面70bは、第1受圧面70aと対向して形成されており、パイロット流体の供給圧力を受けてスプール60を第1位置に向けて付勢する付勢力を発生させる。第2受圧面70bは、補償機構26の一部を構成する。なお、第2受圧面70bの面積は第1受圧面70aの面積よりも小さいため、貯留室64aの内圧が十分に上昇すると、第1受圧面70aの付勢力が第2受圧面70b及び付勢部材20の付勢力を上回る。
【0039】
摺動部88は、第2位置側(底面12d側)に向けて延在している。摺動部88には、第1位置側から順に、第1凹部90と、第1隔壁92と、第2凹部94と、第2隔壁96と、第3凹部98と、復帰ピストン80とが形成されている。また、スプール60の所定部位に複数のパッキン収容溝99が形成されている。パッキン収容溝99には、
図3に示すようにOリング97が装着されてスプール60とスリーブ62との隙間がシールされている。
【0040】
図3に示すように、スプール60が第1位置にある場合には、第1凹部90は、第1切欠孔74に連通し、第2凹部94は第2切欠孔76に連通し、第3凹部98は第3切欠孔78に連通する。また、第1隔壁92は、第1切欠孔74と第2切欠孔76とを気密(液密)に仕切る。このとき、第2隔壁96は、第2切欠孔76の位置に配置され、第3凹部98を通じて第2切欠孔76と第3切欠孔78とが連通する。そして、第1接続ポート30と第2接続ポート32とが第1流路14を通じて接続される。
【0041】
一方、スプール60が底面12d側の第2位置にある場合には、第1隔壁92が第2切欠孔76の位置に配置され、第1切欠孔74と第2切欠孔76とが第1凹部90を通じて連通する。このとき、第2隔壁96は第2切欠孔76と第3切欠孔78との間のスリーブ62の内周面と密着して、第2切欠孔76と第3切欠孔78との連通が阻止される。そして、スプール60の第2位置では、第1接続ポート30と第2接続ポート32とが第2流路16及び第1絞弁34を通じて接続される。
【0042】
本実施形態のタイムディレイバルブ10は以上のように構成され、以下、その作用について説明する。
【0043】
図5に示すように、タイムディレイバルブ10は、動作切替弁100に接続されてエアシリンダ等の流体圧機器の駆動装置として用いられる。図示の流体回路は、タイムディレイバルブ10を用いて、流体排出部114から排出される制御対象流体の流量を所定の遅延時間の後に絞る流体回路となっている。
【0044】
動作切替弁100は、5ポート弁であり、ポート102〜110を有している。第1ポート102にはパイロットポート38が接続され、第2ポート104には第1接続ポート30が接続される。第3ポート106及び第5ポート110には流体排出部114が接続され、第4ポート108には流体供給源112が接続される。流体供給源112は、例えば工場の圧力ラインやエアコンプレッサー等である。
【0045】
動作切替弁100は、第1位置と第2位置に切り替わる。動作切替弁100の第1位置では、第1ポート102と第4ポート108とが接続され、第2ポート104と第5ポート110とが接続される。すなわち、パイロットポート38に流体供給源112が接続されてパイロット流体が供給され、第1接続ポート30に流体排出部114が接続される。そして、パイロットポート38を通じてパイロット流路36にパイロット流体が供給される。
【0046】
タイムディレイバルブ10は、初期状態において付勢部材20の付勢力によって切替バルブ18が第1位置に配置されており、第1接続ポート30と第2接続ポート32とが第1流路14を通じて連通している。パイロット流体の一部は、パイロット流路36から分岐した補償流路44を通じて補償機構26に流れ込む。また、パイロット流体の他の一部は、遅延用絞弁40を通じて所定流量で容積部42(貯留室64a)に流れ込み、駆動機構22に作用するパイロット流体の圧力を徐々に増加させる。
【0047】
図6に示すように、スプール60には、駆動ピストン70の第2受圧面70b(補償機構26)に作用する圧力による付勢力1と、第1受圧面70a(駆動機構22)に作用する圧力による付勢力2と、付勢部材20による付勢力3とが作用している。第1位置方向の付勢力1と付勢力3との合力よりも、第2位置方向の付勢力2が大きくなったタイミングで、スプール60(切替バルブ18)が第2位置に切り替わる。
【0048】
そして、切替バルブ18が第2位置に切り替わることで、
図5の第1接続ポート30と第2接続ポート32とが第2流路16を通じて接続され、制御対象流体の流量が、第1絞弁34によって規制される。このように、タイムディレイバルブ10では、パイロット流体の供給から所定の遅延時間の経過後に切替バルブ18が切り替わるように動作する。
【0049】
ここで、流体供給源112の圧力が増加すると、パイロット流路36の遅延用絞弁40を通過するパイロット流体の流量が増加して、容積部42の充填圧力の上昇速度が速くなり、付勢力2の増加が速くなる。逆に、流体供給源112の圧力が減少すると、遅延用絞弁40を通過するパイロット流体の流量が減少して、付勢力2の増加が遅くなる。そのため、流体供給源112の圧力の変動により、切替バルブ18の切り替え動作のタイミングが変動するおそれがある。
【0050】
