【解決手段】検知器(1)は、被検ガスの濃度を検出するセンサ(2)と、センサを間欠的に駆動する駆動部(3)と、センサ信号(Sgs)を受信し、出力信号(Sout)として出力する変換部(4)と、を備え、変換部は、濃度に応じた出力信号の大きさを所定値に導くようにする調整を、センサの駆動時の出力信号を制御量とする、比例制御を用いたフィードバック制御により実行する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような間欠駆動を行うガス検知センサを適用した検知器では、ガス検知センサを間欠的なパルス電圧で駆動するので、検知器の出力信号のゼロ点調整やスパン調整を行う際、調整が完了するまでに時間を要するという問題がある。
【0005】
あるいは、ガス検知センサを交換した際等に実行する、ガス検知センサに印加すべき電圧の値の調整に時間を要するという問題がある。ガス検知センサに印加する電圧が、当該ガス検知センサについて規定されている値と異なると、検知器の出力信号の正確性が担保されないこととなる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、間欠駆動されるガス検知センサを備えた検知器において、出力信号を短時間で所定の値に調整することができる検知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る検知器は、被検ガスの濃度を検出するセンサと、前記センサを間欠的に駆動する駆動部と、前記センサからのセンサ信号を受信し、出力信号として出力する変換部と、を備え、前記変換部は、前記濃度に応じた前記出力信号の大きさを所定値に導くようにする調整を、前記センサの駆動時の前記出力信号を制御量とする、比例制御を用いたフィードバック制御により実行する構成を備える。
【0008】
上記構成によれば、出力信号を短時間で所定の値に調整することができる検知器を提供することができる。
【0009】
上記一態様に係る検知器において、前記変換部には、前記センサ信号の基準電圧を調整する第1可変抵抗器が設けられており、前記変換部は、前記出力信号のゼロ点調整を、前記第1可変抵抗器の抵抗値を操作して実行する構成を備えてもよい。上記構成によれば、出力信号のゼロ点調整を短時間で実行することができる検知器を提供することができる。
【0010】
上記一態様に係る検知器において、前記変換部には、前記センサ信号の増幅器と、前記増幅器のゲインを調整する第2可変抵抗器と、が設けられており、前記変換部は、前記出力信号のスパン調整を、前記第2可変抵抗器の抵抗値を操作して実行する構成を備えてもよい。上記構成によれば、出力信号のスパン調整を、短時間で実行することができる検知器を提供することができる。
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る検知器は、被検ガスの濃度を検出するセンサと、前記センサを間欠的に駆動する駆動部と、を備え、前記駆動部は、前記センサに所定の電圧を印加できるようにする調整を、前記センサの駆動時に前記センサに印加される電圧を制御量とする、比例制御を用いたフィードバック制御により実行する構成を備える。
【0012】
上記構成によれば、出力信号を短時間で所定の値に調整することができる検知器を提供することができる。特に、ガス検知センサを交換した際等に、検知器の出力信号の正確性を担保するために実行する、ガス検知センサに印加すべき電圧の値の調整を、短時間で実行することができる検知器を提供することができる。
【0013】
上記一態様に係る検知器において、前記駆動部には、前記センサの駆動時に前記センサに印加される電圧を調整する、第3可変抵抗器が設けられている構成を備えてもよい。上記構成によれば、電圧を制御量とする上記フィードバック制御のための操作を実行し得る回路が具体的に実現できる。
【0014】
上記一態様に係る検知器において、前記センサはMEMS(Micro Electro Mechanical System)センサである構成を備えてもよい。上記構成によれば、間欠的に駆動することで被検ガスの濃度を検出することができるセンサを備えた検知器をより具体的に構成することができる。
【0015】
上記一態様に係る検知器において、前記センサが、交換可能に装着されている構成を備えてもよい。上記構成によれば、センサを交換することで、長期に亘り経済的に使用することが可能な検知器を実現することができる。あるいは、被検ガスの種類に応じたセンサを装着することで、多様な被検ガスに対応できる検知器を実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、間欠駆動されるガス検知センサを備えた検知器において、出力信号を短時間で所定の値に調整することができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について、
図1〜
図5を参照し、詳細に説明する。
【0019】
<検知器の全体構成>
図1は、本発明の実施形態に係る検知器1の要部を、一部の構成を機能ブロックで表して示す回路図である。本実施形態に係る検知器1は、周辺大気等の測定対象ガス中における被検ガスの濃度に応じた出力信号Soutを出力する装置である。
【0020】
検知器1は、センサ2と、駆動部3と、変換部4とを備えている。センサ2は、駆動部3によって電力が供給されて動作する、ガス検知センサである。駆動部3は、センサ2を間欠的に駆動するためのパルス電源である。センサ2は所要の電圧を印加されている際に、測定対象ガス中における被検ガスの濃度に応じたセンサ信号Sgsを出力する。変換部4は、センサ2の出力したセンサ信号Sgsを受信し、検知器1が出力する信号としての、出力信号Soutに変換して出力する回路である。
【0021】
<センサの構成>
本実施形態において、センサ2は、半導体ウェハー上に微細な立体構造を形成する技術であるMEMS技術を用いて作製されたガス検知素子を有する、MEMS型のガス検知センサ(MEMSセンサ)である。MEMS型のガス検知センサについては、公知技術であるので、簡単に説明する。
【0022】
MEMS型ガス検知センサのガス検知素子は、検知ガスの感応部の熱容量が小さく、間欠駆動により動作させることが可能である。センサ2が検知し得る検知ガスの種類は、例えば水素や都市ガス、その他のガスであり得る。本実施形態において以下では、検知ガスが水素の場合を具体例として挙げて説明する。
【0023】
図1に示される本実施形態の具体的な回路構成例において、センサ2はホイートストン・ブリッジを構成している。センサ2には抵抗R1、抵抗R2、抵抗R3が設けられ、それぞれがブリッジを構成するための3つの固定抵抗である。センサ2のガス検知素子には、駆動時に高温になり、検知ガスである水素に感応してその抵抗値が変化する感応部が設けられている。センサ2のガス検知素子は、
図1の回路図において抵抗Rとして示されている。抵抗Rもまたブリッジを構成する抵抗である。
【0024】
センサ2を駆動するための電源を接続するための一対の、ポートP1、ポートP5が、センサ2には設けられている。ポートP1が電源の高電位側に、ポートP5が低電位側に接続される。また、センサ信号Sgsを出力するために一対の、ポートP2、ポートP3が、センサ2には設けられている。図示されているように、外部電源からセンサ2に印加された電圧をモニタするためのポートP4が、センサ2に、更に設けられていてもよい。
【0025】
センサ2において、ポートP1と、ポートP5との間には、この順に抵抗Rと、抵抗R3とが直列接続されている。抵抗Rと抵抗R3の接続点は、センサ信号Sgsを出力するための一方の端子であるポートP3に接続されている。
【0026】
また、ポートP1と、ポートP5との間に、この順に抵抗R1と、抵抗R2とが直列接続されている。抵抗R1と抵抗R2の接続点は、センサ信号Sgsを出力するためのもう一方の端子であるポートP2に接続されている。センサ信号Sgsは、ポートP2の電圧を基準電圧とした、ポートP3の電圧である。
【0027】
<駆動部の構成>