そこで、本実施形態のタイムディレイバルブ10では、付勢力2の増加に先立って、第2受圧面70bにパイロット流体の供給圧力を作用させて、付勢力1を発生させておく。付勢力1の大きさは、パイロット流体の圧力に比例するため、付勢力2の増加速度を補償するように作用する。すなわち、流体供給源112の圧力が増加すると、それに応じて付勢力1が増加する。そして、スプール60を切り替えるのに必要な付勢力2の大きさが増加し、付勢力2の増加速度の増大による影響を打ち消して、スプール60の切替タイミング(遅延時間)の変動を抑制することができる。
【0051】
また、流体供給源112の圧力が減少した場合には、第2受圧面70bに作用するパイロット流体の供給圧力も減少する。その結果、付勢力1が減少し、より小さな付勢力2でスプール60が切り替わることができるようになる。これにより、付勢力2の増加速度の減少分による影響が打ち消されて、スプール60の切替タイミング(遅延時間)の変動を抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態のタイムディレイバルブ10は、復帰動作においても、スプール60の切り替え動作のタイミングを安定化させることができる。
図5の動作切替弁100が第2位置に切り替わると、第1ポート102と第3ポート106とが接続され、第2ポート104と第4ポート108が接続される。すなわち、タイムディレイバルブ10の第1接続ポート30に流体供給源112が接続され、パイロットポート38に流体排出部114が接続される。
【0053】
容積部42に貯留されたパイロット流体は逆止弁40b及びパイロット流路36を経由して流体排出部114から排出される。そして、駆動機構22に作用するパイロット流体の圧力が所定値を下回り、
図6の付勢力2が、付勢部材20の付勢力3を下回ったタイミングで、スプール60(切替バルブ18)が第1位置に復帰する。ところが、容積部42に貯留されたパイロット流体の量は、パイロット流体の供給圧力である流体供給源112の圧力変動に応じて増減するため、スプール60(切替バルブ18)が第1位置に復帰するタイミングは、流体供給源112の圧力の影響を受ける。
【0054】
本実施形態では、第1接続ポート30に連通した復帰流路46を通じて第1接続ポート30の制御対象流体の一部が復帰機構28の復帰ピストン室82に供給される。復帰機構28の復帰ピストン80は、制御対象流体の供給圧力(流体供給源112の圧力)に応じた大きさで第2位置に向けた付勢力を発生させる。この復帰機構28の付勢力が付勢部材20の付勢力に重畳されるため、容積部42に貯留されたパイロット流体の量の変動を打ち消すように作用する。その結果、タイムディレイバルブ10は、流体供給源112の圧力の変動による復帰動作のタイミングの変動を抑制することができる。
【0055】
図7は、比較例に係るタイムディレイバルブの容積部42のパイロットエアの充填圧力の推移と、切替タイミング(遅延時間)の変動の様子を示す図である。比較例のタイムディレイバルブは、
図6の補償流路44を大気開放してパイロット流体の圧力に応じた付勢力1を発生させないようにしている。
【0056】
ここでは、流体供給源112からのパイロット流体の供給圧力を基準とする0.4MPaに対して±0.1MPa変動させた例を示す。流体供給源112の圧力が増加すると、容積部42の充填圧力がより速く増加する。また、流体供給源112の圧力が減少すると、容積部42の充填圧力の増加が遅くなる。スプール60に、付勢部材20の付勢力3のみが作用している場合には、一定の充填圧力0.2MPaに到達した際にスプール60が切り替わるが、その切り替え動作のタイミング(遅延時間)が、充填圧力の増加速度の変動によって、大きく変動する。
【0057】
一方、
図8に示すように、本実施形態のタイムディレイバルブ10では、スプール60が切り替わる際の容積部42の充填圧力が、補償機構26によって増減するため、遅延時間の変化幅を抑制できる。
【0058】
本実施形態のタイムディレイバルブ10は、以下の効果を奏する。
【0059】
本実施形態のタイムディレイバルブ10は、第1位置と第2位置とに切り替わる切替バルブ18と、切替バルブ18を第1位置に向けて付勢する付勢部材20と、パイロット流体の供給圧力の作用下に、切替バルブ18を第2位置に向けて付勢する駆動機構22と、駆動機構22にパイロット流体を導くパイロット流路36と、切替バルブ18の切替タイミングを遅延させる遅延機構24と、を備え、遅延機構24は、パイロット流路36上に設けられた遅延用絞弁40と、パイロット流体の供給圧力の作用下に、切替バルブ18を第1位置に向けて付勢する補償機構26と、を有する。
【0060】
上記の構成によれば、補償機構26により、パイロット流体の圧力に応じた付勢力1(
図6参照)を切替バルブ18に作用させることができる。これにより、パイロット流体の供給圧力が変動に応じて、切替バルブ18が第1位置から第2位置に切り替わる際の駆動機構22の付勢力2を変動させることができ、パイロット流体の供給圧力の変動による遅延時間の変動幅を抑制することができる。
【0061】
上記のタイムディレイバルブ10において、補償機構26は、パイロット流体の供給圧力の作用下に、駆動機構22と反対の付勢力を発生させるピストン機構を有してもよい。この構成により、パイロット流体の供給圧力に応じた付勢力1を発生させることができる。
【0062】
上記のタイムディレイバルブ10において、補償機構26には、遅延用絞弁40の上流側でパイロット流路36から分岐した補償流路44を通じてパイロット流体が供給される。この構成により、補償機構26に素早くパイロット流体の供給圧力を作用させることができ、切替バルブ18の切替タイミングを安定化させることができる。
【0063】
上記のタイムディレイバルブ10において、切替バルブ18の第1位置において連通する第1流路14と、切替バルブ18の第2位置において連通する第2流路16と、第1流路14及び第2流路16の少なくとも一方に設けられた第1絞弁34と、を有してもよい。この構成によれば、制御対象流体の流量の切り替えを行うことができる。
【0064】
上記のタイムディレイバルブ10において、さらに、駆動機構22と反対の付勢力を発生させる復帰機構28と、第1流路14又は第2流路16から分岐して復帰機構28に接続された復帰流路46と、を備えてもよい。この構成によれば、パイロット流体の供給圧力が変動した場合であっても、切替バルブ18の復帰動作のタイミングを安定化できる。
【0065】
上記のタイムディレイバルブ10において、切替バルブ18は、スプール60と、スプール60が摺動するスリーブ62と、を有し、駆動機構22は、スプール60の一端に設けられた駆動ピストン室68と、駆動ピストン室68を第1位置側の第1空室72aと第2位置側の第2空室72bとに仕切る駆動ピストン70と、を有し、駆動ピストン70は、第1空室72a側にパイロット流体の供給圧力を受けて第2位置側の付勢力を発生させる第1受圧面70aを有する。このように、スプール60と駆動ピストン70とが一体化されることにより、装置構成が簡素化される。
【0066】
上記のタイムディレイバルブ10において、駆動ピストン70はスプール60と一体的に形成され、補償機構26は駆動ピストン70において第2空室72bに面し、第1受圧面70aと対向する第2受圧面70bを有してもよい。この構成によれば、駆動ピストン70に補償機構26が設けられるため、装置構成が簡素化される。
【0067】
上記のタイムディレイバルブ10において、第2受圧面70bの面積は第1受圧面70aの面積よりも小さい。これにより、パイロット流体により、切替バルブ18を第1位置から第2位置に切り替える付勢力を発生させることができる。
【0068】
上記のタイムディレイバルブ10において、復帰機構28は、スプール60の他端に形成された復帰ピストン80と、復帰ピストン80を収容する復帰ピストン室82とを有してもよい。この構成により、復帰機構28の復帰ピストン80がスプール60と一体化され、装置構成が簡素化される。
【0069】
上記のタイムディレイバルブ10において、付勢部材20は復帰ピストン室82に配置されていてもよい。この構成によれば、タイムディレイバルブ10を小型化できる。
【0070】
(第1実施形態の変形例)
図9に示すように、本変形例のタイムディレイバルブ11は、本体12Aの内部に第2流路16を有さず、第2流路16及び第1絞弁34が外付けとなっている。なお、
図9のタイムディレイバルブ11の構成において、
図1〜
図6を参照しつつ説明したタイムディレイバルブ10と同様の構成については、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0071】
図9に示すように、タイムディレイバルブ11は、本体12Aの第1接続ポート30と第2接続ポート32とを接続する第1流路14を有しており、その第1流路14に切替バルブ18Aが設けられている。切替バルブ18Aは、第1位置と第2位置に切り替え可能であり、第1位置において、第1流路14の流体の流通を許容し、第2位置において第1流路14の流体の許容を阻止する。
【0072】
切替バルブ18Aは、第1実施形態の切替バルブ18と同様に、付勢部材20により第1位置に付勢されており、駆動機構22、遅延機構24、補償機構26にパイロット流体の供給が開始されると、所定の遅延期間(遅延時間)を経過後に第2位置に切り替わり、第1流路14を通じた制御対象流体の通過が阻止される。
【0073】
外付けの部材として、タイムディレイバルブ11に第1絞弁34を有する第2流路16を並列に接続すると、所定の遅延時間経過後に制御対象流体の流量を絞ることができ、タイムディレイバルブ10と同様の機能が得られる。
【0074】
本変形例のタイムディレイバルブ11においても、第1実施形態のタイムディレイバルブ10と同様に、パイロット流体の供給圧力の変動による、切替タイミング(遅延時間)の変動を抑制できる。
【0075】
なお、タイムディレイバルブ11の切替バルブ18Aは、2ポート弁に限定されるものではなく、5ポート弁等で構成してもよい。また、第2流路16に設けられる機器は、第1絞弁34に限定されるものではなく、第1絞弁34に代えて各種機器を接続してもよい。
【0076】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態のタイムディレイバルブ10を用いた流量コントローラ150について説明する。流量コントローラ150は、
図10に示すように、流体圧シリンダ120を駆動する流体回路を構成する。なお、流量コントローラ150には、第1モジュール10A及び第2モジュール10Bが含まれているが、いずれも
図1のタイムディレイバルブ10と同様の構造となっている。なお、第1モジュール10A及び第2モジュール10Bの構成において、