駆動部3は、外部電源からの所定の直流電圧Vccの供給を受けて、センサ2を間欠的に駆動するための駆動電圧Vinを出力するパルス電源である。検知器1において、駆動部3の出力端子対のうちの高電位側はセンサ2のポートP1に接続されている。また、低電位側は、センサ2のポートP5に接続され、更にアースされている。
【0028】
駆動部3には、オペアンプOP3、スイッチ素子SW、第3可変抵抗器VR3、抵抗R6、加算器AD3、及び、制御器CT3が設けられている。直流電圧Vccとアースとの間に、スイッチ素子SW、第3可変抵抗器VR3、抵抗R6がこの順に直列接続されている。スイッチ素子SWは、パルス信号Spに従って、直流電圧Vccの供給のオン/オフを行う。
【0029】
スイッチ素子SWのオン時に、直流電圧Vccが、第3可変抵抗器VR3と抵抗R6により按分され、オペアンプOP3の反転入力端子に入力される。オペアンプOP3の出力端子は、駆動部3の高電位側の出力端子でもあり、センサ2のポートP1に接続されている。オペアンプOP3の非反転入力端子は、センサ2のポートP4に接続され、センサ2に印加される電圧である駆動電圧Vinが入力される。
【0030】
こうして、オペアンプOP3は、スイッチ素子SWのオン時に、直流電圧Vccが、第3可変抵抗器VR3と抵抗R6により按分された電圧を、駆動電圧Vinとして安定化して出力する。また、オペアンプOP3は、スイッチ素子SWのオフ時に、アース電圧(0電圧)を駆動電圧Vinとして安定化して出力する。
【0031】
以上のようにして、駆動部3はパルス信号Spに従ってオン/オフするパルス電圧である、所要の駆動電圧Vinを出力する。本実施形態において、駆動電圧Vinはパルス信号Spに従って、例えば、3秒間オフ、その後45ミリ秒間オンとなる周期を繰り返す。
【0032】
駆動部3において、第3可変抵抗器VR3の抵抗値は、機能ブロックである加算器AD3と、機能ブロックである制御器CT3の作用によって制御されるが、これについては後述される。
【0033】
<変換部の構成>
変換部4は、ブリッジ出力としてセンサ2から出力されるセンサ信号Sgsの基準電圧を調整し、ゼロ点調整を実行する、ゼロ点調整回路C1を備えている。変換部4はまた、センサ信号Sgsを変換して検知器1の出力信号Soutとして出力する際の、ゲインを調整するスパン調整回路C2を備えている。
【0034】
ゼロ点調整回路C1には、抵抗R4、抵抗R5、第1可変抵抗器VR1、オペアンプOP1、加算器AD1、及び、制御器CT1が設けられている。ゼロ点調整回路C1において、センサ2のポートP1とポートP5との間に、抵抗R4、第1可変抵抗器VR1、抵抗R5がこの順に直列接続されている。第1可変抵抗器VR1と抵抗R5との接続点は、センサ2がセンサ信号Sgsを出力するための一方の端子であるポートP2に接続されている。
【0035】
第1可変抵抗器VR1の抵抗値を調整することによって、ポートP1とポートP5との間の抵抗値に対する、ポートP2とポートP5との間の抵抗値の比率が変化する。よって、ポートP1とポートP5との間に印加された駆動電圧Vinは、当該比率に従って按分されてポートP2に出力される。つまり、センサ信号Sgsの基準電圧は、第1可変抵抗器VR1の抵抗値により調整され得る。
【0036】
測定対象ガス中の被検ガスである水素ガスの濃度がゼロである際に、センサ2を駆動するための電圧が印加されている状態で、センサ信号Sgs、すなわちポートP2に対するポートP3の電圧が0になるように第1可変抵抗器VR1の抵抗値を調整する。このようにポートP2に印加される電圧、すなわち基準電圧を調整することで、センサ2、ひいては検知器1のゼロ点調整が実行される。
【0037】
ゼロ点調整回路C1において、センサ信号Sgsは、オペアンプOP1に入力される。ポートP2はオペアンプOP1の反転入力端子に接続され、ポートP3は非反転入力端子に接続される。こうして、オペアンプOP1は、差動増幅器を構成しており、センサ信号Sgsをインピーダンス変換してオペアンプOP1の出力端子から出力する。
【0038】
変換部4において、第1可変抵抗器VR1の抵抗値は、機能ブロックである加算器AD1と、機能ブロックである制御器CT1の作用によって制御されるが、これについては後述される。