図1のタイムディレイバルブ10と同様の構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0077】
図10に示すように、流体圧シリンダ120は、複動型のシリンダであり、シリンダ室121の内部に、ピストン120aが設けられている。ピストン120aは、流体圧シリンダ120のシリンダ室121をヘッド側空室121aとロッド側空室121bとに仕切る。ヘッド側空室121aにはヘッド側ポート122を通じて流体が給排され、ロッド側空室121bにはロッド側ポート124を通じて流体が給排される。ピストン120aは、ヘッド側ポート122及びロッド側ポート124から給排される流体(制御対象流体)によりシリンダ室121の内壁と摺動しながら軸方向に変位する。ピストン120aにはピストンロッド120bが接続されており、ピストンロッド120bはピストン120aと一体的に変位する。
【0078】
流量コントローラ150は、流体圧シリンダ120のピストン120a(及びピストンロッド120b)の移動速度を、高速な一速目から低速な二速目に切り替える二段階速度制御を行う機能を有している。この流量コントローラ150は、流体圧シリンダ120のストローク端での衝撃の緩和や高速動作の実現によるサイクルタイムの短縮が求められる場合に好適に用いることができる。以下、流量コントローラ150の具体的な構成について説明する。
【0079】
流量コントローラ150は、ヘッド側ポート122に接続された第1給排路116と、ロッド側ポート124に接続された第2給排路118と、第1給排路116と第2給排路118とに流体供給源112及び流体排出部114を切り替えて接続する動作切替弁100と、流体圧シリンダ120の一速目の動作速度を規制する速度調整部126、128と、二速目の動作速度を規制する第1モジュール10A及び第2モジュール10Bと、を含む。
【0080】
第1給排路116には、第1速度調整部126及び第2モジュール10Bが接続されている。第1速度調整部126は、流体圧シリンダ120のピストンロッド120bを引き込む復帰ストロークの際の高速な一速目の動作速度を規制する部材であり、逆止弁126aと絞弁126bとを有している。逆止弁126aは、絞弁126bと並列に接続されており、流体圧シリンダ120に供給される流体を抵抗なく通過させる向きで接続されている。第1速度調整部126は、流体圧シリンダ120のピストン120aがヘッド側に移動する際に、ヘッド側ポート122から排出される流体の流量を絞弁126bで絞ることで、流体圧シリンダ120の動作速度を規制する。すなわち、第1速度調整部126は、流体圧シリンダ120から排出される流体で動作速度を規制するメータアウトのスピードコントローラを構成する。
【0081】
第2モジュール10Bは、第1給排路116において、第1速度調整部126と動作切替弁100との間に接続されている。第2モジュール10Bにおいて、第2接続ポート32が第1速度調整部126に接続され、第1接続ポート30が動作切替弁100に接続されている。第2モジュール10Bは、流体圧シリンダ120の復帰ストロークの開始後、所定の遅延時間の経過後に、制御対象流体の流路を第1流路14から第2流路16に切り替えてその流量を絞ることで、低速な二速目の動作速度とする。第2モジュール10Bのパイロット流路36は、第2交差流路130Bを介して第2給排路118に接続されている。すなわち、第2モジュール10Bのパイロット流体は、反対側の第2給排路118から供給される。
【0082】
第2給排路118には、第2速度調整部128及び第1モジュール10Aが接続されている。第2速度調整部128は、第1速度調整部126と同様に構成されており、流体圧シリンダ120に供給される方向の流れを抵抗なく通過させ、その逆向きの流れを規制するメータアウトのスピードコントローラを構成する。第2速度調整部128は、流体圧シリンダ120のピストンロッド120bを送り出す駆動ストロークの際の高速な一速目の動作速度を規制する。
【0083】
第1モジュール10Aは、第2給排路118において、第2速度調整部128と動作切替弁100との間に接続されている。第1モジュール10Aの構成は、第2モジュール10Bと同様である。なお、第1モジュール10Aのパイロット流路36は、第1交差流路130Aを介して第1給排路116に接続されている。このように、第1モジュール10A及び第2モジュール10Bのパイロット流路36は、互いに反対側の給排路116、118にクロスするように接続されている。
【0084】
なお、第1速度調整部126及び第2速度調整部128はメータアウトに限定されるものではなく、逆止弁126a、128aを逆向きに繋ぐことで、メータインのスピードコントローラとして構成してもよい。
【0085】
動作切替弁100は、
図5を参照しつつ説明した動作切替弁100と同様である。動作切替弁100の第1ポート102は第2給排路118に接続され、第2ポート104は第1給排路116に接続され、第3ポート106及び第5ポート110は流体排出部114に接続され、第4ポート108は流体供給源112に接続されている。
【0086】
本実施形態の流量コントローラ150の回路構成は以上のとおりであるが、第1モジュール10A及び第2モジュール10Bは、一体化されたバルブユニット140として構成されてもよい。以下、
図11及び
図12を参照しつつ、バルブユニット140について説明する。
【0087】
図11に示すように、バルブユニット140は、本体12を有する2つの第1モジュール10A及び第2モジュール10Bを連結して構成される。第1モジュール10A及び第2モジュール10Bの各々の内部の構成は、
図2のタイムディレイバルブ10と同様である。但し、
図12に示すように、第1モジュール10A及び第2モジュール10Bのパイロット流路36を反対側の給排路116、118とクロスするように接続するために、流路接続部材130が設けられている。
【0088】
流路接続部材130は、第2モジュール10Bの連結ポート56と第1モジュール10Aのパイロット流路36とを繋ぐ第1交差流路130Aと、第1モジュール10Aの連結ポート56と第2モジュール10Bのパイロット流路36とを繋ぐ第2交差流路130Bとを内蔵している。流路接続部材130は、第1交差流路130Aと第2交差流路130Bとの間に挟み込まれるようにしてパイロット流路36に接続される。なお、第2モジュール10Bにおいて、開口部12e2側の連結ポート56の封止壁56a及び開口部12e2側のパイロット流路36の封止壁36aには穴あけ加工が施されている。また、第1モジュール10Aにおいて、開口部12e1側の連結ポート56の封止壁56a及び開口部12e1側のパイロット流路36の封止壁36aには穴あけ加工が施されている。
【0089】
図11に示すように、第1モジュール10A及び第2モジュール10Bは、両側部が側板50Aで覆われ、ボルト止めにより連結される。側板50Aのパイロット流路36に対応する部位には、図示しない封止部材が設けられており、パイロット流路36の開口部は、側板50Aによって封止される。
【0090】
本実施形態の流量コントローラ150は以上のように構成され、以下、その作用及び動作について説明する。
【0091】
図13において、横軸は時間の経過を示しており、動作切替弁100の切り替え動作に従って、制御対象流体の流量を制御する動作を行う。バルブ信号は、流量コントローラ150の動作切替弁100の切替状態を表しており、「ON」の状態では第1給排路116が流体供給源112に接続され、「OFF」の状態では第2給排路118が流体供給源112に接続されることを示している。
【0092】
シリンダストロークは、流体圧シリンダ120のストローク方向を示し、「駆動」は、ピストンロッド120bを送り出す駆動ストロークを行っていることを示し、「復帰」はピストンロッド120bを引き込む復帰ストロークを行っていることを示す。
【0093】
また、
図13の第1モジュール10A及び第2モジュール10Bの「1」は、スプール60が第1位置であることを示し、「2」はスプール60が第2位置にあることを示す。すなわち、第1モジュール10A及び第2モジュール10Bの「1」は流路が第1流路14となっていることを示し、第1モジュール10A及び第2モジュール10Bの「2」は流路が第2流路16となっていることを示す。図中の矢印の範囲は、動作切替弁100の切り替わりに伴う第1モジュール10A及び第2モジュール10Bのスプール60が切り替わるまでの遅延時間であり、パイロット流体の供給圧力の影響を受け得る動作タイミングである。
【0094】
以下、動作切替弁100のバルブ信号がOFFからONに切り替わった際の流量コントローラ150の動作について説明する。
【0095】
図14に示すように、動作切替弁100のバルブ信号がOFFからONに切り替わると、動作切替弁100の第1ポート102と第4ポート108とが繋がり、流体供給源112に第2給排路118が接続される。第2モジュール10Bを介して流体圧シリンダ120に制御対象流体が供給されて駆動ストロークが開始される。なお、駆動ストロークの際の第1給排路116及び第2モジュール10Bの動作は、
図18及び
図19を参照しつつ説明する復帰ストロークの際の第2給排路118の第1モジュール10Aの動作と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0096】
動作切替弁100のバルブ信号がOFFからONに切り替わる直前において、第1モジュール10Aの切替バルブ18は、初期位置である第1位置に位置しており、駆動機構22及び容積部42からはパイロット流体が抜けている。
図14に示すように、切替バルブ18の第1位置において、第1モジュール10Aの制御対象流体の流路は第1流路14となっており、第1給排路116を介して排出される流体の流量は、第1速度調整部126のみで規制される。
【0097】
動作切替弁100のバルブ信号がOFFからONに切り替わると、第1交差流路130Aを通じて第1給排路116のパイロット流体がパイロット流路36に流入する。パイロット流体の一部は、補償流路44を通じて補償機構26に供給され、補償機構26はパイロット流体の供給圧力に応じた大きさの付勢力を発生させる。パイロット流路36のパイロット流体は、遅延用絞弁40で規制されつつ、容積部42に流入し、駆動機構22に作用するパイロット流体の圧力が徐々に増加する。
【0098】
そして、駆動機構22の付勢力が付勢部材20及び補償機構26の付勢力を上回ったタイミングで、
図15に示すように、切替バルブ18が第2位置に切り替わる。そして、第1給排路116を介して排出される流体の流量が、第2速度調整部128に加えて、第1モジュール10Aの第2流路16に設けられた第1絞弁34でさらに絞られる。これにより、流体圧シリンダ120の動作速度が低速な二速目に切り替わる。