【0039】
スパン調整回路C2には、第2可変抵抗器VR2、オペアンプOP2、加算器AD2、及び、制御器CT2が設けられている。スパン調整回路C2は、オペアンプOP2を用いて構成された、ゼロ点調整回路C1の出力を増幅する増幅器である。
【0040】
ゼロ点調整回路C1のオペアンプOP1の出力端子が、オペアンプOP2の非反転入力端子に接続されている。オペアンプOP2の出力端子が、第2可変抵抗器VR2を介してオペアンプOP2の反転入力端子に接続されている。こうして、スパン調整回路C2は、第2可変抵抗器VR2の抵抗値によりゲインが調整される増幅器を構成している。
【0041】
上記ゼロ点調整実施後、水素ガスの濃度が所定の濃度である測定対象ガス(校正用ガス)をセンサ2のガス検知素子に作用させて、その際の出力信号Soutの大きさが、所定の値となるようにスパン調整回路C2の増幅器のゲインを調整することで、スパン調整が実行される。
【0042】
変換部4において、第2可変抵抗器VR2の抵抗値は、機能ブロックである加算器AD2と、機能ブロックである制御器CT2の作用によって制御されるが、これについては後述される。
【0043】
<機能ブロックの実現>
図1の回路図中に示された各加算器や、各制御器の機能ブロックは、それぞれがアナログ回路で実現されてもよいが、デジタル回路、あるいはマイクロコンピュータ等のコンピュータによるデジタル処理によって実現されてもよい。以下では、コンピュータによるデジタル処理によって各機能ブロックの機能を実現する場合の構成について説明する。
【0044】
検知器1にコンピュータが適用されることで、多種のセンサ2に対して、これらの機能を実現させることが容易となる。
図2は、
図1の回路図中に示された各加算器や、各制御器等の機能を実行するためのコンピュータ5の構成を示すブロック図である。
【0045】
コンピュータ5は、第1可変抵抗器VR1の抵抗値を制御するための制御器CT1及び加算器AD1の機能を実行する。コンピュータ5はまた、第2可変抵抗器VR2の抵抗値を制御するための制御器CT2及び加算器AD2の機能を実行する。コンピュータ5は更に、第3可変抵抗器VR3の抵抗値を制御するための制御器CT3及び加算器AD3の機能を実行する。
【0046】
コンピュータ5は、CPU6(Central Processing Unit)、メモリ7、不揮発性メモリ8、及び、A/D変換器9を備えている。不揮発性メモリ8は、各機能を実現するソフトウェアである制御プログラム10を保持する。CPU6は、上記制御プログラム10を不揮発性メモリ8から読み取り、一時的にデータを保持するメモリ7を利用して、上記制御プログラム10を実行することにより、目的を達成する。
【0047】
A/D変換器9は、
図1の回路図中における各信号、特に出力信号Soutと駆動電圧Vinを取り込むためのインターフェースである。図示されるように、コンピュータ5は、第1可変抵抗器VR1、第2可変抵抗器VR2、第3可変抵抗器VR3をデジタル制御する。
【0048】
そのため、本実施形態の具体例において、第1可変抵抗器VR1、第2可変抵抗器VR2、第3可変抵抗器VR3は、それぞれがデジタルポテンショメータである。デジタルポテンショメータは、コンピュータ5の指令に基づいて、抵抗値を変化することができる可変抵抗器である。本実施形態の具体例において、デジタルポテンショメータは、抵抗値のステップが1024段階のものを用いている。
【0049】
コンピュータ5は、センサ2の種類に応じた適切な間欠動作のタイミングを制御するパルス信号Spを、スイッチ素子SWに対して出力する。更に、検知器1は、検出した被検知ガスの濃度、あるいは検知器1の動作、例えば、濃度測定、ゼロ点調整、スパン調整等の動作の実行状態を示す表示を行う表示部11を備えていてもよい。その場合、コンピュータ5は、表示部11を制御して、所要の表示を実行する。
【0050】
<ゼロ点調整動作>
以下に、本実施形態に係る検知器1の特徴的な動作である、ゼロ点調整動作について説明する。