【0099】
ここで、
図16及び
図17を参照しつつ、比較例2及び本実施形態の第1モジュール10Aの駆動機構22に作用するパイロット流体の圧力である充填圧力の変化を示す充填特性と、流体圧シリンダ120のストローク位置の時間変化を示す軌跡とを調べた結果について説明する。ここでは、流体供給源112から0.3MPa、0.4MPa及び0.5MPaの圧力の圧縮エアを供給した結果を示す。
【0100】
図16に示す比較例2は、補償機構26が含まれないタイムディレイバルブで流量コントローラを構成した場合の結果を示している。比較例2の流量コントローラを用いた場合の、流体圧シリンダ120の軌跡に着目する。この流量コントローラでは、流体供給源112の圧力が0.4MPaの時に最適となるように、遅延用絞弁40を調整している。しかしながら、流体供給源112の圧力が±0.1MPa増減すると、調整が不適切となり、流体圧シリンダ120のストロークの終端においてバウンドを起す等して、ストローク終了のタイミングのばらつきが大きくなる。このように、補償機構26が含まれない比較例2の流量コントローラでは、流体圧シリンダ120のストローク終了時刻のばらつきが大きくなる。
【0101】
流体圧シリンダ120は、工場の生産ラインに組み込まれて使用されるが、流体圧シリンダ120のストローク終了時刻のばらつきが大きいと、流体圧シリンダ120に接続される部材と、他の機器とに干渉を生じるおそれがある。このような干渉を防ぐ観点から、流体圧シリンダ120を動作させるバルブ信号を設定する際に、比較的に大きな安全マージンを設ける必要があり、結果として、流体圧シリンダ120のサイクルタイムが伸びてしまう。
【0102】
図17に示すように、本実施形態の流量コントローラ150の第1モジュール10Aでは、第1モジュール10Aの充填特性において、0.4秒付近に段差が現われている。この段差は、切替バルブ18のスプール60が移動することで生じており、第1モジュール10Aの切替バルブ18の切り替わるタイミングを示している。図示のように、充填特性の段差が生じる時刻は、0.3MPa〜0.5MPaにおいて、ほとんど変化せず、遅延時間のばらつきが抑制されることがわかる。
【0103】
また、
図17において、流体圧シリンダ120の軌跡に着目すると、流体圧シリンダ120の軌跡のばらつきが抑制され、ピストン120aのストロークの終了時刻の変動幅が比較例2よりも小さくなることがわかる。このように、本実施形態の流量コントローラ150を用いることにより、流体供給源112の圧力変動による流体圧シリンダ120の軌跡のバラツキを抑制できるため、バルブ信号の切替の無駄な待ち時間を減らすことができ、流体圧シリンダ120のサイクルタイムを短くすることができる。
【0104】
次に、動作切替弁100のバルブ信号が「ON」から「OFF」に切り替わった際の、流量コントローラ150の動作について説明する。
【0105】
図18に示すように、動作切替弁100のバルブ信号がONからOFFに切り替わると、第2給排路118が流体排出部114に接続され、第1給排路116が流体供給源112に接続される。なお、第1給排路116及び第2モジュール10Bの動作は、
図14及び
図15を参照しつつ説明した第1モジュール10Aの動作と同様であるのでその説明は省略する。動作切替弁100のバルブ信号が「ON」から「OFF」に切り替わった直後では、第1モジュール10Aの容積部42にパイロット流体が充填されており、駆動機構22の付勢力が作用することにより、切替バルブ18が第2位置に保たれる。
【0106】
その後、所定の時間が経過すると、補償機構26及び容積部42に充填されたパイロット流体が、第1給排路116に排出される。また、復帰流路46を通じて復帰機構28に第2給排路118の制御対象流体の一部が流入する。そして、容積部42のパイロット流体の圧力が低下して、駆動機構22の付勢力が付勢部材20及び復帰機構28の付勢力を下回ったタイミングで、
図19に示すように、切替バルブ18が第1位置に復帰する。そして、第2モジュール10Bを通じて制御対象流体が流体圧シリンダ120に供給され、流体圧シリンダ120のストロークが開始される。
【0107】
上記のように、切替バルブ18が第1位置に復帰したタイミングで、流体圧シリンダ120のストロークが開始されるため、切替バルブ18の復帰タイミングがばらつくと、流体圧シリンダ120のストロークのばらつきが生じる。容積部42に充填されるパイロット流体の量は、流体供給源112の供給圧力に応じて増減する。これに対し、本実施形態では、復帰機構28を通じて流体供給源112の供給圧力に応じた付勢力が付勢部材20の付勢力に加えられるため、容積部42に充填されるパイロット流体の量の増減による影響を、復帰機構28で打ち消すことができる。
【0108】
以下、
図20及び
図21を参照しつつ、比較例3の流量コントローラ及び本実施形態の流量コントローラ150について、動作切替弁100を「ON」から「OFF」に切り替えた際の第1モジュール10Aの充填特性及び流体圧シリンダ120のストロークの軌跡を調べた結果について説明する。ここでは、流体供給源112の圧縮エアの供給圧力を0.3MPa、0.4MPa及び0.5MPaとした結果を示す。また、比較例3の流量コントローラは、復帰機構28を有さないタイムディレイバルブで構成されている。
【0109】
図20に示すように、比較例3の流量コントローラでは、流体供給源112の圧力が0.3MPa、0.4MPa、0.5MPaの順で、容積部42のパイロット圧が早く低下する傾向を示す。また、流体圧シリンダ120の軌跡については、バルブ信号が切り替わった後、0.15秒〜0.25秒の遅延時間の後から立ち上がっており、流体圧シリンダ120のピストン120aが動作し始めるまでの時間にばらつきが生じている。このように、復帰機構28を有さないタイムディレイバルブで構成した比較例3の流量コントローラでは、流体圧シリンダ120のストロークの開始タイミングが、流体供給源112の影響を大きく受けることがわかる。
【0110】
一方、
図21に示すように、本実施形態の流量コントローラ150では、充填特性については比較例3の流量コントローラと同様の傾向を示すものの、流体圧シリンダ120の軌跡については、バルブ信号が切り替わった後、0.25秒程度で立ち上がっており、比較例3よりも流体圧シリンダ120のストローク開始までの遅延時間が短縮されることがわかる。また、流体供給源112の供給圧力が0.3〜0.5MPaの範囲で変化しても、軌跡の立ち上がりの時刻が変動しておらず、流体圧シリンダ120のストロークの開始タイミングが、流体供給源112の圧力変動の影響を受けないことがわかる。
【0111】
上記の結果から、本実施形態の流量コントローラ150によれば、流体圧シリンダ120のストローク開始までの遅延時間を短縮できるとともに、流体供給源112に供給圧力の変動が生じた場合であっても、流体圧シリンダ120のストローク開始タイミングのバラツキを抑制できることが確認できる。そのため、本実施形態の流量コントローラ150によれば、バルブ信号に設定する待ち時間を短縮でき、サイクルタイムを短縮することが可能となる。
【0112】
本実施形態の流量コントローラ150は、以下の効果を奏する。
【0113】
流量コントローラ150は、流体圧シリンダ120のヘッド側ポート122(一方のポート)に流体を給排する第1給排路116と、流体圧シリンダ120のロッド側ポート124(他方のポート)に流体を給排する第2給排路118と、第1給排路116及び第2給排路118に制御対象流体を供給する流体供給源112及び流体を排出する流体排出部114と、を切り替えて接続する動作切替弁100と、第1給排路116及び第2給排路118の経路上にそれぞれ設けられたタイムディレイバルブ(第1モジュール10A及び第2モジュール10B)と、を備えた流量コントローラ150であって、タイムディレイバルブ(第1モジュール10A及び第2モジュール10B)は、第1位置と第2位置とに切り替わる切替バルブ18と、切替バルブ18を第1位置に向けて付勢する付勢部材20と、パイロット流体の供給圧力の作用下に、切替バルブ18を第2位置に向けて付勢する駆動機構22と、駆動機構22にパイロット流体を導くパイロット流路36と、切替バルブ18の切替タイミングを遅延させる遅延機構24と、を備え、遅延機構24は、パイロット流路36上に設けられた第1絞弁34と、パイロット流体の供給圧力の作用下に、切替バルブ18を第1位置に向けて付勢する補償機構26と、を有する。
【0114】
上記の構成によれば、パイロット流体の供給圧力に変動が生じた場合であっても、第1モジュール10A及び第2モジュール10Bの遅延時間の変動を抑制することができ、流体圧シリンダ120の軌跡のばらつきを抑えることができる。その結果、流体圧シリンダ120の動作の切替の際の待ち時間を減らすことができ、流体圧シリンダ120のサイクルタイムを短縮して動作速度を向上させることができる。
【0115】
上記の流量コントローラ150において、第1給排路116の第2モジュール10B(タイムディレイバルブ)のパイロット流路36は、第2給排路118に接続され、第2給排路118の第1モジュール10A(タイムディレイバルブ)のパイロット流路36は第1給排路116に接続されていてもよい。これにより、流量コントローラ150の装置構成を簡略化することができる。
【0116】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
以下の開示の一観点は、第1位置と第2位置とに切り替わる切替バルブと、前記切替バルブを前記第1位置に向けて付勢する付勢部材と、パイロット流体の供給圧力の作用下に、前記切替バルブを前記第2位置に向けて付勢する駆動機構と、前記駆動機構に前記パイロット流体を導くパイロット流路と、前記切替バルブの切替タイミングを遅延させる遅延機構と、を備え、前記遅延機構は、前記パイロット流路上に設けられた遅延用絞弁と、前記パイロット流体の供給圧力の作用下に、前記切替バルブを
別の一観点は、流体圧シリンダの一方のポートに流体を給排する第1給排路と、前記流体圧シリンダの他方のポートに流体を給排する第2給排路と、前記第1給排路及び前記第2給排路に制御対象流体を供給する流体供給源及び流体を排出する流体排出部と、を切り替えて接続する動作切替弁と、前記第1給排路及び前記第2給排路の経路上にそれぞれ設けられたタイムディレイバルブと、を備えた流量コントローラであって、前記タイムディレイバルブは、第1位置と第2位置とに切り替わる切替バルブと、前記切替バルブを前記第1位置に向けて付勢する付勢部材と、パイロット流体の供給圧力の作用下に、前記切替バルブを前記第2位置に向けて付勢する駆動機構と、前記駆動機構に前記パイロット流体を導くパイロット流路と、前記切替バルブの切替タイミングを遅延させる遅延機構と、を備え、前記遅延機構は、前記パイロット流路上に設けられた第1絞弁と、前記パイロット流体の供給圧力の作用下に、前記切替バルブを