図3は、ゼロ点調整動作を説明するためのフローチャートである。作業者は、ゼロ点調整動作を実行するに当たり、センサ2のガス検知素子が触れる測定対象ガスを、被検知ガスが含まれないものとする。検知器1は、作業者の指示により、ゼロ点調整動作を開始すると、
図3に示されるフローを実行する。
【0051】
ステップS10:CPU6は、CPU6の制御によりスイッチ素子SWに送信されるパルス信号Spに関する情報を参照し、センサ2に印加される駆動電圧Vinがオンの状態にあるか否かを判断する。オン状態であると判断される場合(S10でYES)、フローはステップS11に進み、それ以外の場合(S10でNO)、ステップS10を繰り返す。
【0052】
ステップS11:CPU6は、A/D変換器9が検出した出力信号Soutを取得する。
【0053】
ステップS12:続いてCPU6は、取得した出力信号Soutと、目標値Vt1との差分を演算する。つまり、コンピュータ5が加算器AD1の機能を実行する。ここで比較される目標値Vt1は、コンピュータ5が予め、制御プログラム10等の形式で保持しており、ゼロ点調整動作においては、通常0である。
【0054】
ステップS13:続いてCPU6は、算出した差分がほぼ0であるか否かを判断する。すなわち、不等式|Sout−Vt1|<ε1が満たされるか否かを判断する。ここで、ε1は、予め定められた判断の許容値である。ほぼ等しいと判断される場合(S13でYES)、フローはステップS15に進む。ゼロ点調整が完了していると判断されるからである。それ以外の場合(S13でNO)、フローはS14に進む。
【0055】
ステップS14:CPU6は、算出した差分Sout−Vt1に応じて、第1可変抵抗器VR1を調整する。すなわち、差分が正であれば、第1可変抵抗器VR1の抵抗値を小さくし(基準電圧を大きくさせ)、差分が負であれば、第1可変抵抗器VR1の抵抗値を大きくする(基準電圧を小さくさせる)ように操作する。
【0056】
また、差分の大きさが大きいほど、抵抗値の変化の度合いを比例して大きくする。つまり、コンピュータ5が比例制御器である制御器CT1の機能を実行する。次いでCPU6は、第1可変抵抗器VR1の調整による変換部4の状態の変化が収束するための待機時間、待機する。待機時間は、例えば、150ミリ秒である。次にフローはステップS10に戻る。ステップS14での制御器CT1の第1可変抵抗器VR1の操作の結果のフィードバックのためである。
【0057】
ステップS15:CPU6は、調整された第1可変抵抗器VR1の操作値を不揮発性メモリ8に保存する。検知器1が停止し、再度起動した場合に、利用するためである。更にCPU6は、表示部11を制御して、ゼロ点調整動作が終了したことを報知するようにしてもよい。次に、ゼロ点調整動作のフローは終了する。
【0058】
<スパン調整動作>
以下に、本実施形態に係る検知器1の特徴的な動作である、スパン調整動作について説明する。
図4は、スパン調整動作を説明するためのフローチャートである。作業者は、検知器1に上記ゼロ点調整動作を実行させてから、スパン調整動作を実行させる。
【0059】
また作業者は、スパン調整動作を実行するに当たり、センサ2のガス検知素子に触れる測定対象ガスを、被検知ガスが所定濃度含まれる校正用のガスとする。検知器1は、作業者の指示により、スパン調整動作を開始すると、
図4に示されるフローを実行する。
【0060】
ステップS20:CPU6は、CPU6の制御によりスイッチ素子SWに送信されるパルス信号Spに関する情報を参照し、センサ2に印加される駆動電圧Vinがオンの状態にあるか否かを判断する。オン状態であると判断される場合(S20でYES)、フローはステップS21に進み、それ以外の場合(S20でNO)、ステップS20を繰り返す。
【0061】
ステップS21:CPU6は、A/D変換器9が検出した出力信号Soutを取得する。
【0062】