復帰機構28は、切替バルブ18を第1位置に向けて付勢する付勢力を発生させる部材である。復帰機構28は、復帰流路46を介して第1流路14とつながっている。復帰機構28は、第1流路14の制御対象流体の供給圧力に応じた大きさの付勢力を発生させる。容積部42のパイロット流体の量は、パイロット流体の供給圧力
増減するが、復帰機構28は、パイロット流体(制御対象流体)の供給圧力に応じた付勢力を切替バルブ18に作用させることで、切替バルブ18が第2位置から第1位置に切り替わる復帰タイミングを安定化させる。
正面12aの第1接続ポート30からは、第1流路14がバルブ収容部54に向けて延びている。第1流路14の側部からは、側方に向けて連結ポート56が延び出ている。連結ポート56は、円筒状に形成されており、開口部12e1側の側部及び開口部12e2側の側部に延び出ている。連結ポート56の開口部12e1側の側部及び開口部12e2側の
には、それぞれ封止壁56aが設けられている。必要に応じて封止壁56aに穴あけ加工が施されて複数のタイムディレイバルブ10を連結する際に、パイロット流体や制御対象流体を隣接するタイムディレイバルブ10に供給するための接続口として使用される。なお、本実施形態のように、単一のタイムディレイバルブ10のみで使用する場合には、連結ポート56の開口部12e1側の封止壁56a及び開口部12e2側の封止壁56aには穴あけ加工は施されず、連結ポート56は封止壁56aで封止される。
本実施形態では、第1接続ポート30に連通した復帰流路46を通じて第1接続ポート30の制御対象流体の一部が復帰機構28の復帰ピストン室82に供給される。復帰機構28の復帰ピストン80は、制御対象流体の供給圧力(流体供給源112の圧力)に応じた大きさで
に向けた付勢力を発生させる。この復帰機構28の付勢力が付勢部材20の付勢力に重畳されるため、容積部42に貯留されたパイロット流体の量の変動を打ち消すように作用する。その結果、タイムディレイバルブ10は、流体供給源112の圧力の変動による復帰動作のタイミングの変動を抑制することができる。
上記のタイムディレイバルブ10において、切替バルブ18は、スプール60と、スプール60が摺動するスリーブ62と、を有し、駆動機構22は、スプール60の一端に設けられた駆動ピストン室68と、駆動ピストン室68を第1位置側の第1空室72aと第2位置側の第2空室72bとに仕切る駆動ピストン70と、を有し、駆動ピストン70は、第1空室72a側にパイロット流体の供給圧力を受けて第2位置
に示すように、タイムディレイバルブ11は、本体12Aの第1接続ポート30と第2接続ポート32とを接続する第1流路14を有しており、その第1流路14に切替バルブ18Aが設けられている。切替バルブ18Aは、第1位置と第2位置に切り替え可能であり、第1位置において、第1流路14の流体の流通を許容し、第2位置において第1流路14の流体の
流路接続部材130は、第2モジュール10Bの連結ポート56と第1モジュール10Aのパイロット流路36とを繋ぐ第1交差流路130Aと、第1モジュール10Aの連結ポート56と第2モジュール10Bのパイロット流路36とを繋ぐ第2交差流路130Bとを内蔵している。流路接続部材130は、
との間に挟み込まれるようにしてパイロット流路36に接続される。なお、第2モジュール10Bにおいて、開口部12e2側の連結ポート56の封止壁56a及び開口部12e2側のパイロット流路36の封止壁36aには穴あけ加工が施されている。また、第1モジュール10Aにおいて、開口部12e1側の連結ポート56の封止壁56a及び開口部12e1側のパイロット流路36の封止壁36aには穴あけ加工が施されている。
に示すように、本実施形態の流量コントローラ150では、充填特性については比較例3の流量コントローラと同様の傾向を示すものの、流体圧シリンダ120の軌跡については、バルブ信号が切り替わった後、
秒程度で立ち上がっており、比較例3よりも流体圧シリンダ120のストローク開始までの遅延時間が短縮されることがわかる。また、流体供給源112の供給圧力が0.3〜0.5MPaの範囲で変化しても、軌跡の立ち上がりの時刻が変動しておらず、流体圧シリンダ120のストロークの開始タイミングが、流体供給源112の圧力変動の影響を受けないことがわかる。
請求項1記載のタイムディレイバルブであって、前記補償機構は、前記パイロット流体の供給圧力の作用下に、前記駆動機構と反対の付勢力を発生させるピストン機構を有している、タイムディレイバルブ。
請求項8記載のタイムディレイバルブであって、前記復帰機構は、前記スプールの他端に形成された復帰ピストンと、前記復帰ピストンを収容する復帰ピストン室と、を有する、タイムディレイバルブ。
請求項11記載の流量コントローラであって、前記第1給排路の前記タイムディレイバルブの前記パイロット流路は、前記第2給排路に接続され、前記第2給排路の前記タイムディレイバルブの前記パイロット流路は前記第1給排路に接続されている、流量コントローラ。