ステップS22:続いてCPU6は、取得した出力信号Soutと、目標値Vt2との差分を演算する。つまり、コンピュータ5が加算器AD2の機能を実行する。ここで比較される目標値Vt2は、コンピュータ5が予め制御プログラム10等の形式で保持している。目標値Vt2は、校正用のガスに含まれる被検知ガスの濃度に応じて検知器1が出力すべき出力信号Soutの大きさに対応する値である。
【0063】
ステップS23:続いてCPU6は、算出した差分がほぼ0であるか否かを判断する。すなわち、不等式|Sout−Vt2|<ε2が満たされるか否かを判断する。ここで、ε2は、予め定められた判断の許容値である。ほぼ等しいと判断される場合(S23でYES)、フローはステップS25に進む。スパン調整が完了していると判断されるからである。それ以外の場合(S23でNO)、フローはS24に進む。
【0064】
ステップS24:CPU6は、算出した差分Sout−Vt2に応じて、第2可変抵抗器VR2を調整する。すなわち、差分が正であれば、第2可変抵抗器VR2の抵抗値を小さくし(ゲインを小さくさせ)、差分が負であれば、第2可変抵抗器VR2の抵抗値を大きくする(ゲインを大きくさせる)ように操作する。
【0065】
また、差分の大きさが大きいほど、抵抗値の変化の度合いを比例して大きくする。つまり、コンピュータ5が比例制御器である制御器CT2の機能を実行する。次いでCPU6は、第2可変抵抗器VR2の調整による変換部4の状態の変化が収束するための待機時間、待機する。待機時間は、例えば、150ミリ秒である。次にフローはステップS10に戻る。ステップS24での制御器CT2の第2可変抵抗器VR2の操作の結果のフィードバックのためである。
【0066】
ステップS25:CPU6は、調整された第2可変抵抗器VR2の操作値を不揮発性メモリ8に保存する。検知器1が停止し、再度起動した場合に、利用するためである。更にCPU6は、表示部11を制御して、スパン調整動作が終了したことを報知するようにしてもよい。次に、スパン調整動作のフローは終了する。
【0067】
<印加電圧調整動作>
以下に、本実施形態に係る検知器1の特徴的な動作である、印加電圧調整動作を説明する。印加電圧調整動作は、駆動部3がセンサ2に印加する駆動電圧Vinについて、オン時にセンサ2を駆動するための所定の印加電圧に調整するための動作である。
【0068】
図5は、印加電圧調整動作を説明するためのフローチャートである。被検知ガスの変更の目的あるいは、センサ2の消耗等に伴う交換の目的により、センサ2を交換した場合、あるいは機器の初回駆動時等に、作業者は、検知器1に印加電圧調整動作を実行させる。検知器1は、作業者の指示により、印加電圧調整動作を開始すると、
図5に示されるフローを実行する。
【0069】
ステップS30:CPU6は、CPU6の制御によりスイッチ素子SWに送信されるパルス信号Spに関する情報を参照し、センサ2に印加される駆動電圧Vinがオンの状態にあるか否かを判断する。オン状態であると判断される場合(S30でYES)、フローはステップS31に進み、それ以外の場合(S30でNO)、ステップS30を繰り返す。
【0070】
ステップS31:CPU6は、A/D変換器9が検出した駆動電圧Vinを取得する。
【0071】
ステップS32:続いてCPU6は、取得した駆動電圧Vinと、目標値Vt3との差分を演算する。つまり、コンピュータ5が加算器AD3の機能を実行する。ここで比較される目標値Vt3は、コンピュータ5が予め制御プログラム10等の形式で保持している。目標値Vt3は、検知器1に搭載されるセンサ2の種類に応じて、その駆動電圧として予め規定されている値である。目標値Vt3の具体例は、例えば2.3Vである。
【0072】
ステップS33:続いてCPU6は、算出した差分がほぼ0であるか否かを判断する。すなわち、不等式|Vin−Vt3|<ε3が満たされるか否かを判断する。ここで、ε3は、予め定められた判断の許容値である。ほぼ等しいと判断される場合(S33でYES)、フローはステップS35に進む。印加電圧調整が完了していると判断されるからである。それ以外の場合(S33でNO)、フローはS34に進む。
【0073】
ステップS34:CPU6は、算出した差分Vin−Vt3に応じて、第3可変抵抗器VR3を調整する。すなわち、差分が正であれば、第3可変抵抗器VR3の抵抗値を大きくし(駆動電圧を小さくさせ)、差分が負であれば、第3可変抵抗器VR3の抵抗値を小さくする(駆動電圧を大きくさせる)ように操作する。
【0074】
また、差分の大きさが大きいほど、抵抗値の変化の度合いを比例して大きくする。つまり、コンピュータ5が比例制御器である制御器CT3の機能を実行する。次いでCPU6は、第3可変抵抗器VR3の調整による駆動部3の状態の変化が収束するための待機時間、待機する。待機時間は、例えば、150ミリ秒である。次にフローはステップS30に戻る。ステップS34での制御器CT3の第3可変抵抗器VR3の操作の結果のフィードバックのためである。
【0075】
ステップS35:CPU6は、調整された第3可変抵抗器VR3の操作値を不揮発性メモリ8に保存する。検知器1が停止し、再度起動した場合に、利用するためである。更にCPU6は、表示部11を制御して、駆動電圧調整動作が終了したことを報知するようにしてもよい。
【0076】
<作用、効果>
上述のように、本実施形態の検知器1では、ゼロ点調整動作、スパン調整動作、印加電圧調整動作のそれぞれが、それぞれの目標値に対して、比例制御によりフィードバック制御されて実現される。
【0077】
間欠駆動されるMEMS型のガス検知センサが適用された検知器1では、これらの調整時において、センサ2を駆動する電圧が印加される、すなわち駆動電圧Vinがオンとなるタイミングでしか、駆動電圧Vinまたは出力信号Soutを評価できない。そのため回路の状態が安定する待機時間を考慮すると、駆動電圧Vinの一周期毎にしか、各可変抵抗器の操作の結果のフィードバックを行い得ない。
【0078】
例えばゼロ点調整動作において、動作開始前時点での、デジタルポテンショメータである第1可変抵抗器VR1の抵抗値のずれのステップ数が、仮に1024段階中の100であったとする。
【0079】
この場合に、出力信号Soutを目標値Vt1と比較して、その大小により単純にステップを1段階ずつ上昇または下降させていく制御をするならば、第1可変抵抗器VR1の調整が完了するまでに、100周期分の時間を要することとなる。つまり、約305秒もの時間を要することとなる。なお、この時間は、電力消費を抑制するために、測定の間隔、すなわち間欠動作の周期を更に広げると、さらに増大することとなる。
【0080】
一方、本実施形態の検知器1では、第1可変抵抗器VR1の抵抗値のステップの増減は、出力信号Soutと目標値Vt1との差分に応じた比例制御により実行され、フィードバック制御により最終的に収束する。実際の結果として、抵抗値のずれのステップ数が100程度であった場合にも、10回未満のフィードバックで収束させることができ、30秒未満の時間でゼロ点調整動作を完了させることができる。
【0081】
このように、本実施形態の検知器1では、上記単純な手法と比較すると、極めて短時間に、ゼロ点調整動作を完了させることができる。また、スパン調整動作、印加電圧調整動作においても同様の効果を得ることができる。
【0082】
<付記事項>
上記実施形態において、検知器1では、実施形態中に説明された、ゼロ点調整動作、スパン調整動作、印加電圧調整動作の全てを実行する機能を備えているものとした。しかし、本発明の適用はこれに限られるものでは無く、検知器が、上記実施形態中で説明された、ゼロ点調整動作、スパン調整動作、印加電圧調整動作のうちの少なくとも一つを実行する機能を有していればよい。
【0083】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0084】
例えば、検知器の電源は外部電源と電池のどちらでもよい。ただし電池電源のほうがより省電力が求められ間欠駆動が採用される傾向にあるため、本発明をより好適に用いることができる。
【0085】
またガス検知センサにはMEMS型以外のものを用いることもできる。MEMS型センサは省電力を1つの特徴とするので、間欠駆動が採用される傾向にある。そのためMEMS型センサを搭載する検知器のほうが本発明をより好適に用いることができる。